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調査研究会


「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第6回会合 議事録



1 日時
  平成16年11月16日(火) 30分〜1215

2 場所
  総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者
  (1 )調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
  伊東晋、隈部紀生、小塚荘一郎、塩野宏、篠原俊行、野村敦子、羽鳥光俊、山下東子(8名)
  (2 )ヒアリング対象者
  岐阜市まちづくり市民グループ[祭]GIFU百人衆:和田代表
  社会福祉法人 プロップ・ステーション:竹中理事長
  主婦連合会:河村副常任委員
  三鷹市教育センター:大島所長
  札幌市:秋元情報化推進部長
  北九州市:安藤産業振興部長
  株式会社 ビデオリサーチ:山本常務取締役 ほか
  (3 )総務省側
  堀江情報通信政策局長、福岡情報通信政策局総務課長、安藤放送政策課長、
  南地上放送課長、今林衛星放送課長、江村地域放送課長、
  小笠原放送政策課企画官、今泉放送政策課課長補佐

4 議事
 (1 )開会
 (2 )議題
  視聴者・利用者の動向等
 (3 )閉会


5 議事録


(1)開会

塩野座長 それでは、ただいまから、デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会、第6回会合を開催いたします。本日は、新美さん、長谷部さん、舟田さん、村井さん、それから、急に濱田さんも病気ということで、欠席というご通知があったように伺っております。
 これまでデジタル放送を提供する側を中心としてヒアリングを行ってまいったわけでございますけれども、本日は、視聴者の視点からの放送のデジタル化に関するご発表、これが1グループ、それからデジタル放送の公的分野での利活用、これが1グループ、それから視聴率から見る視聴動向、この3つのサイドからのヒアリングを行いたいと思います。
 本日は、視聴者の視点からということで、主婦連合会、岐阜市まちづくり市民グループの代表の方、社会福祉法人プロップ・ステーション。それから地方公共団体、つまり、公的分野での利活用という点からは、三鷹市教育センター、札幌市、北九州市。そして視聴率の観点では、株式会社ビデオリサーチにお越しをいただいているわけでございます。順次、ヒアリングを行います。できるだけ多くの方からのご意見を承りたいということで、お声をおかけしましたところ、快くご参加いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたしましょう。
安藤放送政策課長 それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。お手元に、まず主婦連合会様からいただいております資料1、「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会 消費者の立場から放送のデジタル化を考える(要旨)」というものがございます。それから、クリップを外していただきますと、座席表、式次第に続きまして、資料2といたしまして、社会福祉法人プロップ・ステーションの竹中様からいただいております資料、縦紙のものでございます。それから、資料3、三鷹市教育センター所長の大島様からいただいております「サーバ型デジタル放送の教育ユーザーとしての期待と課題」という横長の資料でございます。それから、資料4、札幌市様からいただいております「札幌市における地上デジタル放送活用の方向性」横紙の資料でございます。それから、資料5、北九州市様からいただいております「地上デジタル放送に対する期待や取り組みについて」横紙の資料でございます。それから、資料6でございます。株式会社ビデオリサーチ様から提出いただいております「デジタル化に伴う視聴変化とその視聴率測定について」という横紙の資料でございます。それから、資料7、社団法人日本民間放送連盟様からご提出いただいております「地上デジタル放送による新サービスへの民放事業者の取り組みと課題について」という横紙の資料でございます。この資料7は、第3回ヒアリングの際に本調査研究会でいただきましたご意見を踏まえまして、社団法人日本民間放送連盟様より、民間放送事業者としての地上デジタルによる新しいサービスに対する取り組みと課題について具体的な事例を交えて紹介するとともに、新サービス推進に伴う課題について改めて資料をまとめたので提出させていただきたい、というご要請がございまして、本日、席上に配付させていただいたものでございます。また、構成員の皆様には、ご確認いただきました第4回議事録をお手元にお配りしております。ご確認いただければと思います。資料の関係は以上でございます。
塩野座長 それぞれご確認をいただきたいと思います。

(2)議題
   視聴者・利用者の動向等

塩野座長 それでは、ご案内いたしましたように、まず視聴者の視点からの放送のデジタル化に関するご発表をお三方からいただきたいと思います。河村様はまだお見えでないということでございますので、岐阜市で行われておりました地上デジタルテレビジョン放送のデータ放送や双方向機能を活用した行政サービスの提供実験に参加されていたモニターであり、岐阜市まちづくり市民グループ[祭]GIFU百人衆代表の和田浅治様から、モニターに参加された経験も踏まえて、視聴者からのデジタル放送への要望など、ご発表いただければと思います。ちょっと順序が狂いまして申しわけございませんけれども、よろしくお願いいたします。
和田[祭]GIFU百人衆代表 皆さん、おはようございます。私、岐阜県岐阜市から参りました、岐阜市のまちづくり市民グループの代表をやっております、[祭]GIFU百人衆の和田と申します。よろしくお願い申し上げます。
 私どもは、NPOと言いますか、特定非営利団体として岐阜市内でまちづくりをやっております。ご存じのように、岐阜市というところは、岐阜県の県都でもございますが、人口40万の都市でございます。その40万の都市も、今、地方のいろいろな問題、中心市街地の問題とかそういったことがいろいろございまして、元気になるまちを目指して、私どもは祭をテーマにまちづくりをやっている団体でございます。
 私どもは、今年の1月に地上波デジタル放送の実証実験、行政的に社会実験が行われた際に、その以前に、昨年から、岐阜のまちづくりの新しい方向性を示唆するために、自分たちの住んでいるまちが何とか、先ほど言いましたように元気になっていける方法として、どういうことに市民として取り組んだらいいのかということを市民レベルで考えてまいりました。その中で、岐阜の市内にこんないいところがいっぱいあるよということを、岐阜の三十六景、岐阜市内の市民が選ぶ、自分たちのまちのこんないいところをみんなで紹介し合おうよということを、実はインターネットとかホームページで募集いたしました。ファクスとか電話でも募集いたしました。
 岐阜市内に、岐阜大学と、行政、岐阜市と、それから岐阜市内の財界が共同で、産学官でつくりました岐阜のまちづくりセンターというのがございまして、これが3年ほど前にできております。そこを機軸にいたしまして、私ども市民グループ、いろんなグループが、まちづくりにかかわっている者が、そこに参画しておるわけでございます。そこで、どういうことをしたらいいかということで、先ほど言った、岐阜のまちをもう一回市民レベルで見直してみよう。岐阜は、ご存じのように、鵜飼で有名なところでございますが、金華山とか、長良川とか、いろいろな風光明媚なところがございますけれども、それは一般的に全国の方が知っておられる内容でございまして、市民としてもっと私どもの身近な周辺にすばらしい場所があるのではないか、もう一回見直してみようという視点から、市民レベルでの公募をいたしました。
 そうしましたら、昨年6月から8月の間に 262通の応募がございまして、こんないいところがあるよということを、インターネットのデジタル画像だとか、文章とか、写真とかということで市民から寄せられまして、その中から学識経験者の皆さんや、岐阜市のスローライフの実行委員会というのがございまして、そういった方々に三十六景として選んでいただきました。その三十六景、岐阜を代表する、岐阜市といった方がいいかもしれませんが、岐阜市内の三十六景を一つの外部に対する私どもの提言としてつくってみようというコンテンツをつくりました。そのコンテンツをつくり上げたのも、私もそれに関わってきたわけでございますが、その中でいろんな市民の方、それから行政の方、学校関係者の方、一緒になって取り組んで参りました。それを、地上波デジタルが昨年11月か12月ですが、東海地方で始まるということで、それに乗せていただくことになりまして、ぎふ三十六景が、社会実験の実証実験としてそのコンテンツが乗りました。
 市民の方にどのぐらい見ていただけるのかというところを実証実験をしたわけでございますが、その結果、2月の終わりまでの約3カ月間にいろんな社会実験をやっておりましたが、その中で一番たくさんこのぎふ三十六景を見ていただけた。三十六景を見ていただいた、一番たくさんの視聴者があったということの背景には、非常に高画質の非常にきれいな画像でそのビジョンが見られたということと、それから、それに対する説明が非常にわかりやすかったということ。そして何よりも、茶の間にそのデジタル放送が入ったことによる操作の簡単性というか、簡易性と申しますか、そういったところの利便性がありまして、放送局というと、今までは片方向で、放送局がつくったメディアのコンテンツを流すだけで、視聴者はそれを見るだけといった受け身の立場でございましたが、視聴者が自分で選んで、本をめくっていくというか、三十六景といういろんな写真か入っているわけでして、それを自分でボタンを操作していくと、1枚、2枚、3枚と、36枚の景色が見られる。こういったことで、岐阜市民の方々あるいは岐阜市民以外の実験に加わった方々から多くの視聴者の方の結果をいただきました。
 いろいろな実験をやったんですが、どんな実験をやったかというと、例えば、岐阜には魚市場とか野菜市場があるんですが、そういったところの市況を表示する。それから、図書館がございます、県と市立の図書館。そういったところの本の貸出し等をこの実証実験の中で行いましたが、いろんなコンテンツがあった中で、ぎふ三十六景が一番たくさん見ていただけたということで、視聴者から見ると、気楽にいろいろなものが見られて、また、自分のまちの再発見につながった。
 私どもは、それが終わった後、岐阜市内の市役所の方もそういった実証実験をやったよということを広報誌等で市の広報として流してくださったおかげで、いろんな波及効果が出てまいりました。今年度に入りまして、まず実際に三十六景に行ってみたいという市民の方がたくさん現れまして、その市民の方々でバスツアーが計画されました。そのバスツアーを募集いたしましたが、それがお断りするぐらいたくさんの方の応募がございました。私ども事務局としては大変驚いているわけでございますが、参加される人の平均年齢を見ますと、70歳前後の方が非常に多かった。高齢者社会を代表するような、そういう方々がゆっくりと自分たちのまちを見直すということでバスでツアーをいたしましたが、1日の日帰りのコースでございましたけれども、実際にバスで行って現地を見て、そして歩いて説明を聞く。地元の歴史家の方々とかそういった方に案内していただくということで、地上波デジタルで見た画像と現地の生の映像が皆さんの思うとおりにいっているということで、非常によかったなということを思っております。
 その後、地元の有力なある新聞社が、今度はその三十六景を風景画ということで絵にしてくれました。画家の皆さんが36地区に散らばりまして、それぞれの自分の持ち前の腕を発揮されて風景を描いていただいた。で、その絵画を、また絵画集としてまとめることができました。
 その後、私どももこの進展には非常に驚いておるんですが、さらに、今、岐阜の中央郵便局の方でそれを絵はがきにしてくれるという話になっていまして、市民レベルで写真を撮ってきて、それを絵はがきにしようという動きが現在行われております。
 もう一つの動きとして、その三十六景を回遊マップと申しまして、JRの岐阜駅からどういうふうに回ったらいいかというガイドマップを制作するに至るまで、今現在、岐阜県の県民共同型の活動として行われております。
 このように、地上波デジタルに社会実験で実証実験をやっていただいたおかげで、私どもとしては、まちづくりのコンテンツを新しい形で提供でき、そして、それを見ていただくことができるという大きな成果が上がっております。これも、地上波デジタルとインターネットとの違いを明確にあらわすものとして、昨年6月から8月まで、冒頭で申しましたように、インターネットで公募いたしましたが、そのときはやはりある程度限られた視聴者の方からの情報等でありまして、パソコンの操作が苦手な方々とかいうのがなかなか参加できなかったのですが、地上波デジタルとなりますとお茶の間まで届いているということで、テレビで簡単なリモコン操作で投票ができるといったところの成果も、この後、私どもが実際に肌で感じたところであります。
 やはり今、時代はデジタル化に向かっておりますけれども、私どもとしては、こういった今後の地上波デジタルの普及の中で、ぜひ地方のいろんなまちを何とか元気にしたいと願っておるわけでございますが、そういった中で地上波デジタルをうまく利用して、双方向性を利用したまちづくりというものに取り組んでいけたらなというふうに思っております。
 自分自身がモニターになり、実際にそれを触り、見てきた感想から申しますと、操作性としてもこれからもっと簡単になっていけば、より普及はわかりやすいというか、そういったことがこれから求められる。また、見ておられる方々が高齢者の方々ということも結構ありまして、茶の間でそういった双方向性が実現されるとなると、普及も大きく波及するのではないかと期待しております。
 今後の期待といたしましては、地方のいろいろなもっと身近な情報、それから、ご近所の困り事とか、そういった地方自治の中で情報がもっと身近なものとならないかということでございます。インターネットの場合は、ある程度、パソコンの操作ができる方ということになって参りますが、茶の間にテレビが入ってきて、そこに地上デジタルが入って参りますと、そこで双方向性が実現できて、そして、その中で近所の身近なまちづくりの情報とか、私どもが出したい情報とか、そういったお伝えしたいものがどんどんそこで使えて、そして、視聴者の方からのご意見もいただけるような形が地方で行われることによって、今、国や地方が困っております財政的な問題とかそういったところでもっと工夫すれば、お金をかけなくてもできる方法がいろいろ見出せるのではないかなというふうに思っております。
 将来的には、私ども、まちづくりをやっている市民、あるいは学校の先生方とか、それから行政の方と一緒になって、そういったメディアの内容を精査いたしまして、情報発信ができるような仕組みが地方で生まれれば、大変ありがたい。それをまた地上波デジタルに乗せていただけると、大変有意義な、また有効な活用として普及していくのではないか、というふうに期待をしております。
 私自身はまちづくりをずっと長年やってまいりまして、特に祭をテーマにやってまいりました。岐阜には、春の道三祭りと秋の信長祭りという、「国盗り物語」で有名なご当地でございますので、その2つの大きな祭がございます。祭は、ご存じのように、まちを喚起するもの、そして人々の心を揺さぶるものとして大きな効果がございます。まちの活性化の中に祭は非常に重要なファクターになっておりますが、そういった祭の情報にいたしましても、市民レベルでもっと身近な情報として茶の間に伝えたい。そして、今、祭りに参加していただく方、参画していただける方を多く増やすこと、こういったことが大きなテーマになっております。祭りは見るものではなくて、参加するものだという視点から、そういった参加を呼びかける、参画を呼びかけることこそ、地域の情報の、あるいは地域の活性化につながるものと私は信じております。
 そういった中で、今後の地上波デジタルの活躍というか、役割というのは、大変大きなものになるのではないかなと期待しておりまして、ますますの地上波デジタルの普及が私どもの地方、あるいはいろんな地方との情報の交流にもつながっていけるのではないかと期待をしております。そういった意味で、昨年からやりました地上波デジタルの放送のモニターといたしまして、また、自分がつくったコンテンツをやってきた者といたしましても、こういったデジタル放送の普及にはさらに期待をするところでございます。
 以上、簡単ではございますが、私の発表とさせていただきます。よろしくお願いします。
