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「ブロードバンド時代における放送番組制作に関する検討会」(第9回会合)
議事要旨


1.日時
    平成16年3月12日(金)1000分〜1120
2.場所
    総務省9階 901会議室
3.参加者
 (1 ) 構成員
    別紙のとおり
 (2 ) 総務省
    鈴木政策統括官、桜井大臣官房参事官、奈良コンテンツ流通促進室長、梅村コンテンツ流通促進室課長補佐
4.議事録
<開会>
    1) 座長からの挨拶、桜井官房参事官からの異動の挨拶が行われた。
    2) 事務局から資料の確認が行われた。
<議事>
    1) 契約見本案について
奈良コンテンツ流通促進室長 それでは、前回及び前々回の検討会における議論を踏まえ、放送事業者及び番組制作事業者である構成員間で検討を重ねて作成された契約見本の案について、事務局からご説明させていただきます。
  まず、表題でございまして、「放送番組の制作委託に係る契約見本(契約書の必要事項)について」となってございます。これは当初は「契約パターン」という言い方をしてございました。ただ、パターンというと、幾つもパターンがあるというふうに読めるんですけれども、後ほどご説明いたします別添を見ていただきますと、パターンというよりは必要な項目事項を整理したという形になってございまして、それを端的にあらわすためのかっこ書きを付けてございます。
  その後、1枚目にこの契約見本の位置付け等についての説明が入ってございます。1段落目は、そもそもの趣旨が書いてございます。2段落目は、まず番組制作形態そのものを大まかに、1)放送事業者自らが制作するもの、2)番組制作を委託するもの、あるいは3)番組制作事業者が独自に制作したものの放送権を購入するもの、4)として共同制作するものというふうに分類した上で、この契約見本は2)のケース、外部制作委託に関して必要事項を整理したということでございます。
  個別の契約の条件などについては、当然相対の個別によってされるんですけれども、この契約見本では、最低限必要な事項を整理することによって、透明性・公正性の一層の向上と、かつ実効性の高い契約見本という2つの目的の実現を図ったという趣旨が書いてございます。なお、この後も出てまいりますが、途中のバージョンで、放送局あるいは放送事業者、あるいは制作会社等々、言葉の不整合がございましたので、本日は「放送事業者」あるいは「番組制作事業者」に統一してございます。これは一昨年本検討会でまとめた合意事項のときのワーディングに合わせたものでございます。
  次に3段落目でございますが、「本契約見本の作成にあたっては、現状の放送事業者と番組制作事業者の契約を踏まえ、主要な関係者共通の理解を得て、一般的な必要事項を示した。もとより、個別の契約書は、個々の相対の契約交渉によって合意作成されるものであるが、その際に本契約見本が幅広く参照・活用されることを期待する」という形にしてございます。
  「また」以下は、ある意味この契約見本とは別のお話でございますが、個別の放送事業者ごとの契約方針を、すでにこの検討会でも議論というか、紹介というか、議題に上りましたが、これにつきましては、一昨年12月に本検討会で整理いたしました合意事項に基づいて、昨年3月に放送事業者において策定、公表された放送事業者の自主基準について、さらにタイミングを図って詳細化していくという方向性でフォローアップしていくことになっております。この詳細化の位置付けについては、本契約見本とは別に、各放送事業者において検討、公表されることを申し合わせているものであるという形で、この契約見本は一般的なことを整理したものだと。個別のものは、それぞれの放送事業者において別途策定、公表していただくという二段構えというか、全体の整理が書いてございます。
  なお書きは、当然時代とともに、時とともに事情にあわせ変更することは必要だということが書いてございます。
  以上が全体の趣旨でございますが、別添3枚紙で契約見本そのものが書いてございます。長いので、主要なところを説明したいと思います。
  契約目的、番組の概要ときまして、著作権というところでございます。ここは重要なところでございますが、最初の「・」では、「制作実態に伴って発生する著作権の帰属」いわゆる原初的な著作権法に基づいた著作権の帰属について、実際の外部制作委託の制作実態に従ってどのように帰属すると理解するのかと、あるいはそれをもとにしながら、契約によって著作権を移転したりということもございますので、それを取り決める場合には、その扱いをきちんと明記しようということが書いてございます。
  2つ目の「・」は、契約での扱いとしては、権利を移転させたり、権利行使の代表者を定めたり、あるいは著作権の帰属先とは別に権利行使窓口を設定したりすることがある。こうした場合は、公正な協議を行うことが不可欠となるということが、ある意味留意事項的に書いてございます。
  3つ目の「・」は、番組制作事業者に著作権が帰属し、放送事業者が放送権の許諾を受けるというケースの場合には、放送事業者が独占的に放送できる期間、回数、地域、メディアを取り決めた上で、その結果を明記すると書いてございます。また、当初取得した放送権の期間、回数、地域を超えて、番組の放送権の再購入を放送事業者が希望したときは、別途対価を支払うことにより放送事業者が優先的に取得するということが書いてございます。これは現状における一般的な慣行を明記、確認したものでございます。
  その後、納入物件ときまして、対価でございます。対価につきましては、契約の対価に関し、委託内容、利用条件等に応じて、その金額、支払日、支払方法などを適正に取り決めて明記する。なお、対価には契約目的での番組使用の許諾の対価が含まれるという記述になってございます。
  次に改変が出てまいります。編成上の必要等で放送事業者が番組を改変する必要が生じる場合が当然あるわけでございますが、その場合には、放送事業者が必要により番組を改変することへの同意を取ることについてきちんと書いておくことが書いてございます。
