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調査研究会


「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
13回会合 議事録

  1. 日時
      平成1710月7日(金) 1000分〜1130

  2. 場所
      総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

  3. 出席者
        (1)  調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
    伊東晋、隈部紀生、小塚荘一郎、塩野宏、篠原俊行、野村敦子、長谷部恭男、羽鳥光俊、
    濱田純一、村井純、山下東子(11名)
        (2)  総務省側
    清水政策統括官、河野審議官、福岡情報通信政策局総務課長、南放送政策課長、大久保放送技術課長、
    安藤地上放送課長、今林衛星放送課長、岡崎地域放送課長、長塩企画官

  4. 議事
     (1)開会
     (2)議題
        1)今後の取り運び(案)について
        2)マスメディア集中排除原則をめぐる最近の動向について
     (3)閉会

  5. 議事録

      (1)開会
    塩野座長 第13回のデジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会を開催いたします。お忙しいところ、ご出席いただき、ありがとうございました。本日は、新美、舟田両構成員のご欠席と承っております。
      前回の会合で座長預かりとさせていただきました中間取りまとめにつきましては、既に事務局から構成員の方々にご連絡させていただいておりますとおり、若干の字句修正をした上で、8月9日に報道発表をさせていただきました。
      今後の取り運びにつきましては、後ほど、事務局から説明があると思いますが、これについてある程度ご了解を得ましたら、それを踏まえまして議論を進めていきたいというふうに思っております。
      その前に、8月に総務省で人事異動があったということです。新しく着任されました清水政策統括官からご挨拶をいただきます。
    清水政策統括官  新しく政策統括官で、ITを担当しておりましたが、放送を担当することになりました清水でございます。この研究会の先生方には大変お世話になっております。
      ちょっと挨拶が長くなってしまうんですけれども、放送の世界は、今考えると、昭和43年に大学に入って、45年の講義で、まだ覚えているんですが、1回目の講義のときに塩野先生が、当時、電波法と電気通信事業法のお話をいただいて、役人というのは変な法律を作るというので、こんな法律の作り方はないみたいなことを言われたことが一度ありまして、ああ、難しい話だな、もう二度とこの世界は立ち入るまいと思いながら、放送の世界にしばらく、今から10年前にデジタル化を初めて言い出したときの課長をやっておりました。
      当時、デジタル化は皆さんから大反対を受けました。「デジタル化は不要である、人間の耳はアナログで聞くんだから、デジタル化する必要はない」。「デジタル化は不要である」。「デジタル化について、今までアナログで進めたから、あえて進めていく必要はない」。その中で、ある放送会社のお二人だけが、「世界がデジタル化の方向で行くのに、日本が遅れていてどうするんだ。早く方針を決めなければ、どちらでも方針を決めなければいけない」と言われた。
      当時、デジタル化を言った時点では、世界の走りだったと思いますが、今は現実的に進捗状況は世界の第6位の状況です。実際上、これからの進展をベースに政策論を組み立てていかないといけない、また、肝心かなめのところがずれてしまう可能性があると思っております。今は業界を含め、経費の負担の問題はありますが、デジタル化の方向に向かっていることは大変よいことでもありますし、通信・放送の議論はさまざまあるかと思いますが、この流れをさらに進めていただけるよう、この研究会の中でいろんなお知恵を出し、いろんな方向性を示唆いただければ大変ありがたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
    塩野座長  どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。それでは、その他の総務省の皆様から簡単にごあいさつをお願いしたいと思いますが、河野大臣官房審議官から順にお願いをいたしましょう。
    河野審議官  審議官の河野でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
    福岡総務課長  引き続きでございます。総務課長の福岡でございます。よろしくお願いいたします。
    大久保放送技術課長  新しく放送技術課長になりました大久保でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    安藤地上放送課長  地上放送課長の安藤でございます。よろしくお願いします。
    今林衛星放送課長  衛星放送課長の今林でございます。引き続き、よろしくお願いします。
    岡崎地域放送課長  8月から地域放送課長になりました岡崎でございます。よろしくお願いいたします。
    南放送政策課長  放送政策課長として事務局を仰せつかります南でございます。よろしくお願いいたします。
    長塩企画官  同じく事務局を担当させていただきます長塩でございます。よろしくお願いします。
    塩野座長  それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
    長塩企画官  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料、上から順に、座席表、一枚物がございます。その次に、議事次第が一枚物ございます。そのあと、ホチキスで止めておりますが、右肩に資料1と打っている資料がございます。続きまして、資料1参考資料という冊子がございます。その下、資料2がございます。それから、別とじになっておりまして、先ほど、ご紹介がありました、8月9日の報道資料が一まとめにしてございます。以上でございます。
    塩野座長  どうもありがとうございました。冒頭に申しましたように、中間取りまとめを8月9日に報道発表させていただいたわけでございますけれども、その後、この中間取りまとめを受けて、今後、どういうふうにこの調査研究会を進めていったらいいか、事務局も一生懸命考えましたし、私もそれなりに考えさせていただきました。何しろ、幅が非常に広い。それから、論点もかなり理屈の世界の問題と、それから、まさに実務とのやりとりの間で考えていかなければならない問題もあり、それからもう一つ、今、ずらずらっと名前がありますように、これは日本の役所のいいところでもあり、悪いところでもあるんですけれども、審議会あるいは研究会の委員がずうっと長くいるのに、肝心の役人の方がどんどんどんどん代わっていくということもあります。前のやり方をそのまま受け継ぐ人と、それから、いや、少し変えてみたいという役人も、いろいろあって、8月中、いろいろな角度から勉強なり検討を進めていただきまして、今後、限られた時間ではございますけれども、そしてまたいろんな政策課題、喫緊の政策課題が立て込んでいるところで、この調査研究会に中間取りまとめを踏まえた上でどういうふうに議論を進めていっていただいたらいいかということについて、事務局なりに一応の取りまとめをしております。今日は、その点について、まず事務局なりの考えをお伺いし、そして、皆様方のご意見もお伺いしたい。これが今日の第一の議題でございます。
     
    (2)議題
      1)  今後の取り運び(案)について
    塩野座長  それでは、最初に今後の取り運びにつきまして、事務局、南放送政策課長ですか、説明をお願いいたします。
    南課長  それでは、お手元の資料1、それから資料1参考資料に基づきまして、今後の研究会の取り運び方つきましてご議論を賜りたいというふうに思っております。
      まず、先立ちまして、今回、13回目の会合ということでございまして、これまで親会の方は12回、会合を積み重ねていただきまして、先ほど、座長の方からもお話がございましたとおり、8月9日に中間的な取りまとめを発表していただいたところでございます。その間、特に今年の2月以降、4つのワーキンググループに分かれて大変精力的なご議論を賜りまして、ワーキンググループ全体で合計28回もの会合を重ねていただいたところでございます。制度ワーキンググループにつきましては8回、衛星ケーブルワーキンググループは7回、公共放送ワーキンググループは6回、コンテンツワーキンググループは7回ということでございまして、大変多岐にわたる論点につきまして集約を図っていただきまして、まことにありがとうございました。
      それで、その中間的な取りまとめを受けまして、今後の取り進め方でございますけれども、ここに掲げさせていただいておりますとおり、特に制度的な課題のうち、重点的にご議論を賜りたい。中間的取りまとめを受けまして、若干重点課題を絞り込んだ形でのご議論、そして、できますれば親会を中心としたような形でのご議論を賜りたいというふうに考えているところでございます。
      まず、重点的な課題の中の1つ目の柱は、いわゆる通信・放送融合といったような動きへの対応でございまして、1つ目は携帯向けの「ワンセグ」、最近、愛称が決まったようでございますけれども、来年4月からいわゆるサイマル放送という形でいよいよサービスが本格化するということになってございます。その1セグサービスに関しましては、巷ではよく2008年ぐらいから独自サービスをやりたいのではないのかといううわさも流れているところでございますけれども、本当のところ、独立サービスといわれるものが一体どういうニーズがあるのかということも踏まえた上で、制度設計といわれるものが必要であれば、その検討をしなければいけないということでございます。
