メキシコ合衆国(United Mexican States)

通信

Ⅰ 監督機関等

1 通信運輸省(Secretaría de Infraestructura, Comunicaciones y Transportes:SCT)

Secretary of Communications and Transportation

Tel. +52 55 5723 9300
URL https://www.gob.mx/sct
所在地 Av. Insurgentes Sur No. 1089, Nochebuena, Benito Juárez, C.P. 03720, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Jorge Arganis Díaz Leal(大臣/Secretary)
所掌事務

情報通信分野と交通運輸分野を所掌しており、電気通信分野では、政策の策定や、公衆電気通信網免許の付与及び取消しを所掌している。

2 連邦電気通信機構(Instituto Federal de Telecomunicaciones:IFT)

Federal Telecommunications Institute

Tel. +52 55 5015 4000
URL https://www.ift.org.mx/
所在地 Av. Insurgentes Sur No. 1143, Col. Nochebuena, Benito Juárez, C.P. 03720, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Javier Juárez Mojica(委員長代理委員/Commissioner)
所掌事務

2013年6月にペニャ・ニエト大統領(当時)が署名した「電気通信改革法(Decreto por el que se reforman y adicionan diversas disposiciones de los artículos 6o., 7o., 27, 28, 73, 78, 94 y 105 de la Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)」を根拠法とし、2013年9月に連邦通信委員会(Comfesion Federal de Telecomunicaciones:Cofetel)を引き継ぐ形で創設された。主な所掌事務は以下のとおりである。

3 連邦経済競争委員会(Comisión Federal de Competencia Económica:COFECE)

Federal Economic Competition Commission

Tel. +52 55 2789 6500
URL https://www.cofece.mx
所在地 Av. Revolución 725, Col. Santa María Nonoalco, Alcaldía Benito Juárez, C. P. 03700, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Brenda Gisela Hernández Ramírez(委員長代理委員/Commissioner)
所掌事務

根拠法は、2014年に可決した「連邦経済競争法(Ley Federal de Competencia Económica:LFCE)」である。市場への自由なアクセスと競争を維持し、独占行為、その他の市場の効率性を損なう行為の防止、社会福祉の増進を目的とする。

Ⅱ 法令

1 憲法改正

2013年6月、憲法第6条が改正された。同条改正によって、政府には、通信分野と放送分野における情報へのアクセスを保証することが義務付けられた。また、同条改正で、市場競争の促進、ユニバーサルなデジタル・インクルージョンの推進、自律的な監督機関の設置が規定された。

2 電気通信改革法(La Reforma en Telecomunicaciones de 2013

同法は、ニエト大統領(当時)が政権交代の際に示した「メキシコのための協約(Pacto por México)」に含まれる電気通信セクターの改革を定める法律である。2013年6月に成立した。同法の内容は以下のとおりである。

3 連邦通信放送法(Lay Federal de Telecommunicaciones y Radiodifusión

2014年7月に制定、翌8月に発効した。1995年に制定された「連邦電気通信法(Lay Federal de Telecommunicaciones)」と1960年に制定された「連邦ラジオ・テレビ法(Lay Federal de Radio y Televisión)」を置き換える法律で、周波数、公衆電気通信網、基幹網、衛星資源・衛星通信、電気通信と放送、融合サービスにおける公益性のあるサービス、利用者・視聴者の権利、競争と自由市場の導入の規律について定めている。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)事業免許

事業免許は、①収益目的の商業利用、②政府機関による公共利用、③非営利民間利用、④文化、科学、教育、コミュニティのための社会的利用の目的別に分類されている。事業免許が付与されるのはメキシコ国籍を持つ法人か個人となっており、事業分野別に事業免許を取得する必要がある。

電気通信分野と放送分野の事業免許を取得する際は、IFTに申請し、審査を受ける必要がある。IFTは、60日以内に審査を行い、申請内容が規定に合致している場合に事業免許を付与する。事業免許期間は30年である。