  次に二次利用でございます。ケースが幾つかあるわけですけれども、例えば著作権を共有するというケースでございます。その場合には、二次利用の円滑な促進等を踏まえ、代表期間を含む代表行使者の取り決めなど番組の二次利用の許諾窓口の扱い、権利処理、利益配分等の必要な条件を取り決めて、明記すると書いてございます。この代表期間の字は、この「期間」でございまして、時間のことを指してございます。次ページの一番上の「・」は、二次利用のもう一つのケースとして、著作権が番組制作事業者にある場合に、二次利用のそれぞれの形態、この形態というのは、例えばビデオグラム化とか、出版とか、海外販売とか、そういったことでございますけれども、そういったそれぞれの形態における許諾窓口を、放送事業者、番組制作事業者のいずれが担うこととするのかを取り決めて、それを明記する。また、対象期間、権利処理、費用負担、利益配分等、その業務に関わる条件を取り決められる範囲で取り決め、明記するとしております。 以上2つのケースを書いてございますが、それぞれ期間を定めるということでございますが、その取り決めた期間後の取扱いについては、予め当事者間で十分協議し、その結果を明記しておくということが書いてございます。
   クレジット表示の部分と、権利処理。これは必要な権利処理をそれぞれの役割分担でやることが書いてございます。
   「制作基準等制作業務遂行の取決め、審査」とございます。これは若干わかりづらい書き方をしてございますが、2つのケースに分けてございます。上のケースは、放送事業者と番組制作事業者が、著作権を共有することになるという制作実態で制作業務を遂行していくというような場合に、制作過程での業務遂行方針、委託側と受託側の内容管理と制作への関与の位置づけをきちんと書いておくということ。他方、番組制作事業者が著作権を有するという形で制作業務を遂行する場合もございますが、その場合には、放送番組基準、編集基準等の条件を遵守することとしまして、最終的に番組制作事業者が納入して、放送事業者が審査するというときに、不適格となった場合には、その費用負担については双方協議の上、番組制作事業者が改訂することを明記しておくということでございます。
   納入・試写、内容の変更とございます。その下に制作の中止とございます。キャストの病気・事故、番組編成上の事由、天変地異等の不可抗力等の場合は、当初の予定話数に満たないうちに番組制作を中止できるが、制作進行状況等を勘案の上、相互の補償等の措置を協議により決定する旨を明記するということでございます。
   以下、秘密保持条項、契約譲渡の制限、契約解除条項、別途協議条項が、一般的な条項ではございますが、書いてございます。
   もう1枚ページをめくっていただきますと、※印が1、2とございます。※1は、著作権のところに出てくるものでございますが、民間の地上波の放送事業者でBSCS放送事業者が別法人となる場合でも、当該地上波の放送事業者と番組制作事業者が、BSCSでの放送権及びその応分の対価の支払いを含めて契約することができるということを記述してございます。前回親会でも議論になったところでございますが、そのときの議論を整理の方向性に沿って書かせていただいているつもりでございます。
   ※2でございます。これは二次利用のところの注意書きでございます。放送事業者が代表行使者となる、あるいはまた、放送事業者が独占的に窓口業務を行うことを規定する場合にあっても、番組制作事業者側にも二次利用の案件を放送事業者に提案することは可能であることを、念のため書いてございます。また、ここで「独占的」という文言を使用するというケースについて、その理由は、二次利用の契約を第三者と取り交わす際、第三者にライセンスする権利をすべて有している旨の保証条項を契約書に必ず記載しなければならず、二次利用契約の相手方との関係上必要となるためであるということを、これも念のため書かせていただいております。
   最後に、(注)でございまして、本検討会には日本動画協会所属の構成員の方がおられます。前回、親会までずっと参加していただいておりますけれども、今般、契約見本の取りまとめに当たりまして、日本動画協会所属の構成員の皆さんは、こういう一般的な放送事業者の横断的な契約見本ということよりも、個別個別の放送事業者の契約方針に重大な関心があるという観点から、今回のこの契約見本の取りまとめには参加しないということでございます。念のため申し上げますと、決して日本動画協会として、この契約見本に反対しているという意味ではなくて、この取りまとめには参加していないということにしてほしいという意見がございまして、こういう注意書きを付けてございます。
   最後に、本検討会の構成員のメンバーを付けてございます。
   以上でございます。

    2) 質疑応答
舟田座長 ありがとうございました。それでは、ご議論をいただきたいと思います。どうぞ、皆さんご意見、ご質問を出してください。
  私からですが、「代表期間」とありますが、別のところでは「対象期間」となっていて、これは何か理由があるんですか。普通契約するときの「契約期間の定め」のことですね。
奈良コンテンツ流通促進室長 代表行使をする期間ということを縮めて「代表期間」と申し上げております。
舟田座長 これを切ってしまって「代表行使者の取り決めなど」として、最後に期間でもいいわけですよね。期間を定める。「代表期間」は何か特殊な言葉なのかなと思ってしまうわけですよ。つまらないことですが。
  全くご趣旨のとおりかと思います。いろいろな、例えば私どもの契約書上の書き方とか、そういったところから議論が進められておりますので、こういった言葉が入ってきておりますけれども、趣旨からすれば、座長ご指摘のとおりであろうかと思います。
  これは、「代表期間」というか、「代表行使期間」ですよね。だから、「行使」を入れてもいいんじゃないですか。どうなんでしょうかね。
  むしろ、後ろとの整合性から言いますと、ご指摘のとおり「対象期間」という形で、「等必要な条件」の中に入れてもいいことかなと私は思います。
  実務上の打合では、管理期間とか言っていますね。
舟田座長 そういうふだん使われている言葉なんですね。最終的なワーディングは結構ですけど、意味内容だけちょっと確認したかったので。
  対価のところで、なお書きがあって、「対価には契約目的での番組使用の許諾の対価が含まれる」と書いてあるんですけれども、これでいう契約目的での番組使用の許諾は、契約目的を上に見ると、「番組の制作委託と受託に関する契約書である旨、制作する番組の使用目的とあわせて明記」と書いてあります。この含まれると書いてあるんですけど、そうすると、それ以外は含まれないのか。このなお書きの意味がちょっとよくわからないんですけれども。
