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第6回 迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会
(議事要旨)


1    日時  平成17年4月6日(水) 14時00分〜16時10分
 場所  総務省11階 1101会議室
 出席者 (敬称略)
構成員)
新美 育文(座長)、松本 恒雄(座長代理)、岸原 孝昌、木村 孝(加藤 構成員代理)、桑子 博行、甲田 博正(西郷 構成員代理)、古閑 由佳(別所 構成員代理)、佐伯 仁志、樋口 貴章(高橋 構成員代理)、長田 三紀、奈良谷 弘、西野 茂生(五十嵐 構成員代理)、野口 尚志、比留川 実、三膳 孝通、山川 隆、好光 陽子
オブザーバ)
財団法人日本データ通信協会
総務省)
有冨総合通信基盤局長、江嵜電気通信事業部長、奥消費者行政課長、古市調査官、渋谷課長補佐、景山課長補佐

 議事
  (1)  開会
  (2)  議題
  ・ 事務局からの説明
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」について
ISP等による迷惑メール対策について
国際連携の推進状況等について
  ・ 構成員からの発表
社団法人日本インターネットプロバイダー協会
株式会社インターネットイニシアティブ
  (3)  閉会

 議事概要
事務局からの説明について
(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案について)
  指定法人から登録機関への制度の変更については、これまで研究会で議論されていなかったと思うが、何か背景があるのか。
  本研究会では迷惑メール対策に関する議論を中心に行ってきた。登録機関への変更は、行政改革の流れを踏まえたものであり、迷惑メール対策の内容に係るものではなく、業務の内容にも変更はない。法案策定の過程で加えることになったもの。
  改正法案第11条「電気通信役務の提供の拒否」では、「自己の電気通信設備の機能に著しい障害を生ずる」という限定がはずされているが、この場合、受信側ISPの電気通信設備に障害が発生していることをもって、送信側ISPが役務提供拒否できるのかどうか。総務省に相談をしようにも、電気通信設備に障害が発生している最中(オンタイム)に相談することは事実上困難であるので、「自己または他人の電気通信設備の機能に著しい障害を生ずる」と明記した方が良かったのではないか。
  電気通信役務の提供の拒否の正当な理由については、個別の事例によって、同じ事象であっても、正当な理由といえる場合とそうでない場合があるので一概には言えない。
  また、「電気通信設備の機能に著しい障害」は電気通信役務の提供の拒否の要件とはなっていない。あくまで「自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれ」がある場合である。送信側ISPのユーザから電子メールが大量送信され、受信側のメールサーバに障害が発生することによって、送信側ISPから電子メールが送れなくなる場合は、送信側ISPの「電子メール通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれ」があると言えるので、正当な理由があると認められるのであれば、「電気通信役務の提供の拒否」は可能。
  1)「電子メール通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれ」とは、オンタイムに発生してなければならないのか。例えば、電子メール送信行為が終わった後に、受信側ISPからスパム送信の事実を示す通知等が送られてきたことによって、送信側ISPがスパム送信者に対する役務提供の拒否をすることは可能か。
    2)また、改正法案第2条第5項の定義に「電子メール通信役務」とあるが、例えば自設のメールサーバから電子メールを送信している場合、送信側ISPからは、当該役務を提供しているかどうか認知できないのではないか。
  1)第11条は、オンタイムか送信行為の後かどうかを限定するものではないが、オンタイムの方が差し迫った危険があるとはいえる。事後に役務提供拒否する場合は、正当な理由として認められる範囲はより限定されるだろう。
  2)第2条第5項の「電子メール通信役務」の定義については、特定電子メール法が電気通信役務一般ではなく、電子メールについて定めるものであるということで、電子メールに関する電気通信役務であることを明確にする表現上の変更であり、これまでと範囲が変更されているものではない。
  送信者情報を偽るいわゆる「なりすまし」については、措置命令と直接刑罰のどちらも科すことができるのか。
  どちらも科すことができる。
  本法案の施行はいつ頃の予定か。
  国会審議のスケジュールによるので、はっきりとはいえないが、公布後6ヶ月以内に施行としているので、今通常国会で成立すれば、年末頃までではないか。
  改正法案第8条第2項の申出に対する措置を取るべき主体は、総務大臣なのか、それとも事業者なのか。また、これは具体的にどういった場合を想定しているのか。
  第8条第2項は第1項と並列の規定であり、適切な措置を取るべき主体は総務大臣。具体的には措置命令や迷惑メール事例の周知などを想定している。
  改正法案第6条違反に基づいた役務提供の拒否は可能か。
  役務提供の拒否ができるのは、あくまで「自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれ」がある場合であり、特定電子メール法に違反していることが即拒否につながるわけではない。