塩野座長 どうもありがとうございました。いろいろ質問もあろうかと思いますけれども、後にまとめてさせていただくことにしまして、続きまして、竹中ナミ様にお願いしたいと思います。竹中さんは、総務省情報通信審議会委員で、ITを活用して障害を持つ人たちの自立と就労を支援する社会福祉法人プロップ・ステーションの理事長でいらっしゃいます。障害を持つ方のお立場からのデジタル放送への期待や要望など、ご発表いただければと存じます。よろしくお願いいたします。
竹中社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 皆さん、おはようございます。プロップ・ステーションの竹中ナミねぇです。資料はA4、3枚物なんですが、その3枚目に「チャレンジドや高齢者が元気と誇りを持って働ける国に」という私たちの活動のミッションに当たるような文章を添えさせていただきました。
 今、画面の方に出ているんですが、プロップ・ステーションは、一人でもたくさんの方が、女性であれ、高齢者であれ、障害をお持ちであれ、ITを活用して社会に参画をしていただき、できればそれをお仕事として生かしていただけるような日本の国にしたいなということで、この14年間、まだパソコンは一般家庭になく、インターネットも世の中にないという時代に、コンピュータとパソコン通信のようなものを使って活動を始めたボランティアのグループでした。
 今、画面に出ていますのは、「こころWeb」というホームページなんですけれども、こちらの中の、電子福祉機器に関するさまざまな疑問に答えます、という中のネットワーカー事例集というところをちょっと見ていただきたいと思います。すみません、お願いします。
 口で、大変障害の重い方々がコンピュータを使って社会参画をするとか、あるいは働くとかいっても、なかなかわかりにくいものですから、このページを見ていただいてイメージをわかせていただければうれしいかと思って、きょうは資料として持ってきました。一番上の北海道、今本さんという方をクリックして見ていただけますでしょうか。この方は、筋ジストロフィーなのですけれども、このようにベッドに上を向いて寝たような状況の中で、呼吸器等々も必要だというんですけれども、やはり自分の好きな音楽だとかテレビなどを楽しむと同時に、コンピュータを使ってインターネットでコミュニケーションをとるということをされている方です。このように、さまざまな医療技術とリハビリ技術と、そしてITの技術がドッキングすることによって、今までだったら、寝たきりになってかわいそうだね、社会から隔絶した状況だね、家族の介護だけが必要なんだねとか、あるいは病院に入院したきりなんだね、という方々が、まさに社会参画ができるようになったという事例です。
 あと、話を続ける間、順番にクリックをして、ちょっとずつ見ていただけるようにしていただければありがたいなと思います。お話は、このまま続けさせていただきます。
 私がプロップの活動を長年する中で、今の地上デジタルに非常に大きな期待を抱いているわけです。それは、今も見ていただいたように、コンピュータというのは相当進んできたとはいいながらも、すべての人の力を発揮できるかという部分においてはまだまだ発展途上にあると思うんですけれども、この地上デジタルという、つまり、家庭にあるテレビがコンピュータと同じように社会につながる窓となり、あるいはその人の力を社会に引き出す道具となるという意味で、私は大変大きく期待をしています。
 今は、本当に血の汗がにじむような努力に基づいて重い障害を持つ方々がコンピュータを学び、そして自分のできることを世の中に発信をしたり、それで音楽などを楽しんだりはしているわけですけれども、それがやはり家庭に入ることで、今、先に発表のあった和田さんもおっしゃいましたけれども、日常的に、別に障害者に限らず、子育て中のお母さんであれ、高齢の女性、男性であれ、お年寄りになった方であれ、情報を自分で簡便に手に入れて、そしてその情報をもとに、次、自分は何をしようかというような計画を立てたり、あるいは希望を持って社会に参加をしていただける。そういう意味で、私は、今のように、まだ敷居の高いところもあるIT、コンピュータ技術が、今、e−Japan からu−Japan へというふうにいわれていますけれども、ユビキタスでユニバーサルな道具である一つのシンボルとしての地上デジタルというふうになっていってほしいと考えています。
 もちろん、まだまだ価格が高いとかいろいろな理由で、あるいはどのように使えるかわからないという疑問を持たれている方もあるかと思いますが、14年前から、このように大変重い障害を持つ方々がコンピュータや通信技術に期待を持って、それを使える努力、勉強を続けながら、社会に参画をし、なおかつ、かなりの方が相当なお仕事まで現実にはできるようになっておられます。そういう現実を日々目にしているプロップ・ステーションあるいは私個人としては、やはり一日も早く地デジが適切な価格で一般の方々のもとに届けられ、そして、その人一人一人の情報の受発信の道具になってほしいなというふうに思っています。
 資料2の1枚目と2枚目に、私のプロフィールを付けさせていただいているんですが、これは別にいろんな役をやっていることを自慢しようと思ってつけているわけではなくて、日本では障害の重い方というのは、今まで働けない人というか、社会に参画することすら難しい人というふうに言われていたわけですね。そういう方々が社会に参画するだけではなくて、ITを使ってちゃんとお仕事のできる、つまりは納税者にもなっていこう、タックス・イーターからタックス・ペイヤーになろうというようなことを目標に掲げて、このプロップ・ステーションの活動を発足したときに、そのとき、やはり単に私個人の意思とか福祉関係者の努力だけでは、これは成し得なかったわけです。
 つまり、例えば大変重い障害を持つ方は、当時は、厚生省から福祉の給付の対象であると言われていました。ただ、その方々が働きたいと思ったときには、そのテーマは労働省だといわれ、通信を使ってやっていきたいんですというと、それは旧郵政のお話であり、パソコンやソフトウエアというと、これは旧通産省の範疇に属することであり、私たちはタックス・ペイヤーにもなりたいというと、それは大蔵省ですというように、すべてのことが国の政策、あるいはそれを受けた形でさまざまな政策の行われている自治体の福祉行政とかにもかかわっていたわけです。
 そういう意味で、私自身は、やはり多方面の場所にいらっしゃる方々、特に日本の政策をつくられる方々に、私たちのミッションを伝えて、そういう方々に理解をしていただきながら、広く世論を喚起する形で、「チャンレンジド」と私たちは呼ばせていただいておりますが、重度の障害を持つ方々も社会参画をしていっていただきたいと思っていました。
 おかげさまで、この14年間、その想像をはるかに超えるスピードでITが進展し、今、事例を見ていただいているように、ここに写真と名前が出ている方は、ご本人が公開をされることを了解したごく一部の方なんですけれども、このような方々が全国各地で活躍され、ますますITに期待をしています。彼らが口癖のように、パソコン通信の時代は、パソコンや通信というのは僕たちの打出の小槌だと言っていたんですが、最近では、インターネットの時代になりまして、彼らが言うのは、まさに人類が火を発見したほどの道具である。つまり、自分たちが本当に人として誇らしく尊厳を持って生きていける最大の道具である、というふうにも彼らは言っております。
 そういう中で、ぜひ一日も早く、それが特別の機械ではなくて、日常の生活の中にあるテレビというような道具で同じようなことができる。これは決して重い障害を持つ方々だけではなくて、例えば子育てに悩むお母さん同士が井戸端会議をしたり、子育てのことをおしゃべりをしたり、あるいは家族の介護をされている方々が、どうしても介護をしている家族というのは、なかなかよそのつながりを持てなかったりするんですけれども、テレビを通じて仲間を募って介護情報を交換したりする、あるいは専門家のもとへ行くのではなく、専門家からその場所でアドバイスを受けながら介護に携わるといったようなことも必ず出来てくると思っています。
 特に私が重要だと思っているのは、今年も災害が大変続いているんですが、私は神戸で阪神大震災も経験しました。私自身は家が全焼して、仲間も全部、被災者になったという経験がありましたが、そのときに私たち、既にITを使っていたチャレンジドの仲間たちは、インターネットがまだないパソコン通信の時代でも、既に震災のさなかで、安否情報だとか、どこでお水がもらえるんだろうといったようなこととか、どこそこの養護学校でおしめがなくなっちゃったよとか、いろんな情報を受発信して手助けもできたんですが、何よりも痛恨の極みだったのは、亡くなられた方の6割が家庭介護の高齢者であったということでした。
 つまり、障害を持つ人たちは、日ごろから自分たちのネットワークを一生懸命つくっていたんですが、家庭介護の高齢者というのは、介護を受けているご本人も、あるいは介護をしているご家族も、ほとんど点で存在をしていて、助け合いのネットワークは残念ながら持てていなかったということだったんですね。ここが大変痛恨の極みでありましたが、あれから10年経っての今年の震災でも、やはり高齢の方々の被害が多かった、あるいは亡くなられた方も多かったというようなことを聞くにつけ、もっともっと私たちはITを上手く活用し、日常の生活の中でいろんな人たちが助け合いのできる、あるいは支え合いのできるふうにしていかないといけないのではないかなと改めて思った次第です。
 ということで、私の立場からは、地上デジタルに対して大きな期待と、それをどのように使っていくかということを、国民自身が、ユーザー自身が提案していけるような、そういう活動を私たちも続けていきたいということで発表させていただきました。どうもありがとうございます。
塩野座長 竹中さん、どうもありがとうございました。それでは、先ほど、ご案内いたしましたように、引き続き、主婦連の河村さんからご発表をいただき、その後でお三人まとめての質疑に移りたいと思います。河村さん、よろしくお願いいたします。
河村主婦連合会副常任委員 きょうは遅れまして申し訳ございませんでした。主婦連合会の河村です。一消費者の立場から放送のデジタル化ということに対して考えを述べさせていただきます。
 まず最初に、地上波デジタルの関係の会合に出ていたことがあるんですけれども、そのときから色々と頭の中に疑問がわいてきたことがあります。パンフレットなんかに、「チェンジ、デジテレ」とか書かれていまして、いろんなことができる、あれもできる、これもできる、テレビはもう全く変わってしまうんだ、といううたい文句があるわけですね。私は、一番最初、あまり知識がない段階でそれを見て、非常に憤慨したといいますか、日本全国のおじいちゃんやおばあちゃんは本当にかわいそうだな、と思いました。ここにも書きましたが、だれにも使えて一番易しい家電で、使い方を誰かに教えてもらう必要もないし、何のプレッシャーもなく、オンを押して、オフを押して、チャンネルを選んで、音の大きさぐらい選べばいい。で、とても心安らかに使えていたし、それはおじいちゃん、おばあちゃんだけでなく、私なんかもそうですが、何も考えたくないときぐらいしかテレビを見ないという人は、私の周りにも意外と多いんですね。積極的にかかわるという存在ではない、かわいらしいテレビという家の中にある機械を、そんなあれこれ、こちらから働きかけたり、答えたり、いじったり、設定したりしなきゃいけないものにするなんて、できる人でも面倒くさいという人もいるでしょうし、また、できない人にとっては、今まであんなに易しい機械であったものが、一番身近だったものが、そんなふうになってしまって、かわいそうにと。強制的に日本全国の家のテレビの存在をそんなふうにしてしまうなんで、随分だな、と最初に思ったわけですね。
 ところが、いろいろそういう方面の関係者の方とお話しして、難し過ぎるじゃないか、そんなに難しくしてかわいそうだと言いますと、いや、テレビは変わらないんだ、というよりも、全然変わらないつき合い方もできるんですよと言われたわけです。特に関係者の中心人物ともいえる方がおっしゃったのは、地上波デジタルの受信できる大きなテレビを周りの人にお勧めして、買って後悔したと言われたことがない。みなさん、ほんとに画面がきれいだねとおっしゃる、と言われたんですね。
 それは随分違うなと。画面がきれいだということと、テレビというものが根本的に変わるというのは、全然違うことなんですね。一体どちらなんだろう。どうも最近は、画質と音質がとてもいいということを、何だか前面に押し出していて、でも、将来的にはこんなこともできる、あんなこともできるというのは説明しているようです。これは多分、現時点であまり機能的に実現されていないということと、あと、多分買っている人の動向を見ていらっしゃるんだと思うんです。大きいテレビできれいな画面やいい音を聞きたいという人が、今、買っているので、高音質、高画質というのをかなり前面に最近は打ち出している。つまり、買ってくれるならどっちでもいい。どっちに思われても構わないし、そんなに深い考えはないのではないかとすら思えるんですね、何度か地上波デジタルの関係者の方のお話を聞いていて。
 先ほど、プロップ・ステーションの方のお話があったので、関連して言えば、では、テレビをパソコンの代わりにしてしまうのか。パソコンは買わなくていいのか。パソコンも要るけど、テレビもそうやっていじらなきゃいけないのかとか、イメージが私にははっきり湧かないんですね。パソコンというのは、持ちたい人が持てばいいし、買いたい人が買って、どんな高齢の方でもチャレンジしたい人はすればいいと思うのですが、テレビというのは 100%普及しているものですから、その性格をパソコン化するということがいいのかどうか。私にはあまりいいことのようには思えないんですね。
 結局、インターネットは誰でもサイトが持てるわけですが、デジタル放送は放送事業者が番組を流すということですから、内容が今後どうなるのか。2011年にアナログが終わるということが決まっているのに、どんなふうになるのか。こんなこともできる、あんなこともできるというパンフレットだけで、分からないまま、終わることだけが決まっている。で、今はハイビジョンが見られて、番組表が見られるという程度のことしか満足に実現していないと思いますが、そういう基本的な部分以外の機能はどうなっていくのかはっきり見えない。最終的に、皆がデジタルのテレビに買い換えた後に、そんなに満足いく使い方が、それこそ2011年はおろか、もうちょっと先でも実現されてなかったとしても、もうその時には誰も文句がいえないわけですね。ちょっとひねくれた見方かもしれませんが、私の周りの人たちの多くがそういうことを言っています。
 また、人に優しいとか弱者のためにということも、かなりパンフレットなどや報告書でも謳われていますけれども、民放というのは、そういう公益性ではなくて、人気がある番組を作って利益を得る企業であると思いますから、人気がなければ、そのサービスは定着しない、したがって、少数派とか弱者のことが顧みられるなんていうことを過大に期待できないだろうと思います。。その部分は、NHKには期待できるのかもしれませんが、どうなのでしょうか。
 あと、人に優しいというようなことが謳われるときに、大体、字幕放送、音声をゆっくりにするというようなことが言われて、何か具体性に欠けるといいますか、その2つ以外にあまり聞いたことがないんですね。何かキャッチフレーズは大きいんですけれども、人に優しいデジタルテレビ放送というのはどんなのかというのを、もう少し具体的に表してほしいですし、それが実現するのか、いつ実現するのかということも、皆さんに買ってほしいと普及を進めるのであれば示してほしい。
 それから、ハイビジョンということ、先ほども言いましたけれども、高画質というのが、今、一番の売りみたいな感じになっているんですが、確かに見たときにきれいなんですが、今やっているのはサイマル放送ですか、普通のテレビ番組をそんないい、きれいな画面で見る必要をあまり感じないんですね。ほとんどのものに関しては。見る価値があるものもありますが、大多数はそんな画面で見なくてもいい内容ばかりを見ることになって、つまり、番組の質ということを考えていただかないと、わあ、きれいというのは、多分、すぐに飽きると思うんですね。バラエティー番組とか、コマーシャルとか、それこそ、ニュースキャスターの顔とか、そんなに高精細な画面で見る必要を全く私は感じません。ですから、やっぱりハイビジョンだからというよりも、ハイビジョンで見る価値があればこそのハイビジョンなのではないかと思います。
 あと、これも私の周りに非常に多いんですが、高画質も、双方向も、マルチチャンネルも必要がないと思っている人は意外と多いんですね、実は。それで、なぜ、デジタル化しなければいけないのかということを、多分、私の関係者もいっぱい言ってきたと思うんですが、やっぱり真剣にまず説明をしてほしい。いいものだぞという感じではなくて、なぜデジタル化しなければいけないかを真摯に説明した上で、ご協力をお願いしたいというようなアプローチをした方がいいと、これはそう言っていただきたいというよりも、むしろ、普及を促進する側に立って考えても、そういうふうに言った方が理解を得られるであろうと思うわけです。私の周りにいるような、そんなもの必要ない、今のままで十分テレビはきれいだし、そんなに見る暇もないしという人には、だって、いいんだから、と何回言われても、なるほどと心変わりはしないので、むしろ、こういう理由でこういうことだから、国民の協力が必要だ、ということを説得した方がいいのではないかと思います。
