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調査研究会


「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第5回会合 議事録



1 日時
  平成16年11月4日(木) 1800分〜2020

2 場所
  総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者
  (1 )調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
  伊東晋、隈部紀生、小塚荘一郎、塩野宏、篠原俊行、野村敦子、
  羽鳥光俊、舟田正之、村井純、山下東子(10名)
  (2 )ヒアリング対象者
  株式会社電通:松下メディア・コンテンツ計画局長
  株式会社博報堂DYメディアパートナーズ:中村メディア環境研究所長
  社団法人日本新聞協会:箕浦メディア開発委員会委員長
  フューチャー・パイレーツ株式会社:高城代表取締役社長
  (3 )総務省側
  堀江情報通信政策局長、福岡情報通信政策局総務課長、安藤放送政策課長、
  浅見放送技術課長、南地上放送課長、今林衛星放送課長、江村地域放送課長、
  小笠原放送政策課企画官、今泉放送政策課課長補佐

4 議事
 (1 )開会
 (2 )議題
  デジタル化への取組みと課題について
 (3 )閉会


5 議事録


(1)開会

  
塩野座長 それでは、ただいまから、デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会第5回会合を開催いたします。本日は、新美さん、長谷部さん、濱田さんがご欠席というふうに伺っておりますが、村井さん、小塚さんは後ほどお見えになると思いますので始めます。
  本日の会合では、放送関連分野の方々として、広告関係から、株式会社電通、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、社団法人日本新聞協会、メディアプロデューサーの高城様にお越しをいただいております。前回に引き続き、デジタル化への取り組みと課題についてのヒアリングを行いたいと思います。本日は、ヒアリング出席者のご都合もございますので、まず前半部分で電通、博報堂DYメディアパートナーズからのご発表を続けていただき、意見交換を行います。後半は、社団法人日本新聞協会、高城剛様の順で順次ヒアリング、意見交換を行います。つまり、前半、後半分けて、まとめて意見交換を行うということになるかと思います。
それでは、事務局より配付資料の確認をまずお願いいたします。
安藤放送政策課長 それでは、お手元の資料、クリップを外していただければと思います。まず、座席表がついてございますが、その後に議事次第、一枚ものでございます。それに引き続きまして、資料1といたしまして、株式会社電通様の「デジタル放送への取り組みについて」という横紙の資料でございます。その後、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ様の「地上デジタル放送の広告ビジネス上の課題」、資料2、横紙のものでございます。それから、同じく資料2の参考ということで、博報堂様の方から「(地上デジタル放送)浸透度調査報告書」、縦紙のものがついております。その後、資料3といたしまして、社団法人日本新聞協会メディア開発委員会様の資料で、「デジタル化時代のメディア環境と放送の役割」、縦紙のものが入ってございます。その後、資料4といたしまして、「デジタル時代におけるコンテンツ制作の課題」ということで、高城様の発表資料となっております。横紙でございます。このほか、第3回会合の議事録がついてございます。その下に、博報堂様の方から「地上デジタルガイドブック2004」ということで、こういう緑色のものが配られているかと思います。資料は以上でございます。

(2)議題
  デジタル化への取り組みと課題について

塩野座長 それぞれご確認をお願いするとして、まず最初に、株式会社電通の執行役員、メディア・コンテンツ計画局長の松下康様から、電通のデジタル放送への取り組みについて、ご発表をよろしくお願いいたします。
松下株式会社電通執行役員/メディア・コンテンツ計画局長 電通の松下でございます。よろしくお願いいたします。本日は、電通のデジタル放送への取り組みについてということで、ご説明の機会をいただきまして、ありがとうございました。こんなに大勢の方がいらっしゃると思わなかったので、やや緊張しておりますが、15分間という時間なので、無駄のないように進めさせていただきたいと思います。
  まず、目次ということですが、具体的には、地上デジタル放送、それからBSデジタル放送、この2点についてお話しさせていただきたいと思います。主にテレビのビジネスの現場からの発想といいますか、そういう形で要点をお話しさせていただこうと思います。
  資料2ページ目から始まっておりますのが、地上デジタル放送についてでございます。私ども、地上放送のデジタル化ということで最初に取り組みましたのが、ここにございますように、社内あるいは広告主に対する啓蒙というのもおこがましいのですが、デジタル化というのはどういうものかということの普及、PRに力を入れさせていただきました。説明会あるいはセミナーを多数開催させていただきましたし、地上デジタル放送ハンドブック、今、博報堂さんもお配りいただいたようですが、電通もダイジェスト版も含めると約 7,000部、広告主初め関係方面各位に配付させていただきました。それから、今まで3回ぐらいやっているんですが、定期的に地上デジタル放送の浸透度調査を行っております。8月に行いました調査のさわりだけ、次のページでご紹介したいと思います。
  地上デジタル放送の認知ということですが、前回の調査は今年の1月に行われたんですが、そのときに比べますと11.5%増加しております。それから、アナログ終了時期の認知についても、約14%、前回よりも認知率が上がっている。約6割強の方が2011年に終了になるということをご存じだということです。
  デジタル放送のメリットあるいは特徴についてどの程度認知しているかということですが、意外と認知率が高く、BSのデジタル放送が始まっているということもあると思いますが、78.8%の方が認知されている。これも前回に比べますと、半年経って約16.8%と、かなり大幅に増加しております。これは地上デジタル放送が開始されたからということだと思います。それから、少し意外なのが、携帯向け放送の利用意向ですが、今の若い方は携帯を大変重宝に使っていらっしゃるので、もうちょっと高いかなと思いましたが、私どもの調査では利用したくないという方が比較的多い。約40%弱の方がそう思っていらっしゃるということで、今後のサービスイメージの明確化が課題であろうというふうに考えております。
  今、PR、啓蒙のお話をいたしましたが、今後、我々が力を入れていかなければいけないと思っておりますのが、デジタル化に伴う広告取引環境の整備という問題です。電通では、毎年、日本の広告費というのをまとめさせていただいていますが、昭和50年に新聞広告費をテレビ広告費が抜いたわけです。以降、テレビ広告費というのはほぼ順調に伸長を続けまして、昨年では2兆円弱の規模にまでなっているということで、これは私ども広告会社にとっても大変に大きな収益源になっております。
  したがって、地上波のデジタル化は放送局のみならず、私ども、広告会社からしても、経営基盤に直結する大きな変換であるということで、我々はアナログからデジタルへのなるべく早期のスムーズな移行が至上命題であるというふうに考えております。そこにも書いてございますが、地上波のテレビは多くの視聴者に広くあまねく到達するリーチメディア、マスメディアの中では一番リーチ特性の強いメディアです。そういった特性を損なうことなく実務の面で、サイマル放送を経てデジタル化に至るというプロセスで、なるべく我々のビジネス現場の混乱を来さないように、スムーズな移行を図らなければいけないというふうに考えております。
  この後、やや細かい実務的な話で恐縮ですが、我々の商売の一端をご紹介して、今、申し上げた広告取引環境の整備というのは具体的にどういうことなのかというのを、ややわかりやすい例でご紹介しようと思います。広告ですから、料金の問題が当然あるわけで、サイマル期間中の料金設定が、実はややややこしい問題でございまして、現在はデジタルがまだ東阪名の一部の地区でしか行われていないこと、それから普及台数がまだ少ないということで、デジタル放送部分の料金というのはアナログのおまけのような形でセールスをされているわけです。今後、それをどう考えるかということですが、下に視聴可能世帯数の推移のイメージという図がございます。この視聴可能世帯の割合がアナログ、デジタル、どこかの地点で逆転するだろうということですが、いずれにしても、アナログ、デジタルの視聴可能世帯の総和がおおむね一定であるという前提に立って、将来的にも基本的な料金設定の考え方については、アナログ、デジタルのセットセールスという形が続くだろうというふうに現在では考えております。視聴率の換算についても、そういう形が基本となるのではないかと思っております。
  さらに具体的な話ですが、現場的な例としてもう一つ。テレビ広告のセールスというのは、番組提供を基本とした、我々、タイムセールスと呼んでおりますが、それと番組と番組の間のいわゆるステーションブレークという短い時間帯、番組の切りかえのための時間帯ですが、そこに流れるCMをスポットCMと申しまして、これのセールスをスポットセールスと言っているわけです。番組のセールスについて申し上げると、ネット番組の提供を行うのをネットセールスと言っております。それから、ネット番組以外の各局ごとの番組、そのエリアだけに流れる番組、これをローカル番組と言っておりますが、これの提供のセールスをローカルセールスというふうに申しております。ここに挙げる例は、ネットセールスにやや関わる話で、具体的な話をちょっとさせていただきます。
  上にキー局、地方局とございます。テレビの番組、ゴールデンタイムはほとんどこのネット番組が大半を占めておりまして、仮にA、B、Cというのを7時台、8時台、9時台の番組というふうにお考えいただくと、キー局がアナログとデジタルの完全サイマル放送をする。この黄色い色がついておりますデジタルの放送部分は、ほとんどHD、ハイビジョンで放送される。こういう完全サイマルの編成をキー局が敷いた場合、多くの系列局はそれに倣って完全サイマル放送をしたときに、例えばある1地区、1局、仮に名古屋だとしますと、名古屋の8時台の番組がこの局はSDで2チャンネルの編成をするということになった場合に、当然、1チャンネルは番組Bということで、キー局から流れるネットワーク番組が編成されるわけです。もう1チャンネルはローカルで流す、ここでは仮に番組Dとなっておりますが、この2チャンネルをSDで放送するといった場合、当然、この番組Bの視聴率を番組Dの視聴率が侵食する可能性があるわけです。
  キー局についておりますネット番組の提供スポンサーは、この地区の番組D、ここで流れるローカル番組は、多分、提供したくないというふうにおっしゃられるかもしれない。ましてや、番組Bの視聴率が食われるかもしれない。ほかはハイビジョンだけど、ここだけSDであるといったような問題で、こういった場合のネット番組の提供料金をどういうふうに設定するか。あるいは広告主に対してこういった場合、どういうふうな合意をとっていくかというような細かい問題が多くの広告主を抱えている営業現場ではいろいろ出てまいります。
  我々としては、こういう問題を、主に営業的な問題を一つ一つ丁寧にクリアしていくことが、アナログからデジタルへのスムーズな移行を推進するというふうに思っておりまして、こういった広告取引環境の整備に既に入っておりますが、取引ルールの標準化、それから広告主との合意をいかに取りつけていくかというようなことに力を注いでいきたいというふうに考えております。
  ついでと言っては何ですが、視聴率についてですが、現在はデジタルの普及はまだ低いということで、アナログ、デジタルの視聴率の合算で発表されております。ただ、デジタルが普及が進んでまいりますと、早晩、アナログ番組とデジタル番組を個別に換算し、個別に発表する。あるいはここでいう多チャンネル編成をした場合は、アナログ番組の視聴率とデジタルの各チャンネルごとの視聴率、それぞれを別々に公表する、計測するということが多分必要になってくるだろうと思われます。それから、携帯向けの1セグ放送の視聴率の計測の方法論をどうするかというようなことも直近の課題となってくると思われます。
  この辺は簡単に触れさせていただきますが、今、申し上げたようなサイマル放送あるいは複数チャンネル、そういうことでそれぞれの放送規格に対応したCM素材、これのトラフィックが必要で、かなり煩雑な作業が発生いたします。ここには書いてございませんが、現在はテレビのCMCM素材の現物を放送局に搬入しているわけですが、これも早晩、それの電子化というんですか、CM搬入の電子化、我々は電子送稿というふうに呼んでおりますが、そういったことも課題として近々上がってくる。我々としては真剣に取り組みたいというふうに考えております。下にEDIセンターと書いてございますが、これは広告の受発注あるいは請求に伴うデータのやりとり、こういったことも電子化、効率化を図っていくということで、業界を挙げて取り組んでいるところでございます。