周波数と衛星資源にかかわる事業免許を取得する際は、IFTによる申請審査の後、競売が実施され、事業免許が付与される事業者が選定される。事業免許期間は20年間である。

(2)外資規制

経済協力開発機構(OECD)からの競争促進圧力を受け、「電気通信改革法」が制定され、通信分野の外資規制上限は撤廃された。また、放送分野においては49%までの直接投資が認められた。

(3)移動体通信のプリペイド・ユーザ登録規制

2009年4月より、犯罪防止のため、移動体通信のプリペイド・ユーザの登録規制が導入された。これにより、移動体通信事業者には、新規加入のプリペイド・ユーザの身元確認が義務付けられた。

2 競争促進政策

(1)自由化

旧国営事業者テルメックス(TELMEX)は、民営化の条件として、1996年8月まで長距離及び国際通信サービスを独占的に提供することが認められていた。その後、1997年1月、政府は長距離及び国際通信市場を自由化し、新規事業者に免許を付与した。1998年1月には市内通信市場も自由化され、電気通信市場の全分野での自由化が達成された。また、2005年8月には、通信設備を保有する事業者と再販契約を締結することで、長距離・国際通信市場への参入が可能となった。

(2)番号ポータビリティ

固定番号ポータビリティは、2008年7月5日から導入された。

(3)支配的事業者規制

2013年6月の「電気通信改革法」により、IFTが、その構成委員全員の任命から180日以内に新たに各市場の支配的事業者を特定し、適切な規制を導入することが定められた。

IFTは、2013年12月に国内及び海外の電気通信市場の集中度状況調査を開始した。移動及び固定電話、ブロードバンド接続、相互接続、テレビ、メディア広告、視聴覚コンテンツ市場が調査対象となる。本調査は、電気通信分野において自由競争を弱める、あるいは妨げる可能性のある市場集中が存在するかどうかを判断することを目的としている。また同調査は、特別な規制措置を必要とする事業者の違反に対する規則の決定と、違反事業者の特定を目指している。2014年1月、IFTは専用回線での国際長距離通話市場、及び専用回線相互接続市場において、固定回線事業者テルメックスとテレノール(Telefonos del Noreste:Telnor)が支配的地位を占めると認定した。2014年3月には、議会がIFTによる支配的事業者規制を承認した。これに対し、テルメックスを保有するアメリカ・モビル(América Móvil)は、同年4月に支配的事業者規制の差止めを裁判所に求めたものの、同年6月に棄却された。

(4)相互接続規則

2013年6月の「電気通信改革法」では、IFTに対して、その委員全員の任命から180日以内に市場で支配的地位にある通信事業者に対してネットワークのアンバンドリング要件を課すことを義務付けている。IFTは、2015年6月、支配的事業者であるテルメックスに対し、ローカル・ループ・アンバンドリング(LLU)を義務付けた。

なお、IFTは、ゼロ・レートを禁止していたが、アメリカ・モビルがこれを不服として提訴していた。この提訴に対して、メキシコ最高裁は、2017年8月、IFTは立法機関ではないとして、相互接続料金を設定するべきだとの判決を出した。これを受けて、IFTは、2017年11月に、アメリカ・モビルが他の移動体通信事業者に対して料金を課すことを認めた。併せて、IFTは、移動体通信事業者テルセル(Telcel)のネットワークにおける1分当たりの着信料金を0.029MXPと設定するとともに、テルセルが他社に対して支払う相互接続料金を1分当たり0.113MXPと設定した。同料金設定は、2018年1月1日から年末まで適用された。