      その1セグサービスに関しましては、サービスが始まれば、また視聴者の皆さん、あるいはキャリアの皆さんからさまざまなニーズも出てこようかというふうに思っておりますので、その独立サービスの在り方につきまして、かなり重点的な詰めた議論が必要かなというふうに考えているところでございます。
      2点目は、いわゆるサーバー型放送に関します、いわゆる有料放送制度と言われるものの在り方でございます。サーバー型放送に関しましては、現在、事業者の皆さん中心にいろいろな運用の規格づくりが進められているところでございます。お聞きするところによると、若干ペースはダウンしているようでございますけれども、2007年中ぐらいの規格化を目指して、その先のビジネスモデルは一体どうなるのかというのは、必ずしも現段階でははっきりしていないところはございますけれども、仮にこのサーバー型放送あるいは先般からご議論いただいておりますとおり、デジタルラジオといったものが実用化されて参りますと、そういった面での有料放送というビジネスモデルがあり得るのかどうか。その場合は、それに対する制度的な対応の在り方はどうあるべきなのか、というところが議論になってこようかというふうに考えているところでございます。
      その他、デジタル化に伴う制度的な課題で中間的な取りまとめでいろいろご議論いただいたテーマというものも必要に応じてご議論を賜りたいというふうに考えております。
      それから、2つ目のテーマは、いわゆる放送を取り巻く経営環境の変化が、今、非常に著しいという状況にありまして、中間取りまとめの中にもございますが、株式保有の在り方が大変変わってきております。現在、外資規制の在り方につきましても、改正する提案を今国会でも再び提出をさせていただいているところでございますけれども、そういう株式保有の在り方が非常に変化をしていく中にあって、放送会社の経営というのは、今後、どう進められていくのかということでございます。
      1点目は、いわゆる持株会社によりますグループ経営の在り方と言われるものにつきましても、ご議論いただくテーマなのではないかというふうに考えているところでございます。ご案内のとおり、金融ですとか、航空ですとか、あるいは通信の世界もそうでございますけれども、持株会社を通じたグループ経営というものがかなり、経営の効率化も含めていろいろご議論いただいているところでございます。放送事業者も将来、2011年に向けていろいろデジタル化の投資も大変でございますけれども、2011年以降の経営の在り方も含めてどうなのかということにつきましては、今日的な視点に立った議論が必要になってくるかもしれないということでございます。特にローカル局の経営の再編成ということで、先般のマスメディア集中排除原則の見直しに伴いまして、隣接地域のローカル局同士が合併をすることも、あるいは持株会社のもとで統合することも、一応制度的には許されているところでございます。
      そういう意味で、持株会社のもとでのグループ経営という新しい論点というものも出てきているところでございますけれども、ただ、その位置づけというものは必ずしも放送の仕組み、あるいは電波法の仕組みの中で明確に位置づけられているものではございません。一言でいうと、例えば外資規制一つの話をとりましても、こういう持株会社に対する規律というのは、もちろん、今はないわけでございますので、そういう観点から、では、そういうグループ経営というものが今後どういうふうに施行されていくのかということも踏まえた議論が必要になってこようかなというふうに考えているところでございます。特にローカル局に関しましては、2007年以降、デジタル投資が本格化してくる予定でございますので、その経営の効率化といわれるものは常に大きな論点として上がってくるというふうに考えられているところでございます。
      2つ目は、いわゆるマスメディア集中排除原則の在り方の問題でございます。これは、これまでもいろいろ様々な観点からご議論いただいたところでございますが、特に大きな状況の変化といたしましては、ご案内のとおり、マスメディア集中排除原則に違反する、いわゆる名義株といわれるものを通じた違反事例が多数、70件を超える違反事例が生じたところでございます。その際、いみじくも分かったところといたしましては、ローカル局、特にFM局ですとかそういったところの経営が、地元の資本だけで十分に支え切れるのかということに対して、違反状況を解消していくプロセスの中で、非常に地域の経済の実態と制度の現実とのギャップが一部見受けられたところでございますので、そういった地域の実態とも兼ね合わせてどうなのか。特に私ども、自民党の方でマスメディア集中排除原則の違反のご報告をさせていただいた際も、テレビ会社がAMラジオ放送を100%持っていいのに、FM放送は20%しか持ってはいけないというのは、同じラジオという観点からいかがなものか。要するに、バランスがおかしいのではないのかというご指摘もいろいろいただいたところでございます。
      それから、BSの関係につきましては、ご案内のとおり、非常に経営状況が、少し良くなりつつあるのかもしれませんけれども、依然として赤字基調が続いているという中で、BSとテレビを兼営してもらいたいという明確な要望がまだ出されているものではございませんけれども、そういったBSとテレビとの在り方と関係というものにつきましても、引き続き議論の焦点になっていようかなというふうに思っているところでございます。ただ、この辺は明確な整理された要望等を承ったわけではございませんので、そういう意味で、一部では兼営を認めることを前提として検討を進めるかのような報道もなされておりましたが、全くそういう事実はございません。そういう意味で、兼営以外のやり方は本当にないのかどうか、あるいはそれ以降のBSの経営状況も踏まえた考え方についての一定の整理か必要だろうというふうに思っております。
      それから、ここには書いてございませんが、いわゆる三事業支配といわれたものの基準も明確ではないのではないか、というご議論もいただいているところでございますので、そういったものをトータルとして今日的な意味でのマスメディア集中排除原則の在り方につきまして、さらに突っ込んだご議論を賜れればありがたいというふうに考えているところでございます。
      それで、それ以外の、この黄色で囲んだ下のところのテーマが、これまでワーキンググループで主として整理をいただいたテーマでございますけれども、例えば衛星の関係の中では、特にプラットフォーム事業の在り方等がいろいろご議論されたところでございます。これにつきましては、関係者間での自主的な取組あるいは調整が進んでいるやにもお伺いをしてございますし、これからBSのデジタル化に伴って、チャンネル増を踏まえた新しい衛星放送のいろいろな需要動向等の調査、検討というものも、多分、並行して進んでまいるかなというふうに思っておりまして、そういった関係事業者間の調整を引き続き精力的に進めていただきまして、もし必要であれば、またこちらの方の検討会で検討していただくということでいかがかなというふうに考えております。
      それからまた、公共放送の関係に関しましては、皆様方、ご案内のとおりでございまして、先般、NHKから新生プランなるものが公表されたところでございます。これから改革に向けた自主的な取組を強化していこうという動きが生じているところでございまして、引続き私どもとしてはその取組をしっかり注視をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
      それからもう一つ、村井先生をご中心にコンテンツWGでご議論いただいた案件につきましては、現在、情報通信審議会でも議論が進められているところでございますけれども、いわゆるコピーコントロールの在り方につきまして、コピーワンスの機能の見直しといったようなものを中心といたしまして、現在、放送事業者とメーカーさんの間で専門的な見地からの見直しのご検討が進められているというふうにお伺いしておりますので、そういった事業者間の皆様方の調整のこれからの動きをよく注視をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。
      したがいまして、当面はこの制度的な課題を中心といたしまして、親会を中心にご議論を賜りまして、4つのワーキンググループにつきましては、基本的にそれまでの間はしばらく休会というふうにさせていただきたい。ただ、制度的な課題を緊急に検討する必要が生じれば、その都度、必要に応じて開催をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。いずれにしましても、これまでのワーキンググループの各座長の皆様方のお取組に対しまして、改めて御礼を申し上げたいというふうに考えております。
      それで、次の2ページ目をお開きいただきたいと思いますが、では、それを時系列に今後どういう形で議論をお進めいただきたいかということでございます。もし、お許しをいただけるということであれば、次回以降、これ、日程も皆様方のスケジュールを調整させていただいておりますけれども、次回以降、3回ぐらいをかけまして、先ほど申し上げました重点課題につきまして、関係者の皆さんからひとつ突っ込んだヒアリングを実施をさせていただきたいというふうに考えております。その間、必要であれば、制度ワーキンググループの方は場合によっては開催させていただくこともあり得べしだというふうに考えているところでございます。
      それから、相前後して恐縮でございますが、先ほど、持株会社の話をさせていただいておったところでございますが、場合によっては、お許しをいただだけますれば、持株会社に関します商法の分野のご専門の委員の追加をできればお願いを申し上げたいというふうに考えているところでございます。
