情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会


電波有効利用政策研究会 電波利用料部会(第4回)議事要旨





 日時:平成15年6月5日(木)1600分〜1805
 場所:総務省8階 第1特別会議室
 出席者(敬称略)
  主査:辻井中央大学教授、主査代理:黒川法政大学教授
飴井株式会社東京放送常務取締役、安念成蹊大学教授、池田情報通信ネットワーク産業協会専務理事、甲藤早稲田大学助教授、木村株式会社宇宙通信取締役副社長、黒岩社団法人全国漁業無線協会専務理事、小竹群馬大学講師、取株式会社鷹山代表取締役社長、築山東京電力株式会社常務取締役、津田株式会社NTTドコモ代表取締役副社長、橋本日本放送協会理事、橋本朝日放送株式会社常務取締役、原社団法人日本経団連情報グループ長、東マイクロソフト株式会社取締役、平田KDDI株式会社取締役執行役員専務、村山株式会社ニッポン放送取締役、湧口財団法人国際通信経済研究所研究員、若尾社団法人電波産業会専務理事、百成J−フォン株式会社技術本部無線ネットワーク部課長(五十嵐常務執行役員代理)、鈴木ジェイサット株式会社執行役員(今井代表取締役COO代理)、小笠原社団法人電子情報技術産業協会事務局長(金子専務理事代理)、田中東日本旅客鉄道株式会社設備部課長(佐々木設備部長代理)、市川消防庁防災情報室課長補佐(千田室長代理)
 《部外出席者》
鬼木大阪学院大学教授
 《総務省出席者》
有冨総合通信基盤局長、鬼頭電波部長、河内電波政策課長、炭田電波政策課企画官、武居基幹通信課長、富永移動通信課長、坂巻衛星移動通信課長、田中電波環境課長、奥電波利用料企画室長 他

  配布資料  
資料1  電波資源の使用料金・価格と電波政策(大阪学院大学 鬼木教授)
資料2  公共政策から見た電波利用料(群馬大学 小竹講師)
資料3  小電力無線局の動向(社団法人電波産業会)
資料4  免許不要無線局についての考え方(情報通信ネットワーク産業協会)

 議事等
   (1)開会

    (2)電波利用料のあり方について(プレゼンテーション)(1)
   資料1に沿って鬼木教授から、資料2に沿って小竹構成員からそれぞれプレゼンテーションが行われた後、以下のような質疑応答が行われた。  

 (構成員)両先生の議論の原点的なことになるのかなと思うのですが、2つの点について、ご質問もかねて自分の意見も併せて言わせていただきたいと思います。まず、サムエルソンの話を出しながら公共財だとおっしゃっていた部分がありますが、個人的には電波を完全に公共財と見るのはどうかなと思っています。1つ大きな観点としては、送信する部分と受信する部分をきちんと分けるべきではないでしょうか。つまり送信する部分は、不法無線取締りのキャンペーンをやっていますが、結局、誰でも無線機器を持ってくれば電波を出せるということなのです。その意味で言いますと、非排除性が成り立つことは良いと思うのですが、一方で、逆に誰かが電波を出してしまうと、他の人が使えなくなるところで競合性が働いているのではないでしょうか。そうなってくると、純粋な意味での公共財は、そこのところで無理があるのではないかというのが1点あります。
 それに関して、逆に受信の方で見ますと、これは不法に傍受するのを取り締まっていることが典型的に表していますが、誰でも電波を受信することができる、聞いてしまうことができるということ、その人が聞いたからといって、他の人が聞けなくなるわけではないという意味で、非排除性、非競合性が成り立っています。その意味で受信に関しては、公共財というのが純粋に成り立つのではないでしょうか。実はこれはサムエルソンが主張している、たしか1970年頃の議論だったと思うのですが、テレビ放送を例にミナジアンとの間で議論しているものがあるのですが、それも同じような観点で議論されていると思います。
 そうしますと、公共財と言ってしまうと、今度は市場取引で値段がつくのかという問題が一方で出てくると思います。これはいわゆる市場の失敗と言われることで、公的介入が必要だと言われる要因が幾つかあるのですが、一つの要因に公共財が挙がってくるわけです。そうしますと、実は純粋に市場取引では馴染まないので、公的な介入が必要であると言っています。このほかに幾つか市場の失敗の要因があって、不確実性の問題もありますし、一番大きいのは、電波の場合には混信が起こるという問題、いわゆる外部性の問題になってくるわけです。ですから、外部性について、もう少し市場取引等々の話、市場価値を得るところで考えていかなければならないのかなということです。逆に公共財の方を立ててしまうと、今度は市場価格の議論が難しくなってきますし、市場価格と言うと、今度は公共財の話との整合性がまた出てくるというわけで、ちょうど両先生の議論は、ある意味で、正面からぶつかるような部分で扱われているということで面白いのではないかと思いました。