(5)機能分離

IFTは、2018年3月、テルメックスとテレノールに対して、小売事業と卸売事業を2年以内に機能分離することを命令した。これは、支配的事業者に対する措置であり、親会社のアメリカ・モビルは、音声とブロードバンドへのアクセス、都市間・国際長距離専用線接続、基地局の共有も含めた基幹インフラへのアクセス等を提供する卸売事業部門を設立しなければならないものである。テルメックスからの法的異議申立があったものの、2020年3月に卸売会社としてレッドナシオナルウルティマミラ(Reunión Red Nacional Última Milla、テルメックス)とレッドウルティマミラデルノロエステ(Red Última Milla del Noroeste、テレノール)が設立され機能分離が実施された。

3 情報通信基盤整備政策

国家プロジェクトの「México Conectado」構想により、2019年7月現在、約10万1,000の公共施設で無料ブロードバンド接続が可能となった。対象の公共施設は、学校、公園、図書館、病院等であり、衛星や光ファイバを通じてブロードバンド接続が提供される。同プロジェクトでは、2018年までに合計25万の公共施設で無料のブロードバンド接続を提供する計画としていたが2019年に文教施設への重点整備に変更された。2016年7月SCTのGerardo Ruiz Esparza大臣(当時)は、予算削減のため、この構想が目指すインターネット普及にかかわる2016年時点の目標を達成できないことを認めた。なお、2017年11月時点で、SCTは、整備済みの10万1,000か所のブロードバンド接続拠点を、政府の新たな目標数値である12万か所(当初の25万か所から削減)に拡大するためには16億MXPが必要であり、整備した拠点の維持費は年間24億MXPとなるとして、この構想の2018年度予算を51億6,000万MXP請求し、48億MXPが承認された。また、後継プロジェクトである「Internet para Todos」について、2018年12月に、2019年度の予算として、合計11億4,500万MXPが請求された。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

1992年に成立した「標準化及び計測法(Ley Federal de Normalización y Metrología:LFMN )」が基準認証制度を義務付けている。基準認証制度は、国家標準(Normas Oficiales Mexicanas:NOM)に基づいて行われ、NOMの策定は「国家標準化諮問委員会(Comité Consultivo Nacional de Normalización:CCNN)」と各規格を担当する省庁によって行われる。1997年には電気通信についてはCCNN-T(las normas de Telecomunicaciones:CCNN)、放送・電報・郵便についてはCCNN-RTSP(los servicios de Radiodifusión, Telegrafía y Servicios Postale:CCNN)が分担することが決定した。CCNN-Tは電気通信、電波及び衛星、情報通信の三つの分科会で構成され、その委員はIFTが指名する。

IFTはNOM認証に基づき、電気通信端末機器及び無線機器の承認手続(Homologation)を実施する。

2010年8月からはWi-FiやBluetooth機器等のISM帯で運用するものについては、国内の認証試験機関による試験と非政府の認証機関である電子機器標準認証機関(Normalización y Certificación Electrónica:NYCE)の認証が可能となった。更に販売に必要なNOMを取得するためにはEMC及び安全性の認証をNYCEから取得することが必要である。申請者はメキシコ国籍を必要とする。

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

固定電話市場における主な事業者は、加入者数順で、テルメックス、メガカブレ(Megacable)、Bestel、モビスター・メキシコ(Movistar México)、アクステル(Axtel)等である。近年では、ケーブル事業者も固定通信市場に参入しており、トリプルプレイの一環として、電話サービスを提供している。なお、ケーブルテレビ事業者であるメガカブレ、トータルプレイ(TotalPlay)、カブレマス(Cablemas)、等は、VoIPサービスを提供している。

2 移動体通信

主な事業者として、テルセル、モビスター・メキシコ(スペインの大手通信会社テレフォニカ(Telefónica)傘下)、AT&Tメキシコ(AT&T México)、 ALTAN redes(2021年7月経営破綻し、2022年6月、連邦が株式の過半数を取得)がサービスを提供している。なお、LTE方式によるモバイル・データ通信は、2012年6月よりテルセルが、モビスター・メキシコが同年10月より開始した。

