平成13年10月24日
総         務         省



「情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会」における主要論点


  総務省では、本年8月より「情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会」(座長:濱田純一 東京大学大学院情報学環長)を開催し、情報通信新時代における新たなビジネスモデルに対応した電気通信事業分野の競争環境整備の在り方について検討を進めていますが、このたび、その主要論点が取りまとめられました。

  検討の経緯
  本研究会(構成員は別紙1のとおり)は、本年8月10日に第1回会合を開催し、これまで計7回の会合を開催してきました。このうち、第2回会合から第5回会合までは、関係事業者等(18法人・団体、別紙2)からブロードバンド化に向けたビジネスモデルの展望と課題等についてプレゼンテーションをいただき、これに基づき構成員と関係事業者等が一体となって討議を行ったところです。
  今回取りまとめられた主要論点は、これまでの研究会における議論を踏まえて整理されたものですが、今後の議論の透明性を確保する観点から、これを公表することとしたものです。

  主要論点の概要
(1)  今後の競争政策の在り方に関する基本的視点
(2)  垂直統合型のビジネスモデルと競争環境整備の在り方
(3)-1 ネットワークレイヤーにおける競争環境整備の在り方
(3)-2 プラットフォームレイヤー等における競争環境整備の在り方
(3)-3 端末レイヤーにおける競争環境整備の在り方
(4) 電気通信事業における競争の枠組みの在り方

  今後の予定
  本研究会は来年6月頃まで開催の予定ですが、この主要論点に基づき更に検討を重ね、本年中を目途に中間報告を取りまとめることとしています。


連絡先総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課
(担当中山課長補佐)
電話03−5253−5947(直通)




別紙1

情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会
構 成 員
(敬称略、五十音順)

あおやまとものり

青山 友紀
東京大学大学院工学系研究科教授
いまい   ひでき

今井 秀樹
東京大学生産技術研究所教授
おおた  きよひさ

太田 清久
メリルリンチ日本証券株式会社調査部長
おおはしまさかず

大橋 正和
中央大学総合政策学部教授
さいとう  ただお

齊藤 忠夫
東京大学名誉教授
 さとう   はるまさ

佐藤 治正
甲南大学経済学部教授
 さんべ   なつお

三邊 夏雄
横浜国立大学大学院国際経済法学研究科教授
 たむら    じろう

田村 次朗
慶應義塾大学法学部教授
はまだ じゅんいち

濱田 純一
東京大学大学院情報学環長
ふじわらまりこ

藤原まり子
株式会社博報堂生活総合研究所客員研究員
ふなだ   まさゆき

舟田 正之
立教大学法学部教授
まつむらとしひろ

松村 敏弘
東京大学社会科学研究所助教授




別紙2

情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会
オブザーバ一覧
(五十音順)
  イッツ・コミュニケーションズ株式会社

  エンロン・ジャパン株式会社

  株式会社インフォシティ

  株式会社NHKエンタープライズ21

  株式会社Jストリーム

  ケイディーディーアイ株式会社

  シスコシステムズ株式会社

  社団法人経済団体連合会

  社団法人テレコムサービス協会

  社団法人日本インターネットプロバイダー協会

  ソニー株式会社

  東京通信ネットワーク株式会社

  日本オラクル株式会社

  日本通信株式会社

  日本テレコム株式会社

  日本電信電話株式会社

  バンダイネットワークス株式会社

  マイクロソフト株式会社




情報通信新時代のビジネスモデルと
競争環境整備の在り方に関する研究会
主要論点

平成13年10月

情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会主要論点の全体の構成図



1.今後の競争政策の在り方に関する基本的視点


今後の電気通信市場における競争政策として、各レイヤーごとの水平的な競争環境整備と各レイヤー間を横断する垂直的な競争環境整備の双方を視野に入れて検討していく必要があるのではないか。

(目指すべき方向性)
IP時代の電気通信市場の競争環境整備の在り方を検討する際の基本的視点として、ブロードバンド化に対応した多様なビジネスモデルの登場を促す柔軟な市場環境を創出するということを重視していく必要があるのではないか。