 それから先ほど送信のところで混雑の問題をおっしゃいましたが、この辺に関しては、クラブ財の議論が出てくるというのが、議論の流れになってくるのかなと思われます。
 (構成員)ご質問の電波は公共財か、あるいは市場取引に適する私的財かについてですが、私は使い方によって変わると思っています。説明として最もわかりやすいのは土地に例えることでして、土地と我々が普段言っているのは、地球表面のスペースを物理的に占有して使用するという意味のユーティリティです。電波の場合は、衛星ではなく地上電波の場合は、地球表面で電波を伝送するためのスペースです。そういう意味で電波の場合は、周波数の違いがあるために次元数が増えるかもしれませんが、基本的には土地と同じくスペースになっていると思います。土地には私的財的な使い方と公共財的な使い方があります。住宅のための土地は私的財として使っておりますし、一般道路や無料の公園などは公共財として使われておるわけです。それから高速道路、あるいは有料公園が仮にあったとしますと、それはクラブ財、つまり入場は制限されているが、共同使用になっていると思います。
 資料1の80ページ以下に、電波資源の使用方式を、私的財に対応する排他的使用、中間のクラブ型使用、それから公共財に対応するコモンズ型使用という具合に3つに分けておきました。私が市場経済原理を適用すべきだというのは、典型的には排他的使用の場合です。しかし、クラブ型使用やコモンズ型使用でも、市場原理と無関係ではありません。例えば公園は公共財として自由に使われるわけですが、公園を建設維持するための費用が必要で、公園のための土地を新規購入するとすれば、お金を払わなければなりません。そういう意味では市場原理も入ってくるわけです。公園の管理主体が政府であるか、管理を委託されている民間の主体であるかにもよっても状況は変わると思います。土地とのアナロジーを使うと、議論の整理がしやすいのではないかと思います。
 (構成員)送信という観点と受信という観点に明確に分けていなかったという点についてはおっしゃるとおりでして、不法無線が出てきたら確かに外部不経済が生じるのは、欠落していた観点だと思います。それと、電波については、財の性質、受信だけに限ってお話しすると、やはり公共財で良いのかなという気がします。これは共同消費や競合性の観点、これはあくまでも今ここに列席されている企業の皆さんには、あまり興味のない対象になるかもしれませんが、そういう話になるかと思います。
 それともう一つの観点としては、先ほどございました外部不経済が不法無線によって生じてしまう、あるいは本来の目的ではなくて、本来、目的のために電波を飛ばしているが、最終的にはノイズになってしまうという意味合いの外部不経済もあるかと思います。自分のこれからのキーポイントとしては、外部不経済を計測して、課金することができるのかという、ヒントを一ついただいたと思っております。
 (構成員)前提の確認ですが、これはどちらもパレート効率というか、そういうことが前提での議論の出発点でしょうか。
 (構成員)その通りです。
 (構成員)結構でございます。
 (構成員)それでは、需要(デマンド)と供給(サプライ)と境界条件(変動要素)がインビジブルゴッドハンド(神の見えざる手)によって最も効率の良いポイントで均衡するとの考え方ですね。であれば、電波と言うサプライ財には密度的な有限性があって、有限性があるゆえにサービス品質を守るための規律が必要となると言う現実があります。ゆえに、どうしても公的管理と言う公益財としての性質を認める事が適正と考えます。そしてその観点から公益財としての電波と市場原理に基づく競争財としての電波、その両方の性質をバランス良く俯瞰しなくてはいけません。こういう場合でのモデル化は、一つの原理原則による理論では無理ではないでしょうか。
