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2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会(第11回会合)

平成19年3月20



【多賀谷座長】  ただいまから「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」第11回会合を開催いたします。構成員の皆様方には年度末のご多忙の折、ご出席いただきありがとうございます。
 それでは、まず最初に、資料の確認をお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】  それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。資料は座席表・議事次第のほか、資料11−12015年におけるケーブルテレビを取り巻く市場動向の調査研究報告書」(株式会社 野村総研説明資料)、資料11−22010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会報告書素案」の2点でございます。席上の皆様につきましては、参考資料としてA3版の報告書をまとめたもの、一ヶ月間の間に構成員の皆様からいただいたご意見、前回会合の報告書素案との新旧、それから、前回会合の議事録をつけさせていただいております。なお、傍聴の皆様には、今申し上げた資料につきましては割愛させていただいております。資料に不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
【多賀谷座長】  それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日の会合では、まず事務局において実施している市場動向の調査研究について報告していただき、その後、本研究会の報告書について、事務局が作成した素案に基づいて、議論してまいりたいと思います。それでは、事務局よりご説明願います。
【井上地域放送課課長補佐】  それでは、当課にて実施しております「2015年におけるケーブルテレビを取り巻く市場動向の調査研究」につきまして、調査を委託しております株式会社 野村総研北林主任コンサルタントよりご説明をお願いいたします。
【野村総研(北林)】  野村総合研究所の北林と申します。よろしくお願いいたします。
 このたび2010年代におけるケーブルテレビを取り巻く市場動向調査を実施いたしました。この調査では2015年をめどに、それぞれケーブルテレビがどういうふうな環境に置かれて、どういう発展を遂げていくのか、それに応じて複数のシナリオが考えられる。そのシナリオはどういったものなのかということを念頭の置きながら、予測をしたものでございます。ご説明はお手元の資料、それから、前のディスプレーに映っておりますものを中心に、説明させていただきたいと思います。こちら配付している資料と同じものでございます。
 まず調査の目的でございますが、本調査は2015年のケーブルテレビのあるべき姿の検討のための基礎情報として、ケーブルテレビ業界に重大な影響を与えるであろう要素を抽出、その中で何が特に影響が大きいのかというところを踏まえた上で、市場の予測を行うことを目的としております。予測手法といたしましては、複数のシナリオを想定するという、シナリオプランニングの手法を用いております。市場予測におきましては、1本の線を引くだけではなくて、不確実な事象に伴って複数の市場の姿を想定して、それぞれの姿を予測していくという手法をとらせていただております。これによって比較的バランスのとれた施策のオプションが組めること、それから、変化の予兆を見て軌道修正が可能であること、というようなメリットがございます。特に、今後、ケーブルテレビ業界におきましては、非常に不確実な要素も多うございますので、今回、このシナリオプランニングという手法を用いて動向を予測しております。
 構成員の皆様には1月に、このケーブルテレビの業界に対して、今後、大きな影響を及ぼすであろう要素というのは何か、その中で特に影響が大きいものはどれとお考えかということに関しまして、アンケート調査にご協力にいただきました。大変ありがとうございました。こちらのスライドでは、その影響度評価のアンケートの結果を載せております。アンケートは1月の最終週で行わせていただきまして、9名の方から回答をいただきました。今回、影響度スコアという形で、皆様にはそれぞれの要素につきまして、大きなプラスの影響がある、ある程度プラスの影響がある、増減に影響はない、ある程度マイナスの影響がある、それから、大きなマイナスの影響があるという5点、5つの選択肢からそれぞれ1つを、選んでいただくという形で評価をいただきましたが、今回、方向性に関係なく影響度の大きさをもとに平均値を算出して、影響度スコアという形で集計を行っております。この中で特に影響度合いの絶対値が大きいものは何かと、皆様で意見を集約したらどういう順番に並ぶのかというところを、まとめさせていただいております。
 こちら左側のほうに順位、1位から上位20位の要素を挙げさせていただきました。皆様、やはり共通してお持ちの認識としては、衛星放送事業者の光放送の積極展開であったり、あるいは、通信事業者やネット系の事業者で、STBを一気に浸透させるような事業者さんの登場であったりと、いう形で、通信系のサービスが一気に普及するということに対して、非常に影響度が強いというご認識をお持ちというところが、今回の結果から見てとれたところでございます。それから、3位にあります地上デジタル放送のIPマルチキャスト再送信も、もちろんこの流れに入ってくるかと思います。20のこの要素の中にこのトピックに関連するものが、非常に多く入ってございまして、やはり、今後、影響を与える要素としてこの動きというものは、皆様の認識は一致しているところとして挙げられていると考えております。それから、もう一つの特徴といたしましては、4位の通番で8−5と振らせていただいておりますが、ここにありますセキュリティ関係のなど、ケーブルを通じて放送以外の新たなサービスが開始される、それから、視聴者側でもそういったセキュリティに関するニーズが増大する、これも新たなサービスでケーブルテレビの加入世帯の増加につながるという意味で、影響度が非常に強くあらわれるのではないかという意見もございました。それから、真ん中の列になりますが、そのほか自治体のサービスの電子化であったり、地方自治体によるデジタル化支援というところにも、影響度が高いのではないかという意見がございました。
 以上、この結果を踏まえまして、私どもの中で影響度が高いもの、この中でも確実に影響を及ぼすものと、それから、発生確率が今のところまだ不明確なもの、不確実なものにより分けて、この影響度が高くてさらに不確実性が高いものに関しまして、それをもとにシナリオを構築していくという作業を実施いたしました。今回、シナリオの構築軸として不確実性のうち、影響度の大きい上位3つを採用いたしました。この上位3つといいますのは、トルプルプレイの需要が今後伸びるかどうかというところ。それから、IP−STBの急速な普及が行われるかどうかというところ。それから、3番目が、地上デジタル放送の難視対策として、ケーブルテレビの加入を選択、あるいは、継続するのか、それとも、視聴者が、実際、直接受信に切りかえるのかどうかというところでございます。
 先の2つの、ユーザーのトリプルプレイ需要と、それから、IP−STBの急速な普及、これは軸として1つに合成をいたしまして、これを軸の1、それから、地デジ難視対策としてのケーブルテレビ加入、これを軸の2として、この掛け算でシナリオを構築いたしております。具体的には次のページにございます6つのシナリオを、今回想定をいたしました。4ページの図のほうがイメージがわきやすいかと思います。上の横軸にはトリプルプレイの需要で、トリプルプレイの需要が増加して、それに伴い多チャンネルの放送ニーズも、増加するのかしないのかという軸、さらに多チャンネル放送ニーズが増加した中で、IP−STBが急速に普及するのか、それとも、伸び悩みを見せるのかというところでさらに分岐をして、分岐としては3つ列をここでは想定をいたしております。それに直交する形で縦軸のほう、これは視聴者が地上デジタル放送に移行する際に、どういう選択をするのかという軸でございます。これは移行をきっかけにケーブルテレビや、あるいは、非多チャンネルのIP放送―IPマルチキャストの放送としておりますが―に加入する、あるいは、今入ってらっしゃる方は加入を継続する。それか、下の行ですと、解約をしてアンテナを立てて、直接、受信をするという選択を行うというところでございます。
 この3×2の掛け算でシナリオI1からVI6まで構築いたしました。シナリオI1は、多チャンネル放送でトリプルプレイの需要が増加して、さらにその中でもネット放送が加入者を伸ばす。非多チャンネル放送に関しても、有線放送の加入が増えるというシナリオでございます。シナリオII2も、多チャンネル放送ではトリプルプレイの需要が増加して、さらにその中でも多チャンネルのケーブルテレビが加入者を伸ばすというシナリオです。シナリオIII3では、多チャンネル放送ではトリプルプレイの需要自体が伸び悩んで、放送ニーズが頭打ちになって、ただし、地上デジタル放送への移行に際しては、視聴者は有線放送への加入を選択するというシナリオでございます。シナリオIV4は、トリプルプレイの需要増加に伴ってネット放送が加入者を伸ばす、ただし、地上デジタル放送への移行に際しては、直接受信を選択するというシナリオ。それから、シナリオV5は、トリプルプレイの需要が増加して、その受け皿が多チャンネルケーブルテレビになりますが、非多チャンネル放送に関しては、有線放送解約して、アンテナを立てて直接受信をするというシナリオ。それから、VI6に関しましては、トリプルプレイの需要は伸び悩み、それから、非多チャンネル放送も皆さん直接受信を選択するというシナリオになります。この組み合わせでI1からVI6までのそれぞれの姿を想定をして、それぞれ2015年までにどういった業界の姿になるのかというところを予測をいたしました。
 5ページ目が、ケーブルテレビの加入世帯数の予測、これは多チャンネルケーブルテレビを含めた多チャンネル放送全体の市場が、どういうふうになるのかというところでございます。シナリオI1とIV4が上のグラフ、それから、左下のグラフがシナリオII2とV5、それから、右下のグラフがシナリオIII3とVI6でございます。それぞれパターンとして、トリプルプレイが普及するかしないか、それから、IP−STBが普及するかしないかというシナリオでございます。やはりトリプルプレイが普及するかしないかで、多チャンネル市場の全体の伸びが大きく変わってまいります。今後、トリプルプレイが普及すると想定しますと、2015年までに多チャンネル放送全体で、1,400万世帯の加入が見込めると我々は予測しています。これは現在の成長ペースを2015年まで、維持できると我々は予測しております。
