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「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第10回会合 議事要旨


1    日時
 平成17年4月7日(木) 1000分〜1135

 場所
 総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

 出席者
(1 )調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
伊東晋、隈部紀生、小塚荘一郎、塩野宏、篠原俊行、新美育文、野村敦子、
長谷部恭男、濱田純一、舟田正之、村井純、山下東子(12名)
(2 )ヒアリング対象者
株式会社三菱総合研究所: 中村次世代社会基盤研究部長、
  安江デジタル放送研究チームリーダー
(3 )総務省側
堀江情報通信政策局長、小笠原大臣官房審議官、福岡情報通信政策局総務課長、
安藤放送政策課長、浅見放送技術課長、南地上放送課長、今林衛星放送課長、
江村地域放送課長、小笠原放送政策課企画官、井上放送政策課企画官

 議事
(1) 開会
(2) 議題
  1)WGにおける検討状況
2)放送分野における外資の間接支配規制に関する検討状況について
(3) 閉会

 議事の概要
(本文中の記号の意味は、以下のとおり。
  ●…構成員の発言、○…ヒアリング対象者の発言、△…総務省側の発言)


(1) WGにおける検討状況
 事務局より、各ワーキンググループの検討状況について説明が行われた。続いて、株式会社三菱総合研究所安江デジタル放送研究チームリーダーより、英仏独の公共放送の状況について、それぞれの組織、所有チャンネル、受信料制度及び新サービスに関する動向等の説明が行われた。

(2) (1)に関する質疑応答
主な内容は以下のとおり。

公共放送ワーキングの検討状況としては、特にデジタル化の問題に関わってどういう課題が出てくるかという、本格的な切り込みまではまだ至っていない。そういう議論の前提となる基本的な公共放送の制度のあり方について、少し比較制度的な視点からまず考えてみようということを始めているところ。また、利用者の側からの検討を少しやってみようかと考えているところ。

英独仏の公共放送は、それぞれ英独仏的なものがずっと基礎にあるが、これを根本的に変えようという動きは少なくとも現時点ではないと理解してよいか。
基本的に従来型のスタイルを変える動きはない。

公共放送に対する信頼が揺らいでいるということはないか。
そのような議論は特に出ていない。

BBCトラストはどこが変わったのか。また、BBCが新規サービスを行う場合には、BBCトラストが公益性の観点から審査するとのことだが、BBC内の機関であるBBCトラストが公益性を自ら判断することに、イギリスで異論は出ていないのか。
ご指摘のような点もあり、BBCトラストは経営委員会と比べてより外部的な組織にする、というのが一つの改革のポイントになっている。
去年の春に出されたいわゆるハットン・リポートで、BBCのガバナンスのあり方についてかなり強い批判がなされた。その折の一つの焦点は、BBCの経営委員会が、政府とBBCとが対立した際に専らBBCの事業のチアリーダーとしての役割に徹してしまってきちんと事業のあり方を監督をしていなかったのではないか、というところ。そこで、BBCトラストにはもっぱら監督者としての役割を持たせようということになったもの。また、公益性についての審査は、現在の経営委員長マイケル・グレード氏が行ったBBC内部での改革で、既に始めている。
BBCトラストは、むしろ政府の機関というふうに考えた方がよいか。
BBCトラストは、あくまでBBCの機関。基本的にはBBCの経営委員会がBBCを監督しているのであって、それ以外のものは監督せず、BBCの自律を守っているというのがイギリスのよき伝統だという理解。
ハットン・リポートの後、BBCが独自にグレード経営委員長のもとで改革を進めている。例えばBBCの執行部と経営委員会を独立させるために、BBCの建物にあった経営委員会を別の建物に移し、また、政府の高官を務めていた人物を長とする独立した事務局みたいな存在を作った。

コンテンツワーキングでは、一方で、技術の進み具合から従来のコンテンツとは違ったことを考えなければいけないという意識を皆さんが持っている。他方で、それをしようとすると、視聴者、あるいは一般の、視聴者でない機器のユーザー等も含めて非常に不便になる。そこの両方を満たす解がどうもなかなか見つけられないという印象。それぞれの方向から意見があると、どうしても激しい対立になる。

コピー制御の情報に沿った動きをしない無反応機器が市販されると、一部の機器はきちっと放送事業者あるいはコンテンツホルダーの意思に従ったコントロールをしているのに、一部の機器はそうではなく、自由にコピーができるということになり、全体の統一がとれなくなる。
現在の著作権法及び不正競争防止法で、コピー制御信号を外すことについては権利侵害であると規定しているが、無反応機器は、コピー信号を外すのではなく、コピー信号に反応しないだけなので規制はできないという問題意識。ただし、無反応機器というものが技術的にはあり得るという問題意識で進んでいる段階。