特に、DSL、光サービス等による高速・超高速インターネットサービスの低廉化・多様化が進展する中、サービス・オリエンテッドなビジネスモデル(ユーザニーズに合致したサービスをワンストップで提供)を実現するため、各レイヤーごとに必要なパーツを自由に組み合わせてビジネス展開を行い得る競争環境の実現が必要ではないか。また、こうした競争環境の整備は他業態から通信ビジネスへの参入を促し、更なる競争の活性化をもたらす効果も期待できるのではないか。

上記のような競争環境整備は、「デジタルコンテンツのデリバリーチャネルの多様化・低廉化」を実現し、「デジタルコンテンツの流通促進」との好循環を通じ、ブロードバンドサービスの加速的普及をもたらすことが期待されるのではないか。また、この際、B2C市場はもとより、eマーケットプレース等のB2B市場の活性化を図る観点を重視していくことが必要ではないか。

ブロードバンド化に対応した競争環境整備は、B2B市場の拡大等を通じ、我が国における構造改革の推進、国際競争力の向上に資するものと期待されるのではないか(その他、どのような社会経済的な効果が期待されるか)。

(政策対応の在り方)
競争環境整備の在り方としては、急速な技術革新に対応した柔軟な制度見直し、制度運営の透明性の向上等を確保していく必要があるのではないか。

今後の検討の方向性としては、各レイヤーごとの水平的な競争環境整備と各レイヤー間を横断する垂直的な競争環境整備の双方を視野に入れながら進めていくことが適当ではないか

競争環境整備のための手法としては、急速な技術革新とビジネス環境の変化に対応する観点から、法的な競争ルールの整備に加え、関係事業者等に行政当局が加わった第三者的機関による競争ガイドラインの策定、裁判外紛争処理制度(ADR:Alternative Dispute Resolution)の活用、制度運用ガイドラインの策定等、多様な手法を視野に入れた検討が必要ではないか。また、電気通信事業法と独占禁止法の適用範囲の明確化を図りつつ、相互に連携しつつ競争促進を図っていくことも重要性を増していくのではないか。

公正取引委員会と総務省は、本年9月、「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針(原案)」を策定・公表し、電気通信事業の分野において、独占禁止法上又は電気通信事業法上問題となる行為、競争を促進する観点から事業者が採ることが望ましい行為等について、具体的に整理している。

また、急速な技術革新に対応した新たなビジネスモデルの登場は、従来想定していなかったような不利益をユーザにもたらす可能性もあるのではないか。したがって、競争環境整備の在り方を検討するに際しては、ユーザ保護の観点から必要な措置を講じていくことを重視すべきではないか(他方、インターネット時代においてはユーザが一定程度のリスクを負うべきという考え方もあり得るか)。





2.垂直統合型のビジネスモデルと競争環境整備の在り方


垂直統合型のビジネスモデルについて、競争政策上どのように評価すべきか。また、こうしたビジネスモデルが普及する中、公正な競争環境の整備を図る観点から必要な措置は何か。

(1)  垂直統合型のビジネスモデルに対する評価

インフラ事業者たる一種事業者によるネットワークレイヤーから上位レイヤーへのビジネス展開をはじめとする、いわゆる垂直統合型のビジネスモデルについて、どのように評価することが適当か。具体的には、「ユーザの利便性」の向上を実現するという面がある一方、例えば上位レイヤーにおける「公正競争環境」を損なう可能性という面の双方があり得るのではないか。

ただし、本格的なIP時代へと移行しつつある中、従来の電話型モデルに代表される単独の事業者による垂直統合型のビジネス展開のみが「ユーザの利便性」の向上に資するものとは言い切れず、各レイヤーごとに必要な部分を自由に組み合わせてビジネス展開を行い得る「オープン型」のビジネスモデルの実現を促していくという方向性に鑑みれば、むしろ垂直統合型のビジネス展開において懸念される「公正競争環境」整備の在り方をより重視すべきではないか

