第百四十五回国会衆議院会議録

平成11年1月21日(木曜日)

○中井洽君 私は、自由党を代表し、我が党の考え方を重点を絞って申し上げ、総理並びに関係大臣に御所見をお伺いいたします。

 この1月14日、私たち自由党と自民党との連立政権がスタートいたしました。昨年の11月19日の小沢、小渕両党首の会談以来、約五十日間両党間で政策協議を重ね、合意を得、連立内閣がつくられました。その連立内閣の施政方針演説に対し自由党を代表して質問することは、私にとり、まことに感慨深いものがあります。

 小渕総理並びに我が党の小沢党首初め関係者に心から敬意を表し、とりわけ自由党を代表して入閣された野田自治大臣にお祝いを申し上げますとともに、今後とも、私たちと一緒に、改革の政策実現に向け御努力いただきますようお願いいたします。

 私は、自由党が今度の連立政権に参加した思いや、その意義について申し上げたいと思います。

 この数年間、私どもは、日本の経済や社会等が直面している危機は、一時的なものではなく、明治以来日本を支えてきたシステムが全く機能せず、冷戦構造の崩壊後の世界や、すさまじいスピードで進むすべての面での国際化に対応できずにいることが原因だと主張し続けてまいりました。かつてない危機に直面している日本を救い、二十一世紀への新たなスタートを切るためには、大胆な構造改革がどうしても必要であり、従来の発想を捨て、すべての面での改革を行わなければ、この国家的危機を突破できないと訴えてまいりました。

 しかし、私どもの主張はなかなか相入れられず、一時的なびほう策や、その場しのぎの対応が政府の手で繰り返されてきました。その結果、莫大な税金を投入しながら効果が上がらず、かえって社会のあらゆる面での閉塞感がますます強まり、経済の停滞と不況の長期化はさらに深刻化し、国民の生活と雇用を直撃しているのであります。

 こういう状況になって、昨今ようやく日本社会全体に危機意識が浸透し、だれもが大胆な構造改革の必要を主張されるようになってまいりました。私は、遅きに失した感じがないわけではありませんが、今が日本にとって最後の改革のチャンスだと思います。

 私どもは、社会のあらゆる分野での構造改革を断行し、この国を仕組みから立て直す政策大綱を、日本再興へのシナリオとしてまとめています。今日の危機にいち早く警鐘を鳴らし、抜本改革を言い続けた我が党の基本政策の実現こそが、二十一世紀の日本の新たな繁栄を築くために必要であります。我が党は、かねてから基本理念、政策について一致するならばどの党とでも協力すると申し上げてまいりました。今回の連立合意は、まさに私どものこの精神を生かしたものであります。(拍手)

 小渕総理を初め自民党の皆さんが、今日の日本の危機克服を政党、政治家の使命と責任として自覚され、日本再興のために構造改革に我々と一緒に取り組む決意を示されたのであります。そのあかしが今回の政策合意であります。

 今回の合意だけでなく、自由党は自民党と力を合わせ、この国の仕組みを立て直す構造改革を今後ともに実行し続けてまいります。それによって日本経済を再生させ、国民に自信と誇りを取り戻し、二十一世紀への新たな繁栄の基盤を築いてまいります。自由党と自民党の連立政権の歴史的意義はこの点にあると私は確信いたします。(拍手)

 五十日間の自民党との政策協議のうちで、制度、政策面では、政府委員制度廃止と副大臣、政務官制度の導入、衆議院議員定数の五十名削減、大臣数二十名を十八名への削減、自衛隊の海外での国連の平和活動参加の基準等が合意されました。

 予算編成や税制改革では、消費税の使途を基礎年金、老人医療、介護目的に限定することを予算案の総則に明確に書き入れさすことができました。六兆円規模と言っていた減税額を、我が党の主張を入れ、九兆円を上回る思い切った減税案が今国会に提出されます。公共事業の大幅な増加と集中化が図られます。介護制度についての検討、消費税率のあり方については引き続き協議することとしています。

 これらは、予算の骨格がおおむねつくられた11月の終わりから予算編成終了時までの短期間で、私どもと自民党との協議で合意をいたした点であります。連立に対する御批判はいろいろと耳にしないわけではありませんが、過去の連立政権と比較にならないほど、政策の合意優先の連立政権を我々はつくり上げたと自負いたしております。(拍手)

