カナダ(Canada)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

Innovation, Science and Economic Development Canada

Tel. +1 343 291 1777
URL http://www.ic.gc.ca/
所在地 C.D. Howe Building, 235 Queen Street, Ottawa, Ontario K1A 0H5, CANADA
幹部 François-Philippe Champagne(大臣/Minister)
所掌事務

2015年12月にカナダ産業省(Industry Canada)から名称を変更した。

各種の産業振興政策や貿易管理等を所掌するが、情報通信分野に関しては、ICT振興政策の立案、基準認証、電波監理等を所掌している。

2 カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

Canadian Radio-television and Telecommunications Commission

Tel. +1 819 997 0313
URL https://crtc.gc.ca/
所在地 Les Terrasses de la Chaudière, Central Building, 1 Promenade du Portage, Gatineau, Quebec J8X 4B1, CANADA(Central Office)
幹部 Vicky Eatrides(議長兼最高経営責任者/Chairperson and Chief Executive Officer)
所掌事務

1985年制定の「カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会法(CRTC法)」により、電気通信及び放送に関する独立規制機関として設置された。主に料金審査、通信及び放送の規則制定、免許付与、紛争調停等を所掌する。

Ⅱ 法令

1 1993年電気通信法(Telecommunications Act of 1993

電気通信分野の基本法令で、電気通信関連法規の統合法(Consolidation Act)として成立した。同法のいずれかの規定が他の法律との間で矛盾を生じる場合、同法の規定が優先される旨を明確にしている。

2018年6月、政府は法制度の近代化を目的とし、電気通信法、放送法、無線通信法の見直しを開始した。放送及び電気通信立法審査委員会は2020年1月、見直しに向けた最終報告書を公開した。同報告書には後述の四つのテーマに関連する97の具体的な提言が含まれている。四つのテーマは、①すべてのカナダ人が高度な情報通信網にアクセスする際の障壁軽減、②カナディアン・コンテンツ(Canadian content)の創造、制作、発見可能性、③デジタル消費者の権利向上、④通信分野の制度的枠組の更新となっている。

政府は2022年6月、サイバーセキュリティを強化する目的で、電気通信法及び関連法を改正し、「重要サイバーシステム保護法(Critical Cyber Systems Protection Act)」(Ⅲ-4(4)の項参照)を新たに制定する内容の法案を下院に提出した。

2 1985年無線通信法(Radiocommunication Act of 1985

無線通信分野に関し、総合的な規定を設けている。2018年6月に開始した抜本的見直しについては1の項を参照。

3 その他の主な電気通信関連法令

法令 制定
カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会法(CRTC法) Canadian Radio-television and Telecommunications Commission Act 1985年
ベル・カナダ法 Bell Canada Act 1987年

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

電気通信事業者の事業運営資格は、「1993年電気通信法」第24条により、CRTCの課す諸条件の順守が条件とされている。

「1993年電気通信法」第2部第16条により、カナダ国籍の電気通信事業者は経営権の代表者及び取締役の80%がカナダ国籍を有することが義務付けられていたが、2012年6月、同16条に国内通信市場の売上シェアが10%未満の事業者に対しては外資規制を撤廃するとの規定が付加された。これにより、外資規制の対象はベル・カナダ(Bell Canada)、ロジャース・コミュニケーションズ(Rogers Communications)、テラス(TELUS)の3大事業者に限定された。

外国人によるカナダ国籍の電気通信事業者に対する出資比率は、「カナダ電気通信公衆事業者所有管理規制(Canadian Telecommunications Common Carrier Ownership and Control Regulations)」により、直接投資の場合は電気通信事業者の議決権付き株式の20%(間接投資を含めて46.7%)、間接投資の場合は電気通信事業者持株会社の議決権付き株式の33.3%までとなっている。

2 競争促進政策

相互接続要件は、市場の自由化に応じてCRTCが各市場を対象に発行する決定による。接続料金は、市場ごとにCRTCが発行する決定でその原則が提示される。

(1)卸売提供制度

2015年7月、CRTCは「Telecom Regulatory Policy CRTC 2015-326」を決定し、地域電話、テレビ放送、インターネット・アクセス等のサービスを提供するために事業者が用いる高速アクセス・サービスに対し、卸売提供制度を義務付け、現在の地域電話サービスや低速インターネット・アクセスを中心としたアンバンドルされたローカル・ループ(Unbundled Local Loop:ULL)の卸売提供制度は段階的に廃止していくことを明らかにした。

また、卸売料金については、CRTCは2016年に各事業者によって提案された卸売料金が合理的でないとし、暫定的な卸売料金の引下げを行った後、2019年8月にも、更なる競争促進と消費者への低価格でのサービス提供を目的として高速アクセス・サービスの卸売料金の引下げを命じたが、大手事業者等からの要望を受け、2021年5月に卸売料金の引上げを行い、2016年時の暫定卸売料金に調整を加えた値に変更している。