「ユーザの利便性」という場合、一定の品質基準の確保を前提とする電話サービスとは異なるIPベースのサービスの時代にあっては、多様なサービス品質とそれに見合った料金水準の実現が図られることが重要と考えられるのではないか。他方、サービス品質や料金の多様化が進展するとすれば、サービス提供事業者からユーザに対し十分な情報提供が行われることも重要ではないか。

垂直統合型のビジネスモデルについては、どのレイヤーに公正競争を阻害するボトルネックが発生する可能性があるか、またその程度はどのようなものかといった観点から評価を行い、これを基に必要な競争環境整備の在り方について検討していくことが適当ではないか


(1) ネットワークレイヤーに着目すれば、一種事業者の垂直統合型のビジネスモデルを評価する際の視点としては、ボトルネック設備を保有している市場支配的な事業者(東西NTT)とそれ以外の一種事業者、インフラを保有する一種事業者とそれ以外の事業者(二種事業者、コンテンツプロバイダ等)を区別して検討することが適当ではないか。また、同じネットワークレイヤーであっても、固定系一種事業者と周波数の制約により事業者数が限定されている移動系一種事業者とでは異なる視点から検討が求められる部分があるのではないか。


(2) より上位のレイヤーに着目した場合、例えば、ネットワーク上で流通するデジタルコンテンツ(特にキラーコンテンツ)が不足している現状に鑑みれば、コンテンツレイヤーにおいて新たなボトルネック(下位レイヤーに対し市場支配力を濫用し得る状況)が発生したり、特定の通信事業者によるコンテンツの囲い込み等が発生し、その結果として公正競争が損なわれる可能性もあるのではないか。他方、コンテンツ市場は、自由競争に委ねることにより活力ある市場が創出されることが期待されるところであり、現時点で一定の競争ルールの整備等を行うことは時期尚早とする考え方もあり得るのではないか


その他、例えばプラットフォームレイヤーにおける認証・課金、データセンタ事業等の分野で新たなボトルネックが発生する可能性はないか。

また、例えば、一種事業者による垂直統合型のビジネスモデルは、ネットワークレイヤーにおける収益性の低下等を背景として新たな収益モデルを模索している段階にあるが、競争環境整備の在り方を検討する際には、こうした「離陸段階」の市場と「成熟した段階」の市場とを区別しつつ、競争環境整備の在り方を検討する必要があるか


(2)  市場支配的な事業者による垂直統合型のビジネス展開

ボトルネック設備を保有する市場支配的な事業者(東西NTT)が上位レイヤーに進出する垂直統合型のビジネス展開について、ボトルネック設備を保有することに起因する市場支配力の濫用を防止し、東西NTTと他事業者との間の公正競争条件を確保する観点から、非対称規制の整備等、所要の制度整備が行われたところであるが、これらの措置により十分な対応が可能であると考えられるか

東西NTTはNTT法により業務範囲を地域通信業務に限定されているが、本年6月に公布された電気通信事業法等の一部を改正する法律により、地域通信業務の円滑な遂行及び電気通信事業の公正な競争の確保に支障のない範囲内で、総務大臣の認可を受けて、同社の保有する設備又は技術、職員を活用して行う電気通信業務等(いわゆる「活用業務」)を追加することが可能となっている(法施行は本年11月末を予定)。なお、上記の活用業務に係る総務大臣の認可ガイドラインについては、現在、情報通信審議会IT特別部会において審議中。

また、同法において非対称規制を整備し、市場支配的な事業者による反競争的行為を類型化((1)接続により得られた情報の目的外利用・提供、(2)不当に優先的又は不利な特定の事業者の取扱い、(3)製造・販売業者等への不当な規律・干渉)した上で、これを防止・除去するための措置(総務大臣による停止・変更命令)を講じたところ(法の施行時期は上記と同じ)。

上位レイヤーにおける市場支配力の濫用の可能性について、ボトルネック設備との関連性の程度に応じて異なるものと考えられるのではないか。例えば、プラットフォームレイヤーの競争環境整備の在り方を検討する際、ネットワークレイヤーのオープン化の動向と密接に関連している部分もあるのではないか。