  今は、現在のビジネスをアナログからデジタルに移行するときにうまくスムーズに移行していきたいというお話を申し上げましたが、当然、デジタルの特性を生かした新しい商品開発と申しますか、そういうものが、我々、広告会社にとっても重要な役割を担うべきだろうというふうに考えております。私ども、手前味噌で恐縮ですが、ここに挙げている例はEPG、電子番組表と呼ばれているものですね、これのサービスでございます。デジタル放送向けには、まだ普及率が少ないので、皆さんのお目にはとまっていないと思いますが、7月からサービスを開始させていただいております。
  米国のジェムスター社というところの合弁でございまして、このジェムスター社というのは、GコードというのをVTR録画のときに使いますが、それを開発した会社でございます。番組の自動録画に対応するのはもちろんでございますし、番組のジャンル別の検索であるとか、あるいはタレント別の検索、こういったことも可能になる。非常に便利な機能を持ったものです。で、下にTVガイドとかチケットがどうのということが書いてあります。これは広告のスペースなんですね。このサービスは広告によって成り立つということになっております。このサービスは、データ放送の一種と言えると思うんですが、BSデジタル放送のデータサービスあるいは地上波ならアナログのデータ放送、これはいずれも営業化がなかなかうまくいっておりません。そういう中で一つのデータ放送の営業化のサクセスストーリーにしたいというふうに考えております。
  これは、非常にパブリックな要素の強いサービスでございまして、営業化という意味ではなかなか難しいことなんですが、デジタル化に伴ってコンテンツ問題が非常にクローズアップされております。その著作権処理のシステムを、私どもはMelodies と称していますが、開発しまして、ここに書いてありますようなコンテンツ開発の一助になるように、著作権処理の事業も開発していきたいということで作業をしております。
  時間が限られておりますので、駆け足で恐縮でございますが、BSデジタル放送について。これは、私どものというか、私の個人的考え方と言った方が適切かもしれませんが、ちょっと能書きを言わせていただこうと思います。
  ここに民放と広告主のニーズというふうに書いてございます。先ほど、タイム、スポットのセールスというお話を申し上げましたけれども、テレビ広告においてスポット広告の存在感といいますか、割合が、近年、大変増えております。左上のグラフは昨年の民放キー5局の営業収入の構成比でございます。番組からの収入、スポットからの収入と分けておりますが、ほぼ肩を並べるまでにスポットの商売が大きくなっている、ということがここからでもよくわかります。
  スポットの広告といいますか、スポットセールスというのは、まさに視聴率の数字、効率、それがすべての世界です。番組提供のように、番組イメージがどうのとかそういうことではございませんで、効率が最優先される世界です。で、右上の円柱のグラフでございますが、底面積の部分が各放送局が持っているスポットCMの枠の総秒数ですね。これはほぼ各局一定です。スポットのセールスというのは、1%を獲得するための投下コストがどれぐらいになるかという、先ほどから申し上げている効率の世界なので、その局が獲得する視聴率と、さっきの底面積のスポットCMの秒数、これの掛け算が売り場面積と申しますか、売り場体積といいますか、言ってみれば商品の総量になるわけです。ですから、極端な例で申し上げると、視聴率が 1.2倍であれば、売り場体積あるいは商品総量も1.2 倍になるということになります。それだけ、やっぱりスポットセールスは民放の経営に大きな影響を与えますし、視聴率はそのスポットセールスに大きな影響を与えているということです。 右下のグラフですが、これは2002年、ちょっと前のデータで恐縮ですが、私ども電通のお得意様からいただいたスポットの発注の、お得意様が訴求したいというメーンターゲットがどういうふうになっているかということです。複数のターゲットを指定される方もいるので、すべての合計が 100になるわけではございませんが、これを見ていただくとわかると思うんですが、M1、F1という層、これは年齢で申しますと20歳から34歳の男女です。ここの層をターゲットとしたいという広告主が圧倒的に多いという現状がございます。ですから、今、申し上げたとおり、地上波のテレビの番組編成にはこういった事情が非常に色濃く反映しておりまして、皆様、お感じのことかもしれませんが、例えば若者向けのバラエティー番組がどうしても多くなるというようなのは、こういった事情によるわけです。
  この後がBSデジタル放送の話でございますが、広告主は、今申し上げたとおり、効率を厳しく追求する一方で、近年、ますますその傾向が強いんですが、ブランドイメージを高めたいというのが企業の広告の一つの大きな目標になっております。右のグラフは、最近行われた宣伝部長へのアンケート調査の結果です。これでもそのことがはっきりおわかりいただけると思います。
  私は、BSデジタル放送は、広告主のブランドイメージを高めたいという要求、ここに焦点を合わせるべきだというふうに考えております。地上波が視聴率を重視するということであれば、昨今、いろいろ言われております視聴質、BSは視聴質を高める。そこにピンを立てるべきではないか。良質というと、地上波が良質ではないように聞こえるのであれですが、広告主の商品のブランドイメージを高めるのに役に立ちそうな番組という言い方をした方がいいのでしょうか。少なくともBSは視聴質を追いかける、地上波は視聴率である。
  それで、先ほど、地上波にそういう編成的事情があるとすれば、地上波とBSの総合編成というような形で、それぞれの機能を使い分ける。昨今、よく言われておりますテレビ番組に対する批判、これに対する答えにもなるのではないかというふうに考えております。BSデジタル放送が立ち上がりの時期、高精細度の映像あるいはインタラクティブなサービスというようなことがかなりセールスポイントとして挙げられておりましたが、地上デジタルがスタートした現在としては、機能を訴えるよりも、編成のすみ分けという方向で明確な色分けをした方がいいのではないか。皆さん、何を今さらというお話かもしれませんが、普及率が 1,000万を超えるようになれば、こういった考え方に、多分、広告主は着目すると思います。そういうことで、ぜひこういう方向で私どもはBSデジタル放送各局と作業を進めていきたいというふうに考えております。
  以上でございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。それでは、次に、株式会社博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所所長の中村博様から、デジタル放送の広告ビジネス上の課題について、ご発表をよろしくお願いいたします。
中村株式会社博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所所長 博報堂DYメディアパートナーズの中村でございます。よろしくお願いいたします。
  今、松下さんがお話ししたことと多少重複するところもございますけれども、我々の方は、まず同じように地上デジタル放送の浸透度調査というのを行っております。その結果を少しご報告して、次に広告ビジネスの特性から見た今後の課題ということに若干触れたいと思っております。
  地上デジタル放送浸透度調査。これは、放送が開始されます前、昨年7月、それから直前の11月、開始されてすぐの1月、そして今年の7月と、計4回やっております。お手元の方に、こういう冊子をお配りしていますが、こちらの方に詳細が載っております。スライドでは簡単にご説明させていただきます。
  我々の方も、やはりインターネットで首都圏、京阪神の2地区、20から59歳の男女で、大体 800人前後の調査をやっております。
  まず、地上デジタル放送という言葉を聞いたことがあるかどうかということですが、第1回の調査では85%ぐらい。これが回を重ねるごとに増えてまいりまして、今年の7月では95%の方が聞いたことがある。そして、聞いたことがないという方が、ついに今回、ゼロになったという結果でございます。引き続き、では、デジタル放送という言葉は聞いたことがあるけれども、内容はどの程度理解しているのか、ということを聞いています。最新の結果では、4割強が少しなら理解をしているということを入れると、7割ぐらいまでは理解している。ただ、あまり理解していない、その辺はまだまだ不十分という結果になっております。これを男女別に見てまいりますと、男性の方はかなり理解が進んでおりますけれども、女性はまだまだという結果になっております。
  続いて、どんなことをデジタル放送で分かっているのかということですが、まず放送開始時期がエリアによって違っているというようなこと、それからスタート当初、視聴可能地域が限定されているということ、これに関しては、開始した後、非常に大きく伸びています。一方、移動体視聴可能、携帯電話での視聴可能あるいは多チャンネル放送ということは、まだまだ十分に浸透はしていない。データ放送あるいは高画質、高音質といったことについては、そこそこの認知にはなっているということがいえると思います。
  では、デジタル放送への期待度はどうかということでございますが、これも回を重ねるごとに期待度は高まっているということで、今年の7月時点では6割強が「まあまあ期待している」というふうに答えているということでございます。そして、地上デジタル放送を視聴するためには、対応チューナーあるいは対応テレビが必要だ、こういうことを知っている人はもう9割近くまで来ているという結果になっております。
  それで、視聴意向時期。視聴意向というものを聞いているわけですが、これも、ことしの7月では、「既に見ている/すぐ見たい」が10%を超えて、「1〜2年以内に見たい」というところへ来ますと3割弱まで来ているということで、こちらの方も徐々に増えてはきているということが言えると思います。
  これが結果としてあらわれていますが、3年以内にテレビを買い替えるとしたら対応テレビを買う、9割ぐらいの方はもう対応テレビに変えるということですから、恐らく買い替えが進んでいけば、地上デジタル放送の受信可能世帯はこのままどんどん増えていくということが言えるかと思います。
  まとめてみますと、地上デジタル放送という言葉は浸透しているけれども、まだまだ理解は十分ではない。ただ、非常に期待が出てきていますし、買い替えも地上デジタル対応テレビにするんだということですから、このまま普及は進んでいくのだろうということが言えると思います。
  この後、ちょっと理屈っぽい話にもなりますが、テレビにおける広告とは一体何なのか、あるいは媒体における広告とは何かということを中心に、今後の地上デジタル放送の広告ビジネス上の課題について若干触れさせていただきたいと思っております。
  まず、広告の機能でございますが、いろんな角度からその言い方ができると思いますが、広告媒体というのは、時間とスペースで構成された有限財の商品である。そして、媒体社の重要な収入源である。民間テレビ局の場合は、90%以上が広告収入。新聞の場合でも、4割ぐらいが広告収入。雑誌は、雑誌によってばらつきがございますが、20%から80%くらいというような結果が出ているそうです。
  そして広告媒体の価値は、コンテンツ価値と、その媒体の接触人数の量と質で決まる。先ほど、松下さんのお話にもありましたが、テレビのスポット広告は視聴率でほとんどその価値が決まっていく。番組になりますと、その流されるコンテンツ、その辺との親和性というものも出てまいりますが、基本的には接触人数の量と質というのが非常に大きなウエートを持っているということになります。
  そして広告というものは、その媒体ではなくて、生活者から見るとどういうものかというと、企業の消費やサービスを知る重要な手段である。広告そのものが、その時代を反映したり、あるいは生活情報コンテンツになっているという側面もあろうかと思います。
  そして、広告主、企業から見ますと、マーケティング活動の一要素、つまり、生活者と企業を結ぶコミュニケーション手段というふうに位置づけておりますから、これがメディアが増えていったときに、企業の広告費がそのまま増えていくのかどうかという問題になろうかと思います。
  それでは、そういう中で広告会社というのはどんなことをやっているのか。どういう立場で仕事をしているかということについても、ちょっと触れたいと思います。基本機能は、広告活動の実行役でございます。広告主さんがお金を出すわけですが、それを実行するのは広告会社という位置づけになっておりまして、基本的には広告主とメディアの間に位置しております。それで、広告活動とは、メディアの広告スペースを確保し、そこに確実に広告素材、いわゆる広告メッセージを掲載する。広告は載ってなんぼですから、載らないとだめ。今、ここに、番組Aとか番組Bとかがありますが、これはテレビの広告の実際例ですが、番組の中に番組CM枠というのがございます。先ほどの松下さんの説明では、これはネットの場合、タイムセールス。ローカルの場合もありますが、基本的には番組はネットセールスという形。そして、番組と番組の間にスポットCM枠というのがございます。テレビの場合は、番組CM枠とスポットCM枠の中に広告が流れる。ここにどういう広告を流すのか、どういう順番で流すのか、ここのところが広告会社の非常に重要な仕事になっているということになります。
  もう一つ、実際に広告スペースを確保して広告を流す、そしてコミュニケーション効果を高める機能も広告会社の重要な機能になっています。これは、広告主、媒体社、生活者という領域でいきますと、メディアの領域のサービスとクリエイティブの領域のサービスと2つに大きく分かれるかと思います。
  まずメディアの領域でいきますと、到達効率を高めるメディアの活用についてのご提案をする、あるいはメッセージを効果的に表現できる新しいメディアの開発をしていく。メディアの価値をどういうふうに認識して、どうやって高めていくか、こういうことも我々広告会社の仕事の一部になっております。
