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2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会(第9回会合)

平成181222



【多賀谷座長】  ただいまから2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会第9回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多忙の折ご出席いただき、ありがとうございます。
 それでは、まず最初に資料の確認をお願いいたします。
【井上地域放送課課長補佐】  それでは、本日の配付資料を確認させていただきます。
 資料は、座席表、議事次第の他、資料9−1「ケーブルテレビ事業の現状と金融機関から見たケーブルテレビ業界」(日本政策投資銀行説明資料)、資料9−22010年代(2015年)のケーブルテレビ事業」(日本ケーブルテレビ連盟説明資料)、資料9−3IPTVへの取り組み」(NTT説明資料)、資料9−4「『2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会』報告書目次(案)」の4点でございます。
 資料の最後に前回会合の議事録をつけさせていただいております。なお、傍聴の皆様分には議事録を割愛させていただいております。資料に不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
【多賀谷座長】  それでは、本日の議題に入ります。
 本日の会合では、金融機関から見たケーブルテレビ業界の動向と今後の展望、ケーブルテレビ業界としての今後の取り組み、IPTVに関する取り組み状況等について、日本政策投資銀行、日本ケーブルテレビ連盟、NTTからお話をお伺いし、それぞれの発表の後に質疑応答の時間を設けることとしたいと思います。
 また、当研究会の報告書の構成について、前回に引き続き検討してまいりたいと思います。
 それでは、まず、ケーブルテレビ事業の財務面に関する現状分析などにつきまして、日本政策投資銀行情報通信部長、伊藤様からご説明をいただきたいと思います。お願いします。
【伊藤情報通信部長】  今、ご紹介にあずかりました日本政策投資銀行の伊藤でございます。今日は、金融機関から見たケーブル業界について、現状がどうか、それから、今後、金融機関として見る目線、それはどんなものかということについて話をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料に基づいてご説明を申し上げます。
 本行は昭和59年からケーブルテレビ事業者向けの融資を開始してきておりまして、これまでに220社、累計で2,500億円の出融資を行ってきてございます。融資でございますから残高が毎年少しずつ減っていくわけでございますが、今のところ、大体1,800億程度の残高があるということでございます。本行の取引先は18年3月末現在で183社ございまして、この後ご発表がある連盟さん、この加盟事業者数が300社でございますので、本行としてはその6割程度をカバーしているということでございます。後でも申し上げますけれども、金融の目線に合う事業者ということでございますので、どちらかといえば上の方から180社程度というようなことかなと思われます。
 なお、私どものところでケーブルテレビレポートというのを平成12年から公表しておりまして、それまでにもデータをためてはきておりましたけれども、体系的に整理して皆様方にお見せしているのが12年以降ということでございます。今日は、それに基づきまして、我々は経営データについて把握できるという、この金融機関としてのメリットを生かした分析について前半ご紹介いたしまして、その後で、我々から見て当業界がどんな方向に進むべきかということについてお話しさせていただきたいと思います。
 初めに、ケーブルテレビ事業のモデルケースということで示させていただいた表がございます。これは一つのモデルケースでございまして、対象世帯数を5万世帯と置き、総投資額15億円、投資資金のうち50%を自己資金で、50%を借入金としまして、これで事業をスタートして、開業後10年目で加入率が放送で25%、インターネットが10%ぐらいになった場合に、どんな財務のモデルになるかというものを示したものでございます。これは比較的うまくいくケースではございますけれども、この場合ですと7年目で単年度黒字に転換いたしまして、11年目で借入金の償還が終わり、14年目で繰欠が解消できると。いずれにしましても、非常に回収に長期を要する事業ということでございます。それを回避するためには、この場合には最初の年にどーんと投資をすべてやっておるモデルにしておるんですが、工事費をコントロールしながら、加入に見合うような形で工事費を分散していけば、もう少し前倒しの収益改善ができるのではないかというふうに思われます。いずれにしましても、非常に投資回収に長期を要する事業ということでございます。
 表の右側の方に金融機関の主な審査点というのがございますが、我々としましては、加入率の推移だとか、投資効率だとか、調達の仕方だとか、スポンサーシップだとか、そういった多岐にわたる事項について見させていただくということを書いたものでございます。
 次は、ケーブルテレビの収支構造はどうなっているのかなということでございますが、表にございますとおり、14年度に全部の合計で経常損益が黒字になりまして、当期損益も黒字になったということでございます。それまでは、私どもも昭和59年から融資を始めてまいりましたけれども、ずっと水面下の事業であったと。それが平成14年度に全体として見て黒字に転換したということでございます。これが17年度になりますと、この黒字になった14年度に比べまして、売り上げで1.3倍、経常利益で3.2倍、当期利益で9.5倍と、非常に加速度的に売り上げ、特に利益については増加してきているということでございます。まだ全体として繰欠の解消はできておりませんけれども、133億円の繰欠ということでございますので、全体での繰欠解消というのも視野に入ってきたのかなということでございます。
 下の方のグラフは、経常損益で黒字の会社が何社あるのか、繰越損益で解消した会社が何社あるのかというのを示したグラフでございますけれども、8割強の事業者が単年度黒字を達成してございまして、繰欠に関しましても56%が解消しているというような状況にございます。総じて足元の状況は良いのかなということでございます。
 次に参りまして、ケーブル事業者の収入傾向でございます。放送事業の増収率というのはちょっと低下傾向にあったんですが、ここに来て上昇に転じております。これは、デジタル化によりましてARPUが上昇しているということがございます。通信事業収入は前年度比2割弱の増収となりまして、これも引き続き堅調かなと。電障収入というのも地域によっては非常に大きな収入源でございますけれども、これについては、その解消がどんどん進んでいるということもございまして、引き続き減少してございます。これからデジタル化が進んでまいりますものですから、電障収入に依存しない収益基盤を確保していく必要があるのかなと我々としては思ってございます。
 次に参りまして、対象世帯別の営業収入の分析でございます。3万世帯まで、それから3万世帯〜6万世帯まで、6万世帯〜10万世帯まで、それ以上という4つの対象世帯ごとの分類をしてございます。大規模事業者と小規模事業者、中に2つあるというようなことでございますが、10万世帯以上の大きな事業者さんにつきましては、引き続き営業収入が増益が強いんですが、それ以外のところは鈍化しつつあるというのが収入状況の分析でございます。特に放送その他という項目をごらんいただきたいんですが、3万世帯までのところにつきましては4.1%から0.5%、3万〜6万につきましては6.8%から2.4%、6万〜10万も7.5から4.6ということで、このレベルの事業者さんが放送その他でこれからどんどん稼いでいくというのはなかなか難しい状況になってきているということかなと思います。10万世帯以上につきましては、デジタル化が先に進んだということもございまして、まだまだ伸びているという状況でございます。
 次に参りまして、17年度の多チャンネルの加入世帯数でございますが、1社平均で申しますと7.7%増加してございますけれども、加入率はほぼ横ばいというような状況でございまして、先ほど申し上げたように、伸び悩んでいるかなということでございます。右下の表につきましては全事業者で見ておるんですが、黄色いところが解約数、緑色のところが新規獲得数ということで、この差分が増になるわけなんですが、全体として伸びてはございますけれども、その伸び方がちょっと鈍化してきているというようなところが明らかになっているかと思われます。
 次に参ります。対象世帯規模別の平均経過年数と多チャンネル加入率ということでございますけれども、多チャンネルの加入率は、年間でこれをずっと見ていきますと平均2.4%は伸びていると。これは、地域独占というようなこともございまして、長くやっていれば加入率は上がっていくのは当然の話でございます。ただ、加入率の伸びにつきましては、6万〜10万の中規模の事業者の多チャンネル加入率の伸びが低いということがございます。大きいところは運営の効率化によって営業に人員を割ける等のことがございまして、この線でいきますと黒いところのライン、それから小さいところに関しては、これが赤いラインの1)のところなんですが、小回りがきくということ、それから営業をかけやすいということがございまして、加入率が高くなっているという傾向にございます。いずれにしましても、遅い、早いはございましても、それなりに加入率は上がっていくものだと、加入数は増えていくものだということではございますが、我々としては、そのスピードに着目しているということでございます。