  議論の背景としては、これはATPさんなどからこの検討会以前の段階で、一部そういうご意見として我々も聞く機会がありましたけれども、制作プロダクションサイドの議論の中では、通常の局と制作会社との取引慣行の中で、制作対価と、その結果生まれた作品の放送権の対価をきちっと峻別すべきではないかというようなご意見が一部おありになったということはございます。
  ただ、これは局側としても、あるいは制作会社側としてもご理解いただいているところなんですが、我々はあくまでもやっぱり放送事業者ですから、当初、放送の目的のために作るということは、大きな目的としてすでにあるわけなんで、分かち難いということを再三ご説明してきました。我々の場合は今お金の出所は営業がそれを地上波のそれにかけることも言って得られる営業の対価によって、編成の予算が組まれまして、枠の予算が決められ、その制作費の対価がそこで決められるという形での制作費の策定の仕方なんです。これが今言われ出した議論としてありますのは、いわゆるコンテンツ制作費的な、ファンドの対象にもなり得るような、そういう形としてお金が用意されるような環境になれば、そこで、そういうファンドをもとにして、あるものをその制作費でつくると。そのうちに権利の支分権ごとにといいますか、使用形態ごとに個々の権利を行使するなり、許諾するなりして、そこからの対価を配分するというような形態がだんだん増えてくるとは思います。けれども、現状は、そういうところまで我々のいわゆる編成制作費と社内的に、あるいは業界的に呼んでいるお金の性格からは、当初目的としての放送というものは、当然の前提として組まれて発注させていただくということなので、分かち難いという議論がございました。ですから、そういう背景で読んでいただくと、ここのなお書きのところは、使用の対価が含まれるという考え方の背景には、そういうものがあるということなんです。
  ここで使っている「番組」という言葉は、放送番組ということなんですけど。でも、このなお書きの中で、そうすると「放送」という言葉がキーワードになるわけですよね。放送番組使用の許諾ということですね。
  はい。だから、だんだん増えてきておりますのは、放送だけではなくて、特にアニメーション等はそういうケースが多いんですが、ビデオグラムからの収入もかなり当初から予定をして、制作費の策定をするというようなケースもだんだん増えてきておりますので、その場合には、放送及びビデオグラムにおける利用を目的としてというのが契約の主文にも入ってくるような、そういう傾向がだんだん増えてきているということはありますね。
  この「番組」というのには、ビデオグラムのことも含まれているわけですか。
  ここでは、放送番組です。
  それはその都度のお話し合いですから、いずれにせよ、我々で言えば、地上波放送が第一義的にありますけれども、それはお話し合いで、このブロードバンドでも流したいんだとお話し合いがつけば、最初にいただく権利の中で地上波放送とブロードバンドで流すということも可能性としてはあるわけですね。他面、それではビデオ化のほうは制作会社さんのほうにということもありますから、ここはもう契約でのお話し合いになりますから、地上波放送だけの場合もありますし、それからBS権も併せて取る場合もあるし、いろいろな可能性があるわけですね。それで、最初のお話し合いで決まった主要目的の対価は、このお支払いする対価の中に含まれていますよという意味です。  ですから、放送には限らないということで「番組使用」という。この番組を使用する、使用の目的は、放送であったり、ブロードバンドであったり、衛星であったり、ビデオ化であったりということであります。通常は、地上波がほとんどですけれども、それは今後メディアがどういうふうに展開するかわかりませんし、それから現実問題として、ブロードバンドの権利を最初から処理していただいて、ブロードバンドに流すという前提でつくることも可能性としては、十分現在ではありますので、そういう意味です。
  その点につきましては、放送番組を作るときのどういうふうに使うかというところは、個別にある程度幅があるといいましょうか、違いがあろうかと思います。例えば、当然放送すること、これは地上波、BSに関わらずですけれども、これに加えて、一定の視聴者向けのサービスということがあります。例えば、NHKには昨年オープンしました川口のアーカイブスで来館された方々にこれを見ていただくことも可能にしていくというのが、番組の主要目的に含まれてくるということがありますので、そのあたりは必ずしも放送だけではないという認識でおります。
  そうすると、二次利用の場合とどういうふうに区別されますか。最初の契約目的のところに、放送とビデオとこれとこれなんだよと言ってしまえば、それはもう二次利用ではないというふうに考えられるんですか。
  はい、そうですね。付随目的利用は、各社によってそれぞれ契約表現上は違いますけれども、放送に付随する、今おっしゃられたようなライブラリー使用もそうですし、それから非常にわずかな対価なんですけれども、保証金的なものをいただくことで、海外に在留邦人向けに福祉目的で流しているようなビデオとかあるんですね。海外日本語放送なんかも、どっちかというと、事業やビジネスというよりも、我々も多少公共の電波を使って仕事をしているものとして、一定の形では応じなければならないようなものがいろいろあります。それから上映でも、例えば社内でやる純粋の試写のほかに、スポンサー企業の方にその素材を持ち込んで見ていただくことも当然ありますし、一定限度の上映とか、そういった付随的な使用ですね、そういったものは二次利用から除いているという形です。
  そうしますと、例えばBSCSですと、※印にあるように、たとえ法人が別法人であったとしても、この契約書の中で放送の許諾に含めて取ることができるよというふうになっているんですけれども、例えばビデオのように、局がビデオグラムの製造者なりになって複製頒布するという場合は別だと思いますけれども、例えば局の子会社がビデオグラムでやるとか、そういうものを出していて、そこに局が許諾をして制作させるという場合も、契約書の最初の契約目的のところで規定してしまえば、それは二次利用にはならないというふうにお考えということでしょうか。
  理論的にはそういうことでしょうけれども、まず、それはないと思いますね、基本的には。
舟田座長 ないんですか。実際にない?