      それから、このヒアリングと並行いたしまして、マスメディア集中排除原則も含めまして、今、諸外国の所有規制ルールもどんどん動いているところでございますので、できますれば、欧米のこの制度の最新の動向につきましての調査も、各委員のご協力もいただきながら、進めさせていただければ大変ありがたいというふうに考えているところでございます。それで、ヒアリング等を通じまして、12月ぐらいから突っ込んだ論点のさらに深掘りをした検討を進めていただきまして、もし必要であれば、12月末に一部の課題についてのご提言をいただく。最終的には来年の6月、これが2年目ということになるわけでございますが、最終的な報告の取りまとめに向けて議論を進めていただければありがたいというふうに考えているものでございます。
      それで、資料1参考資料という別の紙をちょっとごらんになっていただきたいと思います。そのバックグラウンドとなります資料を簡単に見繕ったものでございます。
      まず1ページ目をお開きいただきたいと思いますが、これは、先ほど申し上げましたとおり、携帯向けサービスの実用化に向けたスケジューリング、来年の4月1日から「ワンセグ」という名前でスタートするということが正式に発表されて動き出している。で、端末に関しましても、一応各キャリアさん、それぞれ最低1機種は端末を出されるという動きで進んでいるということでございます。それから、サーバー型放送に関しましても、現在、サーバPの中で運用の規格化に向けた動きが進んでいるところでございまして、2007年中の規格化といわれるものを目指して、現在、精力的な活動を進めていただいているという状況でございます。
      それで、外との関係でございますけれども、次の2ページ目をお開きいただきたいと思います。これはブロードバンド契約者数、もうご案内のとおりでございます。FTTHあるいはDSLといったブロードバンドサービスが、今、非常な勢いで伸びているということでございます。これに端を発しまして、ブロードバンド上あるいはネット上に動画を配信していこうという動きも表面化しているという状況でございます。
      3ページ目は、ご案内のどおりでございます。これは、広告収入の比率をお示ししたものでございまして、従来型のテレビ、新聞といったものに対しまして、インターネットといわれるものの広告の比重が、現在、急速に高まっている。16年度に関しましては、とうとうラジオをインターネットの広告が抜いたという状況でございます。
      4ページ目でございますけれども、そのインターネットの広告費が将来的にどこまで伸びるのかという電通総研さんの調べによりますと、これから5年後ぐらいには今の市場がさらに3倍ぐらいに膨らむだろう。これは、既存の広告収入のパイを食っていくことになるのかどうか、そこは私どもも詳しいことはわかりませんけれども、事ほどさようにインターネットの市場が伸びていくということを、放送業界全体としてこの動きをどう受けとめていくのかという問題があろうというふうに思っております。
      特に5ページ目でございますけれども、これはアメリカのインターネット広告市場も大変飛躍的に伸びているという数字でございますけれども、下の方に、これはもう皆さん、ご案内かと思いますけれども、アメリカのYahoo!が自分でコンテンツをつくって自分で流すという動きが本格化しているということでございます。独自制作したコンテンツをネット上に流していく。それがインターネットの広告費をまた引き上げていく。こういう動きが非常に活発化しているという状況でございます。
      そういった動きに対応しまして、6ページ目でございますけれども、我が国の各NHK、あるいはキー局も、ネット上で映像を配信していこうという動きが、最近、また活発になってきているところでございます。ご案内のとおりでございまして、日テレさんも最近、第2日テレといわれる部署を立ち上げられて、著作権の問題はいろいろあろうと思いますけれども、そういったものをベースとして積極的な取組を始められている。各局とも同様でございます。
      ここで、真ん中のところの数字は正しいかどうかわかりませんけれども、これは広告収入あるいは受信料といわれるものへの依存の割合でございますけれども、日テレさんは比較的高い。それに対してフジテレビさんあたりは非常に下がってきている。いわゆる広告収入だけに頼るビジネスモデルをそうでない形にどんどん移しかえていこうという傾向が、今、見られているという状況でございます。
      最後のページでございますけれども、こういった、いわゆる外との競争、放送事業者全体が外との競争にこれからどんどんさらされていくであろう。そういった中での放送事業全体としての営業基盤の強化というものも現在求められているのかなということで、外との動きとしましては、この上段に書いてあります、これはどちらかというと役務利用放送事業者の形で登録されている事業者でございますが、いわゆるIP、マルチキャストといわれるような方式を通じまして、ネット上、映像を配信するという事業が本格化しているという状況でございます。
      下の方には、それ以外の形態の皆様方のリストを挙げさせていただいております。多分、一部だろうと思っておりますが、一番最後のUSENさんのGyaoに関しましては、無料の配信モデルで、あっと言う間にユーザー250万を獲得されたという報道もされているところでございます。
      こういったネット上での映像配信の動きが活発化していく中で、そういった環境の変化の中で放送事業の経営の在り方といわれるものも、いろいろ問われてくる可能性があるというふうに考えているところでございます。
      私の方からの説明は以上でございまして、結論を申し上げますと、今後とも親会中心に、制度的な課題を中心として重点的なご議論を賜れば大変ありがたいというふうに考えているところでございます。以上でございます。
    塩野座長  どうもありがとうございました。それでは、今の説明につきまして構成員の皆様方からのコメントをいただきたいと思いますけれども、今日は羽鳥さんと村井さんはちょっと早めにご退席ということですので、最初にお二人から簡単にコメントをいただいて、ご自由にご退席いただくということになります。では、羽鳥さんの方からどうぞ。
    羽鳥構成員  資料1でご説明いただきました放送にかかわる経営環境の変化への対応でございますけれども、事業者の健全な発展、そして視聴者の享受するメリットとの上にバランスがとれたコンセンサスが得られるようにと願っております。特に事業者の方のご要望というのを勉強させていただきまして、ご要望のないところで変化を追求するというのも利口でないと存じますし、その取り巻く技術的な環境というのが、以前の枠組みとは違ってきているような部分もございますので、ご要望を踏まえた上で事業者の発展、それから視聴者の利益というのを追求していただければと存じます。
      それで、通信・放送融合への対応でございますけれども、通信も放送も、技術的にも、それを取り巻く制度、政策につきましても急速に変化していることを踏まえまして、よい通信・放送の融合が可能になるように議論させていただければと存じております。
    塩野座長  ありがとうございました。では、村井さん、どうぞ。
    村井構成員  今ご説明いただきました資料1の当面の重点検討課題の中で、携帯向け1セグサービスにおける「独立サービス」の在り方と、サーバー型放送における有料放送制度の在り方という、2つの項目が「通信・放送の融合への対応」の検討課題のところに書かれているのですが、今、羽鳥さんがおっしゃったように、これらの検討課題を議論する前提といたしまして、まずは技術の変化が非常に多く生じていることを踏まえる必要がございます。携帯向け1セグサービスにつきましては、ポータブルデバイスに何かしらの情報を受け取るというメカニズムは、市販の携帯電話を含め既にいろいろな形で、今の日本国内では見受けられますし、この間、野村さんにいろいろ伺ったのですが、世界中でもやはりいろいろなサービスができてくるらしく、そういう意味で、南課長がおっしゃったとおり、携帯向け1セグサービスの導入という技術の変化に伴い、視聴者、あるいはキャリアからのさまざまなニーズに後押しされ、新しいサービスがいろいろな形で出てくる背景が存在するのだろうなと思いました。
      それから、サーバー型放送も同様で、昨日の情報通信審議会地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第16回)におきましてもサーバーPで検討されているサーバー型放送のメカニズムなどについて議論しましたが、要するに、ストレージに放送コンテンツを一回格納して、それをネットワーク越しに持ってくるという方法は、今もいろいろな形でできているという現状があります。また、メタデータを放送コンテンツに付帯させるというようなことにつきましては、例えば図書館の中のデータをどのように構成するかなど、いろいろな標準化が進んでおりまして、そういうコンテンツにデータを付帯するという意味では、技術的な変化とともに、国際マーケットのようなところから非常に大きな標準化を含めた働きかけがあるという背景がございます。ただ、そういう国際マーケットの中で、過去の会合でも何度も申し上げていますけれども、日本の放送事業本体のコンテンツというのは、例えばアニメーションなどは、非常に長い間、日本の映像文化の歴史の中で投資をしてきた結果、良いマーケットができ、良いコンテンツが生み出され、その結果世界で競争ができるような作品も輩出しているという背景もございます。このような現状を全部勘案して、特にこの携帯向け1セグサービスとサーバー型放送の2項目は、良いマーケットや、良いコンテンツをどのように創出するかを考える非常にいいチャンスになると思われます。つまり、技術の変化が非常に激しく、その変化の影響を受けやすい分野であり、コンペティションも非常に活発で、国際的にも非常に動きが活発だからです。
      したがいまして、先ほど、調査ということを考えていただけるということだったので、制度面を議論するときには国際的な動向を前提に、国際的に対応できる制度をしっかり我々も勉強して考えていく必要があると思いました。