また、上記の制度整備に加え、更なる公正競争環境整備を図る観点から検討すべき事項は何か例えば、東西NTTの子会社等による上位レイヤーへの事業展開について、東西NTT本体による事業展開とは異なり、自由な事業展開を確保することが適当か。


(3)  その他事業者による垂直統合型のビジネス展開

ボトルネック設備を保有しない一種事業者が垂直統合型のビジネス展開を図る場合、市場支配的な事業者と異なり、自由な事業展開を確保していくことが適当か。または、インフラ事業者と非インフラ事業者との競争条件に着目し、何らかの競争ルールを整備することが必要であると考えるべきか(例えば、一種事業者、特に市場支配的な事業者が上位レイヤーに進出する際の卸部門と小売部門の「会計分離」や「構造分離」について、何らかの評価をしていく必要があるか)。

他方、現行の電気通信事業法の枠組みの中においても、不当な差別的取扱い等の競争阻害的行為は業務改善命令や料金変更命令の対象とされているところであり、これらの業務改善命令等により公正競争確保のための実効性が担保されているという考え方もあり得るのではないか

移動体通信事業の場合、端末、ネットワーク、プラットフォームの各レイヤーを横断する垂直統合型のビジネス展開が進展し、その結果、利用者の増加、市場規模の拡大に寄与してきたところ。他方、移動体通信事業の場合、固定通信事業とは異なり、周波数の制約から参入事業者の数が限定されていること、「利用者の拡大」に向けた戦略から「収益構造の高度化」に向けた戦略(例えばリッチコンテンツの配信による収益構造の強化)へと重点を移しつつあるといった市場動向を踏まえると、固定通信事業とは異なる観点から公正競争環境整備の在り方について検討する必要があるのではないか

モバイルインターネット(ブラウザーフォン)の分野においては、既にゲートウェイやポータルサイトの開放について各事業者から一定の方向性が示され、これに基づく措置が講じられつつある点は一定の評価ができるが、今後、電気通信事業法の枠内において、競争ルールの明確化等を図る観点から検討すべき事項は何か(例えば、公式サイトにおけるISP接続に係る同等性の確保、パケット通信料金の在り方等)

「次世代移動体システム上のビジネスモデルに関する研究会」報告書(平成13年6月)において、


(1) NTTドコモ、KDDI、Jフォンの3社の自社のゲートウエイの開放に関する考え方が示され、NTTドコモ及びKDDIは実現に向けた方針を、またJフォンも検討していく旨表明した。


(2) また、いわゆる「公式サイト」に対する料金回収代行サービス提供や認証・決済に有用なユーザIDの通知に関し、3社とも第三者機関によるサイト評価等の導入を通じた対象サイトの拡大等に具体的に取り組むとした。


(3) 更に、端末のオープン性の確保についても、KDDIは、本年秋までに「ポータルサイト」項目を新設して他社ポータルを一覧表示することでより選びやすくする旨表明した(補注:本年10月18日、KDDI等は同月31日より実施予定である旨を発表した)。

市場支配的な移動体通信事業者の場合、固定系の市場支配的な事業者と同様に一定の行為規制が課せられるが、当該措置により公正競争確保は十分に図られるものと考えられるか。

市場支配的な移動体通信事業者については、ボトルネック性はないものの、それに準じて一定の接続規制が必要な電気通信設備(第二種指定設備)を設置する第一種電気通信事業者として位置付け、接続約款の届出・公表の他、ボトルネック設備(県内固定通信網である第一種指定設備)を有する第一種電気通信事業者と同等の行為規制が課せられる。





3−1.ネットワークレイヤーにおける競争環境整備の在り方


ブロードバンド時代に対応した柔軟なビジネスモデルを実現するためには、多様なネットワーク調達を可能とするための競争環境整備を推進していく必要があるのではないか。

ブロードバンド時代に対応した柔軟なビジネスモデルを展開していくためには、サービス・オリエンテッドなデリバリーチャネルを自由に選択・構築していくことを基本とすべきであり、ネットワークレイヤーにおいて、各事業者が計画するビジネスモデルに最適なネットワーク調達が可能となるよう競争環境整備を図り、ネットワーク調達の柔軟性を確保していくことが必要ではないか。