  ないですね。そういうことはまず不可能といいますか。当然、制作会社さんもよくご存じですけれども、たくさんの権利処理をしなければならないということももちろんありますし、制作会社さんも、ビデオグラムからの収益がどのように処分されるかというのは重大関心事であられるはずなので、アニメーションを筆頭に、当然ドラマもそうですけれども、市場価値の高いものほど、そういう交渉ターゲットが増えていきます。アニメーションを例に取れば、諸権利一括方式なんて呼んでいますけれども、子細にあらゆる権利について全部洗い出して、全部配分条件も事細かに決めるというふうにして行われているのが一般的です。
  先ほど、ビデオグラムも入るとおっしゃいましたよね。
  ちょっと誤解があるといけないんですけれども、局のほうがビデオの権利を取ることは現実にはあり得ません。ただし、モノの持込みと言っていますけれども、制作会社さんが持ってきたお話で、制作会社さんのほうでもうビデオ化のお話があるんだと。だから、ビデオ化権はいただけないかと。だけど、放送は衛星波も含めてそちらでお使いになって結構ですよと、こういうケースがあります。ですから、そういう場合にははなから契約書のほうにビデオ化権は制作会社で、放送は地上波と衛星波はテレビ局側と。そういうケースはあるという、そういう意味でビデオ化というお話をしたんで、局のほうがビデオ化の権利を最初から取っているということは、まずうちで言うと100%ありません。
  私がここでお聞きしたいのは、ビデオグラムとか、BSCSとか、それは一つの例ですけれども、一般論として、二次利用と契約目的で局が二次利用の対価を支払わずに、番組使用の対価も制作費に含まれるんだよと、すべての義務の対価としてこれを払いますといったときに、二次利用と契約目的で決めた利用許諾の範囲をどういうふうに定めるのかということです。一つには、それは契約で今回の制作はこれとこれに使う目的ですよというふうに入れることを決めることがまず必ずありますよね。そのことと、あと実際の利用する主体が、局じゃない、BSCS以外の例えばビデオグラム会社のような局の子会社であったり、法人格が違う人が利用する場合にも、契約目的のところに最初からこれとこれとこれに使いますよという形で契約したものは、二次利用ではないというふうな整理づけていいんでしょうかということだけお聞きしたいんです。
  基本的にはそうだと思いますが、実務的には、先ほど申し上げたように、いわゆるビジネスにかかわるものを当初目的の中に入れてということは、まずないと思います。あるのは、先ほど話に出た、例えば放送番組の性格上、これはたまたま東京ローカルの放送枠でしか放送できないから、同時に、どうしてもスポンサー要望もあるし、全国ネットといいますか、全国放送である系列のBSでも、多少時間差を置いてすぐに放送してもらいたいというような意向が寄せられるケースがある。そういう場合には、当初からそれが想定されているわけですから、地上波プラスBSの放送権の対価で総額のこの金額でお願いをしたいという形でお話し合いをさせていただく。当然その場合には契約主目的にそれが表記されると。
  それは二次利用ではないと?
  ええ。その瞬間からなくなると。ただ、一般論としては、契約フォーマット上は全部BSCSは我々は別法人ですから、当然ビジネスの対象として二次利用のところに列挙されています。
  例え別法人であったとしても、その場合、局はサブライセンスのできる権利まで含めて、あらかじめこれとこれは本来の契約目的の当初の利用なんだよという形で規定すれば、それも入るということですね。
  はい、そうですね。
  それが交渉上納得されるかどうかということは別問題として、一般論としてこうだということだと。サブライセンスも含めて取るということもあるということですよね。
  はい。
  わかりました。
  この※1の部分のCSBSの利用形態における考え方が示されているんですが、実際は一次利用なのか二次利用なのかというところは、非常に議論が今後も続くところだと考えております。というのは、現状として流れの中で、今までの契約形態は、放送権契約と、先ほど許諾を含めてという話がございましたが、一次放送といういわば制作会社が放送局と契約するときに、放送局の2年半ないしは3年の本放送1回、再放送1回という放送権契約という概念がずっと来ておったんですね。それは全国ネットで当然本放送は行われるだろうし、もしかしたら再放送は全国ネットではなく、ネットワーク番販的な、地域ネットというか、全国ではない、ある程度のネットを組んだ形での再放送という形を含んだ放送権対価ということが今までの流れでずっときておったんですね。
  ところが、現実に各放送事業者の中でも、先ほど別会社と言っていますが、資本が入っているCS、現実にはBS、地上波ができておる中で、そこを含めて、今後、地上波だけの契約ではない。本当はその地上波の放送局との契約なんですが、当然これは系列だと思います。そこに系列でのCSBSでの放送権まで実は契約したいということが今後出てきておると。あるいは現実にそれは行われているのかもしれませんが、そういう契約形態が出てくるという現状、今後を含めてですよ、ということだと思うんですが。
   ただ、そこは確かにBSCSが別法人であるから、一次利用なのか二次利用なのかというのは、これは議論が分かれるところだし、制作事業者のほうでも認識的にまだ納得できないというか、理解が非常に難しいところはあろうかと思います。ただ、そのときに大事なのは、本来地上波でも本放送、再放送、2年半ないし3年の2回を超える部分ですから、それは応分の対価を必要とするだろうということを当然考えるわけですね。
   先ほどおっしゃった許諾という部分になれば、例えば初期契約のときに、例えばドラマの場合、原作者、脚本家に対しても、今までの慣行で地上波で本放送、再放送2回ですよというところを、BSでも実は放送しなければいけません、CSでも放送しなければいけません。それは何年何回ですという話になってくると、それは当然それなりの対価が必要だろうと。当然それは起こってくるわけですよね。したがって、そこはそれぞれの当事者同士の話し合いが今後必要ではあろうと。そういう要求があれば当然必要であろうというときに、応分の対価はある程度明確にしないと、実は制作する側も困っちゃうというのが現状かと思われます。
  今の議論を聞いていると少し頭がクリアになったんですけど、放送制度なんかの立場からすると、「放送番組」という言葉にこだわりたいんです。今のお話ですと、契約の中にビデオ化の話とか、ブロードバンドでの番組の送信の話も含まれるということなんですけれども、厳密に言うと、ビデオとかブロードバンドは法制度上は放送じゃないですよね。例えばこの契約書なんかが英語で翻訳されてアメリカ人が見た場合は、向こうは、この放送というのは地上波放送だけということなので、ここで言っている「放送番組」とは何なんですということをどこかでちょっと定義みたいなものを入れておいたほうが、今後これを見たときによりわかりやすくなるのではないかなとちょっと思ったんですけれども、いかがでしょうか。
舟田座長 これは事務局ともお話ししなければいけませんけれども、そもそもこの契約見本というのは、もともと地上波の放送番組についての制作委託契約を頭に置いていたんですね。
  ただ、今の話を聞いていると、そうじゃないみたいですね。
  それは挙がったんでしょうか。
舟田座長 ないんですか。
  はい、ないと思います。
舟田座長 皆さん、地上波以外のも含む?