 これからも明確なビジョンに基づき、国のすべての面で大胆な改革を実行するため、自民党と自由党は、誠心誠意政策を論議し、改革を今までにないスピードをもって断行していくことが必要です。一日も早く国家の危機を乗り切り、二十一世紀、安心と誇りを持って、日本が世界の中で繁栄できるよう頑張らなければなりません。

 以上述べました連立政権の意義について、総理並びに野田自治大臣の御所見を承ります。

 両党間で合意いたしました政府委員制度の廃止と副大臣、政務官制度の導入について申し上げます。私は本プロジェクト協議の自由党側の座長でありました。いずれ両党間で議員立法を提出し、国会での審議をお願いいたしますが、ここで詳しく申し上げてみたいと思います。

 まず、政府委員制度を完全に廃止することを合意いたしました。ただし、内閣官房副長官や、制度上大臣でもって答弁できない人事院総裁、公正取引委員会委員長並びに公害等調整委員会委員長は国会答弁できるものとします。

 また、執行状況や技術的説明のため、国会側からの要求により政府職員を参考人(仮称)として出席させることができることとしますが、この参考人は従来の政府委員や参考人とは全く違ったものと考えております。また、政府側が参考人(仮称)を準備し、大臣にかわって答弁さすことは一切いたしません。実施は、本百四十五国会の次に開かれる国会からで合意いたしております。

 次に、副大臣制度、政務官制度についてであります。

 複数の副大臣を設置します。副大臣はラインという位置づけで、認証官とし、各省大臣の命を受け、政策及び企画を担当し、政務を処理し、あらかじめ各省大臣の命を受けて、大臣不在の場合その職務を代行するものとします。次いで、政務官ですが、これも複数置きます。立場はスタッフです。政務官の職務は、各省大臣の命を受け、特定の政策及び企画に参画し、政務を処理するものとします。政務次官制度は廃止であります。各党の御理解を得まして、副大臣、政務官とも国会での答弁を可能にしたいと考えております。実施時期は2001年1月1日の省庁再編の実施時期とします。

 また、政府委員が廃止されてから2001年1月1日までの経過措置としまして、各省庁に四人以内の政務次官を置くものとします。そのうちの一人を、大臣の命を受け、政策及び企画を担当し、政務を処理し、並びに、あらかじめ大臣の命を受けて、大臣不在時にその職務を代行するものとします。政務次官は、各党の御理解を得て、国会での答弁を可能にします。

 これらの合意を早期に一本の議員立法にまとめて、国会に提出いたします。同様趣旨の法案を提出されている野党もある状況から見て、早期に成立をお願いできると考えています。この改革に基づき、どういう形の本会議が、またどういう委員会のありようが考えられるか、各党に真剣に御検討をお願いしなければなりません。

 国民の皆さんには、国会内の運営、ルールのことですので、なかなか御理解いただけないかもしれません。明治以来我が国国会を支配してきた官僚主導の国会論議や立法のあり方を、選挙で選ばれた政治家が本来の仕事として行うという大改革になります。自由党と自民党の連立政権は、この一点をとっても、大変大きな改革をなし得ると確信いたしております。(拍手)

 与野党が政策について国会で真摯な論戦を闘わせ、立法をしていく姿が本来の国会のあり方であります。国会が改革されて初めて、国民が政治に対する信頼を回復してくれると考えています。また、この改革は、与党のあり方や体質、党内政策決定の仕組み等、すべての面での改革を必要といたします。総理は施策方針演説において、この改革で迅速な政策決定を可能にしたいと申されました。この制度改革に合わせた与党の体質改善をどのようにお進めになるお考えか、お尋ねをいたします。

 次に、経済財政問題について幾つか申し上げます。

 先ほど申し上げました予算、税制の合意のほか、今予算では、景気対策として住宅、設備投資促進税制の整備や少子化対策税制の重視が実現を見ました。また、我が党のかねてよりの主張である連結納税制度の導入の端緒が開かれましたこと、また、自由党が中心となって取りまとめた中小企業向け貸し渋り対策のさらなる充実をもスタートさせることができました。当面の景気対策という意味において、まさにやるべきことはすべて網羅した予算案であると言えます。