 それで、ここに書いたのは、ちょっと言葉が悪かったかなと思っているんですけれども、良いものであるから、それを買わせることは正しいというのは、間違っていると思うんですね。それが良いものか、悪いものかは、皆さん、それぞれが決めるけれども、それが本当に良いものだったとしても、全員に買わせていいものなんてないと思うんです。今、買っている人はそういうものが好きな人たちだと思うのですが、一方、そういう説得の仕方では説得されない人々、どんどん2011年に向けて、買わないで残っていく人たちは、そういう人たちですから、デジタルテレビは良いものであるとか、今後、こんな便利なことができると言い続けても、理解を得られないのではないかという気がいたします。
 それから、価格は現時点でちょっと問題外に高いと思っています。こんなにきれいでしょう、と見せていただくものでも、ものすごく大きくて、狭い部屋には全く必要ないですし、あんなものを近くで見たくもないような詳細な画面ですから、高いテレビを買えない多くの人のことをもっと真剣に考えていただきたいんですね。お金がないなら安いチューナーで地上波デジタルが見られる、それでしのいでおけというのなら、その人たちにとってのデジタル化のメリットとは何なのかというのをきちんと示していただきたい。本当に昔のアナログテレビに仕方がなくて最後にチューナーをつけてデジタルになった人に、テレビのデジタル化とは何なのか、何のためなのか、ということを説明できなければいけないのではないかと思います。
 それで、最後の、消費者に伝えるべきことと書いたことですけれども、先ほども言いましたけれども、なぜ、デジタル化が必要なのか、という説明を最初に立ち戻って誠実に根気強く説明をしないと、まだまだそれが行き渡っているとは到底思えないんですね。2011年に、今使っている普通のテレビが使えなくなるということも分かっていない人は意外なぐらい多いです。テレビをあまり見ない人は、それを知らなかったりしますし、あと、いろいろとホームページで情報提供していても、インターネットなんか全く見ない高齢者など、日本津々浦々の方々がそれを知る必要があると思いますので、デジタルテレビというのは何かすばらしいという宣伝ばかりではなくて、アナログのテレビは使えなくなるというような、ちゃんとした情報を伝える術を考えていただきたいと思います。それから、自分の地域はいつデジタルが見られるようになるのかという正しい情報も、すごく大切なことだと思うので、そういう情報が得られるという状態にしていただきたいと思います。ただ、デジタルテレビが見られるようになったと同時に、すぐにデジタルテレビにしなければいけないというわけではない、ということも伝えるべきではないでしょうか。よく理解していないと、何か慌ててやらなきゃいけないと思っている人も中にいるような気がします。そういう、普及促進オンリーの方向ではなくて、ニュートラルな立場で説明をしてアドバイスをすることが必要だと思います。
 最後のところが、今、私が一番感じていることなんですけれども、今、持っているテレビのタイプによって、何かとても複雑な組み合わせがあるわけですね。こういう端子がついているものは、テレビを買い替えなくてもこれをつければハイビジョンが見られるとか、このテレビだったら見られないとか。とにかく端子ですとか方式によっていろいろな組み合わせがある。それは一般の人々にはあまりにも難しいことで、そんな買い物を日本全国の人にさせようとしているのならば、それに対するフォローというのが本当になければいけない。
 その人にとって何が一番いいか考えることよりも、ボンと高いものを買わせれば、必ず地上波デジタルは見られるわけですから、電器屋さんはそういうふうに言いがちであろうと思います。そうではなくて、一番軽い負担で一番良い結果が得られる、しかも、どういう選択肢があって、あなたはどういうクオリティーでそれを受信したいと思っているかというところを考えてあげて、その人の立場になってアドバイスしてあげる人が必要だと思います。すごいプラズマテレビや大型の液晶テレビをドーンと買える人たちが、今は、買っていると思うんですけれども、そうじゃない多くの人々、あまり余分なお金を持っていない人たちにとって、そういう難しい買い物を強いる以上は、負担を軽くして良い結果を招いてあげたいという、そういう利害が絡まない人がアドバイスするというようなことがなければ、多分、無駄な買い物が日本全国で行われることになって、無駄な買い物をしたことすら気が付かずに、高い出費を強いられる人がいっぱい出てくるに違いないと私は思っています。ですから、年金で暮らしている方、母子家庭など、低所得な人たちも、みんながテレビを持っているわけですから、デジタルテレビってすばらしいという感じのテンションやトーンばかりでなく、そういうことをもっと、地味な方面を力を入れていかなければ本当の普及ということにはならないと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上、消費者としての、ちょっと夢のない意見でしたけれども、述べさせていただきました。
塩野座長 お三人の方から、それぞれの立場を率直にご反映いただいたご報告をいただきまして、大変ありがとうございました。そこで、質問の方も、それぞれの方についてということにもなろうかと思いますが、あるいは共通にお三人にご質問ということでもよろしゅうございますので、しばらくの間、質疑の時間に充てたいと思います。どなたからでも結構でございます。どうぞ、山下さん。
山下構成員 竹中さんへの質問になります。パソコンの発展が障害者の方々にとってプラスになったということが、お話を伺ってよくわかったのですが、これと放送との切り分け、ないし放送との同一化というか、統合化というか、そのあたりをどういうふうにお考えでおられるのでしょうか。今のパソコンの便利さが放送にも移る方がいいというふうにお考えなのか、パソコンがもっと放送化するといいというふうにお考えなのか、そのあたりをもう一度確認させていただきたいと思いました。
塩野座長 どうぞ。
竹中理事長 私は技術者ではないので、よく分からないんですけれど、恐らくその両方だろうと思うんですね。パソコンがテレビに近づく部分もあれば、放送の方がパソコンに近づくという部分もあろうかと思います。ただ、私が今回、お話の中でポイントにしたかったのは、一つは、どのような人も発信者になり得るといいますか、発信者になることに非常に大きな価値がある時代がやってきたというふうに思います。それは、もちろん、誰でもが何でも好きなことを言えるので、怖い時代になったという言い方をする方もおありかと思いますけれども、今まで世の中に自分の存在や自分が何ができるということをなかなか発信することが難しかった、あるいは人に何かを相談してみたいというような悩みを発信することが難しかったというような人たちが、自ら発信者になれるという意味では、しかも、その窓口が家庭のテレビになってくるというのは、私は一つ大きな期待感を自分の経験からして持っています。
 それと、その発信者ということで、先ほどの仕事という部分にぜひ繋がっていくようにということで、私たちの活動をしていたんですが、今の主婦連合会の方からの話は、あくまで受け身でテレビを見ていらっしゃる、しかも、そのテレビを見ることはそんなに重要ではないけれども、テレビがあるから見ているんだよ、という層の方々が、今、どう感じていらっしゃるかというご意見でしたから、そういう意味では、私たちのように、社会とつながることを非常に切実に思っている立場の者たちとは、当然、意見が違って当たり前ですので、今、お聞きしたお話は尊重しながら自分の発言をしたいとは思いますけれども、例えば今おっしゃっている放送というのも、放送を見る側だった人たちがコンテンツをつくる側に回れるんですね。
 つまり、先ほど、震災の話をしましたけど、震災のときに実は大変困った状況に置かれている地域の方々に、既にプロップ・ステーションでパソコン通信などをやっていた仲間たちが、安全の情報とか、安否の情報とか、物資の情報とかを流したという経験を持っているんです。そういう意味では、この人は障害があるから受け身で助けてもらう側で、障害がないから助ける側だという、この図式を完全に覆すといいますか、その人がいつでも助ける側になったり、助けられる側になったり、その状況に応じて、障害の有無にかかわらずできるということが、双方向のすばらしさであり、なおかつ、ITの最大のポイントなのかなというふうに私は思っています。
 そういった状況が家庭のテレビというものを介して行われるということが、先ほど言いましたように、とかく高齢者を介護されている家庭などは孤立をしてしまうわけですけれども、そこを繋いでいくこと、あるいはそういう方々が身近な相談ができる窓口など、その相談の相手がもしかしたら他の介護をされている介護経験のある方であったり、あるいは自分自身が介護を受けている方かもわからないんですね。そのような時代が一日も早く来てほしいなと思いながら、私はプロップの活動をしていますが、この地上デジタルは、残念ながら、今、お話があったように、価格が高い。でも、きれい、とかいうような当たりばかりのことが世の中に伝わって、そういう意味では、まだまだこんなことをやっていきたいよ、こんなことができるんだよ、という部分の発信が少ないのは、私たちももっと頑張らねばならないというふうに思っています。
 ただ、受け身でテレビを見ているということと、アクティブに道具を使うというのは、ある意味、こんな言い方をしたら誤解を招くかもわかりませんけれど、主権在民なのか、そうじゃなく、お上任せなのかの、この大きな違いだと思っているんですね。で、私たちは、日本の国が国策としてこのようなことを導入されるのであれば、私たち自身をどう向上させて、日本の経済にも、それから人の意識にもプラスになるような方向にするためには、この国策をどう使うかというのが、私あるいはプロップ・ステーションのスタンスです。
 ですから、お国がああしてくれないなら困ったね、こうしてくれないなら困ったね、というスタンスに立った瞬間に、私たちは主権を失うと思いますので、こういう方向でやるならば、ぜひ、すべての人が力が発揮でき、支え合って、なおかつ、今まで働くことは無理だといわれたような方々も、そのコンテンツをつくる側に回り、お仕事につけるというような時代に、この地デジを持っていきたいというのが実は私の意見であって、持って行ってくださいではなくて、そのような地デジを構築していく一人になりたいなということです。
塩野座長 どうもありがとうございました。今のご発言、それぞれ、ご出席の皆様からご意見のあるような大変重要なポイントではあると思いますが、今日ここでその問題をやり出しますと到底時間が足りませんので、もし、河村さんの方から、何か竹中さんのご発言に消費者の方からということでご発言があれば、どうぞ。
河村副常任委員 一言、よろしいですか。私の本意がちょっと伝わっていなかったかなというふうに思いますのは、私は、受け身で見ていればいいということではなくて、多分、その部分はパソコンが担うものだと思うんです。まさに山下構成員がおっしゃったように、一見、テレビなんですけれども、パソコンの機能が入ったら、発信したりとかインターネットに繋がったりということがあるでしょうけれども、私なりの知識の想像ですけれども、双方向といっても、テレビが与えてくれる双方向は、多分、お仕着せの双方向しかできないだろうと思うんですね。
 ですから、先ほども自分では言ったつもりだったんですが、パソコンが要らなくなるのか、それともパソコンもテレビも両方必要で、どっちも双方向だの、インターネットだのとなってしまうのか、その辺がはっきりしない。私も、ITがなければ参加できない人が参加できているということは、全くすばらしいことだと思います。そしてそれはパソコンならではの、インターネットならではのすばらしいところだと思っているので、あえてここで、誰でも発信できるというような夢のようなことを地上波デジタルでいうことは、ちょっと誇大広告のような気が私にはするので、夢のない意見のように思われたかもしれません。
塩野座長 羽鳥さんの方からちょっとコメントがあるそうです。
羽鳥座長代理 デジタル放送の特徴というのは幾つかあると思いますけれど、一つは、一番大きいのは電波の有効利用だと思うんです。その電波の有効利用を図りつつ、画質がいい、音質がいいというのが2点目かと思いますけれども、3番目に、先ほど来、岐阜県における地上デジタル放送のデータチャンネルを使った地域からの情報発信というようなご紹介を頂戴いたしましたし、プロップ・ステーションにおけるパソコンの活動との比較、それを補強するような力があるのではないかというご紹介を頂戴したし、あまり難しいものは要らないよ、というご紹介を頂戴したように思いますけれども、パソコンと地上デジタル放送というのは極めて似たところがございます。
 デジタル放送のデータチャンネルというのは、Webサイトの一番最初のホームページみたいな役割、あるいはポータル・サービスというようなことをいうことがありますけど、そこのところに行くといろんなことがわかる、だけど、詳しいことは分からんということで、それからリンクを張って、あちこち探しに行くという役割に似たところがございまして、ある意味では、それをプッシュ型、黙っていても提供してくれる。片方は、それから興味を持って、もっと詳しく探してみたいといったときのプル、そういう役割を持つとすると、放送というのは、本来、一方向で、プッシュ型のものであります。それをインターネット等の通信機能等をつけ加えてプルするということで、地上デジタル放送ないしはデジタル放送の衛星の方にもデータチャンネルがございますけれども、それを使っていこうというのが、多分、デジタル放送とインターネットの強い結びつき。それを称して双方向という言い方をするのかと思いますけれども、その辺でお互いに補完し合いながら連携していくということなのではないかと思っています。
塩野座長 そういった双方向の可能性を、もう少し市場の問題も考えなければいけませんけれども、要するに、民放の場合だと、それでペイするかどうかという問題もありますので、そういった点も含みながら考えていこう。まさに開発していこう、というのがこの研究会でございますので、それぞれのお立場からの利活用の方法といったようなものもご提言いただければというふうに思います。
 それから、私の方で一つだけ伺わせていただきたいと思います。岐阜の和田さん、大変面白い計画というふうに承りました。先ほどのパソコンとデジタルとの関係と同じような質問なんですけれども、CATV、ケーブルテレビジョンですね、岐阜あたりもかなり発達していると思うんですけれども、そしてCATVは地域密着型が売り物で出ていますが、その辺の関係はどういうふうに現在なっているのか、あるいは今後どうなっていくのか。
和田代表 岐阜にもケーブルテレビジョンがございます。ケーブルテレビジョンの場合は、CATVの場合は、やはり片方向のチャンネルというか、向こうからの情報を、放送局側のコンテンツで流れてくるのを視聴者は見ていくということにもなります。デジタル放送の場合は、先ほど、先生がおっしゃったように、ある程度双方向性がありまして、自分で選べるという選択肢の違いが大きく違うというふうに思います。
 CATVの場合、地域の情報をより密着型で、例えば岐阜地区の場合ですと、地上波デジタルで流れてくるのは、いわゆる東海地方、名古屋を中心にする情報提供が多うございます。ところが、この11月からNHKの岐阜の放送局が地上波デジタルを流すようになりまして、その結果、岐阜地方の身近な情報がCATV以上に流れてまいりまして、特に私どもが取り組んでいるまちづくりの情報とかそういうものも入れてくれるようになってまいりましたので、非常にありがたいなというふうに思っております。より身近な地域の情報を流していただけるという点と、文字情報として取り出せるといったところ、それから一番大きなのは、放送というのはある時間見ていないと見逃すことがございます。ところが、地上波デジタルの場合は、ある程度自分で好きなときにというか、時間関係なしに情報が取り出せるものがちゃんとプールされております。ここの違いが大きいと私は思います。つまり、欲しいときに欲しい情報が取り出せるというところは、地上波デジタルの大きな利点ではないかというふうに思います。
塩野座長 どうもありがとうございました。どうぞ、野村さん。
野村構成員 プロップ・ステーションの竹中様にお聞きしたいんですけれども、先ほど来、デジタルテレビの可能性についてお話しいただいていると思うんですけれども、実際にデジタルテレビを活用するということになると、いろいろ実験ですとか、どうやって使いやすいものにしていくかということを考えていく必要があると思うんです。そういった取組、例えばメーカーさんですとかテレビ局なんかと一緒に実験を進めていこうみたいなお話が具体的に進んでいるんでしょうか。もし、ありましたら、それについて簡単にご説明いただけるとありがたいんですけれども。