ISEDは2022年5月、インターネット及び移動体通信サービスにおける高すぎる利用料金の是正とサービス向上のため、移動体通信とインターネットに関する新たな政策方針案を発表した。CRTCに対しては、インターネット卸売市場への参入と競争の強化、移動体通信における競争拡大、消費者の権利向上、ユニバーサル・アクセスのための新しいインフラストラクチャの高速化、消費者をよりよく支援するためのよりよい規制の構築を目的とした規則の導入を求めている。

(2)MVNOへのネットワーク開放

CRTCは2022年10月、移動体通信市場の競争促進に向けたMVNO(Mobile Virtual Network Operator)に関する新規則を発表した。国内のどこかの地域で自社ネットワークを所有したうえで、他社ネットワークを利用してMVNO事業を行おうとする地域無線事業者に対し、大手移動体通信事業者のネットワーク開放を求めるもの。義務付けられる期間は7年間とされており、この間に地域無線事業者が自身のネットワークを整備・拡大することができるとしている。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

ユニバーサル・サービスの補助金の徴収・配分を実施する基金は、「1993年電気通信法」第46.5条でその基本的枠組が決定された。基金の運営者、運営方法及び拠出金額は同条(2)及び(3)に従いCRTCが定める。同法第46.5条により、全国拠出基金(National Contribution Fund:NCF)が設立された。

ユニバーサル・サービスの提供範囲については、2011年5月に発表された「Telecom Regulatory Policy CRTC 2011-291」の下、音声サービスとダイヤル・アップ・インターネットだけがその対象となっていた。しかし、CRTCは2016年12月、ブロードバンド・インターネット接続も基本通信サービスに含めることを宣言したうえで、ユニバーサル・ブロードバンド基金(Universal Broadband Fund:UBF)を設立し、5年間で総額7億5,000万CADを投資することを発表した。同基金は、50Mbps/10Mbpsの固定ブロードバンド・インターネットに接続できない地域向けのもので、2019年6月から、地域を限定して第1次申請受付を開始し、カナダ全土に対象を広げた第2次申請受付を2019年11月に、第3次申請受付を2022年11月30日に開始した。UBFは、2022年7月までに、3万2,655 世帯を含む 205 のコミュニティに対して 2 億 2,650 万CADを投資している。

(2)デジタル・ディバイド対策

政府は2014年7月、国家デジタル戦略「デジタル・カナダ150(Digital Canada 150)」(4の項参照)の一環として、デジタル・ディバイド是正のためのプログラムである「コネクティング・カナディアンズ(Connecting Canadians)」を始動させた。当初は2018年までに総世帯の98%が5Mbps相当のブロードバンドに接続可能となることを目標として掲げていたが、2016年12月には、すべての国民が50Mbps/10Mbpsのブロードバンド・サービスに接続可能になるという新たな目標が設定された。2019年3月には、2019年度予算の中で50Mbps/10Mbpsのブロードバンド・サービスへの接続率を2026年までに95%、2030年までに100%とする具体的な目標設定と今後10年間で50億~60億CADをルーラル・ブロードバンドに投資する実行計画を公表している。2020年10月、2026年までの目標値を95%から98%に引き上げている。

2018年6月、政府は「コネクティング・ファミリーズ・イニシアチブ(Connecting Families Initiative)」を発表した。今後5年間で1,320万CADを投資し、対象となる家族が月額10CADで高速インターネット・サービスにアクセスできるようにする。数十万人がインターネットにアクセスできるようになり、最大5万台のPCを対象の家庭に配布するとしている。2022年4月、「コネクティング・ファミリーズ 2.0(Connecting Families 2.0)」が開始され、月額20CADで200GBの通信量と50Mbps/10Mbpsのブロードバンド・サービスが利用できる新しいオプションが提供された。

(3)緊急通信

CRTCは各事業者に対して緊急通信に関する義務付けも実施している。2014年8月には、ケーブル及び衛星放送事業者、ラジオ放送事業者、地上テレビ放送事業者、ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス事業者に対して、2015年3月31日以降は市民に向けて警告メッセージを中継することを義務付けたほか、2017年4月には、2018年4月までに国内すべての移動体通信事業者が自社LTE網に無線公共緊急警報システムを導入することを義務付けた。更に2017年6月には、通信事業者に対して、次世代型緊急通信911「NG 911」を提供可能にするためにネットワーク整備を更新するよう指示している。通信事業者各社は、2020年6月末までに「NG 911」音声サービスの提供を開始し、同テキスト・メッセージング・サービスの提供を2020年12月末までに開始しなければならないとしていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けた通信事業者各社のネットワーク整備の遅れを受け、「NG 911」音声サービスの提供開始期限を2022年3月1日まで延長し、同テキスト・メッセージング・サービスの提供については今後の整備状況を見て設定するという決定を2021年6月に下している。