  そして、クリエイティブの領域では、メッセージを的確に伝達する表現、これをつくっていくのがクリエイティブ領域でございます。ふだん、皆さんがテレビでごらんになっているテレビコマーシャル、おもしろいのやいろんなのがあると思いますが、内容が的確に伝わっているのかどうか、この辺を表現していくのが表現開発。それから、メディア特性を生かした表現開発。当然、新聞で表現されること、テレビで表現されること、ラジオで表現されることは異なっております。それぞれのメディアに合わせた表現をつくっていく。この辺が広告活動の実行役である広告会社の役割というふうにご理解いただきたいと思います。
  そして、地上デジタル放送の広告ビジネス上の課題でございますが、多チャンネル化で、つまり、広告スペース、先ほどの番組CM枠あるいはスポットCM枠というのが飛躍的に増えることが予想されますが、それがそのままテレビの広告媒体価値の上昇には直結しないおそれがあるということを考えております。広告媒体は時間とスペースで構成された有限財の商品で、在庫も追加生産もできない。その日に売れないと価値ゼロになってしまう。スーパーの生鮮食品と同じような状況が起こり得るわけでございます。
  このまま地上デジタル放送が多チャンネル化という方向で進んでまいりますと、需要と供給のバランスが変化する可能性が非常に高いと考えられます。その中でテレビ媒体の価値開発にどういうふうに注力していったらいいのか、これは広告会社としても非常に重要な課題と認識しておりまして、我々の場合、これをどうするかというのは、いろいろ情報収集、研究をしております。
  先ほど申しましたように、広告媒体の価値というのは、その媒体の接触人数の量と質で決まる。多チャンネル化というのは、言ってみれば、一つのチャンネルの接触人数は相対的に減少する可能性がある。現実的には、非常に強力なチャンネルと非常に弱いチャンネルができる、あるいはそういう番組ができるという可能性もございますが、テレビ広告の媒体価値に変化が生じる。1番目と2番目は、どちらもテレビ広告の媒体価値に変化が生じるということだと思います。それに向けて付加価値のあるサービス開発、あるいは携帯の1セグ放送のような接触機会の拡大というのが非常に大きなテーマになるだろうというふうに考えております。
  そして最後に、広告スペースに広告素材が掲載されて初めて効果を発揮する。今の状況で、掲載スペースが非常に増えていった場合、先ほど、松下さんはトラフィックとおっしゃっていましたが、普通、CM進行業務と呼びますが、これが今の業務体制では、広告会社あるいはテレビ局の双方で非常な煩雑でミスが起こりかねないような状況が出てまいります。今、パッケージで送っておりますが、先ほど、松下さんも将来は電子送稿という可能性をということですが、恐らくITによる業務改革がここでは必要になるだろうというふうに考えております。
  もう一つ、これも大きな課題だろうと我々は思っておりますが、現在の視聴率測定というのがデジタル放送の想定される放送サービスの中では実態を反映できない可能性がある。反映するために、いろいろと考えなければいけないポイントがあるということでございます。
  現在の視聴率測定は、ここにありますように、テレビ所有世帯を母集団として行っております。そして、家庭内の視聴状況を測定している。視聴率の対象となるのは、地上波、BSCSCATVで、VTRの録画再生、テレビゲーム、パソコンなどは視聴率に含まれない。そして、いずれも毎分の視聴率が最小単位。これをもとに番組平均視聴率を集計しております。
  サイマル放送の期間中、こんな問題が幾つか出てきます。まず、番組視聴率はデジタルとアナログ放送の合算値ということを、今、想定しておりますが、果たして今の母集団の中で単純な合算でいいのかどうか。統計的な問題はクリアできるのか?それから、サイマル放送でないケースの場合、番組視聴率はチャンネルごとに集計するのか。今の測定器ではなかなか難しいですが、これも考えなければいけない。一番ややこしいのは、番組はサイマルだけれども、CMはサイマルでない。同じスポンサーさんがデジタルテレビで見ている家には高額商品のCMを出したい、そうでないところは普及品の商品の広告を出したいとなったときに、視聴率はどのように集計するのか。視聴率が取引の基準通貨のように使われている中では、この辺は非常に大きな問題になるだろうと思っています。
  それと、携帯電話への1セグ放送の視聴率はどう測定するか。デジタル放送受信可能携帯電話所有者を母集団とする調査が恐らく必要になるだろうし、現在の測定機械ではない新たな機械が必要になるだろうというふうに考えております。
  そして、もう一つ、最近、急に普及が高まっておりますデジタルビデオレコーダー、これが普及した場合に、リアルタイム視聴率に加えて、再生時の番組視聴状況の把握が必要になりますが、その場合、視聴率の定義というのは一体どうなるのかということをやっていかなければいけない。つまり、何時間後あるいは何日後まで見たものをカウントするか、こういうことを決めていかないとだめだろうという問題がございます。
  今、挙げたような課題について、日本広告業協会として対応している部分あるいは広告会社が対応している部分というのがございますが、日本広告業協会としては、広告ビジネス基盤の再構築が必要になる課題、例えばCM進行業務の業務改革、視聴率のあり方などについては、業協にメディア委員会という委員会がありますが、そこの傘下にありますテレビ小委員会、ラジオ小委員会、デジタル特別委員会、メディア調査研究小委員会などが協調して関連団体と協議を行うという形を、今、進めております。実際に電子送稿の実験等もやりながら、そういう中でメタデータをどういうふうにつくっていったらいいか、そういうことを研究しております。
  そして、広告会社の対応といたしましては、まず地上デジタル放送の普及に向けては、それぞれの広告会社さんが独自あるいは共同で積極的に展開されています。また、マーケティングというか、広告需要の喚起、あるいは媒体価値を高める活動等については、これが競争領域というふうに認識しておりますので、個々の会社が独自に対応しているという状況です。
  ちなみに、博報堂DYメディアパートナーズでは、メディア環境研究所、メディアマーケティング局、テレビ局デジタルビジネス推進部、i−メディア局がこういった任に当たっております。博報堂は、研究開発局、ビジネス開発推進局、制作部門にありますデジタルネットワーク推進室、こういったところが研究に当たって、何とか早い段階でサイマルからデジタルへという流れに対応していきたいというふうに考えております。以上でございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。松下さん、中村さん、どうもありがとうございました。お二方の報告、両方とも同じ広告の方でございますので、多少重複しているところもございますけれども、それでもやはり多少役割分担のようなところで特色のあるご報告をいただきまして、ありがとうございました。
  それで、ご質問の方をまとめていたします。まず、小塚さん、どうぞ。
小塚構成員 お二人のご報告に対して、1つずつ質問させていただきたいと思います。
  まず電通に対してですけれども、地上デジタルになった場合のローカルのマーケットというものをどういうふうに考えておられるか、あるいは予測しておられるかということです。一方では、広告主のビジネスというものがどんどんナショナルマーケット、あるいはさらに言えばグローバルマーケットを相手にしていくようになる中で、ローカルの広告マーケットは一体どういう将来性を持っているのかということです。
  それから、関連しまして、広告の時間枠のセールスの仕方で、ネットセールスとかローカルセールスとおっしゃったのですが、そこでローカル局が独自に取引をしていく、そういう取引の余地が現実的にどの程度あるのか、あるいは今後なっていくと考えておられるのか。こちらの方は取引慣行、取引形態に係る問題ですが、その点、ローカルの広告マーケットということでお聞きしたいということです。
松下局長 では、松下がお答えいたします。よく話題になるテーマだと思います。大変に難しいご質問ですが、ローカルのエリアの市場価値が急速に拡大するというふうには、残念ながら考えられない。現行維持をとにかくしていかなきゃいけないということなのですが、私ども実務の現場で思いますことは、先ほど、広告主の考え方みたいなことにちょっと触れさせていただきましたが、テレビ媒体は特に広告主からのアカウンタビリティーの要求というのですか、つまり、非常に高い商品でございますので、例えばお得意様も社内でそれを説得し、説明するための細かいデータをいろいろ必要とされるわけです。あるいは最近は、先ほど、ターゲット別の話をちょっと申し上げましたけれども、それこそ、IT化の進展の賜物だと思いますが、どういうメディアをどういうふうに効果的に自社の広告活動のために活用するかということで、メディアプランニングの手法というのが非常に精緻化、高度化しております。
  一方、そういう流れがある中で、残念ながら、ローカルエリアに対するデータですね。例えば一番わかりやすい例で申し上げると、個人視聴率のデータが出るのは、今度、名古屋が追加になりますので、東京、大阪、名古屋の3地区だけです。ローカル局については、個人視聴率のデータというのは、一部、日記式みたいなことで単発的に行っておりますけれども、ほとんど正確なデータを得るのが難しい。あるいは世帯視聴率についても、東京、大阪地区なんかに比べますと、まだ全日、1年間 365日、そういうものが出ないところもございますし、そういう意味では、私どもがこれからローカルエリアの市場を活性化していくためには、少なくとも広告会社の立場からいえば、データの整備、これは放送局にももちろん一生懸命頑張ってもらわないといけないんですが、そういうものが必要になってくる。
  今の広告主というのはやっぱりそういうものがないとなかなか説得ができないというか、そういう意味でいえば、広告の作業というのがかなり高度化しておりますので、ローカルエリアの市場を縮小させないために、私たちが一番やらなければいけないのは、そういったデータの整備、それからローカルエリアに対するエリアマーケティングとよく申し上げますが、そういうものの必要性というものを広告主に積極的に働きかけていかなければいけないというふうに考えております。
  次に、ローカルセールスということで申し上げますと、これはローカル局の方がよくおっしゃいますけれども、やっぱりコンテンツ制作能力、これの自社制作能力といいますか、それを高めていかなければいけないというふうによくおっしゃいます。ところが、これが、当然、コストを伴うことなので、大変に難しいことなんですね。かけたコストだけ果たして回収できるのだろうか、という問題がいつもローカル局が直面するジレンマなんです。
  先ほど多チャンネル編成というお話を申し上げました。これは2チャンネルで、例えばさっきの例で申し上げますと、ネットとローカルということになるわけですが、昼間の時間帯はローカル番組のゾーンが非常に多くございますので、そういったところで多チャンネル編成をして、一つのサブチャンネルで今までのやり方とは全然違うような番組と申しますか、わかりやすくいえば、スポンサーの例えば販売促進活動に割と直結するような番組であるとか、あるいは地域の商店街でもお金を出せそうな料金で提供できるような番組であるとか、よりコストのかからない番組開発を多チャンネル編成の中でやっていくというのが、今のご質問に対しては、私なんかが個人的に持っている考え方ではございます。そこら辺を電通なりに研究して、ローカル局の方々とデジタル化をうまく利用していきたいなというふうに考えております。
塩野座長 どうもありがとうございました。
小塚構成員 それでは、博報堂の中村様にもひとつ伺いたいのですが、地上デジタルが普及していきますと、BSデジタルのマーケットがどうなるかという話。これは松下様のご報告にもあったところですが。そのときに、仮にこの2つのマーケットが完全に食い合うのではなくて、違ったマーケットとして生きていくという可能性があるとした場合に、そのマーケットのはかり方といいますか、基準通貨はどういうふうに考えていったらいいのかということを伺いたいと思います。
中村所長 基本的には、クライアントさんが多額のお金を投じるというのは、自社の広告メッセージをできるだけ多くの人に届けたいということですから、基準通貨の一つのまま行くのは変わらないと思っています。ですから、それは視聴率ということだと思いますが、では、どんな人に届けばいいのかというのは、これは企業の戦略によっていろいろでございます。
  今、地上波は、先ほど、松下さんのお話にあったように、F1M1という20代、30代前半が一番購買力があって、マーケットとしてはおいしいということで、そこに雪崩を打って行くわけですが、これからの世界を考えていきますと、私ももうそうですが、50以上の層がゆったり高画質のテレビを楽しむ、そういう中では、先ほど、松下さんのお話があった、編成がBSデジタルと地上波では多少異なっていく。そこに企業がどういう価値を見出していくか、この辺だと思いますが、基本はやっぱり見てくださる方の量、これが基準になっていくだろうというふうに思っています。
小塚構成員 ありがとうございました。
塩野座長 今の関連で、私から、松下さんのお話の方がデータがありますが、15ページですね、今、ちょうど出ました地上波は視聴率、BSは視聴質、これは一つの切り口と申しますか、こうあればいいなと私は思うんですけれども、どういう証拠といいますか、エビデンスでこういうことがいえるのか。松下さんの長年の商売歴の直観なのか、それとももう少し何かデータがあるのか。
