ブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)

通  信

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(MCOM)

Ministry of Communications

Tel. +55 61 2027 5530
URL https://www.gov.br/mcom/pt-br/
所在地

Esplanada dos Ministerios, Bloco R CEP 70044-902

Brasilia DF, BRAZIL

幹部 Juscelino Filho(大臣/Minister)
所掌事務

ブラジル政府は、2020年7月10日、科学技術革新通信省(Ministry of Science, Technology, Innovation and Communications:MCTIC)から分離する形で通信省(Ministry of Communications:MCOM)を設置・復活させた。MCOMは1967年に創設されたが、2016年5月の当時のテメル政権の省庁再編に伴い、MCTICに統合されていた。MCOMは、通信、放送、郵便に関する行政機関として、国家政策の策定を行う。電気通信事業(電波政策を含む)に関する基本政策を策定し、電気通信庁(National Telecommunication Agency:Anatel)の活動を介して電気通信市場の発展を図る。2023年ルーラ政権による省庁再編後も引き続き通信省が通信行政を所掌する。

2 電気通信庁(Anatel)

National Telecommunication Agency

Tel. +55 61 2312 2000
URL https://www.gov.br/anatel/pt-br/
所在地

SAUS, Quadra 6, Bloco C,E,F e H CEP 70070-940

Brasilia DF, BRAZIL

幹部 Carlos Manuel Baigorri(長官/President)
所掌事務

「1997年一般電気通信法」に基づき、1997年11月に独立規制機関として設立された。MCOMが策定する電気通信事業の基本政策に基づき、電気通信に関する以下の管理・監視業務を所掌し、活動状況をMCOM及び国会に報告する義務を有する。

Ⅱ 法令

1 1997年一般電気通信法(General Telecommunications Law of 1997、法律第9472号)

同法により、それまで当時の通信省に与えられていた事業免許・許可等の権限のほとんどがAnatelに移管された。旧国営通信事業者テレブラス(Telebras)の民営化や、競争的市場を創出するための諸条件を定めており、電気通信に関する基本法令となっている。主な内容は以下のとおりである。

2019年10月4日には、ボルソナロ大統領(当時)が電気通信規則の近代化を目的とした「1997年一般電気通信法」の改正法(法律第13879号)に署名した。概要は以下のとおりである。

2 1996年最小限法(Minimum Law of 1996、法律第9265/96号)

テレブラスの民営化に先駆け、1996年7月、移動体通信事業、衛星事業及び付加価値事業の自由化を規制した法律が制定された。テレブラスから移動体通信事業を分離すること、移動体通信事業を10の営業地域に分割すること、移動体通信事業への外資比率を49%に制限(1999年に外資比率制限は廃止)することが規定された。

3 2014年インターネット憲法(Civil Rights Framework for the Internet、法律第12965号)

2014年4月、ネット中立性や表現の自由、個人情報の保護等を規定した「2014年インターネット憲法」が成立した。同法では、インターネットの中立性に関して、電気通信事業者によるユーザへの料金や接続速度による差別化を禁止するとともに、特定のコンテンツ事業者への有償優遇措置を禁じた。

4 2018年個人情報保護法(Personal Data Protection Law、法律第13709号)

2020年9月18日、ブラジルの「個人情報保護法(Lei Geral de Protecao de Dados:LGPD)」が施行された。LGPDは、2018年5月に施行開始された「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」とほぼ同じ内容となっており、自由及びプライバシーに関する基本的権利(個人情報へのアクセス権、訂正権、アップデート権、削除権、ポータビリティ権、匿名化権、同意の撤回権等)の保護を目的として、個人情報の適切な取扱いを定めたものである(Ⅲ-5の項参照)。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)概要

「1997年一般電気通信法」によれば、電気通信サービスを実施するための免許は、サービスの機能(公的又は私的)に沿って交付及び規制される。公的な電気通信サービスは「concession」「permission」をAnatelによって付与されることで実施できる。一方、私的な電気通信サービスは「authorization」を付与されることで実施できる。

公的な電気通信サービスには、伝統的な固定電話サービスが含まれ、ユニバーサル・サービスの実施に関する義務及びサービス品質の確保に関する規則が課されている。私的な電気通信サービスには、移動体通信、ブロードバンド・サービス、有料放送、付加価値サービス等が含まれる。これらのサービスにはユニバーサル・サービス義務は課されていないものの、サービス品質規則が課されている。

2019年10月の「1997年一般電気通信法」の改正では、市場競争・設備投資を促進するため、「concession」から「authorization」への免許種別の変更を条件付きで認める条項が加えられた。

(2)外資規制

1999年7月に、電気通信分野での外資規制は撤廃された。現在、スペイン資本のテレフォニカ(Telefónica)、メキシコ資本のアメリカ・モビル(America Movil)及びテルメックス(Telmex)、イタリア資本のテレコム・イタリア(Telecom Italia)等がブラジルの電気通信市場に進出している。なお、基本的電気通信サービス免許は、国内法に基づき設立されたブラジル法人(議決権付き株式の過半数を所有)にのみ付与される(政令第2617号)。

2 競争促進政策

(1)民営化及び自由化

1998年4月に、「一般免許計画(1998 General Concession Plan:PGO、法律第2532号)」が発布され、固定通信市場の自由化に向けての具体的な内容が規定された。これを受けてAnatelは、それまで通信市場を独占していたテレブラスを市内電話3社、移動体通信8社、国際・国内長距離通信1社に分割再編した。

政府は、固定通信市場の民営化に際して、全国を三つの営業地域に分割し、各営業地域で旧テレブラス系の事業資産を引き継ぐ1社(concessionaire)に事業免許を付与した。1999年には、固定通信市場への新規参入を促す目的で、競争入札が実施された。これにより、各営業地域において、旧テレブラス系事業者と競争事業者(ミラーカンパニー)による2社競争体制が確立されることとなった。

2001年12月、政府は旧テレブラス系事業者に新規参入事業者との相互接続を義務付けた。2002年1月には、ブラジルの固定電話市場(市内電話及び国内・国際長距離電話)が完全自由化された。