竹中理事長 プロップ・ステーションは、発足以来、いわゆるIT業界といいますか、コンピュータをつくられているところや、ソフトを開発されている皆さん、あるいはその技術を持たれた方々とネットワークを組んでやってきました。そういう意味では、いわゆる福祉というジャンルに置かれがちなんですけれども、私は人の力を生かすという意味では、経済活動であろうというふうに思っています。そういう意味で、経済界の皆さんとネットワークを、繋がりを持ってやってきました。
 ですけれど、日本の国策として、そういう方々の力を生かそうという国であるのか、そういう方々には静かにしていてもらって、何か差し上げればいいやという国なのか、ここは国策のレベルになりますから、私はぜひ、すべての国民の力を引き出すのだというような日本の国であってほしいということで、政府に対しても、各省に対しても、いろいろ提案をさせていただいてきました。そういう意味で、これからも地上デジタルという時代に突入するというときに、今までの私たちの経験だとか、得た知見だとか、そういったものをぜひ生かしていただけるような場があれば、喜んでといいますか、積極的に参画をさせていただきたいですし、チャレンジドの皆さんの意見を求められる、そういったメーカーがありましたら、喜んで、ご一緒に開発にも向かっていきたいなというふうに思っています。そして、そういうことが恐らく彼らのこれからの大きな仕事にもなっていくのだろうな。ですから、私はいつも、「同情と補助金ではなく、仕事くれ」、これが口癖なんですが、ぜひそういう方向にデジタル化も進んでいっていただければうれしいし、彼らのこれまでの努力にも期待をしていただければうれしく思います。
塩野座長 どうもありがとうございました。お三方、皆様方、先ほどから申し上げておりますように、それぞれ特色あるご報告をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、地方公共団体側からのいろんなお考え、情報を提供いただくということで、先導的な地方公共団体ということでお越しいただいているわけですが、最初に三鷹市教育センター所長の大島克己さんから、教育ユーザーの立場からのご発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
大島三鷹市教育センター所長 三鷹市教育センターの大島でございます。よろしくお願いいたします。私のほうからは、「サーバ型デジタル放送の教育ユーザーとしての期待と課題」ということでお話し申し上げたいと思います。このサーバー型デジタル放送と申しますのは、日本の中では、基本的にはまだ世の中に存在しておりませんので、まさに未来のものだということで、それがどういうふうに教育に影響を及ぼすのかということは、まだ未来のもので、形もないのに影響があるのかと言われると非常に困るんですけれども、こういうものが教育にどういう影響を与えるかということを中心に私の方から述べさせていただきたいと思います。
 私は、実は、平成11年から学校インターネット、これは旧文部省と旧郵政省の合同事業でして、学校にインターネットを普及しようということで行われた国の事業でございますが、それの教育側の人間として参画させていただきました。教育側といいましても、実際に教壇に立ったことがある人間として、過去になってしまいましたので、今となっては「だった」と言った方が正しいと思うんですけれども、参画させていただきました。
 その後、総務省のe−スクールとか、それから、今は文科省のコンテンツ配信事業とか、そういうさまざまなことをやらせていただいております。それで、学校インターネットのときには、基本的には普及というのが大きな目的でした。平成11年ですから、まだISDNの時代に光ファイバーを使ってやったということで、当時としては普及が大きな課題であったわけですけれども、最近の学校で使うインターネット、イントラネットの世界では、普及ではなくて、具体的にどういう効果があるのかということがそろそろ問われ出してきている。まだ、そろそろですけれども、この視点から述べさせていただくのが、これからのサーバー型デジタル放送については非常によろしいのかなというふうに思いまして、一応資料をつくらせていただきました。
 これは、先日、10月29日に総務省のe−スクールの最終発表会を行いまして、そこの中で示されたデータなんですが、情報活用能力等については、ITがかなり影響があるということは、いろんな研究から述べられているところですが、では、具体的に授業の場面の中で子供にどういう影響があるのかというところを第三者、要するに、教育委員会の人間ではなくて、これは実際にお茶の水女子大の坂元章先生に分析していただいたんですけれども、教育委員会のいい成果を出せというような雑音を全部取り除いて、第三者としてどうかということをお願いしたものでございます。
 私も詳しいことは、学究的な部分はよくわからないんですけれども、その中で、ITの中で効果が如実に出た部分、私どもの場合は、三鷹市の場合はイントラネットを使って家庭にまで動画を配信できるような仕組みになっております。その中で何が効果が一番あったのかということですが、動画の授業利用が非常に効果があった、ということを子供たちが異口同音に唱えている部分なんです。つまり、意外に動画の持つ効用というのが大きいというようなことなんですね。これは2波パネル調査、2回にわたって調査したんですけれども、0.35 というかなり大きな相関が出ているということで、調査された坂元先生も、動画というものを見直す必要があるということを述べられておりました。
 ただし、インターネットで使う動画というのは、非常に煙みたいな動画が多うございまして、輪郭線がぼけていたり、それからもう一つ欠点としては、ITで動画を使うというのは、教師側にかなりの技術力を問うんですね。そういうようなことがあって、見る側にしても、かなり効果はあるけれども、動画の質のレベルからいうとまだまだだというようなことが言われています。それからもう一つ、これも調査結果から出ているんですけれども、安定度ですね。使えるときもある、落ちるときもある、そんなのがインターネットの世界ですので、いざ始めたら途中でとまっちゃったなんていうことがざらにある。そういう中でこれでいいのだろうかというようなことも実は言われているというところでございます。
 もう一つは、動画の利用というのは、子供たちに実際に聞き取り調査したところ、思い起こせるというような回答が多かったんだそうですね。つまり、あのとき、こうだったなあ。それが非常に影響があったということの大きな一つになっているらしいんですが、もう一つは、最近では学力についてどうかということが盛んに問われています。イギリス等では、一昨年あたりから盛んに調査をして、何ポイント上がったとか、そういうことをやっているわけなんですが、日本ではITを使って学力が上がるのかということがなかなか調査としてとりにくいという部分がありました。ここでいう学力は、とかく学力という問題をいうと、人間力もあるじゃないかとか、いろんなことが言われるんですけれども、測定できる学力なので、具体的にいいますと、学力テストの点数が伸びるか伸びないかということを明快にやろうということで、実はやったということです。それが3波パネル調査ということで、2003年の2学期、3学期、2004年の1学期と、およそ1年間ですよね。学期ごとに学力テストをやって、それに学習履歴型のドリルコンテンツというのを1年間ずっと使い続けて、これによって学力が伸びるのかというようなことを実際にやってみたというところでございます。
 学習履歴型のドリルコンテンツとはどういうのかといいますと、実際、今の時点では、子供たちの学習の成果、つまり、点数ですよね、合った、間違ったという記録、それから合うまでにかかったプロセスの記録、それからどのくらい試行錯誤したかというプロセスの記録、この3つを学習履歴として把握して、子供たちがそのコンテンツをやるたびに、そのデータを全部把握するという仕組みのコンテンツでございます。これを三鷹市では全部使えるようにはなっているんですけれども、それのデータとそれから学力テストのデータとを合わせて分析していったというものでございます。
 これは小学校のデータですが、その中で使ったのは国語と算数なんですけれども、国語と算数については、そこに書いてあるように効果があったということが証明できるというようなことでした。なおかつ、2004年には学力は前学期までの利用の影響はなかったというように、では、ここで落ちてしまったじゃないかということですが、これはなぜ落ちたかということが明快なんですね。実は、2004年3月の時点で、学校インターネットが終了いたしました。で、三鷹市のネットワークが接続変更したんですね。実際にトラブルが起こりまして、2カ月間止まってしまったんです。つまり、4月から6月の間、ネットワークが止まってしまった。物理的に、もう利用することができなかった。利用できなかったから落ちてしまったということなんですね。
 ということで、こういうような、あくまで三鷹市の小学校の例で、一般化するにはまだまだです。4年ぐらい調査をしないと、基本的にはなかなか証明するまでには至らないだろうとはいわれておりますけれども、日本でも最初の学力との関係ということで、効果があるのではないかというようなことが言われ出してきているということで、ご紹介させていただきました。つまり、動画の利用とコンテンツの利用というのは、学習にかなりの影響を及ぼす可能性がある、というふうに思っても間違いでもないだろうというふうに思っております。
 ITの利用の現状を申しますと、今、どこまで行っているかというところですが、校内LANを含めた教育用コンピュータ整備と教育用コンテンツの流通及びその利用に集約されている。つまり、今は学校の中では校内LAN、どこでも使える環境にするということと、そこで流通するコンテンツをどうするかというところに文科省の事業が集約されてきております。その一番最近、この9月13日から始まったんですけれども、ネットワーク配信コンテンツ活用推進事業が始まっております。これは、授業で使う、要するに、各教科のコンテンツを全国、今、25地域ですけれども、来年、拡充するという方針だそうですけれども、有料で配信するという事業でございます。これが特徴なんですけれども、コンテンツは有料です。で、プラットフォームを国がつくります。で、コンテンツは民間が提供して、コンテンツ購入費は自治体が拠出するというものでございます。
 それで、この際に一番大きなものは、やっぱり安価にたくさんの中から選ぶ、学校側がユーザーとして選ぶということを中心に考えています。そうなったときに一番問題になったのが、実は、ライセンスの問題なんですね。通常は、ここに書いてありますけれども、1CPU1コンテンツ、これが原則ですね。1台のコンピュータに1つのコンテンツ、これの原則をこの事業のために、国と自治体と、それからコンテンツ供給者が協議を重ねて、グループライセンスの考え方をしたということです。ですから、著作権は変えていないので、その利用形態をどうするかということで変えた。つまり、買ったコンテンツは、実際であれば、1ライセンスなんですけれども、学校の中のコンピュータはどこでも利用していいですよ、というライセンスです。そういうことがあって、今、各自治体の方からは爆発的に利用が進んでいるというところでございます。
 なぜ、爆発的かといいますと、ちょうど三鷹市の教育センター、私どものところの地下にコンテンツ配信センターがあるんですけれども、そこの事務をやっている、いわゆる決済事務をやっている人たちが、この間行ったら人数が多くなっているんですね。なぜかと思いましたら、決済業務が追いつかないんだそうです。それで、人数をふやしたということで、そのぐらい爆発的に、今、各学校からこれを出してくれというようなことが来ているということでございます。
 次のページ、ここから、先ほどの話に戻りますけれども、やはりこれからの時代というのは、さまざまなことがあると思いますけれども、あくまで、ITにしろ、地上波デジタルにしろ、ツールでしかないものですので、どう利用するかというところに限定されるものだと思うんです。その際に、新しいサーバー型のデジタル放送の仕組みというものをどう考えるかというときに、やはりたくさんのコンテンツの中からまず選べる仕組み、これをつくらなきゃいけないだろう。これだけを使ってやりなさいというのは、土台、もう無理です。ですから、たくさんのコンテンツの中から選ぶ。もう一つは、たくさんのコンテンツの中から選べるんですが、現状ではデジタル放送ともう一つはインターネットのコンテンツ、これがIPのコンテンツが2種類存在します。これをうまく連携して事業ができないか。ここに一番大きな期待があるわけです。どっちがどっちということではありません。
 そうする際に、これからは学校がどういう状況かといいますと、実際にビデオテープ等を購入して、これ、1本買うと1万円ぐらいします。これを教育センターが購入すると、著作権の関係で不特定多数の著作権処理になるので3倍のお金になってしまいます。貸し出しますので。そういうものがサーバーの中に全部入っていて、それを学校として時間利用ですよね。この授業のときだけ利用したいということでやっていけば、お金も非常に下がりますし、現実には、ビデオテープを1本購入しても、使うのは1年間の中でほんとの何時間というレベルなんですね。必要なときに使うだけというレベルのものなので、むしろ、そういうようなものを構築すれば、学校側としても非常に安価にたくさんいいものを利用できるのではないかというように思っているところでございます。なおかつ、それを説明するためのITとの連携、これが非常に重要になるのではないか。その図を描いたのが、今、示されているものでございます。
 ここが私の発表の最後でございますが、やはりITで画像を利用する子供の立場からすれば、煙のような、いつ、止まるかわからない、しかも、コマが途中で飛ぶ。どういうのかというと、カチカチカチッとなるというやつですね。突然なるんですよね。また、突然、モザイクが出たり、そういうものを見る子供の立場からすると、安定的に高画質への期待、これは非常に大きいです。通信の世界ではなくて、放送の世界では、とまるということはまずありませんし、この辺には非常に期待しているところです。
 それから、安定したオンデマンド放送への期待。これは何かといいますと、ごらんのように、新聞をめくると一番後ろに――日経だけは違いますけど――テレビ欄が載っています。テレビ欄を見て授業を構成する先生なんかいません。授業に合わせて放送が流れてきてほしいというのは、教員側の切なる願いなんですね。サーバー型デジタル放送になると、それが可能になる。これは教育利用としては物凄く重要な視点です。
 なおかつ、データはインターネットの方がかなり進んでおります。それと上手く連携できるような仕組みができれば、先生としての教材の範囲は物凄く広がる。そういうことでございます。と同時に、データ放送。今度は、地上波デジタルにはデータ放送があります。今はイエス、ノーぐらいのデータ放送しかありませんけれども、教育としてのデータ放送をもしコンテンツ屋さんが作ってくれるようになれば、その辺の期待は非常に大きいのではないかと思っているところです。つまり、コンテンツと動画が組み合わさった場合に、相当の効果を発揮できる可能性が高い。それが従来にない新しいコンテンツではないかというところでございます。
 ここからは課題です。課題を4つ挙げさせていただきます。
 一つは、コピーワンスの問題です。これは、コピーするとムーブされてしまって、データが残らなくなってしまうんですよね。今、これが最大のネックになっていることは事実です。誰かが、「これはいいね」と言っていましたが、DVD−RWに落とした時点でサーバーから消えてしまいます。このコピーワンスの問題。
 それに付随しているんでしょうけれども、次に二次利用。実際に私、NHKの3チャンネルで、夜中にチップのように動画像をたくさん並べて、どうぞご自由に落としてご利用くださいという放送があるんですけれども、うちのテレビは実はデジタル放送なんです。で、3チャンネルの、どうぞご自由にお使いください、というものもデジタル放送だったんですね。それをパワーポイントに張ろうとしたら張れませんでした、当たり前なんですけど。要するに、コピーワンスがかかってしまっているんですね。それでできない。ですから、そういうことができなくなってしまうということ。それは、私どもがそう願ったわけではないですね。どこかでそうなってしまった。で、それを利用しろといわれているので、この点についてはちょっと申し上げたいと思うところでございます。
 次に、これからの時代、丸ごと落とした場合、2時間番組があって、先生方が使いたいのは15分程度。大体授業で使うのは15分ぐらいですから、15分程度の番組をここからここの部分だけ利用したいと思ったときに、チャプターすら打てないんですよね。そうすると、ずうっと飛ばしていって、当たるところまで持っていくわけですよね。その間、子供たちはずっと見ているわけです。これは何の意味があるかという問題にもなるんですね。ですから、せめてそういうことぐらいできないかというようなことです。