 続きまして、もう1つの大きな柱であるインターネット事業の位置付けでございます。左下のグラフをごらんいただければわかるとおり、加入率は5%〜15%というところが現在の一般的な姿でございます。加入率5%未満の事業者の割合は低下しておるんですが、一方で、15%を超えるような事業者の割合は上昇してございます。これは、CATVというのはFTTHと違いましていろんなコースをとれると。1メガの人、100メガの人。やはりヘビーユーザーばかりじゃございませんので、いろんなニーズにきめ細かく対応できるということがあるのかなというふうに思われます。四角囲みのポツ4つ目のところに「DSLFTTHは」と書いてございますけれども、契約数がDSLにつきましても6.1%、FTTHに関しましては大変なご尽力で88.3%増加させておるんですが、加入ペースが急低下したADSLに比べますと、ケーブルにつきましては安定した伸びを示しているということが言えるかと思います。
 インターネット収入が営業収入に占める割合でございますが、1社平均で27.5%。増収分全体で見ますとその比率はもう少し高くなりまして、4割弱を増収分のうちインターネットで稼いだというようなことでございます。我々から見たら、単なる放送局ではだめで、やっぱりそこを複合的にやれるかどうかということがそのポイントなのかなというふうに思っております。
 次に参りまして、インターネット事業の加入率ということで、これは当たり前といえば当たり前のことなんですが、総じてサービス開始が早いほど加入率が高くなっているということでございます。我々のところで集合住宅比率という考え方を持ちまして分類をしておるんですが、35%以下と60%までと60%以上ということで見ておりますと、ここの参考のARPUのところをごらんいただきたいんですが、60%以上、7大都市圏とかいうところでございますが、FTTHとかDSLとの競合が非常に厳しいところについては、非常にARPUの下がり方も激しゅうございます。一方で、35%以下の、例えば地域独占していて、ADSLをやるにも基地局がちょっと遠いかなというようなところに関しましては、ARPUの下がり方も少しモデレートになっているのかなというようなことが言えるかと思います。右のグラフにおきましても、60%以上はやはり伸び率が低くて、35%未満のところは伸び率が高いというのが示されているかと思います。60%以上が競争にさらされている地域でございますけれども、その競争はだんだん3560というところに少しずつ上がってきておるようでございますので、その競争というか、そこら辺のところはもう少し広がってきて厳しい状況になってくるのかなという見方をしてございます。
 次に参りまして、解約率とグロス加入率の分析でございますが、放送事業に比べまして解約率は高くなってございます。これが今後、経営の攪乱要因になるおそれがあるなというふうな見方を我々としてはしてございまして、現在、やはり通信に頼ってきた――放送がベースではございますけれども、ここまで経営が良くなってきたのは、通信、インターネットのところで増収になって、それが経営を良くしてきた面がございますけれども、これが解約率が高くなって通信事業の収入が落ちてくるということは、また経営が難しい状況になるおそれがあるのかもしれないなというふうに見てございます。全体としては伸びているものの、獲得の伸びが鈍化して解約率が上昇するというのが最近見えてきたのかなというふうに思っております。
 次に参りまして、ケーブル事業者のデジタル放送対応ということでございますけれども、デジタル加入世帯数の割合30%以上の事業者というのが全国で約半数になりました。これは、地デジの進展に伴いまして、特に関東圏・関西圏の伸びが高うございます。ただし、右の方にちょっと書いてございますけれども、CATV業者で広帯域化投資が完了している事業者は114社、未完了が69社となってございまして、我々の試算では、今後、そこを広帯域化するには760億円の投資が必要なのかなというふうに思われます。アナログ波停止のことを勘案いたしますと、ここ4〜5年中に広帯域化工事を行わなければならない。ですから、この4〜5年の短い間に非常に集中的な投資が必要になるということでございます。しかも、冒頭申し上げたように、我々のところはどちらかといえば上の方から180社を対象としてございますから、それより下あるいは共聴施設等もございますので、そういうところはほとんどやられてないということを考えますと、まだまだ相当の投資は必要になってくるというのが実情じゃないかと思います。
 次に参りまして、債務償還年数の試算ということで掲示してございます。これは金融機関の金融機関らしいところでございますけれども、経営が良くなって、このところずっと債務の償還年数というのは短くなってきておりますが、17年度に関しましても前の年の5.6年から4.3年という形で短縮いたしました。ただ、これは、今、17年度の一時点の値をもとに行った分析でございまして、これからどうなるかわからない非常に不安定な要素があるという中では、必ずしも楽観できないなというふうに思っております。そのことは、やはり10年以上まだ借入金を返す期間が必要だと思われる業者もかなりございまして、あるいは償還原資がないというような業者もいらっしゃるということを考えますと、やはり二極化していくのかなというふうに思われます。いずれにしましても、冒頭で申し上げたように、投資回収に長期を要するビジネスでございますので、そこら辺は足元の良さだけに浮かれることなく、この後の事業の展開についてしっかり考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っております。
 続いて、現状のまとめということでございますが、先ほど来申し上げているとおり、現状の分析をしますと、足元は業績好調だと。放送事業は着実に積み増している。鈍化しているとはいえども、積み増していると。それから、通信事業についてはインターネット契約者数が増加していると。売り上げの構成比も上昇していると。電障収入は減少しているけれども、一定の収益寄与があるなと。これによって借入金が削減して、資本も充実すると、バランスシートの改善も進んでいますねと。ただ、右の方に目を転じていただきますと、加入率は横ばいのような状態だと。中小事業者では売り上げが頭打ちの傾向が見られる。これはどの事業者もどのレベルも同じなんですが、今後、さらなる競争激化が予想されるということがございます。それから、通信事業については、先ほど申し上げたように解約率が上昇していると。加入率も鈍化していると。ARPUは減少の傾向があって、これもなかなか厳しくなるかもしれないなと。加えて、FTTHの伸長もございますし、IP再送信もございます。それから人口減少とか高齢化という問題、これは普遍的な問題でございますけれども、ございます。それから、区域外送信等に代表されるような著作権問題のクローズアップ等もございまして、ちょっと環境がいろいろ変わってくるなということでございます。
 その変わった経営環境に対してどんな対応を求められていくのかなということで、次のページに参りまして、金融機関から見たらどういう見方になるんだろうかということでございます。営利事業型(都市型)というふうに書いてございますが、これは恒久的な事業継続、ゴーイング・コンサーンでやっていきましょうと。その中で投資回収・再投資ということを前提に考えていかなければなりませんねと。今の時点ではキャッシュフローもよく出てきておりますし、負担可能な範囲での設備投資は可能なので、こういう事業者については金融対応というのがよろしいでしょうと。与信の対象となり得ますねと。ただ、キャッシュフローが出なくなった、通信の伸びがとまったとか何とかが剥落したとかということで、売り上げも利益もなかなか厳しい状態になったという段階では、なかなか設備投資は難しくなりますねということで、右下の方に行く。このまま下の方に来ていただけるのであれば、より持続可能性が高まって、金融としては非常にいいお取引先としてやっていけるだろうなと。
 もう1つ、営利型ではない公設公営型の事業もまだたくさんございますねと。これは補助金とか交付金に依存したワンプロジェクト型でございまして、投資回収とか再投資を念頭に置かない事業構造でございます。これによってテレビを視聴している利用者の皆さんもたくさんいるわけで、この設備の寿命が来たときに、本当に事業継続が可能なのかなと。テレビが見られなくなっちゃうんじゃないかなと、そういう心配がございます。高周波、770MHzメガヘルツ帯域の伝送がなかなかできない世界になってしまうなと。ただし、この事業者さんに関しましては、そのままでは金融の世界になじまないということがございますので、じゃあ、どうしようかと。それはそれでしようがないじゃないかというふうに是とするような左側に行くケースもございますけれども、少し金融的な手法を使おうとすれば、下の方に書きましたとおり、PFIとかPPPとかというのがございますけれども、こうした民間の経営ノウハウとか創意工夫を活用した仕組みを導入するということが必要になるのかなというふうに思います。ただし、その場合には、住民のPFIとかPPPに対する交付金とか補助金、公共が直接行う場合と補助金のイコールフッティングというのが必要になってくるんじゃないのかなというふうに思われまして、その工夫が必要なのかなと思っております。
 最後のページになりますが、持続可能なケーブルテレビ事業に向けてということでございますが、これからサービス領域はどんどん広がっていきます。連盟の唐澤理事長様がおっしゃるとおり、3つの融合というのも進んでまいります。地域からは期待も寄せられますし、寄せられた期待に対して応えていくという責任も必要かと思います。それに対して事業者は今どういう状況かといいますと、多くの事業者が、エリアなんですが、規模の小さい旧市町村単位のままでございます。ですから、小さな規模で事業をやっておるんですが、そのままではやっぱり経営組織面の限界が出てくるのかなと。人材育成だとか技術対応とかその他なんですが、全部が全部、単体でやり続けられるのかというのは、やっぱり我々として、金融機関から見たらちょっと心配になるかなと。規模の不利益というのに本当に甘んじていいのかなという疑問が出てまいります。そこで、一つの策としては、何でもこうすればいいかなということではございませんけれども、合従連衡の道というのも模索していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。これによって効率化とか経営力の強化、ARPUの向上とか、安心・安全に対応するライフライン化とか、そういうようなことに対応していくのかなというふうに思います。我々として、我が国経済に影響力を有するような一つの産業としてしかるべきマーケットサイズを獲得していけるのかどうか、これが問われる時期にこの業界が来ているのかなというふうに考えております。今後、どういう形で自立的な産業として成長させていくのか、それについては、先ほど申した中にも入ってございますが、政策的な対応も含めて、業界一丸となってご検討を賜りたいなと。それに対して金融機関としてもしっかりサポートしてまいりたいというふうに考えてございます。
