情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会


「ブロードバンド時代における放送番組制作に関する検討会」(第7回会合)
議事要旨


1.日時
    平成15年11月26日(水)1300分〜1516
2.場所
    総務省地下2階 第1・第2・第3会議室
3.参加者
 (1 ) 構成員
    別紙のとおり
 (2 ) 総務省
    清水政策統括官、寺ア大臣官房参事官、奈良コンテンツ流通促進室室長、梅村コンテンツ流通促進室課長補佐
4.議事録
<開会>
 ・   菅谷座長代理 本会合から数回にわたり、第5回会合において合意したとおり、契約見本を今年度中に策定・公開することを目指し、その策定に向けた議論を中心に進めることとします。
<議事>
(1)契約見本の策定について
    1) 現状の契約パターンの整理案について
  菅谷座長代理 議論の出発点として、放送事業者側から、現状の契約をパターン化するとどのような整理になるかを提示してもらう必要があるかと思います。それをベースとして議論を展開することにより、見本となるような契約のパターンについて、合意形成を進めていくという流れでよいのではないかと考えています。スケジュールとしては、本日放送事業者側から契約パターン等について説明していただき、次回は制作事業者側から見本となるような契約はこうあるべきだという観点からの意見を提示していただき、議論を重ねていくという段取りで進めていくのがよいのではと考えています。もちろん議論の進展に応じて細かい部分を適宜考えていくのでしょうが、大まかなところとしては、このような進め方を考えています。よろしいでしょうか。
  出来上がった契約書は1つの見本という理解でよろしいのですね。
  菅谷座長代理 そういうことです。皆さんご了解いただいたということで、そのように進めさせていただきます。なお、契約パターンのマトリックスができ上がった段階で、これを基に見本となる契約書そのものを書き起こしていくかどうかは別途議論したいと思いますが、そうした見本となる契約のパターンのマトリックスについての合意形成がひとまず目標ということになろうかと思います。
(放送事業者側構成員から現状の契約パターンの整理案の概要等についての説明が行われた。)
    2) 質疑応答
  NHKの「プロダクションと委託取引契約方針の見直し等について」に「予約的に購入」との表現がありますが、例えば予約的購入という意思表示もしくは約束といったものに関して何か債務を負う可能性はあるのでしょうか。
  10年ぐらい前から行っている方法なのですが、もともとは、NHKがロバート・レッドフォードの「サンダンス」とともに賞をつくって、日本とかアメリカとか色々な国の脚本に賞を与えたのですが、賞だけでは映画貢献にならないということがあり、各地域でグランプリに選ばれた作品ができ上がったら日本での放送権を何十万ドルで全て買うという契約書を結び、そうすると外国ではそれを持って銀行へ行けば金を貸してくれるわけで、それが制作費の一部になり、映画が次々にでき上がってくる手助けとなるということで始めた制度なのです。現在の映画やアニメみたいなものに限っていたものであり、拠出費用は総バジェットの10%ぐらいの制度なのです。この制度をもっと多くの番組群にも適用できないか、改革を検討しているところです。
   共同制作についてですが、国際共同制作は実施していますが、国内は現在やっておりません。この分野も検討を開始していますが、ただ、例えば民放と共同制作をやりましょうといった時に片方は受信料で片方はスポンサーのお金でやれるのかどうか、また、例えば日産の自動車が100台ぐらい出てくる番組をNHKが共同制作として金を出してやった場合、タイアップしているという批判が出てきたらどうするのかなど、色々な局内議論があってなかなか進まないので、それだったら、購入であれば、制作委員会やプロダクションがお作りになって、その後について、例えばNHKの放送、公序良俗に反することとか、看板がタイアップで写っているような、いわゆる裏タイアップみたいなものを外せるかどうかとか、NHKの放送に耐え得る条件がクリアーしていれば買いますよということを決めると。タイアップの場面が写っているとか、それは外してくださいと言って外して品質が落ちなければ、それは基本的に買いましょうということです。ただし、委託で作った場合と予約購入の場合の料金をどこで違えるのかは、例えば放送回数が何回かにもよりますし、展開をどうするのかとか、展開の可能性とか、展開の可能性も何も半分持てと言われたってプロダクションも乗りませんから、そういうことも勘案しながら、今、研究・検討を重ねているということです。
  権利に関する購入義務はうたわれているのでしょうか。 
  購入義務はうたいます。
  その辺の関係なのですが、今の(1)の2)のアニメ番組のところの2行目に「NHKとの間で権利を共有し」とありますが、これはその上のNHKとプロダクションで著作権を共有するという考え方と相通ずるものだと思うのですが、その次の「共有し使用権の分担や権料収入配分等について契約する……」について、この使用権の分担は、NHKが代表行使者となられるかどうか、どっちがやるかということを話し合いで決めましょうという意味なのでしょうか。
  そうです。ですから、このアニメ制作委託の場合には、NHKが代表行使という形でいくのかどうかが個々の事情によって違ってくるだろう、したがって、権利行使の範囲を分担するという契約が当然あり得るだろうということです。
  民放のいわゆる完パケであります外部制作委託番組等については、著作権は原則として制作会社に帰属するということが共通した考え方であるようでありますが、この点と、NHKが共有であってなおかつ代表行使という形に変えるという点では違うわけであります。問題は、これから先の二次的利用についての決定権はどちらが持って、配分はどうなるかという点については、この両方の基本原則に、NHKの基本的な整理の仕方だけではまだまだわからないところがあります。