(1)  加入者系ネットワークの多様化の推進

加入者系ネットワークについては、DSL、ケーブルインターネット、光ファイバ、FWA等の多様なブロードバンドアクセスが可能となり、料金の低廉化も進展しているが、更に、ダークファイバの利用促進、無線LANの活用(例えば米国モバイルスター社のように、店舗、空港等に無線LANを構築)やPHSの高度化による高速ワイヤレスインターネット環境の実現等により、新たなサービス展開が期待できるのではないか。


(2)  中継系ネットワークの多様化の推進

ブロードバンド化が進展する中、バックボーン回線について地域ISP等からは料金の低廉化を求める声があるが、バックボーン回線の提供については各事業者の競争環境下にあり、引き続き事業者間の競争を通じた引下げを図っていくことが適当ではないか。

例えば、先般の電気通信事業法等の改正法による卸電気通信役務制度の整備、帯域幅取引仲介ビジネスの登場等により、電気通信事業者間のネットワーク構築の柔軟性が一層確保されることが期待できるのではないか。

電力事業者、鉄道事業者といった電気通信事業者以外の民間事業者や、国・地方公共団体といった公的主体も道路、河川、下水道といった施設管理用に光ファイバ網を整備・保有しているところであり、例えばIRU(Indefeasible Right of Use :破棄し得ない使用権)の設定等により、これら電気通信事業者以外の者が保有する光ファイバの有効活用を図っていくことが必要ではないか。


IRUを活用した電気通信ネットワークの構築については、本年9月、従来「原則10年以上」としていた運用基準を改め、「1年更新」を可能とする規制緩和措置を講じたところ。

なお、政府の「改革工程表」(9月21日経済財政諮問会議決定)においては、「電力会社、鉄道事業者が保有する光ファイバ(ダークファイバ)路線情報等を公開する。(9月末までに措置)」及び「道路、河川管理用の光ファイバを民間が利用するに当たっての技術上・制度上等の諸課題を整理・検討し、その結果を踏まえ、必要に応じ、道路法等の関係法令の改正又は解釈の提示等を行う。(14年3月までに措置)」といった施策が盛り込まれている。

(3)  ネットワーク再販市場の活性化

移動体通信事業の分野においては、例えば既存事業者(MNO : Mobile Network Operator)のサービスに付加価値をつけ、二種事業者としてサービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の参入を促す観点から、事業参入に際しての透明性を確保するための所要の措置を講じることが望ましいのではないか。この際、MVNOの範囲、番号付与や端末販売等の在り方を含め、明確化すべき事項としてどのようなものが考えられるか。

MVNOの事業参入については、MNOに対して一定の容量再販を義務づけるかどうかといった議論が存在するが、MNOの設備投資意欲に与える影響等を勘案すれば、このような措置を講じることについては慎重に対処すべきではないか。

英国OFTELは「MVNOに関するステートメント」(99年10月)の中で、MNOからMVNOに対するサービス提供を確保するための規制導入は時期尚早と結論。他方、香港電気通信管理局(OFTA)は、3G(次世代携帯電話)に係る免許方針(本年2月)として、MNOからMVNO及びコンテンツプロバイダーに対し30%以上の周波数帯を開放することを義務付けた(本年9月、3Gの免許取得者の暫定的選出を実施したが、現事業者6社中2社は免許申請をせず、MVNOとしての参入を計画している模様)。

また、帯域幅仲介ビジネスの登場は卸市場における価格形成を促す等の効果も期待されるのではないか。

その他、固定系の事業分野についても、再販市場の活性化を図る観点から講じるべき措置としてどのような事項が考えられるか。

(4)  ISP間の接続の円滑化

インターネットはISP(Internet Service Provider)間の接続(トランジット、ピアリング等)によって構成されており、ブロードバンドコネクティビティが確保された高品質のインターネット網の構築を図るためには、ISP間の円滑な接続の実現が重要であるが、ISP間の接続は国際的に事業者間の個別交渉により実現してきているものであり、基本的に事業者間の交渉に委ねることが適当と考えられるのではないか