 一方、右下のグラフにありますように、もしこのまま需要が伸び悩んでしまいますと、2010年〜11年あたりから、顕著にグラフが横に寝てまいりまして、全体市場としてはもうほとんど伸びが、止まってしまうという状況を想定しております。さらにこの中で多チャンネル放送全体の中で、どのようなシェアになるかというところもあわせて予測をしておりますが、IP放送が普及するシナリオI1とIV4では、急速にIP放送が加入世帯数を伸ばして、2015年までには356万世帯ということで、CS放送に匹敵する規模にまで、成長すると予測をしております。このシナリオではまさに多チャンネル放送全体の市場の成長をIP放送が支えるという格好になります。これはIP放送のFTTHのホームパスだったり、それから、この調査におきましてユーザーのアンケート調査を行って、多チャンネル放送に加入するとしたら、どれを選択をするのか、どのサービスを選択するのかという結果に基づいて、それぞれのシナリオを構築しております。
 シナリオII2のほうは、IP−STBが伸び悩んだ場合でございますが、こちらのほうは2015年までにIP放送は180万の加入にとどまり、その分、多チャンネルケーブルテレビが成長のペースを維持するという形になっております。多チャンネルのケーブルテレビ放送サービスの加入者数は、2015年までに780万人に達する。それから、CS放送もやや成長は鈍化しておりますが、それでも加入者増を続けるというシナリオでございます。一方、シナリオIII3とVI6の、トリプルプレイも伸び悩み、さらにIP−STBの普及も伸び悩むというシナリオですと、やはり市場全体が頭打ちというところもありまして、加入者数もほぼ横になったり、あるいは、CS放送に関しては減少に転じるという予測をしております。これは多チャンネル放送にとっては非常に厳しい状況です。実際のところトリプルプレイの伸び悩みシナリオは、現在、多チャンネル放送に加入する意向のある方が入ったとしてというシナリオでございますので、非常に現状路線に近い形ではございます。ということは、シナリオI1から、I1・IV4・II2・VI6にもっていくためには、トリプルプレイの需要を喚起する何らかの施策が、必要になってくると我々は考えております。
 続きまして、非多チャンネルのサービスについての加入世帯数の予測でございます。こちらではシナリオI1・II2・III3のそれぞれの予測を挙げさせていただいております。こちらはやはり大きなキーのドライバーとなるのは、地上デジタル放送への移行に対して、どれぐらいの有線放送への加入があるのか。その際に、IP放送なのか、それとも、ケーブルテレビなのか、どちらを選ぶのかというところでございます。このシナリオI1・II2・III3は地上デジタル放送への移行の際に、消費者が有線放送を選択するというシナリオでございますので、加入世帯数は2011年にかけて成長を維持し続け、2011年から若干変曲点がここにございますが、寝てくるという形のシナリオになっております。ただ、どのシナリオにおきましても、2015年までに3,100万世帯を超える加入が見込まれておりまして、地上デジタル放送の移行を追い風に、2011年までは現在の成長を維持できるという予測をしております。また、IPマルチキャスト放送もどのシナリオでも、350万世帯を超える加入者を集めると想定をしております。
 7ページ目が、直接受信が増加した場合は、どうなるのかというシナリオでございます。これがIV4とV5とVI6でございますが、この場合、やはり成長のペースというのは非常に鈍化しておりまして、ほぼ横に寝ているグラフになってまいります。IPマルチキャスト放送の増加分だけ、全体の成長は2011年まで若干上向いてはおりますが、その中でやはり全体としては先ほどのグラフと比べても、かなり寝てきているといいますか、真っすぐな状況になっておりまして、地上デジタル放送の移行の際に、その需要をうまく取り込めない場合は、500万近くの差が出てくるという予測を立てております。
 以上、6つのシナリオをそれぞれ、IP放送を含んだケーブルテレビの加入世帯数総数で比較したものが8ページでございます。ちょっとグラフが重なっておって見にくくて恐縮でございますが、ケーブルテレビの加入世帯数一番大きいのがシナリオI1、それから、2番目がシナリオII2という形で、シナリオI1・II2・III3・IV4・V5・VI6の順番で、加入世帯数が増加するという形になっております。やはりトリプルプレイの需要、ひいては多チャンネル放送の需要が増加して、さらにユーザーが地上デジタル放送の移行に際しても、有線放送を選択するという形であれば、当然のことながら、加入世帯数は上がってくるというところでございまして、最良のシナリオで2015年で、約4,200万世帯まで普及すると我々は想定をしております。ただ、最悪のシナリオでは3,400万世帯にとどまると想定をしております。さらに市場規模も同様でございまして、やはり最良のシナリオはシナリオI1とIV4、それから、最悪のシナリオはシナリオIII3とVI6という形になっております。ここでは成長を支えるのは、どちらかというと、放送収入以外の部分で、IP放送であったり、インターネットアクセスであったりというところになります。
 最後、まとめでございますが、それぞれこのグラフの形でお示ししましたように、シナリオによってかなり業界の様子というのが変わってきております。例えばシナリオI1の場合ですと、まさに多チャンネル放送が今後も伸びて、地上波再送信を行う多チャンネルケーブルテレビも加入者を伸ばす、さらに多チャンネル型のネット放送が需要の受け皿となり、躍進するというシナリオでございます。これはまさに放送と通信の融合というものが、実現しているシナリオと言えるかと思います。それから、シナリオII2は、多チャンネルケーブルテレビが多チャンネル放送の需要の受け皿となり加入者を伸ばして、さらに地上波のデジタル化でもケーブルテレビを選択をするというシナリオでございますので、これは同軸型のケーブルテレビにとっては非常に追い風が吹いて、ハッピーなシナリオということが言えるかと思います。シナリオIII3は、トリプルプレイの需要の伸び悩み、それから、ケーブルテレビの加入も維持されるということですので、比較的現状維持に近いシナリオということが言えるかと思います。
 シナリオIV4に関しましては、多チャンネル放送は伸びるんだけれども、地上波はアンテナを立てますという形で、2つの入り口が並立するような形で、成長していくというシナリオでございます。これは融合というよりは、並立という言い方のほうがしっくりくるのかなというシナリオでございます。それから、シナリオV5は、多チャンネルケーブルは伸びるけれども、一方で再送信のみのケーブルからの解約は、増加するということがございますので、ケーブル業界が二極化してしまうシナリオということが言えるかと思います。シナリオVI6に関しましては、多チャンネル放送も伸びず、それから、再送信の需要も取り込めないというところもあって、ケーブルテレビ側の成長ドライバーが不在という状況ですので、地盤沈下が起こってしまうシナリオ、これが最もよくないシナリオということが言えるかと思います。こうなってきますと、インターネット系の無料サービスが台頭する可能性がございまして、大きくその相対的な地位が下がってくるという意味で、地盤沈下という言葉を使わせていただきましたが、この6つのシナリオの中では、最も避けるべきシナリオということが言えるかと思います。
 全体的には、左上に行くほどよいシナリオ、それから、右下に行くほど悪いシナリオというということが言えるかと思います。当然、このシナリオ、なるべく左上に誘導するように各種施策を打っていく必要があったり、あるいは、真ん中になってしまったときに、では、どういうふうな手を打てばいいのかということを想定するという形で、今後、議論を進めていくべきと考えております。以上でございます。
【多賀谷座長】  それでは、ただいまの説明につきまして、ご質問・ご意見等、どうぞ。
【藤咲構成員】  言葉の意味を確認させていただきたいんですけれども、ここで言っているトリプルプレイというのは、ケーブルテレビ会社の提供しているトリプルプレイサービスのみならず、通信回線経由のものも含むのかというのが1点目。
 それから、もう1点ですが、非多チャンネルIP放送という言葉なんですけれども、これは地上波の同時再送信番組のIPTV形式による伝送ということで、理解してよろしいんでしょうか。
【野村総研(北林)】  1点目でございますが、トリプルプレイは広い意味を含んでおります。その意味で、ネット経由で提供されているトリプルプレイも含んでおります。
 それから、2点目の、非多チャンネルのIP放送、これは想定しておりますのは、まさに地上波の再送信のみを行う、再送信のFTTHの放送という意味で用いております。
【石橋構成員】  トリプルプレイがなければだめだということになるんですかね。
【野村総研(北林)】  まずトリプルプレイの需要が全体的に上がるかどうかが、非常に大きな成長のドライバーに、多チャンネル市場における成長のドライバーになっているという認識を我々は持っております。アンケート調査でも出ておりますように、多チャンネル放送に対する価格感度がやはりかなり現状低く出ているという状況がございます。単独で多チャンネル型の放送に加入するに当たって、やはり1,000円、1,500円というレベルの、払ってもいいと言われる金額が中心としてあります。これ正直に受け取るべき数字ではないかとは思いますが、それにしてもトリプルプレイのような形で、何らかもう少し割安感を出していく、あるいは、値ごろ感を出していく施策がない限り、単独での多チャンネル放送の需要の喚起というのは、難しいのではないかと我々認識しております。
【山下構成員】  悪いほうのシナリオでも3,000万世帯ということで、現状からいうとやっぱり随分伸びるなと、これだけ悪いシナリオ描いても、随分伸びるなという印象を持ったんですけれども、このときにこのシナリオつくるに当たって、例えば人口の減少ですとか、それから、景気の影響、それから、トリプルプレイと今おっしゃいましたけれども、ケーブルテレビの全体の料金の要素というんでしょうか、そういったようなものは、どのぐらい反映されてつくっておられるのか教えてください。
【野村総研(北林)】  まず人口ですが、こちらは、今回、世帯ベースで予測をしております。その意味で、世帯は今後も増加を続けているというところもありますので、全体の母数は伸びているという前提で、予測のロジックを構築しております。それから、正直申しまして、景気の影響の関しましましては現状の延長線上、ニュートラルな形で出しております。