一方、移動体通信市場は、全国を10の営業地域に分割し、各地域のテレブラスの資産を引き継ぐAバンド事業者8社と、新規参入事業者であるBバンド事業者8社に免許が付与された。これにより、地域ごとに少なくとも2社が競合する競争体制が確立された。また、Anatelは、更なる競争促進を目指し、2001年から2002年にかけてGSM及び3G用周波数オークションを実施した。その結果、30を超える事業者が移動体通信市場に参入することとなり、地域ごとに3~4社が競合する形となった。その後、2012年6月に4G用、2014年9月に700MHz帯、2021年11月に5G用周波数オークション等が実施され、新規参入の機会が増え、競争活性化が図られた。しかし、ブラジルの移動体通信市場は、経営力に劣る小規模事業者が淘汰される一方、海外資本によるグループ化が一層進み、2022年現在では自社で移動体通信網を保有する移動体通信事業者(Mobile Network Operator:MNO)は、テレフォニカ・ブラジル(Telefónica Brazil、ブランド名:Vivo)、クラロ(Claro)、TIMブラジル(TIM Brasil)、Oi、アルガー・テレコム(Algar Telecom)、Sercomtel、サーフ・テレコム(Surf Telecom)の既存7社に、2021年11月の周波数オークションで5G免許を取得したBrisanet Telecomunicacoes、Unifique、Copel Telecom、Cloud2 U、Winity Telecomの新規5社を加えた計12社となっている。

(2)仮想移動体通信事業者(MVNO)促進政策

Anatelは2010年11月にMVNO事業を解禁したが、MVNO市場が期待したほど活性化されていないことから、2016年3月、MVNO規則である「仮想通信網による個人向け移動体通信サービスの提供に関する規則(Regulations for the Exploitation of the Personal Mobile Service via the Virtual Network)」の改正を承認した。新規則では、規則に従わない、あるいは市場競争を阻害するMVNO事業者に対しては事業認可を取り消すこととした。また、Anatelは2020年10月、新たな規則を策定し、MVNOが複数のMNOとホールセール契約を締結し、MVNOサービスを提供することを可能とした。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

1998年5月、基本的電気通信サービスの提供を義務付ける「ユニバーサル・サービス化目標プログラム(General Program for Universalization Goals:PGMU)」が制定された。このプログラムは、元来、固定電話を提供する旧テレブラス系事業者に対するユニバーサル・サービスの達成目標を規定したものである。PGMUの達成目標は1998年以降、複数回にわたり段階的に改定が行われ、2018年12月には、Anatelは2017年から2025年までの「PGMU V」の達成目標を採択した。具体的には、都市部(住民数300人以上の自治体)において要請に応じた個人への電話サービス提供義務、学校や図書館、医療機関、警察署等の公共施設への電話サービスのアクセス提供義務、障がい者・低所得者に対する電話サービスの提供義務、農村部における公衆電話の設置義務等が含まれている。

また2019年1月に発効された「政令第9619号」では、通信事業者(concessionaire)は、公衆電話の代わりに、4Gや固定無線アクセス(FWA)等の基地局設置で代替することが可能となった。これにより通信事業者はこれまで課されていた、公衆電話を300mごと、かつ住民1,000人当たり1台以上設置するという義務から解放されることとなった。また、通信事業者は、固定通信基盤を必要とする1,473の自治体向けに2019~2023年末までに段階的に4G/FWA基地局を設置することが求められる。

2021年1月27日には、「政令第9619号」(2019年1月発効)を改正する「政令第10610号」が公布され、光ファイバ・バックホール整備に関する具体的達成目標が公表された。今回の政令では、2024年末までにすべての地方自治体に最低でも10Gbpsの速度での伝送が可能な光ファイバ・バックホールを整備することが示された。Oi、テレフォニカ・ブラジル、クラロ、アルガー・テレコムの4社は、下記のスケジュールに沿って、自費負担により目標を達成しなければならない。

(2)通信関連基金(Fust/Fistel/Funttel)の設立

現在、三つの基金が存在している。ユニバーサル・サービス基金(Fund for Universalization of Telecommunications Services:Fust)は、基本的電気通信サービスを確保するため、そのコストの一部を支援することを目的とした基金であり、通信事業者は月間収入の1%を負担することとなっている。

通信監査基金(Telecommunications Supervision Fund:Fistel)は、二つの税で構成されており、一つ目はSIMを初めて有効化した際に課税される導入監査税(Installation Inspection Fee:TFI)、二つ目は有効な各SIMに年間課税される運用監査税(Operation Inspection Fee:TFF)である。

通信技術開発基金(Telecommunications Technology Development Fund:Funttel)は、技術イノベーションの振興、人材開発等に用いられている。通信事業者は電気通信サービスの月間収入の0.5%を負担している。

(3)ブロードバンド政策

2014年8月、ルセフ大統領(当時)が「ブロードバンド・フォー・オール(Broadband for All)」プロジェクトを発表した。2019年までに全国5,570の自治体の約90%を光ファイバ網で結び、平均25Mbpsの高速インターネット・サービスを提供するとの目標を掲げた。

更に2016年5月には、「政令第8776号」に基づき、「国家ブロードバンド計画(National Broadband Program:PNBL)」の後継プロジェクトとなる「インテリジェント・ブラジル(Brasil Inteligente)」を開始した。同プロジェクトでは、2019年までに、20億BRLを投資して、70%の自治体(人口にして95%)が光ファイバ網にアクセスできる環境を構築する。インテリジェント・ブラジルの財源の一部は、2015年12月に実施された1.8GHz帯、1.9GHz帯及び2.5GHz帯の周波数オークションの収益から充てられた。また、同計画には、5G及びIoTに対する開発支援も含まれている。