 我が党は、政治改革と今回の予算案、税制改革とで本年度の日本経済がプラス成長に転じるものと考えておりますが、一方、まだまだ油断のできない状況も数多く見られます。さらに国際化する世界経済は相互依存の度合いをますます深めており、昨年のロシア経済の混乱、昨今のブラジル運賃切り下げ、変動相場制への移行など、海外の景気経済動向が我が国に与える影響には十分注意を払っていかなければなりません。

 平成11年の日本経済が国内外の諸情勢の変化によりさらに落ち込むようなことがあった場合、消費税の一時凍結のような、旧来の手法にとらわれない大胆な政策が必要と考えます。私どもは自由協議の中で、消費税のあり方については引き続き協議すると確認しておりますことはこういった意味であるということをあえて申し上げ、総理の御意見をお尋ねいたします。

 また、本年から欧州諸国はその仕組みを大きく変えようとしております。五〇年代初めの欧州石炭鉄鋼共同体に始まり、欧州経済共同体、EECを経て、一つの欧州を目指してきた欧州連合、EUの歩みは、単一通貨導入によってさらに深い統合の段階に入ったのであります。巨大な経済圏を持つユーロの導入は、世界経済に重要な影響を与えることになります。参加各国の国内総生産は世界の二三・七%、アメリカの八割、日本の一・五倍であり、ドルに次ぐ国際通貨となり、英国などがさらに加われば、アメリカをも上回る規模となるのであります。

 小渕首相は、ことし初めの仏独伊三カ国訪問で、国際金融システムを強化するため、円、ドル、ユーロによる三極通貨体制の構築を提唱されましたが、今後、日米欧の通貨・金融政策での協調体制を強化していくことは、世界経済の安定にとって重要であります。政府は、政府短期証券の公募入札発行、一年短期公債の導入や、非居住者に対する国債利子課税の優遇措置など、円の利用拡大のための対策を進めようとしておりますが、円の国際化をさらに進めるとともに、当面最大の課題である景気回復と金融システム再生を速やかに実現し、日本経済への国際的な信頼回復に全力を挙げるべきであります。

 ユーロ発足直後のヨーロッパを視察された御所感と、国際金融システム改革に向けての御決意をお伺いいたします。

 次に、自由党の中長期的な構造改革の構想を申し上げます。

 第一に、本気で行政改革に取り組むことであります。

 行政改革の本質は規制の撤廃にほかなりません。同時に縮小した権限を地方に移譲し、役所の仕事を減らして、スリムで効率的な政府を構築すれば、国、地方の歳出をカットして、行革減税の財源とすることが十分可能であります。例えば、国の事業補助金は廃止して、公共事業一括交付金として地方自治体に交付し、真に必要な事業が効率よく行われるようにすると同時に、受け皿となる地方自治体の体力を高めるため、現在約三千数百ある地方自治体を三百から五百ぐらいの市に再縮し、身近なことはすべて地方自治体に任せるなど、改革が必要であると考えます。

 野田大臣に、総理の演説で述べられた地方自治体合併を含む体制整備というだけでなく、我が党の行政改革の中心的政策である市町村合併への取り組みを強く求めておきます。

 また、現在、両党間のプロジェクトチームで、2001年からの大臣の数、公務員削減目標の数値について熱心な話し合いが続けられております。両党首の合意どおりに決着されるものと確信いたしてはおりますが、小渕総理のお考えを求めます。

 第二に、社会保障、特に消費税の福祉目的化についてであります。我々は、社会保障の基盤を確立するために、基礎年金、高齢者医療、介護については、消費税を目的税化し、国の責任を明確にすべきであると考えています。

 国民が抱く不安感は、現在の経済的な不安であると同時に、将来不安であります。つまり、現在社会を支えている世代の人々は、出生率の低下による人口構造の急激な変化に対して戸惑い、保険料の負担が増加する一方、それに見合った給付が将来受けられないのではないか、また現在給付を受けている人々は、その水準を引き下げられるのではないかといった不信が、人生の将来設計を直撃し、先行き不安、消費低迷の大きな要因となっております。