(4)通信障害対策等

政府は2022年9月、国内移動体通信事業各社が、大規模通信障害発生時に緊急ローミングやその他の相互支援を確保・保証する正式な合意に達したと発表した。同合意は、同年7月に発生したロジャース・コミュニケーションズの大規模通信障害を受けて結ばれたもので、移動体通信サービス、インターネット・サービスを提供する多くの通信事業者は、サービスの信頼性を保証するために多くの義務を負うことを約束し、事業者のうち1社で大規模な障害が起これば、他の事業者が通信を提供する。更に政府は、カナダ・セキュリティ通信諮問委員会(Canadian Security Telecommunications Advisory Committee:CSTAC)に対し、全国で信頼性の高い通信ネットワークを確保するための更なる対策を6か月以内に策定するよう指示し、ISEDにも適切な規制措置の見直しを指示している。

4 ICT政策

(1)デジタル国家戦略

政府は2014年4月、39種のイニシアチブを含む国家デジタル戦略である「デジタル・カナダ150」を発表した。同戦略は、ブロードバンド網整備(Connecting Canadians)、国民保護(Protecting Canadians)、デジタル経済(Economic Opportunities)、電子政府(Digital Government)、コンテンツ振興(Canadian Content)の五つの原則に従って構成され、カナダ人の98%以上が5Mbps相当のブロードバンドに接続可能となるほか、安全なオンライン取引、プライバシーの保護、サイバーいじめ(cyberbullying)の回避等を実現することが目指された。

2015年6月には「デジタル・カナダ150 2.0」が発表され、これまでの成果の概説と上記目的を達成するための新たな取組みとして、①ブロードバンド網整備、②国民保護、③デジタル経済、④電子政府、⑤コンテンツ振興を提示している。

(2)AI関連政策

政府は2017年3月、モントリオール、トロント、エドモントンの大学と連携して人工知能(AI)を開発する「汎カナダAI戦略(Pan-Canadian AI Strategy)」に1億2,500万CADを投入することを発表した。同戦略は、AI関連の研究開発に対する税制優遇や企業メンターシップ・プログラムと共に、カナダのAI産業を成長させる柱の一つとなる。2022年6月、同戦略の第2フェーズを開始しており、4億4,300万CAD以上を投資するとしている。

(3)デジタル・サービス税

政府は2020年10月、2020年秋の経済声明にて、デジタル・サービス税を課す方針を示し、2021年4月に発表した予算案において、オンライン・マーケットプレイスやソーシャルメディア・プラットフォームを運営し、オンライン広告で収入を得ている大手IT企業の収益に3%の税率を適用し、2022年1月より導入を予定していた。2022年10月のOECD合意(OECD加盟国を含む136か国・地域が2023年のデジタル課税導入を目指すことで合意)を受けて、国際協調的アプローチは尊重しつつも、同時並行で立法は進めるとし、条約が発効しなかった場合には2022年1月以降に得られた収益に対して2024年1月以降に遡及適用するとしている。

(4)ICTサプライチェーン安全化

政府は2022年5月、国家安全保障のために華為技術(HUAWEI)、ZTEの5G機器の使用を禁止すると発表した。すでに両社の機器を使用している事業者は、4G機器は2027年末まで、5G機器は2024年6月末までの撤去が義務付けられる。5G機器撤去費用の償還はされない。UKUSA協定(United Kingdom-United States of America Agreement)に基づく機密情報共有枠組であるファイブ・アイズ(Five Eyes)を構成する5か国のうち、米、英、豪、ニュージーランドは既に華為技術、ZTE製機器の使用を禁止していたが、カナダは中国との外交的緊張の中で延期していた。

政府は2022年6月、重要インフラを運営する国内企業に対し、サイバー攻撃被害を連邦政府に報告し、サイバーシステムを強化することを義務付ける「重要サイバーシステム保護法(Critical Cyber Systems Protection Act)」を下院に提出した。同法案は、電気通信法及び関連法の改正と併せて提出されたものである(Ⅱ-1の項参照)。同法案は、金融、電気通信、エネルギー、運輸セクターを国家安全保障及び公共の安全に不可欠なセクターに指定している。同法案は、国内通信システムをサイバー脅威から保護するための広範な権限を規制当局に付与し、また、電気通信事業者がリスクの高いサプライヤの製品・サービスを使用することも禁止している。

5 消費者保護政策

(1)迷惑通信規制

2008年に「迷惑電話お断りリスト(Do Not Call List)」制度が導入されたが、2015年までに120万の電話番号が登録されており、消費者からは同制度違反に対する90万件の苦情が寄せられている。このような状況を受け、CRTCは2016年11月、通信事業者に対して、未承諾の迷惑電話を遮断するための技術的な解決策を90日以内に導入するとともに、180日以内にフィルタリング・サービスの実施状況についてCRTCに報告することを要請した。

その後も、CRTCは2018年12月、2019年12月までに迷惑電話の遮断システムを実装するように通信事業者に指示した。通信事業者は、15桁以上の電話番号又はダイヤルが不可能な電話番号(例:000-000-0000)からの発信が受信者に達する前に遮断するようなシステムを実装しなければならない。ただし、より高度な通話管理機能を搭載した通話フィルタリング・サービスを既に提供している通信事業者は、この限りではないとしている。