  はい。最初、前提で臨んでいます。ですから、BSCSの扱いについて、ATPの皆さんは、一次利用ではなくて二次利用に位置づけたいということをおっしゃっている。だけれども、個々の契約におけるいろいろな話し合いによって応分の対価等話をして、それが含まれるというようなケースもあり得る。
  でも、基本は、放送局と制作会社で、今回前提になっているのは、放送番組ですよね。
  はい、そうです。
  それに衛星、CS、通信衛星を含めての部分をインクルードしようということの議論じゃないですか、実は。本当はあくまでも地上波で放送することを前提とする契約じゃないですか、一次契約は。当初契約という、この契約委託というのが。
  その地上云々よりも、放送事業者が制作を委託する番組についてということで。要するに、BS放送局が委託をする。NHKBSのみ、番組の制作を委託するということはここであるわけですから。
  だから、その場合はBSであれば、BSと放送権を契約する場合のケースですよね。そのときに地上波の放送も含めてと、こういう見方が違ってくるじゃないですか。ここは基本は放送ですよね。
  地上放送波で使用する番組だと思っていますから。
  地上波限定ということになりますと、ちょっと我々は外れざるを得なくなります。
  最初の契約する放送事業者との契約形態ですから、それがベースですよね。
  自局のために使うということでしょう。
  放送事業者ですけどね。NHKの場合は、実際にインクルードした、独立じゃなく、同質の媒体を持っておると、法人としてですね。民放の場合は、それは別法人であるBSCSもあると。こういった二極化は一つありますね。
  例えばたまたまここには民放連には所属していますが、BS民放各社の代表が来ておりませんけれども、もし来ていたとしても、基本的には同じだと思うんですよ。BS各社が、ATPなりに発注する場合は、ここに書かれている問題は、そのまま適用されるべきだし、守られていくものは守られていかなければいけないし。
舟田座長 ここにおられる事業者は、BS一緒にやっている方、あるいは子会社なり関連会社がいますけれども、BSなりCSの放送番組を頭に置いたものではないことは明白ですよね。事実上、これは地上波における放送番組を頭に置いてつくったわけです。だから、これは例えば※1のように、これは地上波でつくったものをBSCSという書き方になっているわけですよ。それはもちろん理論的には放送番組すべてですけれども、しかし、地上波向けの番組をつくっていることを念頭に置いてつくられたことも明白なんでね。議論は、そうすると、放送番組の最初の定義をしろということですか。
  そうですね。ここで「番組の制作委託と受託に関する契約書である旨」といろいろ書いてありますけれども、この中に、放送番組といってもいろいろなものが含まれるわけですよね、契約によってはね。
  いろいろなものとおっしゃいますと?
  BSとかCSとか、ビデオ化権の話とか。
  誤解があるといけないんですけど、基本的には我々が発注するのは地上波の番組なんです。ただ、はなからスポンサーさんのご意向で、東京単の深夜で放送するような、東京単というのは、関東地方という意味ですけれども、そういう番組は、地上波は東京単でしょうがないけれども、BSでもう一度かけていただけないか、そうすれば全国に飛ぶからというようなことで、仕掛りの段階から、もうBSで放送したいんだというご意向があった場合には、制作会社に対して、東京単、関東地方の地上波とBSに流したいんだけどという条件を言って、それで権利処理をしていただくんですね、実演家の出演者とか脚本家とか。そういうのがありますよと。そういう場合にはお支払いする対価、これはもちろん権利処理費を含むわけですから、地上波、BSで流す、そのお金もこの対価に含まれるんです。そういう意味なんです。だから、はなからすべて地上波番組をあれもこれも展開して、それの権利をこの中に全部入れ込もうという意味ではないので、そこのところはちょっとご理解いただきたいんです。
  先ほど整理していただいたような、要するに契約においてサブライセンスの立場を持ち得ると。応分の対価の交渉はあって、そういう立場を持ち得るということをここに入れたということだと思います。
  ブロードバンド時代における放送番組制作ですので、私は当然マルチユースが前提になっていると思いますね。だから、もし放送番組に1回しか使わないための番組の制作であれば、極論すれば、契約書は要らないと。1回流して終わりのものであれば、この契約書に対してセンシティブになることもなかったと思いますが。視聴者のほうも、制作者側も、もちろんプロダクション側も、つくった番組が1回だけで終わるのではなくて、それがどんどんマルチユースされて、みんなに利益をもたらしていくということが前提ですので、当然それはそれも範囲に入れた中での契約になると思いますし。
   明確にしなければいけないことは、当初の対価でどこまでが予定されていて、あと二次利用で、窓口権を行使して利益分配になるのはどこだと、そこさえ明確にしておいて、当初の目的の中にビデオグラムであれ、例えばいろいろなものが入ったとしたら、それに対しては、制作者側が先ほどおっしゃったように、あらかじめ権利処理をしなければいけないわけですから、それなりの対価もかかるだろうし、二次利用として後からもらうものを最初のときにもらっておくと。将来二次利用されるかどうかわからないけれども、だけど、その分まで含めて今もらっておくと。そのぐらいの意気込みでプロダクション側は契約交渉に臨んでたくさんお金をもらうということが大事じゃないかと思うんですけれども。
  だから、明確にわかればいいんですよ。契約の範囲と、そのための対価がまず1回目はどうなんだと。二次使用するのは、当然皆さんも僕らもそうですし、ゲインしようという意思があるときに、その取扱いをどうするかというのは、相互できちっと協議できていれば問題ないと、シンプルに考えれば、そういうことですよね。
  今おっしゃったのは、この検討会の趣旨ですよね。「ブロードバンド時代における放送番組」ということで、これは何かどこかでセットになって見えているとわかりやすいですね。