 実際に、社会保険料の未納者の増加や制度間格差といったものは、国民の社会保障制度への不信としてあらわれ、社会全体の安定の基盤を崩しかねない状況になっています。

 総理は、一昨日、まだコップの水が半分残っていると考えようと呼びかけられました。物事の明るい面を見ようというお考えはわかりますが、現在の若い人たちの不安は、幾ら水をくんでも全部先の人々で飲み干され、自分たちの番が来たときには残っていないと感じているところにあります。すべての人が水をくみ、いつも水が飲めるという安心感が必要ではないでしょうか。

 我々は、社会保障のビジョンを明確に示し、社会を担う現役世代の人々の保険料負担累増の懸念を払拭し、他方、お年寄りの給付水準引き下げへの心配を取り除くことにより、国民全体が安心と安定を確保して、人生設計を描きやすくすることが社会保障政策の骨格ではないかと考えます。また、これこそが日本経済全体を立ち直らせる大きな要素になると考えております。

 このためには、今までの概念にとらわれることなく、国民全体で社会保障制度を支え合い、その結果として確実な給付が保障されることを明確に示さなければなりません。その一つとして、導入時の理念に立ち返り、消費税の福祉目的税化、つまり社会保障税を主張しております。

 我々は、基礎的社会保障は、より安定した財源を確保し、財政的理由で給付水準が右往左往することのないものにすべきであり、それをはっきりと見える形にすることが必要であると考えています。また、負担と給付の水準のあり方は、本来、わかりやすい形を示し、国民全体で議論しなければならない問題であります。目的税財源の使途を基礎年金、高齢者医療、介護のみと限定し、これを一般財源から切り離し、給付と負担を明示することは、公正で透明な制度を確立する点からも重要であります。

 今予算の総則に消費税収の使途を書き入れられたことは、我々の政策にとって大きな前進でありますが、総理は、一昨日の演説で、消費税に対する国民の御理解を一層深めていただくよう明記したと述べられました。私どもの主張に対して、どのようにお考えかを改めてお尋ねいたします。

 次に、二点お尋ねします。

 阪神・淡路大震災より丸四年がたちました。六千人を上回る死者を出し、悲惨な大災害でありました。改めて、心より御冥福をお祈りいたします。震災直後、政治や行政が機敏に対応すればもっと少ない被害で済んだであろうということは、間違いのない認識でありましょう。

 残酷に三十数人の国民を殺害したオウム集団には破防法を適用できず、いまだにこの集団が宗教団体として活動を拡大していることに私は不快感をぬぐえません。

 山形マット少年殺人事件、神戸小学生殺人事件を含め、小中学生の背筋の寒くなるような事件がここ数年間続きました。明治以来の、また敗戦直後の発想から抜け切れず、今まだ少年法の改正や教育の改革も進んでいません。例を挙げれば切りがないほど、政治、行政が現実の事象に対応していない事例が山積をしています。

 総理の施策方針演説には、犯罪の多様化、複数化、国境を越えた薬物犯罪等に断固として対処するとありますが、従来どおりの危機管理や法体系では、到底御決断を生かすことはできないと思います。現実を直視し、国民の生命と財産を守るため、法体系を含め諸制度の改革を断行すべきと思いますが、お考えをお聞かせください。

 また、総理は、施政方針演説で、国民に開かれた政府の実現のため、情報公開法の早期成立に引き続き最大限努力することを表明されました。国民に信頼される行政の確立、透明性確保のために、情報公開法案の早期制定はまさに待ったなしであります。総理の決意を重ねてお尋ねいたします。

 次に、外交、安全保障政策についてであります。

 二十世紀は戦争と殺りくの世紀であったと言っても過言ではありません。十六世紀から二十世紀までの五百年間に行われたすべての戦争による戦死者の、実に六五・八%が二十世紀に集中しております。本年は、ハーグ平和会議から百周年に当たり、これを記念する世界平和会議が5月にハーグで開催されることになっております。新しい世紀を戦争のない平和と繁栄の世紀とするために、我が国は世界の国々と手を携えて努力していかなければなりません。

 自由党は、日本国憲法の平和主義、国際協調主義の理念に基づいて、平和な国際環境を確保するために積極的な外交努力を行っていくことについて、自民党と合意いたしました。そして、自衛隊の国連の平和活動の参加について、国連の総会あるいは安全保障理事会の決議があり、かつ要請があった場合は、直接戦闘行動を行うことや戦闘地域に直接物資を輸送、補給すること以外の活動については、政治家の判断により、積極的に参加、協力することといたしたのであります。