【多賀谷座長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご報告にご質問等ございましたら、ご自由に発言願います。
【寺坂構成員】  鳥取の寺坂ですけれども、15ページのところに類型として公設公営と営利事業型とあるんですが、我々の環境といいますか、現実に接している中では、どちらかというと、ある意味、公設民営と申しますか、自治体である程度設備を整備して、運営は三セクなり、あるいは都市型のケーブルにIRUで運用をしてもらうというようなパターンが近くであるんですけれども、そういった類型というのは、この検討の際には念頭にはされなかったんでしょうか。もし何かあって外されたということであれば、そのあたりのお話をお伺いしたいんですけど。
【伊藤情報通信部長】  それも我々の頭の中にはございまして、ただ、公設でつくられた施設について、統合といいますか、そういったことについて結構難しいことがあるのかなと。それから、数的にそんなに多いのかなということがございまして、とりあえずこの類型からは外させていただいたということでございます。基本的にはそれも当然ある話で、我々としてはその類型も対応していくべき話かなと思っております。直接の投資は、最初に官・公がやるわけですから、あり得ませんけれども、その後の維持とかオペレーションにかかる資金というのは出てまいりますので、それは金融の対象になっていくのかなと現状では思っております。
【多賀谷座長】  公設の場合に、それに付加的にデジタル化投資等をした場合に、そこの部分が金融の対象なのかどうかというのは、やっぱり微妙な話といいますか・・・・・・。
【伊藤情報通信部長】  実際のケースに当たってみないとちょっと難しいかと思います。
【多賀谷座長】  確かに公的融資の対象でもありますのでね。
【伊藤情報通信部長】  はい。
【多賀谷座長】  それでは、次の議題に移りたいと思います。日本ケーブルテレビ連盟の石橋構成員から、視聴者ニーズにこたえるための業界としての取り組みについてご説明いただきたいと思います。
【石橋構成員】  日本ケーブルテレビ連盟の石橋でございます。早速、資料に基づきましてご説明させていただきたいと思います。
 2010年のケーブルテレビを取り巻く環境というものをまずおさらいしておこうということで、この会議でも今までいろいろ議論されてきましたけれども、私なりに簡単にまとめてみたということでございます。まず、放送につきましては、高度化・多様化が進展していくということで、地上波放送のデジタル化は完了と。それから、BS放送のさらなる多チャンネル化あるいは高度化が進展し、CS放送も高度化が進展していくという環境にあるだろう。それから、ブロードバンド環境、これもさらなる進化ということで、特に速度が速くなる、超高速環境が整備されるというふうに我々としては見ておく必要があると思います。そうなりますと、そこに書いていますとおり、Everything over IPというようなサービスが相当進展するかなということです。あわせて、無線のブロードバンドサービスも進展していくだろう。それからもう1つは、これはサービス面ですが、一般の視聴者、お客様がつくったメディア・映像などがネットの中で発信されたり受信されたりするCGMというものが普及していくんじゃないかと思われます。それからもう1つは、ネットワークを使った生活上のサービス、これも今以上にポピュラーになってくるだろう。オンラインショッピングの一般化あるいは家庭内においてはホームネットワーク・ホームサーバーが普及する。それと併せて、ネットワークの端末としてのテレビセットの重要性が非常に高まってくるというふうに見ております。それから最後に、テレビもIP化が進んでくるということで、資料にはチャンネル数無制約と書いていますが、チャンネル数はかなり増大できる、増大するということでございます。それから、VODサービスも進化していくということ。究極は、先ほどのEoIPと同じようなことですが、Everything on Demandということで、要は自分の好きなものを好きなときにデマンドで見ていくというような傾向が強くなっていくのではないかというふうに見ています。それから最後に、IPというものは、ネットワーク化することによって簡単に全国に映像配信が可能になってくるというふうに見ています。
 次に、そういう中で、我々ケーブルテレビがどういうサービスをしていくかということになるわけですが、今日は、お客さんから見た場合にどういう分類になるかなということで、3つに分けております。まず、ここでお断りしておかねばならないのは、今からご説明申し上げるサービスにつきましては、放送事業者あるいはコンテンツの権利者など、そういう方たちの同意がないとできないというものもございます。また、場合によっては法律などのルールの整備とか改正が必要というような場合もあるのではないかと思っております。ただし、本日のところは、これからの課題は一応横に置いておいて、どういうことができるというような趣旨でお話を聞いていただければと思います。
 3つの分野ということで、まず1つ、安心・安全。これは地域と家庭の安全。それから、便利というのは、これは何度もここでも議論されてきていますような行政情報、地域情報。併せて、我々としては、これから通信事業者との競争環境という中に入りますので、ブロードバンドで同レベルのサービスをできるようにしていくということが極めて重要であると考えています。それから、ユビキタス、これも今、皆さんおっしゃっているわけですが、宅内外のユビキタス化ということを我々としても提供していく必要がある。それからあとは、楽しい・面白い。これは放送、映像コンテンツでございまして、我々ケーブルテレビ事業者にとってはここがやはり収益の柱でこれからも続くだろうというふうに思っております。もちろん、安心・安全、便利のためという面でもコストは回収しなければならないわけですが、それで利得をたくさん得ていくというようなことにはまずなりません。これらは顧客層の開拓というようなことに貢献することになるんじゃないかなと思っております。
 安心・安全を提供するサービスということですが、まず地域の安全ということで、防災情報の提供。これは、例えば地震緊急速報ということで、これは皆さんご承知のとおり、来年4月から個人向けにも情報提供されるということになっておりますので、我々としては、気象庁からの情報に基づいて予告通報をするというようなことを考えております。その際には、ホームネットワークを通じてガスの栓をとめるとか、玄関の扉を開くとかいうようなことを自動的に緊急措置として行うこともできるということでございます。それから、気象災害情報、これは常に言われておりますとおり、我々の場合、特に地域を特定してきめ細かく提供するというところが、普通の放送事業者とは違うということになるだろうと思います。それから、災害発生時、被災地域が必要とする情報を提供するということで、これは、安否情報とか避難場所、支援物資云々と書いていますが、これはその地域にとって当然必要ですが、域外にもこれを必要とする人は、多数ではありませんが、いらっしゃいます。新潟の場合なんか、毎朝、どこかの場所から同じ人、同じように朝7時に放送されるんだけれども、実際どうなっているか、もう少し詳しく知りたいことが全然わからないということでした。東京には新潟出身の方がかなりいますので、そういうものが提供されれば非常に有効だと思っております。それから、防犯サービスの提供ということで、地域の見守り。子どもたちの安全のため、あるいは徘徊される高齢者の見守りというようなこと。それから、監視カメラをネットワーク化して、これを防災のために使う。その他、防犯情報の提供。これは地域を特定して、最近、空き巣がここの付近は多いですよというようなことをきめ細かく提供していくということでございます。
 いずれにしても、ケーブルテレビの強みといいますのは、お客様の居場所というか、お客様の場所、お客様を特定できるということがございますので、きめ細かく、その方に必要な情報を、すなわち適切な情報を提供できるということです。それから、新しいサービスをいろいろやっていくときには、ネットワーク上に電源が必要となる場合がありますが、今の伝送路はそういう電源を持っておりますので、必要な機器が比較的容易に設置できるということもございます。
 それから家庭の安全、これはホームセキュリティサービスということで、監視カメラ、ドア/窓開閉センサーによる留守宅の見守り。異常があった場合には携帯電話等でご本人に連絡をとるというようなこともございます。それから、高齢者の見守り、特にお一人でお住まいの方などの生活状況を各種センターにより見守る。異常発見時には、親族、自治体、見守りサービス提供会社あるいはNPOなどと連携し対応するということでございます。それから、遠隔診療サービス、これはかねて言われていることでございまして、テレビがさらに高精細になっていきますので、こういうものもやりやすくなってくるということでございます。
 ケーブルテレビの強みといたしましては、ケーブルテレビ事業を通じて培われた顧客との密接な関係があります。同じようなことですが、顧客と直接つながっているので、個人ごとのサービスが可能であるということです。
 次に、生活を便利にするサービス。まず、行政情報サービスですが、特にテレビを端末として使用する、すなわちリモコンで操作をするということで、デジタルデバイドの緩和にも貢献できるのではないかということです。それから、地域生活情報サービス。地域ビジネスと連携したサービスですが、商店街との連携による広告提供あるいは宅配というようなことで商店街の振興にも貢献できる。それから、先ほどから何度も申し上げていますが、顧客を特定できますので、特定したターゲット広告が可能であるということもございます。それから次に、地域コミュニティネットワークを活用したサービス。自治会、町会、マンション管理組合などの電子掲示板、回覧板、そういうものに使用する。それから、ネットワークが構築できれば防犯・防災情報提供の基盤ということでも使用可能になるということでございます。