  これについて、言ってみますと、利益の配分がどうなるかということになるわけでありますが、恐らく該当的な契約書の範囲内では、両団体ともおおよそこの条項で取りまとめられるという方針のように聞きました。むしろそれから先、具体的取引がどうなるかという具体的な条項などについてご議論をしていただければと思っています。
  菅谷座長代理 プロデューサーの関与という言葉がない局がありますが、いかがなのでしょうか。
  プロデューサーとしての関与もございますし、あと、もろもろ調査部門なども用意しておりまして、例えばその枠のキャスティングでどういった役者が一番好まれているかといったような内容をサポートするということもございますので、そういった意味で、制作会社をサポートする体制にはございます。ただ、基本的に、そういったことを踏まえても、もちろんケース・バイ・ケースの判断がありながらも、著作権は制作会社に帰属されるということを前提に考えているということでございます。
  この後の契約書にもなるものが、あり得べき契約書のひな型をつくっていくのか、実態の問題点を改良するために契約のあり方の事実を正していくのか、そこが見えない。と申しますのは、民放各局から説明された契約のひな型は、僕らと相当議論した上でつくったものですから、あまりコメントすることが実際ないのですよ。あとは流通に対してどうするかとか、本当に売れるものをつくろうか、どうしようかという議論であって、評価とすればよしとしか言いようがありません。
   ただ、実態の議論として、制作会社に著作権が帰属する比率が今どれぐらいあるのかとか、時間がかかると思いますが対価とは一体何の対価なのかとか、これは非常に不明でして、それについての問題点を私どもから出すのか、あるいはこういう形で行きましょうよという話にするのかで、相当コメントの内容が変わってきますので、どちらを議論するのかを知りたいです。
  奈良コンテンツ流通促進室室長 基本的には、このラウンドでは、契約見本ということで、皆様方に色々議論していただき、1つのパターンではなくて、見本となるような契約のパターンをつくり上げていくことですから、そういった意味では、前者というのでしょうか、民放とNHKとが本日説明された現状の契約パターンについての議論、その辺はぜひ整理し議論してまとめていっていただきたいと思いまして、そこに主眼を置きたいと事務局としては考えたいと思います。もちろんそれに付随して、今おっしゃられたようなご意見をこの場で出すことを止めるとか、そういうつもりは全くありません。
  見積書は大きな契約の書類の付属書類として含むと考えていいですか。実はそこに大きな問題があると考えているのです。見積りのあり方ですね。業務内容をどう指定してくるかということです。
  菅谷座長代理 それについては、もう少し整理ということで。
(2)その他
  菅谷座長代理 並行して合意事項の進捗状況のフォローアップも引き続き実施していく必要があり、特に「自主基準のさらなる詳細化・具体化、民放各局による個別の自主基準作成」、「番組制作事業者側における自主基準作成」といったことが望まれたり、期待されたりしているわけでございます。いずれ、事務局で整理してほしいのですけど、とりあえず状況の進展があれば教えていただこうと思います。
  制作の実態が実写の場合と非常に違うものですから、今、私どものほうで最大の問題になっているのが下請法の適用の問題なのです。法律について公正取引委員会のご指導いただいて色々詰めているところですが、非常に多段階にわたる制作工程がありまして、早いうちに納品したものについては3カ月後の支払いということになると、放送後何カ月あるいは納品後1カ月後の支払いの間にタイムラグが生じるというようなことが多数出てまいります。そこら辺をどうするのかということと、それから法務担当のようなセクションがないところが多いもので、またこの下請法というのが、各プロダクションに非常に誤解を招くような受け取り方をされているところがありまして、これについてのガイドラインを示して、発注書をもって契約書とするとか、それから納品はどの時点をもって納品とするのかというのと、ディレクターというのが契約のケースが多いものですから、そのディレクターの任意のやり直しというか、そういうことが非常に難しくなるというようなことがあって、下請法に則る契約のやり方について大きく整理をしていかないと、大混乱に陥る可能性があると。
   製造業でも指摘されているように、下請法の適用を嫌って海外への丸出しに近い制作システムがもっと頻繁に行われる可能性があり、産業の振興という立場から見ると厳しく運用されると非常に制作組織は混乱するなということでありまして、私どもは放送事業者、特にNHKさんに対して、ジャパニメーションに対する産業育成の視点を公共放送であるがゆえに持ち得るだろうし、持っていただけないかということで、コンペ方式というのをお願いしておりましたが、今日拝見したコンペ方式がもし実現されるとすれば、これはアニメ制作にとって非常に画期的なことであろうかと思いますので、その他、色々関連団体を通じて契約をするというパターンで、共有というのを、これは必ずしもいいこととは思いませんが、色々多様というところで言うと、プロダクションにとって、産業振興という立場で色々明るい見通しが持てるのではないかと思っています。
  自主基準という原則的な取組み方については、既に何回かの専門部会を開催して情報の説明、情報の整理・徹底を図る努力は続けていますが、下請法をどの程度関連付けていくかという点で申しますと、今度の改正で情報成果物の中に映画が組み込まれましたので、その整理をどうするかということが1つ宿題だろうと思います。
   それから、民放の内容のうち、見積書の問題は非常に大事な問題なので、そこら辺をどう括っていくかということが見えないと、そこについての議論だとか、どう考えるかということは、これからではないかと感じます。
  映画の、つまり放送を第一次的な目的としない劇場用の映画については、民放のパターンはどれになるのであろうかということについてお答えいただければありがたいと思います。つまり映画の著作物の著作権はどこに帰属するとお考えでおられますかということです。