 このため、PKO協力法に定められた業務のすべてに参加できるよう法改正を進めるべきであり、あわせて、国連の諸活動に積極的に参加するために必要な法制を整備していくべきであります。

 小渕総理は、常々富国有徳を目指すと述べられていますが、それは、とりもなおさず、国際社会から尊敬され、信頼され、必要とされる国家であり、世界のために経済的に貢献するばかりではなく、世界平和のために汗を流す国家であります。自由党のこのような認識について、小渕総理のお考えをお聞かせください。

 日米関係について申し述べます。

 我が国の安全を確保するために、米国との関係は決定的に重要であります。このため、新しい日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの関連法案を速やかに今国会で成立されるべく努めてまいりたいと考えています。我が党は、さきの国会で、このままではガイドラインの関連法案には賛成できないと主張いたしましたが、連立合意に当たり、自民党との間に安全保障の基本的な考え方について合意し、自衛隊の行動の原理原則が明確になりました。ガイドラインの関連法案の早期成立を期したいと考えるものであります。

 米国との間の協力については、安全保障面とあわせて、経済面でも、保護主義を排し、世界の自由貿易体制の維持発展に日米両国が協調して努力すべきであると考えます。

 北朝鮮や中国について申し述べます。

 現在、我が国の脅威の第一は、北朝鮮であります。昨年は、無謀にも我が国の領空越しに弾道ミサイルを撃ち込み、日本は言うに及ばず、世界じゅうを唖然とさせました。国民が飢餓に苦しむ中で、膨大な軍事費を使い、ミサイルを輸出したり、秘密核施設疑惑で地下施設の査察要求に対しては三億ドルを、また最近のジュネーブの米朝間交渉では百万トンの食糧を要求するなど、非常識きわまりない体制の国家であります。

 我が国としては、北朝鮮に対しては毅然たる姿勢を貫くとともに、米国、韓国との連帯を強化していくべきであります。特に、効果的な情報収集システムの整備に努めるとともに、我が国が共同技術研究への参加を決めた戦域ミサイル防衛、TMD計画についても米国と積極的に協力していくべきであります。

 野呂田防衛庁長官がことしになって韓国を訪問し、日米ガイドラインや、TMD構想の日米共同技術研究への着手、情報収集衛星の2002年導入など、日本の当面の防衛政策について説明し、韓国側の理解を得たことは、有意義なものであったと考えます。韓国との間には、引き続き、北朝鮮についての情報認識について密接な連携を図るとともに、共同訓練などの防衛交流を積極的に推進すべきであります。

 中国について簡単に申し述べます。

 中国は、我が国のガイドライン関連法案の成立に警戒感を強めていると伝えられます。中国との良好な関係を維持するために、日米ガイドラインが、周辺事態に備えたものであり、他国を侵略するためのものでないことを、中国政府に対し引き続き強く訴えていくべきであります。

 北方領土問題とロシア支援について申し上げます。

 本日21日、モスクワで平和条約締結問題日ロ会議の次官級分科会が開かれます。エイツィン大統領の健康悪化が報じられる中、ロシア側の領土問題での軟化は予想しにくいものがありますが、橋本前総理が提案した、平和条約で国境線を画定し、北方四島の帰属を決め、四島の施政権返還に道筋をつけるという我が国の主張に沿って問題が解決するよう、改めて努力すべきであります。

 また、経済危機の影響で、ロシアの核物質が第三国やテロリストに流出する可能性が懸念されており、我が国としても、ロシア政府に核兵器不拡散を強く求めるとともに、政治の民主化と市場経済化への改革を引き続き支援していくべきであります。

 以上、外交、安全保障に対する私どもの基本姿勢に対しての小渕総理の御意見を承ります。

 最後に、孔子は弟子に政治の要諦を問われ、近き者喜びて遠き者来たると答えました。連立内閣発足に当たり、海部元首相・新進党初代党首を初め四人の新しい仲間を自由党に迎えましたことは、まことにうれしい限りであります。(拍手)

 我々は、小渕内閣を支え、自民党の皆さんと一緒に改革を大胆に実行し、日本や世界の人々に御評価いただける成果を上げられるよう、全力を尽くす決意であります。

 以上申し上げ、質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

○内閣総理大臣(小渕恵三君) 中井洽議員にお答え申し上げます。

 冒頭、議員から、自由党が今般の連立政権に参加いたした思いや、今般の連立の歴史的意義について真情あふるる御発言があり、その上で私の考えについてのお尋ねがございました。