松下局長 いや、直観の部分がもちろん大きいです。で、今の中村さんのお話のように、私もM3に属しておりますので、みずからの体験からも申し上げたんですが。ただ、エビデンスというふうに申し上げるかどうかわかりませんけれども、例えばF1、M1とF3、M3の高視聴率番組のベスト10とかベスト20を出しますと、F1、M1は圧倒的に民放が上位を占めるわけです。で、M3とかF3というのは、NHKさんの番組は非常に多いんですね。そういうことも含めて、これを称して、視聴質というのとはちょっと違いますが、視聴ターゲットの問題ですが、NHKの番組を提供できればいいのになというようなお話が、冗談まじりではありますが、お得意様から出ることもあります。
  ということは、さっき、ブランドイメージのお話を申し上げましたけれども、最近、お得意様はブランドイメージの向上というのにものすごく関心が高いんですね。ただ、そういったときに、自分たちのブランドイメージと提供する番組との、さっき、親和性というお話がございましたけれども、合わないというケースも結構あると思うんですね。ですから、今、私が申し上げた、その部分はBSが担うだろうというのは、私の直観だけではなくて、その気になって裏づけを探せば、私は見い出せるだろうというふうに思っておりますが。
塩野座長 ぜひ見い出していただきたいということと、それから、そういうことを促進するための処方箋ですけれども、ここでは地上波プラスBSの総合編成、そういった一つの処方箋が描けていますけれども、こういうやり方もあるし、むしろ、BSは経営主体がもっと違った方がいいんだという意見もあって、これを唯一の処方箋というふうにお考えなんですか、それともこういう考え方もあるということでしょうか。
松下局長 いや、違う経営主体があってもいいのかもしれませんが、これこそ直観的ですが、例えば同じ放送事業者、わかりやすくいうと、キー局がどれだけの量、資本参加するかどうかは別にして、キー局の意向というものが必要かどうかということですが、やっぱりキー局は、BSに参入した時点から、みずからのネットワークの維持と、それからBSデジタル放送の活性化というもののジレンマが随分あったと思うんですね。で、今、BSデジタル放送、普及率も、それから営業成績も当初ほどは伸びていないわけですが、多分、これは放送事業者も何とかしなければいけない。やっと 700万世帯ぐらいになってきて、多分、 1,000万世帯ぐらいになると、さっき申し上げたとおり、広告主もそこでのアクティビティーみたいなものが比較的社内でも認知されやすいということで、注目してくると思うんですよね。
  そうなると、やはり地上波キー局の主導だからこそ、編成的すみ分けが非常に切実なものというふうに考えられるわけで、仮にこれが新規参入事業者みたいなことだと、もちろん、そういう方針の方もいらっしゃるかもしれないけれども、やはり地上波を凌駕するといいますか、目標としてはそういうところに経営方針を置かざるを得ないんじゃないかと思うんですね。
塩野座長 中村さん、今の点でつけ加えることはございますか。
中村所長 どういう事業者がやっていったらいいかというのは、なかなか難しい話だと思いますけれども、テレビ番組の制作能力ということでいうと、残念ながら、日本ではキー局が圧倒的な力を持っている。先ほど、ローカルの制作能力という話がありましたけれども、現実にローカルで番組をつくっている率というのは、大体3割ぐらいなんですね。そういう中で、ニュースと情報番組と時々ドラマをつくられる、あるいはドキュメンタリーをつくられるということはありますが、やっぱり年に何回かしかつくるチャンスがないという中からいくと、キー局の制作能力の高さをもっと生かした方がコスト的にもメリットがあるのではないかというふうに私は考えています。
塩野座長 どうもありがとうございました。では、村井さんと羽鳥さん、どうぞお願いします。
村井構成員 小塚さんと塩野座長のご質問に対してお答えになられていたことをもう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。お話をうかがっていて、デジタル化に伴い視聴者の詳細な情報を集めることにより、マーケットが求めるインテリジェンス(高付加価値な情報)を何か得ることができるだろうというようなこと。あるいはよい番組を制作していくという立場から考えると、制作した番組がどのようなプロセスを経ることによって視聴者に受け入れられたのかというような調査。つまり、強力なマーケティングシステムとして、デジタル情報の環境というのは、マーケットに貢献をしていけるのではないかと思います。
  デジタル放送は、先ほどのお話ですと、視聴率自体は測定などでまだ課題もありましたが、マーケティングとしての対象が、どんどん詳細になっていき細部の知識を得ることが出来るようになる。そうなると、広告主、それから広告自体、あるいは今の民放のビジネスモデル、それらの将来像は、マーケットに貢献できるという意味で、大きく期待をするような部分がありますか。それと、ビジネスモデルとしてデジタル化に伴うマーケットのもっと詳細な把握、こういったことは今まで議論されたような広告主が求める効率化、ブランドイメージの向上などに貢献をしますか、というのが私からの質問です。
塩野座長 では、まずそれに対しまして、どうぞ。
松下局長 昨今、その視聴率の問題から派生して、先ほどの電通の調査も博報堂さんの調査もインターネット調査です。それと直接に関係はございませんが、デジタル放送がゆえに、例えば視聴者のプロフィールであるとか、視聴形態みたいなものがはっきり把握できるのではないか、という意味でよろしいんですよね。少なくとも広告主の中にはそれに対する期待は大きいと思います。ですから、デジタル放送が普及し、かなり当たり前のものになったときに、デジタル放送であるがゆえの、例えば視聴者情報、視聴者の視聴状況の把握、こういったものが可能になることは事実でしょうし、そういった方向に、さっき、アカウンタビリティーというお話をしましたけれども、少なくとも広告主からはそういう要望が高まるだろうというふうには思います。
中村所長 先ほど、松下さんから、メディアプランニングという業務が非常に精緻化されてきたというお話がありましたが、これは、テレビを見ている人のデータが非常に精緻にとれてきているからです。で、デジタルになれば、これはもっと精緻になっていくわけで、いわゆるターゲットにぴたりと当てるという広告は、現実にはデータ的には可能になっていくと思います。ただ、我々の購買行動とか購買心理というのは、ぴたっと当てられて気持ちいいかというと、それだけでもなくて、やっぱり何かここははやっているらしいなとか、みんながおもしろいといっているとか、そういったことにも非常に影響されてきますので、そういう意味でのマスメディア、地上波テレビのリーチ特性というんですか、そういうところもなかなか捨てがたいところがあって、企業のマーケティングをやられている方は、片方で効率性ということを非常に求めてこられますけれども、もう一方で、マスメディアをどういうふうにうまく使ったらいいか、あるいはネットとマスをどう組み合わせたらいいか、そういう要請が非常に出てきていますので、我々広告会社にとっては、データのコストもかさむし、システムもつくらなきゃいけないし、なかなか大変なんですが、そんなふうに私は受けとめています。
松下局長 すみません、一つだけ、ちょっと追加させていただきます。今日は全然触れなかったんですが、蓄積型の放送サービスというのが言われておりますよね。この蓄積型に関連して、今のテレビ番組の広告というのは全国一律に流れるわけですが、視聴者が関心を持っているCM、例えば自動車のCMにすごく関心があるとか、そういったものを想定して、地上波で放送されているテレビ番組とは別に、蓄積型の部分だけCMを差しかえるとか、個人個人で差しかえるとか、そういった研究は、私ども、徐々に始めてはおります。
塩野座長 よろしゅうございますか。羽鳥さん、どうぞ。
羽鳥座長代理 たまたま電通さんの6ページ、それから博報堂さんの6ページ、1セグメント放送というか、携帯電話を使っての地上デジタル放送の利用意向というのが、その認知度というか、多分、物を見たことがない方に聞いているのではないか。そういう質問を受けたときにすぐ思い出すのは、観光バスの中でチラチラするような画面であるとか、あるいはカーナビのところにくっついているチラチラするような画面を想定しているのではないか。あれは、やっぱりぴしっとした絵が止まって見えるということがわかったときに、利用意向というのは大きく違うような気がいたします。
  それから、地上デジタル放送につきましても、車の中にはバッテリーが積んでありますので、携帯電話で受信するとバッテリーがもたないから1セグメントでいこうとしているわけで、バッテリーが積んであれば、もう残りの12セグメントの方を受信することが十分できるわけで、しかも、手が切れるような絵が受かるわけで、その辺の利用意向というのが、物を見たらすごく変わるのではないか。したがって、電通さんのお仕事だとか博報堂さんのお仕事に影響が与えられるぐらい、利用意向というのは大きく違うのではないかという気がいたしまして、その点が1点。
  それからもう一つは、デジタルVTRDVRとか、あるいはサーバー型放送というのに、何チャンネルのチューナーを積むかということがあると思うんですけれど、視聴率というのが非常に重要なファクターだというのは、電通さん、博報堂さんにとっても、それから、コマーシャルをお出しになる企業の方にとっても非常に重要なファクターであるとすると、現物で見ているものでなくて、タイムシフトして見ているとか、そういうものを重視していただけるようでないと、視聴率というのが重要なファクターから逸脱していくのではないかという気がするというのが2点目。
  3点目が、NHKの放送をコマーシャルつきで流したいということをおっしゃられたんですけれども、誤解がなければ、私が1カ月ぐらい前にヨーロッパで見たのはNHKの放送だったと思うんです。そこのところにコマーシャルが出てきたので、あれは日本の国内ではできないことをヨーロッパでやっているのか、ヨーロッパでもできて、国内でもできることを、ただ、日本でやってないのかという、その辺があって、NHKの番組にコマーシャルをつけて流しているという例は、記憶に間違いがなければ、あれは確実にNHKの番組だったと思います。
塩野座長 最後の点は、きょうの終わりに、時間があれば、事務局の方からお答えいただくことにして、最初の方、お二方、大体共通している問題ですので、1つずつ、まず最初の方を松下さん、後の方を中村さんにお願いいたしましょうか。
松下局長 ついでと言ったら何ですけれども、3番目は、多分、NHKの海外番販というか、番組販売ということだと思うんですね。それに海外の民放がコマーシャルを入れているということだと思います。
  最初の携帯については、おっしゃることに私も同感でございます。さっき、ご説明のときに意外だったというお話をしたんですが、これは、多分、実態をしっかり認知していないので、こういう回答になっているのだろうというふうに思います。放送事業者の方も1セグの携帯向けの放送については非常に大きな期待を持っていらっしゃいますし、我々広告会社としても、そういうものがふえても、私どものビジネスに悪い影響を与えるというふうには全然考えておりませんので、積極的に取り組んでいくつもりでございます。ですから、多分、しっかりと理解できていないのが、この調査結果だろうと思っております。
中村所長 携帯については、おっしゃるとおりだと思います。博報堂の方では、一度、話というレベルではなくて、実際に見せながら調査をやったことがあるんです。ただ、まだ現実に行われていませんので、公表はしてないんですが、かなり視聴意向は高かったというふうには見ています。ただ、認知レベルでは、まだ余り知られていないのも事実ですし、最近、アナログでテレビを受けられる携帯が出ていますが、あれはやっぱり見にくいなというのが一般的なので、まだ調査のレベルで、言葉で聞いても、なかなか意向度ははかれないのかなというふうに私は思います。それから、DVRのリアルタイム視聴とタイムシフト視聴とございますけれども、これ、イギリスでは1週間遅れまで視聴率に加えるというようなルールでやっているそうですが、日本の場合、それをどうするかというのは、これから議論をしなくてはいけないと思っています。DVRの場合、特に追いかけ再生という、例えば9時の番組を9時10分から見る。で、途中で追いついちゃうみたいな、そういう視聴の仕方もありそうですので、どこでどう合わせるのかとか、今の視聴率は毎分視聴率というのが基本になっていますから、この辺も仕組みをどう考えるか、あるいはルールをどうつくるか。そういう意味で、先ほど、ご紹介したように、民放連さんとか、広告主協会さんとか、我々広告業とかで、その辺の問題意識を持って、今、協議を始めているというふうにお答えしておきますが、必要なことだと思っています。
塩野座長 篠原さん、どうぞ。
篠原構成員 では、簡単に。今、視聴率のことがちょっと話題になっていましたけれども、例えば電通さんの資料の15ページですね。地上波は視聴率、BSは視聴質。何となくわかるんですけれども、確かに視聴率というのは、過去のデータの蓄積だとかがありますし、それから調査が非常に簡便だということもあるから、非常に使い勝手がいい。そうではあるんですけれども、これだけ、さっきのお話であるように、広告主のマーケティング活動というか、広告計画なり広告管理というのは非常に厳しくなってきている、高度化している。ということになると、結局、メディア側としても広告主に対してのプレゼンテーションに際して、より科学的に、データベースでいろいろやっていくという必要性がますます強まっていると思うんですね。その場合に、例えば地上波の場合でも視聴率だけでは十分じゃない、そういう状況の中ではあるんですけれども、一方、今度、BSの場合だと、視聴質ということで、これは視聴率に対して、もっと質のデータという意味だとは思うんですけれども、特に視聴質のデータに関して、どんな新しい調査手法なりデータが供給されるようになってきているんですか。多チャンネル化するとか、デジタル化という方向に来ている状況の中でですね。それはお二人、どちらでも結構ですけれども。
