III 指標の見方

 病院事業の経営分析に当たっては、当該病院の立地条件や沿革、病床数、診療科目、一日平均患者数等の状況、当該病院の所在する地域の診療圏の大きさ等のほか医療需要の状況、圏内及び圏外の医療機関の整備状況、地域全般の交通等経営環境全般を含めて問題点を把握し、その対策を検討することが必要である。この場合、病院事業の経営収支の均衡、経営構造の健全性の維持と併せて地域医療の確保、医療水準の向上への寄与についての考慮がなされなければならないことはいうまでもない。この経営指標は、これらの条件を十分に満たしうるものではないが、経営態様の類似している類型ごとに出された平均値との比較及び各類型に属する個別病院との比較によって当該病院の特色を明らかにするとともに、ここに示された経営分析項目を一つの指針として経営内容に検討を加えることにより、各病院の経営状況の改善に役立つものと考える。
 なお、それぞれの経営分析項目を比較するにあたっては、その内容等をよく検討することが重要であるが、次の主要項目については特に以下の諸点に留意する必要がある。

(1) 病床利用率 1日平均患者数 外来入院患者比率
 病院の患者の多寡は、病院の立地条件、診療圏の大きさと医療需要の量、他の医療機関の設置状況及び整備の状況、交通事情及び当該病院のもつ患者の吸引力(病院の標榜診療科目、医師に対する信用力、病院の施設、設備の整備状況、患者サービス、病院のPR等)により左右されるほか、入院にあっては、病床種別の構成比率や病床の管理方法によって、また、外来にあっては、診療体制、外来診療時間の長短によってその状況が異なる。
(2) 医師1人1日当たり患者数
 医師1人1日当たり取扱患者数は、医師配置数、診療科目別患者1人当たりの診療行為の内容等と大きく関係するほか科目構成、当該医師に対する利用者の信頼度、実診療時間等の医師の勤務体制及び(1)に掲げた要件によっても異なる。また、一般的な傾向として医師の充足難等を反映して小規模病院ほどこの数値は高くなっている。
(3) 患者1人1日当たり診療収入
 患者1人1日当たり診療収入は病院の機能度を反映するものであって、診療科目、病院の医療器械の整備状況、医療補助職員の質量とも深い関連があり、診療行為別では検査収入、放射線収入、投薬注射、処置・手術収入等についてその状況を検討する必要がある。
(4) 薬品使用効率
 薬品使用効率は、薬品の購入、管理、使用等の状況により左右される。
(5) 100床当たり職員数
 100床当たり職員数は、病院の病床利用率、入院外来比率、収容患者の病類、サービス水準(看護配置等)、医療水準(検査、放射線、救急医療、その他の特殊医療)、業務の機械化、業務の外部委託等の状況と密接な関連をもっている。
 また、看護師数についてはいわゆる二・八体制等勤務条件の差異によるものが大きい。
(6) 平均給与月額
 平均給与月額については、職種別構成及び平均年令、平均経験年数により基本的に異なるほか給与運用の適否により、大きく影響される。

 最後に、今回の自治体病院経営指標を作成するため選定した病院は、一般病院にあっては医業収支比率100%以上、精神病院にあっては医業収支比率90%以上、結核病院にあっては同70%以上の要件に該当するものに限っているが、参考のため一般病院について医業収支比率100%以上と100%未満の状況を掲げると表−3[PDF]のとおりである。
 また、病床規模別医業収支比率別病院数の状況を表−4[PDF]に掲げた。



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平成16年度自治体病院経営指標 自治体病院比較経営診断表