 それから次に6ページですが、ブロードバンドサービスの提供。先ほど申し上げましたとおり、これは通信事業者と同等のサービスができないと、例えば遠くに住む子供はNTTさんのNGN、我々親父はケーブルという場合、同一のコンテンツのやりとりができないというようなことも起こりますので、これは必須だというふうに考えております。それからあと、宅内外のユビキタス化。これは先ほどもちょっと申し上げましたが、宅内では複数テレビの連動、録画物の共有、家電との連動、というようなこと。それから、宅外のユビキタス化。これは最近ニュースになっておりますが、テレビ、録画物の視聴環境を宅外へ持ち出すということ、あるいは宅外から録画の操作をしたり家電を操作したりするということでございます。
 ケーブルテレビの強みということでは、ここでも顧客を特定できること。それから、自治体との連携がとりやすいこと。多くは第三セクターということもございますので。それから、地元のコミュニティのつながりが活用できるということもございます。
 次に7ページで、最後に、楽しい・面白いサービスということになりますと、まずは放送などの映像コンテンツというものがやはり基本になります。これは2015年でも間違いないだろうというふうに思っています。地上デジタル放送等、各種放送の再送信を完全に実施していくこと。デジタル放送もHDからスーパーHDに移行していくという時期になっているんじゃないかなと思われます。それから、オンデマンドサービスは多様化あるいは高度化ということになります。現在、VODあるいはDVRは、一部我々ケーブルテレビで行われているわけですが、これがネットワークDVRに進化する。これは放送番組をヘッドエンドに蓄積し、そこに顧客がとりに行くということです。これはアメリカではコムキャスト、タイムワーナーが既にやっているやに聞いていますが、この辺は放送事業者、権利者の皆さんが非常に神経質になっていらっしゃるところでもあります。次に、テレビポータル。これは双方向テレビサービスということで、Tナビとか、あるいはアクトビラという固有名詞がございますが、そういうものでございます。それから、IPTVの提供。それから次に、日常生活に密着した地域生活情報コンテンツを住民、視聴者が制作する、提供するということでございます。これは、例えば地域イベントの取材などです。それから、SNS機能を持ったサービスの展開。電子展覧会、地域レポーター。電子展覧会というのは、例えばお年寄りのメンバーシップが絵を描いて、みんなが投稿して、それをみんなで見るというバーチャルな展覧会場をネット上で実現するというようなことでございます。CGMの活用ということです。あと、我々が制作した番組をデジタルアーカイブ化して保存するということが非常に重要だろうというふうに思っております。これにより、5年、10年、20年たったところで、そういうローカルコンテンツが、一部の人に限られますが、非常に有効な情報として活用してもらえるのではないかと思われます。地域の歴史あるいは文化の保存という面でもお役に立てると考えております。
 最後に、ケーブルテレビの強みですが、この場合は一般視聴者を含む情報取材網を比較的容易に構築できるということでございます。それから、ナショナルコンテンツにはなれないけれども、地域コンテンツとしては非常に価値があるもの、こういうものを提供できることがケーブルの場合の強みであろうと思います。それから、ケーブルテレビのネットワークは基本的にクローズドでございますので、安全なサービス、アプリケーションの実行環境が提供できる、あるいは構築できるということでございます。それから、当面、ケーブルテレビの下り伝送容量は非常に大きいものがございますので、IPと比べても優位性は当分はあると思っております。それから、我々もIPの方も進めていきます。提供するサービスに最適な機能を使って、STBからネットワーク、サーバーまで一貫したシステムを持てることによって顧客に対し一元的に責任がとれる、すなわち顧客に安心感を与えるサービスを提供できると思っております。
 最後のページは、参考資料として作ったものです。先ほども政策投資銀行さんのお話がありましたとおり、私どもも、とにかくケーブルテレビを世間に認知される産業にしなきゃいけないと考えているわけです。その場合に、顧客の数を増やすと同時に商品価値を向上させていくことが非常に重要であると思っております。そういう意味でこの表を作ってみました。
 地上あるいはBSのデジタル放送というものは、ハイビジョンからスーパーハイビジョンに向かっていくであろう。それから、CSをはじめとする多チャンネルの再送信、これも同様にハイビジョンからスーパーハイビジョン化に向かっていく。それからVOD、これはまだ一部の事業者に限られていますが、追加のサービスとしてこれも発展していくだろう。それからDVR。これは現在、家庭の端末には利用されております。当然2015年になっても残るだろうし、それから、先ほど申し上げましたテレビポータル、こういうものも普及してくるだろうと思われます。それから、先ほど申しましたネットワークDVR、究極のEOD(Everything on Demand)、こういうようなことになるのではないかと思います。
 こういう中で、我々はどうしていくのかということになります。まず、ネットワークは、やはり下り、上りの高速化。下りはまだいいんですが、現在、ケーブルの最大の弱みは上りでございますので、そういう意味でFTTB――これはビルディングです――と、c.LINKという技術を活用して上りの高速化を図る。それから、チャンネルボンディング、これは周波数帯等を広く使うという趣旨です。あとは、ノードの世帯単位を小さくする小セル化。それからさらにはFTTH化の促進。これは別に2015年になって急にやるということではなくて、2010年ぐらい入ってから徐々にFTTH化の方向に向かっていくということにしなきゃいけないということです。それから、伝送方式は、さらにH.264256QAMの採用。あわせて、IPTVを我々としても取り上げていくということでございます。最後にGUIでございますが、これはグラフィカル・ユーザー・インターフェースということでございまして、EPG、サーチエンジン、それからECG(エレクトロニック・コンテンツ・ガイド)、それがさらに進化しますと、個人個人にパーソナライズされたガイドが出る、更には個々人にリコメンデーションがなされるということになるのではないかと思っています。
 こういうことで、商品価値を向上させて、顧客当たりの収入の増加を図るということでございます。あわせて、こういう新しいサービスを提供することによって新たな顧客の獲得を目指す。分母を増やして顧客収入単価(ARPU)も上げる。これは誰でも考えることですが、我々が今、例えば5,000億円という事業規模であれば、これを1兆円にする、倍増させるということになりますと、今のままじっとしていては絶対できないと思います。顧客の数を増やすと同時に、ARPUを上げる必要があります。例えば10年間で倍増させるということになりますと、大体年率、前年比7〜8%の成長が必要になってきますが、その7〜8%を顧客数とARPUの増加で実現する。いずれにしても、先ほどもご説明ありましたとおり、これからのいろいろな変化に対応していくためには多額の資金が必要であるということは極めて明らかでございます。現在も国、地方自治体など関係者にはいろいろと支援をいただいていますが、さらなる拡充等につき、何か適当なスキームができればと思っている次第です。また、新しいサービスを取り入れていく時、それぞれの局面におきまして、調査研究、開発あるいは実証実験というようなことをやっていく必要がございます。そういう点でも国のご支援をお願いしたいと考えております。
 以上です。
【多賀谷座長】  ありがとうございました。ただいまのご報告についてのご質問等ございますでしょうか。
 それでは、私から1つ。進むべき道として、安心・安全、便利、楽しい・面白い。便利と楽しい・面白いは、他の通信サービス、放送サービスと共通なわけですけれども、安心・安全のところがやはりケーブルサービスの特徴ということになるわけです。そうすると、この辺は営利性等とのバランスが難しいのですけれども、現実にはケーブルテレビというのは我々個人に極めて近いところにあるサービスになっている。例えば、これから我が国で、我々の世代も含めて増えてくる高齢者、特に独居高齢者等向けのサービスというようなものをおそらくかなり取り込むということがあり得ると。その場合に、ケーブルテレビは単に楽しい・面白い、便利だというだけではだめで、そういう高齢者のニーズ、安心・安全のニーズに即すということになると、それは極めてセキュリティといいますか、個人のプライバシーにも関わるような問題に多分入ってくると思うのですね。例えば、当然、ケーブルテレビは顧客に関する情報を極めて取得しやすい。だから、ケーブルテレビの方が、従業員の中で悪いことをしようと思うような人がいれば、独居老人等に対して、あるいは認知症にかかっているような方を騙すようなことは――そんなことを想定しては申し訳ないんですが、可能なわけです。その意味で、おそらくケーブルテレビがもし安心・安全な方向に行くということになると、コンプライアンスとは違うかもしれませんけど、その意味の、住民にとって信頼のおけるようなサービスとなるということが多分必要であり、その点は、他の住民とは相対的に距離のある一般的な通信・放送サービスとは違う意味がある。それ自体は収益に結びつかないですけど、しかし、存続するためには多分それは必要な面があるんじゃないかという気が、今、ご報告を聞いていて思いました。
【石橋構成員】  そのとおりでございます。セキュリティにつきましては、現状、正直申し上げまして、立派にできている局もたくさんございますが、やはり問題を起こしているというところもございます。これは社員の雇用形態とかいろんな原因がございまして問題が起きていますが、今、先生がおっしゃられた事柄は、まさにその通りでございまして、完璧じゃない限りそういうサービスをしちゃいかんということでございます。ですから、そういうサービスに特化した社員を教育するなり、あるいは自分でどうしてもできない部分は他の団体の人にやっていただくとか、自治体等とも相談しながら進めていくとかいうようなことじゃないかなというふうにイメージ的には思っています。おっしゃられている本質はそのとおりでございます。