  それについては、放送番組は地上波でもBSでも、この見本での取りまとめにおいて、それほど差異がないのではないか。先ほど座長が言われました、※1の記述などを注意すれば、両方同じルールといいますか、少なくともこの契約見本で記載されていることが共通になるのではないかと思いますが、いかがなんでしょうか。
  ※1のケースに関しても関係する事業者の構成員間でもみまして、こういう記述でいきましょうということで、双方というか、番組制作事業者のほうと放送事業者のほうと……
  これは地上波で、またBSCS等が別法人の場合ですが、逆の場合もあるわけですよね。
  そうですね。まさに昨日たまたまある権利者団体に行ったわけですけれども、そういうケースもすでに、つまり、BS放送番組を地上波に流す場合にルールがないケースにおいてのルールづくりのお願いにも上がったところでありまして。この検討会における番組の放送事業者と番組制作事業者というところでの、そういったここで書かれているような問題は、我々の認識としては、かなりすでに自明のというか、ほぼ解決済みの問題であってですね。ところが、今世の中で語られているコンテンツ流通という側面ですっぽり忘れ去られているのが、個々の権利者との向き合いの問題をどうするかということが全く置き去りにされている。つまり、コンテンツ流通という観点で言えば、我々の放送事業者がつくった放送番組、あるいは番組制作事業者に一部お願いしているケースもそうですけれども、それを再放送することすらままならない現実が今あるというところに日々我々はおりますので、まさに問題としては、その先に議論を進めるべき時期にすでに来ていて、問題はそこなんだということをどういうふうにしたら行政官庁も含めて、あるいは各権利者団体を含めて共通の認識として持っていただいて、それを円滑に転がしていくための環境を、どうやったらつくっていけるのかということは、まさに主要な問題だという認識なんですけどね。
舟田座長 ちょっと問題を整理したいんですけれども、おそらく3つぐらい問題が出てきたと思うんですね。1つは、この契約見本の射程距離ですね。今のお話ですと、地上波、BSと同様に考えていいというようなことですね。しかし、ここに参加している事業者が考えている契約ですから、CS事業者が参加してないから、CSはまた別になりますけれども、ここに参加している事業者がこれから番組制作委託をする場合には、地上波、BS含めてこういうやり方でやりたいということだと、それでよろしいですか。
  はい。
  そこは、例えばNHKは地上波を目的としてつくる場合も、BSを目的としてつくる場合も、全く同一の考え方でつくっておりますので、それは全く同様に考えていくというほうが、すっきりわかります。
  舟田座長 民放の方々は、直接は地上波放送事業者の方ですから、もちろん地上波のことを頭に置いていると。BSのことも入っていると言われたら困るわけですね。皆さん直接の事業者ではございませんからね。
  私はBS社との兼務の形ですので、そういった立場で申し上げますと、今までのこちらのほうからも申し上げておりますように、基本的には、地上波局であろうとBS局であろうと同じ立場ということで、この検討会の契約見本ということで参加できると考えております。
舟田座長では、第1点目はそういうことで確定したいと思います。
  2つ目は、契約目的と最初に書いてあるところですが、この契約は基本的には制作委託契約ですけれども、同時に、成果物である番組の使用条件等についても含む。分かち難いとおっしゃったのはその2つのことですね。確かにおっしゃったように、ここで番組と使うのはどうか。そもそもマルチユース全体なんだから、放送番組に限らないんだから。だから、公取の研究会では「成果物」という言葉を使っていますが、その理由ですよね。番組という言葉をわざと避けたわけですね。しかし、意味としては、別に意見の違いがあるわけではありませんから、いずれにしろ制作された成果物をどうするか。もちろん放送に使うんですけれども、それ以外のものも含むということだと。英語に直すと、ちょっとおかしくなるのかもしれないけれども、一応内容的には別に意見の対立があるわけではないと。
   3つ目は、二次利用と一次利用の違いといいますか、二次利用の定義なんですけれども、これは事務局の方へ振っていいでしょうか。事前に私も同じような疑問を持っていたので、ちょっと定義をきちんとしておいたほうがいいと思いますので。
奈良コンテンツ流通促進室長 これまでのケースというか、他の例を座長からご示唆いただいて調べました。その調べた範囲で言うと、明確な定義が出てきたわけではないんですけれども、幾つかの資料等を見ますと、二次利用をあらわすときに、当初目的以外という言い方をすることがやはり通例のようでございまして、その程度の切り分けしかできないというか、逆に、その程度の切り分けでたぶんよろしいんじゃないかというのが事務局としての受けとめでございます。
舟田座長 そうすると、この項目の最初に契約目的となって、おっしゃるとおりに、ほとんど実務上あり得ないでしょうけれども、もしビデオ販売とか、インターネット事業者への販売ともし書いてあるとすれば、書いてあるのだから、それはすでに二次利用ではないということですね。普通は書いてないから、それは大概二次利用になると。そういう区別のようですね。そういうことでよろしいんですかね。
  それは、そういうふうに書けば、一次利用はこうだよ、二次利用はこうだよと書けば、そのとおりですね。
舟田座長 そういうことでいいですね。
  はい。ただ、契約書全体を見てみますと、やっぱり放送ないしはBSCS放送の利用の範囲内を一次と言っておいて、あとそれ以外のブロードバンド、ビデオグラム、ゲーム化などについては二次的利用という認識でいるのじゃないでしょうか。
  制作会社のほうの認識は、歴史的な時間の経過で言うと多少違うんです。どう違うかというと、先ほど来放送事業者の方も言っておられましたけれども、一義的な契約は地上波における一定の放送権の獲得という内容の契約がほとんどだったんですね。それが、こういう世の中の発達に伴って、BSとかCSというのも一緒に処理をしていかないと、いろいろ難しい問題、不都合な問題があると、こういうことが起きてきまして。それは一次利用とか二次利用という考えとは別に、放送局と制作会社が約束する場合には、とりあえず入れて契約しようよと、こういう状況になってきていると、こういうことです。