 つまり、対象が電波の場合は、通信レートの限界もありますし、一つの空間の中で専有できるチャネルにも限界があります。すなわち、規制が必要な側面と競争が必要な側面とが存在し、経済モデルの想定するデマンドサプライ等のモデルに限界があるわけです。ある意味でパレート効率を前提としている場合は、どうしてもサプライとデマンドが自由に状態遷移して、ローカルミニマムでもミニマムでも良いのですが、均衡するという前提が必要ですね。しかし、電波は、一つのエリア内の空間密度において有限なわけですから、そこへどうしても有限資源の公的管理という考え方が必要になってまいります。したがって私は、電波は公益財だというところから出発して、そこへ使用効率や、新規事業への平等な参入チャンスという観点からの公的なジャッジメントがなされ、そこに競争原理を部分的に導入するということ以外、具体的に扱えないのではないかと思っております。
 (構成員)パレート均衡、あるいはパレート最適のモデル自体は、もとの財自体が固定量で供給されているか、あるいは供給量が可変であるかということには依存いたしません。教科書に出てくる最初の例は、例えば、与えられたミカンを何個とリンゴ何個を二人で分けるときはどうするかというふうにやりますが、ミカンとリンゴを固定量として考えているわけです。したがって、固定量かどうかは本質的な議論でなくて、パレート均衡で問題になるのは、固定供給になっている資源の使い方を改善して現在よりもより良い状態に持っていけるかどうかということです。
 (構成員)常に変化してより良いものにいくという前提が必要ですね。
 (構成員)そういう意味では、私の議論では、現在の電波利用の状態はパレート非効率の最たるもので、効率で言えば最適状態のたとえば20%程度ではないかと思います。現在の日本の状態から、市場経済的な原理が適用される電波の使い方に移行したときの差は、例えば、社会主義下の旧ソ連と市場経済に依っている米国と比較した場合の効率の差に匹敵するのではないかと考えております。ただ、地球上のどの国もまだそういう形で電波を市場経済的に使っている国はありませんから、仮想上の比較に過ぎませんが。
 (構成員)それはやはりサプライが限界性を持っているということを前提で考えざるを得ないという現実からでしょうか。
 (構成員)サプライが一定であっても、価格機能を使って配分した方が効率的に配分できます。逆に価格をゼロにして、命令等で配分したときは、通常大きな歪みが出てきます。また新規参入も困難になり、無駄な使い方が残ってしまうということです。
 (構成員)共通した議論の原点というのは、最低のコストで最大の効用をどうやって上げるかということで、それが双方共通の目的ですね。そうしますと、公益部門では、当然、(安定・継続性)と(公正・信頼性)が効用の最大化の対象になります。民間部門ですと、当然、(経済・効率性)とか、(利便・娯楽性)が効用の最大化要因になりますね。大変難しい議論ですから、公益財という観点から出発しながら、そこへどう市場原理を導入していくのか。その一つの極端な例、電波配分にオークションが本当に馴染むのかどうかという点へ帰結していく気がします。
 (構成員)今幾つかの話の中で2つ気になったことがあります。1つは、例えば東京では非常に過密になっていて、電波は有限になっていて、だから、それを有効に使うためには、オークションもあるかもしれないし、もっと有効に活用するためにというか、切り分けたりする技術が必要になって、そこに投資しなければいけないという議論も起こるが、ある地域に行ってしまうと余っていて、これを公益的にという議論をするのに、ナショナルスタンダードを考えるのか、地域ごとに考えるのか、管理する範囲はどのようになるのかが1点目ですね。
 今までずっと議論してきた中で幾つか困ったのは、頑張ると電波は出てきたりとか、頑張ると創り出されたりとか、範囲が創り出されたり、それを整理整頓すると創り出されたり、より使いやすくなったりすることがあるのです。それが管理コストという名前になっていますが、本当は違って供給コスト、大きな資源を創り出すコストにもなっていて、それがこの議論の非常に重要な部分にはまっているのです。
 このことが北海道ではほとんど話題にならないが、東京では非常に深刻な問題になってしまうという、この問題をどういう単位で考えたらいいのか。マーケットを今1個で議論しましたが、全国で、その度合いが少しずつ違うところでどのように価格の議論をするのか、それは国が考えることに適するかどうかが問題だったと思います。