 ここで、今般の連立内閣につきまして、この機会に改めて私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。

 昨年7月に内閣をお預かりいたしまして以来、日本経済の再生に全力を尽くすという立場から、あらゆる分野で思い切った施策を実行してまいりました。しかしながら、内外の環境は依然厳しく、景気の回復を初め、近々に解決しなければならない課題が山積みいたしております。また、急速な少子高齢化や情報化、国際化などが進展する中で、あらゆる分野における改革を断行し、二十一世紀に向けてこの国のあるべき方針を明確にいたすことが強く望まれます。

 私は、これらの課題に果断に取り組み、今日の国家的危機を乗り越えていくために、時局認識と基本的理念で一致を見た自由民主党と自由党の両党が政権をともにし、日本国と国民のために責任ある政治を実現していくことがぜひとも必要であると判断をいたしました。この連立内閣の発足に当たりまして、自由民主党と自由党との間で、政治行政改革、安全保障等遠くの政策課題につきまして真剣な議論を積み重ね、合意をした上で連立に至った次第であります。

 私は、こうした確固とした基盤に立った連立内閣であって初めて責任ある政治を実現できるものと確信し、また、両党間で日々ともに協力し合い、そして切磋琢磨し、両党のそれぞれのよき点を相乗的に効果あらしめて、その結果、国家と国民のために大きな役割を果たしていきたい、このことを強く念じておるところでございます。(拍手)

 副大臣、政務官制度の導入、政府委員制度の廃止についてであります。

 自由党との協議におきまして、副大臣制度の導入や政府委員制度の廃止などで合意いたしましたが、これは、国権の最高機間たる国会の権威を高め、国民に直結した政治に転換し、迅速な政策決定を可能にしたいとの考えからであります。今国会におきまして、成案が得られ、実現することを期待いたしております。

 また、こうした制度改革にあわせまして、与党としての体質改善についてお尋ねがありました。

 自由党も与党でございますが、我が自民党としてということだろうと思いますが、党といたしましては、党改革本部におきまして、まさに政治の指導性が高まるような党の構造改革に向けて、現在、全党を挙げて取り組んでおるところでございます。

 11年度の日本経済の動向と消費税のあり方についてお尋ねがございました。

 自民党と自由党との協議の中で、自由党から、消費税の問題を含めまして、景気回復に資するための御提案が数々ありましたが、このことも勘案いたしまして、平成11年度税制改正におきまして、景気に最大限配慮して、全体で平年度九兆円を超える減税を行うことといたしたところであります。

 消費税率の引き上げを含む税制改正は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えます。消費税に限らず、税は低い方がいいという面はありますが、税財政のあり方を考えるとき、消費税の引き下げはなかなか困難であり、この点、国民の皆さんにも御理解いただきたいと願っております。

 いずれにせよ、消費税のあり方につきましては、今後も両党間で引き続き協議をしていく課題の一つと考えております。

 次に、ユーロ発足後のヨーロッパ視察について所感を問う、こういうことでありましたが、先般の欧州訪問につきまして、ユーロを導入した直後でございました。新たな歴史を開いた欧州という感を深くいたしてまいりました。こうした欧州と我が国が、政治、経済、文化など幅広い分野で、一層関係を強化していくことの重要性を改めて実感いたしました。

 この観点から、各国首脳と個人的信頼関係を構築し、国際金融システムの改革等の重要な問題につきまして、忌憚のない意見の交換が行い得、ニ国間関係を、さらに日欧関係を強化していくことで意見の一致を見たことは、きわめて有意義だったと考えております。

 加えまして、国際金融システムについてでありますが、今回の訪欧を通じまして、フランス、イタリア、ドイツの首脳と、金融監督規制の強化やIMFプログラム及び手続の改善等、国際金融システム改革に関するさまざまな分野におきまして、協調して対処していくことで合意をいたしました。その直後、大蔵大臣がASEM等で協議をいたしまして、ケルン・サミットに向けてさらにこの協議を深めていくことでも一致をいたしております。今後とも、他のG7諸国とも協力しながら、国際金融システムの一層の安定に向け努力してまいる所存でございます。