 3点目の価格の部分につきましては、先ほど最悪のシナリオでもそこそこ伸びるんではないかというご指摘もありましたが、今回、非多チャンネルの再送信のサービスにつきましては、現状と同じように無料でサービスが行われるという前提を置いておりますので、仮に例えば300円、500円という形で課金されると、ユーザーの選択も当然異なってまいりますので、これよりもさらに下がってくるという可能性はございます。
【中村構成員】  同じような質問ですが、最悪のシナリオでも伸びていくというのは、世帯数の母数が伸びるからであり、この手法では契約が将来下がって行くという結果にはならないわけですか。
【野村総研(北林)】  現状で、今回、この調査におきまして、地上波放送のデジタル化に際して、どちらを選択しますかという質問を投げかけております。確実にケーブルテレビの契約をいつすると答えている方もいらっしゃいまして、その方はそのまま継続し続けるという前提に基づきまして、世帯数の増加、それから、ホームパスの増加の分を考慮した上で、このシナリオVI6の数字を構築しております。やはり世帯数の増加とホームパスの増加、それから、契約の維持、この部分の影響がプラスに働いておりまして、ここでグラフとしても伸びているという形になっております。それから、ここの8ページのグラフではIP放送も含んでおりますので、このIPマルチキャストでの加入もプラスの効果として含まれております。
【中村構成員】  ホームパスの増加率というのはどれくらい見てあるものですか。
【野村総研(北林)】  現状のホームパスの増加分を、そのままトレンドを引っ張っております。
【多賀谷座長】  図式をもっとややこしくする提案で申しわけないんですけれども、もう一つの要素として無線とのかかわり、無線サービスとのかかわりというのをどう考えるかが、ちょっと何か入ってないような気がします。要するに無線の場合にはトリプルプレイではなくて、クワドロというか、それも含めた形で需要増要因になるかはしれませんけれども、逆にFMCといいますか、無線のほうに引きつけられる形で、需要がとられるという面があると思うんですが、そこら辺はどうでしょうか。
【野村総研(北林)】  今回のシナリオには明確には入れておりません。ただ、アンケートの中でもセキュリティサービスに対するニーズであったり、あるいは、自治体のサービスに対するニーズであったり、それから、ご指摘のクワドロプレイに対するニーズの増加が、加入世帯数の増加に非常に大きな影響を与えるのではないかというご意見もございまして、ここはトップ3には入らないにせよ、かなり考慮すべき要因ではないかというご意見もいただいておりますし、我々の認識としてもそのとおりだと考えております。ただ、今回のロジックの中には、要因には入れてないというところが正直なところです。
【小池構成員】  今回のシナリオですけれども、今、ケーブルテレビ局には、いわゆる都市型、MSOと言われるものと、地域型というか、自治体型というものがあって、このシナリオは必ずしも両者とも同じような形でいかないのではないか、状況的に違うのではないかと思います。そういう地域型とか、都市型とか、そういうものの差については、どう考えたらいいのか。それとも、両者ともこの中で当てはめていってしまうのかどうかというところを、お聞きしたいのですが。
【野村総研(北林)】  多少乱暴な議論になることは、承知の上でお話しさせていただきますと、横軸のこのトリプルプレイの需要と、IP−STBの普及がどうなるかというのが、まさに都市型のケーブルテレビがどうなるかというところに大きく影響する要素。それから、地デジ移行の際の代用の選択、こちらが地方型いいますか、再送信を中心としたケーブルテレビの動向が、どうなるかということに大きな影響を及ぼす要素として考えておりまして、その2つの要素を掛け算して、2×3で6つのシナリオを構成をしているというのが大きな姿でございます。必ずしも1対1に、横軸が多チャンネルで、縦軸が地方だという1対1の対応ではないんですが、大きくはそういう2つの要素を掛け算に取り入れたという形で構成をしておりますので、ここで大きく全体像が反映されているのかなと考えております。その意味で、例えばシナリオII2とV5を比較しますと、ともに成長ができるシナリオがII2で、二極化といいますか、格差が拡大してしまうのがV5というシナリオという形で、成長に差が出てくる可能性というものもあると考えております。
【多賀谷座長】  次の議題に参りたいと思います。前回会合にて報告書素案について議論いたしましたが、その場での議論や、その後に事務局にご提出いただきましたさまざまな意見をもとに、事務局において報告書素案を修正いたしました。これについて議論、確認してまいりたいと思いますので、ご説明をよろしくお願いします。
【井上地域放送課課長補佐】  それでは、お手元の資料11−22010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会報告書素案」に基づきまして、ご説明申し上げたいと思います。なお今回まで報告書素案と出させていただきまして次回には、報告書案としてご議論いただければと考えてございます。
 まず委員の皆様には前回の研究会以後、ご意見を賜りましてありがとうございました。そもそもの前回の会合でいただいた意見、それから、ご指摘いただいた意見等を踏まえまして、事務局のほうで修正させていただきました。本文の中に(P)となっているものがございますが、それにつきましては、意見を聴取している段階で両側からご意見があったもの、それから、本日、特に議論を深めていただきたいところに(P)を付させていただいております。それで説明に入らせていただきますが、非常に大部に及びますし、前回、説明したところと重複いたしますので、主な修正箇所、それから(P)がついているような箇所を中心に、ご説明させていただきたいと思います。
 それでは、2ページ目をお開きいただきたいと思います。「はじめに」とさせていただいておりまして、ここまだ結論には触れておりませんが、最後のパラグラフのところで「なお」というところで、ケーブルテレビの範囲について特定してございます。前回の話でもケーブルテレビの定義がふわふわしているというご指摘いただきましたので、ケーブルテレビの語義を付言しております。基本的に「ケーブルテレビ」というときには、有線テレビジョン放送法、それから、電気通信役務利用放送法、その場合にはIPマルチキャスト放送を含む全体を指すこととしておりまして、個々区分する必要がある場合には、それぞれ「有線テレビジョン放送(事業者)」、「IPマルチキャスト放送(事業者)」等と、個別に区別しておることとしてございます。
 続きまして、3ページの目次をお開きいただきたいと思います。これで構造的に主にどういうところが変わったところを簡単にご説明させていただきたいと思います。3ページ目の第1章「現状認識」の2のところの「ケーブルテレビの現状」の(5)のところに、無線利用、ケーブルテレビでも今使われております無線利用の実証実験等の取り組みを、紹介する節を追加させていただきました。第2章といたしまして、今、野村総研からお話があった「2010年代のケーブルテレビの市場規模の概要」を入れさせていただいております。それから、第3章と第4章でございますが、前回のときには「2010年代のケーブルテレビのあるべき姿」の中に、この「2010年までの当面の課題と諸方策」も一緒にしてございましたが、第4章のほうもそれなりに重いものでございますので、第3章と第4章を区分して整理してございます。
 それから、5ページ目のところの下のほうでございますけれども、5の「横断的課題」と、前回は「その他」と漠とくくっておりましたが、5につきましては、それぞれのサービスを行うに当たって共通な課題ということで、「横断的課題」としてくくらせていただいております。6ページをお開きいただきまして、(4)のところで「視聴者保護の対策の推進」ということで、節を立てさせていただいておりますとともに、(5)のところで、前回でもさまざま議論いただきました「ケーブルテレビの公共的役割」につきまして、事務局ベースで素案を考えさせていただいていますので、また後ほど触れますが、本日ご議論いただければと思います。第5章で「まとめ」で、第4章で触れられていることを取りまとめたものでございます。最後に用語解説を付せさせていただいております。
 では、早速でございますが、本体のほうをご説明させていただきます。27ページのところで、無線利用の現在のケーブルテレビの実際の実験等の取り組みについて、ファクトとしてまとめさせていただいております。無線利用につきましては、IT新改革戦略にあるユビキタスネットワーク社会の実現を目標の1つの中で、有線と無線を組み合わせた新たなICTの利活用によるさまざま諸課題の解決が挙げられておりまして、ケーブルテレビ事業者におきましても、無線を有効に利活用することによる各種の取り組みが、実際に行われているところでございます。図表1.21に全国のケーブルテレビの無線利用の実験の取り組み状況をまとめたものがございますが、あと、FWA関係というのは基本的には地デジの再送信の補完的なもの、それから、青のWiMAXというのは、電気通信事業者としてのサービスで、黄色のギャップフィラーのところにつきましても、これも地デジの補完的要素としてのものでございます。オレンジの電子タグというのは、電波法的には免許不要のところで、見守りシステム等で取り組んでおるものでございます。
 個々に触れさせていただきますが、1)でケーブルテレビ自身のネットワークの補完的システムとしての無線利用をまとめてございます。1つ目のパラグラフでございますが、有線テレビジョン放送事業に対しても、現在、23GHzギガヘルツ帯の周波数が割り当てられておりまして、有線テレビジョン放送事業用無線伝送システムとして、制度化されておるところでございます。具体的には山上の受信点からヘッドエンドまでの伝送等で、2007年3月末現在で約30局利用されておるところでございます。基本的にはP−Pの無線利用ということでございまして、図表1.22の左下にあるように、無線の設備コストが非常に高いと、無線局数が全国で30局弱という極めて少ない状況にございまして、これは負のスパイラル状況になって、あまり今は無線の利用が伸びていないという状況でございます。
 これが23GHzギガヘルツのところでございますが、28ページの下のほうでございますけれども、40GHzギガヘルツの実験も、今、双方向の無線伝送システムの検討が行われておるところでございます。これにつきましては、より広い周波数帯域の利用が可能であるということで、周波数分割による双方向も可能であるということで、23GHzギガヘルツと比較して波長が短く、比較的小型のアンテナ利用が可能となる。一方で、降雨減衰等の影響が大きく、引き続き慎重な検討が行われているところでございます。さらに18GHzギガヘルツ帯のところにつきましては、地方公共団体用、電気通信事業業務用として利用が進んでいるところでございまして、図表1.23にございますように、2006年度にNTTインフラネット、京セラ、古河電工等により、岐阜県の下呂市で実証実験が行われているところでございます。