MCTIC(当時)は2017年12月、今後18か月でルーラル地域を中心とした全国4万か所に無線接続ポイントを設置するプログラム「インターネット・フォ・オール(Internet for All)」を開始すると発表した。同プログラムは2018年1月よりサンパウロ州、アマゾナス州、サンタカタリーナ州の約300の自治体を皮切りに全国に拡大する。MCTIC(当時)が、無線接続ポイントの設置場所を選定し、自治体が費用を負担することになっている。

2019年6月には、Anatelが光ファイバ網への官民の投資を促すことを目的とした「電気通信ネットワーク計画(Plan for Telecommunications Networks:PERT)」プログラムを承認した。PERTでは、光ファイバ網の敷設が困難な地域では、衛星やその他の技術を使ったブロードバンド・アクセスを提供するために、官民の投資を推進する。

ブラジル政府は2021年9月17日、北部アマゾン地域の通信インフラ整備を目的とした、新たな「政令第10800号」を公布した。この「持続可能なアマゾン統合プログラム(Programa Amazonia Integrada Sustentavel:PAIS)」は、八つのプロジェクトが予定されており、ブラジル北部の59都市を接続し、約1,000万人の住民が恩恵を受けることになる。光ファイバ回線は、全長1万2,000kmに達し、環境負荷を低減するため、川底に敷設される。MCOMは、国防省(Ministry of Defence)、教育省(Ministry of Education:MEC)、保健省(Ministry of Health)、科学技術革新省(Ministry of Science, Technology and Innovations:MCTI)、Anatelと共にPAISを実施する。

その第1弾となる「Norte Conectado」プログラムによる全長770kmの光ファイバ網「Infovia 00」の敷設が2022年1月末に完了し、パラー州とアマパ州の住民100万人にブロードバンド接続を提供している。国立教育研究ネットワークRNP(Rede Nacional de Ensino e Pesquisa)がPAISの運営を担当する。

4 ICT政策

(1)国家IoT計画

ボルソナロ大統領(当時)は2019年6月、「国家IoT計画(National IoT Plan)」を制定するための「政令第9864号」に署名した。

国家IoT計画は、MCTIC(当時)や経済省、ブラジル国立経済社会開発銀行(National Bank for Economic and Social Development:BNDES)、民間企業、学界等が共同策定したもので、2018年3月に発表された「国家デジタル・トランスフォーメーション戦略(Brazilian Digital Transformation Strategy:E-Digital)」の柱の一つとして位置付けられる。E-Digitalは、向こう4年間に、デジタル化技術を最大限に活用してブラジルの生産性、国際競争力、収入・雇用水準の向上を実現して、すべての人に公正で豊かな社会の構築を目指すものである。

国家IoT計画ではIoT政策に関するガイドラインを策定した。この中で、センサ及びIoTデバイスを通信機器ではなく付加価値サービスに分類しており、これによりセンサとIoTデバイスはFistelへの納税が免除される。また、国家IoT計画の諮問機関として「M2M及びIoTの発展のための管理・監視評議会(通称IoT評議会)」を創設した。IoT評議会は、IoTソリューションの開発と利活用を促進するために、官民パートナーシップの促進や政策の提案、公共団体との連携等に取り組む。

(2)デジタル・サービス税

テメル大統領(当時)は2016年12月、「サービス税改正法案」に署名した。これにより、ブラジル国内ではネットフリックス(Netflix)やスポティファイ(Spotify)等のオンライン・コンテンツに課税することができるようになった。法律によれば、課税対象は「データ、テキスト、画像、動画、電子文書、アプリケーション、情報システムを対象とした情報処理、ホスティング」、並びに「ゲームを含むコンピュータ・プログラム、音楽、動画、画像等のインターネット上での開発あるいは提供」とされている。

2020年5月には、デジタル・サービスを提供する企業の売上げに対して課税する法案(法案第2358/2020号)が連邦議会下院に提出された。同法案は、ブラジルでデジタル・サービスを提供する一定規模以上の企業に対して、その国内での売上高に対して課税することを規定している。課税対象となるのは全世界売上高が30億BRL超かつ、国内売上高が1億BRL超の企業で、税率は国内の売上高に応じて3段階に設定されている。

徴収された税は国家科学技術開発基金(National Fund for Scientific and Technological Development:FNDCT)に蓄積され、デジタル分野のイノベーション推進等に用いられる。

なお、デジタル課税については、2021年10月8日にOECDで新たな国際的課税ルールについて最終合意に達した。136か国・地域が新ルールを支持し、ブラジルも合意に参加した。売上高が世界全体で200億EUR以上で、利益率が10%を超えるグローバル企業を対象に、これらの企業の売上高の10%を超えた税引前利益の25%を課税の対象とし、売上高に応じてサービスの利用者がいる国に配分するというもの。既に独自のデジタル税を導入している国は、2023年を目処に廃止する方向で準備を進める。

5 消費者保護政策

プライバシー保護

2020年9月18日、「個人情報保護法(LGPD)」が施行された。LGPDは、2018年8月14日に制定され、2019年7月9日の改正を経て、2020年8月16日に施行される予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応や、大統領による暫定措置の提出等により、施行が延期されていた。2020年8月26日、ボルソナロ大統領(当時)がLGPDを直ちに発効させる改正案に署名し、2020年9月18日にLGPDが施行された。

LGPDは、企業や公的機関が国民の個人情報を収集するに当たり明示的に本人の同意を得ることや、収集した個人情報に関して当人がアクセスする権利、修正や削除を要請する権利を規定している。

また、より高い保護水準を定めた「機微(センシティブ)データ」というカテゴリーを設け、人種、民族、思想信条、宗教観、健康状態等に関する情報については、本人の明示的な同意がない限り、商用に用いることを禁じている。

ブラジル人の個人情報の国外転送に関しては、転送先の国がブラジルと同等レベルの個人情報保護法制を有しているか、事業者が同等レベルの保護を保障する場合にのみ認められる。他方、ブラジル人の生命・健康の保護上で必要な場合、また、その他法令上の要請がある場合等正当な目的がある場合に限り、個人データの転用が認められる等の例外規定が設けられている。

罰則に関しては、法令を順守しない企業に対して年間売上額の2%、又は5,000万BRLのいずれか低い方の課徴金が課される。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