【本間地域放送課技術企画官】  先ほどの政策投資銀行さんのプレゼンテーションで1つ、非常に新しい知見を得たところがありまして、エリアが拡大しても加入率がほとんど変化しないんだという調査結果がありました。事業者が成長を続けていこうとする場合、エリアの拡大、ARPUの増大、コストの削減といった方法によって収益幅を増やしていくということだと理解しており、その3つは全部やっていらっしゃると思うんですけれども、ところが、提供可能なエリアの中の加入率が全然増えていない。これを増やせばもっと成長がかさ上げされるはずですが、なぜ増えないのか。そもそも多チャンネルサービスを契約する人というのは平均的に二十何%しか世の中にいないということなのか、それとも、何かやればもっと上がるというものなのか。実際にビジネスをやっていらっしゃる事業者あるいは、連盟の立場で何かそこに知見があれば、教えていただきたいのですが。
【石橋構成員】  これは後で伊藤部長に追加していただいたらいいと思いますが、例えば今、100万世帯のところで加入率25%だとします。更に50万世帯の地域でサービスを始めたとすると、その年末は一気に25%まで行きませんから、全体からすると加入率は下がります。そういうものじゃないかなと思います。新しくサービスを開始したところは、年率例えば3%ぐらいでしか加入率はアップしない。一方、ホームパスとしては100%勘定に入ります。ですから、加入率としては表向き下がったように見えてくるということだと思います。
【伊藤情報通信部長】  本当にそういう要素が入ってのことではないかと思います。やっぱりホームパスが広がればどうしてもそういうような現象が起きてくることは事実だと思いますが、一方で、本当に飽和状態になっているかどうかというところについては、もう一回検証する必要があるのかなとは思います。
【本間地域放送課技術企画官】  わかりました。
【多賀谷座長】  それでは、次に移りたいと思います。続きまして、IPTVに関する取り組み等につきまして、日本電信電話株式会社理事・第三部門チーフプロデューサーの岸上様からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【岸上理事】  NTTの岸上です。よろしくお願いいたします。今日はお時間いただきまして、IPTVへの取り組みということで、主にNTTの立場からIPTVをどのようにとらえているかというようなお話をさせていただければと思っております。
 2ページ目に資料の簡単な目次で、この中に入っているものが今日のお話に――2010年代のケーブルというような像に適当かどうかよくわからないので、幾つかのところをピックアップしたいと思います。先ほどからも出ておりますが、IPTVの概観ということで、通信の方から見たイメージ。それから、IP再送信絡みの話。それから、地上デジタルのIP再送信に関する実証実験というようなものを今年の3月に行いましたので、その話。それから、情通審での第3次中間答申というのが今年の夏に出ておりますが、それをベースにした形での、H.264IPTVにおける位置付けでございますね。最後に、IPTVというのはNGNと呼ばれております次世代ネットワークとも絡みまして、さまざまな標準化が現在グローバルに動いております。その辺のお話を最後に持ってきております。
 この図は、総務省でおつくりになったものをそのままです。通信の動向というのと、放送の動向と、それから真ん中にそれらが連携とか融合という、いわゆるコンバージェンスのイメージで出てきているということでございます。それに私が加えたのはこの2つでございますけれど、1つは、なぜ日本が今、IPTVというような形でかなりいろんなマスコミ等に取り上げられて、なお産業界もそちらに動いているかというような意味付けといいますか、環境の話なんですが、1つは、薄型テレビがご存じのように日本のメーカーを中心にかなりのシェアを持ってきているということで、大型のフラットパネルディスプレイというものが出てきているというようなお話。それから、コンテンツに関しましても、HD、ハイビジョンのコンテンツが急速に増えてきている。これは、放送の方を中心に地上デジタル放送の方でベースがHDになってきているというところに呼応するんじゃないかと。それから、通信の方の環境としても、世界で一番安い単価のブロードバンドということで、この3つの要素が合わさりますと一つIPTVというサービスが見えてくるのかなというあたりが非常に重要なところかと思います。ちょっとその辺を加えてみただけの話です。
 通信の方は、例えば私どもNTTですと2010年に3,000万加入を実現するというようなお話をしておりますが、それがFTTHファイバーをベースにする光での伝送を行っていきたいと。それを現在の電話加入者――これは減り続けておりますけれど、固定電話約6,000万の半分の方を光加入というようなことが可能な環境にしていきたいというものが2010年の話でございます。
 通信とか放送とかということ、それからV系、IP系という、それぞれ相対立する概念ではないんですが、さまざまなところから一つの方向に徐々に向かってきているのかなと。通信の方は、通信業界、ここ数年、10年余り、いろんな形で揺さぶられておりまして、その容量も大きく変わってきたということで、水平・垂直展開というものが昔に比べれば随分ダイナミックに行われてきたかなと。それから、放送に関しましても、放送コンテンツのアーカイブ化あるいは二次利用というようなことが、ここ数年、法制度の整備も伴いましてかなり表に出てきたのかなと。それから、V系、IP系という書き方をしておりますけれど、ここでV系というのは、ケーブルで使われているような、先ほどQAMの話がありますが、64QAMとか256QAMとかと言われている、通信で言えばファイバーの中をWDMと言われております光多重の方式を使いまして、そのままRFをファイバーの中を流すというような技術。それから、最後にIPを使いましてIPの通信のプロトコルの上に放送のプロトコルを乗せて役務利用放送によってサービスをするというようなこと。こちらはどちらかというとプロトコル系ですから技術、こちらはビジネスの方ですが、一つの方向に持ってきて、先ほど石橋さんからもお話がございましたけれど、やはり楽しいコンテンツというようなものは私どもも非常に重要だと思っております。最終的にはやはりコンテンツを中心とした再編成というのが行われるのが健全な形かなと思っています。この再編成って、別に会社の再編成とか業界の再編成という意味じゃなくて、徐々にコンテンツが媒体を最大限に生かすような形で変わっていくんじゃないかというような意味です。その中の一つ重要なキーワードとして、メタデータというような概念をここでは取り上げております。メタデータというのは、データの属性というような難しい言い方をしますが、要は、あるコンテンツがどういうような属性を持っているか、だれが作って、どういう権利があって、幾らで販売して、どこで流れるか、あるいはH.264でコーデックされているとか、MPEG−2でされているとか、そういうような情報を一般的にメタデータと呼んでいるというような話です。
 次のページはIPTVの話でございます。IPTVという言葉は、日本語としても徐々に市民権を得ているのかもしれませんが、非常に広い意味あるいは狭い意味、さまざまな形で使われてしまっているかと思っています。ここに書きました、あえて英語で書いてありますけど、これはITU−Tの国連で定義されたIPTVの定義文でございます。だからどうのこうのということはないんですが、一般的に私どもIPTVという言葉を使うときには、その中にはIP放送、いわゆるマルチキャスト系を中心とするIP放送、この中には自主放送、多チャンネル、モアチャネルの話とかIP再送信の話とか幾つかのものが含まれますが、IP放送。それから、VOD、こちらはオンデマンドで自分が欲しいものをとってくる。主にユニキャストと呼ばれております通信の方式を使って持ってくるもの。それから、ダウンロード、テレビの中あるいは外にディスクがあって、その中に自分の欲しいものをためて見ると。この3つのサービスというのがあるのかなと思っています。それを送る通信の方式としてユニキャストとマルチキャストという方式がございます。それから、流れるコンテンツ自体は、リアルタイムで流れているストリーム系の話、それから、リアルタイムで必ずしも見るとは限りませんが、この蓄積装置にダウンロードして見るというような形で、さまざまなマトリックスになるのかもしれませんが、こういうようなことがまずIPTVという言葉を使うときには重要かと思っております。
 そのIPTV、今の話をもう少し展開したのがこの図でございます。これは、申し訳ないんですが、通信事業者の立場だけから見た絵になっているかもしれません。一番下にネットワークがあって、端末があって、先ほど出ましたメタデータと言われるものがあって、一番上にサービスがあると。サービスの種類といたしましては、今お話ししたようなもの、あるいはそれの発展形としてセル型とかレンタル型と言われているようなもので、ユーザーが自分であるコンテンツを購入してハードディスクにためておくというような形も含めたモデルですね。それを担う事業者として、放送事業者あるいはサービスプロバイダー、それから端末の部分は当然のことながらメーカー、それからネットワークとして我々通信事業者というのをここで書かせていただいております。インターネットで送る場合、あるいは別にNGNでなくてもいろんな形でのマネージドされたネットワークで送る場合というのが、2つ大きく分けてあるのかなと。それから、端末の部分は、1つはPCとか携帯とかiPodと言われるようなかなり自由な、これはインターネットとつながる場合が多いと思いますが、そういう端末と、それからテレビ受信機そのもの、それからもう1つはSTBというものですね。このSTBというのがテレビ受信機に内蔵されるというようなこともこれから考えていかなければならないのかなというふうに考えております。
 次のページはちょっと技術的ですので飛ばしてもいいんですが、受信機のリファレンスモデルなんです。簡単にご説明しますと、左側から、放送の信号と通信の信号が入って、受信機の中でさまざまな暗号を解いたり、あるいはコーデックと言われている圧縮されているH.264とかMPEG−2とかというのをデコードしたりというようなことが中で行われていますよというイメージですね。