 次のページをおめくりいただきまして、30ページをごらんいただきたいと思います。先ほどケーブルテレビのネットワークとしての、補完的利用の無線利用でございますが、2)は地デジの再送信における無線利用の実証実験の状況をまとめてございます。地デジにつきましては200612月に、全国の都道府県庁所在地で放送区域が拡大し、今後は中小規模の中継局の整備というのも本格的に推進していく必要がある。その迅速な整備のためには親局整備で得られてきた技術的蓄積とか、中継局の諸条件を考慮して、経済的にもすぐれた中継局のための、技術的条件の確立が不可欠になってございます。2007年7月、情報通信審議会のほうからも、地上デジタル放送の中継局に関する技術的条件につきまして、一部答申が行われたまして、現在、総務省におきましても2007年4月ごろを目途に、電波法令等の技術基準の改正に向けた作業を行っておるところでございます。1つパラグラフを飛んでいただきまして、当該無線システムにつきましては、山間地域等の条件不利地域での利用が想定されており、受信点の確保が困難な場合が多いと考えられます。このため良好な受信点と当該システムの間を、地域公共ネットワーク、それから、ケーブルテレビ事業者の伝送路を用いて接続し、放送波を送信するという形態が想定されます。図表1.25にございますように、日本ケーブルテレビラボが実験局の無線局の免許を取得して、2007年3月から三重県、それから、大分で実証実験に取り組んでおるところでございます。
 31ページでございますが、電気通信事業者としての無線利用でございます。アのクワドロプルプレイ、先ほども議論になりましたが、これにつきましては2つ目のパラグラフがございますが、もうジュピターテレコムがウィルコムと提携して、2006年3月から自社ブランドでPHSサービスを提供しておって、200612月末現在で2万1,300加入者を獲得している。そのほかにも、次のパラグラフでございますが、ケーブルテレビ事業者等が提供しているTOKAIグループにおかれましては、ソフトバンクグループと移動体通信事業等の提携について検討することを合意しておって、MVNO方式による携帯電話への参入の検討がなされておるというところでございます。
 次のページおめくりいただきまして、イとしてWiMAXに関する実証実験の話を掲げさせていただいております。WiMAXにつきましては、33ページにアプリケーションのイメージが出てございますが、現在でも嶺南ケーブルネットワークとか、エルシーブイ、それから、シーティーワイにおいて、2.5GHzギガヘルツを使用したBWAシステムの1つである、WiMAXの実験局の免許を取得して、現在、実証実験を行っておるという状況でございます。4)のところは、さらに電波法の中でも自営用の無線局、または特定小電力無線局、免許不要の無線局の利用ということで、34ページをおめくりいただきたいんですが、こういった電子タグにより学童見守りシステムといったような形で、イッツ・コミュニケーションズとか、蕨ケーブルビジョン、それから、東京ベイネットワークにおいて、こういった取り組みが行われている。以上のように、今、ケーブルテレビ事業者の中でも、現時点で無線を利用したいろいろな取り組みが、なされているという記述を追加してございます。
 引き続きまして、サービスの変化の潮流のところで、主に変わったところでございますが、40ページをおめくりいただきたいと思います。サービスの現状のところには、通信サービス、それから、プライマリー電話サービス等々、いろいろ書いてございますが、8)のところで、最近の動きといたしまして、テレビポータルのサービスがケーブル事業者の中でも行われているということで記述を追加させていただいております。ケーブルウエストが「Tナビ」のサービス、ジュピターテレコムが「インタラクTV」のサービスを開始しているというところでございますし、ケーブルテレビ事業者以外の中では「アクトビラ」のサービスが、ポータルサービスとして提供されておるという記述を追加してございます。
 引き続きまして、48ページをごらんいただきたいと思います。技術開発の状況についてまとめさせていただいてございます。1つ目は、IP放送への対応ということでございまして、IPマルチキャスト方式を用いた有線役務利用放送事業者が複数参入しておりまして、多チャンネルサービスやVODが提供されておるところでございます。次のパラグラフでございますが、さらにはNGNに代表されるように、電気通信事業者のネットワークをすべてIP化するための検討も世界各国で進展しておりまして、ケーブルテレビ事業者においても、今後、どのようにIP技術に対応していくかということを検討する必要があると考えられます。現時点でケーブル事業者が採用しているRFと、それから、IPマルチキャストを比較した場合、放送用に最適化して開発されたRF伝送では、HD画質100チャンネル程度、通信速度としても1Gbpsギガビーピーエス以上の情報量を、各加入者宅まで伝送可能になっております。
 一方で、IPマルチキャスト伝送は、通信用に最適化して構築されたネットワーク上で、放送を行うという制約がございまして、H.264を採用してもHD画質2チャンネル程度、通信速度としては30Mbpsメガビーピーエス程度の情報量しか送れないことになっております。現時点におきましてはケーブルテレビ事業者は、IP技術を採用するメリットというのは乏しいとは思いますが、仮に今後IP対応のテレビ受信機が普及した場合、その当該受信機を保有する視聴者に対して、IPマルチキャスト伝送等もして、サービスを提供するということも考えられます。また、IP技術を採用することによりまして、将来的にネットワーク設備とか、STBのコストを低減する等のメリットが生じた場合、どうするかということをケーブルテレビとしても検討を行う必要があるということを書いてございます。
 49ページに移りますけれども、現在のケーブルテレビ事業者のネットワークと連続性を考えれば、なるべく多くのチャンネルを加入者宅まで伝送することが求められる。IPマルチキャストの場合は局舎から加入者宅までは、加入者の選択したチャンネルのみを伝送することとなってございますが、ヘッドエンドから加入者宅まで、全チャンネルの伝送を行ういわゆるIPブロードキャスト方式の技術を採用することも1つ考えられるところでございます。送り側で最大1Gbpsギガビーピーエス程度の伝送量を有するFTTHを想定して、全容量のうち200Mbpsメガビーピーエス程度を放送の同時再送信に割り当てて、この帯域ではIPブロードキャストをやるということで、HD画質のデジタル放送を10チャンネル程度、すべての加入者に対して同時に放送可能とするということも可能かと思います。このようなIPブロードキャスト方式による放送につきましても、ケーブルテレビ事業者において検討行う必要があると考えてございます。
 第2章のところでございますが、これは基本的には先ほど野村総研から説明していただいた概要を、取りまとめたものでございます。議論にもございましたように、あそこまで伸びるにはトリプルプレイサービスというのをやっていかなければいけないということもありますので、そういった環境、そういった設備投資等に取り組んでいくことが必要ではないかとまとめてございます。58ページ以降で2010年代のあるべき姿というものをまとめさせていただいております。ケーブルテレビの位置付けにつきましては、前回、議論したとおり、アにあるように「インフラからコンテンツまで提供する総合情報通信メディア」という特徴、それから、イにございますように「大容量・双方向の情報伝送を可能とするネットワーク」、それから、59ページに行きますが「地域のニーズに基づき発生してきた地域性を有するメディア」と、この3本柱というのが、ケーブルテレビの大きな特徴ではないかとまとめてございます。
 60ページ以降に「2010年代のケーブルテレビのあるべき姿」というものを考えてございます。基本的には我が国が抱える課題について、それをICTを使って解決していく。それに当たってケーブルテレビが、さっき言ったような3つの特徴を生かして、どういうふうに貢献していくかということでまとめてございます。少子高齢化等さまざまな問題がございますが、点線の枠囲みにありますように、ICTを活用して改革を進めるということで、利用者・生活者の視点に立って、実現すべき経済社会の具体例を示せば、1つは「オールデジタル化によるユビキタスネットワーク社会」、それから「ICTの活用により、高齢者等を含めだれもが安心・安全に生活できる社会」、それから「ICTの活用により、地域・コミュニティが元気に頑張っている社会」それから、最後に「ICT分野の国際競争力を確保し、経済が持続的に成長している社会」、こういった4つがとりわけ重要ではないかということでまとめてございます。
 個々の話につきましては、太線の下線で引いてあるところでございますが、「オールデジタル化によるユビキタスネットワーク社会」の確立におけるケーブルテレビの役割といたしましては、我が国はデジタル・ディバイドのないユビキタスネットワーク社会をつくらなければならない。ケーブルテレビとしては公正有効競争のもと、大容量・双方向のインフラを、有線だけではなくて無線も含めて柔軟に整備して、デジタル・ディバイドの解消に貢献するとともに、総合情報通信メディアとして、再送信は当然のこと、コミチャンにおいてもさまざまなフルデジタルの映像サービスを提供することが必要であるとしております。具体的な取り組みといたしまして、フルデジタル映像サービス、ユビキタスネットワーク社会の提供といったことを、個々具体的にブレークダウンして書いてございます。
 62ページでございますけれども、これはだれもが安心・安全に生活できる社会の確立の中での、ケーブルテレビの役割ということでございます。そもそも我が国としても安全・安心に生活できる社会を実現しなければいけない。ケーブルテレビとしては、地域コミュニティの安心・安全に関するきめ細かな情報の提供、それから、ホームネットワークを活用したアプリケーション・サービスの開発・提供、それから、地域に有するヒューマンネットワークを通じた、高齢者などの、ICTに不慣れな方の人的サポート等に取り組むことが必要であるとしてございまして、地域密着サポートの提供ということで具体的取り組みを考えさせていただいております。
 次は、各地域・コミュニティが元気に頑張っている社会ということでございまして、我が国が、国の活力の源泉であるコミュニティが活性化され、各地域・コミュニティが元気に頑張っている社会を実現する。これに当たりましては、各地域が画一的な目標に基づき再構築されるのではなく、それぞれのコミュニティが抱える問題、資源、ビジョンに基づいて自らが知恵を出して、独自の取り組みを行うことが必要である。ケーブルテレビとしてもさまざまな地域密着性を生かして、地域・コミュニティの具体的な課題・ニーズに基づき、アプリケーション・サービス、それから、コミュニティのコミュニケーションの触媒とか、橋渡し的な役割を果たして、コミュニティの再構築に貢献することが重要であるとしてございます。