無線機器の基準認証は、「電気通信機器の基準認証及び適合証明にかかわる規則(附則、決定第242/2000号)」に基づき、Anatelが所掌している。Anatelは、基準認証証明機関(Designated Certification Organization:OCD)を指定し、検査及び証明書の発行等の業務を委託している。輸入される機器も、OCDの証明を受ける必要がある。認証の申請はブラジル籍の代理人又は代表者に限られる。また、OCDは認証を受けた製品の市場での適合性の監視も担当し、サンプリング調査等を実施している。

Anatelは認証機器を以下の3種類に分類し、認証された機器にはAnatelマークが付される。カテゴリーⅠ:電気通信端末機器、カテゴリーⅡ:無線通信機器、カテゴリーⅢ:その他通信装置である。また、Anatelは2002年に規則を変更して、認証のための試験は、ブラジルでの試験が不可能な機器を除いて、ブラジル国内の認定試験機関が実施する必要があるとの条件を付している。

承認を受けた機器の情報はAnatelのウェブサイト上で公開される。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

ブラジルでは従来の固定電話網(PSTN)に加え、VoIPやFWAによる音声通話サービスが提供されているが、近年、移動体通信サービスが急成長したこともあり、固定電話の契約数は減少傾向にある。

ブラジルの固定電話市場は近年、大型買収・合併が繰り返され、現在ではOi、テレフォニカ・ブラジル、クラロの既存電気通信事業者3社で8割以上のシェアを占めている。これら以外では、ミナスジェライス州を本拠地とする地域通信事業者のアルガー・テレコムが小規模ながらPSTNを提供し、またFTTxネットワークを介してVoIPを提供しているTIMブラジル等がいる。Anatelによると、2022年9月現在、固定電話市場シェアは、クラロが40.0%、Oiが25.0%、テレフォニカ・ブラジルが21.9%、アルガー・テレコムが4.2%、TIMブラジルが2.3%を占めている。

2016年6月、地場企業のOiがリオデジャネイロ州の裁判所に、同社及び子会社6社の会社更生手続の適用を申請した。負債総額は654億BRLとなり、ブラジルにおける過去最大の破たんとなった。2017年12月に、Anatelを含む債権者側は、Oiがリオデジャネイロ州の裁判所に提出した経営再建計画案を承認。2019年1月には、再建計画が実施され、第三者割当増資の過程で計32億2,600万株の新株が発行され、資金繰りに窮するOiに約40億BRLの資金をもたらした。

2 移動体通信

ブラジルの移動体通信市場は、5年連続で加入数が減少していたが、2020年には再び増加に転じ、Anatel によると、2021年12月末時点で加入数は2億1,966万に達し、回復基調を見せている。大手移動体通信事業者は、Fistelへの納税を回避するため、使われないまま眠っている膨大な移動電話のアカウントを遮断する措置を実施しており、この措置がプリペイド式移動電話の加入数に影響を与えている。2022年9月現在、プリペイド加入者の比率は45.6%に低下した。

移動体通信市場は、テレフォニカ・ブラジル、クラロ、TIMブラジルの大手3社で市場シェアをほぼ独占している。これ以外では、市場シェアが1%前後の小規模事業者が多数(アルガー・テレコム、Brisanet Telecomunicacoes、Sercomtel、サーフ・テレコム、Unifique、Winity Telecom等)存在する。Anatel によると、2022年9月現在、大手3社の加入者シェアはテレフォニカ・ブラジルが37.6%、クラロが33.4%、TIMブラジルが26.6%となっている。

2020年12月14日にOiの移動体通信事業がオークションにかけられ、最終的に165億BRLで落札された。落札したのは、テレフォニカ・ブラジル、TIMブラジル、クラロからなるコンソーシアムである。TIMブラジルは、総額の約44%を支払うことになり、これによりOiの顧客約1,450万人(全体の約40%)、49MHzの周波数(Oiが保有している周波数の54%)、7,200の基地局(49%)を保有することになった。テレフォニカ・ブラジルは、総額の約33%を支払い、顧客約1,050万人(29%)、43MHzの周波数(46%)、2,700の基地局(19%)を確保した。クラロは総額の約22%を支払い、顧客の32%と4,700の基地局(32%)を獲得した。司法再建裁判所はこの取引を承認し、4社は2021年1月に「株式の売買及びその他の誓約に関する契約」を締結した。2022年2月には、Anatel及び反トラスト規制当局である経済擁護行政委員会(Conselho Administrativo de Defesa Economica:CADE)がこの取引を承認し、同年4月までに売却手続が完了した。

移動体通信システムは、4Gが主流となっており8割以上の市場シェアを占めている。

5Gの動きとしては、2016年10月にクラロがスウェーデンのエリクソン(Ericsson)と共同で15GHz帯(14.7-15.1GHz)を用いて、同国初の5Gデモンストレーションを実施した。2021年2月にはAnatelが周波数オークション規則を発表したことから、5Gの実証実験が本格化。TIMブラジルは、華為技術(HUAWEI)やサムスン(Samsung)、台湾の半導体メーカーのメディアテック(MediaTek)、エリクソン等と提携し、5Gの実証実験を実施した。テレフォニカ・ブラジルは、ノキア(Nokia)やクラウド事業を手がける米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と提携し、クラウドベースの5Gの実証実験を行っている。また、Sercomtelは、ノキア及びブラジル農業研究公社(Embrapa)と提携し、ロンドリーナ(パラナ州)で5G試験を行い、自律走行トラクターやドローン、遠隔監視システム等が試された。2021年11月に5G周波数オークションが行われ、5Gの商用サービス展開がようやく始まり、同年12月には、アルガー・テレコムとクラロが、本オークションで落札された周波数を使用し、最初の5Gサービスを開始し、これより少し遅れて2022年3月と7月にTIMブラジルとテレフォニカ・ブラジルが5Gサービスを開始している。5Gから新規参入となるBrisanet Telecomunicacoes、Unifique、Copel Telecom、Cloud2 U、Winity Telecomは2023年までに商用サービスを開始する計画である。

