画像:住民参画システム利用の手引き 〜地域SNS、公的認証対応アンケートシステム〜
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目次
座長あいさつ
総論
導入検討編

1. ICTを活用した住民参画の方法
2. 主なICT住民参画手段
3.地域SNSとは
4.SNSと地域SNSの違い
5.地域SNSの費用
6.電子アンケートとは
7.電子アンケートの費用
8.高齢者などの参加
9.住民ニーズの把握
10.施策への反映
11.運営体制
12.議会との関係
参考1 実証実験地域の概要
参考2 実証実験関係者座談会


実践編 地域SNS

実践編 電子アンケートシステム
資料編
参考1. 実証実験地域の概要

実証実験地域紹介 千代田区(東京都)

 千代田区のイメージといえば、まず何を思い浮かべるだろうか?アキバ、古本屋、お祭り、官庁街、etc。
図を見ていただくとお分かりのように、千代田区は、皇居というシンボル的存在の周りに、独自の文化を生み出している地域が多数存在している。約12km2という狭い区域に、これだけの顔を有する場所も珍しい。さらにそれぞれの地域には多種多様なコミュニティ―住民のコミュニティや商店街、1000近いNPOの活動、企業コミュニティなど―が存在し、独自の活動が展開されている。
今回の実証実験では、この様々なコミュニティの活動をサポートするツールとして、地域SNSや電子アンケートシステムの活用可能性を検証することを目的としている。例えば、千代田区は、夜間人口が約4万人であるのに対し、昼間人口が約85万人と特異な人口構造になっている。この昼間区民の意見をいかに区政に反映するかが課題となっており、そのツールとしてICT活用が考えられる。現在の昼間区民は企業単位で独立しており、相互の交流や地域住民との交流はあまりない。この壁を突き破るツールとしても、ICTの果たす役割は大きい。
また千代田区では、大規模災害発生時に、昼間人口や来訪者の多くが帰宅困難者となることが懸念されている。これらの帰宅困難者に対して、災害情報、避難経路情報などの必要情報を適切に提供する手段のひとつとして、ICTの活用が考えられる。日常的に昼間住民同士や夜間住民との交流を持っておくことも、災害時の対応をスムーズにする効果が期待される。

特徴ある千代田区の各地域

画像:特徴ある千代田区の各地域

資料:(財)まちみらい千代田



千代田区の特性

画像:千代田区の特性


ICT住民参画事業への期待
石川雅己千代田区長インタビュー

画像:石川雅己千代田区長
― 地域への住民参加を考える上で、千代田区におけるポイントは何でしょうか?
石川雅己千代田区長(以下、石川)
千代田区の場合、何を考えるにも、昼間区民(法人企業も含めて)との関係を抜きにして区政というものは意味を持たないですね。災害、安全・安心、産業振興でも、区民だけ対象にしても駄目で、当然、昼間区民との関わりを持って共に生きていきましょうということを考えなければならないのが千代田区です。いざ災害が発生すれば60万人と言われる帰宅困難者が出るわけですが、そうなるともう区民だけの話ではなく、地域社会を考えるときに、昼間区民と定住人口とが、お互いに関係が無いと言っていては困るわけです。
またビジネスマンの方なども1日24時間のうち半分以上は何らかの形で千代田区で生活をしているわけですから、そこをきちんと考えなくてはいけません。その意味で、ICTというのは昼間区民の参加の大きなツールになると思います。

― 昼間区民との関わりが重要ということでしょうか?
石川 私は、2期目の任期にあたり、「共生」を区政運営の基本理念に掲げました。共生というのは、当然、意見の違いや価値観の違いがあって、そういうお互いの違いを乗り越えて生きていくものです。私は、21世紀の社会の中で、この千代田区というところはそういう観点から、壮大な実験をする場だと思っています。ICTという言葉には、真ん中にコミュニケーションという言葉が入っているわけですから、ITでは一方通行的な部分があるけれども、ICTならば昼間区民と定住区民とをつなぐツールとして、昼間区民と夜間区民の共生を実現する上で、いろんな形で政策的に使えるものだと思います。

― 夜間住民についてはどうでしょうか?
石川 区民の居住形態の8割がマンション住まいです。隣近所との関係を構築したくない、と考えるのがいわゆるマンション定住者の方々の考え方なのですが、それでは地域の絆というものが生まれません。いかにマンション族の方々と、区政情報も含めて、双方向コミュニケーションが取れるのか、ということが地域課題として取り上げられており、そういう面でもICTは、いろいろな仕掛けができるのではないかと思いますし、今回の実証実験でもいろいろと考えていければと思います。

― コミュニティがこれからの地域づくりの鍵になりそうですね。
石川 質の高い地域社会をつくるのはコミュニティで、そこをどうつくっていくか、ですよ。大都市になると、「遠くの親類より近くの他人」なんです。災害もそうです。それが質の高い地域社会や国民生活をつくることになると思います。
また横の連携ということで言えば、行政同士の姉妹提携というのは、もう古いんですよ。役人が行き来したところで何の役にも立たないですよ。問題は市民同士の絆というところでしょう。