松下局長 私の説明というか、その資料そのものもそうなんですが、時間の制約もございましたので、割とわかりやすいというか、極端な、視聴質という書き方がですね。それは何も、視聴率にかわる視聴質の尺度があって、BS放送は視聴の質でいくべきだというふうなことを申し上げたのではなくて、例えば広告主協会の方は何十年も前から視聴の質ということを何とかとらえたいというふうにおっしゃっているわけですね。
  ただ、これは現実的には非常に難しい、手法開発が難しい問題で、一言でいうと、視聴質というのもいろんなとえらえ方があるわけで、一般的には番組のクオリティー、例えばハイブローであるとか知的であるとかというふうにとらえられがちですが、ある広告主からすると、どういうふうに見られているかとか、そういう見られ方を指す場合もあるわけですね。
  広告主の方が何十年も前から視聴の質ということをいう背景には、今の地上波のテレビにはないような番組、そういうものを求めているというか、例えばジャーナリスティックな番組であるとか、そういうニーズが昔からあるというふうに私は思うんですね。そういう意味で申し上げているので、デジタル化時代といえども、視聴質の計測というのを客観的な尺度としてつくっていくというのは、非常に困難なことだと思っております。
篠原構成員 今、具体的に実務調査ということで、新しい質的な調査データを整備するための調査手法というのが開発の途上にあるということでもないんですか。
松下局長 いや、途上にあります。ですから、視聴の質ということで、いろんな側面からのアプローチが考えられるので、これは博報堂さんでも、多分、いろんな形で研究なさっていると思いますし、電通でも、現に、さっき申し上げたメディアプランニングという中にはそういったデータも含まれているわけですね。ですから、それは、我々の重要な研究テーマではもちろんあります。
篠原構成員 ありがとうございました。
塩野座長 どうか、その辺、もっと研究を進めてくださいというのが、恐らくみんなの気持ちだと思います。 他にもいろいろあるかと思いますが、もう時間も大分経過しましたので、これでお二方に対する質問は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、社団法人日本新聞協会のメディア開発委員会委員長の箕浦啓進さんから、デジタル化時代のメディア環境と放送の役割について発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
箕浦社団法人日本新聞協会メディア開発委員会委員長 本日は、「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」におかれまして、このような発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私は、日本新聞協会加盟新聞・通信53社のデジタルメディア部門の責任者で構成する日本新聞協会メディア開発委員会を代表して、新聞界としての意見を述べさせていただきます。
  まず初めに、デジタル時代の放送のあり方を議論することの重要性について考えを述べさせていただきます。我が国のメディア環境、とりわけ通信と放送にかかわる分野は、急速なIT化、デジタル化の進展によって大変大きな変化を遂げようとしています。インターネットの普及には目を見張るものがありますし、放送もBS、CS、地上波、いずれもデジタル化されつつあるなど、放送総デジタル化の様相を呈しています。デジタル化の進展は、時代の大きな流れであり、もう避けて通れない道だと思っております。
  このような環境変化の中にあって、今後の放送のあり方について広範かつ踏み込んだ議論を行い、その社会的役割や制度の方向性を示すことの重要性がますます高まってきております。メディアの多様化や規制緩和の大きなうねりを背景に、多くの事業者が通信・放送の分野に参入しつつある現状を踏まえ、放送の二元体制やマスメディア集中排除原則など、我が国放送制度の根幹にかかわる事項を含めて、改めて検討を加えなければならないと思います。
  新聞協会メディア開発委員会は、このようなデジタル化の進展とメディア環境の変化について研究や検討を重ね、必要な対応を図っております。今後の「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」の運営、議論の内容には、新聞界としても大変注目している、ということをまずはお伝えしたいと思います。
  それでは、各論に入りたいと思います。まず、デジタル時代の公共放送と二元体制について述べさせていただきます。このように新しい時代の放送のあり方について議論する重要性が高まっている中で、とりわけ、デジタル時代の公共放送・NHKのあるべき姿については幅広く検討すべきである、との意見をメディア開発委員会はこれまで機会あるごとに述べてまいりました。本調査研究会の検討項目のうち、本日は「デジタル放送時代の公共放送」を中心に新聞界の基本的な考えを述べることにいたします。
  まず、放送法に基づき設置されている特殊法人NHKは、現在の放送法で定められた放送の業務を遂行することに徹するべきです。受信料によって安定した財政基盤を確立しているNHKは、その制度の趣旨に沿い、公益の実現を目的とした業務を行わなければなりません。それは、放送総デジタル化、通信・放送の融合が進んでも変わりはありません。
  NHKは、今年1月、当面の経営指針として発表した「平成16年〜18年度NHKビジョン」の中で、公共放送の役割を果たしていくには、放送が通信と連携する新しいサービスの可能性追求が欠かせないとの見解を示しました。しかし、通信分野や放送と通信の中間領域では、既に多くの民間事業者が多様で良質な情報やサービスを提供しています。公共放送として果たすべき業務は、先導的役割や質の高いコンテンツの提供だと思いますが、この分野では既にそれが行われているのですから、NHKがこれから後追いの形で参入する必要性は乏しいと言わざるを得ません。
  また、放送分野に限っても、既にNHKは地上波、衛星波を合わせて数多くのチャンネルを持つ巨大な放送局になっております。デジタル時代を迎えてもそのような体制を維持すべきかどうか。適正な規模について、当然、再検討の対象にすべきだと思います。現状は、多チャンネル保有に加え、その利点を生かした衛星放送の24時間ニュース専門チャンネル化の動き、それから、衛星放送会社「モバイル放送」への長時間にわたる番組供給の実施も伝えられています。これは、総務省が掲げた「放送における言論表現の多様性、多元性を確保し、健全な民主主義の発展等に寄与」するという二元体制の目的の一つを損なうおそれがあります。二元体制を今後とも維持するのであれば、NHKは放送を業務とする特殊法人として公共放送の基本に立ち返り、その役割を限定的に認識する必要があります。
  一方、正確で豊かな情報が迅速に国民の手に届くことこそ、民主主義の重要な基盤であり、権力から独立した民間企業としてこうした情報基盤を支えることは、我々の務めです。新聞界が公共放送の業務拡大の問題点を指摘するのに対し、業界の利益追求でいっているのだとか、逆に、NHKのサービスについて、視聴者、国民のニーズにかなっているのだからいいのだとして是認する向きもありますが、いずれも表面的な見方であると言わざるを得ません。そのようなとらえ方では、民主主義社会の根幹をなす言論・報道の多様性確保という本質を見失うことになってしまうと思います。
  次に、受信料制度と有料サービスについて述べさせていただきます。NHKは、先ほどのNHKビジョンの中で、デジタル技術を活用した新しいサービスについて積極的に検討するというふうに述べております。デジタル化の進展は、時代の大きな流れですが、NHKの場合は、受信料という特殊な制度に支えられていて、市場原理が働かないので、一般の民間企業と同じに論じるわけにはいかないと思います。我々は、受信料を主たる収入として運営される公共放送は、無原則に新たな有料サービスに手を広げるべきではないと考えております。NHKが新しいサービスを行おうとする際には、それが放送法に定められた業務の範囲内にあるものかどうか、厳しく吟味されなければなりません。NHKは、十分な情報公開のもとで、受信料収入の適正な使用を図るべきであり、公共放送の業務範囲を逸脱する新しいサービスへの投資は行うべきではありません。そのような投資余力があるのであれば、むしろ、視聴者還元策として受信料引き下げさえ検討すべきではないでしょうか。
  また、子会社などを使って個別のイベントで企業の協賛を求めたり、他メディアにコンテンツ提供を行ったりすることで収入の多角化を図ろうとする動きも見られますが、これらについても公共放送としてふさわしいものかどうか、厳密に検証されるべきだと考えます。
  次に、インターネットを利用した新しいサービスと諸制度について述べさせていただきます。繰り返し述べておりますとおり、NHKが公共放送としての業務を超えたサービスを行うことは認められないと思います。また、諸制度が整備されていない現状では、NHKが新しいサービスに乗り出す根拠はありません。現在、NHKのインターネット利用については、放送法に具体的な記述がなく、同法第9条に定められた放送の附帯業務として認めることとされています。2000年暮れ、そのような見解を総務省が明らかにした際、私どもメディア開発委員会は放送法の拡大解釈であり、NHKの新たなメディアへの参入をなし崩し的に後押しするものだと批判しました。また、我々はその後、放送政策研究会の第一次報告を踏まえて総務省が作成した「日本放送協会のインターネット利用に関するガイドライン」についても、根本的な議論を経ず、現状を追認する形で作成されたこととあわせ、具体的な問題点を指摘してきました。
  一方、NHKは、2002年のサッカーワールドカップのときに、「NHKゴールメール」、さきのアテネ五輪では「NHKオリンピックメール」の名称で、得点や試合経過等を視聴者に伝える携帯電話へのメール配信サービスを実施しました。NHKは、これを「広報」等の一環として、総務省ガイドラインや、それに基づいてNHKが毎年作成している「放送番組補完インターネット利用計画」の対象外のサービスとして実施したということです。しかし、こうした「広報」という、それ自体あいまいな概念を適用してこうしたサービスが実施可能とされるのであれば、NHKのインターネット展開には何の歯止めもないに等しいと考えます。
  さらにもう一つ、具体的な問題を指摘しておきます。NHKはデジタルテレビのインターネット接続機能を利用して、放送関連のデータをインターネット経由であたかもデータ放送番組のような形でテレビ画面に映し出すサービスを今年4月から開始しました。データ放送補完サービスと呼ばれるこのサービスでは、現在は番組紹介などの情報が提供されておりますが、NHKは今後、ニュースの提供もここで行おうとしています。総務省のガイドラインやNHKの利用計画では、インターネットのホームページを利用して「放送番組の二次利用」「番組関連情報」などを提供するとしておりますが、このサービスでは、視聴者は地元以外のローカルニュースや地域行事などの情報にはインターネット経由で初めて触れるのであり、これを放送番組の単純な二次利用ということはできません。また、各番組のホームページにより情報提供を行うという要件にも合致しません。
  ニュースはまぎれもなくガイドラインや利用計画の枠内で提供するものであったはずです。NHKが地域ニュースや情報を全国に提供するということになれば、地域ニュースの発信者である新聞、とりわけ地方新聞あるいは県域免許を基本とするローカル局に多大な影響を及ぼすことが懸念されますが、このサービスにはそういった懸念以前の大きな制度的問題も含まれていると考えます。私どもメディア開発委員会としては、これらの問題点を含め、恣意的な解釈の成立する余地がなく、また、実効性のある諸制度のあり方について、改めて広範かつ精密な議論を行うことが急務であると考えております。
  ただいま説明しましたNHKのオリンピックメールにつきましては、附属資料の携帯電話の画面図をつけておきました。また、データオンラインの概念図につきましては、NHKが報道資料として発表されましたものをホームページにも掲載されておりますが、これはこちらの方でホームページから引用したものです。これにつきましては、ご参考に資料として見ていただきたいと思います。
  それでは、最後に、その他の課題につきまして述べさせていただきます。メディア開発委員会は、これまでNHKの子会社等のあり方についても問題点を指摘してきました。公共放送の目的を達成するために出資が認められている子会社、関連会社等の業務範囲は、放送法の目的に沿うものでなければなりません。また、子会社をかくれみのや抜け穴にしてはいけません。総務省はこの問題に関して2002年にガイドラインを策定し、NHK自身もその後、「業務委託基準」「関連団体運営基準」などの施策をまとめて発表しました。しかし、われわれは規定の実効性等の点で問題があると考えています。子会社、関連会社等の実態を把握し、その業務や契約内容の透明性、公平性を確保するための方策は、まだ不十分と言わざるを得ません。公共放送、NHKのあり方を議論する上では、今後もNHK本体だけではなく、その子会社、関連会社を対象に含めることは不可欠と考えます。