MVNOを促進する政策が実施されているにもかかわらず、MVNO市場はまだ活気を帯びておらず、移動体通信市場全体におけるシェアはわずか1%弱にとどまっている。主なMVNOは、サーフ・テレコム、J. Safra Telecomunicacoes、America Net等である。一方、Datra Mobile、T-Systems Brasil等がIoT/M2M市場において一定の成功を収めている。

3 インターネット

固定ブロードバンド回線の主流はxDSL からFTTxに移っており、FTTxは中間所得層の拡大を背景に有料放送やインターネット配信サービスに加入するユーザが増え、シェアを伸ばしている。Anatelによると2022年9月現在、ブロードバンド技術で最も普及しているのはFTTxで、68.3%の市場シェアを誇る。2位は、シェア20.9%のケーブルモデムで、それ以降は6.7%のxDSL、3.4%のFWA、0.7%の衛星ブロードバンドと続く。

ISPは、ケーブルテレビ最大手NETセルビソス(NET Servicos)と固定通信エンブラテル(Embratel)を傘下に持つクラロを筆頭に、フランスのメディア大手ビベンディ(Vivendi)からGlobal Village Telecom(GVT)を買収したテレフォニカ・ブラジル、地場企業Oiの大手3社が、ブラジルのインターネット市場を支配している。Anatelによると、2022年9月現在、各事業者のシェアはクラロが22.7%、テレフォニカ・ブラジルが15.0%、Oiが11.9%となっている。これ以外では、移動体通信大手からFTTHプロバイダに転身したTIMブラジルや、地域事業者のアルガー・テレコム、Brisanet Telecomunicacoes、Desktop、Vero Internet、 Unifique等がいる。また、有料放送事業者のスカイ・ブラジル(Sky Brazil)が2.5GHz帯を利用したTD-LTEサービスを提供している。

2021年3月、テレフォニカ・ブラジルは、カナダ・ケベック州の投資信託銀行(Caisse de Depot et Placement du Quebec:CDPQ)と、ブラジルにおける光ファイバのホールセール事業を手がける新会社「FiBrasil Infraestrutura e Fibra Otica(FiBrasil)」を設立することで合意した。CDPQは、この合弁会社に対して18億BRLを投資した。テレフォニカ・ブラジルとCDPQは新会社の株式をそれぞれ50%ずつ保有する。FiBrasilはホールセール会社としてサンパウロ州以外の都市で光ファイバ・ネットワークを構築・運用し、地域のプロバイダに回線を提供する。4年以内に550万世帯分の光ファイバ・ネットワークを構築する計画だ。同様の取組みはTIMブラジルにも見られる。TIMブラジルは2020年12月にブラジルの光ファイバ事業を分社化し、新たにホールセール会社「FiberCo Soluções de Infraestrutura(FiberCo)」を立ち上げた。2021年3月には、FiberCoの売却に関して、通信インフラ企業のIHS Brasil Participaçõe(IHS)と交渉を開始し、2021年11月に取引が成立した。IHSはFiberCoの51%の株式を保有する。IHSは、新興市場に特化した通信インフラの大規模かつ多様なプロバイダであり、アフリカ、中東、ラテンアメリカの9か国で事業を展開している。

Ⅵ 運営体

1 Oi

Tel. +55 21 3131 2918
URL https://www.oi.com.br/
所在地

Rua Humberto de Campos 425, Leblon, Rio de Janeiro

RJ 22430-190, BRAZIL

幹部 Rodrigo Modesto de Abreu(最高経営責任者/CEO)
概要

リオデジャネイロに本社を置く総合通信事業者である。

総合通信事業者としての地位を強化すべく、2007年2月より全サービスについて「Oi」のブランド名を冠することとした。2008年9月に衛星放送免許を取得している。

2020年12月には移動体通信部門がオークションにかけられ、テレフォニカ・ブラジル、TIMブラジル、クラロからなるコンソーシアムに165億BRLで落札された。

2021年度の売上高は179億3,300万BRLであった。

2 テレフォニカ・ブラジル(旧Telesp)

Telefónica Brazil

Tel. +55 11 3549 7200
URL https://www.telefonica.com.br/
所在地

Rua Martiniano de Carvalho 851-17 andar

Sao Paulo 01321-000 BRAZIL

幹部 Christian Gebara(最高経営責任者/CEO)
概要

1998年にサンパウロで固定電話事業者として出発したTelespが、スペインのテレフォニカを主として編成されたコンソーシアムにより買収され、テレフォニカ・ブラジルとして市内・長距離電話及び国際長距離電話を提供していた。2006年1月の固定通信免許の更新により、有効期間が2025年12月31日まで20年間延長された。2011年3月、ジョイント・ベンチャーのパートナーであるポルトガル・テレコム(Portugal Telecom)からブラジルの移動体通信事業Vivo Participacoesの50%の株式を買収。2012年4月、ブランド再構築戦略の一環として、グループ企業を「Vivo」ブランドに統一した。2015年5月にブラジルで加入者数第4位の固定通信事業者であるGVTを買収したことで、市場シェアを飛躍的に伸ばした。

スペインの親会社テレフォニカがテレフォニカ・ブラジルの株式の74.20%を保有。2021年度の売上高は440億2,361万BRL。2021年12月末の加入者数は、固定電話が747万、移動電話が7,145万、インターネットが632万、有料放送が110万であった。

3 その他の主な事業者

事業者 URL 出資組織
クラロ https://www.claro.com.br/ アメリカ・モビル:98.5%
TIMブラジル https://www.tim.com.br/ テレコム・イタリア:67%
アルガー・テレコム https://www.algartelecom.com.br/ アルガーS.A.:100%

放  送

Ⅰ 監督機関等

1 通信省(MCOM)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

放送行政は通信省(MCOM)が所管する。MCOM内の放送事業局(Secretariat of Broadcasting:SERAD)が放送政策を担当している。ただし、公共放送機関EBC(Empresa Brasil de Comunicação)の監督については、社会コミュニケーション局(Special Secretariat for Social Communications:Secom)が行っている。Secomは、2023年1月のルーラ新政権の発足に伴い、MCOMから分離し、大統領府傘下へ移管されている。