 また、現在既に従来の護送船団方式から決別し、フリー、フェア、グローバルを三本の柱とする金融システム改革を進めつつあります。これに加えまして、今般、円の使い勝手を大きく向上させる諸措置をとることといたしました。ユーロの誕生といった内外の経済金融情勢の変化の中で、これらの措置を通じ、東京市場をより魅力的なものとし、円の一層の国際化が進むよう、官民挙げまして取り組んでいかなければならないと考えております。

 次に、2001年からの大臣の数と公務員の定数削減についてお尋ねがありました。

 自由党党首との間で合意いたしました基本的方向のもと、現在、両党間のプロジェクトチームで協議が行われております。決着に向けて、私といたしましても努力してまいる考えであります。

 社会保障のビジョンについて御質問でありました。

 社会保障につきましては、お説のように、国民が安心して、将来にわたって安定的に運営できる制度を構築していく必要があります。今後、社会保障に係る給付と負担の増大が見込まれる中で、経済との調和を図りつつ、必要な給付は確保しながら、制度の効率化や合理化を進めるなど、年金、医療の社会保障構造改革を、今後とも国民的議論のもとで進めていかなければならないと考えております。

 次に、消費税を福祉目的化すべきということでありますが、今般、消費税に関する国民の御理解を一層深めるため、自由党の御主張も考慮し、予算総則に消費税収の使途を明記し、広く国民の老後等を支える基礎年金、老人医療及び介護のための福祉予算に使う旨を明らかにしたところであります。

 なお、消費税をいわゆる目的税とすることにつきましては、今後の少子高齢化の進展を踏まえ、社会保障給付のあり方やそのための財源をどうするか、中長期的な税構造はどうあるべきか、いわゆる目的税について、これまで指摘されてきたさまざまな問題点につきてどう考えるかといった諸点につきまして、幅広い観点から十分検討する必要があると考えております。

 次に、国民の生命と財産を守るための制度改革に関するお尋ねがありました。

 国民の生命と財産を守ることは、人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーを確立するという重要な責務の一つであると考えております。政府といたしましては、これまでも、内閣危機管理監の設置、組織的な犯罪に対処するための法整備、重大なテロ事件等に対処するための体制整備など、常に変化する社会の状況に対応した施策の実現に努めてまいりましたが、今後とも、法務大臣もお務めされた中井議員の御指摘も踏まえまして、必要な施策を的確に進め、安全へのかけ橋を築いてまいります。(拍手)

 情報公開法の制定についてでありますが、情報公開法は、国民に開かれた政府の実現のため重要な法律であると認識いたしており、法案の早期成立に向けまして、政府として引き続き最大限の努力をしてまいります。今後とも与野党間で十分御議論をいただき、速やかに国会において成立させていただきたいと考えております。

 次に、自民、自由両党の安全保障に関する合意についてお尋ねがありました。

 我が国としては、国連を中心とする国際平和のための努力に対して積極的に貢献を行っていく考えであり、御指摘の平和維持隊、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力及び法整備につきましては、国会はもとより、国民各位の御理解をいただきつつ、積極的にこれを進めてまいりたいと考えております。

 次に、ガイドラインの関連法案等についてお尋ねでありました。

 周辺事態安全確保法案、自衛隊法改正法案及び日米物品役務相互提供協定改正協定につきましては、昨年4月末に既に閣議決定をして国会に提出済みであります。政府といたしましては、我が国の平和と安全にとって重要なこれらの法案や協定が、早期に審議され、今国会において成立または承認されることを強く期待いたしております。何とぞ、国会におきまして十分御審議をいただきたいと存じております。

 米国との関係でありますが、米国との経済面での協力に関して、日米両国の経済力の大きさにかんがみ、世界経済の安定と繁栄のために、WTOのもとでのグローバルな自由貿易体制の維持強化を初め、世界経済の直面する諸課題に日米が緊密に協調して取り組むことは、大変重要なことであります。今後とも、こうした考えに立って経済面でも米国との協力を積極的に進めていくべきことは、中井議員御指摘のとおりでございます。