  受信料を財源とするNHKと広告収入等を財源とする民間放送の二元体制を維持するとすれば、公正で健全な競争を確保するための制度整備は不可欠です。当新聞協会に加盟する新聞・通信各社は、放送業界においても自ら新しいメディアを運営、あるいはコンテンツを提供する主体です。現在の民間放送事業者をめぐる環境を見ますと、マスメディア集中排除原則による出資規制など、民間放送事業者は厳しい条件下に置かれています。デジタル化時代の放送サービスで良質なコンテンツと多元性を確保していくために、より一層のマスメディア集中排除原則の緩和など、抜本的な制度見直しの論議が急務だと思います。
  公共放送のあり方は、放送という狭い範囲の問題ではなく、放送、通信、さらには日本の産業構造、文化全体に影響を与える重要なテーマです。「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」におかれましては、かつて放送政策研究会で検討され、一定の結論が示された事項についても、改めて今日的な状況を踏まえ、広範かつ踏み込んだ研究と議論を行っていただきたいと思います。また、その際には、本日述べましたメディア開発委員会の意見をぜひとも反映していただくよう要望いたします。その意味で、今後ともヒアリングの出席要請がありますれば、当委員会は積極的に対応したいと考えておりますので、念のため申し添えます。本日はありがとうございました。
塩野座長 どうもありがとうございました。それでは、今のご説明につきまして、どなたからでも結構でございますから、どうぞご質問あるいはコメントをいただければと思います。
  それでは、私の方からまず最初、前の方から一つだけ質問させていただきます。ここでのご提案は、現在の放送法で定められた放送の業務というふうに書いてありますが、そうすると、放送概念は堅持すべきであるということですか。つまり、私の感じですと、放送概念ということで日本人がくくっているために、本来、番組規制をしなくてもいいと私が思われるようなものまで、こういうふうにくくっているために規制が及んでいる、番組規律が及んでいるということがございます。そういった点を決めますと、ここで新聞協会の方で放送概念を堅持するということについては、私の年来の主張と違うところでありますので、そこだけちょっと確認をしたいと思います。
箕浦委員長 放送の概念につきましては、この調査研究会の方でいろいろ議論されまして、また、必要に応じて変更する必要があるというのであれば、やぶさかではありませんが、現在、私ども新聞協会の方で考えている放送概念については既成の概念で考えております。
塩野座長 だから、これを堅持した上で我々の議論をしろという、そういうふうなお話ですか。この新しい研究会においてそういった課題はやめてしまって、昭和20年代につくられた放送概念、これのままで議論しろ、そういうお話なのかと思って、ちょっとこの辺がよくわかりませんでしたので。
  そうすると、あまりこれにとらわれないでいいというと、ちょっとまた問題があるので、私としては、今後ともこの放送概念については今までのような日本の――日本は非常に厳しいんですね。私、こういうやり方でいいのかどうかも含めて議論させてもらいたいと思うんですけれども、新聞協会の方はそれでよろしゅうございますか。
箕浦委員長 少なくとも現在の放送概念につきましては、放送法というものがございまして、NHKの業務範囲がそれに定められておりますので、私どもは、今、それを前提に考えるべきだと思っています。
塩野座長 分かりました。
社団法人日本新聞協会メディア開発委員会 桜井氏 ちょっと補足させていただいてよろしいですか。私は、メディア開発委員会の下部組織の研究会の桜井と申します。
  新聞業界としてきちっと確立したコンセンサスではございませんが、例えば放送と通信の融合、あるいはその中間領域の部分にNHKさんが出ていかれようとしています。その領域が、これまでの放送概念、つまり従来的な放送とその周辺業務というような仕分けではもう間に合わなくなっているとの認識はございます。そこにどう我々として対応していくかということについては、まだ若干の我々の中での検討も残されているというのが現状です。
塩野座長 どうもありがとうございました。では、そういうことで議論を進めたいと思います。ほかに、どうぞ。羽鳥さん。
羽鳥座長代理 僕も塩野先生の前の委員会に出させていただいた時に、インターネットについて3年間は少し遠慮しろという研究会の提言だったことを思い出すんですけれども、僕はそのときは少数意見で、民放がおやりになれることをNHKにちょっと待てというのは、放送の発展のためにちょっとかわいそうなんじゃないか。逆に今度は、NHKさんができることが民放ができない、地上と衛星の使い回しをするようなことが、地上局とBS局とで一体運営が、経営ができないということからくる、現実的な著作権処理の問題や何かができないというのは、ちょっとやっぱりかわいそうなんじゃないか。
  それで、塩野先生から、「あなたの言っていることはかなり本質的なことをひっくり返そうとしているんだから、気をつけて発言してください」と言われたことがあるんですけれども、地上デジタル放送にしても、BSデジタル放送にしても、データチャンネルというのはかなり細いものだから、いろんなところにポータル的に情報をきめ細かく流すのには向いているけれども、詳しく何かを知りたいというと、どうしてもほかの通信的な手段で引っ張ってくる必要があって、その引っ張ってくる先が民間の放送事業者、例えばNHKとは関係ないところを引っ張ってくるのか、あるいはNHKもそこをやるから、それを引っ張ってくるというのか。いずれにしても、放送のデータチャンネルを生かすためには、インターネットの通信機能というのを使わないと、データ放送の本当の良さというのは死んでしまうような気がするもので、できれば、3年たったんだから、もう一回見直してほしい、というのが私の当時からの意見でございました。これは私の意見でございますから、当時の研究会の多数意見ではございませんでしたので、私の意見は3年前と変わらないんでございますが。
塩野座長 ご意見の開陳ということで聞いていただけますか。きょう、ここで、のっけから議論し始めたら、もう先に進みませんので。つまり、羽鳥さんは意見を変えてないということらしい。
  ほかにどうぞ。
  それでは、私の方からちょっと気のついたところで……。ご質問ですので、きょう、別に議論をするつもりは全くないんですけれども。中の方でございますけれども、大変重要なポイントをずっと指摘していただいて、ありがとうございました。そういうことを前提の上でなんですけれども、受信料制度と有料サービスについてという3ページのところでございます。
  一つは、新しいサービスに出ちゃいかんよ、それはわかるんですけれども、その理屈なんですけれども、前の方では有料はよろしくない、有料サービスのこともいっておられますよね。そうすると、NHKが新しいサービスをするときに有料でやろうということは、投資を回収しようというつもりなんですよね。だけど、こちらでは、投資ということは、すぐ、損をするという前提になっているんですけれども、そこの論理の結びつきが、仮にきちんとしてお金を、投資コストを回収するならばよろしいんでしょうか。
箕浦委員長 私どももインターネットでいろいろなことをやっているんですが、投資回収を計算するのが非常に難しいところがございまして、例えばNHKがつくったコンテンツ、ニュースにしましても、番組にしましても、それをインターネットで流した場合、そのもととなるコンテンツは、NHKの放送、つまり、受信料をもとにつくられておるわけですね。それを今度、インターネットに流す場合に、そのコンテンツの制作費まで計算してやった場合は、まず投資の回収というのはできないと思います。それをどういうふうに計算するかというのは、非常に難しいところがございます。
  ですから、まず、有料でやるという場合に、その有料の価格設定をどういうふうにするか。本当にそういうコストまで含めたものにするのか。そうでなければ、高いお金を使って受信料をもとにつくったコンテンツをインターネットの方では安く提供するということになりますので、そこの有料というものが現実問題として非常に難しいんです。ご存じのように、インターネットの世界は、非常に金額が安くて、私どもも、今、ニュースとかいろんな情報をたくさん配信しているんですが、それでも1カ月 100円ぐらいしか取れないとか、そういうような世界でございますので、投資の回収という場合には厳密な計算をした上でやられないといけないと思うんですが、なかなかそこのところは難しいものだと思います。
塩野座長 わかりました。そういった具体的な計算の問題はあると思いますが、私がご質問を申し上げたのは理屈の問題で、遊んでいるデータがあるならば、それをどこかに回してもうけて何が悪い、という意見が出てきそうなものですから、それについては、これがどうもお答えになっていないのではないかというふうな感じがしましたので、そういうご質問を申し上げた次第でございます。また、この点についてご意見があれば、いつでもお寄せいただきたいと思います。
  もう一つ、根本問題ですけれども、マスメディアの集中排除原則の一層の緩和ということがございまして、これは第一次放送政策研究会でも大議論になりまして、むしろ、民間放送の方々からは、マスメディアの特にある方からのご発言では、比喩はいいかどうかは別にして、日本国憲法の9条と同じようなものを放送界に持っている。これを軽々に緩和するというのは認めるべきではない、という強いご意見がありました。私なんかも昔からそういうことをずうっと教わってきたと申しますか、考えてきた者でございますので、ここで良質なコンテンツと多元性を確保していくために集中排除原則の緩和、これはいろいろご説明を伺えば、なるほどということになるのだろうと思いますけれども、やや矛盾するといいますか、スーッと頭が入らないところがありまして、多元性が非常に重要ならば、少しぐらい、番組の質とはいいませんけれども、娯楽的な金のかかる番組ではなくて、もっともっと節減した形で言論のためにその多元性を確保すべきだ、というご意見がメディア側から出ても私はおかしくはないというふうに思うんですけれども、ここでいっておられる、一層のマスメディア集中排除原則の緩和というのは、3事業支配の禁止の原則というものも撤廃しろ。それから、今の県域放送、3局ないし4局、それも1局でよい。そういうご発言というふうに承ってよろしいのでしょうか。
箕浦委員長 マスメディア集中排除原則というものを、あくまでも市場原理にのっとって見直すというのが基本にありまして、今、私ども、マスメディア集中排除の原則でもっていろいろな厳しい条件下にあるんですが、これにつきましては、多元性というのをどういうふうにとらえるかという問題はあると思いますが、やはり基本はできるだけ自由にして多元性を守る。それから、特にこれからデジタル化されていきますと、地域的な問題その他でかなり自由に動かなければいけないということもございますので、そういう点でできるだけ緩和していく方が、これからデジタル化時代には合うのではないかという考えでおります。
塩野座長 わかりました。わかりましたというのは、そういったご主張かと承りました。ただ、私なりに勉強したところを見ますと、つまり、多元性の確保というのは、あるいはマスメディア集中排除の原則というのは、市場原理に対抗してできてきた原理なんですね。ですから、市場原理に即した形で多元性を考えるとなりますと、 180度以上、私の頭を変えないといけないんですけれども、それで果たしていいのかどうかという点、これ、外国の状況も考えないといけませんね。プリントメディアと、新聞と、それからテレビ系統がこれほど密接に結びついているところが一体あるのだろうかというようなことも考えますと、ここで集中排除の原則の緩和などの抜本的な制度ということになると、それこそ慎重に議論しないといけないというふうに思いますが、ここは慎重に議論してよろしいのでしょうね。
箕浦委員長 やはり慎重に議論すべきところだと思います。私どもとしても一番大きな問題として長期にわたり調査研究しておりますテーマでございますので、そこについては慎重にやっていくのがいいと思います。
桜井氏 ちょっと一言補足させていただきます。 先ほど、塩野先生がご質問になりました、例えば県域放送、3局を1局にという、それはむしろ、3局が1局になることで3つの波が1つの波になるようなことであれば、多元性確保ということに逆行することであろうと思いますので、あくまでも視聴者の皆さんの選択の幅を狭めないと申しますか、今、視聴しているチャンネルの数、波の数というものを狭めない、ということが一つのメルクマールになろうかと思います。
  それで、先ほどおっしゃった3事業支配禁止規定の見直し等、それはむしろ、今後、経営的に厳しくなって波を返上するというようなことになるようであれば、そういう事態、いろんな事態に備えて、あらかじめいろいろなセーフティーネットと申しますか、いろんな枠組みを構えていただくということもあろうかと思いまして、多元性の確保という意味は、あくまでも波を減らさないというようなことを前提に申し上げています。
塩野座長 わかりました。ただ、あまり議論するつもりはありませんけれども、今まで3局が持っていた3つの波を1局が持つ方がよっぽど多元性がなくなりますよね。
桜井氏 そうですね。
塩野座長 そのことを言っているわけですね。はい、どうぞ。舟田さん、何か質問してください。
舟田構成員 きょう、お聞きした新しい点は、4ページの2つ目の「・」が具体的なご主張としては恐らく耳に新しい点ではないかと思います。もちろん、前提は、私どもにも参考資料として配られていますけれども、インターネット利用に関するガイドラインで、ここに提供する情報の形態、二次利用と番組関連情報が認められていますが、これ自体、もちろん、ご反対だとは思いますけれども、それは別として、放送番組二次利用、番組関連情報にはあって、この拡大解釈だというふうにおっしゃるけれども、その辺、ちょっとご説明いただければと思いますが。