更に、CRTCは2019年12月、発信者IDの偽装対策として、通信事業者に「STIR/SHAKEN (Secure Telephony Identity Revisited / Signature-based Handling of Asserted information using toKENs)」規格による認証枠組の導入を指示し、その監督機関として電気通信事業者によって構成される「Canadian Secure Token Governance Authority (CST-GA)」の設立を承認した。

(2)個人保護規制

2015年6月に「デジタル・プライバシー法(Digital Privacy Act)」が成立し、個人情報の収集、利用、公開について明確な規則が制定された。例えば、個人情報が紛失又は盗難された場合、当該組織は速やかに消費者に連絡する義務がある。データ漏えいの隠ぺい又は被害者プライバシー委員への通知を意図的に遅らせた場合には最高10万CADの罰金が課される。また企業は、子ども等の社会的弱者に対して、オンラインで個人情報を提供することによってどのような事態が起こり得るかについて明確でわかりやすい言葉で説明する義務がある一方、金融関係のトラブル追跡や負傷した子どもの保護者への連絡等、公共の利益が目的である場合には、所有する個人情報を他の団体と共有することができる。

更に2018年11月、国内で操業する企業に対して、あらゆるデータ流出について発見し次第、顧客とプライバシー監視当局に報告するよう義務付ける新規制が施行された。企業は、どのような個人情報がいつどのように流出し、どのような対策がとられているのかを被害を受けた個人に伝えなければならないほか、データ流出の記録を最低2年間保管しておかなければならない。これらを故意に行わなかった場合、最大10万CADの罰金が科せられる。

政府は2022年6月、「2022年デジタル憲章実施法案」を議会に提出した。同法案は、AIの責任ある開発と利用のための新規則を策定し、デジタル・プライバシー法を大幅に強化することを目的としている。同法案には、①「消費者プライバシー保護法案(Consumer Privacy Protection Act)」、②「個人情報・データ保護裁判所法案(Personal Information and Data Protection Tribunal Act)」、③「AI・データ法案(Artificial Intelligence and Data Act)」の三つが含まれている。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

電気通信端末機器に関する基準認証は、「1993年電気通信法」に基づき、CRTCが端末接続諮問委員会(Terminal Attachment Program Advisory Committee:TAPAC)の助言を受けて規格を制定する。無線機器については、「1985年無線通信法」によりISEDが技術基準(Radio Standards Specification:RSS)を策定する。無線機器及び通信端末機器の認証は周波数技術部の認証・技術室(Certification and Engineering Bureau:CEB)が担当する。

通信機器に関する国際的な流通を促進することを目的として、以下の諸国・国際組織と相互承認の枠組み(Mutual Recognition Arrangements/Agreements:MRA)を結んでいる。欧州共同体(European Union:EU)、欧州経済圏(European Economic Area:EEA)、欧州自由貿易連合(European Free Trade Association:EFTA)、スイス、米州機構(Inter-American Telecommunication Commission:CITEL)、アジア・太平洋経済協力(Asia Pacific Economic Cooperation:APEC)等。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

ベル・カナダを含むベル・カナダ・エンタープライズ(Bell Canada Enterprises:BCE)傘下の地域通信事業者、テラス、ロジャース・コミュニケーションズが全国レベルで固定通話サービスを展開しており、3大事業者とされる。そのほかには、マニトバ州を拠点とするBell MTS(旧MTS)、サスカチュワン州を拠点とするサスクテル(SaskTel)、ケーブルテレビ事業者であるショウ・コミュニケーションズ(Shaw Communications)、ビデオトロン(Videotron)やコゲコ(Cogeco)も固定通話サービスを提供している。

2 移動体通信

全国規模で事業を行う移動体通信事業者は3大事業者のベル・カナダ、テラス、ロジャース・コミュニケーションズである。そのほかには、ショウ・コミュニケーションズ傘下のフリーダム・モバイル(Freedom Mobile)、ビデオトロンが存在する。LTEサービスについては、ロジャース・コミュニケーションズが2011年7月、ベル・カナダが2011年9月、テラスが2012年2月からそれぞれ提供を開始しているほか、地域事業者もMTS(現Bell MTS)が2012年9月、サスクテルが2013年1月にサービスを開始している。フリーダム・モバイルは2016年11月にトロントとバンクーバーでサービスを開始、新規参入のビデオトロンは2014年9月にケベック州の主要4都市においてサービスを開始、同じく新規参入のエクスプロネット・コミュニケーションズ(Xplornet Communications(現在は買収を受けXplore Mobileとして別会社化))も2018年11月にマニトバ州でサービスを開始したが2022年8月にモバイル事業を終了している。CRTC調査によれば、2021年現在の全国におけるLTE人口カバレッジは約99%である。

商用5Gサービスについては、ロジャース・コミュニケーションズ、ベル・カナダ、テラス、ビデオトロンがサービスを開始している。

3 インターネット

世帯利用におけるインターネット接続方式はケーブルモデム接続が主流である。2021年現在、ケーブルモデム接続が全体の約48%を占めるも減少傾向、DSLも約21%で減少傾向の一方、FTTxは約24%と比率が高まってきている。