 もう一つは、今の時点ですと、コピーの際には記録メディアも限定されます。何でもいいよ、ということにはなっていませんので。こういうことすべてが、私がこのデジタル放送の機器を買った時点でもう決まっていて、一切できない状況になっていたということで、このことがある限り、きっと教育で利用するという最大の障害になる可能性は高いのではないと私は思って、今日のこの提案は終わらせていただきたいと思います。
塩野座長 どうもありがとうございました。それでは、次に、札幌市企画調整局情報化推進部長、秋元克広様から、札幌市における地上デジタル放送の活用の方向性について、ご発表をお願いいたします。よろしくどうぞ。
秋元札幌市企画調整局情報化推進部長 札幌市の情報化推進部長の秋元でございます。私は、情報化推進部という名称のとおり、行政の効率化ですとか市民生活の向上というものに、IT技術を活用しながらどのように政策を進めていくか、ということを担当させていただいているセクションでございます。きょうは、札幌市における地上デジタル放送の活用の方向性、可能性と申しますか、そういったことについてのお話をさせていただきたいと存じます。札幌市の場合、地上デジタル放送がまだ開始されてございませんで、今の予定では2006年にスタートというふうに伺っております。
 最初のページでございますけれども、字が小さくて恐縮でございます。ここに「さっぽろ元気ビジョン」というものを掲げてございますが、これは何かと申しますと、昨年、四十数年ぶりに民間出身の市長が当選いたしまして、市長の施政方針ということで中期的なまちづくりの方針が示されてございます。その中で大きな目標として、「市民自治が息づくまちづくり」ということをまちづくりの根本に据えてございます。
 そういった中で、先ほど来、多々ご発表がございましたが、まちづくりの中に市民がどうやって参画をしながら進めていくのか。そのためには、行政の徹底した情報公開でありますとか、情報の伝達、分かりやすく伝えるということと、それから、いろいろなまちづくりに市民がどのように参画をしていくか。こういうことをITを活用しながらどう進めていこうか、という観点で考えてございます。この中で地上デジタル放送もインターネットその他、紙媒体での情報提供も含めまして、いろいろな情報提供のツールの一つという形で私どもは考えてございます。一つは、先ほど来出てございますが、放送とパソコン、通信との連携という部分、まだ非常に形が分かりづらい部分もございますけれども、そういった可能性についてもいろいろ議論を進めているということでございます。市民活動の参画の方向としては、一つは広報サービスの高度化ということ。これは、双方向性による市民参画の手法。それから、今、私どもの札幌にもサッカーはじめ野球のプロスポーツが誕生してございます。それから、いろいろな芸術活動が進められておりまして、一つ、地方からの情報発信ということで、先ほど来の地上波デジタルの高画質、高音質等の、そういった特性を生かしながら、地方からのコンテンツづくりというものにどう活用していけるのか、こういった視点が一つございます。それから、岐阜の方でやられた実験のように、いわゆる電子自治体の窓口道具の一つという形での可能性、こういった視点もございます。
 それから、一番下に防災/緊急時の支援ということで、携帯端末へのテレビ放送の受信。現実的には、ハード的にはまだできてございませんけれども、そういったものも実現される、間近になってきてございます。そういったものを活用しながら、緊急時に対しての地上波デジタルの活用という可能性があるのではないか。こういった視点で検討を進めているということでございます。
 今、お話を申し上げました点でのこういったアプリケーションということで挙げてございますが、今日はお時間の都合もございますので、4点目の防災/緊急時対策のアプリケーションとしての可能性ということを中心にお話をさせていただきたいと思っております。先ほど、地上波デジタルの各家庭におけるテレビが情報伝達手段としての、道具としての可能性ということでお話をさせていただいてございますけれども、その際に、インターネットでも同じでございますけれども、地域の様々な情報をどのように加工をして、それを情報伝達していくのか。その伝達手段の道具の一つとして、インターネットであり、携帯であり、地上波デジタル放送、そういったような可能性。それから、いわゆるデジタル・デバイドということで、コンピュータ、パソコンを使えない方に対しての従来型の電話での情報のやりとり、こういったさまざまな手段として行政の中での活用ということを考えてございますが、2年ほど前に札幌市では市民情報センターというものを立ち上げてございまして、地域の行政だけではなく、さまざまな市民活動の情報も含めて、地域の情報を市民、それから市民以外の方にどのように伝えていくかというようなことで、既にNPOの方々等の参画を得ながら、地域の情報発信の拠点ということで、こういったセンターをつくってございます。こういった中でさまざまな情報を集約をして、その中から放送局さんへの情報提供、あるいはインターネットを通じての情報提供、こういったような流通の仕組みを一つ念頭に置いているわけでございます。
 先ほど申しましたように、防災情報の観点からの利用の検討例といたしまして、1点目は、サーバー型放送システムというものを軸としたシステムの検討をしてございます。一つは、防災端末としての利用ということで、日常的にはインターネット経由での緊急時、こういった避難情報等をサーバーにためておきまして、必要なときに市民の方、視聴者の方が取り出す仕組み。それから、先ほど、三鷹市の大島先生からお話がございましたように、教育教材、教育現場での活用ということでのサーバー型放送システム、こういった可能性についての検討をしてございます。そのうち、教育の部分につきましては、先ほどの大島先生のご発表と重複いたしますので、防災端末としての利用について、ご説明をさせていただきたいと思います。
 これは、平常時の防災端末としての利用ということでございますが、サーバーの方に例えば洪水が起きたときのハザードマップ、あるいは自宅の近くの避難場所、あるいは危険箇所の情報ですとか避難方法、こういったようなものについての情報をためておく。現在ではペーパーで各家庭にこういった情報をお配りをしているわけですけれども、ペーパーで持っていますと、どこに行ったかわからないというか、最初に配られたときは見るんだけれども、日常的には分からない。こういった部分がございますので、こういう活用についての一つの地域ごとの一斉同報性という放送の特徴といいますか、そういったようなものの平常時での活用の仕方というふうなイメージでございます。
 次は、携帯端末についての活用の可能性ということで冒頭申し上げましたけれども、防災端末としての非常災害時、非常時の情報提供手段の一つとして、ある地域での洪水の可能性があって、緊急避難の地域が出る。現状では、例えば広報車が回るですとか、地域での放送といいますか、街頭放送等で避難を呼びかけるというようなことがありますけれども、非常にそれが分かりづらいとか伝わらないというようなことがございます。そういう意味で、一つは、家庭のテレビというものも重要なわけですけれども、今、携帯電話というものを非常に多くの人が持っております。ここで、放送としてのこういった緊急避難情報が携帯端末に送られるとするならば、携帯の通信という意味では、例えば災害時には非常につながらないという状況が出ますけれども、輻輳のない情報伝達という意味での地上波デジタル放送の活用。緊急災害時には、当然、各放送局さんと色々な情報提供ということでの協定を行いながら、日常的にもそういう情報の流通というのは行われておりますけれども、そういった情報の中で携帯端末に――携帯端末というのはバッテリーを持っているということで、テレビですと、停電が起きてしまうと、そこに幾ら情報を投げてもつながらないということがあります。そういう意味では、カーナビですとか携帯電話というバッテリーを持っているものに地上波放送が送れるとするならば、非常に有効的ではないか。こういうような観点での検討を進めているところでございます。
 次のページ以降は、教育教材としての活用ということで、先ほど、大島先生の方からもご発表がございました。やはり動画というものに対する授業での活用といいますか、こういったものの効果性は非常に高いということで、札幌市としても教育現場での地上波デジタル放送の活用というものが非常に可能性があるのではないかということを検討してございますが、札幌の場合、小中学校合わせて 320校ほどの学校がございます。そういうことで、先ほどの大島先生、三鷹市でご発表のあったセンター方式という形のもの、センターにコンテンツをためて情報をとりにいくということが非常に難しい部分もございます。そういう意味で、各学校側にサーバーを置いて、そこを活用していくというような手法にネットワークという意味ではなるのかなというふうに考えてございます。
 ただ、コンテンツの利用という意味では、非常に多くのものから選んでいけるという部分がございますので、インターネットで使うコンテンツも含めてのデジタルコンテンツを、先ほど申しました市民情報センターといいますか、地域の情報を、そこにコンテンツを集めていくということで、行政だけではなくて、市民の方々からのさまざまな情報発信コンテンツをそういったセンターの中にためて、市民の情報発信、それから地方から、北海道から全国への情報発信といったようなものにつなげていけないか。こういった視点で地上波デジタル放送の利活用についての検討を始めたという状況にございます。以上でございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。続きまして、北九州市産業学術振興局産業振興部長の安藤英和さんから、地上デジタル放送の期待や取り組みについてご発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
安藤北九州市産業学術振興局産業振興部長 ご紹介いただきました北九州市の産業学術振興局部長の安藤でございます。北九州の場合は、NHKさんの北九州放送局は2006年の10月ぐらいが放送開始予定と、今、お伺いしております。民放さんにつきましては若干遅れて年末ぐらいであろうということで、今から約2年後ぐらいの状況を背景にしながら、この地上デジタルをどういう具合に地域として活用していくのか。行政はもとより、あるいは地域の方々もご参加いただいて、どういうような活用方法があるのかを、地域検討会と称しまして、昨年の12月ぐらいですから、もう約1年間、毎月1回集まって議論を重ねているところでございます。
 その中でいろんな課題といいますか、将来に向けての方向性のいろんな議論等が出てまいっております。それで、冒頭でございますが、当調査研究会の方に、できましたらということで、例えば、我々、勉強する中でも、デジタルが持っているデータ機能、あるいはモバイル機能、あるいはサーバー機能、そのあたりの機能の勉強もいたしておりますけれども、いずれにしましても、機能ごとに関するいろんな、課金の問題とか、あるいはさっき出ましたコピーワンスの問題とか、あるいは特に医療分野で申しますとセキュリティーの問題、あるいは医療分野でサーバーを活用するときのメタデータの問題等々、いろんなルールと申しますか、そのあたりが政策的あるいは制度的に見えてこないと、実践する場で、我々としても地域での活用の方向が細かな部分も含めてなかなか見えてこない、そういう問題提起がございました。当調査研究会でそのあたりのルールづくりといいますか、その議論をぜひ、出ていると思いますけれども、さらに詳細にしていただければ、これが一つございます。
 それともう一つが、我々としまして、この地上デジタル放送を活用するときに一番の大義名分といいますか、一番の目標は、やっぱり住民あるいは市民の情報格差、デジタル・デバイドと申しますか、そういった情報格差をどのようにこのデジタルを活用して解消していくのか。そういったものが我々のやはり一番大きな目的でございます。申すまでもなく、テレビというのは各家庭にもう既に 100%近くある。それが今度、デジタルに切りかわっていく。切りかわる過程でいろんな問題は当然出てきますけれども、結果的に切りかわったとしたときに、行政情報の提供あるいは公共的な情報、そういったものをデジタルを使ってどう伝えていくか。
 そしてなおかつ、デジタル放送でもカバーできないエリアといいますか、そういうものが当然存在いたします。我が北九州エリアでも、今、現実に民放の方々が流されている中でも、ハード的なアンテナの数の問題等で届かない局というのは当然ございます。ですから、そういったデジタル放送でカバーできない部分を通信、あるいはCATVというお話がございました、そういった他の媒体を使ってどのようにカバーしていくのか。これもルールになるかもしれませんけれども、そういった議論もぜひ当調査研究会で議論の俎上に上げていただければという思いでございます。
 そういう2つのお願いを申し上げましたけれども、そういうことを前提にしながら、当北九州で過去1年間やってきました検討会の中の動き等々についてご紹介をさせていただいて、ご参考にしていただければと思います。
 3ページ目をごらんいただければと思います。北九州の場合は、全国政令市の中でも断トツに高齢化比率が高い、20%を超えるというような状況がございます。それと同時に、地域コミュニティーがまだ各地域ごとに存在しております。そういった地域コミュニティーのいい面を残して、それを地域医療あるいは福祉といったものに使おうということで、従来よりこういった福祉、医療の政策に対して非常に重点的に取り組みを進めております。その中で、地域から上がってきました地上デジタル放送を活用した医療面でのいろんな取り組みができないだろうかということで、はっきり申しまして、行政からの発意ではございません。地域からの、このメンバー表をごらんいただきますと、産業医科大学あるいは北九州医師会、若松区医師会とございます。主にお医者さん方、そのお医者さん方からの発案で、デジタルを活用して何か地域のためにできないかということで、昨年の12月にこういったメンバーで立ち上げをいたしております。その中には、当然、NHK、民放さん、FBS、日テレ系列、それから九州朝日放送、テレ朝系です。こういった民放さんにもお入りいただいて、民放さんのデジタルに対する取り組みの現状等もご説明を受けております。それからメーカー、それから我々。そして、今度、11月からは松下あるいは東芝、日立等々、実際の受像機メーカと申しますか、そういった方々にもご参加いただいて、例えばサーバー放送機能の進捗状況なり見込みなり、そのあたりのご説明もいただくようにしております。
 このメンバーでずっと一年間議論を重ねてきたわけですけれども、5ページ目をごらんいただきますと、このメンバーで一応こういったものができるのではなかろうかというのが、一つのシステムのモデルとして我々が考えた、そういう一つのモデルケースでございます。これをごらんいただくと一目瞭然、おわかりと思いますけれども、地域健康情報ネットというような機能を持ったところがコンテンツをつくり、それを放送局の電波で流す。それを一般家庭の患者さん、一般家庭が受けて、その医療情報に基づいて、例えばそれ以上の詳細な情報が欲しい場合は、インターネットなり、そこらあたりでさらに大量の情報を得るというような、このサイクルです。
 この中で、今、一番に我々が議論していますのが、地域健康情報ネットという、こういうコンテンツの制作の主体をどうするのか。行政が当然ながら関わらざるを得ないと思いますけれども、行政が関わる場合に、医療という場面だけではなくて、いろんな他の行政情報、総合的にこういった機能を持った組織づくりと申しますか、中心、核となる、そういったところがぜひセクションとして必要だろうというのが我々の考えでございますけれども、実際にどのように作って運営していくか、まだ見えてない、これからの議論に待つところが多々ございます。
 そういう検討会を進める中で、次のページをごらんいただきますと、仮に医師会なりが地上デジタル放送を使うときにどういうような番組のニーズといいますか、内容としてどういうニーズが高いだろう。これは医師会の会員さん、北九州市内に約 1,900名ぐらいおられますけれども、そういった方にアンケート調査をかけましたら、この青色の部分、こういった内容のデジタルの活用がニーズとして多いのではなかろうかということで、6番目の救急医療。多分、これはモバイル放送と、例えば救急車の中でとか、移動体の中でチェックというような活用を想定した救急医療での活用だと思います。あるいは1−6にございます子育て支援ガイドあるいは医療施設紹介、こういった場面での活用が大いに期待される、というようなアンケート調査結果でございました。