(ISP等による迷惑メール対策及び国際連携の推進状況等について)
  国際連携について、米国との協議の現状如何。
  対米協議は今年の夏か秋に予定されており、現在日程調整中。
  国際連携の動きについて、米国はどのようなスタンスか。
  基本的に前向きのスタンス。OECDやITUの場にも積極的に参加している。それは、わが国も支持するところ。ただし、米国が自ら連携を持ちかけるというより、むしろ米国からのスパムを受信している英語圏の国から、米国へ協力を持ちかけることが多いようだ。

社団法人日本インターネットプロバイダー協会からの発表について
  最近は携帯電話着のスパムが多くなっている。アンケートにあったが、迷惑メール対策ソフトによるスパム対策は携帯電話においても可能なのか。
  資料3−2のアンケートは、パソコンユーザを対象としている。確かに携帯電話の場合、事業者が自主的に対策を行っているが、それらをすり抜けたスパムの対策は受信者側では困難。
  携帯電話事業者の対策については、これまで本研究会でも携帯電話事業者から説明がされていることと思う。
  携帯電話発のスパムについては、事業者によって対策が講じられていることは承知しているが、パソコン発、携帯電話着のスパムが問題なのではないか。
  確かにパソコン発、携帯電話着へのスパムが問題になっており、ISPで送信側としての対策に取り組む必要がある。25番ポートブロックはその対策の一つだが、自分でサーバを設置しているユーザが影響を受けたり、対応できるISPが限られる。現状、送信側ISPによる対策はなかなか難しい。
  ISPが回線を利用停止して、送信者から訴訟を起こされたことはあるのか。
  アンケートで、訴えられたと回答しているISPはいない。若干トラブルはあると聞いているが、将来的には、送信の正当性を主張してくるようなスパマーがISPを相手に訴訟を起こすことが考えられるので、ISPは理論武装しておく必要がある。
  アンケートにおけるスパムの定義は。
  「受信者側の承諾なく送られてくる迷惑なメール」という定義であり、適法、違法を問わない。
  違法に送信されたメールについては、ISPも契約解除などの対処がしやすい。あとは故意かどうかわからないゾンビスパムによる送信の場合が、対応に困るということではないのか。
  迷惑メール追放支援プロジェクトによって、比較的利用停止をしやすくなるが、加害者も被害者になるような、ゾンビスパムにへの対策はよく議論する必要がある。
  アンケートの実施時期と発送件数如何。
  昨年12月、ISPに対して約1,000〜1,200件を発送した。
  表示義務を守っているスパマーは現状ほとんどいない。そして、そのようなスパマーの中には、ISPと契約後、スパムを送信してすぐに契約を解除し、別のISPへ渡り歩くなどしており、利用停止まで至らないケースが多い。
  重要な指摘。ISPの渡りが多いことは問題。
  携帯電話着のスパムは、ユーザー側のスパム対策ソフトによるブロックがあまり意味を持たない。受信者側の求めに応じて、携帯電話事業者のサーバで受信拒否または配信停止にすることしかできない。IIJなどで導入されている送信ドメイン認証は、認証できないメールの受信拒否や配信停止のサービスなども提供しているのか。
  現段階では送信時点での認証のみ。将来的にはそういったサービスも考えられる。
  表示義務違反など、違法に送信されたメールについて、迷惑メール追放支援プロジェクトで総務省からもれなく通知されるのなら、違法なスパムはなくなるのではないか。
  スパムの内容に基づく配信の拒否は、受信者の同意が必要。具体的にサービスを開始する前には、あらかじめ総務省に相談してもらいたい。
 迷惑メール追放支援プロジェクトが本格的に機能すれば、ISPにおいても、かなりのスパムがブロックできるのではないか。また、ISPの渡り歩き、国内法が適用できない海外発のスパム、法人名を詐称して送信されるスパムへの対処については、ISP間でのブラックリスト交換が効果を発揮するだろう。
  ブラックリスト交換は、通信の秘密や個人情報保護に係わることから「電気通信事業分野におけるプライバシー情報に関する懇談会」において整理中。ただし、先ほどのプレゼンにもあったが、本人確認をしっかりとやっている携帯電話事業者に比べると、ISPの場合はクレジットカード番号による認証だけであり、ブラックリストとして交換する情報の信頼性にかなり違いがある。ブラックリスト交換に関しては、JAIPAJEAGからも実現可能な方策等についてヒアリングを予定しており、可能であれば本研究会でもご報告させていただきたい。
  迷惑メール追放支援プロジェクトについては、必ずしも本施策のみでスパム対策が十分とは思わない。ISPにはできる限りの対処をお願いしたいが、その他の方策についても引き続き検討していきたい。
  自分でサーバを設置している場合でも、そこで使用するドメインを付与されているので、そのドメインの管理者ならば、ドメインを剥奪するなどの対応ができないのか。
  そういったご意見もあるが、ドメイン管理者はISPよりも事実関係の確認が困難となっている。ドメインを取得している会社、Webサイトをホスティングしている会社、送信に用いる会社が異なる場合が多く、規制をかけるのは困難。広告・宣伝に用いられるWebサイトの開設は止められるが、送信行為に対する抑止力にはならない。