 そういう意味で電波は有限か無限か、そこから始めるのは結構難しいのです。エコノミストとして天真爛漫に、私はいつも有限で、そういうのが良いと言い続けているのですが、この会議に参加していると、そうではないよと何となく後ろから背中を押されるのです。そんなことはなくて、意外に結構創れていく、広がっていく、創られるところに投資をするとまた広がるところがあるのが、私たちを素直に理論の中に放り込んでくれない問題点を提供しているのでしょう。おそらく、先生はずっと関わっておられるので、そのこともお詳しいと思うのですが、どのように考えておられるでしょうか。マーケットは幾つぐらいあれば良いでしょうか。
 (構成員)マーケットとしては、土地の値段が地域によって違うように、電波の値段も地域によって違うのは当然であって、これを同じにする方が無理だと思っています。それから頑張れば出てくることをどう考えるのか。技術的に頑張ると、新しい利用法が出てきます。これは土地であれば、高層ビルという経済的な建て方が工夫されれば、土地をより有効に使えることと同じでして、土地が不足している地域ではなるべく高層ビルを建ててください、あるいは地震があってもつぶれない安全な使い方を工夫してくださいということになります。
 (構成員)いわゆる情報の価値というのはレントが高くなるのですか。それとも、高くなったビルの側に価値がいくのか、ここのメカニズムというのはどのように考えれば良いのかというのが管理費の話なのでしょうか。
 (構成員)共益費の方です。
 (構成員)ですから、今議論されているのは、確かに地代は高くなります。しかし、地代の部分にとられる分と、建設コストで上にかかる分と両方に分かれているはずなのですね。つまり土地の面だけではなく上に上がっていくと、その部分の話は土地に類似できるのだろうかという気がするのです。
 (構成員)CDMAなどの技術は、同じ物理的な周波数の幅で、より多くの収容力がありますから、土地で言えば1階だけしかない建物と、高層になっている建物との比較になると思うのです。そのときの土地代は、高層ビルを建てることができれば、より効率的な使い方ができますから収入も多くなるわけで、市場経済の下では、土地代は、高層ビルの場合が高くなると思います。
 (構成員)そのとき、土地代の上に建っている建設コストもありますね、高層ビルに無理にした場合は。それは情報を提供するときに、高度に提供するための技術によって、多くのものがつくれるようになっているのです。その建物のローコストと、もとあった土地も確かに普通の土地なのに価値が上がります。それはレントですね。建物の建設コストの方はもっとかかっているわけです。先程までは2階建てだったのが、今度は50階建てになったりします。その建設コストはどのような概念になっているのでしょうか。
 (構成員)土地スペースを利用するために必要な建物のコストは、電波で言えば、アンテナなど電波スペースを利用するための設備に当たると思います。
 (構成員)それは事業者が持っているということですか。
 (構成員)電波が事業用に使われる場合は事業者が負担しており、その中には開発費も入ると思います。

    (3)電波利用料のあり方について(プレゼンテーション)(2)
   資料3に沿って若尾構成員から、資料4に沿って池田構成員からそれぞれプレゼンテーションが行われた後、以下のような質疑応答が行われた。  

 (構成員)先ほど公共性の議論で、排他性のあるものは公共性と矛盾するという、公共性の定義はどのようにしたら良いのですか。国民共有の財産というのが普通の定義ですが、公共性については、どのように定義したら良いでしょうか。
 (構成員)非常に難しい問題ですが、まずは、幾つかのカテゴリーで分類をして、公共性を分類したつもりだったのです。つまり電波自体の性質と、あとは、簡単に言えば電波を使う人のポジションと言いますか、収益性があるかないかということですが、最初に申し上げた公共性は電波自体の特徴ですので、受信に関しては消費の競合が起きないという性質と、誰が受信したかどうかわからないという、排除が可能かどうかという観点、その2つからすると、電波という財自体の性質は、公共性を持っていると考えます。サムエルソンの定義からしますと、そこまでしか一応言えないということになります。あとは、それをどう使うかというのは、また別の観点です。
 (構成員)先生から携帯電話の電波利用料に関する質問がありましたが、電波利用料が仮に携帯電話では基本料金で回収されているという前提ですと、どのようなご意見になりますか。