2022年現在の事業者別市場シェアは、ベル・カナダがトップとなっており、以下、テラス、ロジャース・コミュニケーションズ、ショウ・コミュニケーションズ、ビデオトロンと続く。

Ⅵ 運営体等

1 ベル・カナダ・エンタープライズ(BCE)

Bell Canada Enterprises

Tel. +1 888 932 6666
URL https://www.bce.ca/
所在地

1 Carrefour Alexander Graham Bell Building A, 4th Floor

Verdun, Quebec H3E 3B3, CANADA

幹部 Milco Bibic(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

国内最大手の情報通信総合グループBCEは持株会社であり、通信事業部門のベル・カナダ(オンタリオ及びケベック州を中心に全国展開)、ベル・アライアント(Bell Aliant、大西洋沿岸部)、ノースウェステル(Northwestel、北部地域)、テレベック(Télébec、ケベック州)及びノーザンテル(NorthernTel、オンタリオ州)等を通じて、固定通信、移動体通信、衛星通信、インターネット等の事業を総合的に展開している。

2010年10月に国内最大の商業放送事業者CTVを買収し、自社衛星放送サービス「Bell Satellite TV」及びIPTVサービス「Bell Fibe TV」と併せてメディア部門の事業拡大を本格化させた結果、2015年には子会社であるBell TVが国内最大のテレビサービス・プロバイダとなった。2021年現在、商業放送事業者ではBCEが最大手となっている。

2 テラス

TELUS

Tel. +1 604 432 2151
URL https://www.telus.com/
所在地 555 Robson Street, Vancouver, British Columbia, V6B 3K9, CANADA
幹部 Darren Entwistle(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

国内第2位の通信事業者であり、固定通信部門のテラス・コミュニケーションズ(TELUS Communications)や移動体通信部門のテラス・モビリティ(TELUS Mobility)等を通じて固定通信、移動体通信、インターネット、衛星及びIPTV等の事業をブリティッシュ・コロンビア州中心に全国で展開している。2010年6月にはFTTHサービス「Optik」の提供を開始し、自社有料放送サービスである「TELUS TV」と併せて、メディア部門の事業拡大を図っている。

3 ロジャース・コミュニケーションズ

Rogers Communications

Tel. +1 416 935 3532
URL https://www.rogers.com/
所在地 333 Bloor Street East, Toronto, Ontario M4W 1G9, CANADA
幹部 Tony Staffieri(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

移動体通信部門のロジャース・ワイヤレス(Rogers Wireless)、ケーブルテレビ・固定通信部門のロジャース・ケーブル(Rogers Cable)、メディア部門のロジャース・メディア(Rogers Media)を通じて、固定通信、移動体通信、ケーブルテレビ、インターネット等の事業を総合的に展開する競争的通信事業者である。

新規分野への参入も積極的に行っており、2016年3月に国内で初めて「IoT as a Service」を導入し、冷蔵庫やオーブンを自動的に監視・追跡する「Farm & Food Monitoring」や上下水の推移を測定・監視する「Level Monitoring」といったサービスの提供を発表したほか、2017年7月には消費者向けコネクテッド・カー端末の販売を開始している。一方、ショウ・コミュニケーションズと共同所有の定額制動画配信サービス「Shomi」は、2015年8月にサービス提供を開始したものの、ネットフリックス(Netflix)の勢力拡大の影響を受け、翌年11月に提供を中止した。

ロジャース・コミュニケーションズは2021年3月、ショウ・コミュニケーションズを約200億CADで買収すると発表した。電気通信市場第4位のショウ・コミュニケーションズを買収すれば、テラスを抜き、市場リーダーであるベル・カナダを急追することになるが、カナダ競争局は2022年5月、国内電気通信市場の競争減退につながるとして同買収の阻止を示唆。ロジャース・コミュニケーションズは同年6月、第4の全国規模移動体通信事業者の維持を目的として、ショウ・コミュニケーションズが子会社として所有するフリーダム・モバイルを、28億5,000万CADで競合相手のビデオトロンの親会社であるケベコア(Quebecor)に売却すると発表、同年8月には合意に至っていた。しかし、ロジャース・コミュニケーションズは同年10月に当局との和解に至らなかったことを公表し、同年11月より競争審判所での公聴会が開始している。

4 フリーダム・モバイル

Freedom Mobile

Tel. +1 877 445 8606
URL https://www.freedommobile.ca/
所在地 1 Adelaide Street East Suite 1400 Toronto, Ontario M5C 2V9, CANADA
概要

2008年のAWS帯オークションを経て、翌年12月に移動体通信市場に参入したウィンド・モバイル(Wind Mobile)が前身である。ショウ・コミュニケーションズが2016年3月に同社を買収し、同年11月に名称をフリーダム・モバイル(Freedom Mobile)に変更すると同時に、トロントとバンクーバーで LTE 及び LTE-Advanced(LTE-A)サービスの提供を開始した。