2 電気通信庁(Anatel)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

通信、インターネット、ケーブルテレビの規制監督を行う、連邦政府から独立した機関である。

Ⅱ 法令

1 1962年ブラジル通信法(法律第4117号)

同法が放送に関する一般規則を定めている。

2 2008年公共放送法(法律第11652号)

公共放送機関EBCの設立に関して規定している。2017年3月、同法の一部改正(法律第13417号)が行われ、EBC会長の罷免権が大統領に移管された。これによりEBCに対する大統領の影響力が増すことになった。

3 2011年有料テレビ法(法律第12485号)

2011年9月、「1995年ケーブルテレビ法(法律第8977号)」に代わり「2011年有料テレビ法(法律第12485号)」が成立した。これにより、通信事業者はケーブルテレビや衛星放送等の有料放送事業に参入できるようになったほか、外資の参入も認められることとなった。2017年11月には、ブラジル連邦最高裁判所が「2011年有料テレビ法」の一部を無効とする判決を下し、衛星放送やケーブルテレビで外国製の広告放送が認められることになった。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

外資規制

地上テレビ・ラジオ放送への外資の参入は2002年まで禁止されていたが、2002年5月、政府は、国内に現地法人を持つ事業者が30%を上限に放送事業者の株式を保有することを認める決定を下した。ただし、「1962年ブラジル通信法」に基づき放送事業の代表者、編成責任者はブラジル国籍を有する者に限定される。なお、ケーブルテレビ事業への外資の出資比率はこれまで上限が49%に制限されていたが、「2011年有料テレビ法」で上限が撤廃された。

2 コンテンツ規制

すべてのテレビ番組はその内容に応じて放送の時間帯が制限されており、視聴可能最低年齢をテレビ画面に表示することが義務付けられている。また、「2011年有料テレビ法」では、放送内容について、午後6時から午前0時までのゴールデンタイムのうち最低週3時間半は国内制作の番組を放送しなければならないとしており、そのうち半分以上は放送事業者以外の制作とすることが定められている。

3 地上デジタル放送

ブラジル政府は、2007年12月に地上デジタル放送の本放送を開始した。ブラジル方式は、日本のISDB-Tをベースに改良が加えられたもので、ブラジル以外に、ペルーやアルゼンチン、グアテマラをはじめとする中南米諸国で広く採用されている。

地上デジタル放送移行計画では当初、2016年2月から地域ごとに順次アナログ放送を終了し、2018年11月までに全国でデジタル移行を完了する計画であった。しかし放送設備及び受信機器の普及が進んでいないことから政府は2016年1月に地域ごとの移行スケジュールを見直すことにした。

それによると、2016年2月にパイロット地区であるゴイアス州リオヴェルデ市でアナログ放送を終了する(実際に移行が完了したのは2016年3月)のを手始めに、2016年10月に首都ブラジリアとその周辺、2017年4月にサンパウロ大都市圏、2017年7月にレシフェ、2017年9月にサルヴァドールとフォルタレザ、2017年10月にリオデジャネイロ、2017年11月にベロ・オリゾンテ、そして2018年12月までにその他の主要都市でアナログ停波を完了する計画であった。しかし、多くの都市で、アナログ停波の基準となる地上デジタル放送の受信可能世帯の割合が90%に達していなかったため、アナログ停波が1か月程度遅れ、実際にデジタル移行が完了したのは2019年1月であった。なお、全土でのアナログ停波は2023年末を計画している。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2021年6月現在、約2万件を超えるラジオ局の放送免許が認可されている。FM局、AM局以外にコミュニティ・ラジオ局が多数存在する。よく視聴されているラジオ局は、公共放送機関EBCが運営するRádio Nacionalのほか、商業ラジオ局のRádio Globo、Jovem Pan等である。

デジタル放送への移行に伴い、地上放送に使用されていた76-88MHz帯がFM局に割り当てられた。FM局の帯域は76-107.9MHzに拡大。これにより、AM放送からFM放送へ転換するラジオ局が増えている。

2 テレビ

商業放送は、Rede Globo、Rede Record、SBT(Sistema Brasileiro de Televisão)、TV Band、RedeTV!の5大ネットワークが直営局と系列局を通じて全国放送を実施している。公共放送は、公共放送機関EBC傘下のTVブラジル(TV Brasil)により実施されており、ブラジル国土の約90%をカバーしている。同局の番組は地上テレビ、ケーブルテレビ、衛星放送等でも放送されている。この他の代表的な公共放送には、サンパウロ州営のTV Culturaや教育省が運営するTV Escola等がある。

3 衛星放送

Anatelによると、2021年9月末現在、有料放送の加入数数は1,444万である。クラロ、スカイ・ブラジル、Oiの大手3社で有料放送市場シェアの90%を占めている。プラットフォーム別では、DTHのシェアが57.4%、ケーブルテレビが33.4%、FTTHが9.1%となっている。

衛星放送はこの数年の間に新規参入が相次ぎ、クラロ、スカイ・ブラジル、Oi、テレフォニカ・ブラジル、GVT、Nossa TV等数十社が放送免許を受けてDTHサービスを提供している。スカイ・ブラジルは、ブラジルの複合メディア大手Rede Globoと米国のAT&T傘下のディレクTVラテンアメリカ(DirecTV Latin America)の合弁会社による衛星プラットフォームで、2022年9月現在の加入数は408万、有料放送市場でのシェアは28.3%となっている。

4 ケーブルテレビ

ケーブルテレビは、光ファイバへの需要の高まりに押され、加入数は減少傾向にある。アルガー・テレコム等をはじめとする小規模事業者の中には、従来のケーブルテレビや衛星放送に基づいた有料放送事業から撤退する者も出ている。代わりに、OTT等比較的安価なVODサービスへと移行する傾向が見られる。