 次のページへ行きまして、ICT分野における国際競争力を持続し、経済が持続的に成長できる社会の確立といたしまして、我が国が積極的な国際展開等を通じて国際競争力を確保し、経済が持続的に成長している社会を実現しなければならない。ケーブルテレビにおきましては、これまで出てきましたFTTHの分野で、我が国に一日の長があると思われますので、そういったところ、それから、ホームネットワークに関する技術開発をスピーディーに行って、我が国のICT分野における国際競争力の向上に貢献すべきであり、そのためには研究開発を行う体制、経営体力等を整えなければならないとしてございます。
 具体的な取り組みに関する課題でございますが、これはその他としてありましたが、横断的課題としております。公正かつ有効な競争環境のもとでの健全な発達、MSO化とか広域連携の合従連衡化の推進、1兆円産業化と、1兆円産業ということを単に収益を上げるだけではなくて、次のページにございますように、そういった市場規模を拡大して、ケーブルテレビ産業が安定的に発展して、経営体力が十分に培われることによって、ビジネスにはつながりにくいようなCSR的な、公共的なサービスというのも、そういった経営体力のもとで可能になるのではないかと考えてございます。
 では、第4章のところをちょっと触れさせていただきたいと思います。コメントあったところを、個別に言いながら進めさせていただきたいと思います。66ページをお開きいただきたいと思いますが、地デジの再送信の同意に係る協議の促進ということでございますが、1つ目のパラグラフの後半のほうでございますけれども、もともとはケーブルテレビ事業者と民間放送事業者が、連携してということになってございますが、ご指摘踏まえまして、再送信などについて誠意を持って、十分に協議を行うことが重要であるとしてございます。それから、IPマルチキャスト方式につきましては、基本的には条件不利地域が第一義ではないかというご指摘いただきましたが、ここに情報通信審議会の第2次中間答申において掲げられておりますように、地上波放送と同等のサービス実現に必要な、一定の条件を満たされた場合には、条件不利地域に限らず、地デジ放送の視聴者まで配信する伝送路として、積極的に活用すべきとされてございまして、それから、放送事業者におかれましても、ここにありますように、200610月には地デジの放送補完再送信審査会が設置されているところでございまして、IPマルチキャスト放送事業者も十分に協議を行って再送信を行うことが重要であるとしてございます。
 75ページをお開きいただきたいと思います。ネットワークDVRについてちょっと概要が不足してございましたので、図表等を用いて説明させていただいております。そもそもDVRにつきまして、各家庭にハードディスクドライブを内蔵したSTBを設置いたしまして、任意の番組を録画できるようにして、再生視聴できるサービスがございます。ネットワークDVRにつきましては、ハードディスクをケーブルテレビ事業者の局舎内に設置し、加入者の操作によって任意の番組を録画・再生できるようにしたサービスでございます。通常のDVRと比べてSTBの価格を抑えることができ、ハードディスクの増設も容易ですけれども、米国で言われているように、著作権法上の問題が指摘されていると、まとめさせていただいてございます。
 77ページをごらんいただきたいと思います。(3)のところでございますが、「無線の有効活用等柔軟なネットワークの構築」ということでございます。先ほども触れさせていただきましたように、ケーブルテレビ事業者の中でも無線を活用した、さまざまな取り組みが行われておりまして、ケーブルテレビは基本的には有線ではございますけれども、住民のニーズに応じて補完的利用、地域情報提供等の充実を通じたサービスの向上、コスト低減という観点から、無線の活用についても検討するべきとしてございます。放送分野につきましては、条件不利地域におけるデジタル無線共聴システムへの伝送路の提供等による、地上デジタル放送の普及への貢献ということを掲げさせておりますし、また、通信分野につきましては、WiMAX等、広帯域無線アクセスシステムが利用可能となった場合には、それを活用することも有力な選択肢であると考えます。また、既に取り組みが始められておりますけれども、子ども見守りシステムとか、無線LANによるホームネットワークの提供等、さまざまな場面での無線利用が想定されるところで、ケーブルテレビ事業者がその地域のニーズを踏まえた役割を発揮していくためには、無線を有効活用することも重要である。
 他方でございまして、課題でございますが、ケーブルテレビ事業者の中には無線利用に関する経験が乏しく、各地のケーブルテレビ事業者が行っている実験の結果についても、事業者間で水平展開が図られていない。無線機器ベンダーにつきましても、ケーブルテレビ事業者に自ら開発した無線システムの採用を働きかけようとしても、当該システムのニーズがどこにあるかというのも把握することも容易ではない状況でございます。さらに今後WiMAX等の全国的な無線システムの免許をケーブルテレビ事業者が取得しようとした場合には、詳細な需要把握とか事業計画の検討も必要となりますが、個々の事業者がこのような検討を行うことにはノウハウとか能力的にも限界がある。こうしたことから、例えばケーブルテレビ事業者、地方公共団体、無線機器ベンダーなど、幅広い関係者が参画する協議会を設置するなどして、情報交換やビジネスモデルの検討を行うことが効率的であって、ケーブルテレビ事業者はその実現に向けて、速やかに取り組むべきであるとしてございます。
 81ページ。ここはシナジー効果が期待される、他の地域メディアとの連携ということでございますが、後段の「また」以下のところはペンディングにしております。ケーブルテレビ事業者が地域に限定した、いわゆるコミュニティテレビジョン放送というのが、今後、伝送路の設備に関する規律と放送番組のコンテンツの規律を別に定めるハード・ソフトの分離の新しい法体系が構築されることとなれば、ケーブルテレビ事業者による独自コンテンツの、コミュニティテレビジョン放送等が、可能となる可能性もあるというところつきまして、両方からご意見ございましたので、ここについてはペンディングとさせていただいております。
 84ページ、国際技術の世界展開のところで、FTTHによるケーブルテレビの国際標準化ということについて、追加させていただいております。今までアナログ時代は日米で同じ技術ということでございまして、日本はアメリカの技術をそのまま採用しておった。ところが、デジタル放送につきましては日米で異なる方式を用いるということになっております。ネットワークのインフラの形態につきましても、米国は依然としてHFCが中心ではございますが、日本は通信事業者との競争の激化等もございまして、FTTHの採用が進んでいるところでございます。FTTHベースでのケーブルテレビの普及が進んでいるのは、もう世界的には日本のみであるということから、ケーブルテレビ事業者は海外の技術に頼らず、自らがFTTH技術を開発するフロントランナーとなって検討していかなければならない。最後のパラグラフでございますけれども、ケーブルテレビ事業者は、FTTHに関する将来の技術を検討、技術開発を行うことが必要でございますが、一方で、資本力とか技術力が個々のケーブルテレビ事業者では十分ではないということは、こうした取り組みを行うのは容易ではないということで、国はケーブルテレビ事業者にとって必要となるFTTH技術の研究開発について支援を行うことが求められるとしてございます。
 87ページ。横断的課題で競争的、弾力的事業者展開でございますが、図表4.9で実態をあらわしておりますが、ケーブルテレビ事業者が参入している市区町村ごとのケーブルテレビの参入者数ですが、市区町村レベルで1社しか参入してないケースが7割以上で、2社といっても、これについても例えば市町村合併によって1つの市に2つあると、いわばすみ分けができているような状態というのも含まれてございますので、多くの部分で実態としては地域独占性が残っている現状になってございます。もちろんこれにつきましては、需要がもともと少ない、それから、総務省としても地元事業者要件等の規制ということもございましたけれども、実態として非常に地域独占性が残っている状況でございます。
 中ほどのパラグラフでございますが、電気通信分野におきましては競争状況の評価とか、公正有効競争条件の整備等が進められているところでございまして、国としても今後のケーブルテレビ市場の健全な発達、それから、視聴者・利用者利益の保護というものを図るため、これまでの規制緩和等の政策の効果とか、それから、後ほど出ますクリームスキミングの実態等を含む競争状況の評価等を適切に行って、公正かつ有効な競争環境の整備に関する政策展開につなげる仕組みを検討するべきであるとしてございます。
 「また」以下につきましては、ケーブルテレビ市場の中での、イコール・フッティングの話でございますが、もともと電気通信役務利用放送法につきましては、自主放送を中心とした広域ということが想定されておりまして、両者の規律についてもその特性に応じて異なるものとなってございます。ところが現状といたしまして、有線役務利用放送事業者17社ございますうち、2社のように全国展開を行うものもございますが、それを除く15社につきましてみれば、そのうち11社はもともと有線テレビジョン放送施設者であった者が、業務区域の拡張時に他人の電気通信役務を利用するために、有線役務利用放送に移行したという者でございます。今後ともFTTHの普及等に伴って、有線テレビジョン放送事業者から有線役務利用放送事業者へと移行するケースが続く可能性が高いと考えられますので、両者の間が極めて近しいものになっておりますので、合理的なところにつきましては規制の見直しをするべきではないかとしてございます。もちろんそれぞれの規律につきましては、引き続き合理的な面も十分あると思いますので、その辺の両者の事業の態様とか、特性、内容等を十分に配慮して、規律の見直しを行うことが必要である。その規律のイコール・フッティング、それから、公正・有効競争条件の確保という観点から、規律を見直す必要があるとしてございます。
 マスメディア集中排除原則の見直し、これも有線テレビジョン放送と役務のほうで規律が異なっておりまして、89ページにございますように、最初の冒頭にある、規制改革の民間開放推進会議のほうからも、具体的なニーズ等を調査した上で、地上波放送事業者が自ら電気通信役務利用放送事業者として登録し得るよう、結論を得て所要の措置を講ずるとされてございます。このたびニーズのアンケートをとったところ、まだまだ具体的なニーズが判明していないということでございまして、次のパラグラフにございますように、今後、具体的な参入に関するニーズ、時期、形態等、子会社を通じるのか、自らやるのかという状況を把握した上で、参入を認めるための具体的な措置について検討することが適当であるとしてございます。