なお、2014年11月、米国のAT&Tがイウサセル(Iusacell)を25億USDで買収すると発表、翌2015年4月に買収を完了した。更に、AT&Tは2015年1月には中南米での事業拡大に向け、ネクステル(Nextel)を18億7,500万USDで買収すると発表、同年4月に買収を完了した。

その他、マックスコム(Maxcom)が国内初のMVNO事業者として2007年9月にサービスを開始したが、2017年末には加入者数がゼロになった。2011年10月には、メガカブレもモビスター・メキシコの通信網を利用してMVNO事業を開始したがその後撤回した。また、同月、ヴァージン・モバイル・ラテンアメリカ(Virgin Mobile Latin America:VMLA)もSCTからMVNO提供の認可を取得してサービスを開始したが、加入者数は減少傾向にある。近年、MVNO事業者の新規参入により競争が進展した。

3 インターネット

ブロードバンド接続方式は、ADSL接続からケーブルモデム接続や光ファイバによる接続へ移行しつつある。ADSL接続は、2002年にテルメックスがサービスを開始した。主要事業者としては、通信着業者はテルメックスやトータルプレイ等、ケーブル事業者はメガカブレ、カブレマス等がサービスを提供している。

Ⅵ 運営体

1 テルメックス(TELMEX)

Teléfonos de México

Tel. +52 55 5222 1212
URL https://www.telmex.com/
所在地 Parque Via 190, Colonia Cuauhtemoc, C.P. 06599, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Carlos Slim(社長/President)
概要

1990年12月に民営化された。同社は、1990年8月に政府と調印し、取得した営業権により、電気通信サービスを提供している。同社は、2015年5月には、500億USDを投資し、50万kmの光ファイバ網を5年間で整備する計画を公表した。そのほか、2018年7月現在、5,500か所でWi-Fiホットスポットを提供している。

2010年2月、アメリカ・モビルによるテルメックスの買収が認可され、間接的に同社の59.4%の株式をアメリカ・モビルが保有することにより同社の傘下に入った。その後、2011年8月、アメリカ・モビルは、未取得のテルメックス株式の取得を発表、同年11月に93%まで保有率を引き上げ、2022年6月現在では、98.8%の株式を保有している。

2 テルセル(Telcel)

Radiomovil Dipsa

Tel. +52 55 5625 3861
URL https://www.telcel.com
所在地 Av. Lago Alberto 366, Colonia Anahuac, C.P. 11320, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Daniel Hajj Aboumrad(最高執行責任者/CEO)
概要

アメリカ・モビルの完全子会社である。移動体通信市場における加入者数ベースでの市場シェアは2022年6月時点で首位である。

放送

Ⅰ 監督機関等

1 通信運輸省(SCT)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

放送分野では、周波数割当、事業免許の付与等を所掌する。

2 連邦電気通信機構(IFT)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

放送周波数帯の管理、免許付与を行う。

3 内務省ラジオ・テレビ・映画管理総局(Dirección General de Radio, Televisión y Cinematografía:RTC)

General Directorate of Radio, Television and Cinematography

Tel. +52 55 5140 80 00
URL https://www.gob.mx/segob/rtc
所在地 Roma #41 Col. Juárez Delegación Cuauhtémoc C.P. 06600, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Rodolfo González Valderrama(総局長/Director General)
所掌事務

番組内容の規制・監督、政府広報番組の制作・配給を所掌している。独自のレーティングシステム(AA、A、B、B-15、C、D)により映画やテレビ番組を評価し放送時間の制限をかけている。2006年、RTCは全国の放送局を監視していた九つの地域事務所を閉鎖し、メキシコシティの監視局のみになった。

4 教育省(Secretaría de Educación Pública:SEP)

Secretary of Public Education

Tel. +52 55 3601 7599
URL https://www.gob.mx/sep
所在地 República de Argentina 28, Col. Centro Histórico, Del. Cuauhtémoc, C.P. 06020, Ciudad de México, MÉXICO
幹部 Leticia Ramírez Amaya(大臣/Secretary)
所掌事務