  その場合に、全部入れて契約する場合に、決してこれが一次、二次というような定義を使っていなくても、最初の契約の対価で使えるのが実は一次でしてね。
  はい、そうですね。
  権限と窓口とを預けてありますけれども、ただでは使えないのが二次だと。こういうことでいいんじゃないかと思いますけどね。
  はい。ですから、この会議の議論の中で、そういうことがだいぶ具体的に示されるようになりましたから、とりあえずいいかなと。今、舟田先生がおっしゃるように、言葉の意味を正確に求められると、ちょっと昔へ戻って経過なども申し上げないといけないなというような状況だと思います。
  もう少しビジネス目線で見ると、それを一番峻別する一つのメルクマールになるのは、CSの場合は有料放送とかいろいろあるから別なんですが、BS、民放は無料放送です。そうすると、当然広告主からのお金でやるわけですから、その行為自体といいますか、放送権の許諾によって、額が当初から大きく変動するということはないんですね。ブロードバンドとかビデオグラムは当たれば、理論的には無限大のお金を生み出す。そういうものについて当初から、これは一次利用だよと言って、つまり買い取りにしてしまうということはまずあり得ないんです。そういうことはもしやったとして、しめた、うまいことやったということがあったとしても、おそらくそういうところはプロダクションとの関係が決定的にまずくなるでしょうから、そういうことは基本的にはあり得ないですね。ですから、配分条件をどう定めるかという問題はありますけれども、必ずそれは二次利用でしかあり得ないですね。
  英語だと、例えば映画とかいろいろなものを流通させる場合に、二次利用というような言葉を使いますかね。
  正確に言うと、二次利用という言葉、著作権法上の法学的概念としてはないでしょう、契約実務上あるだけで。
  英訳しようとすると、セカンダリー
  ユーザーも変ですしね。だから、一次、二次というような、二次利用という言い方をしているのは、もしかしたら日本の業界的なものですかね。
  映画界の用語でもあると思いますよ。
  契約書は、例えば映画化権、テレビ化権、ビデオグラム権と、全部分けて、それについてどうする、どうすると決めるのでね。一次とか二次とか……。最初は映画は当然そういう意味では一次なんでしょうけれども、あんまり一次と二次分けてないような気がします。
  映画のことについてちょっと言わせていただくと、これはこの検討会の根幹に触れることになるんですが、最初に僕が出席させていただいたときに、映画の著作物というふうに考えるんですか、成果物というのはイコールの意味ですかという質問をさせていただいたんだけど。決定的に違うのは、要するに映画の場合、定価がないのですよ。例えばある放送局がこの番組を5,000万なら5,000万で委託しますと。そこにプラスBSが付いた場合どうなりますか、CSが付くとどうなりますか。その他の利用については売上によりますよねと。権利をどう売っていくかということの窓口は誰かにするけれども、売上は実は歩合ですよ、要するにね。幾ら売れたから何%入るということになるんですね。映画は最初からそうなんですよ。何人入ってくれて、幾らの興行収入があったら何%入る、なんですよ。最初に定額はないんですよね。
   だから、そういう意味では映画の場合で言うと、要するに劇場でまず封切られるというのが最初の目的であって、劇場の公開がいつであるということがすべての基準になるんですね。税務的にもそうなんですよ。劇場で公開された日から税務的に計算しますというのが現状なんですね。だから、映画は、劇場が一次であって、その他が二次であるという考え方は実はありません。最初に供給された日がいつであるかというところからすべてが始まるということですね。
   ただ、そういうのを考えていくと、本当に同じ著作権法上で言えば映画の著作物ということで、放送番組も劇場用映画も一つの概念に含まれるわけですけれども、ここでいう番組というふうに限定して考えることに、将来的にはある種の無理は生じてくるなと。特に現在すでに地上波がありBSがありCSでの利用があって、さらにその先のビデオであるとか、ネットであるとか、そういうものの利用が現実になりかけている今、番組ということだけに固定させて考えることは、ここ1、2年のうちにある種のひずみが見えてくるのではないかという懸念を実は持っています。
   ついでにもう一つ言わせていただくと、事務局で取りまとめていただいた本日の案に対して、私どもとしては、基本的に同意いたします。ただ、ここから先はちょっと一般論になりますけれども、実際には知的労働の対価として著作権という概念が生まれてきて以来にはなるわけですが、それを現実に運用しなければいけないという立場にいる我々が、それをどう運用していくかというときに、一番大事なのは原則は忘れてはいけないと思っているんです。その原則というのは、僕はそれをつくったもの、つまり著作者ですね。著作に対しての敬意は絶対に忘れていただきたくないと思います。これはもう大原則だと思います。
   ただ、それを現実には契約とか、様々な交渉とか、そういうことの中で我々は運用していかなければいけないわけですが、その運用の際にも、僕は2つのものさしがあると思います。1つは、可能な限り単純で明快であること。シンプルでイージーだということですね。それを推し進めると、これは僕の個人の空想になりますけど、著作権オールフリーだったらどんなにいいだろうなと空想することはありますよ。だけど、現実にはそうはいかないわけであって。だけど、可能な限りシンプルでイージーであってほしいと思います。