5 その他の主な事業者

事業分野 事業者 URL
固定・移動体通信 Bell MTS https://www.bellmts.ca/
サスクテル https://www.sasktel.com/
ケーブル等 ビデオトロン https://www.videotron.com/
コゲコ・コミュニケーションズ https://www.cogeco.ca/
ショウ・コミュニケーションズ https://www.shaw.ca/

放送

Ⅰ 監督機関等

1 イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送用周波数管理等を所掌する。

2 カナダ民族遺産省

Canadian Heritage

Tel. +1 819 997 0055
URL https://www.canada.ca/en/canadian-heritage.html
所在地 15 Eddy Street, Gatineau, Quebec K1A 0M5, CANADA
幹部 Pablo Rodriguez(大臣/Minister)
所掌事務

文化的アイデンティティ、多文化主義、言語、スポーツの普及等に関する政策官庁である。放送分野においては、関連政策の立案や国内コンテンツ産業の支援等を所掌している。

3 カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送分野においては主に以下の事項を所掌している。

Ⅱ 法令

1991年放送法(Broadcasting Act of 1991

第1章「総則」、第2章「放送に関するCRTCの目的及び権限」、第3章「カナダ放送協会」等から構成される。同法は、放送に関する基本原則、カナダ放送協会(CBC/Radio-Canada:CBC)の組織、役割、商業放送事業者等について規定していた「1968年放送法(Broadcasting Act of 1968)」を改正したものであり、「1968年放送法」と比較すると、内閣のCRTCに対する監督権限が強化されている。

政府は2022年2月、「放送法改正法案(通称オンラインストリーミング法案)」を提出した。改正案は「1991年放送法」を近代化するもので、動画配信事業者に対して、既存放送事業者と同様の規制を負わせ、CRTCの規制監督下に置くことを明記、国内外のどちらに拠点を置いているかにかかわらず、動画配信事業者はカナディアン・コンテンツの制作・配信・表示に貢献し、あらゆる動画配信制御システムにおいてカナディアン・コンテンツを発見可能とする結果が表示されるよう保障しなければならないとしている。下院は2022年6月に改正案を可決し、その後、上院は2023年2月3日に修正のうえ可決し、下院へ回付している。2018年6月に開始した、放送法改正を含む抜本的見直しについては通信/Ⅱ-1の項を参照。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

「1991年放送法」において放送免許取得事業者に課される義務が規定されている。CRTCが、ラジオ、テレビ、放送配信サービス(ケーブルテレビ及び衛星放送が該当)、ニューメディア放送(VODサービス等が該当)の各サービスに対し個別規定を設け、免許条件やコンテンツ制作基準等を規定する。

「1991年放送法」は「カナダの放送システムの所有者及び管理者はカナダ国籍でなければならない」とも規定しており、これが外資規制の根拠となっている。直接投資は20%(間接投資を含めて46.7%)まで、間接投資は33.33%までとされている。所有規制についてはCRTCが決定しており、1企業が同時に所有できるメディア事業者の数はテレビ放送事業者、ラジオ放送事業者、新聞社のうち最大二つまでで、1社で英語圏あるいはフランス語圏の視聴者占有率の45%を超えてはならない。

2 コンテンツ規制

文化保護政策の一環である「カナディアン・コンテンツ規制(Canadian Content Requirements for Radio and Television)」により、番組編成における国内制作番組の比率が定められている。カナディアン・コンテンツには、プロデューサーがカナダ人であること、制作コストの75%以上がカナダ人に支払われていること等の条件を満たした番組が該当する。商業放送事業者は1日の放送時間を通して平均60%以上(午後6時から12時までは50%でも可能)、CBCは時間帯を問わず60%以上を国内制作番組で編成することが義務付けられている。ラジオ放送では、一部の例外を除いて番組内容の35%以上をカナディアン・コンテンツにすることが定められている。

2018年8月、CRTCは国内の大手テレビグループに対する免許要件の再検討を促す政府からの要請を受け、カナダ文化保護政策の一環であるカナダ国産番組への投資について、その投資額を強化するよう要件内容を変更することを決定した。今回の変更内容は、国内クリエイティブ分野及び国内テレビ市場における多様性、安定性、及び競争力を守ることを目的としており、対象となるのは国産のフランス語番組、国益に資する英語番組、及び音楽等の短時間番組となっている。この変更は、2018年9月1日から2022年まで有効となる。

3 視聴者保護

消費者がテレビサービスを選択する際に、事業者から十分な説明を受け、問題が起きた場合も公平かつ効率的な方法で解決することを保証する行動規範「テレビサービス・プロバイダ規約(Television Service Provider Code)」が2017年9月にCRTCによって発効された。テレビ放送事業者は、「重要情報要約(Critical Information Summary)」や加入チャンネル及びパッケージのリスト、サービスの月額料金、契約期間、苦情の申出方法等を含む契約書の写しを加入者に提供しなければならない。紛争が生じた場合には、加入者は特別オンブズマンを通じて、テレビ放送事業者に対する苦情を提出することができる。