 (構成員)基本料金から負担していることになりますと、1つは、今までのNTTの基本料金の考え方と等しくなると思うのですが、これまでの例えば様々な投資に対する負担ということになります。2部料金のうち、ベースの部分と同じなのかなと思います。固定料金の中から利用料を払っていることになりますと、結局、携帯ユーザが基本料金を通して電波利用料を負担していることになります。そうしますと電波利用料は、確かに徴収しているのは携帯電話事業者の皆さんですが、負担は消費者に行ってしまいます。
 ですから、議論を純粋に突き詰めて考えますと、携帯電話のユーザの皆さんから、今回、利用料を使ってアナアナ変換を行うことになっているのですが、結局、携帯ユーザからアナアナ変換を行っている地域の皆さんへの所得移転、消費税で考えると、消費者に対して100%前方転嫁していることの議論とパラレルになると思います。ただ、それがどうも基本料金には入っていないとのことなので、財政学的な観点からすると、議論が少し片づけられないなというのが個人的な見解です。消費税的な考え方としてお話ができるとしますと、大変恐縮ですが、携帯電話事業者の皆さんのご意見は、携帯電話のユーザに払ってもらうのは忍びないということに尽きるのかなと思います。
 (構成員)アナアナ変換にその使途として行くかどうかは別にして、その前から電波利用料制度は設けられているので、そこは切り離した方が良い気がするのです。その是非論とは別にですね。それと、基本料金で回収しているかどうかは、私は少しグレーなところがあると思うのですが、いずれにしろ、費用についてはお客様からの何らかの形の料金で回収されているはずでして、末端ではユーザが負担されていることになります。過去は、通信事業者が無線機部分までを通信事業者の資産として、ある意味ではレンタルとして、その料金も基本料金の中に含まれていました。今は、日本も端末は自由化されたので、無線機の資産の帰属先はユーザに移っているわけですが、本来の免許の性格からすると、お客様は無線従事者の資格を持ち、無線局のライセンスをとるべきなのですが、現実的でないので、従事者の資格も要件も不要とし、キャリアが代行している形になっています。これらの費用を含めて、全ての費用はユーザから何らかの形で回収されていますし、性格からしますと、端末の価格にディペンドするのかもしれません。
 (構成員)一つの端末からの540円という電波利用料の徴収だったものですから、1つの定額的な発想かと思います。普通、消費税的に徴収しますと、消費者に必ずしも100%転嫁されるわけではないのです。それは需要曲線の発想からありまして、100%すべて消費者が負担するという場合と、あるいは値段が高くなることによって、需要が縮小することで、事実上サプライヤーが負担していることもあるのです。これはミクロ経済学的な発想です。負担すべき540円の内訳が、消費者に確かに行っているというのは直感的には正しいのかもしれませんが、実は100%、つまり540円すべてが消費者に負担しているわけではないというのがミクロ経済学的な発想になっています。
 申し上げたいのは、結局、値段が高くなると、消費者というのは買い控えますので需要が下がります。その需要が下がったものを需要曲線で金額的に跳ね返してしまいますと、それはキャリアの皆さんの負担になっているのです。それを財政学的に電波利用料を捉えると、これは基本料の中に入っているとすれば、定額的に徴収しています。定額的に徴収しているとすれば、それは100%利用者が負担しているのかなと考えたのです。でも、そうではないというお話でしたので、100%ではなく、携帯のユーザと企業とが痛み分けと言いますか、負担していますので、今一つ結論めいたものは出ないのです。
 (構成員)免許不要局の議論にも影響すると思うのですが、3G以降で端末がどんどん普及すると、国際ローミングで国内外同じハンドセットで行き来しますね。そうすると、海外のハンドセットを持って日本に来たとき、電波利用料を払うのかといったら、これは現実的には徴収できる道はないわけです。今後、その割合は非常に多くなってくるはずです。
 (構成員)その議論は、国際電話の料金の負担方法とほぼパラレルになると考えればよろしいでしょうか。発信と受信という、どちらかが多くなっているかという話がございますね。それとは違うのでしょうか。