 90ページ、施設区域の基準の見直しのところでございますが、有線テレビジョン放送と電気通信役務利用放送では施設区域に関する基準が異なっております。有線テレビジョン放送のほうは、基本的には当該行政区域全体をしなければならないということになってございます。最後のところでございますが、クリームスキミングは発生する状況ではございますが、当面、クリームスキミングに関する市場における実態と、先ほど触れた競争評価等で定量的に把握して、状況を注視した上で必要な措置を検討することが、適当であるとしてございます。
 93ページ。著作権法上のイコール・フッティングの話でございますけれども、ITマルチキャスト放送による自主放送のところ、これはさまざまな議論があるところでございますが、規制改革の民間開放推進に関する第3次答申の中でも、IPマルチキャストの自主放送についても、事業の実態の推移、放送法制等の位置づけ等に留意しつつ引き続き検討し、遅くとも放送が完全デジタル化される平成23年7月までに一定の結論を得るべきとされておりまして、総務省においても情報通信審議会のもとに検討委員会が設けられてございまして、それを踏まえて必要な措置を講ずることが適当であるとしてございます。
 94ページ。6)でございますが、無線利用に関するイコール・フッティングでございます。有線テレビジョン放送事業者につきましては、これまでも見てきましたように、ケーブルテレビの補完的経路として無線利用というのが可能になっておりますが、電気通信役務利用放送事業者については、人工衛星に開設する無線局、要は衛星放送しか認められていない状況でございます。今後のイコール・フッティングの観点から、有線テレビジョン放送事業者がいろいろな場面で、無線を利用する状況というのを勘案しながら、電気通信役務利用放送についても、人工衛星に開設する無線局を用いないで行う、地上ベースでの無線局について開放することの是非、それから、規律のあり方等についても検討するべきであるとしてございます。
 95ページ、事業規模の拡大、アライアンスのところで、前回ご指摘いただきました国に関する支援策でございますが、事業者間の合併、それから、連携、全体に係るように注書きに入れさせていただいております。国はヘッドエンド共用にとどまらない事業者の合併、連携、他業態等との合従連衡の推進について、交付金のスキームのついた導入費、改修費等についての支援策を講ずるべきであるということで、全体についてまとめさせていただいております。
 97ページ、「視聴者保護の対策の推進」ということをまとめさせていただいております。1つには、「違法チューナー」問題に係る対策の推進、これは事業者側にとってメリットあることでございますが、一方で、ケーブルテレビにちゃんと加入料を支払っている正規の視聴者との不公平感を増長するものでございますので、この辺の対策についても積極的にやらなければいけないとしてございます。
 次のページ、2)のところでございますが、これは不適正な勧誘行為の是正ということで、さまざま指導受けておりまして、ケーブルテレビ事業者が、ケーブルテレビに入らなければ、もう地上デジタル放送は見られないといったような、非常に不適正な勧誘行為がなされているという指摘がございまして、こういったことについて、これまでも指導してきているところでございますが、今後とも引き続き強く指導しなければならないとしてございます。
 最後、100ページ、さまざまご議論いただきましたケーブルテレビの公共的役割につきまして、事務局ベースでまとめさせていただいております。ケーブルテレビの公共的役割と、本研究会でもさまざまご議論いただいたところでございまして、ケーブルテレビの公共的役割というのは、2010年代のケーブルテレビの在り方に関する指針の一助となり得ると、横断的・包括的にまとめさせていただきたい。そもそも公共の意味なんですが、『広辞苑』によりますと「社会一般、おおやけ」とありまして、「おおやけ」とは何かといえば「天皇」とか、「朝廷、政府、官庁、政府、地方自治体も含めた官庁」、それから、「国家・社会または世間」、それから4)で「表立ったこと、公然」と、等々の定義がございます。これまでの研究会におきまして出されたケーブルテレビの公共的役割につきましては、1つには、地方公共団体と連携して電子自治体とか、行政の防災情報などの提供も重要である。それから、1つには、地域を起点にした多様なメディアサービスを提供することが必要である。最後には、コミュニティを形成する際の場所とか、意見交換手段の提供を行うことが、公共的役割というご意見が出ているかと思います。
 そういった『広辞苑』の意味とか、それから、これまでの意見を踏まえて大胆に整理すれば、ケーブルテレビの公共的役割というのはこの3つではないか。1つは、地方公共団体と連携して地域住民に行政サービスを提供する役割、2つには、地域・コミュニティに必要とされる地域情報を提供する役割。3つ目には、地域・コミュニティに対して、だれでもアクセスできるオープンな「場」を提供する役割。こういった3つに大別されるのではないかと考えられます。
 それぞれ見ますと、地方公共団体と連携して地域住民に行政サービスを提供する役割でございますが、地方公共団体の場合にはちょっと2つ視点があると考えてございます。1つは、地方行政の主体として地域の課題やニーズに応じて、行政情報等をケーブルテレビに提供する、コンテンツを提供する立場での連携と、自らが直接にケーブルテレビ事業者に出資、または運営する立場で連携する場合と、2つに分けて考える必要があるのではないかと思います。前者につきましては、ケーブルテレビ事業者が自らの判断・責任のもとで、地域が有する課題・ニーズ等に応じて、地域において必要とされる行政情報を提供するということは、これは公共的役割であると考えられます。例えば地震が起きたときの緊急情報を送ったり、地上波ではなかなかしづらい、災害発生後も一定期間にわたってきめ細かな復旧情報を流すといったようなことが考えられます。
 一方で、地方行政の主体である地方公共団体とのかかわりについて、地方公共団体が出資または運営する場合には、十分かつ慎重に議論する必要があるのではないか。現在の有テレ法の審査基準の中でも、地方公共団体の所有については原則として禁止されておりますが、他に民間企業の参入する見込みがない場合、これは地域住民からニーズがある場合等の特別の事情がある場合には、地方公共団体がラストリゾートとして参入することを例外的に容認してございます。実態といたしましても、出資し、自ら運営している事業者は多数存在している状況でございます。この点につきまして、両面からご意見ございまして、経営的な安定性の確保から一層の強化を図る、この基準を緩和すべきだという意見がある一方で、今後、地方公共団体の行政権限が増えてくると、有線テレビジョン放送といえども、統治機関の監視役である言論機関としての、放送メディアとしての役割を有するものであり、地方公共団体との関係・距離感についてはより慎重に考慮すべきだという、両方からの意見があるところでございます。ここにつきましては、現実的な財政面での要請、現状、それから、今後の地方分権の地方行政権限の拡大状況を踏まえつつ、さらに議論を深めていく必要があるのではないかとしてございます。
 2つ目の役割は、地域・コミュニティに必要とされる地域情報を提供する役割でございますが、そもそも地域情報といえば地域住民が必要とする情報であり、地域住民が必要とする情報については、地域住民で共有する問題意識について議論・コミュニケーションを行うために必要となる情報であると考えられます。農山村地域であれば気象情報とか、農産品の市場価格の動向でしょうし、犯罪が多発している地域では不審者に関する情報と、それによって地域ごとに問題意識が異なってきまして、必要とされる地域情報も変わってくるといのが自然だと思います。ケーブルテレビの特徴といたしましては、それぞれの地域に事務所スタッフを抱え、いわゆる地域住民と同じ空気を吸って、当該地域の問題意識を認識しやすい立場にある。ケーブルテレビ事業者はその問題意識を共有しながら、地域情報を発見して提供することが、公共的役割であると考えられる。
 最後、だれもアクセスできるオープンな「場」を提供するという役割、コミュニケーション行うためにはそういった場が必要です。過去には井戸端会議から、今ではSNSということもがやられてきている。ケーブルテレビにおいても、地域・コミュニティのSNSを開設したり、コミチャンにおいて地域住民に出演者として参加を求めるだけでなく、地域住民と共同制作することも考えられます。こういったケーブルテレビが地域・コミュニティに、だれもがアクセスするコミュニケーションの場を提供することが、地域のコミュニケーションの触媒、橋渡し役となって、地域における自主的・自律的な活性化に寄与することができるではないかということで、公共的役割とさせていただいております。いずれにしても、ケーブルテレビ事業者が自らの判断で、こういった可能性を生かし切れるかどうかというのが今後の努力にかかっているとしてございます。
【多賀谷座長】  それでは、ただいまの報告書素案につきまして、ご質問・ご意見ありましたら、ご自由にご発言願います。
【石橋構成員】  先ほど施設区域の基準の見直しということがあったわけですが、それを検討する際、クリームスキミングということもあるし、一方で、今、最後にご説明あった公共性ということもあります。公共性ということになるとクリームスキミングというのは、あまりふさわしくないはずだし、そういうこともありますので、これはあわせて今後検討していく必要があるんではないかなと思います。役務利用放送でいわゆる区域については、自由にできるということになっているので、それとイコール・フッティングするために、ケーブルも自由にしていいんですよと、イコール・フッティングという立場だけで、そういうことを決めるというようなことは、私はあってはならないと思うし、公共性ということも含めて考えねばならないわけですから、いわゆる通信役務利用放送事業者のクリームスキミング問題から、イコール・フッティングの議論になった時には、公共性ということも十分考えて、議論すべきであるというのが私の意見です。
【多賀谷座長】  クリームスキミングの話は、ハードレベルの話とソフトレベルの話と、両方あるような感じがして、ハードレベルで言えば、基本的にFTTHのネットワークと、ケーブルテレビのネットワークとが、やっぱり競合するといいますか、ややもすると都市部あるいは中核都市とか、そういう採算ベースのところから、まずFTTHが普及していくのはしようがないわけですけれども、そうすると、そういうところでケーブルテレビが負けてしまうと、最終的にはケーブルテレビには、過疎地といいますか、なかなか経営が苦しいところしか残らないという感じになってしまいます。役務利用放送事業者がどういうネットワークを使うかは、必ずしもはっきりしませんけれども、ソフトとして放送サービスを提供するという場合、その場合のクリームスキミングの話にいろいろありそうな感じがするので、そういう点ももう少し書き込んでいただければという気がいたします。