ケーブルテレビ最大手はアメリカ・モビルで、同社はケーブルテレビ子会社のNETセルビソスと衛星放送子会社のクラロTV(Claro TV)を運営しており、両者を合わせた加入数は2022年9月時点で623万である。

Ⅴ 運営体

1 ブラジル・コミュニケーション会社(EBC)

Empresa Brasil de Comunicação

URL https://www.ebc.com.br/
幹部 Glen Lopes Valente(会長/Director-President)
概要

公共放送機関EBCは2007年に設立され、七つのラジオ局、TVブラジルのほか、国際放送のTV Brasil International、通信社のAgência Brasil等を運営している。2019年1月のボルソナロ政権発足に伴い、TVブラジルは同年4月に連邦政府の広報チャンネルNBRと統合され、新生のTVブラジルとしてスタートした。EBCの財源は、政府交付金、広告料、通信事業者の負担金である。EBCの2022年度予算は6億4,100万BRLである。

2 Rede Globo

URL https://grupoglobo.globo.com/
幹部 João Roberto Marinho(会長/President of the Board)
概要

ブラジルのメディア複合企業グローボ・グループ(Grupo Globo)が所有する地上テレビ放送事業者で、ラテンアメリア最大の放送事業者である。本拠地はリオデジャネイロで、1965年創業。地上テレビ放送は、五つの直営局及び122の系列局で、国土の98%以上をカバーしている。番組制作はテレノベラ(メロドラマに類似した連続ドラマ)が中心で、メキシコのTelevisaに次ぐ制作本数を誇っている。中南米をはじめ、世界各国の放送事業者に番組販売を行っている。

3 ブラジル・テレビ・システム(SBT)

Sistema Brasileiro de Televisão

URL http://www.sbt.com.br/
概要

テレビ番組司会者でもあるシルビオ・サントス氏が創設したGSS(シルビオ・サントス・グループ)が保有する視聴率第2位の放送局である。1981年に創設された。本拠地はサンパウロで、直営局8局と系列局104局で全国をカバーしている。

電  波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)通信省(MCOM)

2020年7月10日、MCTIC(当時)から分離する形で通信省(MCOM)が復活した。

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)電気通信庁(Anatel)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

「1997年一般電気通信法」に基づき、MCOMが策定する電気通信事業の基本政策の下に、周波数及び無線局を含む電気通信に関する管理・監視業務を所掌し、活動状況をMCOM及び国会に報告することになっている。

2 標準化機関

ブラジル規格協会(ABNT)

Brazilian Association of Technical Standards

Tel. +55 11 3017 3630
URL http://www.abnt.org.br/
所在地 Rua Conselheiro Nebias, 1.131 - Campos Eliseos - SP -01203-002 São Paulo, SP, BRAZIL
幹部 Mario William Esper(会長/President)
所掌事務

1940年に設立された。ブラジルを代表する標準化機関として国際的に認められた民間非営利団体であり、国際標準化機構(International Organiztion for Standarization:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Com­mission:IEC)、アメリカ標準化委員会(Pan American Standard Commission:COPANT)、メルコスール標準化団体(Mercosur Association of Standardiza­tion:AMN)、国際試験所認定協力機構(International Laboratory Accreditation Cooperation:ILAC)等の標準化業務を所掌している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

Anatelが独立規制機関として、「1997年一般電気通信法」に則った電波監理を実施している。周波数分配はITUの国際第2地域に対する分配に基づき行われている。Anatelは通信用及び放送用の周波数を管理している。

Anatelは2年ごとに周波数利用計画を見直すことが「1997年一般電気通信法」により定められている。

2 無線局免許制度

(1)免許手続等

周波数の使用認可に関する規定は、「1997年一般電気通信法」第163~169条及び「周波数使用規則」の決議第671/2016号(2016年11月3日)に定められている。主な無線業務における免許付与は、セルラー及びPCS(Personal Communications Service)は比較審査又はオークション、ブロードバンドはオークション、放送(ラジオ、テレビ)は比較審査、衛星システムは先願方式で実施される。

周波数リースについては、2019年10月4日に成立した「1997年一般電気通信法」の改正法(法律第13879号)により可能となった。

免許不要局については、「無線通信と制限された放射機器に関する規則(決議第365/2004号)」に規定されており、2.4GHz帯のWLAN等が認められている。本決議は、「第506/2008号」に改訂され、対象となる機器・周波数が追加されている。

周波数割当は周波数分配表に基づき、分野ごとに手順が定められている。

周波数の譲渡は認められていない。例外的に、電気通信サービス免許と同時の場合には、Anatelの承認を受けて、譲渡ができる。

(2)周波数オークション
①700MHz帯

2014年9月30日に終了した700MHz帯オークションは、クラロ、TIMブラジル、テレフォニカ・ブラジル、アルガー・テレコムの4社が落札し、落札総額が58億5,000万BRLとなった。

オークションにかけられたロット数は合計六つであったが、そのうちの二つのロット(ロット4及び6)が売れ残った。ロット1~3は全国免許、ロット4はロット5と6を除いた全国免許、ロット5はブラジル南部の4州にまたがる87の自治体を含む地域免許、ロット6はパラナ州の二つの自治体(ロンドリーナ及びタマラナ)を含む地域免許となっている。

ブラジルの700MHz帯のバンドプランは、10MHz幅×2単位の周波数ブロックとなっている。なお、700MHz低帯域の5MHz幅×2(703-708/758-763MHz)は、公共安全(Public Protection and Disaster Relief:PPDR)向けに既に割り当てられている。

700MHz帯の落札者は、地上デジタルテレビ放送との間の有害な干渉の軽減措置にかかわる費用に加えて、テレビ・チャンネルの再編にかかわる費用も負担しなければならない。