 次のページはIPを用いた再送信する場合の話で、さまざまな方式があるかに理解しております。現在行われているケーブルによるパススルーを使ったデジタル放送、地デジの再送信と、それから、私どもの方でもやっておりますが、光を用いたRF、すなわちファイバーの中をRFが飛び交うというような方式。それから、一番力を入れておりますというか、非常に技術的に難しいところもありますので、開発を進めておりますけれど、IPを用いて――放送の簡単なプロトコルをここに書いてありますけれど、それをIPの上に乗っけて運ぶ方式というようなことで、この辺はまだ標準規格とか技術的に優位な方式というようなものがなかなか見えない部分でもありますが、この辺が開発の一番力が入っているところかなというふうに思っております。
 次のページもちょっと技術的で申し訳ないんですが、どういう形で通信で運ぶかというイメージなんですけれど、放送というものは、MPEG−2 TSの上にデジタル放送のフォーマットがいろいろあって、それが電波の上で運ばれると。これはたまたま私どもの関連会社で4thMEDIAというのがございまして、そこで行っているIPTVなんですが、通信の通常のプロトコルの上に独自のフォーマットを乗っけて運んでおります。今後、IPTVを行う上には、このグレーで書きましたIPのプロトコルスタック、下がいわゆる通信の部分で、それから上が放送の部分ということで、間にMPEG−2 TSを乗っけておりますけれど、通信のプロトコルスタックの上に放送のプロトコルをそのまま乗っけて運ぶというようなことが必要になってこようかと。これによってIP規格で再送信するということが実現されるということでございます。
 今、主にIPで運ぶというのはIP再送信の部分だけお話しいたしましたが、既に現在、私どもだけではなく複数の電力系あるいは他の通信事業者等でも行われておりますけれど、大きく分けまして放送サービスとIP放送サービスあるいはRFを用いた放送系のサービスとVOD系のサービスがございます。それも2つに分けますと、先ほどのRFと言われている方式と、それからIPの規格で伝送するという方式があります。通信の方ですと通信役務利用放送事業者というところがそれのコンテンツを運ぶ主体となりまして、1つは地上波あるいはBSCSの再送信というようなことを行う。これは、RFで行う場合はほぼケーブルと等価のやり方になろうかと思います。それから、IPマルチキャストで運ぶ場合、これもCSの部分の一部の再送信ということを今行っているところでございます。それに合わせましてオンデマンドというものをパッケージでご提供するというようなサービスを行っているところです。
 次のページは、その一部、オプティキャストという会社とやっているものの細かい図なので、詳細は省略いたしますが、左の方の衛星からの電波あるいは地上波のアナログ・デジタルを受けまして、通信を担っておりますどこかの局に送出設備を置いて送信すると。マンションとか一戸建てに一番近いNTTの収容ビルでそのファイバーで来たものを受けて、インターネットの信号と重畳してファイバーでお送りするというようなことを行っております。これはあくまでファイバーの上をRFが流れると。それと同時に、WDMという1本のファイバーを複数の色の信号が流れるという方式が使えますので、光波長多重でIPは別の色――色といいますのは、どちらにせよ赤っぽい色を使うわけですが、少し波長の違うものを使って送るというようなことを行うというやり方です。
 次のページは、もう1つのやり方としてIPの方式があるということで、これは一部、先ほどお話しいたしましたように、CSの再送信をこれを使ってやっているという状況でございます。やはり受け手、送出設備でIPの多重化を行いまして、NTTの場合はv6網を使っておりますが、v6を使って東西の収容ビルに送ると。それから家庭までファイバーで送ってきて、IPSTBで最終的にテレビで見るというようなイメージでございます。
 次のページは、CSBS、地上波の流れに今の通信役務利用放送の流れをずっと足したものですね。通信役務利用放送法の施行以降、ヤフーさん、KDDIさんも含めて、いろんな形で今の放送の再送信というような形、RFを使ったものとかVODのサービスとかということが進んできたというようなことでございます。
 いろんな形でのIPTVがあると思うんですが、インターネット放送と、この言葉の使い方も非常に微妙なんですが、通常のインターネットを使ってもあるレベルまでの放送ライクなもののそういうサービスが実現できると。ただ、インターネットですので、一つのASといいますけれど、ある単一の事業者がコントロールしているネットワークだけでなく、複数のネットワークをまたがって信号が来ると。コンテンツを提供しているサーバーがどこかにあって、そこから複数のインターネットを通じて最終的に来るというようなところで、その品質あるいは信頼性とか、あるいは秘匿性とかというようなところがいまいち、インターネットがオープンな世界ですので、どうかというような問題がこれまではございました。
 地上デジタル放送に関しましてのIP同時再送信というようなことを考えますと、先ほどのような網ですと、放送事業者からのさまざまな要求条件――ここでは大きく4つ書いております。一番最初にいわゆる地域性の担保と言われるもの、それから同一性の保持、それから全チャンネル同時に伝送される、あるいは遅延がどの程度かというようなことがなかなか実現されないということで、v6のマルチキャスト網を使いまして今年の3月に、これは三鷹の方で行いましたけれど、IPマルチキャストの地デジ、東京における民放5チャンネル並びにNHK2チャンネルの再送信実験を行いました。このときはMPEG−2TSの上にMPEG−2のコーデックプロトコルをそのまま運びましたので、ずっと最初から最後までMPEG−2ということで、これに関しましてはリーズナブルだというような評価もいただいたところでございます。
 次のページは、そのときの調査内容ということで複数書いておりますけれど、例えば、地域性の担保においては一定の限定がされているというような確認。あるいは、同一性に関しましても、編成においてまで全く同一だというような話。あるいは、遅延に関しても一定の許容範囲にあるのかなと。それから、ザッピングと言われます、チャンネルを変えたときの速度なんかも、ほぼ現在の地デジと変わらないというような状況でございました。
 17ページ目は、地域性の担保で、ある地域から他の地域に送るときにネットワークの中でブロックされる、あるいはなりすまし等でだれかが他の地域で、例えば東京の人が大阪の放送を見ようといったときに両方でブロックされてしまうというようなことが起こります。
 それから、遅延に関しましても、ザッピングの話も含めて許容範囲であったというような結果を得ております。もしこの辺は何かございましたら、後からご説明いたします。
 それから、19ページ目に入りますが、今年の夏に第3次中間答申というようなことが出まして、それの関連部分を少し取り出したものでございます。同一再送信において、先ほどMPEG−2の話がありましたけれど、新しいコーデックとありましたが、H.264AVCというようなものを用いた場合どうなのかというような話等々が載っております。
 次のページ、今のH.264のところだけを少し抜き出したものがこれですが、MPEG−2からH.264に変えるときに、アンテナで受けたときにはMPEG−2で当然受けているわけですが、それをトランスコードする、すなわち、MPEG−2からH.264に圧縮の符号化方式というものを変換することになります。これはただ単に絵の部分を変換するということだけなんですが、実は編成ということを考えますと、同時に乗っかっております番組情報、EPGのベースになりますSIPSIというような情報とか、データ放送とか、さまざまな情報が一緒に送られてきています。それを同じような編成で送らなければならない。ここのところが結構大変なところでございます。最終的にはH.264に乗っけたものを送るというイメージです。
 次のページ、今のところを少し強調したといいますか、詳しく述べたのがこれですが、MPEG−2でデータ放送等はそのまま送りますが、H.264に関しては映像の部分だけを引き出しましてトランスコーディングを行うというようなことを行って、もう一度多重化をして送り出すと。そうしますと、最終的に右側のスタックのようなもので送られてくるというようなイメージでございます。
 最後にIPTVの標準化というのはどんな形で行われているかというようなことをグローバルに1枚で出したのがこの絵です。やはり一番大きな話はITU−Tで議論されている話で、現在までに、今年の4月から始まっていますけれど、2回、正式の会議が行われまして、3回目が来年の1月20日、22日ぐらいからアメリカ西海岸で行われます。そのITUの動きは、何もITU−Tだけが独自で動いているわけではなく、ATISと言われているアメリカを中心とするところ、あるいはETSI、ヨーロッパ系、それ以外にDVBとかDLNAとか、グローバルな形でいろいろな部分を標準化していきます。このいろいろな部分というのは、左側からコンテンツを作って、配信して、ネットワークで受けて、最終的には家庭内のネットワークで受けるというような流れの中でそれぞれに持ち分があるというようなことで、もちろん重なっております。このITUの中は6つのワーキングで、例えば先ほどのメタデータというのはこの6番目に含まれますし、1番目が今一番議論が盛んですが、アーキテクチャの話をしましょうねというところが、今、一番元気なところです。そういうような形でさまざまなところでIPTVの標準化を行ってくるというITU−Tの中の状況と外側との関係で、他のところで決めたものはITU−Tに持ってきましょうと。それから、日本の方なんですが、あえて1つしか書いていませんけれど、これはIPTVフォーラムということで今年の夏ぐらいから徐々に動き出してきたもので、その中にもマルチキャストの話とか、あるいはオンデマンドの話とかございますが、この辺が1つ中心になっていくのかなというふうに理解しております。
 NGNは、現在、リリース2というようなものの検討に入りつつあります。NGNというのはもともと、ネクスト・ジェネレーション・ネットワークですから、ネットワークの規格を決めるところですが、そのリリース2というところでIPTVの話を主にこれからやっていきましょうねということで、今まではネットワーク専用の話をしてきたんですが、その中にIPTVが入るというようなところだけ、ここではお話ししておきます。