放送番組の著作権保護や教育番組の制作、配給を所掌している。

Ⅱ 法令

1 連邦通信放送法(Lay Federal de Telecommunicaciones y Radiodifusión

1960年1月に施行された「連邦ラジオ・テレビ法」に代わり、「連邦通信放送法」が2014年7月に制定、翌8月に発効した。同法に基づき、IFTが放送分野を所掌する。同法に基づき、以下が規定された。

2016年6月に同法を改正し、先住民言語による放送を正式に認可した。なお、メキシコにおける先住民族の言語数は68とされる。改正以前の放送言語は事実上スペイン語に限定されていた。

2 メキシコ公共放送機構法(Ley del Sistema Público de Radiodifusión del Estado Mexicano

2014年8月発効。公共放送の拡充強化を図ることを目的として、公共機関メキシコ放送公共機構(Sistema Público de Radiodifusión del Estado Mexicano:SPR)の設置を規定している。

Ⅲ 政策動向

1 番組規制

放送内容は、「連邦通信放送法」で包括的な規制が行われている。その他、IFTやRTCも審査や規制を行う。

2 地上デジタル放送

2004年7月、地上デジタル放送に米国のATSC方式を採用することが決定され、テレビサ(Televisa)とアステカ(Azteca)は、2006年12月までに国内主要地域で地上デジタル放送を開始した。なお、ATSC方式の採用は、米国、カナダ、韓国に続いて、メキシコが4番目である。

2015年末には地上デジタル放送移行を完了した。ただし、人口の約1%程度の遠隔地域においてデジタル放送を受信できなかったため、2016年末までアナログ放送が継続された。なお、2010年10月に、商業局1局と政府系の6局にラジオのデジタル放送免許(IBOC方式)が付与された。

2014年7月の通信・放送事業に関する諸法令の改正により新規事業者の参入が可能になり、2016年10月にImagen Televisiónが開局し、全国放送としては約20年ぶりの新規参入となった。2017年12月には地方の13事業者に合計32チャンネルを付与した。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2019年7月末現在、全国でAM放送局とFM放送局を合わせて2,067局あり、商業放送事業者を主体としてラジオ放送を実施している。内容は、ニュース、音楽及び娯楽番組が中心である。主な放送事業者は、Grupo ACIR、Grupo Radio Centroである。

非商業事業者としては、1983年に教育省のメキシコラジオ機関(Instituto Mexicano de la Radio:IMER)が全国25局で放送を実施している。うち、4局がデジタルラジオ放送(IBOC方式)を行っている。

2 テレビ

全国放送は、公共放送5系統、商業放送6系統により実施されている。公共放送は、教育省と文化省の支援により1993年6月に設立されたCanal 22、国立工科大学が運営するCanal 11、教育テレビのTelevisión Educativa、メキシコ国立自治大学が運営するTV UNAM(2005年放送開始)、公共放送機関のSPRが運営するCanal 14(旧Una Voz Con Todos、2010年放送開始)で実施されている。なお、公共放送の財源は、政府交付金や寄付金である。

商業放送はテレビサが、Las Estras、Canal 5、Canal Nu9ve、Foro TV の4系統、アステカが全国放送のAzteca 1、Azteca 7とADN40、ローカ放送のa+7.2の合計4系統、イマーヘン・テレビシオン(Imagen Televisión)が1系統の放送を実施している。イマーヘン・テレビシオンは、2015年に入札を経て免許を交付された新規事業者で、2016年10月に放送を開始した。テレビサは、2016年2月にはOTT(Over The Top)サービスも開始した。

3 衛星放送、ケーブルテレビ等

1996年12月、旧ディレクTVラテンアメリカ(DirecTV Latin America)とスカイ・メヒコ(Sky México)が合併し、テレビサ(58.7%)と米国のDirecTV(41.3%)が共同出資したInnova社が運営するスカイ(Sky)がサービスを開始した。ラテンアメリカ最大の衛星放送事業者である。2008年11月にはディッシュ・メヒコ(Dish México)が参入した。