2018年8月に700MHz帯のすべてのテレビは移行を終え、すべての都市で移動体通信用として使用できるようになった。

②1.8GHz帯/1.9GHz帯/2.5GHz帯

2015年12月、Anatelは、ブロードバンドの普及等に向けた政府の財源確保の目的で、1.8GHz帯、1.9GHz帯及び2.5GHz帯に残された帯域に対するオークションを実施した。落札総額は7億6,270万BRLとなり、主な事業者別では、ネクステル・ブラジルが4億5,500万BRL、テレフォニカ・ブラジルが1億8,545万BRL、クラロが6,186万BRLとなっている。加えて自治体単位のロットCのオークションにおいては、324の事業者が参加し、落札総額は8,990万BRLとなった。

③5Gサービス用(700MHz帯/2.3GHz帯/3.5GHz帯/26GHz帯)

政府は当初2020年3月までに5G周波数オークションを実施したい意向を示していた。これを受け、Anatelは2019年7月に国内における5Gサービス展開計画の検討を開始し、5Gオークションの落札総額は約200億BRLに達するとされ、このうち、100億BRLは国庫に、残りの100億BRLは移動体事業者に対する投資義務及びカバレッジ義務を一部補償するために支出される予定とされた。

2020年1月、MCTIC(当時)は5Gに使用される700MHz帯、2.3GHz帯、3.5GHz帯、26GHz帯の周波数オークションのガイドラインを発表し、衛星放送と干渉する恐れがある3.5GHz帯については、適切な干渉軽減措置を導入することに言及した。

2021年9月には、Anatelが5G用周波数オークション規則を公開し、免許条件として落札事業者に以下の義務を課した。

5Gオークションは最初の計画から大幅に遅れて2021年11月に行われた。Anatelは最低入札価格を合計106億BRLと設定し、入札全体の推定価格は少なくとも497億BRLに達すると見積もっていたが、最終的に472億BRLとなった。

同オークションの対象は、700MHz帯、2.3GHz帯、3.5GHz帯及び26GHzで、事業免許は20年間有効。2.3GHz帯については地域ブロック免許のみとなるが、その他の周波数帯はすべて全国免許と地域ブロック免許に分けられる。

今回のオークションでは、既存通信事業者5社(テレフォニカ・ブラジル、クラロ、TIMブラジル、アルガー・テレコム、Sercomtel)と新規参入事業者5社(Winity Telecom、Brisanet、Neko Serviços e Comunicações and Entertainment and Education(2022年9月、事後的に免許取消し)、Consórcio 5G Sul(Unifique と Copel Telecomのコンソーシアム)、Cloud2 U Indústria e Comércio de Equipamentos Eletrônicos)がそれぞれ20年間有効の事業免許を獲得した。ただし、26GHz帯ではビジネスモデルの不確実性から売れ残りが生じた。売れ残ったロットについては改めてオークションが実施される見込みである。

3.5GHzの落札者は、2022年6月30日までにすべての州都及び連邦直轄区で5Gサービスを開始し、その後5Gサービス・カバレッジを順次拡大する必要がある(半導体不足、中国ロックダウンによる国際物流への影響、通関の遅れ等を理由に、Anatelは、3.5GHz帯での5Gサービスの開始期限を2度延期し、2022年11月28日までとすることを承認している)。2025年7月31日までに人口50万人以上の自治体、2026年7月31日までに人口20万人以上の自治体、2027年7月31日までに人口10万人以上の自治体、2029年7月31日までに人口3万人以上の全国の自治体、そして2029年12月31日までに人口3万人以下の全国の自治体で5Gサービスを提供することが求められる。

なお、Anatelは国内の5Gネットワークから華為製品を排除しない方針を示している一方で、政府専用ネットワークを構築する際には、調達先から華為製品が除外される可能性が高いことを示唆した。

④将来の周波数オークション

Anatel は2020年10月、Lバンドと呼ばれる1.5GHz帯の1427MHz-1518MHzを、将来の移動体通信システムのために確保することを明らかにした。

2021年2月には、6GHz帯(5925/7125MHz)を免許不要のWi-Fi 6Eアクセス用に開放する提案を承認した。Anatelによると、6GHz帯を免許不要のWi-Fi利用に割り当てることによって、2021年からの10年間で1,121億USD以上の経済効果がブラジルにもたらされる可能性があるとしている。

2022年4月には、5Gの追加周波数割当に関して、4.9GHz帯を候補に挙げ、パブリック・コンサルテーションを実施。現在、ポイント・ツー・ポイント通信や公安用・防衛用に使われている周波数を削減すれば、4.9GHz帯を解放できる可能性があると示唆した。協議は2022年後半に行われる予定。

3 周波数利用料制度

周波数利用料制度は、「周波数使用の使用権による公共費用の徴収規則」(決定第387/2004号)、「周波数使用規則」((決議第671/2016号)により一部改正)に規定されている。通信、衛星及び放送分野で電波を利用する場合、周波数利用料の支払義務がある。免許を取得した初年度のみの周波数利用料(Public Price Charges for the Right of Use of Radio Frequency:PPDUR)と毎年の電波監理経費が賦課される。通信衛星の利用に当たっては、衛星利用料(Public Price for the Right to Exploit Satellite:PPDES)がPPDURに代わって課せられる。ただし、防衛及び民間航空を目的とした利用や政府機関が利用するときは、周波数利用料が免除される。

4 電波の安全性に関する基準

Anatelは2002年の「決定第303号」によって電磁界ばく露にかかわる規制を行ってきたが、2009年5月には世界保健機関(World Health Organization:WHO)のガイドラインに基づく「法律第11934号」を定めて、人体の電磁界ばく露に関する制限値として国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の値を正式に採用した。また、同法はAnatelに対して、電磁界レベルの監視と制限値の順守を執行する権限を与えている。

2018年9月にAnatelは同法を改正し、Anatelがいつでも無線局のばく露レベルを検査しコンプライアンス報告書と矛盾があれば運用停止させることができることとし、その代わり出力5W以下の無線局については5年に一度の定期検査を不要とした。

Ⅲ 周波数分配状況

「周波数利用規則」第2章第158条により、Anatelが周波数分配表を策定、公表している。周波数分配表(2020年版)を掲載しているURLは以下のとおりである。