 次のページは、先ほどのWGの1から6までで何を話しているかというのを、参考までにここに挙げておきました。左側のアーキテクチャのあたりが1で、右下が6というようなイメージです。
 これ以降はちょっと英語でごちゃごちゃ書いてあるところもありますけれど、もしITU−Tでどういうことが話されているかというようなことがありましたら、少しエッセンスだけを抜き出して参考までに資料としてつけたということですので、飛ばさせていただきます。
 私からは以上でございます。
【多賀谷座長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきましてご質問等ありましたら、ご自由にお願いいたします。
【中村構成員】  大変豊富な説明で、お聞きしたいことが多々あるんですが、日本でのIPTVのスケジュールについてはどんなふうに考えておられますか。
【岸上理事】  それは各事業会社ごとにもちろん違うと思っていますが、皆様のイメージというのは、来年度の終わりぐらい、すなわち2008年の1月、2月、3月あたりから徐々に出てくるんじゃないかと。NTTのお話だけで言いますと、今、NGNトライアルというのを進めてき始めたところでございますが、これを1年間行います。1年間行うということは200712月までで、その後、できるだけ速やかにビジネス化できるものはビジネスにしていきたいというようなところですので、それから考えると2008年の初めぐらいからできればいいなという状況ですが、技術並びにメーカーあるいはいろんな方のご協力、並びに、場合によっては制度等の環境整備というものも必要かもしれません。大体そんなところかなと思っておりますが。
【中村構成員】  受信機の方の見通しはどうですか。
【岸上理事】  受信機、これが一番大変でして、私はお答えできる立場には全然ないんですが、今、いろんなところでお話はさせていただいております。受信機は最低でも1年から1年半、あるものをつくるのに必要だというふうに言われておりますので、その前に規格を決めなければならないというようなところから、今現在、それはどれで行くかというのが決まった状況ではまだない。それに近いのかもしれません、状況としては。そうしますと、最低1年という線を引くと先ほどぐらいのところかなと。ただ、商品規格の分野というのは私どもは何も立ち入れませんので、実際に春モデルとか秋モデルとかどういう形で出すのかはわからないですが、それにアベイラブルな規格としましてはできるだけ速やかに決めていただきたいというふうには思っているところです。
【中村構成員】  もう1つ、今の説明はFTTHを前提にしておりますね。ところが、ケーブルの実態というのはHFCですよね。その場合に、STBの入力側なり出力側で注意しておかなきゃならないという点は何か検討されておることがありましたら。
【岸上理事】  私どもは、HFCを前提にという検討をしたことはあまりございません。申し訳ございませんけど。最終的にどういうインフラでやっていくかというのは、ある種、それぞれのメディアの特性で一番いいものを使えばいいと思っておりますが、ただ、やはり最終的に重要なのは、その上でのコンテンツ、楽しい・面白いというお言葉が先ほど石橋さんからございましたけれど、その辺をいかに速く、なおかつ、ある意味それでビジネスとして成り立つところに持っていくためのインフラだというような位置付けだと思っておりますので、FTTHが、あるいはHFCがというような話は、多分、それぞれのいいところを使っていけばいいのかなと。たまたま通信の方ではずっとファイバーでというのを掲げてきましたので、私どもはそこで今進んでいるだけというような、ちょっとお答えになっていませんけれど。
【中村構成員】  どうもありがとうございました。
【多賀谷座長】  今の話と若干関係するんですけれど、今日の新聞を見ていましたら、アメリカでFCCが通信事業者に対してCATV参入を認めるというようなことですけれども、今お話しのところのIPTVは、ファイバーを前提として議論をされ、今、岸上さんからご説明があったわけですけれども、今後、日本の場合にファイバーがどこまで敷設されるかということですけど、都市部についてはそれなりにファイバーは敷設されていくだろう。しかし、日本全国すべてそれが敷設されるとは限らない。ローカルな部分についてはHFCのケーブルのネットワークはあるし、ケーブルもなしにワイヤレスでもってつなぐというようなところもある。そういう状況は多分2015年まで続くんだろうと思うんですね。そういう場合に、NGN構想というものがどういうふうに、あくまでもファイバーを前提とした議論にするのか、それともそういう共存といいますか、そういう併存したところでもなおコンテンツベースで共通なサービスというのを志向するのか、技術的な観点からどう考えられますでしょうか。
【岸上理事】  非常に難しいご質問だと思います。確かに20103,000万ということは、残り3,000万どうするんだというようなお話になろうかと思います。特にルーラルエリアにおきましてはファイバーも難しいですし、例えば地デジの普及に関する話で言いますと、ギャップフィラーというような無線を使ったやり方もあろうかと。何もすべてがファイバーあるいは他の方式というものじゃなくて、それぞれのメリットを生かした形である種のインフラは敷かれれば私はいいんじゃないかなというふうには思っております。重要なのは、ユーザーから見たときに、それらがある意味シームレスに使えれば、それがどういう物理的インフラあるいはどういうプロトコルかというのは隠ぺいできるはずですので、健全な形であれば、そちらの方向に全体が進めば多分いいんだろうなと。ただ、NTTの立場といいますか、今、NTTNGNというものに邁進しておりますので、まずはそちらの方向でかなり進めたいとは思っているんですが、それをやったとしても、日本全国津々浦々までやるということがもしできたとしても非常に時間のかかる話で、少なくとも2010年のレベルでは加入者数にして半分、カバー率にすればどうかわかりませんけれど、なので、どこかでいろんな形での相互接続とか連携とかということが当然起こるんじゃないかと個人的には思っております。
【多賀谷座長】  ルーラルの場合、そういう形で併存するでしょうけど、都市型の場合には都市型ケーブルとまさにファイバーと両方並行にあるわけですね。その場合、NGNはどういうふうになるんでしょうかね。都市型ケーブルテレビとの関係においてはですね。
【岸上理事】  おっしゃるとおり、都市部におきましてはある種、そこのところは、そのレイヤーだけ見ると競合関係になる可能性もあるかと思います。じゃあ、それをどうすればユーザーから見て一番メリットのある形にできるかというのは、今後、私どもの中でも、RFがいいのか、あるいはIPがいいのかということを言いながらも、NTTグループは両方とも今動かしているところで・・・・・・。
【多賀谷座長】  NGNの中で両方ともやるという・・・・・・。
【岸上理事】  いや、NGNの中といいますか、例えば先ほどのRFというのは、NGNの中には多分カテゴライズされない方式だと思うんですね。ただ、じゃあNGNを始めたからRFをすぐやめるかというと、そんなこともない。通信なり放送なり、ケーブルももちろんそうだと思うんですけど、1回メディアを走らせますと、そう簡単にころころは変えられないという状況ですので、その中のバランスをどういうふうにしていくかというのは、なお時間をかけて今後検討していくとしかちょっとお答えできない状況です。
【後藤座長代理】  実証実験の対象地域の限定ですけれども、これは例えばIPアドレスなどというご説明でしたが、それは大体IPアドレスによる限定という方法が比較的コンセンサスなんですか。それとも、もう少しきつめの認証であるとか何か制限みたいなものも想定するんでしょうか。
【岸上理事】  そのあたりはどちらかというと後藤先生の方が専門だと思われますので、ルーティングの話はちょっと置いておきますけれど、1つはやっぱりネットワークの地域性というものを地域限定のネットワークというような引き方もしていますので、いわゆる地域IP網ですね、そういうようなものを使うやり方。あるいは、より限定を行うために、今で言えばB−CASカードということで認証しておりますけれど、地デジで行っているのと同じような――全く同じ方式を使うかどうかはわかりませんけれど、それぞれにCASあるいはDRMというようなものを入れまして、これはコンテンツ保護の兼ね合いもありますし、あるいは課金等が必要なサービスへの提供というのもございますけれど、それを用いた限定を受信機側に置いたCASのシステムの方でも行うということで、複数の方式でやるということを考えております。
【後藤座長代理】  もう1つ、遅延のお話で、これは岸上さんのご説明の中でも十分ありましたし、資料にも書かれているんですけれども、これは地デジの直接のテレビの受像機と比べた場合において、1秒から2秒。これは測定結果ということですが、分布があるということですよね。この遅延時間の長さはネットワークの構成等を見れば大体予測がつくような感じの分布になるんですか。
【岸上理事】  実はそこの中をお話しいたしますと、いろんな要因がございます。1つは、まず、その比較のベースになります地デジの方の速度といいますか、例えば同時にあるチャンネルに合わせたと。そうすると、どちらかが速く出て、どちらかが遅く出て、その差というのでできるかもしれませんけれど、そのときに地デジはカルーセルというものの中で回っていますので、たまたまタイミングがカルーセルのあるフレームが来たときに合えば速いというようなこともあって、そのベースになるほうの速度というのが、そういう比較をすると少し変わるということ。それから、遅延に関する主な要因というのはネットワークではなく、いわゆるエンコードデコードの部分が結構大きなところがございまして、そこのところの要因というのはネットワークに比べると1桁、2桁ぐらい違う値なんですね。したがって、ネットワークの揺らぎ、ジッターというのはそれなりにはございますけれど、それをはるかに超える遅延要因というのは、受信機自体が持っているデコードの時間、あるいは、一旦、局で送信設備のあるところで受けて、それをエンコードするときの時間、そちらの方が主な要因になっています。
【後藤座長代理】  秒単位ということですから、ネットワークというよりは、受像機側も含めた設備ということで見れば、その性能でおおむね推察ができるのでしょうか?