    塩野座長  どうもありがとうございました。お二方とも、基本的には今後の取り運びのこの案で大体よろしいという、そういうことを前提にしてのお話というふうに承ってよろしゅうございますか。
    羽鳥構成員  はい。
    塩野座長  村井さんもよろしゅうございますか、この取り運び自体。
    村井構成員  はい。この案を前提に、今、考えて、意見を述べさせていただきました。
    塩野座長  では、どうもありがとうございました。それでは、そのほかの方々でこの取り運びの案につきまして何かご質問あるいはご意見のある方は、どうぞご自由にご発言いただきたいと思います。   先ほど、村井さんも参加されている情報通信審議会でしたか、こちらの技術の方は進んでいるところがあるわけですか。
    村井構成員  昨日、第二次答申の後を受けた新しい会が再開されました。先ほど、ご説明があったところで関係するところとしましては、コピープロテクションのメカニズムのところで、いろいろな議論がございましたし、それから、事業者間での、メカニズムを含めたデジタル化に向けての知的所有権のあり方についての議論も、いろいろとございました。それらの議論に基づいてケーブル事業者、放送事業者、それから通信事業者、ベンダーといった関連団体の方々に放送のデジタル化について検討していただける体制ができました。昨日、その方たちとお話をしながら進めていくということで出発ができまして、2011年という期限が決められた中でコピープロテクションや知的所有権などについて考えていただける母体が、地方自治体も含めてできましたので、非常にいい体制になったと思います。つまり調査研究会で議論がいろいろと出たときに、尋ねていただける主体といいますか、活発な議論がそれぞれのセグメントでできるという体制が整ったということでございます。
    塩野座長  どうもありがとうございました。こちらの研究会の方にも情報を流すように、それからまた、中間取りまとめで出た議論も、向こうの方でまた反映していただく、あるいはワーキンググループの方のご意見を反映していただく、という形でのキャッチボールをよろしくお願いしたいと思います。
    村井構成員  よろしくお願いいたします。
    塩野座長  どうぞ、ほかに何かございますか。公共放送の方は、先ほどのご説明のような形で、一応様子を見守るということですが、濱田さん、それでよろしゅうございますか。
    濱田構成員  はい、これで結構かと思います。いつまでもというわけにはいかないと思います。
    塩野座長  それから、これからのことで、経営環境の変化のところでは小塚さんにかなりのご負担がかかるかと思いますが、もし必要があれば、先ほど、事務局からもありましたように、商法の方の追加ということも考えられております。それにしても、前からの引続きということで、大体小塚さん中心にやっていただくということで――どうぞ、ご発言ください。
    小塚構成員  もちろん、承知しております。私も引続き尽力いたしますが、新しいメンバーの追加ということが可能であれば、私からもお願いしたいと思います。それは、新しい会社法というようなものもできまして、制度的にも大きく変わっておりますし、また、会社法とか証券市場に対する考え方自体について、いろいろな考え方が出てまいりましたので、私が日本の商法学者の代表的な意見を言えるとはとても思えませんので、複数の意見があった方がより充実すると思います。ついでに、一つよろしゅうございますか。
    塩野座長  はい、どうぞ。マスメディアの方はまた後の方で言っていただきます。
    小塚構成員  一つ、ついででございますけれども、放送・通信融合の話のところで、有料放送制度の在り方という問題提起がなされております。若干、この有料放送という言い方に私は前からこだわっておりまして、いわゆる有料放送といいますか、無料放送といわれているものも実は有料ではないかと思っているのですが、現在の制度とか従来の経緯を外して理屈で考えますと、私はこのいわゆる有料放送制度というものが基本なのではないかと実は思っております。といいますのは、表現の自由とか報道の自由とかいうことをちょっと置きまして、少なくともビジネスとして考えますと、やはりコンテンツを消費者が入手するという、そこの一対一の関係というのが基本で、ただ、それがそのままでは普通の、例えばトマトやミカンを買うようにうまくいかないというので、いろいろな制度とかモデルができてくる、こういうことではないかと思います。そういう意味では、この有料放送制度というのは、実は、理念形としては基本ではないかと感じております。
    塩野座長  ここは学者の集まりの政策研究会ですから、そういった原理論をいつも踏まえながら議論を重ねていきたいと思います。どうもありがとうございました。ほかに、篠原さん、あるいは隈部さんあたり、何かございますか。今までと随分違うので承服しがたいということであれば、どうぞ。
    篠原構成員  いや、今までの流れから若干つけ加わったものもありますけれども、こういう絞り方で結構だと思います。
    塩野座長  山下さん、何かございますか。ワーキンググループにいろいろご参加いただいたけれども、制度の方に多少絞りをかけるということでお願いをするということでございますが。
    山下構成員  ワーキンググループに専門の方がお越しになっておられたと思うんですが、休会するということになると、その臨時構成員の方々のご意見というのは休会中は反映されないというようなことになるのでしょうか。
    塩野座長  それは、事務局の方で何か……。少なくとも情報の提供はさせていただく。先ほど、村井さんから情報をこちらにもくれると言っているものですから、それはいたしますけれども、お集まりいただいて、何かご意見を賜るというワーキンググループの会合自体は、しばらくの間、休ませていただきたいということだと思います。ただし、せっかくの専門委員の専門の知識、経験を生かすべく、適宜、ご意見を賜るということはあろうかと思いますけれども、ワーキンググループのコンテンツの作業自体はしばらく休止をする、そういうやり方でございます。よろしゅうございますか。
    山下構成員  わかりました。
    塩野座長  それでは、ほかの方々も大体これでよろしいということであれば、このとおり進ませていただきたいと思います。また、日程等について、いろいろ調整のこともあると思いますが、その点は、事務局、よろしくお願いをしたいと思います。
      それでは、次回のヒアリングと海外実地調査のことがございますけれども、その点については、私の方で事務局とも相談しながら確定していきたいと思いますので、お任せいただけますでしょうか。
      それでは、事務局と相談の上、進めさせていただきます。

        2)  マスメディア集中排除原則をめぐる最近の動向について
    塩野座長  次に、次回の予定については、また最後にお願いをするといたしまして、まずマスメディア集中排除原則についてヒアリングを行うということでございますが、今日、多少時間もございますので、あと1時間あるいは多少短く50分ぐらいということも考えまして、1時間弱の間で、マスメディア集中排除原則をめぐる最近の動向について、事務局がまとめたものがございますので、今日、それをご説明を伺って、次回のヒアリングの糧にしたいということでございます。それでは、まず事務局から説明をお願いいたしましょう。
    長塩企画官  それでは、お手元の資料、資料2について、ご説明させていただきます。1ページめくっていただきまして、地上放送に関する最近の動向ということでございます。16年に集中排除原則が改正されておりまして、ご案内のとおりでございますが、ローカル局相互間の緩和を中心としたものでございます。これは、おさらいになってしまうんですが、当時の放送政策研究会最終報告をベースとした改正になっておりまして、その見直しのきっかけというものが表の上段に整理されております。
      1つは、経営環境の変化ということでございまして、大きく分けまして、デジタル化投資の負担が大きくなっていくということ。それから、広告マーケットの一極集中傾向があるということ。そのほか、メディアの増加と多様化。あるいは地域性を確保する緩和形態であれば、地域に根差した情報発信メディアとして発展できるのではないかということ。あるいはローカル局の基盤強化につながるような緩和であれば、地域情報を中心としたコンテンツの充実等にも役立つのではないか。こういう視点でございます。
      それで、見直しの方向性というものが左側に整理されております。従来は、同一地域内の10%というふうな出資比率の規制。それから、異なる対象地域については20%という比率。こういった2つの柱がございましたが、これをさらにいろいろと場合分けをしたものとなっております。
      同一地域内につきましては、10%という基準が用いられておりますが、これについては、報告書におきましては、現状維持か、あるいは小幅緩和ということでございます。理由としましては、当該地域における多元性に直接影響するおそれがあるというふうな議論がございました。
      異なる地域につきましては、キー局とローカル局、ローカル局相互間という2つの大きな場合分けをしておりまして、キー局とローカル局という側面では、キー局の影響力でローカル局の情報発信メディアというものに影響を及ぼすおそれがあるということから、同じく現状維持または小幅緩和。他方、ローカル局相互間については、2つの放送対象地域、地域性を考慮した一定の条件のもとでは兼営を認めるなどの大幅緩和を認めていいのではないか。こういった大幅緩和の方向性が打ち出されております。その背景といたしましては、地域性を維持し、デジタル化対応等ができるのであれば、経営基盤の強化に資するといったこと。視聴者から見て一定の範囲であれば、特に問題はないのではないかといったこと。こういったことが考慮されております。
      そのほか、特例的な扱いとしまして、経営破綻時には一時的に完全子会社を含めた緩和が行われていいのではないかということでございます。