主なケーブルテレビ/MMDS事業者として、メガカブレ、カブレマスがある。メガカブレは、国内最大の独立系ケーブルテレビ事業者である。カブレマスは、テレビサの子会社である。テレビサ・グループは、カブレマスのほか、Cablevisión、Cablevisión Red、Cablecom、TVIの5社でケーブルテレビ事業を展開しており、5社の加入者総数は、メガカブレを上回る。

有料テレビ放送の加入者は、テレビサ・グループ(スカイ、Izzi)が最大のシェアを持ち、その他にディッシュ・メヒコ、メガカブレ等がある。

公共放送のCanal 11とCanal 22の国際放送の番組は、放送と同時にオンラインで無料配信している。加えて、Canal 11は国際放送の番組をオンデマンドで無料視聴できるサービスも行っている。

Ⅴ 運営体

1 テレビサ

Televisa

Tel. +52 55 5709 3333
URL https://www.televisa.com/
所在地

Av. Chapultepec #28 Cuauhtémoc C.P. 06724,

Ciudad De México, MÉXICO

幹部 Emilio Azcárraga Jean(会長兼最高経営責任者/Chairman and CEO)
概要

中南米の大手メディア企業テレビサ・グループ(Grupo Televisa)に属する地上テレビ放送事業者である。全国向け3系統と首都圏向け1系統の4系統を所有している。同社は、地上テレビ、ラジオ放送を実施しているほか、ケーブルテレビのCablevisión、カブレマス、衛星放送のスカイ・メヒコを運営している。海外展開にも注力しており、世界50か国で番組が放送されている。OTTサービスの利用が急成長する中、2016年2月に、OTT事業に本格参入し、有料サービス「blim」を開始した。

2 アステカ

TV Azteca

Tel. +52 55 5447 8844
URL https://www.tvazteca.com/
所在地

Periférico Sur 4121,Col. Fuentes Del Pedregal C.P. 14141,

Ciudad De México, MÉXICO

幹部 Rafael Rodriguez(最高経営責任者/CEO)
概要

金融機関等を経営するSalinasグループのメディア企業。国営放送インラビシオン(Inravision)の民営化に伴い、1993年に開局した商業テレビ放送事業者である。TV Azteca 1、TV Azteca 7とADN40の3系統により全国放送、a+7.2によりローカル放送の合計4系統を実施している。

電波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)通信運輸省(SCT)

(通信/Ⅰ-1の項参照)

所掌事務

無線通信分野では、政策の策定、オークション計画の承認、放送を含む無線局免許の付与等を所掌している。また、2006年4月の連邦電気通信法改正によって、放送周波数帯の管理もSCTの監督の下にCofetel(現IFT)が行うこととなった。2013年6月の電気通信改革法により、Cofetel(現IFT)に代わって独立規制機関として新設されたIFTに規制業務が引き継がれている。SCTは、IFTを拘束しない範囲での通信・放送の政策の提案、ユニバーサル・サービス・プログラムの実行、通信事業者と共有する700MHz帯の共用インフラの構築等を行うとされている。

(2)連邦電気通信機構(IFT)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

2014年7月14日に連邦通信放送法が制定(最新改正2018年6月15日)、同年8月から施行され、本法律の第1章において、IFTとSCTの役割分担が明確にされ、IFTは、電気通信と放送に関する規制制定・許認可、普及促進と競争の監視、周波数割当・免許・検査、通信インフラや端末の技術基準制定等、通信放送分野に関するほとんどの所掌を有する組織と規定されている。

2 標準化機関

電子機器標準認証機関(NYCE)