株式会社インターネットイニシアティブからの発表について
  25番ポートブロックについての詳細如何。これは、スパムと判定されたメールを送信側ISPでブロックするサービスか。
  スパムであるかどうかに関係なく、契約しているユーザを対象に、ISPが用意するメールサーバを通らないメールはすべてブロックするもの。
  電子メールは契約したISPのメールサーバを経由して送受信されるのが通常だが、スパムはISPのメールサーバを経由せずに直接送信されることが多い。25番ポートブロックとは、正当な送信者かスパマーかを問わず、ISPのメールサーバを経由しない電子メールを一律にブロックするもの。
  例えば、大学で設置するメールサーバから電子メールを送信する場合、契約しているISPにメールを止められてしまうことになるのか。
  通常、契約しているISPのメールサーバを介して送信されていることがほとんどであるので、ユーザが普段どおりの使い方をしていれば、止められることはない。
  企業や大学が設置するメールサーバから、正当な方法で送信してもブロックされてしまうのか。
  そういう方々には、また別の対応を考えていく必要がある。例えば個人ユーザのネットワークに一定の範囲のドメインを付与することによって、対応できると考えている。
  スパムの約99%が自分で設置したメールサーバから送信されている。実際に25番ポートブロックを導入して、スパムがほとんどなくなったたという事例がある。
  大学等はメール送信について個別にメール管理のポリシーを持っており、大学によっては、大学が用意するメールサーバを経由しない電子メールは送信しないというところもある。中には、研究室などが実験的に自ら設置したメールサーバから直接メールを送ることもあるため、周知は必要かと思う。
  技術的に難しいところであるので、後で個別に伺いたいと思う。
  送信ドメイン認証技術は、なりすましには効果的かと思うが、ゾンビスパムなどには対処できるのか。
  ゾンビスパムが、送信元を詐称しない通常の送信方法によって送信されているのであれば、送信ドメイン認証技術だけでは、スパムかどうかわからない。
  送信ドメイン認証技術は発信元が登録するのか。
  然り。
  こちらの方が25番ポートブロックよりも幾分緩やかな対策と思う。
  昨今、ドメイン取得はコストも下がって簡単にでき、国外の規制の緩やかな国からもドメインを取得できるので、ドメインを登録されてしまうと認証されてしまうので、信頼性は高くないが、IPアドレスの評価などによって仕分けていくしかない。送信ドメイン認証は、一定の有効性はあるが、特効薬にはならないという意見に対してはどうか。
  電子メールの使い方から再構築しなければならない時期に来ていることを、送信者も受信者も認識しているのではないか。そういった使い方をイメージするためにも、送信ドメイン認証のようなモデルを提示する必要がある。
  この技術を悪用する者はいるだろう。ユーザの利便性を多少低下させても、差出人のわからないメールは受け取らないよう、ユーザ側で選択できる仕組みを作っていかなければならない。
  誰から来たメールかわかる場合にしかメールを開封しないということができる環境を整えるしかない。スパムによる今の不便な状況を、利用しやすいところまで回復させなければならない。

  (今後のスケジュール等)
  次回は5月中下旬を予定。国際連携策、ユーザ周知についてご議論いただきたい。最終報告書の骨子案を事務局で作成するので、本研究会でご議論いただきたい。
  6月に最終とりまとめ案をご議論いただき、パブリックコメントにかけ、7月上旬には最終報告書をとりまとめるというかたちでお願いしたいと考えている。


(以上)


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