箕浦委員長 今、おっしゃられた、特にデータ放送の補完サービスのところだと思いますが、私たちはインターネットのガイドラインで定められた放送番組の二次利用と、それから番組関連情報ということで考えておりまして、これを、今、NHKがこの前の中期ビジョンで示されたようなローカルニュースとかそういうものまで広げますと、どう考えても、二次利用とか番組関連情報という枠内ではおさまらないというふうに考えております。ここのところにつきましては、特に地方の新聞とか、それからローカル局から非常に強い意見が出ておりまして、ここら辺をインターネットで流されますと、放送がそのままインターネット経由ですり抜けてしまう、そういう解釈でおります。
舟田構成員 そうですか、ちょっと私、誤解していました。では、協会さんとしては、放送番組の二次利用あるいは番組関連情報に限ったこと自体は賛成なんですか。それを前提として、それとも、その解釈がおかしい、そういうご主張ですか。
箕浦委員長 これはここの中にも述べておりますけれども、NHKがインターネットへの参入を開始した時点、また、総務省がガイドラインをつくった時点で、新聞協会メディア開発委員会としては、これについては反対の意見を出しております。反対の意見を出しておりますが、そういうガイドラインができて、それで動いておりますので、それにのっとった上での解釈でございます。
羽鳥座長代理 これもまた3年前の主張をもう一回言うところになるんですけれども、マスコミの集中排除原則というのが、例えば新聞や何かについてはどうぞご自由に、雑誌や何かについてもどうぞご自由に、だけど、放送についてはマスコミの集中排除原則というのを適用しましょう、という根幹にあるのは、やっぱり電波というのが限られた公共の財産であって、それを余り幾つもお使いになるんじゃないよ、というのがマスコミの集中排除原則と、当時、民間放送が出てきた時点で、マスコミというものの非常に力の強い部分というのが新聞であったと思うんですね。
  で、今、新聞が力がないとは申し上げませんけれど、新聞に比べて、放送の地位も確固たるものになっているときに、かつ、今まで標準方式、1放送に使っていたBSをハイビジョン放送に使えるというような潤沢な使い方ができるようになって、いわゆるキー局5局すべてにBSの電波を割り当てることができたという時点において、アナログ時代とデジタル時代の、もちろん、電波は限られた貴重なものではありますけれど、その量が潤沢になったというのは、一つの、ここにご主張のマスメディア集中排除原則の緩和など、抜本的な制度見直しというのに、僕は非常にいいタイミングではないかということを主張したところでございます。
  私はBSデジタル放送というのは非常に強いメディアだと思っているんです。一つ衛星を上げてしまえば、日本じゅうをカバーできるわけですから、非常に強いメディアであると思っておりますけれど、現状において、そこからコマーシャル収入を稼ぎ出せないという苦しいことがあって、下手をすると、民放系のBSが危ないということを聞くにつけ、そうしたら、地上とBSとを一緒に2つ電波を持つようなことも抜本的な見直しというか、要は、著作権処理だとか、あるいはスタジオを使うときに、地上の局のスタジオを使わせてもらえないとかという、そういう現実的な不具合があって、片やNHKはそういうことができる、民放はできないというのは、先ほどの論理とは全く 180度違っているわけですけれども、NHKができることが民放ができないというのは、電波が貴重であることはわかっている、わかっているけど、これだけ潤沢になった時点でそこまで縛らなくてもいいんじゃないか。あるいは新聞についても、ひところ、民放ができたときの強さに比べると、そんなに怖がることはないというようなところもあるように思いますので、私はこの集中排除原則の緩和とか抜本的な制度見直しというのは、塩野さんにやっていただければ大変結構なことではないかと思っております。
塩野座長 今のはご意見の開陳ですけれども、この意見が今後、この研究会でどうなるかというのは、全く予測の外でございます。こういう意見もある。しかし、それは昔からある話だということで、自由に議論をさせていただきたいと思います。座長代理も、自分の意見を押し通す人ではないと思いますので。
  どうもありがとうございました。大変時間をオーバーいたしまして、申しわけございませんでしたけれども、濃密な議論をさせていただきまして、大変ありがとうございました。
  それでは、高城様、大変お待たせいたしました。メディアプロデューサーであり、フューチャー・パイレーツ株式会社代表取締役でいらっしゃいます。デジタル時代におけるコンテンツ制作の課題について、ご発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
高城フューチャー・パイレーツ株式会社代表取締役 高城でございます。私は、実際にテレビ番組やコマーシャルをつくる、いわばテレビに流すコンテンツをつくるクリエーターの立場として、きょうはお話しさせていただきたいと思っております。
  もし、私がプロデューサーを務める番組があった場合に、今、デジタル化ではなくて、アナログのテレビの時代で、これくらいの人たちと実際に権利処理、契約をしなければなりません。とてもクリエイティブどころではなくて、毎日、契約、さまざまな交渉で大変でございます。これ、いわばコンテンツの都と最近言われておりますハリウッドではどうなっているかというと、このような権利関係やお金をまとめる専門のエージェントといわれている人たちがいます。エージェントというのは、実は、カリフォルニアの州法で制作に直接タッチできません。ですから、映画の最後に監督からプロデューサーからクレジットが出てまいりますが、ここに名前が出ることはございません。いわゆる権利と制作する現場の人たちを完全に切り離してございます。むしろ、最近、ハリウッドでは、このエージェントの力が強過ぎて問題だといわれているぐらいになっています。日本ではこのエージェントがいません。これがまず1つ目の大変大きな問題でございます。このままデジタル化時代になったらどうなるのかというのは、ずばり現実的な私の問題でございます。
  さまざまなドラマにしろ、コマーシャルにしろ、映画にしろ、出演契約というものを実際に出る方と結ばなければなりません。これは権利の帰属ということでございますが、最近、ようやく締結できるようになった条項に、本作品、これはドラマでもバラエティーでも構いません、放送普及基本計画に規定する地上波デジタル放送への移行に伴うサイマル、アナログ、そしてデジタルでの放映及びその許諾がようやくとれるようになりました。ですから、最近つくっているものがようやくデジタル化に、再放送に堪え得るということでございますね。で、まだ締結できない条項としましては、本作品のインターネット及び移動体通信ネットワーク上における映像化及び課金というものは、まだ締結できておりません。ですから、今日つくっている作品も、移動体通信に流せる保証はまだまだ全然ないということでございますね。専門にまとめる方がいないということと同時に、よくわからないので、まだ締結できないというのが現実でございます。
  私ども、実際につくる立場としては何を一番望んでいるのか。これは当然でございます。つくったものを多くの人に見ていただきたい。これはつくった者、誰もの願いでございます。しかし、それをただで見せてしまったら、当然、私ども、食べることはできません。間に入っている方々、テレビ局やさまざまな方々も、これでは商売になりません。では、一体この仕組みはどうなっているのか、というのを簡単に作ってまいりました。
  一番左下、私どものようなつくる人がいます。プロデューサー、監督、もちろん、俳優、カメラマン、いろいろございますね。そこから例えば各種団体、広告であれば広告代理店さんのようなもの、音楽であれば著作権協会のようなものもございます。それに登録したり、ともに仕事をして流す人。CDであればレコード会社、流通でございますね。テレビであればテレビ局でございます。で、そのコンテンツはハード、例えば音楽であればCDプレーヤー、テレビであれば今後普及するであろうデジタルテレビ。それで、実際に見る人に届くわけでございますが、実は、我々がよく権利、これからデジタル化時代にどうなるかという時に、上の3者、すなわち各種団体、流す人と、ハードをつくっているメーカーで話されていることが大変多うございます。例えば音楽の例をとっていうと、音楽のさまざまな権利を持っている団体と、流すレコード会社、そして最後にCDプレーヤーなどをつくっているハード会社で実際は話されていて、ガチガチの権利、これは大変すばらしい技術を持って、技術はすばらしいです、そして法的にもきっちり整備されていてすばらしいものができるんですが、我々つくる側や実際に見る人がそれに果たして本当に満足しているか、納得しているかというと、これは大変疑問でございます。
  分かりやすい例として、ここ3カ月間の著作権保護に対する我が国の音楽業界の動きというものを新聞記事などから抜粋してまいりました。まず、公取が着うたで立ち入り検査しました。楽曲開放で市場拡大も今後望まれるということで、これはどういうことかと申しますと、最近、音楽というものはCDのような形で売るのではなくて、オンラインや――インターネットでございますね、携帯電話で配信して、形のないものが非常に普及してございます。ところが、ある力のある大きなレコード会社が幾つかとなって非常に支配的な、圧力的なことをしたために、公取が立ち入り検査しました。
  これ、検査したことが問題ではなくて、一番下の方に大きな字で書いてございますが、今後、オンライン化がますます進む中で、日本ではレコード会社が著作権保護の観点で楽曲は提供できない。すなわち、携帯電話やインターネットに対してまだまだ簡単には提供できないとして、いろいろなことを拒んでおります。ところが、アメリカではレコード会社による楽曲の開放が非常に進み、ウォルマート、これは日本でいうとイトーヨーカドーのような百貨店でございますが、それが異業種参入をしてきて、価格競争が非常に激化している。市場が大変オープンになってきたというのが8月28日、約3カ月ちょっと前の記事でございます。
  続いて、10月現在、先月まで。音楽を聴く、これは10年前はカセットテープが主流で、ウォークマンというものがございました。最近ではCDで音楽を聞いていますが、今はハードディスクで音楽を聴くのがかなり主流になっています。この市場は前年比で 140%伸びていて、しかし、日本国内で実際に売れているハードディスクのプレーヤーは70%から80%、米国のアップルのi−Podという会社が占めております。これはなぜかというと、アップルのi−Pod、もしくはi−PodにCDをコピーするi−Tune の特徴は、日本の著作権保護の考え方に準拠していません。これはどういうことかというと、アメリカの考え方では、先ほど言いましたように、非常に開かれた考え方を持ち、実際にはそれは日本でも受け入れられたということでございますが、音楽業界では、事実、日本の著作権保護の考え方が日本のユーザーの賛同を得られておりません。すなわち、技術はすばらしいですね、法的にもきっちり整備されておりますが、経済的には音楽コンテンツ市場も音楽を聴くハードの市場も実際は失敗したということでございます。
  これを受けて、ガチガチにすばらしい技術とすばらしい著作権保護を大きな声で言っていたレコード会社の幾つかが複製防止CDをやめる。11月17日、もうじきですね、やめるとついに宣言しました。ソニー・ミュージック・エンタテインメントは――ごめんなさい、これ、日付が書いていませんが、9月30日です。同社グループのレコード会社が発売するCDに導入してきたコピー防止の技術を段階的にやめる。これはエイベックスも同じようなことをいっています。すなわち、今までコピー防止、著作権がどうの、保護がどうのといっていたレコード会社が、商売にならないので、著作権保護をやめて、コンテンツを多くの人に聴いていただこうということに、事実、変わっています。これは、映像も同じことがいえまして、これからデジタルテレビを迎えるに当たって、著作権保護を映像でガチガチに固めてしまうと、また同じような失敗をしてしまうのではないかということを申し上げたいと思っております。
  では、日本の今後のデジタルテレビを中心とした映像業界はどうなるでしょうか、というお話でございます。
  もし、デジタルテレビ時代に向けて著作権保護のためにハードウエア、実際に見るテレビや、ひょっとしたら、それを録画する、最近の録画できるDVDプレーヤーなどがネットワークし、いちいち認証をとるような仕組みができたとしたら、音楽業界と同じことが起きます。よくわかっている人は使わない。わからない人は使わない。すなわち、誰も使わないということでございますね。法整備も万全です。技術も万全です。しかし、誰も使わない。これでは私どもコンテンツクリエーターも、もちろん、ハードウエアメーカーも、どなたも食べることができません。
  我々、多くのクリエーターが望んでいることは明白でございます。複雑なセキュリティーシステムやコピー防止ではなくて、適正に誰もが儲かる仕組み。これは当然でございますが、プライスをオープンにしていただきたいということでございますね。
  そして、複雑なシステムではなく、わかりやすいこと。いちいちインターネットにつながなければ、その曲が聞こえないということではなくて、非常にわかりやすいこと。次にも書いてあります。複雑ではないハードが多くの人に結局普及すると思います。BSデジタルテレビもいろいろできるといわれていますが、単純に簡単なハードがやっぱりいいと思っております。