Standardization and Electronic Certification

Tel. +52 55 5395 0777
URL https://www.nyce.org.mx/
所在地 Av. Lomas de Sotelo No.1097 Col. Lomas de Sotelo C.P. 11200, Ciudad De México, MÉXICO
幹部 Gerardo Hernández Garza(会長/President)
所掌事務

経済省の標準局がメキシコの国家標準規格を管理する。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

電波監理はIFTが実施し、IFTは周波数分配表を管理する。周波数の免許や割当てについては、「連邦通信放送法」(以下、「法」とする)第3部及び第4部で規定され、IFTが発行する。同法第55条では周波数は(Ⅰ)免許を要する周波数、(Ⅱ)免許を要しない周波数、(Ⅲ)国際条約・協定等で保護される周波数、(Ⅳ)割当プログラム策定中の周波数の四つに分けられ、第56~58条に従い国が周波数割当計画を策定・公表・更新することとされている。また第59条により、毎年12月31日までにIFTは、免許を要する周波数帯の周波数の用途、分類、使用方法、地理的範囲を公表することとされており、追加・変更の意見のある利害関係者は30日以内に要求を提案することができる。

2 無線局免許制度

免許は、第66~74条に規定される無線サービス運用のためのシングル免許と、第75~98条に規定される周波数に対する免許があり、それぞれ、商業利用(公衆通信サービス、放送サービス)、公共利用(国、地方自治体、公的教育機関)、私的利用a(個人的な通信)及び私的利用b(実験・開発・試験やアマチュア無線のためで非商業的なもの)、社会的利用(コミュニティに対するサービス)の大きく四つに分かれている。

法第71条によりシングル免許はメキシコ国籍の個人又は法人のみが付与され、法人への外国資本の参加には憲法及び外国投資法の許可が必要、法第72条によりシングル免許の期間は30年で、延長可能である。

無線局免許は、商業利用又は私的利用aの免許期間は20年間、実験局等の私的利用bの免許期間は5年間、公共利用や社会的利用の免許期間は15年、いずれも延長可能である。無線局免許は、私的利用b、社会的利用や公共の無線局等を例外として、オークションによって交付される。法第77条によると、無線局免許は、メキシコ国籍の個人又は法人にのみ付与され、法人への外国資本の参加には憲法及び外国投資法の許可が必要である。ただし、放送サービスについては、国家外資委員会(National Investment Authorization Commission)の意見が必要となり、法令及び外国投資法によって定められた外国投資限度の順守を確認する必要がある。

また、商業利用又は私的利用aの周波数免許については貸与・譲渡が可能で、IFTへ申請を行い、認可を受ける必要がある。

2010年9月にフェリペ・カルデロン大統領(当時)はそれまで2021年に予定されていたテレビ放送のデジタル化を2015年末までに実施することを発表した。これによって生じる跡地周波数である700MHz帯を移動体通信用として、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)の周波数割当方式(703-748/758-803MHz)により、全国で利用可能なオープン・アクセス・ネットワークのオークションを実施した。当初2016年8月にSCTが落札者を公表する予定だったが、応札者からの問い合わせが想定以上に寄せられたほか、一部の国際的な金融機関がプロジェクト支援を希望していること等で状況が複雑化したとして、最終的な落札者の決定は2016年11月に延期された。一方、IFTは、AWS-1(1710-1725/2110-2125MHz帯)及びAWS-3(1755-1780/2155-2180MHz帯)のオークションを2016年2月に実施し、テルセルが310億MXPでAWS-1の20MHzとAWS-3の40MHzを獲得、AT&Tメキシコ(イウサセルの親会社)が127億MXPでAWS-1の20MHzを獲得した。モビスター・メキシコは自分の持つAWS帯周波数をAT&TメキシコのPCS帯(1900MHz)と交換する契約を交わし、オークションには参加しなかった。