 それで、我々の検討会としまして、実際にデジタル放送の中身、放送のコンテンツをどうするかという、今、3つの方向性を検討しておりまして、1つがこういった医療の専門家同士のやりとりを前提にした放送でございます。2つ目が医療機関と患者さん、医師と患者、その中でいろんなデジタル放送が活用できないか。3つ目が、医療機関あるいは医師会というか、そして行政も含めて、一般の市民に対する医療情報の提供の場面でのデータの活用ができないか。この3つの方向性の中で、今、具体的にどういうような内容、方向で取り組んでいくのかの議論にまさしく入っているところでございます。年内あるいは来年1月ぐらいをめどに、具体的にどういう内容を持ったデジタル放送への方向性を地域検討会として考えるのか、その内容づくりに、今、邁進しているところでございます。次のページは、先ほど、私が申しました情報格差の問題あるいは制作主体、そのあたりが大きな課題として上がっているということ。
 それから、8ページ目をごらんいただきますと、情報格差の是正はそうでございますけれども、それから、行政として狙う、当然、2)市民生活の向上。こういう医療情報のやりとりの中で患者さん、あるいは市民の医療方面における資質の向上なり生活の向上、あるいは先ほど、ご説明が多々ありました教育分野あるいは防災分野、この辺でもさらなる活用ができるということで、我々としては非常に期待しているところでございます。
 それから、単に行政情報云々だけの問題ではなくて、3)にございます地域のIT産業の振興、これも将来的には望めるのではなかろうか。といいますのが、ロボットとかバイオ等々、新産業として手がけておりますけれども、その中の一つに、当然、メディアコンテンツ、コンテンツ産業と申しますか、そういったあたりの人材育成も踏まえて、新産業としての取り組みを進めております。このデジタル放送もそのコンテンツの制作といいますか、コンテンツという場面から産業としての集積、受注拡大と申しますか、そういったものが多分望まれるだろうということで、我々としても大きく期待をしているところでございます。
 9ページ、10ページは、そのメディアコンテンツで、我が方で、ことし8月に整備しました一つの拠点の紹介でございます。これはごらんいただければと思います。
 11ページにありますのがサーバー型放送への期待ということで、ちなみにということで、医療福祉分野で申しますと、こういう運動指導や栄養指導、子育て支援ガイド、あるいはリハビリガイドみたいな内容の放送番組といいますか、そういったものが当然想定されるだろう。そういった番組をサーバー機能で蓄積して、見たいときにいつでも引き出して見られるという状況が生まれることを、我々としても、医師会としても想定している。
 最後の12ページでございます。今後の課題でございますけれども、北九州地域、ご承知のように、福岡・博多の地域と60kmキロメートルぐらい距離的には離れてございます。NHKに関しましても、福岡放送局が親局として存在し、北九州放送局がそれのブランチとしてある。ブランチとしての北九州放送局、当初から地域検討会にご参加いただいていますが、どうしてもデジタルに関するリードは福岡放送局、親局がやっているという現状がございます。それから、民放にしましても、福岡市、博多の方にすべて本社があるということで、北九州エリアに特出した動きといいますか、それがなかなかリーダー的にとれないという状況がございます。
 そういう状況を前提にしまして、ハード面ではやはり放送局の設備投資と申しますか、そういった問題が我々の地域検討会の中でも多々出てまいっております。民放が5社ございますけれども、各民放一つ一つの取り組みを見ましても、非常に進んでいるところもありますれば、あるいは遅れているところもある。例えば福岡放送、FBSと申しますけれども、ここは来年の1月に新庁舎を建設予定でございます。当然、新しい庁舎でございますから、デジタル放送に 100%対応できる。いいタイミングでそういう対応をしているということで、福岡放送局の方は早くからうちの検討会にもご参加いただいています。そういうような少し足並みのそろわないところもございますけれども、我々としても、なるべく早く北九州エリアでデジタルを実際に本放送していただきたい、今そういうお願いをしているところでございます。
 それから、アンテナの共同化という項目を挙げております。右側に写真がございますけれども、実は、地域の一番高い山、 622mキロメートルございます、皿倉山の上にNHK、民放のアンテナがもう既に数十年ございます。その景観上の問題もございますし、アンテナを共同して一つにしないかという話を既に10年近く申し上げて、行政からも申し入れをしております。それで、今回のデジタルへの切りかえをチャンスに、NHKさんは独自でデジタル対応のアンテナ舎をつくる。民放さんは5局一緒になってそういう対応をするということで、ある程度方向性が出てまいりました。非常に見晴らしのいいところで観光地でございます。観光地にふさわしいようなアンテナ設置といいますか、そういったものをお願い申し上げております。
 それから、ソフト面、コンテンツ制作の主体。これは先ほどから何度も申し上げている、どこがそういうコンテンツをつくるのか。行政のかかわりは多分大きいと思いますけれども、実際にまだ見えてない部分がございます。
 それから放送局と自治体の関係。これは、今現在、例えばNHKさんであれば、非常に主体的に番組もつくられている。あるいは行政の情報にしましても、受けて、それをNHKの主体的な立場で解説して、ニュースとして流す。民放さんとの関係で申しますと、行政情報を流す、それをテレビの記者が受けてニュースとして流す場面と、行政がスポンサーとして、いわゆる広報番組といいますか、そういった民放さんとの関係がある。そのあたりの関係で申しますと、卑近な話でございますけれども、北九州で申しますと、テレビ局対応でスポンサード、年間2億円ぐらいですか、あるいはもう少し広げて情報伝達という立場で申しますと、「市政だより」みたいな、紙媒体を使っておりますけれども、それが、つくるのと配送するのを合わせますと年間6億ぐらい。相当多額のお金をそういう情報伝達に使っております。特に民放さんとのスポンサードの関係では、2億円余りのお金を毎年使っております。それをこの地上デジタルのコンテンツ制作あるいは番組、その中で新たな民放さんとの関係と申しますか、別に民放さんをこちらのコントロール云々という気持ちは当然ございませんけれども、一緒になってそういう公共的な情報を番組としてつくり上げて、民放さんのそういう電波で流す。いい関係といいますか、そういったものを築き上げていけるチャンスではなかろうか、そういう気もいたしております。
 手短にご説明申し上げましたけれども、以上で北九州の取り組みを終わらせていただきます。ご参考にしていただければと思います。
塩野座長 どうもありがとうございました。三鷹市、札幌市、それから北九州市と、それぞれの地域の特性を踏まえた、あるいは特色あるお話を伺いました。ありがとうございました。いろんな角度からの質問があろうかと思いますけれども、ひとつ皆様方からご質問があれば、よろしくお願いいたします。
 ちょっとつかぬことを伺いますが、北九州市でなぜお医者さんが前に出てきたんですか。
安藤部長 うちは7区ございます。それで、以前から、7区ごとにお医者さん、医師会といいますか、それから例えば自治会、婦人会等々、いろいろな地域のグループの方々がお集まりになって、一つのまちづくり推進協議会のような、個人、住民の方々のそれぞれのニーズに対応した、地域ならでは組織というのをつくっております。今回、若松医師会というのが我々の地域検討会に主体的にお入りになっていますけれども、そういうグループが若松の場合はもう11年目になっています。そうしたときに、産業医科大学の舟谷先生という方がおられまして、舟谷先生と若松との接点の中で、デジタル放送が何か地域で活用できないだろうか、そういう地域ネットワークのベースがあって、そういう医療の関係の方々からデジタル放送をという、そういうお話でございます。
塩野座長 そういうこととの関係で、医師会は非常に熱心なんですけれども、その場合には、放送というよりは、ここにもちょっと出ていましたが、インターネット、あるいはむしろいろんな意味での電子化、通信の方のフィールドでずうっといろんなことを考えておられたと思うんですね。ですから、北九州市でもそういった基礎があって、それで、その上にデジタル放送というアイデアが出てきたのでしょうかという、そういう質問なんですけれども。
安藤部長 我々の地域検討会の中でも、当初は、デジタルというのは何たるものだというのが、皆さんの認識がばらばらというか、レベルがございました。その中で、今、ご指摘がございましたように、当然、通信とどう違うのかというような意見も医師会の中からもございました。ただ、デジタルの持っているいろんな機能をお互い咀嚼する中で、これはやはり使えるんだ、使っていけば、より患者さんとの間といいますか、あるいは先ほど申しましたが、医療機関同士の間とか、そういったものでうまく活用ができるのではなかろうか、というのに皆さんの合意を得るまでにやはり半年近く議論を重ねた、そういう状況でございます。
塩野座長 わかりました。何が何でもデジタル化ということではなくて、使えるいいツールが現れたのではないか、あるいはそこをもう少し開発してみよう、そういうお話というふうに伺いました。
安藤部長 そういうことでございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。山下さん、どうぞ。
山下構成員 三鷹市の大島様に伺いたいのですが、基本的な質問で恐縮なんですが、動画とか授業で使うコンテンツとして、自分は教育テレビの内容をすぐ思い浮かべてしまいますが、それ以外にどういうものが存在し、あるいは将来的に想定しておられるのか、というのを教えていただけませんでしょうか。
大島所長 今のご質問ですけれども、実は、NHKの教育放送がございますよね、これは学校の中で一時よりはそんなに多く利用されていないんですね。むしろ、民間がビデオとしてつくっている、例えば教科書に合わせたようなビデオがあるんです。そういうものを購入している現状の方が実は多いんですね。なぜかというと、なかなか流れてくる放送と授業とがマッチングしないので、それに合わせたようなコンテンツを逆に購入する方が多い。これが現状なんです。
 ですから、例えば教育センターなどでも、たくさんのビデオテープを毎年購入しておりますけれども、やはりそれは、今度、教科書が変わったりしましたので、それに合わせてこういうのを購入したいというような希望が学校から多く出てきているというところでございます。
 それから、では、ほかにどんなコンテンツがあるのかというと、やっぱりこの辺も民間の方が結構進んでいるんですよね。例えば予備校なんかでは、もう圧倒的に進んでいますよね。予備校をそのまま持ってくるわけではもちろんないんですけれども、そういうような利用がもう今では普通になってきている。つまり、遠隔地でありながら、授業を一斉に配信するみたいなことがもう可能になってきている。あれは受験産業ですけれども、例えば実験だとかそういうものになってくると、かなり高精彩なものが必要になってきて、そういうものも共有しながらやっていくとなると、やはり画像がいいにこしたことはないというようなことがいえるかと思います。ですから、これからそういう利用がどんどん進んでくる可能性は非常に高いと思います。
塩野座長 よろしいですか。それから、きょうの話で、今まで必ずしも表面に出てこなかった問題として、地上デジタル化したときの地域の自治体と放送局との関係ですね。夢を描いているときは割合簡単なんですけれども、これ、現実にやるときに、先ほど、ちょっとお話がありましたように、経費の問題もあるし、それから、特に民間放送あるいはNHKでも、編集の自由の問題もあって、その辺のことが制度的にはかなり問題になると思うんですけれども、その点は議論はかなり進んでいるのでしょうか。こんなところがやっぱりネックだというような点があれば、札幌市でも北九州市でもどちらでも結構でございますから、お話しいただければと思いますが。
秋元部長 今のようなお話の中での自治体と例えば放送の関係、放送局との関係という意味で、議論の端緒に入ったという段階で、そこの整理をつけるというのはこれからの課題であろうと思います。そういう意味で、先ほども申し上げましたように、私どもの現状の仕組みの中でも、防災という視点については、ある程度情報提供と放送という部分の整理がついておりますので、こういった視点については一定の公共情報ということでの整理はついておりますけれども、日常的なといいますか、ほかの情報提供との関係でいきますと、先ほど、北九州市さんの方でもお話がございましたように、これからの課題ということでございます。
安藤部長 私どもの地域検討会にはNHKと民放2社が入っていますけれども、彼らのお話を聞きますと、とにかくデジタルの電波を流すということで、時間が限られた中で流すために、ハード的に、あるいは会社の内部でのいろんなソフト的な問題も含めて、流すためにどうするのかということがまず第一命題で、その部分での取り組みを彼らは非常にしていまして、今、おっしゃられました放送局と自治体の関係、まさしくそこまでの話には直接的には入っておりません。だから、我々自治体として考えるときに、放送局とのあり方をこうあればというのを、先ほど、ある程度希望的な観測を含めて、私、ご説明申し上げたということでございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。どうぞ、隈部さん。
隈部構成員 北九州の方に伺いたいんですけれども、先ほど、コンテンツ制作の主体が問題であるというお話、そのとおりであろうと思います。これは永続的にずっと地デジでいろいろ流していくとなりますと大変だろうと思うんですが、この中に、今、塩野座長が話されたことと関連して、放送局もこのコンテンツ制作の主体として関わっていくのか、それとも、医師会なり行政の方でおつくりになって、放送局に持っていくという形をお考えになっているのか。そこら辺、いかがでしょうか。
安藤部長 当面、我々の議論の中では、今おっしゃいました2つの選択肢の中では、後の方、我々の方である程度コンテンツをつくって、その過程では放送局のいろんなアドバイス等は当然あると思いますけれども、つくって放送局に持ち込む、そういうような関係をとりあえずは想定いたしております。
塩野座長 放送制度からはえらい頭の痛い問題なんですけれども、しかし、重要な問題点の指摘がございました。どうもありがとうございました。実は、まだまだいろいろお伺いしたい点もございますし、特に、きょう、ご出席の皆様方相互の間で、和田さんも含めて、あるいは竹中さん、それから河村さんも含めて、いろいろ情報の交換の必要性を感じておられると思うんですけれども、時間の関係で、こういうことで終わらせていただきたいと思います。ただ、せっかくの機会でございましたので、今後、どうぞ横の連絡も、主婦連と竹中さんともよく連絡をとって、言いっぱなしの議論にならないようにしていただければというふうに思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、ビデオリサーチの常務取締役の山本秀樹様、大変お待たせいたしまして申しわけございませんけれども、せっかくご用意していただいたものがございますので、どうぞお話をお願いしたいと思います。
山本株式会社ビデオリサーチ常務取締役 ビデオリサーチの山本でございます。本日は、デジタル化に伴う視聴変化とその視聴率測定についてということで、お時間を頂戴いたしまして、簡単にご説明させていただきたいと思います。
 当社としましては、このデジタル化というのが、やはり新しく視聴率測定をすることに等しいぐらいの大きな変化というふうにとらえておりまして、社の最重要課題としまして、今、対応しております。メーカーさんとの技術的なすり合わせであるとか、さまざまなメーカーさんによる機材の特性といったようなことも含めて、デジタル化の思いもよらぬことが大変多うございまして、そちらの調整をしておる最中でございます。
 また、デジタル化に伴うあらゆるデバイスに対応すべく、今、研究開発中でございます。かなり対応のできている部分もございますが、新しいものに関して実験段階といったようなところも含めますと、まだそのデバイスに対応できてない部分もございます。本日、ご説明する中には、まだ開発中であったり、あるいはNDAを結んでいる関係上、ちょっとお話しできない部分があったり、あるいはご利用いただきます諸団体の皆様との標準仕様が決まっていないというようなこともございまして、きょう、十分情報開示できない部分が中には含まれておりますが、基本的にはできる限りのことはご説明して参りたいというふうに思っております。
 このデジタル化に先立ちまして、実は、昨年の10月に元日本テレビの社員による視聴率不正操作事件というのがございました。視聴率ということが大変いろいろな形で議論を呼びまして、私どもとしましては、きょう、ご参加いただいている皆様方にはご存じのことかと思いますが、現状での視聴率調査の仕方、視聴率というのがどういう形で行われているかということをご存じかと思いますが、一度、なぞらせていただきまして、その先にあるデジタル化を私どもはこういう形でとらえてやっていきたいと考えている、ということをご説明していきたいというふうに思っております。