【山下構成員】  最後の公共的役割のところなんですけれども、この公共的役割を担うのは、ここではケーブルテレビ全体というふうになってはいますが、今のクリームスキミング等の話から考えても、ここはもしかして有線テレビジョン放送事業者に対するものというふうに、それを想定して書かれているのではないかと、そんなふうな印象を受けました。それから、公共的役割というのは確かにございまして、それを残すのは大事なことだと思いますが、私はむしろそれが書かれる場所が、4章ではなく、3章ではないかという気もしています。3章というのがあるべき姿ですね。そして、4章はこれからの施策とか課題とかということになっているので、そういうことでそのように思ったわけです。
【多賀谷座長】  確かに位置付け的に、これはケーブルテレビの公共的役割という話が後から出てきたので、なかなか座りが悪いということで、おそらく最後に書いてあるわけですけれども、ちょっと検討したほうがいいでしょうね。
【井上地域放送課課長補佐】  はい、わかりました。
【多賀谷座長】  そうすると、やっぱりこういう流れの中でも、なおかつという留保的な感じになってしまうのは、確かに山下さんのご意見はもっともなところがあります。
【中村構成員】  公共的役割のことですが、前回の委員会でも少し発言していたのですが、ここに整理してあります形で特に異論はありません。内容的に少し追加したら良いかなと思っている点が1つあります。それは文献等でしか見ていないのですが、パブリックアクセスチャンネル(PAC)という論点であります。パブリックアクセス番組というのは、何か一定のルールのもとで自主的に企画・制作するということで、市民がつくるメディアであるという感じでありまして、NHKさん等のプロがつくる専門番組ではなく、ケーブルの場合は非常に素朴なところがございます。私どもケーブルテレビ事業者としては、公共的な役割というものは一体どういうことなのかということについて、事業者自身が検討していかなければならないと思っておるわけであります。そういう結論で書いといたら、良いのではないかという意見であります。
【多賀谷座長】  ええ、確かにコミュニティチャンネルの話、PACの話が公共性の話と別々にあるのは、ちょっとやっぱりおかしいと思う。
【中村構成員】  おかしいですね。
【多賀谷座長】  音先生、この辺りについていかがですか。
【音構成員】  先ほどの公共性の話は非常に丁寧にまとめてくださって、ありがとうございます。ただ、場所に関しては、山下先生のご指摘通り、もうちょっと前のほうがやはりいいのかなという印象を私も持ちました。4章の一番の最後で1枚めくるとすぐ「まとめ」となるので、とすると、この部分は先ほどご指摘にありました、3章のほうが何となく座りがいいのかなと思いました。
 ただ、今、中村さんのご指摘もございましたけれども、パブリックアクセスの問題というのは、私の個人的な認識ですけれども、日本のケーブルテレビの中でも積極的に議論をし、実際にサービスを行っているところもありますし、あまり問題としてこなかったところもあります。ケーブルテレビの公共性という議論を片方でやるのとともに、ケーブルテレビ事業者にとってこのパブリックアクセスというものはどういうものなのかという議論も、あわせてやらなくてはいけないのではないのかなと思います。その意味で言うと、この報告書をきっかけにしてその議論を深めていくということなのかと思います。今回の報告書の、先ほどあまりご説明はございませんでしたけれども、104ページ・105ページのところで、政策提言というお話がございますけれども、その中の104ページの(1)の一番最後のところで、今回の報告書ではパブリックアクセスチャンネル等の米国等における実態及び制度の運用状況に関する、調査研究を進めようという第1段をやろうというところにとどめているかと思うのですけれども、まさにその作業をやりながら、日本のケーブルテレビ事業の中で、この問題をより深く検討していくことで、今回はとどめていると私は認識をしています。私はそのぐらいのステップでちょうどいいのではないのかと思います。既にこの研究会では、中海テレビ放送さんが、実際に行っているパブリックアクセスチャンネルの実情をご紹介くださいましたけれども、中海テレビ放送のように積極的にやっているケーブルテレビが日本の国内にあるというところもまた意味があるわけでして、私はこんな形で十分かなと思います。
【多賀谷座長】  アメリカの場合にはパブリックアクセスチャンネルというのは、今のところアナログ映像のレベルにとどまっている。
【音構成員】  そうですね、はい。それから、既存の地上波のテレビ事業者からは、数年に1度、このようなチャンネルがあっても、実際にはそんなにうまく活用されていないのではないのかという、批判的な意見も出されていますが、でも、こういうチャンネルがあること自体がすごく意味があるという議論が、公共性論と重ねた形でなされています。
【多賀谷座長】  今の時点でこういう議論を日本でやる場合には、映像のレベルだけではなくて、デジタル的な、あるいは、通信融合サービス的な形でやらないと、おそらくもたないだろうと思いますね。
【音構成員】  そうですね、ええ。
【多賀谷座長】  場合によるとそれは当該地域に、コンバージェンス的なシステムをすれば、別にその地域を中心にするわけですから、遠隔地から情報を提供するということもあり得るわけでしょうからね。
【音構成員】  はい。
【多賀谷座長】  それは検討していただければと思いますね。
【音構成員】  はい。
【後藤座長代理】  技術的なところは特に論点になるところはあまりないと思います。実に細かいことを申し上げれば、用語集をつけていただいたのは大変助かるんですが、IPマルチキャストのところで、微細なことですけれども、インターネット等のTCPIPネットワークというところは、単にIPネットワークでよろしいと思います。例えばUDP等もTCPIPとくくって言うんですけれども、ネットワーク技術ではTCPUDPか、あるいは、中間的な形態のものも最近ございますが、通常マルチキャストの場合はTCPでは非常に大変なことなので普通はやらない。
 それから、IPの追加仕様という表現が少し分かりにくいです。確かにマルチキャストがよく使われるようになりましたのは標準が制定されたよりも少し後なんですけれども、IPの基本的なアドレスの割り振りのテーブルに、最初からマルチキャスト用アドレスというのが入っております。この追加仕様という書き方は、少し誤解を生じるかなと思いますので、この部分のTCPIPのところは「インターネット等のIPネットワーク上において」と書いて、後ろに「データ送信を行うためのIP技術のこと」ぐらいでよろしいと思います。細かいことでございますが、実はIPマルチキャスト等に関する技術の検討は、もちろん日本で非常に積極的に行われているわけでありますが、公式のものとして規格を決めるというところまでは、まだ少し早いという段階です。現状、審議会の技術分科会の下での検討において、差し当たりの検討項目には挙がっておりますが、今の段階で何か基準を決めるとは至ってないということが背景にございます。以上、単純な補足でございます。
【中村構成員】  今日、野村総研さんから市場規模予測の概要の話がありました。この資料の第2章ではその要点のみが書いてあると思います。この報告書が公表されたときに、この結論だけが周知されるようなことになるのを避ける意味において、ここで議論ありました増加傾向になっておるファクター、世帯数、ホームパス等があります。それから、有線と無線との連携問題、地域密着の進展問題等、今後、ケーブルテレビ事業のあり様は、非常に不確定なことが多々あります。従って、シナリオを計算したときの前提条件を明確に書いておくようにお願いします。
【多賀谷座長】  マスメディア集中排除原則を見直すというところの議論、従来のマスメディア集中排除原則の議論に乗った形で論述がされていますけれども、最近の、例えばEUの新しいディレクティブというものを見ると、基本的に放送事業の概念について、それが放送というコンテンツがどういうルートで流れるかを問わない時代になりつつあるという話がある。そういう感じでマスメディア集中排除原則を、ハード・ソフトの一致を前提としている議論なわけですけれども、それがどういうルートを流れようと、リニア番組、リニアで提供されるものは放送であり、ノンリニアは準放送的なものであると、そういう議論をしているわけですから、そういう前提のもとにおいては、こういう集中排除原則の議論自体がやはり相対化してくるということを、どこかにつけ加えておいていただいたほうが、いいだろうという気がします。
 また、公共性の話ですけれども、これを前のほうに書くことも私としても賛成ですけれども、特に地方公共団体との間とのかかわりについて、やはりややネグレクトな書き方がしてあるのが気になりました。現実にこれから地域が財政的にも、あるいは、人口の減少という形で体力が弱くなってくるとき、そのままではケーブルテレビが維持され得ない。したがって、公的なあるいは住民からの支えというものが必要なわけですから、そこでこの議論、公的な機関による介入を原則禁止するという議論を、あまり強調し過ぎるのは私はどうかと思う。したがって、それ自体は多分認めざるを得ないだろう。しかしながら、それによって言論支配がなされないようなガードを設けておかなければいけない。
 そのガードとしては、1つは、基本的に地方公共団体による投資があったとしても、その投資も含めて地方公共団体と、ケーブル事業者との間をできるだけ透明にして、住民にもそれがオープンに見えるようにする。それから、もう一つは、私の意見を入れて番組審議会のことを書いていただいているんですけれども、私が番組審議会のことを言ったのは、やはり番組審議会には地方の地域の住民も参加して、そこにおける番組の中立性ということ自体を、地域の住民が自らチェックできるような体制にしておく、そういうようなことも書き加えていただければと思います。
【小池構成員】  今の議論のケーブルテレビの在り方から離れますが、75ページのネットワークDVRについてです。まだNHKの中でも、これに対する対処方針の議論はされていないので、これから課題などについて検討していきたいと思います。報告書の書き方としてはこういう形になるかもしれませんが、ここに米国ではと書いてありますが、日本でも同じように著作権上の問題は起こるかどうか、また、例えばいわゆる見逃しサービス的なことをすると、これからサーバー型サービスで行おうとしている見逃し番組サービスと、ある種境界がなくなるサービスであると考えられるので、これについても考え方を整理したいと思っております。