      こういった方向性を受けまして、16年3月には新しい基準が改正されておりまして、同一地域内については現状維持、キー局とローカル局についても現状維持という整理がなされております。ローカル局相互間につきましては、右側の表の中ほどでございますが、連携の対象となる地域のすべてがいずれか一つの地域に隣接する場合、地域的な関連性が密接であるものとして別に定める場合については規制を全廃、合併は可能ということでございます。
      ちょっとわかりにくい表現でございますので、1枚めくっていただきまして、参考を御覧いただければと思います。1つ目、左側でございますが、隣接地域のローカル局が隣接している連携の場合は、7地域までの連携が可能ということで、左側の例1、例2、これは一筆書きができるといいますか、いずれかがくっついている。こういった場合については、5分の1から3分の1までの集中排除原則の緩和を認めていいだろうということでございます。それから、右側でございますが、ある1つの県、例えば例1のところではB県、例2のところではY県、こういう1つの県を要として、その他の地域が一固まりとなるような形態であれば、これは合併まで大幅な緩和を認めていいだろう、こういうことでございます。
      また先ほどの2ページに戻っていただきまして、経営破綻時についても報告を受けた一定の整理がなされております。会社更生法等の一定の要件を定めております。
      こういった整理がなされておりますが、現状について見てみますと、この基準を直接的に適用した事例がまだないということでございます。これがどういった理由に基づくのか、こういったところも分析が必要であろうと思いますが、こういう状況になっております。
      続きまして、右下にページが打ってございますが、3ページのところでございます。この研究会で示されたその他の方向性を概略まとめてございます。
      1つは、尺度の扱いというところが議論になっておりまして、1地域1局の複数局支配を禁じるというふうな基準で定められてきておりますが、例えば視聴世帯数とか視聴率等というふうな新しい尺度というものを導入する。こういったことについてはさらに議論を深めることが必要、こういう整理がなされております。
      また、新聞等の扱いについては、2つの案が議論されておりまして、今後も継続議論ということでございます。一つは、規制緩和を他のものと同様に扱うということ。もう一つは、他のものが規制緩和になったとしても、現行レベルを維持するということ。これは、相対的に考えますと、規制強化というか、そういったことでございます。
      地方公共団体の扱いについても、3つの方向性が議論されておりますが、今後、さらに議論を深めることが必要ということでございます。同様に、案1としては同列の扱い。案2としては、公共団体については現行レベルを維持。案3については、一定比率まで制限ということでございます。
      そのほか、役員の扱い、それから地域性とネットワーク、こういったことも扱われております。地域性とネットワークにつきましては、表現の自由等の制約等の論点があり、現在のいわば間接的な手法が優先されるべきというふうなことがございます。それから、ローカル局の番組制作向上のために目標を定めて公表するという手段ですとか、ネットワークの枠を超えた共同制作など、こういったことも有効であるというふうな議論が行われております。
      それから、冒頭の事務局、南課長からの説明にもございましたが、最近の動向として、17年にマスメディア集中排除原則の違反事例の発覚というものがございました。これについて概略をまとめさせていただいたものが4ページでございます。これは、いわゆる第三者名義株式の存在により、出資制限の上限を超えた出資事例の存在が発覚したというものでございまして、放送事業者による点検・調査を実施したというところでございます。
      これで幾つかの事例がわかったわけでございますが、この報告を受けました総務省の対応といたしまして、本年3月には放送事業者71社に対して警告等を発するとともに、再発防止策等を講じた。そのほか、解消結果を含め、報告・公表を求めたということですとか、あるいは民放連等々に周知徹底の要請ですとか、新聞協会に対しても同様な措置をとっているということでございます。
      その後、6月までの間に、すべてについて改善が行われたということでございます。
      こういった一連の動きを受けまして、総務省においても制度的対応といたしまして第三者名義等による放送局に対する出資状況の把握を容易にする、あるいは審査の透明性のための規定整備を行っているということ等の改善策を行っております。
      次の5ページがその違反事例の概要を一表にまとめたものでございます。幾つか場合分けをしておりますが、違反事例が複数あったケースが上段でございまして、1つだけのケースが下段でございます。それぞれについて出資する側に問題があったもの、出資される側に問題があったもの、両方に問題があったもの、こういう場合分けをしております。
      6ページでございます。こちらの方は、先ほどの地上放送についての議論と並行して研究会で同じく方向性が提言されております。衛星放送、BSデジタルにつきましては、その背景といたしまして、上段でございますが、経営環境の変化ということで、BSデジタル放送の立上げのための多額の投資。それから、メディアの増加、多様化。それから、経営基盤の強化につながる緩和であれば、コンテンツの充実等につながるのではないかというふうな視点。キー局との連携強化を行う緩和であれば、同じくコンテンツ制作強化につながるのではないかという視点。こういった視点を背景に議論が行われております。
      その際の提言といたしましては、左側でございますが、1つ目として、BSデジタル放送と地上放送の兼営を現時点で認めることは不適当というふうな結論が当時出されております。理由といたしましては、メディアの多元性の喪失、地域メディアとしての地上ローカル局への影響、こういったものが挙げられるということと、それとともに、兼営に至らないまでの緩和により対応不可能かどうか、こういったことが十分な検証がなされていないということでございます。
      それからもう一つの方向性が、BSデジタル放送の出資上限を3分の1から2分の1に緩和することが適当ということでございます。これは、さらに子会社を認めることについては、兼営ほどではないが、地域性、多様性に問題が発生するおそれが強いので不適当ということでございまして、兼営との中間的なところまでの緩和を認めたということでございます。
      これを受けまして、15年3月については、3分の1から2分の1の緩和が行われております。
      しかるに、現状ということでございますが、16年末の時点ではこの緩和を実際に適用した事例が存在していないということでございます。ただ、注に若干書いてございますように、最近の動きとしては、そこの緩和の方向で実際に機能させるような動きも見られるというところでございます。
      7ページが最近のBSデジタル放送の経営状況をまとめたものでございます。ごらんいただきますように、12年度から16年度に、時系列に沿ってだんだんと赤字積滞額が増えてきているという状況でございます。16年度の累積損益は1,000億円を超える、そういった状況になってきております。右側の方がBSデジタル放送の受信機の出荷状況でございまして、こちらの方は順調に伸びておりまして、1,000万世帯を受信世帯数としては突破したというところまで来てございます。
      8ページが諸外国における動向でございまして、こちらは、先ほどもご指摘いただきましたように、今後、調査をしなければいけないところでございますが、ごくかいつまんで、全体としては緩和の傾向にあるというふうなことでございますので、その傾向がピンポイントで指標的にわかる部分だけピックアップしてお作りした資料となっております。
      米国におきましては、全体の視聴可能世帯数という基準で集中排除原則が運用されておりますが、そういう視聴可能世帯数の上限の比率を2003年の規則改正で35%から39%に拡大する、規制緩和をしているという動きがございます。それから、地上ラジオ放送事業につきましては、市場に存する局数によって一定の制限をかけているところでございますが、この母数を増やすことによって、やはり緩和の方向を打ち出しているということでございます。また、いわゆるクロス所有、日本でいいますと三事業支配に相当するような規制につきましては、同一市場内では原則として日刊新聞を所有・支配している者によるテレビ局、ラジオ局の所有禁止というもので、運用を図っていたところでございますが、改正法によりますと、市場に存在するテレビ局の数によって場合分けをしております。その数が多い場合には、もう少し緩やかな規定を適用しようという改正方向でございます。
      それから、英国につきまして、これは大きな変化がございまして、基本的に、一部を除きまして撤廃の方向の大幅な強化が2003年の通信法制定で行われているというところでございます。
      フランスにおきましても、2004年の法律の改正におきまして緩和している事項がございます。地上テレビジョン放送につきましては、合計受信可能人口数、世帯数、こういったものが600万人超という一つの基準がございましたが、これは1,200万人というふうに規制緩和の方向での改正が行われております。
      そのほか、同様に細かなところで改正が行われておりますが、このあたりは、現在、事務局においても調査中でございまして、まとまり次第、改めてご報告させていただきたいと考えております。
      それから、参考のページでございますが、こちらがマスメディア集中排除原則のこれまでの改正経緯を一表にしたものでございます。これは、ご案内のとおり、昭和63年に現在の制度の枠組みができておりまして、省令において集中排除原則を創設した。これは以前もございますが、いわゆる法制度として明確にしたのはこちらが出発点でございます。その後、順次、地上波については、平成7年に、従来一律の基準であったものを異なる放送対象地域については緩和するということをやっておりまして、そのほか、コミュニティー放送についても順次緩和をしております。それで、平成16年に大幅な見直しが行われたのは、先ほど、ご説明したとおりでございます。