― 最後に。
石川 最終的には、機械によるコミュニケーションというのは、あくまでもFace To Faceに結びつけるための手段であって、人のつながりや絆をつくるための一つの手段だと思っています。ICTというものも、やはり人と人との絆をつくる手段だと思いますし、そういうことが実現できる社会になればいいと思います。

― 今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
(本稿は2005年9月21日、千代田区役所にて、石川雅己千代田区長、総務省 牧情報政策企画官、防災科学技術研究所 長坂主任研究員で行った対談をもとに作成しました。)

実証実験地域紹介 長岡市(新潟県)

新潟県長岡市。人口約23万人を抱え、新潟県第二の大きさを誇るこの都市は、まさしく地方都市と呼ぶにふさわしい。昔ながらの隣近所同士の付き合いも残っており、住民による野菜作りや日本酒作りなど、数多くの交流イベントも行われている。
このように地域コミュニティが健在する長岡市では、如何にコミュニティの活動を盛り上げられるかが重要になる。情報の交換や話し合い、友人との交流などを行うツールとして、地域SNSや電子アンケートシステムに期待が寄せられている。
また長岡市は、今年四月に周辺5町村との合併を迎えたばかりである。新しい市の中で、旧市町村域を超えた交流を如何に行えるかも、ひとつのテーマとなっている。
2004年、この地を二つの大災害が襲ったことは記憶に新しい。7月13日、新潟・福島集中豪雨による水害。10月23日、新潟県中越地震。町中が混乱する災害時、食料や水と同様に必要となるものが「情報」である。情報の提供者として、まず思いつくのは自治体やマスコミだろう。しかし、情報を発信するには、裏を取り、信頼性を確保しなくてはならず、必ずしも迅速に情報を提供することはできない。そこで、長岡市や周辺町村では、地域コミュニティが一役買った。NPO法人「ながおか生活情報交流ねっと」が用意したブログに、住民が「××町の避難所に毛布500枚が届いています」「水は足りていますが、衣類が不足しています」といった現場の情報を書き込み、やり取りを行ったのである。このような経験を生かし、安否確認や避難場所情報の提供などに、SNSや電子アンケートの仕組みが如何に活用できるか検証を行う。特にSNSが持つ「日頃から頻繁に利用し、使い慣れている」という特性がどう生かされるか注目されている。
合併の様子(合併前旧市町村名)

画像:合併の様子(合併前旧市町村名)

交流イベント(小松菜の収穫)の様子

画像:交流イベント(小松菜の収穫)の様子

資料:ながおか生活情報交流ねっと



長岡市の特性

画像:長岡市の特性

ICT住民参画事業への期待
森民夫 長岡市長インタビュー
画像:森民夫 長岡市長
― 長岡市の場合、やはり災害時での活用が大きなテーマでしょうか。
森民夫長岡市長(以下、森) そうですね。災害時にはやはり、石井座長が
仰る通り、「日頃から使い慣れたシステムを切り替えて情報共有する仕組
み」が重要になると思います。 
長岡市は実際に災害を経験しているので、その経験を生かすことができるでしょう。例えば、災害時の情報共有となると、停電の問題が頭に浮かびます。そこで、非常電源の備わった同報無線などに発想が行ってしまうのですが、実際の震災では停電している時間は短かったですね。
災害時の情報共有と一言で言っても、災害発生直後の緊急情報だけでなく、その後の避難所に関する情報など、様々な情報のフォローが必要になります。そのようなフォローが必要な時期は、電力が2〜3日で復旧した後、数ヶ月間にわたります。この時期には、同報無線ではなく、やはりパソコンや携帯電話が重要な役割を果たします。密度の高い情報を双方向でやり取りできることが、非常に有効ですね。

― NPO法人「ながおか生活情報交流ねっと」が果たす役割は?
森 住民と行政のみの構図で、いきなり住民参画となると難しい面もあるでしょうから、これからNPO法人などの役割は重要になってくると思います。
 「ながおか生活情報交流ねっと」は昨年の震災の際、災害情報の収集、提供など、行政だけではできない点をうまく補完してもらいました。また、「山古志村のマリと三匹の子犬」を出版した際には、インターネットを通じてイラストレーターを探し、編集もネット上で行ったそうです。このような面白い経験も生かしていけるのではないかと思います。

― 今回、「まちかどレポーター」という試みを考えています。普段は町のレポーターとして、美味しいお店の情報などを記事にしていますが、災害時には災害状況のレポーターになる仕組みです。
森 面白い試みだと思います。長岡市でも「まちかど情報員」という取組みを行っています。各記事にレポーターの名前が記載されていれば、情報の発信者が誰かが分かります。そうすると災害時でも、「この人は普段から、良く取材をしているので、この情報は信頼できる」といった判断ができますね。情報の信頼性にも繋がります。
 このような面白い試みを楽しくやっていきたいですね。楽しくないと普及しませんから。

― 本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
(本稿は2005年9月16日、長岡市役所にて、森民夫長岡市長、総務省牧情報政策企画官で行った対談をもとに作成しました。)

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