そのほか、2016年3月より、すべての番組配信事業者に専用端末がなくとも視聴できる月額25CAD以下の基本放送パッケージを提供することが義務付けられた。同パッケージには、地域の地上放送と教育や先住民向けといった公共性の高いチャンネルを含まなければならない。

4 緊急事態対策

2015年3月31日以降に自然災害等の非常事態が発生した場合、ケーブル及び衛星放送事業者、地上テレビ放送事業者、ラジオ放送事業者、及びVODサービス事業者は、市民に向けて警告メッセージを中継することが義務付けられている。

市民の生命や財産に危険が及ぶような非常時には、警告メッセージが消防、警察、公共保健機関等から発信されることになっており、このメッセージの中継は政府の委託を受けた民間放送事業者のPelmorex Weather Networks によって実施されている。

5 地上デジタル放送

2011年8月31日に商業テレビ放送の大半が地上デジタル放送に移行した。公共放送のCBCは財政的な理由により一部地域での移行が期日内に困難であったため、2012年7月31日まで期限が延長された後、移行した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

CRTCによると、2021年時点で、総計1,092系統でラジオ放送が実施されており、そのうち836系統が英語放送、217系統がフランス語放送、39系統がその他の言語での放送である。また、公共放送CBCは92系統、商業局はAMが121系統、FMが607系統、宗教局が26系統、コミュニティ局が130系統、キャンパス局が49系統、先住民向けの放送が51系統ある。

2 テレビ

2021年時点で、地上テレビ放送はCBCの27系統と商業放送の93系統のほか、宗教6系統と教育6系統で実施されており、そのうち全国放送は公共放送のCBCと商業放送のCTVが実施している。CBCは英語とフランス語の全国ネットワークを運用しているが、各ネットワークにはCBC直営局のほか、一部の商業放送事業者も加盟している。

このほか、フランス語圏のケベック州をサービス地域とするフランス語放送のTVA等に代表される地域放送事業者があるほか、どのネットワークにも属さない独立系商業放送事業者や州交付金で運営される州営放送事業者がある。

3 衛星放送

衛星放送は、ショウ・コミュニケーションズによるShaw DirectとBCEによるBell Satellite TV が、カナダのケーブルテレビ番組を中心に米国の番組を加えた内容でサービスを提供している。

4 ケーブルテレビ

2021年時点で、国内のケーブルテレビ加入者数は約409万、IPTVの加入者数は約431万、衛星放送の加入者数は約151万である。有料放送市場において長らく優勢だったケーブルテレビを、大手ケーブルテレビ事業者のIPTVへの切替え等を受け前年比40%増となったIPTVが追い抜いた。

Ⅴ 運営体

1 カナダ放送協会(CBC)

CBC/Radio-Canada

Tel. +1 613 288 6000
URL https://www.cbc.radio-canada.ca/
所在地 P.O. Box 3220, Station C. 181 Queen Street. Ottawa, Ontario, K1Y 1E4, CANADA
幹部 Catherine Tait(社長兼最高経営責任者/President and CEO)
概要

1936年に設立された公共放送事業者である。「1991年放送法」の規定に基づいて運営され、二つの全国テレビ・ネットワークと四つの全国ラジオ・ネットワークを運用している。言語は英語とフランス語のほかに、先住民向けに地域言語が用いられる。ラジオはAMとFMで英語放送及びフランス語放送を行っているほか、国際放送の「ラジオ・カナダ・インターナショナル(Radio Canada International:RCI)」、インターネット・ラジオ、移動端末向けの文字放送も行っている。2018年12月にストリーミング・サービス「CBC Gem」の提供を開始、無料の会員登録を行えば視聴可能だが、月額4CADを支払うとオンデマンド番組を広告なしで視聴できる。

2019年5月、新たな5か年計画「心に響く、あなたの物語(Your Stories, Taken to Heart)」を発表し、①カスタマイズされたデジタル・サービスの提供、②若年層に情報を届ける、③地域社会とのつながり深める、④現代カナダの多様性を反映する、⑤世界へカナダを発信するという目標を示している。

2 CTV Television Network(CTV)

Tel. +1 416 384 5000
URL https://www.ctv.ca/
所在地 299 Queen St. West, Toronto, Ontario M5V 2Z5, CANADA
幹部 Wade Oosterman(社長/President)
概要

CTVは、2011年4月に国内最大の通信事業者であるBCEによる完全買収が完了したことに伴い、BCE(通信/Ⅵ-1の項参照)傘下のBell Mediaの1部門となった。国内最大の商業テレビ・ネットワーク(英語放送)を展開している。20以上の加盟系列局や衛星放送局等で全国ネットワークを構成しており、英語圏世帯の99%をカバーしている。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)イノベーション・科学・経済開発省(ISED)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

電波監理は戦略政策局(Strategic Policy Sector)の通信政策部及び周波数・情報技術・電気通信局(Spectrum, Information Technologies and Telecommunications:SITT)が所掌する。