      衛星放送につきましては、もっときめ細かな改正が行われまして、少しずつ全体の傾向としては緩和がなされてきて、現在に至っているというところでございます。
      最後、もう一枚、参考がございまして、一般放送事業者の収支状況についておまとめしたものでございます。全体として営業収益はございますが、一定程度の利益を現状では確保しているという状況でございます。
      以上、マスメディアの集中排除原則の動向についてのご説明でございます。
    塩野座長  どうもありがとうございました。今の説明は、現在、総務省の方で把握している状況のファクトをできるだけ客観的にまとめたものというふうに私は理解をしております。
      それから、先ほどの論点のようなところにつきましては、これも従来のこの会に出てきたものについて掲げたものというふうにも考えられますけれども、この論点についてはこれだけで終わるということではなくて、今後、この研究会でまた別の論点が出てくれば、それはそれとして取り上げる。そういったものというふうに理解をしておりまして、何もここで出てきたものだけを取り上げるということではないというふうに理解をしております。
      今日は多少お時間もございますので、この資料について何かご質問があれば承った上で、調査をつけ加えるべきものは調査をつけ加えるし、訂正すべきものは訂正するという、このファクトの問題がございます。
      それから、たまたまこういうものを取り上げたことについての直接の原因と申しますか、一種の立法事実でございますけれども、それはそれとして、今後、詰めていかなければいけませんけれども、ただ、新しい問題が出てきたから緩和しようというようなお話では、この研究会の意味がございませんので、やはり表現の自由はどういうことであるかとかいうことと、集中排除原則というのはそもそもどうあって、今後どうあるべきか、という基本的な論点についても十分ご議論をいただきたいというふうに思っております。
      そういうこともございますので、本日のところはあまり細かな点というよりは、もちろん、事実の点についてのご確認はしていただきますけれども、あまり細かな点について自分はこう思うということよりは、基本的なアプローチの仕方みたいなものについて自由なご意見の交換をしていただければと思います。どなたからでも結構でございます。
    隈部構成員  今、ご説明いただいた資料の中で、事務局はご存じだと思うんですけれども、事実関係を誤解なさる方がいるといけないと思いますので、若干私の知っている限りご説明させていただきます。
      8ページの諸外国における動向というところで、アメリカの2003年のFCCの規制緩和の規則が改正されまして、それで、未施行と書いてありますけれども、実は2つありまして、地上テレビジョン放送事業者間の方について、大体全国の世帯で見えるのが35%までと決まっていたのを39%まで引き上げたというのは、最初はFCCが決めた段階では45%になっていたのを、それは施行停止だということになったんですけれども、その後、アメリカの議会が別に法律をつくりまして、上・下両院とも承認して、大統領も署名したので、この39%というのは既に施行されております。実施されております。そこのところは多分ご存じだと思うんですけれども、全体の未施行という中に入っていますので、ちょっとそこのところは別ですと。
      それから、そこから下に書いてあるラジオとか新聞と放送の兼営とかいう点については、確かに去年の6月でしたか、フィラデルフィアの連邦高裁の判決で、それまで、当面、実施差止めという扱いだったんですが、最終的に判決が出まして、結局、FCCがもう少し見直しなさいということで、FCCに差し戻したということで、今はまだ施行されていないというよりも、規則自体がもう一遍書き直されることになっていますので、そこのところも、未施行というよりは、FCCが書き直しをするということを義務づけられている。言ってみれば、連邦高裁の判決ですから、最高裁に上告もできたんですけれども、しなかったものですから、結局、もう確定しておりまして、書き直さざるを得ないということになっています。
      ただ、FCCは今、ご承知のように、ハリケーンのときの緊急用の通信の確保とかなんとかで忙しいいろんな問題があるものですから、ちょっと遅れておりまして、今年中にできるかどうかはわかりませんけれども、いずれにせよ、FCCの喫緊の課題になっているということは確かですので、これは改めて書き直されてからのものが出てくるということになると思います。
    塩野座長  どうもありがとうございました。その点は、注記できちんと整理しておいていただけますね。ほかに、どうぞ。
    野村構成員  一つ、不勉強なもので大変申し訳ないんですが、2ページの出資比率緩和関係のところでご質問させていただきたいんです。この図表は、左側が連携で、右側が兼営ということですが、出資というだけではなくて、例えば兼営の場合、例1でB県に置局している放送局がC、D、Eを兼営した場合は、今の関東広域圏で、例えばあるキー局が、関東広域圏の複数の県にひとつの放送局として放送しているように、例えば福岡の放送局が九州エリアで1つの放送局として広域放送ができるということなのでしょうか。それとも、あくまでも放送範囲は県域で複数の局を経営している、そういう認識なのでしょうか。どちらでしょうか。
    長塩企画官  これは広域ができるということではございませんで、経営上、一体となれるという意味合いでございます。
    野村構成員  わかりました。今、ご質問させていただいたのが、私はぜひ競争政策ご専門の先生方のご意見もお尋ねしたいと思うんですけれども、確かにマスメディア集中排除原則というのは多様性を保持するという、この大原則は守るべきだと思うんですが、やっぱり時代の要請ですとか、環境の変化に応じて変えていく必要があるというふうに思っております。
      2つ視点があると思うんですけれども、一つが、地域の情報発信力の強化と中央依存の脱却、それからもう一つが、新しい技術だとかアイデアを生かした市場というものをどうやって発展させていくか。その2つの視点が大事だと思っています。
      これまで地上放送において各県ごとに置局していくということは、放送というインフラを全国に普及させる上では大変効率的だったと思うんですけれども、ただ、それぞれの経済エリアの経済格差が問題であると思っております。比較をしてみるとよくわかるんですけれども、例えば準キー局、関西に基盤を置いている放送局、5局あるんですけれども、この売上高を全部合計すると、やっとフジテレビさんと同じ規模になる。では、ローカル局はどうかというのを見てみますと、例えば福岡県の5局の売上高を合計すると、やっと準キー局1社と同じ規模になるということで、それぞれの地域で経済格差というものが随分拡大してきていると思います。あくまでも県域放送というものを基盤にしているままだと、かえって多様性を保持するというよりも、むしろ、経済力があるキー局に依存してしまうということで、どうしても中央依存型の放送というものが続いてしまうのではないのか、そういうことを考えたりするわけです。
      それからもう一つが出資比率ということですけれども、先ほど、事務局からご説明がありましたように、市場を支配する基準というのが、果たして株式を保有しているということなのか、それとも市場支配というのは、視聴者だとか視聴エリアだとか、そういうところが実は重要になってくるのではないのかとか、そういうことも出てくるのではないのかと思います。例えばこの兼営でどんどん広がっていったら、出資比率はあくまでも一定のパーセンテージだけれども、視聴者数がすごい数字になってしまうということももしかしたらあり得るのかもしれない。そういうところを考えたりします。
      最後に、持株会社という方法は、すごくいい方法かなというふうに思います。これはぜひ原因を調べていただきたいと思うんですが、今まで緩和に対して手を挙げた放送局がないということで、複数の県で連携して動いていこうという動きが何で出てこないのか、そこら辺の原因をはっきりさせていただきたいと思うんです。例えば地域間連携を促す上で、隣接県というところに縛られて果たしていいのかどうかというところもあるかもしれませんし、これは本当にご要望があるかどうか全然わからないんですけれども、例えば独立U局さんなんかの場合ですと、持株会社の下で連携し合うというのはすごくいい方法なんじゃないのかなというふうに思います。ただ、それが独立U局さんだけ認めるかどうかとか、そういう問題も出てくるんですけれども、そのような形で3点ほど問題提起をさせていただきたいというふうに思います。
    塩野座長  それぞれ本当に重要な問題の指摘で、きちんとテイクノートして、これからの議論の一つの重要なポイントにさせていただきたいと思います。
      それから、最後のところ、私もどうして使ってくれないのかなというあれがありまして、よく霞が関が一生懸命考えてやると、結局、使われない法制度というのが結構あるんですね。ですから、ここ、放送政策課だけがおかしいと言っているのではなくて、頭の中でつくったものというのは、結構使い勝手が悪いということはよくあるものですから。しかし、なぜ使ってもらえないかというのは、一種の政策評価の課題でもございますので、この点はきちんと説明をして、今後、できるだけ使い勝手のいいようにということを志向した方がいいと思います。ただ、使い勝手がいいということは、また別の理念に反することもありますので、むしろ、使っていただいていないというのがよかったという評価もあり得るところでございますので、ここはなかなか難しいところだと思いますが、少なくともなぜ使っていただいてないかということについては多少時間をかけてでも調査をしていただきたいと思います。どうもご指摘ありがとうございました。