ISP間の接続については、仮に下位ISP(地域ISP)が希望するピアリング等が合理的な理由がなく実現しない場合、経由するルータの数が増え、結果として、品質の低下が懸念されることから、ISP間の接続について当事者間の交渉を円滑に行う環境整備を図ることには一定の合理性が存在している。

他方、上位ISPとすれば、無償のピアリングはこれにより得られる相対的利益が小さく、かつ下位ISP側の技術力が不十分である場合、他のISPあてのトラヒックが破棄される等の不利益が生じる懸念もある。

ただし、インターネット市場の健全な発達を促す観点からは、当事者間で紛争事案が発生した場合の紛争処理メカニズムを拡充することも考え得るのではないか





3−2.プラットフォームレイヤー等における競争環境整備の在り方


プラットフォームレイヤーについては、当該市場がブロードバンドビジネスの中核となる市場であり、かつ市場が離陸段階にあるという状況を踏まえつつ、望ましい競争ルールの在り方について検討していくことが求められるのではないか。

プラットフォームレイヤー(コンテンツ配信、データセンタ事業、認証・課金、著作権管理等)におけるプレイヤーは広範多岐にわたるが、垂直統合型のビジネスモデルが広がりを見せる中、当該レイヤーがブロードバンドビジネスの中核となる重要なマーケットであり、公正競争環境整備を進めていくことが求められているのではないか

他方、各プレイヤーが収益性の高いビジネスモデルの構築に向け、投資リスクを負いつつ様々な取組みを進めている分野であることに鑑みれば、競争ルールの導入などについては事業活力を削ぐことのないよう慎重に対処することが必要ではないか

なお、プラットフォームレイヤはネットワークレイヤと密接に関連し、またコンテンツレイヤの市場創出に大きな影響を与える「触媒」的な機能を有するものであることを念頭に置きつつ、競争ルールの在り方を検討していく必要があるのではないか。

(1)  コンテンツ配信の円滑化

CDN(Content Delivery Network)事業はブロードバンドコンテンツの配信について、キャッシュサーバの効率的な設置等により最適なコンテンツ配信ネットワークを設計する事業であるが、現状においては、アクセス回線の実効速度や品質がまちまちであるため、コンテンツプロバイダの立場からすれば、コンテンツ単位の配信・課金方式の採用には踏み切れない状況にあるとの指摘がある。このため、 例えば、ベストエフォート型のインターネットサービスについて、サービス品質に関する自己認証基準を設ける(ネットワークの標準モデルを定め、客観的なベンチマーク値又は一定のレンジを設け、サービス品質のクラス分類をユーザに対して提示するイメージ)ことにより、ブロードバンドコンテンツの配信の円滑化やユーザ保護に資することとなるのではないか

また、デジタルコンテンツの制作・流通を促す観点から、コンテンツのメタデータ化、デジタルアーカイブの整備、ネッワークコラボレーションシステムの整備等を促進するための方策を検討していく必要があるのではないか。


(2)  その他

上記のコンテンツ配信の円滑化に加え、データセンタ事業、認証・課金等を含むプラットフォームレイヤーにおける競争環境整備を図る観点から、検討すべきその他の措置としてどのようなものが考えられるか





3−3.端末レイヤーにおける競争環境整備の在り方


端末市場においては、多種多様な端末がユーザに提供されている状況にあるが、通信サービスの高度化・多様化を促す観点から、更にどのような競争環境整備を図るべきか。

(1)  端末販売の在り方

移動通信端末については、端末販売と通信サービス(通信事業者の選択)がバンドル化され、端末機器の価格を低位に設定し、その分を通信料金として回収するビジネスモデルを採用しているが、今後ともこうしたバンドル型のビジネスモデルを維持していくことが電気通信事業関連ビジネス全体の発展、ユーザ利益の実現といった観点から望ましいものと考えられるか