電波政策に関する諮問機関としてカナダ無線アドバイサリ・ボード(Radio Advisory Board of Canada:RABC)がある。RABCはカナダの製造、事業、放送等の無線通信関連の業界団体及び警察等の公共団体が加盟する機関である。周波数の利用と規制に関して、公平かつ専門的なアドバイスをISEDに対して行っている。

(2)カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2 標準化機関

ICT標準化諮問委員会(ISACC)

Information and Communications Technology Standards Advisory Council of Canada

Tel. +1 905 975 9219
URL http://www.isacc.ca/
所在地 3260 Charleton Ave Hamilton, Ontario L8N 3X3, CANADA
概要

ISACCは、国内及び国外のICT分野における標準規格の開発、実装及び促進に関して政府に助言を行う。ISACCの会員には、国内のICT分野における標準開発機関、関連業界団体、企業の代表者、消費者団体、政府関係者が含まれる。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

ISEDは、周波数割当方法として、先願方式(First-Come, First Served:FCFS)のほか、電波ニーズの状況に応じて、比較審査あるいはオークション方式を採用している。

軍への周波数割当についてもISEDのSITTが行うが、その目的のために軍から担当者が常駐している。これによって、周波数割当の権限をSITTに集約するとともに、軍の周波数の管理において必要となる専門的な知識を効果的に導入することが可能であるとしている。

放送免許はCRTCの管轄であるが、放送用の周波数割当についてはISEDが許可する。

1996年の「無線通信法」改正によって、地域と周波数帯(又は複数の周波数)のみを規定する周波数免許(Spectrum License)が導入されている。通常の無線局免許は特定の無線機及びアンテナを持つ局に与えられるのに対して、周波数免許では免許人が免許後に許容された範囲で設備等の変更が可能である。また、オークションで落札された周波数免許の場合には、その全部あるいは一部を第三者に譲渡することができる。FCFSで得た場合にはISED大臣の認可のある場合、譲渡が可能である。なお、通常の無線局免許は毎年更新する必要があるが、周波数免許の場合には10年を基本的な免許期間とする。

ISEDは、2018年6月に、2018年から2022年までの周波数開放計画(5G・その他業務を含む)をまとめた「周波数アウトルック(Spectrum Outlook)」を公表し、5Gに開放される周波数帯域とその時期を明らかにした。

2 周波数再編

(1)600MHz帯

ISEDは2017年8月4日、600MHz帯(614-698MHz)を商用のモバイル、固定、及び放送の業務への柔軟な利用のために再配分するため、コンサルテーションを開始した。600MHz帯のバンドプランは米国に準拠し、617-652MHz(下り)/663-698MHz(上り)の70MHz幅を再配分する。また、614-617MHzはガードバンド、652-663MHzはデュープレックス・ギャップとしている。

ISEDは、2019年3月12日から4月4日にかけて、600MHz帯(614-698MHz)オークションを実施した。割当計画では、5MHz幅×2(ダウンリンクとアップリンクのペア)を1ブロックとし、計7ブロックの70MHz幅(ダウンリンク:617-652MHz、アップリンク:663-698MHz)を、国内16地域において、それぞれ割り当てることとした(計112免許)。オークションには12事業者が参加し、うち9事業者が計104件を落札し、落札総額は34億7,032万8,000CADとなっている。免許事業者には、ネットワーク拡張義務として、サービス開始から5年後、10年後、20年後に達成すべき人口カバレッジが定められており、各地域で人口の疎密が異なるため、地域ごとにカバレッジが設定されている。

(2)3500MHz帯

ISEDは2018年6月、5G技術を支援し、地方を含む全国へのサービス展開を促進するため、3500MHz帯(3450-3650MHz)の改訂に関するコンサルテーションを開始した。また、今後再編される可能性のある3400-3450MHz帯及び3800MHz帯(3650-4200MHz)へのコメントも求めていた。その結果は2019年6月に公開され、同時に3500MHz帯(3450-3650MHz)オークションの方針及び免許制度に関する協議を開始した。

ISEDはCOVID-19の影響を受けて1年以上遅れていた3500MHz帯オークションを2021年6月に実施した。割当計画では、200MHz(3450MHz-3650MHz)の帯域幅を10MHz TDDブロックとして20分割し、172の免許地域ごとに割り当てた(計3,440免許)。21事業者が計3,431件(固定無線アクセス用の既存3400-3450MHz帯免許を、移動体及び固定5Gサービスに利用可能な免許として再編した「移行(transitioned)」免許1,936件を含む)を落札し、総額は約89億1,200万CADとなっている。

3800MHz帯(3650-4200MHz)のオークションについては、2023年6月に予定されている。

(3)ミリ波帯

ISEDは2017年6月、5Gの整備を支援するため、28GHz帯(27.5-28.35GHz)、37-40GHz、及び64-71GHz(免許不要利用)のミリ波帯の開放に関するコンサルテーションを開始した。ISEDは、2018年6月より追加での協議を行い、2019年6月にその結果を公表した。2022年6月には、26GHz帯、28GHz帯及び38GHz帯域に係るコンサルテーションを実施している。

Ⅲ 周波数分配状況