      先ほど、競争政策と言われましたけれども、憲法論からもいろいろマスメディア集中排除原則に対する物の考え方について、今日、何かコメントをいただければと思いますけれども、濱田さん、何かありますか。
    濱田構成員  今後の進め方にもかかわるんですが、それから、今のお話にもかかわってくるかと思いますが、やはり私たちの方は、つい制度の形式的な枠組みを整えるということをよく考えますので、それが本当に現場のニーズとどこまで合っているのか。そこが不整合を起こすこともあり得ると思うんですね。それで、ヒアリングの際には、もう少し正直なところをぜひ事業者さんからもお伺いしたいと思いますし、それから、改善提案というようなものも実質的な形でむしろ言っていただくような形ができればなと思っております。
      その関連で申しますと、例えば排除原則への違反事例の発覚ということが、先ほど、ちょっとお話がございましたが、これは出資制限の上限を超えているということで、いわば形式的な数字のところで目に見えてきたわけですが、本来の理念どおりであれば、こういう違反状態が生じていると、実質といいますか、視聴者にとっては多様性が欠如している、そういう状態が生じているはずだということになるんですが、そういう文句はどこからも出てこなくて、むしろ、形式的に数字がちょっと超えているじゃないか、そういうところでだけ話題になったのは、どうなのかなという気はいたします。
      法律学者としては、これは必ず守れというのが筋ですが、ただ、先ほど、座長も立法事実とおっしゃいましたけれども、こういう原則の立法事実が今の状況に本当に適合しているのかというようなこともきちんと考え直さなければいけないと思いますし、事業者の方も、それなら確かに違反していたから直しますというだけで終わるのではなくて、当面、直してもらわないと困ると思いますが、では、どうしてそうなっていくのか。それでも多様性の確保には何も問題はないんだ。むしろ、さらに一歩進んで、経営基盤というものをもうちょっとそういう緩和で強くしてもらった方がよりよい放送がこういう形でできるんだ。そういうような積極的なスタンスというものをヒアリング等では見せていただければ、私たちにはいろいろ参考になるかなと思っております。ちょっと進め方の意見ということで申し上げました。
    塩野座長  どうもありがとうございました。長谷部さん、何かありますか。
    長谷部構成員  また勉強してから……。
    塩野座長  それでは、また別の機会にいろいろご意見をいただきたいと思います。篠原さん、何かございますか。
    篠原構成員  特に……。
    塩野座長  小塚さん、さっきの株式、要するに、支配というのは、あれは確かに一番わかりやすいものですから、それで今までずうっと来たんですけれども、しかし、その尺度が揺らぐと大変なことにもなりそうなんですが、その辺はどうですか。ほかの点も含めてどうぞ。
    小塚構成員  先ほど申しました会社というものに対する見方の変化ということの一つで、支配ということと契約で縛るということとどれほど違うのか、実は、こちらの分野ではかなり議論になっておりまして、そういう目でこの放送の問題も見ますと、一方では出資とか、まして兼営ということは非常に厳しく言ってきました。他方で、ネットワークの契約の方は、先ほどのご報告にもありましたけれども、基本的に自主的な対応に任せるということだったのですが、そこにそれほど差をつける合理性といいますか、理論的な基盤があるのかということは、もう一度きちんと考えておく必要があるのではないかと思っています。
      つまり、逆にいいますと、結局、それは形の問題ではなくて、今、まさに濱田さんがおっしゃったように、実質としての多様性をいかに確保するかというところが核心なので、出資であるか、契約で縛っているか、1つの法人になっているかということ自体は、ある意味で相対的ではないかという感じ方が、むしろ、最近の会社法の学者には多いのではないかと思います。
    塩野座長  昔の人間があえて弁護するとすれば、やはり日本の行政の場合には、特に放送行政といっていいんですけれども、できるだけ表現の自由の中身に入らないようにということで、形式で来たんですね。それから、独立行政委員会でもないものですから、その辺の点もありまして、もう形式で切れば、これはどこからも文句は出なかろう、そういったお話で来ているわけですね。これは、今のような支配の問題ですと、いろんな評価的なものも入ってきたときに、果たして今の行政の体制でやれるかどうかという問題もあります。
      ですから、そこからさらに組織論まで行くかどうかというのは、もう一つの別の問題ですけれども、そういう問題もあって、従来は放送事業者の自主性ということと、それから、介入する場合の形式性ということが中心でこういうふうな形になっているのではないか、というのが私の理解でございますが、篠原さん、それでよろしいですか。
    篠原構成員  いや、結構です。ちょっと関連して、濱田さんがおっしゃったのは確かに重要なことだなと聞いていて思いました。ただし、実際に所有、支配の関係が規定から外れて、出資が超過しているとか、そういうことと番組の多様性、例えばローカル番組の比率がどうなのかという実証的な研究をやろうと思うと、今度、中身がどうなっているかということを調べなければいけませんから、その辺で、要するに、公権力の介入とかという、そういう問題でいろいろ議論されることになる可能性というのがあると思うんですね。ただし、確かに形式よりは、本当はもう中身だと思うんですよね、いかに多様化しているかということを見るというのは。だから、調査はやってもいいのかなとも思うんですけれども、なかなか難しい部分もあるんじゃないかと思います。私にもこの場でどうのこうのと言えません。
    濱田構成員  すみません、私、言い方が悪かったものですから。決して塩野さんの伝統的なお考えを否定するわけではありませんで、やはり形式的な基準というのは大事だと思います。形式的な基準をつくる際に実質的な議論をすべきだ、そういう議論で、実質的な基準をあまりつくると、やはり表現の自由との兼ね合いで問題が生じるというのはご指摘のとおりだろうと思っております。
    塩野座長  山下さん、どうぞ。
    山下構成員  今のこの話は得意な分野でないといいますか、難しいので、ちょっとついていけなくて、違うことを質問してしまうかもしれないんですが……
    塩野座長  どうぞ、どうぞ、今日はいろんな角度からのご発言をいただきたいと思います。
    山下構成員  やはり8ページのこの表のところを拝見していて、メディア所有規制が全体として緩和される傾向にあるということを伺いましたけれども、幾つかお聞きしたいことがございます。まず、緩和される傾向というのは、マスメディアのメディアが増えたということだけが理由なのか、それ以外に何か、それ自体で多様化できるからいいんだというような、そういうことなのか。それ以外の何か理由があるのか。
      2つ目にそれで思いましたのは、20年ぐらい前に、電気通信の規制緩和、規制緩和全体がブームになっていたと思うんですが、通信の規制緩和というのがあって、手さぐりでいろいろな国が、あそこがああやったから、うちはこうやる、みたいなことがあったと思うんですけれども、長い目で見たら、今、放送についてそれが起こっているというふうに考えていいのだろうか。日本も2〜3年前にやられたばかりのことをまた手さぐりで少し見直しの見直しをしようというようなお話のようなので、そうやって、今、そういう規制緩和をずうっと続けてやっていく、そういう時代の中にいるのだろうかというようなことが2つ目です。
      それから、その規制緩和の方向といいますか、そのところで申しますと、外国の制度にも実は明るくないので、例えばイギリスなどでは、いわゆる上下分離みたいなものが進んでいるというふうに聞いているんですけれども、そうすると、メディア所有規制を緩和するというときには、そのメディア所有というのは上下の下の方の規制を緩和するのか、上の方なのか、両方なのか。それと、それのときに、いや、もう上下分離されているんだったら、規制緩和というような言葉はもしかしたら当たらないのか。つまり、下の方は通信網になってしまうわけですね、非常にそれと似通ったものになって。そうすると、もう結論は出ている。それから、上の方はというと、多様化のために上下分離をしたのだから、このままでいいのだというふうに考えるのか、というようなことを疑問に思ったんですね。
      それと、所有規制でいいますと、マスメディアで新聞を含めていますけれども、では、通信網のいわゆるネットですね、そういうものを含めるのかとか、あるいはその他の企業ですね、自動車会社とかそういうのはどうなのか。そうすると、結局、外国の放送・通信関係者と外国のそれ以外の企業というのを分けるのか分けないのかみたいなことと、そういうのをどういうふうに切り分けて考えていくのか。そういうことをつらつらと思いました。
    塩野座長  それぞれこれからの研究課題の一つになると思いますが、今の点で、現時点で事務局の方でお答えになることがあれば、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
    南課長  諸外国の制度に関しましては、今回、ご紹介させていただいておりますのは、前回の研究会から変化した部分だけにむしろスポットを当てておりますけれども、全体としていろんなところがいろんな形で見直されているかと思いますので、それの詳細は、また我々の方でもこの研究会のご議論に資するような形でもう一度ブラッシュアップはさせていただきたいというふうに思っております。
      それで、先ほど、先生の方から上下分離のお話がございましたけれども、巷でもハード、ソフト分離ということをいろいろ言われておりますけれども、私どもとしましては、今の段階では、要するに、ハードとソフトが一致して、それが一つの力の源泉になって、特に地上デジタルのネットワーク整備を進める上においては、今、最もその形が望ましいのではないかというふうに考えております。ただ、イギリスにおいてはいろいろ歴史的な経緯もあって、そもそもハードを、いわば、民放さんのハードはもともと政府が持っていらっしゃって、それを使う形で放送事業者が育ってきたという歴史的な経緯もあって、ああいう形になっていらっしゃるのかなというふうにも思っておりますけれども、いずれにしましても、そういった諸外国の仕組みにつきましては、もう少し目的的に私どもも調査をさせていただいて、議論の参考にしていただければというふうに思っております。