【石橋構成員】  ケーブル事業者はどう考えているかということで、小池さんおっしゃったとおりで、これいろんな関係者がいらっしゃるというのは我々も十分承知しています。ですから、やはり相当な議論を重ねて、最後は視聴者にとってどうなんだということで進めていかねばならないと思います。我々は、勝手にどんどんやるんだということではありませんので、もし、そういうようなニュアンスが必要であれば、文章を少し変えてもらってもいいと思いますが、検討はしていただきたいですね。
【小池構成員】  我々も別に検討もしてはいけないということではなくて、そういう文書がもし必要であれば・・・・・・。
【石橋構成員】  放送事業者だけではなくて、権利者のお考えもありますから。
【小池構成員】  そうです。
【石橋構成員】  いろいろ関係者の声を聞かなければいかんというのは我々も承知しています。
【小池構成員】  はい。
【多賀谷座長】  この場合には、DVRという形でハードディスクドライブを、ケーブルテレビ事業者の局舎内に設置している場合に、ケーブルテレビの場合には基本的に利用者との間は、ポイント・ツー・ポイントであるわけですから、どういうふうに利用したかということについても、後でログはとれているという仕組みになっているわけですね。それはおそらく単なるインターネット上で、任意にサーバーを置く場合と比べると、著作権法上おそらく将来、優位に働く可能性はあるだろうという気がしますね。
 どこかで個人情報保護の話が出てきましたけれども、個人情報保護との関係では、地上波放送とケーブルテレビは、若干私は何か違うんではないかという意見を持っております。要するに地上波放送はだれが何を受信しているかということは、多分わからない、仕組みとしてわからないわけで、ケーブルテレビはその気になればわかる。
【石橋構成員】  わかります。
【多賀谷座長】  その点が個人情報保護という点では、やはりそれを書いておかなければいけないと思うんです。
【山下構成員】  3点申し上げたいことがございます。2章のところは先ほど中村委員もおっしゃっていたことなんですけれども、ここでさっき自分では加入世帯数が、4,000万とかいう答えが出て予測が出ているので、世帯加入率というんでしょうか、それに換算して表現してはどうかと提案しようかと思ったんですが、逆に言うと、そうしてしまうと、非常にものすごく高くなるんではないかと、80%から90%というような楽観シナリオで出て、悲観シナリオでも60%から70%になるのではないかと思います。ですから、やはりこのシナリオが出た、この予測値が出た経路というのは書き込んでおく必要があって、むしろ加入率は書くとひとり歩きするかなというように思ったということを申し上げたいと思います。
 それから、2つ目なんですが、先ほど来出ている公共性の話で、自分ではあまり法律に詳しくないので、もしかしたら愚問かもしれないんですが、放送の公共性というものが大上段にあるけれども、ここで言われている公共性というのは、そのいわゆる放送の公共性とは異なると。異なるからこそ、放送法から引っ張ってこないで、広辞苑から引っ張ってこられたという話だと思うんですけれども、そうであれば、いわゆる放送の公共性とは違うんだということを、一言、言う必要はないのだろうかと。地域密着型、ここの公共性というんでしょうか、そういったようなものなのかというようなことです。
 3つ目は、83ページからの国産技術のところです。今までも技術については特に国際技術の世界展開で、自分としては全く意見を申し上げてはいなかったんですが、ケーブルの場合、国産で独自に展開をして、そしてフロントランナーになった時点で、後ろを見てだれもついてこなかったということが仮にあったとしても、それほど大きな損失はないと。勝つことはないけれども、失うものはあまりないのであろうと。ほかのネットワーク技術であれば、失うものもあったわけです。そういう意味では、ケーブルではないのかなとは思うんですけれども、やはりアメリカの技術を採用して、メリットがあったと書き込まれていますので、それから離れることの覚悟というんでしょうか、そこにはあるのかなと思いました。
【多賀谷座長】  2番目の公共性の話だけ法律家として申し上げますと、公共という概念自体、多義的なわけですけれども、放送と通信という場合における公共というのは、いわゆる放送はパブリック、公であり、通信においては私的な通信が行われるという形で、公と私を明確に区別する形のものだと。だから、公共というのはだれでもがどこでも聞くような公衆、不特定多数の公衆に対して提供される情報であり、これに対して、通信では私的空間、プライベート空間が通信媒体を使って、延長されているということになります。確かにローカルというか、ケーブルテレビの場合に公共という概念が、ややその意味での公と私の峻別の話とはちょっとそぐわない面もありますけれども、しかしながら、ほかの分野でこういう問題、通信放送以外の分野でこういう公と私の区別という話をしてくると、最近は公・共・私というんです。公共空間と、共同的・共生的な空間と、私的空間。典型的な例が、建築の分野で要するにマンションみたいに、オートロックドアで閉じ込められる私的な空間と道路の間に、住民たちがみんなで一緒に、その当該マンションの住民が一緒に語り合うことができるような共有空間、共同に利用するような空間がないことは問題であると。つまり、私的な空間で住んでいると、限りなくそれは疎外された私的な個人となってしまって、そこに対して地域で共同で語り合う場がなければいけないと。それが今そこがないのは問題であると、そういう観点で言えば、ここで言うケーブルテレビがその意味で、共同空間という意味を含めた意味で、公と私の間を埋めるものとしての役割を果たすという、それはほかの分野と共通していておかしくはないだろうと思います。
【中村構成員】  また公共的な話ですが、ケーブルの場合、今ほど先生方お二人のご意見はそのとおりだと思いますし、もう一つ付け加えて考えてみると、ケーブル事業というのは3つのレイヤーで考えてみますと、1つは、インフラという面があります。このインフラの初期投資が非常に多大なものですから、国なり自治体の支援をいただいて構築しているというところから、実態調査にありましたように、三セクがほとんどであります。ですから、このインフラ部分の実態を考慮した公共性という枠の中で、考える必要があるというのが1つです。レイヤーの2つ目としては、コンテンツですとか、アプリケーションの問題があります。本日、議論されているのは、どちらかというと、このレイヤーのところのあり様ではないかなと思います。あとは、3つ目のレイヤーというのは、経営上のマネジメントの話がありまして、ここにちょっと出ておりますように、自治体自身が事業主体になっておるという事実がございます。従って、公・共・私の区分ごとに3つのレイヤーで分けた解説で、公共性の定義づけを、今後、検討して行ければ良いと思います。
【多賀谷座長】  そのほかございますでしょうか。今の報告書だけではなくて、本日の議題全体についてご質問、あるいは、言い残したこと等ありましたら、ご自由にご発言願います。
【藤本構成員】  確認ですが、最初に石橋構成員がおっしゃった、87ページの地域の競争状況、これは非常に大事な話だと思います。このグラフをぱっと見ますと、ケーブルテレビはまだまだ地域の独占性が残っているという事だけが目に付き、それならばもっと競争させればいい、というような議論が簡単に出てくることを危惧します。ケーブルテレビは設立の経緯からして、事業としては採算の取れにくい地域にもサービスを拡大し、更に自らのアイデンティティとして地域貢献のためにコミチャンを充実させてきましたが、これはもともと採算的にはコストばかりがかかるものです。今は他事業者との競争が激しさを増す中で、地域での存在感を高め、それによって顧客を囲い込んでいくしかないだろうということで、一層力を入れられ始めていますが、このような事情を抜きに、たとえRFを使ったサービス同士であれ単純に競争をあおってしまえば、良質なコミチャンを維持することが困難になります。さらに事業エリアが自由な事業者が、効率のよいエリアだけでコスト競争を仕掛けてくれば、これは大変なことになってしまいます。大都市とその近郊では、どうしても地元意識が希薄になりますから、安ければコミチャンなんかはどうでもいいということで、その様な事業者に流れていく人が少なからず出る恐れがあり、今まさにそういう問題に直面しているわけです。
 ですから、さっきから話にあがっています地域密着、地域貢献などという、ケーブルテレビの公共性ということを考えたときに、RF方式のケーブルテレビ同士だけではなく、これから入ってくるIPマルチキャスト事業者も含めて、競争政策自体が今後のケーブルテレビの存続のための一番大事な部分だと思うのですが、これについては、石橋構成員もおっしゃいましたけれども、あまり議論されて来なかった感じがします。ですから、ここをもっと議論し、肉づけし、あるいはケーブルテレビの公共性の維持、存続そのもののために整理することが非常に大事だと思います。多分もうこれは意見として取り入れられているとは思うのですが、ここが私の一番気になるところです。
【多賀谷座長】  そうですね、ここのケーブルテレビとしての、ハードとしての独占性という議論がありますが、現実にトリプルプレイとか、あるいは、FTTHの導入により、サービスのレベルからすると、それは別に独占でもなくっているという面もあるわけです。だから、その話をしないでハードとしての独占という話をすると、やはりそれはおかしな話になるので、それはやはり留保されていたほうがいい。それは要するにここで競争ということを言う場合に、どの競争の場とか、単位の設定の話があるんだということを、書いておいたほうがいいと思うんです。現実にはFTTHと競争することになるので、何らその意味においては独占という議論は、おそらく当たらないという面があるだろうと私も思います。
 本日は報告書素案について検討してまいりましたけれども、事務局においてはこれまでお出しいただいた議論を踏まえて、文章を校正等、特に公共性の位置づけ等も含めてさらに精査し、報告書案として提示するようにお願いいたしたいと思います。
 それでは、本日はこれで閉会したいと思います。次回の会合の予定などについて、事務局からご説明願います。
【井上地域放送課課長補佐】  本日はありがとうございました。今後、事務局にて修正、精緻化を行ってまいりまして、次回には報告書案として提示させていただきたいと思います。次回会合は4月に開催させていただく予定でして、日程につきましては座長ともご相談の上、別途皆様にご案内させていただきたいと思います。事務局からは以上です。
【多賀谷座長】  それでは、本日はこれで終了します。どうもありがとうございました。

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