 それでは、私どもの小黒から具体的にはご説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
小黒メディアリサーチ事業局局長代理 それでは、お手元の資料に沿ってご説明したいと思っております。まず第1章で現状の視聴率測定について、第2章では視聴率データから見た生活者の視聴変化、そして第3章で本題でありますデジタル化がもたらす視聴変化、そして最後、第4章は将来の視聴率測定。この4点について、お話ししたいと思っております。
 まず現在の視聴率測定でございますが、世帯視聴率と個人視聴率、この2つがございます。多く新聞等に出ておりますのは、世帯視聴率が中心になっております。どれぐらい多くの世帯が見られたのか。あるいは個人視聴率というのは、性、年齢、職業ごとにデータを見るようになってございます。
 測定の対象でございますけれども、時々誤解されることがございまして、地上波放送しか測定してないんじゃないかというのがございますが、ここにもございますように、放送はすべて測定してございます。ただし、報告書を作成する上で、衛星放送とケーブル放送はその他局に一括して集計を行っております。測定・集計しておりませんのは、絵柄の下にございますように、VTRの留守録、裏録、テレビゲーム、パソコン、テレビのブラウン管利用のこういったものは測定をしてございません。
 測定の方法でございますけれども、実は、3方式ございます。ピープルメーターによる視聴率測定。これは、一つの機械で世帯視聴率と個人視聴率が測定できます。2つ目は、機械式の世帯視聴率。それから、日記式の個人視聴率。上の1番目と2番目がオンラインシステムといわれていまして、電話回線を通じまして前日の視聴率を集計して、毎朝、各局に、あるいはユーザーにお届けするという仕組みになってございます。この3つの組み合わせをして、今、当社では全国27地区で調査を実施しております。
 日本の場合ですと、32の電波エリアがございまして、その27地区が機械式で実施しております。5地区は日記式になっております。今、全国合わせますと 6,250軒の世帯に機械がついておりまして、日々、データを出せる体制が整ってございます。昨年の事件以来、サンプル数が少ないお話もございましたが、イギリスでも 5,000サンプル、アメリカでも全米 5,000という話がございます。また、エリアごとのサンプル数でございますけれども、関東、関西、 600でございますが、アメリカの先進国でもエリアごとは 300か 600で調査しておりまして、統計的に見て、誤差をかんがみれば 2〜300から 600の範囲であれば妥当性があるというふうに我々は思っております。
 さて、この仕組みでございますが、関東地区、関西地区で実施しておりますPMによる視聴率調査でございますが、資料の黄色い部分が当社が開発しましたメーターでございます。各家庭でだれが見ているというボタンを押してもらうプリセットリモコン、これで家庭の見ている人に押してもらいます。それから、このボタンを押しますと、テレビの上に置いてありますPM表示器の方にイラストが入っておりまして、お父さん、お母さん、お子さんなど、テレビを見ている人のイラストの電気がついて、個人ボタンの押し状況が確認ができるようになっております。
 そして、これは、ふだんはテレビの後ろ側に置かせてもらっておりますのが、メディアセンサー。こちらはテレビのチャンネルの稼動、そしてVTRの稼動を自動的に測定しております。そして、これらの個人の識別、あるいはテレビ、あるいはVTRの稼動状況をこちらのメディアセンサーからオンラインメーターに、家庭内の電灯線を利用し、無線で飛ばしましす。このオンラインメーターは、そのデータを蓄積して、1日1回、電話回線を通じまして当社のホストコンピュータの方に送り出すハードです。そして、明け方に集計してユーザー様にお届けするようになっております。すべて、この一連の作業は無人で実施しております。
 さて、この標本の選び方ですが、当社は無作為抽出で行っています。基本的には、国勢調査結果をベースに行っております。関東の場合ですと、約 1,600万世帯がございますので、 600世帯で割り、インターバルが2万 6,330と出ます。このインターバルごとに600世帯を選びまして、調査のご協力をお願いをし、メーターを取りつけて視聴率調査を実施しております。
 関東地区 600軒の場合ですが、機械を取りつけっぱなしかというご質問も受けますが、そうではございません。1軒のお願いの期間は2年間というふうに定めてございます。 600軒を2年間たったら全部入れかえるのではなく、毎月25軒ずつ入れ替える方法です。 600軒でございますので、1年間で 300軒。 300軒を12で割りますと25軒。1ヶ月25件、これも1都6県ばらつかせて入れかえるという形で、常に 600件は関東地区の代表になるように実施しております。これは、国勢調査結果の家族人数別性・年齢構成ですが、適合しており、かなり母集団に近しい形で標本は維持されてございます。
 このように、ランダムで抽出しておりますので、国や新聞社で実施する世論調査と同じ統計手法に基づいております。したがいまして、統計の標本誤差ですが、こちらにございますように、±2√世帯視聴率(100 −世帯視聴率)/標本数、これですべて計算可能となっております。例えば視聴率が10%の場合ですと、± 2.4%の誤差がございます。これは 7.6から12.4の間に、 100回調査したうち95回はこの範囲におさまるという統計的な理論の結果でございます。この誤差表は、当社の各種レポートあるいはホームページにすべて掲載して、ユーザーの皆さんにはお知らせしてございます。
 さて、"視聴率は量で、質を表していない"という視聴率の議論がございますが、実は、この視聴率は毎分単位で測定しており、このデータを分析することによって、視聴者がその番組を最初から最後までじっくり見た、専念視聴のものなのか、あるいはチャンネルを見ながらフリッピングをして切りかえている、まだら視聴と呼んでおりますが、このような質的な視聴態度の分析が簡単にできます。
 ここでご紹介したいのは、視聴率が25%の場合です。25%というと、4世帯に1世帯が見ていた、あるいは4人に1人が見ていた、というふうに思う方がいらっしゃると思いますが、ここに書いてありますように、 100世帯、番組分数が 100分の場合、実は、視聴率25%といった場合には、25軒、4分の1ですね、 25軒が最初から最後まで見た場合にはこの形になりますが、100軒がつまみ食いで見たときに、一番左側ですが、視聴分数は25分というような形に出てくるわけでございます。このように、放送分数の半分見たものが真ん中という形で、視聴者がどのような見方をしたかというのは、このデータを使えば分析できます。また、パネル調査で実施しておりますので、毎週この番組を見ているとか、たまにしか見ないという分析も簡単にできるようになってございます。
 さて、このような設計で行っています調査を40年間実施してきました。きょうは、この20年間で果たして人々の視聴はどう変化したのかという話をしたいと思っております。全然変化のないグラフだというふうに思われるかもしれませんが、82年から2003年まで約20年間のデータを並べてみました。こちらは関東地区の世帯視聴時間の推移でございまして、約8時間、ほとんど変化がございません。この10年間ですが、WOWOW、CSと多チャンネル化が進みましたけれども、人々の視聴時間は変わってないということになっております。
 さて、では、個人の属性別で見たときにどうなのか。性・年齢別でご紹介したのが、この個人別の平均視聴時間になっております。世帯では8時間、個人全体では4時間というのが日本人のテレビの視聴時間になってございます。ごらんのように、性・年齢別に見ますと時間量に変化がございます。当然、若い方は少なく、50歳以上になると5時間、6時間と多くテレビに接触する状況がよくわかると思います。
 97年から関東地区ではPM調査を開始いたしました。括弧内は97年、スタート時の個人視聴になっております。こちらも、ごらんのように、比較してみますと、約6年前でございますけれども、ほとんど性年齢別にみても大きな変化は見られないというのが現状でございます。
 ただし、1日の視聴パターン、これは横軸に朝6時から夜1時まで見ましたところ、朝、昼、そしてゴールデンタイムの、8時、9時というのは非常にテレビを見る時間帯となっております。この山を94年、今から約9年前と比較をすると、ごらんのように、高いところは低く、低いところは高くという結果になってございます。特にゴールデンタイムの20時台が下がる傾向になっていますが、一方、23時から1時、深夜帯が上がっていることがおわかりいただけると思います。これは、人々の生活の変化、生活時間の変化、あるいは価値観の多様化ということに従って、このような変化があったと見ております。全体の視聴時間は変わらないけれども、テレビの見方が変わってきているということだと思います。
 深夜帯だけ取り上げてグラフ化したのがこちらの表でございます。関東地区の0時から2時までを、82年から2003年まで見てきますと、はっきり右上がりで上がってきております。82年には 8.5、90年には14.6、2003年は24.1と、3倍近く、この視聴人数がふえていることがおわかりいただけると思います。
 ちょっと早足で視聴率調査の設計、それから、ここ20年間の視聴動向を見ていただきました。このような状況の中でデジタル化がもたらす視聴変化、これがどうなっていくのかという形で、当社は先行的にいろいろな調査をやっておりますので、それを幾つかご紹介したいと思っております。
 こちらの表は、デジタル化の進んだテレビのイメージですが、ちょっと絵柄にしてみました。家庭の中ではテレビに地上波、BSCSが見られるような環境、セットボックスの方からADSL、ファイバー・トゥ・ザ・ホームで、インターネット放送、ブロードバンド放送が見られる、あるいはパソコンでテレビを見る視聴環境が整うだろう。また、自宅外ではカーテレビ、ポケットTVPDA、携帯電話という形で、こういうデバイスを使ってみる環境が整う。よくいわれますユビキタス、いつでもどこでも好きなものを見聞きできる環境が将来整うであろうというふうに我々は考えてございます。
 そして、こちらのページでは、デジタル放送の特徴ですが、これも皆さんご存じのように、高画質、高音質、多チャンネル、高機能、モバイル放送、これらがデジタル放送の特徴だというふうに思っております。それから、デジタル化でもう一つ視聴変化を大きく与えるであろうというのが、タイムシフト視聴。デジタルビデオレコーダー、このものが普及するというふうに我々は見ております。
 これらに対して、視聴者側である生活者の皆さんがどう興味を持っているのか、どう評価しているかというのを、実は、先行して2001年、2002年にかけて全国2,000 サンプルで調査を行いました。この調査のデータをちょっとご紹介したいと思っております。
 まず、現在のテレビに対する満足度でございます。これを画質、音質、チャンネル数、画面サイズの4項目で測定をしてみました。5ポイントスケールで調査を行いました。ごらんいただいておりますのは、それぞれトップ2の数字ございます。ごらんのように、画質、音質、画面サイズに関しては、「満足している」「どちらともいえない」、足し上げますと約8割以上、そこそこご満足いただいている状況がうかがえますが、チャンネル数に関しては、「満足している」が約4割、「満足していない」というのが3割方ございます。多チャンネルに関しては、この時点においては、まだニーズはあるというふうに我々は見ております。
 そして、デジタル放送の特徴、高画質、高音質、多チャンネル、高機能、このことについての評価を行ってみました。ここに書いたワーディングですが、画質、音質の良い番組が視聴できる。テレビのチャンネル数が増える、専門チャンネルが見られるようになる。具体的にこのコンセプトを提示して、5段階で、それぞれどの程度魅力を感じているかというのを測定した結果でございます。
 ごらんのように、高画質、高音質が74%。多チャンネルに関しても67、74と、約4人に3人の方は大変魅力を感じるというふうにお答えになっています。ただ、高機能の部分に関しては、上の2つに比較して、やや低い結果になっております。一つ、「データ放送で最新情報が得られる」が6割、高機能の中ではこれは高い数字になってございました。
 それからもう一つ、1セグ放送ですか、デジタル放送の新しい特徴がございます。モバイル放送。これもこれからスタートするので聞いてございますが、モバイルテレビについて、少しコンセプトを具体的に消費者に提示をして評価をとってみました。「移動中の空いた時間に、見逃した番組などを携帯やPDAで視聴できる」あるいは「携帯やカーナビが位置情報サービスと連動して、タウン情報が自動的に配信される」「携帯やPDAでテレビが見られる」、こういうコンセプトを提示して評価をしてみました。その結果がこちらです。ご覧のように、「非常に魅力を感じる」「やや魅力を感じる」、足し上げたスコアが並んでございます。
 この中でリアルタイム放送ですか、「携帯やPDAでテレビが見られる」が「非常に魅力を感じる」が14%、「やや魅力を感じる」が21、約3者に1人が携帯あるいはモバイル放送でテレビをみたい、興味があるというふうに答えられています。特に14%、これについてはもう一つ違うデータがございますので、ご紹介したいと思っております。
 実際に自宅外の行動で、移動中、あるいは電車・バスを待っている時間、いろんなシーンが考えられます。あるいはホテルのところで人を待つ場合もあると思うのですが、一番多いのは、電車など移動中だと思ってございます。現在、この中で人々が、今、何をしているかというデータと、できればしたいこと、2つの切り口で調査をし、データをまとめたのがこの表になってございます。15項目ぐらいブレストして調査票に入れて調査したわけでございます。ベスト10を見ていきますと、1番、「外を見る」。2番、「睡眠」。朝、寝ているのでしょうか。「考えごとをする」「本を読む」「人と話す」「広告を見る」というふうに並んでございます。
 それでは、本当は移動中、どんなことをしたいですか、と聞きました結果が右の表になってございます。「本を読む」が第1位に挙げられました。2番目、やはり「睡眠」でした。やっぱり朝は眠い、帰りは疲れるということがあるのでしょう、。3番目以降に挙がりましたのが「雑誌を読む」「CDMD、テーブなどを聞く」というのが挙がってきております。さて、「テレビを見る(携帯型TV)」は、ここでも第6位に挙がりました。15%でございました。先ほどのトップ1のスコアの14、それから具体的にシーンを提示したときに15%出ましたので、この時点における携帯による視聴者ニーズというのは約15%、7人に1人ぐらいが携帯テレビを見るようなことが考えられるのではないかというふうに我々は見てございます。
 さて、デジタル化のもう一つの変化でございます、タイムシフトでございます。実は、日本より先行してアメリカがTiVo、 Replay という商品を98年に発表して話題を呼んでございました。当社は、この機械を早期に購入し、現地で在米日本人とアメリカ人にパネルを引いて実験調査を行いました。先行して、視聴変化がどうなるかというのを見たかったわけでございます。そのものについてご紹介したいと思います。日本ではソニーのコクーンとかディーガとか、いろいろございますが、アメリカのTiVo というものはソニーもつくってございます。ご存じの方も多数いらっしゃると思いますが、デジタルビデオレコーダーの特徴でございますが、ハードディスクに長時間録画できる、インタラクティブなEPGサービスがついてくる、録画予約が簡単、あるいはポーズボタンを押して、もう一回リプレイができる等々、非常に便利な機能がついてございます。
 現地では、数十のパネルを引き、約4カ月間ほど使っていただいて、初期、中間期、最終期で調査を実施し、人々がこのハードに対してどういう評価をしたかというのを実際の面接調査で行ってございます。定量調査ではなく、インタビュー方式の定性調査でございます。Tivoの評価は大変よく、全調査世帯が、この機械を評価をし、継続的に使いたいという結果が出ました。
 結論が一つございます。テレビの視聴時間の増加は見られなかったが、テレビを見るのが楽しくなったと答えた方が多数でございました。そして、主な意見として、いつも見ている番組を見逃すことがなくなった、あるいはふだん見られない時間帯の番組が見られるようになった、また、余暇時間を有効に使えるようになった、というご意見が上がってきております。
 そして、このTiVo の主なメリットは何ですかというふうに聞いたところ、1番目に挙げられたのはEPGでございます。これは、日本とちょっと違うのは、アメリカは既に多チャンネルが進んでおり、40チャンネルあるいは 200チャンネルという中では、新聞とかテレビガイド誌よりも、テレビを見ながら簡単なボタンを押すと、その番組のスタートとエンド時間、そして簡単な粗筋が出るEPGの評価が非常に高かったということになっております。そして、録画操作が簡単。そして、ライブ・ポーズ、今見ているものを止められるという機能が非常に便利だった、というお答えが上がってきております。