  既成作品の放送権購入という中に、劇場用映画の放送のライセンス契約というのが含まれてまいります。もう一つ、主に映画会社が多いのですが、幹事社となって新たに映画をつくるので出資しないかということで出資して、それで劇場での公開以外の二次利用等々について配分を受けるというものもございます。
  放送番組に関しての制作の著作権の帰属は原則として制作会社であるという説明が今日のほとんどだったと思うのですよ。そうすると劇場用映画に関しての著作権の帰属は制作委員会になるのか、それとも現実に制作をしたプロダクションになるのですか。
  契約上は制作委員会が通常持っていらっしゃいます。
  制作委員会というのは、出資者の集団でして、実際の制作のノウハウをお持ちなわけでもありませんし、制作の実際を手がけておられるわけではありませんよね。そのあたりのご認識はどうなのでしょうか。
  民法上の組合契約に則った制作委員会方式は映画の世界では伝統的に何度も何度も行われて、ほぼ非常に根づいている性格の契約スキームであります。そこにおいては、出資比率に応じて著作権の持ち分を決めてそれをシェアするというのがその契約のスキームです。ですから、その契約のスキームに乗る、乗らないというのはそれぞれの当事者の判断ですから、テレビ番組の世界における著作権の仕切り、ルールと同じルールを当てはめることはちょっと無理があるだろうと思っています。
  劇場での公開を第一次的な目的とする劇場用映画というものと、放送を第一次目的とする放送番組というものの間に区分をしているとお考えだということですね。
  テレビ番組の中にも大まかな分類があるのですが、実はさらに細分化されてきていまして、これはそれぞれの業界に根づいた伝統、慣行みたいなものを尊重しながらやりつつあるということが別なところでございます。ただ、それは便宜上この大きな分類をしているというのがテレビ番組における今の著作権の仕切り、ルールということになるかと思います。それと映画というのを同一線上で論ずるのは色々な伝統とか背景がありますので、位相が違う話だと思います。
  映画製作者として、発意と責任を有するというところが著作権の帰属の根本という部分でもございますので、制作委員会型の映画制作のケースというのは、制作委員会のほうで、なにがしか企画も含めて進めることが多いと理解していますので、それで著作権は制作委員会に帰属する、出資分に応じて負担するというふうになっていると理解しています。
  映画そのものの企画を実際に制作されるプロダクションサイドでお立てになったような場合に、その企画を制作委員会の幹事社に持っていって採用され、作られることになったと、当然そこが出資者を募って制作委員会を組織して契約の話を進めるとなった途端に、その企画をお立てになった実態として制作されるプロダクションは、急に単に受注する立場に立たされてしまうというようなご意見が背景にあってのご質問だと思うのですが、10%であっても5%であってもその制作委員会の中にパートナーとして入っていただくことで同じ立場にお立ちいただくということは、1つ冷静な解決策としてはあるだろうと思います。
   それから問題は、単なる下請事業者として権利丸ごと買い上げというようなことは、基本的に映画の根幹的な側面というか、クリエイティビティーを継続的に発展させていくという観点から避けるべきだろうと個人的には思いますし、契約を作る立場からいえば、常にそれは反対に映画事業部などの担当者に言っていることなのです。プロダクションに対する成功報酬の1つのガラス張りのスキームとかもやっていく必要があるだろうと。個々のあくまでも契約上の条件の詰めの問題だろうと思いますし、制作プロダクションのそういったご主張は、当然それを強く訴えられていくチャンスというのは色々な階層においてあるだろうと思いますので、制作委員会方式での映画制作というものが、ある意味ではよりその中にいいコンテンツを作っていくというブランドにしていくためには、そういう努力や工夫というものが非常に求められているということは認識しています。
  ある意味で映画の著作物についての各民放局としての理解の仕方、解釈の仕方を伺えたわけで、大変これはこれでありがたかったと思います。このことは放送番組だけでなく、劇場用を第一義の目的とする映画著作物についての論議をこの検討会でもぜひ進めていただけければと希望します。
  菅谷座長代理 まさに映画と放送というものは、これから21世紀、ますます融合してくるというか、同じビジネスの中に入ってくる問題ではないかと思います。これからの合意事項形成で、どの程度さらに細かく突っ込んでいけるか、特にお金の問題がどの程度、さらに客観的に議論できるようなものが出てくるかどうか、そこら辺が1つ課題であるのかなと、それがこれからのコンテンツ流通を促進させていくことなのかなと感じました。そういう意味で、合意事項の進捗状況の今後のフォローアップについては、事務局の方にもよろしくお願いしたいと思います。
  NHKの共有権利の代表行使者というのは、著作権法上の代表行使者という規定がありますが、それを恐らくそのまま適用しようということなのだろうと思うのですが、実はこの条文それ自体がよくわからない。専門家でもよくわからない。契約を締結する、いわゆる利用について、対外的に処分をする権限を1人に集中するという意味が1つあります。もう一つは、訴訟上の権利を行使する場合も単独でできるということも考えられます。さらにその行使の結果、判決の効力が代表者でない者についても及ぶと、こういう場合もあるわけでありまして、実を言うと、この条文についての判例は昭和45年以降一回もないはずです。刊行されているものには私はないと思っていますので、実を言うとよくわからない。NHKさんが具体的に代表行使者をどういうものとして契約書をつくられるのかということが示されるとよくわかるので、できれば、それを示されたらいかがかなというふうに思っています。
  基本的には許諾権を代表して行使するという意味合いで考えています。それを超えて、どこまでのことがあるかということは、代表行使の期間設定をどうするかとか、そのあたりは協議をしていますので、そこで確認しながら進めていきたいと思っています。
<閉会>