IFTは、700MHz帯のオークション・プロセスの遅れに伴い延期されていた2500MHz帯オークションの実施について、2018年2月8日に詳細を発表した。2530-2570MHz、2650-2690MHzにおいて、10MHz+10MHzの20MHz幅FDD全国ブロックを四つ、2575-2615MHzにおいて20MHz幅のTDD全国ブロックを二つ、合計6ブロック120MHz幅のオークションが設定され、2018年2月13日から6月1日の申請期間、7月31日入札が開始された。免許期間は20年間、最低入札価格は各ブロック1件につき3億5,000万MXP、現在AWS、PCS又は2.5GHz免許を保有していない事業者には、インセンティブとして30%の付加ポイント、免許期間の2年延長可能性が設定されている。落札事業者には、落札から4年間で自己所有又はサードパーティの利用可能な周波数により、現在モバイル通信サービスが提供されていない人口1,000~5,000人の557地域のうち少なくとも200以上の地域及び五つの経済特区につながる幹線道路のサービス提供義務、落札から3年以内に自己の2.5GHz帯の周波数によって人口100万人以上の13都市圏のうち少なくとも10都市に対するサービス提供義務が課せられる。予定どおりオークションが実施され8月6日に終了し、AT&Tメキシコが2ブロックのFDD、2ブロックのTDDを合計14億MXPで、テレフォニカが2ブロックのFDDを7億MXPで獲得し、11月23日に事業免許が交付された。

IFTは、600MHz帯のテレビジョンバンド(614-698MHz)を5Gに割り当てることとし運用中のテレビ・チャンネルの移行を2018年3月に承認、10月に移行が完了し600MHz帯がクリアになったことを宣言した。

2021年1月、IFTは、800MHz、1900MHz、1.7GHz/2.1GHz、及び2.5GHz帯域の41ブロックの周波数で構成されるマルチバンド入札を実施する計画を発表した。同年9月に正式な入札が開始された。

AT&TメキシコはブロックA1(3億7,400万MXP)とブロックA5.01-A9.05(7億685万MXP)を獲得し、テルセルはブロックC1(2億7,000万MXP)を獲得したが、その他は不落であった。

2022年2月、IFTは「年次作業プログラム2022」を承認し、2022年後半に5G周波数オークション(対象は600MHz、1500MHz、3.3GHz、3.5GHz帯域)が予定されている。

3 電波利用料制度

法第100条~103条により、免許人からは免許取得、更新、変更の際に電波利用料を徴収することが規定されている。利用料は周波数帯、周波数幅、カバレッジ、免許の妥当性又は国内外の周波数帯の市場価値等を考慮して、IFTによって毎年再評価され、毎年改訂される「連邦手数料法(Ley Federal de Derechos)」によって規定される。

4 電波監視体制

IFTが周波数の監視と干渉被害の是正を目的とする電波監視部門を持ち、「全国電波監視網」を運営し、周波数の監視と干渉被害の是正、無線局の順法性の評価等を行う。監視は一つの固定局と10の移動局により実施される。

5 電波の安全性に関する基準

法第65条により、IFTが周波数のばく露の安全レベルを規制することになっている。メキシコにおいてはこれまで明確な電磁界ばく露に対する規制が整備されていないが、2015年7月、IFTはIFT-007-2015(100kHz-300GHzにおける人体への電磁界ばく露の制限への準拠に関する指針)のドラフト版を公表し、パブリック・コメントを行っている。人体への電磁界ばく露に関する制限値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の値を採用している。このときに提出された意見を基に、この規定を、無線局の最大ばく露限度を規定する規定(IFT-007-2016)と、電気通信システムに接続する携帯端末の特性や測定法に関する規定(IFT-012-2016)の二つに分けて、2016年12月13日再度パブリック・コメントにかけられた。提出された意見を基に文書を検討し、無線局と端末に対するものに分けてIFT-007-2018、IFT-012-2018として発行する準備を進めている。パブリック・コメントは終了したが、2022年10月末時点で、正式な発効には至っていない。

Ⅲ 周波数分配状況

IFTが周波数分配表を策定し、以下のURLで公表している。