   もう一つのものさしは、フェアであるということだと思いますね。このフェアであるというところが一番の問題になるだろうなと思います。具体的な例で言いますと、ある民放の編成担当者と雑談をしておりましたときに、先ほどのBSとかCSとの絡みで話をしていて、僕はヒヤリとしたことがあるんです。例えば地上波についての権利を100なら100という対価で制作委託すると。BSCSが付いてくるときには、そこにプラスアルファを付けてほしいということが制作者側からの要望として出ていった場合に、その編成担当者は、それであれば、将来的には100でなくて80で地上波をつくってくれということになるよねと。それは会社としては制作費の合理化に繋がっていいことなんだよねということを言った人がいるんです。僕が言うフェアでないというのはそういう考え方だと思います。知的労働の対価に対してどれだけフェアに価格を決定していくとかそういうことから外れて、文言論、技術論にいきたくないなと考えます。
   ですので、先ほど申したように、事務局にはお世話をかけましたし、私どもとしては、これに原則同意をいたしますけれども、その運用ということについて、それからさっき申しました、今日以降、すでにブロードバンドでの使用、あるいはビデオグラムにすることなどが現実に起きている今というのは、これから先どう考えていかなければいけないかということを一つ発言だけさせていただこうかなと思っています。
舟田座長 そういうことで、この契約目的、最初にある番組とありますけれども、確かに将来というか、もしかしたら近い将来見直すのかもしれませんけれども、今回はこの文言でやらせていただきたいと思います。それから、おっしゃるとおりでシンプルなのが一番いいんですけれども。でも、きょうこの2ページちょっとにまとめていただきましたけれども、これは可能な限り簡潔に大事なところだけを書いたということになろうかと思います。最後のおっしゃったことは、対価のところを見ていただくと、ここに「適正に取り決めて明記」とありますけれども、この「適正に」は、これは読み方はいろいろでしょうけれども、私は単に当事者間で決めればいいと。社会的に見ても適正にというのが入るのかなと。フェアとさっきおっしゃいましたけれども、そういうふうに私としては理解したいなと思っております。ここはいろいろな考え方があるでしょうけれども。
   大変貴重な意見を皆様からいただきましたが、ほかにご指摘の点はございましょうか。私も、ワーディングとか、今頃になってちょっと気になる点はないことはないんですけれども、内容的には、私はこれはこういうことでよろしいかなと思います。皆さんのほうで、概ね了承ということであれば、進めたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。
   それでは、若干修正が必要な点があるかもしれませんけれども、それは私にお任せいただくことといたしまして、それを検討・修正の上で、本検討会が取りまとめたものとして、本契約見本を公表させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
舟田座長 ありがとうございました。

<閉会>
    1) 事務局から今後の進め方について
舟田座長 それでは、事務局から今後の進め方についてお願いいたします。
奈良コンテンツ流通促進室長 ありがとうございました。
  本契約見本案につきましては、ただいまの座長に一任ということでご了承いただきましたので、他方、本日も幾つかご指摘のご意見が出たと思います。そういったものを踏まえまして、私どもの方で修正案をつくりまして、座長とご相談、ご了解いただくということで進めさせていただきたいと思います。その手続に若干の日数を要します。公表につきましては、時期は未定でございますが、当総務省記者クラブにおいて、舟田座長からご発表いただくことを考えてございます。
  また、今後でございますけれども、契約見本の一枚紙に書いてございましたが、今後、各放送事業者において自主基準の詳細化という位置づけで、契約方針を策定、公表していっていただくことになります。それぞれの放送事業者の皆さんのご努力ということでございますけれども、この検討会でも、一度それを報告していただくことも考えていきたいと思っているところでございます。もちろん一昨年11月にまとめた合意事項のフォローアップは引き続き行っていく必要があると私どもは受けとめてございます。
  次の当検討会のラウンドといたしましては、まずは秋ぐらいにできればなと思っておりまして、具体的な検討事項につきましては、また座長とよくご相談させていただき、ご連絡をさせていただきたいと思います。
  以上でございます。
    2) 座長からの挨拶、鈴木政策統括官からの挨拶が行われた。





(別紙)

「ブロードバンド時代における放送番組制作に関する検討会」(第9回会合)
出席者


(敬称略)
学識経験者    
  舟田  正之 立教大学法学部教授
  菅谷    実 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授

法律実務家
  枝    美江 東京六本木法律事務所弁護士
  松田  政行 マックス法律事務所弁護士・弁理士

放送関係者  
  溝口  明秀 日本放送協会マルチメディア局著作権センター統括担当部長
  竹内  冬郎 日本放送協会マルチメディア局著作権センター著作権部長
  斎藤  汎司 日本テレビ放送網株式会社コンテンツ事業局次長
  植井  理行 株式会社東京放送編成局コンテンツ&ライツセンター担当部長
  板垣  陽治 株式会社フジテレビジョンライツ開発局総合権利センターライツ業務部(著作権担当)部長
  高橋  英夫 株式会社テレビ朝日編成制作局ライツ推進部長
  池田  朋之 株式会社テレビ東京編成局契約統括部長
  中谷  洋一 社団法人日本民間放送連盟著作権部長
  田嶋    炎 社団法人日本民間放送連盟著作権部副部長
  今川  祐之 社団法人全日本テレビ番組製作社連盟専務理事
  石井  幸一 社団法人日本映画製作者連盟
  佐々木史朗 協同組合日本映画製作者協会理事、株式会社オフィス・シロウズ代表
  李    鳳宇 協同組合日本映画製作者協会理事、有限会社シネカノン代表取締役
  稲垣    健 社団法人全日本テレビ番組製作社連盟事務局長(高村構成員の代理出席)




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