 北朝鮮についてであります。

 我が国は、北朝鮮が議員御指摘の弾道ミサイルの発射や、秘密核施設の疑惑をめぐる国際社会の懸念や、日朝間の懸案に前向きに対応するよう、米国及び韓国と連携しつつ対処いたしてまいります。また、政府としては、情報収集システムについて、情報収集衛星の導入を初めとするその一層の整備に努めるとともに、弾道ミサイル防衛につきましては、昨年12月、米国との間で共同技術研究に着手することを決定いたしております。

 韓国との情報認識についての緊密な連携と防衛交流についてであります。

 昨年秋の私と金大中大統領との会談におきまして、日韓両国間の安保対話、防衛交流、これを一層強化いたしていくことといたしました。このような成果に基づき、韓国との間で、今後とも、北朝鮮醸成も含め緊密な意見交換を行うとともに、幅広い防衛交流をさらに推進してまいりたいと考えております。

 次に、日米防衛協力のための指針につきましては、特定の地域のおける事態を議論して作成したものではなく、指針のもとでの我が国の行為は、憲法上の制約の範囲において専守防衛等の基本的方針に従って行われるものであります。このような指針の性格につきまして、中国を含め関心を有する諸国に対し、これまでも累次説明を行ってきておりますが、今後とも必要に応じ説明を行う考えであります。

 次に、北方領土問題についてお尋ねがありました。

 政府といたしましては、今後とも、ハイレベルの間断なき対話の継続を通じまして、あらゆる分野における関係を一層強化しながら、東京宣言とモスクワ宣言に基づき平和条約を締結して、両国間の関係を完全に正常化するよう全力を尽くしてまいります。本日、モスクワで平和条約締結問題日ロ合同委員会の次官級分科会が行われますが、同会合におきましても、かかる考えに基づき、ロシア側との協議に臨む考えであります。このような努力により、エリツィン大統領が本年の早い時期に訪日され、平和条約交渉が一層前進することを期待いたしております。

 最後に、対ロ支援等についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、我が国として、ロシアにおける改革の成功は、世界の平和と安定に多大の利益をもたらすとの見地から、市場経済化、民主化等に向けたロシア政府の改革努力を一貫して支持いたしていく方針であります。

 特にロシアの核不拡散問題について、御指摘のように、核物質の流出は核兵器の拡散につながる可能性があるという意味で、国際社会に対する大きな脅威であり、我が国としては、ロシア政府に核拡散防止のための努力を強く求めておるところであります。また、関係国と協力しつつ、ロシアの核兵器解体から生ずる核物質の管理の強化のため、支援に取り組んでまいります。

 改めて、連立政権をつくり上げました自由党とともに、その連立政権の意義が十分発揮のできるように、私といたしましても全力を尽くすことを申し上げて、お答えとさせていただきます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)

〔国務大臣野田毅君登壇〕

○国務大臣(野田毅君) 中井議員にお答えを申し上げます。

 まず、連立政権の意義についてでありますが、総理からも御答弁されましたが、私に対してもお尋ねがありましたので、申し上げたいと思います。

 まず大切なことは、かつてない危機に直面しているこの日本を救い、二十一世紀への新たなスタートを切るためには、あらゆる分野において構造改革を大胆かつスピーディーに断行することが大事であるという、この認識を両党が共有したことであります。その上に立って、基本理念、基本政策について両党首で真摯な意見が交わされ、そのリーダーシップのもとで基本政策の協議が調ったということであります。

 いたずらに政策よりも政争を優先し、展望のない閉塞状況をこれ以上続けるということは、今の時代の政治のあり方として極めて不本意であり、国民にとっても不幸なことであると思います。今日の日本の内外をめぐる危機的な状況と与えられた時間の制約を考えれば、まず第一に政策の方向性、そして第二にスピードということを大事にしなければならないときにあると考えます。その点で、小渕総理と小沢党首のリーダーシップのもとで、自由民主党と自由党が真摯に誠意を持って、内外の課題に果断かつ迅速に対応することこそが、今日の我々政治家の責務であると考えます。

 次に、市町村合併に対する取り組みについてのお尋ねでありますが、中井議員の御指摘にもありますように、地方分権の担い手である市町村が、基礎的自治体として住民への行政サービス提供を高め、充実強化するとともに、国、地方を通じた歳出削減にもつながるよう、行政の効率化を図る必要があります。このため、都道府県の協力をも得つつ、市町村合併を積極的に進めたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

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