デジタルラジオの方は産業界の方が入った別の研究会が進んでおり、大分煮詰まっているということで、そちらの情報を得た上で、制度化しなければならないものは制度化していく、というような運びになろうかと思われる。

衛星・ケーブルワーキングでは、もう少し事業者間の取引というものの実態をきちんと調べないと、政策なり制度というふうにいかないのではないかということで、今後、もう少し事業者側からの情報というものを取ろうという段階。

(3) 放送分野における外資の間接支配規制に関する検討状況について
 事務局より、放送局の外資規制に関する法改正の基本的考え方につき、検討の背景や見直しの具体的内容について説明が行われた。続いて、当該説明に関する質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。

外資規制、間接規制であれ、直接規制であれ、これ自体を問い直すというのは、各国でもまだ動いていないのか。
基本的には米国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、豪州、韓国はすべて、間接出資規制も含めて外資規制をやっている。英国では国内投資の促進という観点から、2003年にこの外資規制を外したが、いろいろと議論があり、一定のメディア企業の合併に際して、メディアの多様性についての公益テストをするという代替の手段を設けた上での撤廃。大勢としては、直接出資、間接出資含めて外資規制を行うというのが、今のところ、基本的な枠組み。
外資規制は非常に古典的なドクトリン。マスメディア集中排除の原則とも並立し得るもの。一方においてマスメディア集中排除の原則がいろいろ議論になっているときに、外資規制がそのままということになって、いよいよもっと強化しろということだが、その辺のドクトリンと今後のあり方みたいなものは、ここの研究会の長期的な問題となるかもしれない。

ドイツも外資規制そのものがあるようには思えないが、どんな代替的な手段を使っているのか。
ドイツの場合には、独またはEU加盟国内の居住地要件がある例があるというのが一点。もう一つは、ドイツ番組、ドイツで制作された番組を流すということを免許の要件とし、そういう観点で実質的に外国製の排除というか、ドイツ文化の保護というか、そういったところを担保している。

主要国の場合の外資制限ということに関しては、ベクトルはどちらを向いているのか。緩和の方なのか、ある特定の放送領域に関しては、むしろ、もう少し厳しくする方向なのか。
同時に直接出資、間接出資を入れた国もあれば、比較的最近に至って間接出資を入れている国もある。一概にすべての国々で緩和の方向に向かっているわけではない。
  もともと我が国の場合、直接出資規制で行っているが、ここ数年で外国法人の日本法人の株式を保有する割合が随分上がってきており、そういう状況の中で外資規制の実効を確保する意味からすると、間接出資のところを見なければならない。規制強化というよりは、規制の実質、もともとの政策目標の実質を確保するための制度的な手直し。

直接規制と間接規制は、制度的にとにかく違うことは違うが、本質的にそんなに大きな変化なのか。
規制をするという前提に立てば、それほど大きな変化ではないのだと思うが、規制をするかどうかという本質問題については、今回、特に議論をしていないということではないか。

間接規制は、具体的にどういうふうにするつもりなのか。
放送局の方で、主要株主として外国人がどの程度入っているかということについては、ご協力いただいてご報告いただく。また、大量保有報告等での把握等をあわせもって、放送局さんの方で状況を把握しつつ、名義書換等々に対応していただくというような形になろうかと思われる。

英国については外資規制を外したのか。それとも最初からなかったのか。
イギリスについては、外資規制はもともと存在したが、先ほどのような背景事情からこれを外し、一方においてメディア企業買収の際に多様性審査、公益性審査というものを行うという形になっている。また、イギリス国内におけるコンテンツの多様性、公共性を担保するための一定の審査が行われるという規定もあるようである。

各国、上限ぎりぎりまで実際に外資規制、外国資本が入っているのか。また、そのときの外国資本というのは同業者なのか、それとも全然関係なく、利益、配当金を受け取るような会社なのか。
データを持ち合わせていないので、別途、わかる範囲で調べ、説明させていただきたい。

土地所有について外国人規制というのが日本でもかつてあったが、事実上、骨抜きになっている。放送分野においては、資本規制することによって目的を確保できるのか。
電波は国際的に割り当てられている非常に有限希少な公共性の高い国民的財産であり、加えて、放送の場合には、一国の政治、経済、社会、文化、さまざまな分野に非常に大きな影響を及ぼすことにもなることから、基本は自国民優先という考え方に基づいて規律している。したがって、その所有について、議決権というものに着目した上で規制するということは、政策目的を実現する上で有効な手段であると各国でも考えられている。

外国製の文化を排除しようというのはいろんなところでやっているが、日本が一番開けっ広げ。日本は放送政策について、そこをすぐ変えようという気持ちはないのか。
外資についても、基本的に所有、主体規律というところでそれを排除し、番組の内容については、放送事業者さんの方の編集自律の中で対応していくのが基本というのがこれまでの考え方。そこについて現時点において変更するというような考え方は基本的に持ち合わせていない。


次回会合は未定。

以上


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