 (構成員)国内で国内通信として海外から持ち込んだ端末を使われるわけですから、国際との条件との関係ではないですね。
 (構成員)ただ、海外から端末を持ち込んでいるわけですから、海外の事業者が、その費用と言いますか、通話料をもらうことになるわけではないのですか。
 (構成員)ユーザからは何らかの形で料金としてはもらいますが、日本で使ったときに、電波利用料相当分はその端末に対して付加したのかと言いますと、そういうことは現実的にはできません。したがって、先ほどのように、免許不要局の分の国内で生産した無線機は一体どこへ行っているかわからないので負担すべきではないという話であれば、その延長線でいくと、全て無い方が良いということにもつながるので、それをもって不要とするのではなく、やはり、そもそも電波を使う上での共益的な性格からしますと、免許不要とか、要に応じて負担の有無を変えることがいいのかどうか、基本論を議論し整理されるべきだという気がします。
 (構成員)電波の価値そのものの話を頭に置かないで、今、私たちが関わっている問題は、実際に皆は電波を使って、事業者はもちろんですが、最終需要者のことも含めて考えると、全体に今関わっている電波を、問題を起こさないでスムーズに最終利用者が気持ちよく使える環境、しかも公共的な利用の仕方もありますし、それからある種のものはとっておかなければいけない電波帯もあることも踏まえて、全体の電波を皆が上手に使えるようにするためのシステム、これは社会主義経済的なので少し問題だと私は思っていますが、これは一種のクラブ財で、電波を利用しようと思う人たち全員が、今、置かれている技術基準と、使おうとしている人たち全員の状況がわかっているという状態で、さあ、どうやって使うのかがうまく割り振れれば問題ないのです。割り振れないからオークションなど、混雑している、使いやすい電波については、何らかの形で市場価値によって配分しようとか、それから新しく創り出さなければいけない電波の部分に関しては、少々の技術コストも払ってでも、そこを有効活用するように切り分ける技術が必要ということで電波使用という概念が出ていると思います。
 全体の情報が完全にわかっていて、使いたいと思っている人たちが全てわかっている状態だと、これは完全にクラブ財で、かつ協力ゲームで、それぞれの人が皆で負担しようと思うことと、その全体を上手に使うことにかかる費用がわかっていて、ある部分の費用は非常にわずかなので大したことはなくて、とらなくても良いが、今とれる人の範囲、例えば携帯の540円が猛烈に高い価格で排除コストになるかというと、必ずしもそうは思えない状態で、最初の段階で、あなたのところの費用は、こういうことに使われるということを前提にしながら、使い合う人たちが皆で参入してくれて、協力ゲームで使っていくというメカニズムを考えると、自ずと負担をすべき人、そうでない人というのが切り分けられてくるはずです。
 議論は非常にばかばかしいことを言っているのかもしれませんが、初めからこれは競い合わなければいけなくて、データを隠さなければいけなくて困るような条件は何もないのです。皆は、できれば自分だけは負担をしないで、誰かに負担させながら上手にやりたいと思うこともないのです。条件として、自分が本当に費用を社会に課しているのであれば、その分を負担して皆で使いやすくしましょうということに関して何も問題はありません。
 別の言い方をすると、マーケットで価格を決めようとしていますが、自由参入です。入ってくる分の人たちをできるだけ入れてあげましょうという、しかし、そこでかかる費用は全部負担しましょうと思っているわけですから、オークションに馴染まないというか、しかも、できるだけ皆が使えるようにしましょうと思っていますから排除しないのですね。入ってこようとする人を入れてあげるために、技術も開発しなければいけませんし、枠も空けなければいけませんし、混んでいるところを移さなければいけないことが起こっているわけです。そのことでは、私はエコノミストなので、経済学の議論をしなければいけないと思いつつ、これまで参加してきているのですが、やはり、置かれた環境のことを考えていて、皆ができるだけ入れるように、全く最後には、誰かが入れなくなる場所が起こってくるのでしたら、そのときは何らかの形のマーケティングで市場を分けていって、排除コストをきかせなければいけないと思いますが、今のところは、できるだけ皆が入れるように、そのために資金を集めていって、そのための組織をつくろうとしているわけです。