【岸上理事】  そうです、はい。
【後藤座長代理】  ありがとうございました。
【多賀谷座長】  それでは、次の議題に参ります。前回会合で報告書の大まかな構成についてご確認いただきましたが、事務局でもう少し詳細な目次案を作成しましたので、これについて議論してまいりたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】  まず、今後のスケジュールについてご説明申し上げたいと思います。
 本日、これまでの議論を踏まえまして、資金を融通する金融機関の政投銀から見たケーブル業界、それから、視聴者・利用者の視点に立ってこれからどうやって選ばれ続けるのかというケーブルテレビ業界としての取り組み、それから、NTTIPTVに関する取り組みについてプレゼンをいただきました。また後ほどご説明いたしますが、事務局で外部のシンクタンク野村総研に2015年のケーブルテレビを取り巻く市場動向の調査委託を行っていきたいと考えてございます。そこで、今後につきましては、これまでこの研究会におきまして各事業者様で行われている先進事例のお話、それから公共性とか公益性等に関するこの研究会での議論、それから本日の視聴者・利用者の視点に立ってどういうサービスをしていくかというお話、それから資金提供者としての金融機関の視点のプレゼン、それからケーブルを取り巻くプレーヤーのNTTからのプレゼン等と、それから併せまして外部のシンクタンクの調査研究と、さまざまなご意見・素材のインプットを踏まえまして、2010年代、ケーブルテレビが健全な形で切磋琢磨していかに発展していくかというような観点を踏まえまして、事務局で報告書案に関するたたき台を作成させていただきます。来年1月から3月の間で研究会で議論させていただきまして、来年度早々には報告書として決定いたしたいというふうに考えてございます。スケジュールが若干後ろ倒しとなっておりますが、何とぞよろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料9−42010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」報告書目次(案)につきまして、簡単にご説明させていただきたいと思います。
 「1 現状認識」としましては、放送を取り巻く環境ということで、前回も通信・放送の融合の加速ということを掲げさせていただきましたが、もうちょっと融合の範囲を分割いたしまして、インフラの部分の融合、それから、端末、事業体としての融合、国としての研究会等々をまとめたいと考えてございます。それから、「地上テレビジョン放送の2011年のデジタル化」といたしまして、基本的な考え方、現在までの状況、今後の方策についてまとめたいと思っております。「国の政策展開」といたしましては、マス排の見直し等放送業界の規律の動き、それから、通信分野のIP時代の競争政策の動き、それから昨今の著作権法の改正、コンテンツ取引の規律の動向等を「(1)放送を取り巻く環境」でまとめたいと思います。
 「(2)ケーブルテレビの現状」として、ケーブルテレビの現在の加入世帯数とか経営状況とか実態をまとめたいと考えてございます。
 「(3)ケーブルテレビの変化の潮流」ということで、さまざまな放送以外のサービス、インターネット接続からクアドロプルプレイサービスと言われるところまで行われている現状をまとめたいと考えております。それから、公設公営型のところでやられているような行政との連携強化の話。それから、技術開発の動き。それから、経営体の話としてMSOとか事業者間連携の現状についてまとめたいと思います。
 「2 ケーブルテレビのあるべき姿に向けた課題と諸方策」ということで、(1)は、前回のご指摘を踏まえまして、ケーブルテレビの位置づけ、ケーブルテレビの特性ということをまずまとめさせていただきたいと考えてございます。
 そこで項を分けまして、(2)といたしまして2010年代、10年後のケーブルテレビのあるべき姿というのを、2015年における我が国を取り巻く環境を踏まえ、ケーブルテレビとしてどういう役割を果たしていくのか。放送の話、通信としてユビキタスの話、地域密着、国際基準、経営体の話に触れたいと思っております。
 (3)といたしましては、その途中過程における2010年までに当面の課題と諸方策としてどういうことをやっていくかということで、これについては第6回の研究会で議論させていただきました内容をその後の議論を踏まえましてブラッシュアップさせていきたいと思っております。内容といたしましては、第6回の基本的に掲げられているものをまとめておるものでございます。
 最後に「まとめ」といたしまして、2(3)で出てきた課題と諸方策の中で国としてやるべきと考えられるものを整理してまとめたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
【多賀谷座長】  それでは、ただいまの報告書目次案につきまして、ご質問あるいはご意見ございましたら、自由にご発言願います。
 何かご意見ありましたら、できるだけ早く事務局の方に、個別にでもいいですけれども、構成員の皆様からお申し出いただければと思います。
 本日は、今後のケーブルテレビの取り組み等に関するヒアリングと、報告書の目次案について検討してまいりましたが、これまでの議論を踏まえ、事務局において報告書案を作成いたしますので、次回会合で詳細に検討してまいりたいと思います。
 それでは、本日の議事はこれで終了しますけれども、事務局から連絡事項がありますので、お願いいたします。
【井上地域放送課課長補佐】  先ほども申し上げましたとおり、ケーブルテレビを取り巻く市場の動向につきまして事務局にて調査研究を実施する予定でございます。この市場調査の検討におきましては、構成員の皆様の知見を賜りながら調査を行いたいと考えてございまして、その概要につきましてご説明させていただきたいと思います。
【北林主任コンサルタント】  野村総合研究所の北林と申します。よろしくお願いいたします。
 この研究会と並行する形で、2010年代におけるケーブルテレビを取り巻く業界動向、それから市場動向の調査研究を実施させていただきたいと思います。
 本調査では、2010年代のケーブルテレビのあるべき姿の検討のための基礎情報といたしまして、今後のケーブルテレビ業界に大きな影響を与えるであろう要素がどんなものであるか、それに基づいてどういった姿があり得るのかという業界のシナリオを構築していくこと、それに基づきまして、市場の動向、加入者世帯数ですとか市場規模のような予測をしてまいることを目的としております。
 本調査におきましては、調査手法としてシナリオプランニングというものを用いたいと思っております。ケーブルテレビ業界の将来予測に当たりましては、影響を及ぼす要因が数多く存在しておって、しかも不確実性が非常に高いという認識を我々は持っております。ということですので、本調査では将来予測1本の普及、例えば普及の曲線を1本だけ引いておしまいというわけではなくて、複数のシナリオ、あり得るべき未来というのはどういったものがあるのかというものを想定して、その中で、では、こういう形になった場合、こういう未来になった場合はどういうふうに対処すればいいのか、あるいはこうならないようにするにはどうすればいいのかという視点から、多角的に業界の未来を予測していこうというアプローチをとっております。私ども自身でも、例えばブロードバンドの普及動向ですとか、10年スパンで普及予測等させていただくこともございますが、その際はやはり右肩上がりの線を1本引いておしまいというところが通例でございます。ケースによっては、上位ケース、下位ケースと3本ぐらい線を引くことがございますが、やはり不確実性が多い業界においては、1本線を引いただけでおしまいというのでは、どこまで実効性があるのかなというところもございまして、今回、特にケーブル業界、今後、非常に大きな転換期を迎えるという認識がございますので、このシナリオプランニング、複数のシナリオを予測するという手法を採用させていただきたいと思います。
 具体的にどういったアウトプットイメージになるのかというものを次のページの図にお示しさせていただいておりますが、上の四角の部分ですね、4つのケーブルテレビ事業における環境のシナリオを想定するような形を考えております。こちら、将来、ケーブルテレビ事業に対して大きな要因を与えるものは何なのか、さらに、その中で不確実なもの、特に大きな影響を与えつつもどう転ぶかわからないものを2つピックアップして、それぞれ2つを掛け算して合計4つのシナリオを構成しております。ここはあくまで現時点でのアウトプットのイメージでございますので、今、これが現時点の仮説というわけではない点、ご了承ください。
 例えばですが、有料放送市場の動向、上の方の軸が、今後、増加していくのか、それとも頭打ちなのか。それから、IP放送の普及、していくのか、それとも難視対策に限定されるのか。この組み合わせに掛ける2で4つのシナリオをつくって、例えば有料放送の需要が今後も増加し続けて、それからIP放送が広く普及するのならば、1)にありますように、放送・通信の融合が実現するという未来が待っていると。あるいは、有料放送の需要が頭打ちで、さらにIP放送も難視対策に限定される、そういうようなことであれば、4)にありますように現状維持の未来が待っているというような形で、今、どちらに転ぶかわからない、でも、非常に影響度が高い要素というものを幾つかピックアップをして、その組み合わせで複数の未来を想定しようという手法で市場の予測を行っていくということを想定しております。
 調査のスケジュール等でございますが、基本的に、消費者アンケート調査、それから後ほどご案内させていただきますが、構成員の皆様方にもアンケート調査を行いまして、1月の中旬ごろに調査事務局より、今のところ電子メールにてのアンケートを想定しておりますが、アンケートを実施させていただきたいと思います。その集計をもちまして、2月の段階で速報版、最終的には調査報告書を年度内に完成させるという予定で進めております。つきましては、1月中旬ごろに構成員の皆様方にも本アンケートのご協力をお願いいたしたいと思います。アンケートの内容、それから、どういった形でのご回答をお願いしたいかという点につきましては、また後ほどご連絡をさせていただきたいと思いますが、まずはこういう調査であるということをご理解の上、ご協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【井上地域放送課課長補佐】  本調査につきまして、皆様のご協力を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。次回は1月の開催を予定してございまして、日程につきましては座長ともご相談の上、別途またご案内させていただきたいと思います。
 事務局からは以上でございます。
【多賀谷座長】  それでは、本日の会合はこれで終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。

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