端末販売と通信サービスをアンバンドル化しようとした場合、端末製造に係る技術情報開示の在り方、端末価格が上昇する可能性等の観点から困難ではないかとの考え方がある一方、3G(次世代携帯電話)におけるUIM(User Identification Module)カードの採用、ネットワークのユビキタス化の進展等の環境変化を踏まえれば、端末機器の多様化、端末メーカの国際競争力の向上等の観点から望ましい面もあるのではないか


(2)  その他

番号ポータビリティについて、固定電話については既に段階的に実現の方向にあるが、移動電話においては実現していない。移動電話の番号ポータビリティ導入の是非について、端末販売と通信サービスのアンバンドル化との関係(例えば現行の端末及び番号を維持したまま、他の電気通信事業者との契約に移行が可能)を含め、どのように考えることが適当か

その他、端末レイヤーの競争環境整備を図る観点から検討すべき項目としてどのようなものがあるか。





4.電気通信事業における競争の枠組みの在り方


電気通信分野における全般的な規制水準の低下による競争促進を図るという基本的な方向の下、現行の一種・二種の事業区分について、どのように評価することが適当か。また、事業区分の見直しを図るとすれば、どのような方向性を指向することが適当と考えられるか。

一種・二種の事業区分については、全国的なネットワーク基盤を構築する一種事業と当該ネットワーク上で自由かつ多様な事業展開を行う二種事業という前提に立って導入されたものであるが、累次の規制緩和措置によるネットワーク構築の柔軟性確保が図られる中、新たなビジネスモデルの登場を促すという観点から見て、現行の事業区分があることによって、どういう支障が生じ得ると考えられるか

一種事業に係る許可制度は、インフラ事業者として公益事業特権を付与することにより、ネットワーク構築を強力に推進し、ネットワーク基盤の早期構築を図ることを目的とするものであるが、一種事業の許可と公益事業特権付与の仕組みとの関係について、どのように評価すべきか

一種事業が基盤的な通信事業であるという観点から、市場からの退出についても許可制が採られているが、仮に現行の許可制度を見直すとした場合、こうした退出規制とユーザ保護の在り方との関係をどのように考えるべきか

一種事業について支配的事業者規制が導入されることにより、市場支配力を有しない一種事業者に対する規制緩和が実現し、業務規制面で一種と二種の垣根が従来より低下することとなったが、そのことが事業区分の在り方にどのような影響を及ぼすと考えられるか

また、二種事業については、特別二種と一般二種に区分され、従来の回線規模による基準から提供役務による基準へと移行し、現在は、国際及び公専公事業を特別二種、それ以外を一般二種としているところであるが、DSL事業者、MVNO等の新たな事業者が登場する中、一種事業者と同様、二種事業者についても相当数のユーザを確保する可能性があり、ユーザ保護の観点から必要な措置を検討する必要があるのではないか

例えば、米国カリフォルニア州において、 本年3月、DSL事業者(我が国の場合は二種事業者)であるノースポイント社が倒産しサービスを急遽停止したため、10万人以上のユーザがサービスを受けられなくなるという事態が発生した。

更に、EUにおけるハード・ソフト分離の動向等を踏まえつつ、現行の一種・二種の事業区分の在り方について見直すことについても検討の必要があるのではないか

EUは、現在検討中の新たな規制の枠組みに関する新指令案において、電気通信事業を「電子通信ネットワーク事業」と「電子通信サービス事業」に分け、登録(general authorization)制による事業参入を可能とするとともに、公益事業特権、番号、周波数といった希少性のある資源の利用については個別認可(indivisual licence)を付与する方向で検討中。

なお、現行の事業区分の見直しを検討するに際しては、ユーザ保護の観点はもとより、一種事業者に対する番号や周波数といった希少性のある資源の優先的割当て、技術基準適合確認、接続ルールの運用等の現行の電気通信事業法の枠組みの中で影響を受ける可能性がある項目について、多角的な観点から検討していくことが必要ではないか