    塩野座長  私も今のご指摘は、それぞれ、今後の調査項目の一つというふうに考えておりますので、ぜひ生かしていきたいと思っております。ほかに何かございますか。――どうぞ、篠原さん。
    篠原構成員  さっき、私が話したこととちょっと関連するんですけれども、資料2の「マスメディア集中排除原則を巡る最近の動向」の9ページのマップがありますね。要するに、63年の法改正以降の規則改正というか、根本基準云々から始まるところですけれども、地上波、衛星、CATV。多分、これ、大変なことだから、そういうものはないかもしれないんですけれども、本当に評価をするということが政策評価ということになれば、それぞれ規則なり基準の改正をして、規制を緩和したときに応じて、現在までどの程度、業界なり事業者側が変化したのか。それで、プラスの面、マイナス面みたいなものの細かなことをやり過ぎると、これは大変な作業になりますから、ある程度のマッピングがある方が、当然、それがなければ、今までどうだったかということの総括というか、評価ができないと思うんですよね。だから、最低限、そういうものは、ベースデータとしては簡単なものでもいいんですけれども、あると議論がやりやすいんじゃないかなという気がするんですよ。
    塩野座長  昔の話はなかなか難しいと思いますけれども、今は、だけど、政策評価で報告しているでしょう。例えばこの前の答申で法制度化したけれども、ひとつも利用者がいないなどということは評価の対象になっていると思うんですけれども、どういう評価を受けていますか。
    長塩企画官  評価については、また改めてご報告させていただきたいと思います。
    塩野座長  そちらで評価していなければ、先ほどからのご質問もありますので、この政策研究会としても、我々が考えたことが一向に役に立っていないというか、しかし、どこかで役に立っているかとか、そういう点をフォローしたいと思いますので――どうぞ。
    南課長  もちろん、制度を改正をしていただいたものを踏まえて、経営の自由度あるいはオプションは増えているということでございまして、要するに、例えばローカル局の再編成云々ということに関しましても、これからローカル局の場合は2011年、私ども、2010年までにネットワークの中継局の整備は完了していただきたいというふうに、今、お願いをしております。そういう意味で、中継局の整備が本当に本格化するというのは、2008年、9年、10年、この辺の3カ年だろうというふうに我々は思っておりまして、その辺の、本当に経営のご判断として、中継局の整備にどういう形で本格的に取りかかっていくのかということが、今、まさに真剣な議論がスタートしたばかりでございますので、制度を変えて、短期的にすぐに使われるものと、もう少し時間がかかるものと、幾つかやっぱりあるのかな。その性格の事案にも応じていろいろあるのかなということでございますので、経営のオプションとしてはやはりいろんなものがあった方が放送会社の方もありがたいという面はあろうかと思いますので、短期的に今すぐということだけでもないのかなというふうに思っております。
    塩野座長  どうぞ、統括官。
    清水政策統括官  評価のところはすべてやった、例えば省令改正、政令改正、すべて評価しているのかというと、全部を行政評価の中で見ているわけではございませんので、それについて、予算や何かになっているものは必ず評価されたりしているのですが、なかなか制度物のところは必ずしもそうはなっておらないかと思います。ただし、せっかく制度改正をしながら、その成果が実質生きないというのは、まことにその意義がない話になりますので、そこのところはもう一度資料としてお出しできるものは整理したいと思います。
      前回のときの例えば株式の保有の関係でも、集中排除について地方局の株式の持合いのところで、本来なら、制度上からいうと大変な問題だったわけで、それに対して、それを直したことで本当に変化が起きているはずなんですけれども、では、例えば株式の持合いの形を変えてみたけれども、地方における地方局の株式をキー局が持たなくなったことを直したけれども、では、現実、何が変わったのか、などというふうに指摘を受けたりすると、なかなかここはまたつらいところもあったりします。
      現実にこれからのご議論をいただくとき、具体的な変化だとかそういうところはなるべく事業者からも情報をいただきながら提供してまいりますので、よろしくどうぞお願いいたします。
    塩野座長  どうもご指摘ありがとうございました。大分時間が参りましたので、何かございましょうか。濱田さん、どうぞ。
    濱田構成員  今の16年改正の規制緩和の方は、私は事業者さんも検討しているところはあるというふうに聞いていますので、水面下では動いている部分があるのかもしれません。
      それから、これ、私だけがわからないのかもしれませんが、この議論の出発点にかかわることで、所有規制と多様性、地域性との関係ですね。多様性、地域性を実現するためのベストパフォーマンスを求めようとすれば、所有規制だけでどこまでできるのかという議論が恐らくあって、ほかのいろんな手段も動員すべきだろうという議論をここでやる必要が場合によっては出てくるかと思うんですね。ところが、他方では、メディア所有規制というのは、あくまで多様性を確保するための、あるいは多様性が損なわれないためのミニマムを確保する、その手段を探るんだ、そういうスタンスの考え方もあり得ると思うんです。
      僕、この資料を見ながら考えて、どちらを僕らは求めることになるのだろう、とちょっと迷いが出たものですから、少し座長のお考えもお聞かせいただければと思うんです。
    塩野座長  そういういろんなアプローチの仕方があるので、今後、どちらの線で議論をしていくか、あるいは2つの両にらみでいくかという問題をここでいろいろ議論していきたいと思います。
      または、一言申しますと、今までの議論は、ドイツ語の変な言葉でいうと、ドグマーティッシュなんてす、ドグマティックなんですね。つまり、メディアは集中してはいけない。それを多様化させなければいけない。で、多様化させるにはどうしたらいいかということで所有規制という、多元性という形で持ってきたんですけれども、ドイツの場合には、それを一元化して、中で多元性を図る。内部的多元性と外部的多元性という、その2つのやり方で整理をしてきたんですが、それは非常に単純ではないかというのが村井さんや小塚さんのあれかもしれませんけれども、一つのドクマーティッシュな考え方で貫いてきました。それが果たして実態に合うかどうか、あるいはそれが現代の要請にたえ得るかどうかという、それが今、議論になっているというふうにも思います。
      また、多様化というのもいろんな言葉の使い方があって、それは濱田さんの方で、いつか、僕の論文も引いて、変な使い方をしているというような多様化の概念の議論がありましたので、娯楽番組とかたい番組と一緒にいろんなものが出るのが多様化といっているけれども、それは本当はそうではないので、言論の多元化が本来の多様化であるというのは、たしか濱田さんのご意見だったと思いますが、それはそのとおりだと思いますが、そういった多様化の言葉の使い方についても注意して議論を進めていきたいと思います。どうもありがとうございました。
      それから、私から最後の質問でちょっと変なんですけれども、このメディアの所有規制が、今日、あまり所有規制は要らないという議論もあって、これは困るんですけれども、所有規制は非常に重要な問題の一つですけれども、これ、諸外国の場合に、日本でこれからBSと地上波の所有規制あるいは経営の問題が話に出ているんですけれども、外国のページの8のところは、BSとの関係が出ていないようにも思えるんですが、だとすると、どうなのか。仮にBSとの関係について何の記述もないとすると、では、なぜ、そうなのかということと、それから、記述がないときには実態としてどうなのかということについても、もし、次回までに資料が出てくれば出していただきたいし、それこそ、外国に行って調べてくださいということであれば、外国調査の方にゆだねたいと思いますが、その点、よろしくお願いをいたしたいと思います。
    南課長  そのように調査を進めさせていただきます。
    塩野座長  よろしゅうございますか。
     
    3  閉会
    塩野座長  それでは、今日は、休み明けの第1回ということでもございますので、基本的には、今後の会議の進め方についてご相談をいただくということでございましたので、この辺で終わらせていただきたいと思います。事務局の方から、何か事務的なことで、次回の予定等についてお願いします。
    南課長  ご了承いただけますれば、次回以降、ヒアリングの準備、調整を進めさせていただきたいと思っております。また、民放連さん、あるいは衛星放送関係者さんと人選を進めさせていただきまして、座長ともご相談をさせていただいた上で、決まり次第、メンバーの皆様方にもご報告をさせていただきたいと思っております。
      それから、先ほど、ご指摘のありました海外の動向につきましても、今、いろいろ動いているということもございますので、実際に現地に赴きまして、調査を実施したいというふうに考えておりまして、場合によっては、一部のメンバーの皆様方にもご協力をぜひちょうだいをしたいと思っておりますので、よくお願いをいたします。以上でございます。
    塩野座長  それでは、今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。

  
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