  そして、ライフスタイルに大きな変化が生まれるようなハードを期待しています。今までの音楽や映像を見る環境ではない、違うハードができるということを期待しています。当然、それは活性化するということにもつながります。
  技術的保護がきついと、我々クリエーターとしてはコンテンツが出しづらいというのがあります。さまざまなセキュリティー認証があって、さまざまなところに登録しなければいけないということであれば、コンテンツが非常に市場に出しづらいということがあります。そして、もっともっと、マーケティングと我々はいいますが、業界内実証実験をすることによって、一体ユーザーが何を考えているのか。これ、私、クリエーターが望んでいることでございますが、クリエーターというのは、だれもが認めるユーザー中のユーザーでございます。多くのものをつくる人は多くのものを見ます。ですから、言葉を加えれば、多くのユーザーが望んでいることでございます。
  実際に使う人たちが複雑なセキュリティーシステムを望んでいません。安くてコンテンツを買えることを望んでいます。複雑なシステムを望んでいません。簡単なものを望んでいます。業界内実証実験をしていただいて、安全だとわかれば、簡単に使うことができます。このように多くのクリエーターが望んでいることは、逆にいえば、多くのユーザーが望んでいることでございます。ですから、映像や今後のデジタルテレビの著作権やコンテンツを考える場合に、ぜひユーザーやクリエーターの意見をもっと大きく聞いていただきたいと思っております。
  続いて、最後のまとめでございます。海外の例も含めた、法整備も含めたエージェントの可能性をぜひもっと調べていただきたいと思っております。私は、法整備の専門家ではございません。コンテンツをつくる専門家です。なぜ、アメリカではエージェントというものがカリフォルニア州法に基づき、あれほど強大な力を持ち、同時に権利処理をうまくしたか。ぜひ、徹底的に調査していただきたいと思っております。
  2つ目、技術的に厳しくすることへの警笛を鳴らしていただきたい。つくる側も、使う側も、あまりに厳しいと使いません。ですから、だれもハッピーにならないということがございます。
  3つ目、不正コピーなどは、ぜひ道徳心を向上していただくことを国家を挙げてキャンペーンしていただきたいと思っています。まだまだこれからデジタルテレビというものが普及し、コピーしてはいけないというものは、法整備ではなくて、道徳心をまず向上させることが大切だと思っております。ぜひ、これに取り組むためにはどうするのか、ということを研究課題として考えていただきたいと思っています。
  また、ネットの中でセキュリティー、ネット警察、ネットポリスなどもいわれておりますが、コストに合うかなど、これも実験してみなければわかりません。ネット警察が万全でありますが、小さい、たった 1,000万でつくられたコンテンツがコピーを防止するために警察機能が10億円かかってしまっては、これはとても見合いません。ですから、このバランスが一体どこにあるのかということを徹底的にマーケティングしていただく。それによって、我々もコンテンツをつくる立場としては非常に出しやすいというのがございます。
  時間も押しておりますので、簡単ではございますが、以上でございます。ありがとうございました。
塩野座長 どうもありがとうございました。短時間に重要な問題をまとめていただきまして、ありがとうございました。 それでは、もう時間はないんですけれども、多少の時間をつくりまして、ご質問を受けていただきたいと思います。 村井さん、どうぞ。
村井構成員 2つお伺いしたいんですけれども、複雑なシステムでなく、わかりやすい、というのを繰り返しいろいろなことで指摘されていますが、1つは、複雑さというメトリックをどういうふうに考えるかということなんです。それは、今のご説明だと、例えば実証実験だとか、そういう複雑さを感じるのは利用者なんだから、そのことをきちんと調べられるような努力をして、そのメトリックをきちんと考えろ、ということなのかなと思いましたけれども、それでよろしいですか、というのが1点目。
  2点目は、このコンテンツが、先日も、韓流というか、いろいろグローバルに展開をする。それから、アジアの中での知的所有権の問題というのは、よく各方面で指摘される。つまり、不正なコピーがすごく出回っていて、そのコンテンツ業界の利益が損なわれているんじゃないか、という議論がよくあるような気がしますが、一方では、日本のJポップだとか、日本の文化というのが非常にアジアの中で売れていたり、あるいは韓国のものが売れていたりするようなグローバルな展開というものも出てきた。それで、デジタル化の基盤の中では、こういったグローバルなコンテンツ展開というのは大変出てくる。私も自分の学生がそういうグローバルなコンテンツをつくるという夢を持っていけるような業界になってくれるといいなというふうに思っていますが、そういった視点の中で、先ほどのご意見の中の、要するに、コピーライトの保護がきつい、あるいはそういった道徳心の向上、こういった視点をグローバルなマーケットへ展開する日本のコンテンツ、例えばそういう視点から見たときには、この問題はどういうふうに解釈をすればよろしいのでしょうか、というのが2点目です。
高城代表取締役 1つ目、複雑なお話でございますが、僕は例にBSテレビというのを書きました。BSテレビというのは、鳴り物入りで始まって、実際にデータ放送もしくは自分の名前を入れるということができます。BSテレビ、きょう、どれぐらいの方がお使いになっているかわかりませんが、名前一つ打つのでも大変な作業でございます。確かに使えるテレビですが、使わないテレビでもございます。可能性として、技術としては使えます。しかし、誰も使いません。コンピュータのキーボード配列も全く違いますし、例えばご年配の方では文字が小さくて見えない。では、誰が使うのか。使えますが、使えない。このようなことをデジタルテレビではぜひやめていただきたいと思っております。これは1つ目でございますね。そのためにはどうすればいいのかということを徹底的に実験していただくことが重要です。
  2つ目。グローバルなコンテンツをどうするかというお話でございますが、インターネットこそ、自由に我々日本が世界にコンテンツを発信する最高のチャンスでございます。例えばこの前のアカデミー賞でこのようなことを司会者が言いました。アカデミー賞最優秀賞は「ロード・オブ・ザ・リング」でございましたが、司会者が生放送のテレビで、「(ロード・オブ・ザ・リング)はすごい。何しろ、ダウンロードに時間がかかるから」と言っているわけですね。これは完全にしゃれになっています。これはどういうことかというと、アメリカでは違法コピーされることが多いものほど、実際に売り上げが上がっております。ですから、違法コピーすると、そのコピーされたから売り上げが下がるということではなくて、違法コピーされるくらい、いいコンテンツは、実際には売り上げに結びついているということでございますね。これが事実でございます。
  ということは、我々が、これは言葉は悪いですが、インターネットを通じて世界の人たちに「自由にコピーしてください」と言うくらいの気骨で、もしコンテンツをクリエーターとして流せば、この後に実際にパッケージとして売れば、十分セールスになる。すなわち、違法コピーは、今、クリエーターにとって最大の宣伝の場でございます。ですので、インターネットを使って、我々は、もはや違法コピーとは言っておりません、宣伝としてこれをとらえるということにどう取り組むかということが、今、最大の課題でございます。アカデミー賞の司会者が言っているくらいでございますから。実際に、アメリカを初め、アジアを初め、私はもはやネットで不正というのはしゃれだと思っております。
塩野座長 どうぞ、山下さん。
山下構成員 著作権の処理が非常に大変だというお話ですが、それならば、もう著作権料で生きていくということをやめて、代替的なビジネスモデルの芽が何かないだろうか、それをお伺いします。例えば映画などですと、キャラクターで儲けをとることが本流になっているようですが、それは音楽ではどうだろう、ほかの映像メディアではどうだろうと思います。つまり、著作権がそんなに面倒なら「やめた!」といって、しかも収入が得られる方法はないだろうか、というのが質問です。
高城代表取締役 ありがとうございます。実際にそのことはアメリカではかなり進んでおりまして、これを考えている、新しいビジネスモデルを考えている人たちが、実は、エージェントといわれている人たちでございます。エージェントという人たちは、単純に、例えば映画であれば、映画に入った劇場収益、ほかにDVDのセールスだけではなくて、一体何があるだろうかということを常に考えます。単純にいえば、「007」などの映画などを見ていただくと、もう明快でございますが、BMWのような車会社が映画にスポンサードしているわけですね。ですから、そのBMWの車にジェームズ・ボンドが乗るわけでございます。映画にもともとスポンサーという考えはありませんでした。ところが、エージェントがそれをまとめました。
  このように、エージェントというのは常にいっぱいいろんなことを考えております。パッケージ販売などといわれている手法もございますが、日本にはそのモデルを考える人たちがいないんですね。これが最大の問題でございまして、ですから、アメリカでは、制作には携わってはいけない、権利と新しい権利を発生する専門家を育てるために、カリフォルニアの州法で制作と権利を分けました。で、エージェントというものが大変強大になってきたので、日本でももしかしたらそのようなものができれば、新しいコンテンツの産業がさらに活性化する可能性はあると存じます。僕の仕事ではないと思いますが、エージェントというものができれば、僕はもっとクリエーティブに本当は特化したいんですけれども、ほとんどクリエーティブではなくて、雑務にとらわれているのが日常でございます。
塩野座長 いかがですか。どうぞ。
小塚構成員 今、エージェントのお話が出ましたので、一つお伺いしたいのですが、お話の中では、カリフォルニア州法でエージェントというものが創設されたというようなニュアンスでおっしゃったと思いますが、もともとエージェントはハリウッドの方で自然に出てきたといいますか、商売になるから出てきた。法律は、むしろ、それを制作者から分けるという規制として入っている、ということではないかと私は理解しておりまして、要するに、なぜ、日本でエージェントが出てこないのか。何か障壁があるのかということなのですね。制度上の障壁があれば教えていただきたいというのが一つ。
  それからもう一つは、実は、企業法務などでもよくある話ですが、いざ、エージェントの方がそういうもので活動しようとすると、要するに、どれぐらいのフィーをいただけるか。そこが余りに小さいと、結局、マーケットとしては成り立たないということになるわけでして、そのあたりのクリエーターの方の、あるいはクリエーターがなさっておられる会社の実感のようなことをお話しいただければと思います。
高城代表取締役 アメリカにおける成り立ちを考えると、確かにおっしゃるとおりでございますが、日本ですと、余りにもテレビ局の力が強くなり過ぎて、このようなものが育ってないというのが現実だと思います。ですから、ここをどうするか考えなければ、新しいビジネスチャンスというのはなかなか生まれないというものが1点目。
  2点目、どれくらいのフィーということでございますが、大体キャスティングの場合だと10%以上持っていきますね。ですから、コマーシャルの契約ですと、今、日本のでかいタレントだと、大体1億円ぐらいしますが、そのうちの10%でございますから、書類をまとめて 1,000万円。これはビジネスチャンスとしては大変大きいところにあると存じます。
塩野座長 テレビ業界が強いんですか、それとも先ほどお話があった博報堂と電通が強いんですか。
高城代表取締役 テレビ業界でございます。テレビ局も強くあると思います。もちろん、広告代理店も非常に強いと僕は思っております。
塩野座長 両方ともやっつけないといけないですね。
高城代表取締役 はい、やっつけるかどうかはともかく……。
塩野座長 ありがとうございました。大変時間を費やしまして……。 私もいろいろ議論したいところはあるんですけれども、法律的保護より道徳心を高める具体的戦略というのは、もうおまえたちは引っ込んでいろ、そういう話だと思いますけれども。ただ、法律的保護がないのに、道徳心だけでいくとなると、これは戦前の日本に逆戻りでございますが、そういうことを言っているわけではないんでしょうね。
高城代表取締役 違います。
塩野座長 違いますね。では、安心しました。 大変長時間、いつも遅くなって申しわけございませんでしたけれども、いいご報告をいただきまして、また質問もそれに対して出ていまして、どうもありがとうございました。
  
  (3)閉会

塩野座長 それでは、きょうはこれで終わりますが、事務局の方で次回のご案内をお願いいたします。
安藤課長 次回の会合は、11月16日、火曜日、ちょっと朝早くて恐縮でございますが、9時半から、総務省8階、第1特別会議室、この会議室でございますけれども、ここで開催を予定しております。これまでは主にサービスの提供側の方々からのご発表をいただいたわけでございますけれども、次回は視聴者、利用者サイドの方々を中心といたしましてヒアリングをお願いできればと存じてございます。地方公共団体、教育委員会、消費者団体などを予定しております。もし、ふさわしい候補がおられましたら、事務局の方にまたご提案いただければ幸いでございます。以上でございます。
塩野座長 今日も遅くなりまして申し訳ありません。どうもありがとうございました。

  
  
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