(別紙)

「ブロードバンド時代における放送番組制作に関する検討会」(第7回会合)
出席者


(敬称略)
学識経験者    
  菅谷    実 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授

法律実務家  
  松田  政行 マックス法律事務所弁護士・弁理士

放送関係者  
  関本  好則 日本放送協会放送総局業務改革推進室長
  溝口  明秀 日本放送協会マルチメディア局著作権センター統括担当部長
  竹内  冬郎 日本放送協会マルチメディア局著作権センター著作権部長
  斎藤  汎司 日本テレビ放送網株式会社コンテンツ事業局次長
  植井  理行 株式会社東京放送編成局コンテンツ&ライツセンター担当部長
  板垣  陽治 株式会社フジテレビジョンライツ開発局総合権利センターライツ業務部(著作権担当)部長
  高橋  英夫 株式会社テレビ朝日編成制作局ライツ推進部長
  池田  朋之 株式会社テレビ東京編成局契約統括部長
  中谷  洋一 社団法人日本民間放送連盟著作権部長
  田嶋    炎 社団法人日本民間放送連盟著作権部副部長
  高村    裕 社団法人全日本テレビ番組製作社連盟副理事長、株式会社オフィス・トゥー・ワン経営企画エグゼクティブプロデューサー
  今川  祐之 社団法人全日本テレビ番組製作社連盟専務理事
  山口  康男 有限責任中間法人日本動画協会常勤理事・事務局長
  青野  史郎 有限責任中間法人日本動画協会著作権委員会委員長
  指田  英司 有限責任中間法人日本動画協会著作権委員会主査
  石井  幸一 社団法人日本映画製作者連盟
  佐々木史朗 協同組合日本映画製作者協会理事、株式会社オフィス・シロウズ代表
  荒木  正也 協同組合日本映画製作協会事務局長(李構成員の代理出席)

<配布資料>(PDF)
  プロダクションとの委託取引契約方針の見直し等について(日本放送協会)



トップへ