 さて、このDVRが与える影響でございます。最終的には、この普及、そして利用が大きく影響してくると思います。人々がこの機械を買って、本当にどれくらい使いこなすのかどうか。その割合に応じて、最終的に視聴の変化が起きるというふうに我々は思っております。この普及、利用、この辺の側面も見ながら、測定の開発技術の研究していきたいと思ってございます。
 実験調査結果ですが、ごく一部のご家庭では、リアルタイム視聴からタイムシフト視聴に移った方もございますが、まだまだテレビ放送は生で見るのがいいというのが意見の方が多かったということを伝え加えておきます。
 さて、このような視聴の変化が起きるであろう、それを想定して、当社では、今、いろいろ準備を進めてございます。この場ではNDAとの関係もございましてあまり詳しくお話はできませんが、現行の測定と将来について比較をしておりますので、ご紹介したいと思います。こちらの表は先ほどと同じものですので、割愛します。
 現在の視聴率測定でございますけれども、ここにございます視聴場所、視聴形態、測定対象、測定デバイス、4つの切り口で現行の視聴率測定、そして将来どうなるかというのを整理すると、この右の表のようになるだろうと思っております。
 現在は、自宅内、そして視聴形態も放送と同時というリアルタイム、そして測定対象も1局1チャンネルのテレビ放送を測定しております。そして、デバイスに関しては、据置型のテレビが対象になっております。ただ、将来を俯瞰しますと、自宅外視聴が中心となる、モバイル放送への対応をどうするのか。そして、今、ご紹介しました蓄積型の対応ですが、タイムシフトの測定対応。そして、テレビ放送だけではなくて、データ放送あるいは総合サービス、インターネット放送、この測定をどうするのか。また地上波に関しましても、1局3チャンネル、多チャンネル放送ができる状況になっており、この測定をどうするのか。また、デバイスに関しましても、テレビだけではなくて、あるいはモバイル用のもの、あるいはPCテレビ、パソコンのテレビですね、このものの測定。この辺も測定についても検討すべきだというふうに我々は、今、考えております。この辺も普及、利用ですか、その両側面が重要なポイントだと思っております。
 現在、民放連さん、広告業協会さん、広告主協会さんとは、このデジタルの視聴率についてはいろいろな指標の議論を進めてございます。この2011年7月24日までは移行期間というふうに聞いておりますが、当面の間、現行の視聴率定義は変えない方がいいだろうと判断しております。先ほど来申し上げていますように、地上波、衛星、ケーブル、いずれかを通じて放送事業者の皆さんから出たコンテンツを測定・集計する、いわゆるライブ放送のものが視聴率。この定義でいきたいというふうに考えてございます。
 しかし、先ほど来、説明させてもらっております多チャンネル測定への対応、それからタイムシフトへの対応、それから高機能サービスの、データ放送、双方向への対応、モバイルテレビへの対応、あるいはパソコンテレビの視聴、インターネットへの対応ですが、これらについては普及、利用を見ながら技術開発を進めていきたいと思ってございます。
 現状でございますが、1番目の多チャンネル、この対応は終わってございまして、現在のメーターは 1,000チャンネルまで測定が可能ですし、BSデジタル放送、それから地上デジタル放送の多チャンネル放送、これはこの6月に対応を終わってございます。これらのデータに関しての使い方については、今後関係業界の皆さんと詰めていきたいと思ってございます。
 また、パソコンによるテレビ視聴、これはソフト・メーターの実験が一部終わってございます。これはデジタルでございますので、測定は簡単な部分もございます。しかし、テレビの見方ですが、パソコンでネットをしながら見ている、あるいは画面を小さくして見ている場合、これを現行の視聴率に足し上げてよいのかというような問題。あるいはパソコンの各種メーカー、ソフトによってバージョンが異なるため複数のソフト開発が必要になるなどの問題など、運用面の問題もございます。この辺も、順次詰めていきたいと考えております。いずれにせよ、これらの課題について、当社としては、今、独自の研究開発を進め、関係業界が詰めていきたいと考えておりますので、準備ができ次第、発表したいというふうに考えております。
 以上が、当社のいただきました課題でございます。ありがとうございました。
山本常務取締役 ということで、ご説明を終わらせていただきます。
塩野座長 どうもありがとうございました。何かご質問があれば承りたいと思います。
羽鳥座長代理 一つ、かなり細かいことを伺います。最後のビデオリサーチさんのところで、TiVo Replay TVというのをご紹介いただいたところですけれど、これはチューナーは1台でございましょうか。
 それから、2番目は、その次のページで、ハードディスクに録画された番組をDVDやビデオテープにコピーできるというのは、コピーワンスということが何件かご発表の中にありましたけれども、コピーワンスなのか、コピーはそのまま残るのかというあたりを教えていただけますか。
小黒局長代理 まず最初のご質問ですが、チューナーは1個だけでございます。ですから、同時に2つのものは録画できません。
 それから、コピーの方ですが、アメリカの場合にはまだアナログ中心でございまして、VTRが日本同様かなり普及しております。VTRと接続が可能で、幾らでもビデオテープに落とせる仕組みになってございます。
羽鳥座長代理 ビデオテープというのは、アナログ型のビデオテープですか。
小黒局長代理 そうでございます。
羽鳥座長代理 ありがとうございました。興味を持ちますのは、コピーワンスについて、ぜひコピーワンスにしてほしいとおっしゃる方と、先ほど来、教育用に使ったりするとコピーワンスというのは大変使いにくいというご指摘があるのと、それから、デジタルビデオレコーダーにつきましては、大変強力な手段であるけれど、チューナーが1台きりないのと、2台ある、あるいは複数台あった場合には、使い方がかなり違ってくるだろうということがあるもので、ご質問させていただいたところです。
塩野座長 ありがとうございました。篠原さん、何か民放の経験からいかがですか。
篠原構成員 それでは、簡単な質問をさせていただきます。ビデオリサーチさんの、デジタル化がもたらす視聴変化というのがありますけれども、これの解釈というか、それをちょっと教えていただきたいんです。左側の棒グラフが今の実態で、電車などで移動中に何をしているかという実態を聞いているわけですね。それから、右の方がどういうことをしたいかという、ちょっとレベルの違うことを聞いているのだと思いますけれども、それで、実態ですが、メディア関連の接触ということでいえば、本と雑誌、それからCD等ですね。それが9番。だから、4、7、9番という順位でメディア関係の接触行動があるわけです。
 これは現在ですけれども、こういうことをしたいということは、つまり、携帯テレビを見たいということというのは、まだ想像の域を出ていない。実際にはそういう体験をしてのデータではないと思うんですけれども、今現在、活字メディア、つまり、本だとか雑誌からメディア接触というのが、テレビ等が出てくることによって、だんだん時間がそちらの活字系のものから映像系のものへというふうにシフトしているという、これは大きな時代の流れがあると思うんです。そういう大きな、かなりドラスチックな流れだと思いますけれども、そういうことを想定すると、右側の方にある、例えばテレビを携帯端末等で見るというのが6番というのは、ちょっと順位が、これは一般の視聴者というか、ユーザーの現時点での評価ということなんでしょうけれども、私は、これはあくまでも仮説ですけれども、今の趨勢からすれば、現物を利用するようになれば、コンテンツとの関係ももちろんあるかもしれませんけれども、もっと上位に行くんじゃないかと思うんですね。つまり、本を読むというところを、場合によればしのぐ勢いになっていく可能性があるんじゃないかと思うんです。
 これはあくまでも、私、今、仮説的にお話をしているわけでございますが、ビデオさんのように、こういうたぐいの調査をよくやっていらっしゃる専門のお立場から、このデータをさらに延長してどういうように見るか、その辺のことをお話をいただければと思います。よろしくお願いします。
小黒局長代理 これを実施しましたのは2001年で、発表したのが2002年になってございます。携帯型のテレビ、確かに携帯電話のテレビというのはこれからだと思いますが、実際に小型テレビというのは市場にもう出ていると思いますし、そういうことでは視聴者側はイメージはしやすかったというふうに思ってございます。電車の中では満員ということがあり、実際にはこういうことをしたいんだけれども、満員でできないということもあるのだろう。で、実際にやっていることと、できればやりたいことという中で、一つテレビ視聴ということに関しても、デジタル化になれば、非常に高画質でアナログと違って安定して見られるわけですが、実際にどの程度のニーズがあるのかというところで、この15項目の中に1項入れて測定を実施してみたという経緯になってございます。
 我々の解釈ですが、少し私見も入るかもしれませんが、満員電車の中で、通勤時間にもよると思いますけれども、そこで見られるコンテンツは、朝、家で見られなかった続きのものを電車で見るパターン、すなわちライブ放送のものを見るパターンと、あるいはメモリースティック等に録画して見るというタイムシフト・パターンの、2つのパターンがあるのかと見ております。多分、それは個人、視聴者のニーズによって使い分けがあるだろうということがあります。
 そういうことを考えながら、このデータを眺めますと、やはり電車の中でゆっくり休みたいというグループと、こういう携帯で、今、多分、ゲームとかメールをやっている方がいらっしゃると思いますが、その行為とのトレードオフというところと見ていく方がよいのではないかなということでございます。きょうは、ここまでのデータしお持ちしていないのですが、実は、これは、車の中とか、あるいは電車を待っている時間だとか、いろんなシーンを設定して調査を実施してございまして、これらのデータを集計することによって、この辺の市場ニーズというのはもう少し深く見ることができると我々は見ています。ちょっと残念ながら、この場ではこれ以上お答えできませんので、ご容赦願えればと思います。
篠原構成員 ありがとうございました。
塩野座長 どうぞ、隈部さん。
隈部構成員 タイムシフトの視聴を将来、視聴率のデータに入れていくというお話なんですけれども、タイムシフトといっても、時間をどのぐらい後まで含めてお考えになっているか。これはアメリカでもいろいろトライしているようですけれども。
 それからもう一つ、これは民放の方には辛い話ですけれども、CM飛ばしというのを自動的にできる、Replayはもうなくなったはずなんですけれども、マニュアルでできるというようなことから、広告主に提出する視聴率調査というのが、それとの関係はどういうふうになっているか、お考えを伺いたいと思います。
小黒局長代理 まず、視聴率という定義の部分ですが、これはリアルタイムでの視聴を視聴率と呼ぼうというふうに考えてございます。それから、タイムシフトの視聴についてはどう測定していくのか。それから、ご質問のどれくらいの期間の再生のものをカウントするのか、24時間以内なのか、1週間以内を足し上げて新しい視聴率――名称を変えた方がいいと思っておりますが――このことはこれからの議論だというふうに我々は思っております。既にイギリスでは、VTRの再生の視聴率を測定しており、これは1週間以内で見たものを足し上げております。ただ、それは視聴率という名称を使っていません。現在、イギリスは2つの数字を運用しています。ライブ・オーディエンス、これが日本でいう視聴率、それから、タイムシフト視聴は、1週間内再生をライブ・オーディエンスに足し上げたものをコンソリデイティッド・オーディエンス、統合視聴率という形で運用しております。ただ、アメリカでも、今、議論が始まっていますが、日本同様、現行の視聴率はライブだけで、再生視聴率は測定も運用もしておりません。
 問題は、このライブ視聴にタイムシフト視聴を合算したものですね、これは、多分、そのデータの使い方といいますか、利用の目的によって使い方が異なってくると思っています。そういうことを考えますと、タイム視聴に関しては、ある言い方をすれば、24時間以内視聴のもののデータが一つ、それから1週間以内再生視聴のものが一つ、それから、いや、このコンテンツは月に1回だ、1カ月間内再生視聴というような見方があると思いますので、これは測定した後、データベースの持ち方によって、幾らでも加工できますので、それはデータを使う皆さんとの協議の上でルール化をしていきたいというのが当社の考えでございます。
隈部構成員 CM飛ばしについてはいかがですか。
小黒局長代理 CMに関してなんですけれども、これもアメリカでインタビューした結果がわかってございます。アメリカ人、日本人、両方にヒアリングしたのですけれども、アメリカ人の方がよくスキップはしていました。それは、向こうのコマーシャルというのはあまりおもしろく、連呼型が多いことも関係しているかも知れませんが、コマーシャルに関していいますと、スキップされるシーンもございますが、逆にスキップされないシーンもございました。繰り返し見る。特に子供のいるご家庭で、子供向けの商品のコマーシャルは、実は、飛ばされず、繰り返し見るというようなこともございます。また、好きなタレント、好きな音楽、新しい商品ですか、あるいは自分が興味のある商品が出るというと、そこを繰り返し見るということもあります。ただ、飛ばされるシーンというのは、恐らく何度も見ているとか、あるいは自分と関係ない商品の場合、こういうことに起きる可能性があるというふうに見ております。
塩野座長 どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。
 まだまだご質問はいろいろあろうかと思いますけれども、時間も大分過ぎましたので、きょうのヒアリングはこれで終わりにしたいと思います。どうも皆様、ありがとうございました。

(3)閉会

塩野座長 それでは、後のことで、ちょっと私の方と事務局の方からご案内がございます。
 一つはご相談でございますけれども、これまでいろんな方面の方からのヒアリングを行ってまいりました。ヒアリングは、一応この段階で終了することにいたしまして、次回から2回ぐらいかけてでございますけれども、論点の整理を行いたいというふうに思っております。論点整理を行った上で、個別論点ごとに議論を深める。また、場合によってはヒアリングを行う。そういうことになろうかと思います。
 どういうふうに論点整理を行いたいか、いろんな考え方はありますけれども、とにかく皆様方から、自分はこれというのをさっさと出していただくというのも一つですけれども、何をどういうふうに出していいかわからないということもいろいろあろうかと思いますので、一つのあり方としては、今までのヒアリングの中から、あるいはヒアリングと質疑応答の中で得られた情報を論点的に整理して、それを皆様にお目にかける。そこで、皆様の方から、構成員の方から、ここは足りないとかいうようなことで、それを補充していただくというのはどうかなというふうに思っております。とにかくヒアリング及びその質疑応答、さらにいろんな説明もございまして、その中で出た論点をまず客観的に整理してもらう。それを土台にして、皆様方から論点をつけ加える。ただ、その論点全部つけ加えますとものすごく膨大なものになりまして、到底時間内で収まらないことがありますので、一応論点の整理が終わった後で、そのうちのどの論点を深めるかという点を改めて議論していただくと思いますが、最初は幅広く論点を整理していただくという運びにしたいというふうに思っておりますけれども、そういうことでよろしゅうございましょうか。
 では、まずとにかく事務局で客観的に整理をした資料を出して、できれば次回前に出していただけますか。それで、それを見ながら構成員の方々がそれぞれ自分の論点を拾い出してつけ加えていただく、そういう運びにしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 今日は、9時半から長時間、報告者のプレゼンテーターの方も随分長いことお座りいただきまして恐縮でございました。どうもありがとうございました。それでは、事務局から、どうぞ。
安藤課長 それでは、次回の会合でございますけれども、12月7日、火曜日、午前、またちょっと朝早くて恐縮でございますけれども、9時半からの開催を予定しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。場所等につきましては、別途、確定し次第、ご連絡させていただきたいと思います。事務局からは以上でございます。
塩野座長 どうもありがとうございました。


以上

  
  
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