 おそらく今日のお話は、そういう予定調和の場所がどこかにありますという議論ではないかと、そうではなく、非常に重要なところは切り分けて、やはり排除するものは排除しなければならず、しかも、それは厳密にやると。東京の中でも土地の値段が全部違うように、それぞれのエリアの場所、そういうのはセルラー単位で全部価格が違っていって、その中に入ってくる人を全部計算して、本当は厳密にはしなくてはいけないが、全国では3マーケットぐらいにしか分けられないとか、多分、厳密な理論展開はしにくいのですね。
 そこまで細かいことを考えるのでしたら、全部の情報を出し合って、なぜこんなことを一生懸命力説しているか、それは小さな無線局だって、やっぱり電波を使っているのですね。皆で電波を使おうという環境をつくっていますから、関わっている人たちは、ほんの1円でもいいから、全員が何らかの形で負担をした方が良いのではないかというのがこのゲームを成り立たせるための条件だという気もするのです。
 確かに100円取るために200円かかるようなシステムは馬鹿げているので、それは皆で了解して負担をするのはやめましょうという議論は成り立つかもしれません。私はやや計画経済になっていますが、クラブ財の議論というのは、皆がどういう事情で使っているかわかっていると、つまり、そこのクラブに参加する人は、ほんのわずかな負担でも、皆が少しずつ負担をして、何らかの形で私たちは使っていますということを皆に言って、クラブのメンバーはこういうものですときちんと登録するかどうかは別にして、何らかの形で私たちはこういう形で何万人の人が使っていますということも言った方が良いのではないでしょうか。そうしないで、市場で認定された人たちが使うべきなのでしょうか。本当にわずかの利用の仕方、皆に迷惑をかけないような小電力無線の場合も、それはどこに誰が登録しているかわからないよりは、皆が少しずつ、私たちがこのように使っていますということを言い合いながら使っている状態の方が良いのではないかという、クラブ財の議論をしていくと、ほんのわずかでも電波を使っていて、どんなところで電波が有効に使われているかということが国民的に認識されるようなクラブシステムの方が良いのではないかと思ったのです。それが日本的クラブですと、こういう使い方は米国的クラブですという形で、市場形成ではないですが、そのときに重たい負担の度合いをどうするかについては、先生の議論はかなり必要になりますが、その種の議論が要るのではないかというのが、つまり負担は必要ないですよという話にならない気がして仕方がないのです。
 (構成員)今のお話ですと、それは完全競争モデルになるだろうと思うのです。というのは、費用に関する情報を皆が共有していて、しかもその費用を負担しようという合意があるということは、それは外部不経済が生じないということですから、全ての情報を皆が持っていて外部不経済が生じないのは、それは完全情報、完全競争モデルであって、まさにマーケットが最も理想的にパラダイスとして機能します。つまり、オークションは最高ということになって終わりではないかという気がします。結局は先程のご議論のように、自分たちは嫌だよというのが最後になってくるわけですから、抽象論でやっても仕方がありませんが、私はやはりマーケットメカニズムは良いのではないかなと思います。私は法学者ですが、おおらかにマーケットメカニズム論者ですので、そういう気がしました。
 (構成員)先ほどのお話しで、常識的な意味で電波が公共的か私的かという問題は、ケースにより、人により議論のわく組が随分違いますので、それぞれの場合に応じて、それぞれの定義があり得ると理解します。他方、経済理論の分野では公共財が特別に定義されています。もちろんこれに対立するのは私的財で、普通、我々がお金を払って取引する財です。公共財はお金を払って取引できないもので、大体このように財やサービスを2種類に分けているわけです。公共財としては、外交とか、軍事といったサービスが典型的な例です。そんなものに個人が代金を払って、俺の外交は幾らとか決めることはできないので、一括して税金という形で政府に代価を支払って、政府が国民を代行して外交を創り出していると言いますか、外交サービスを国民に供給しているという考え方をしております。
 問題は、この考え方からして電波がどうなるかですが、免許不要帯の電波が公共財に当たるような気がします。つまり、国民個々が小電力でごく限られた範囲で使うわけですから、それに対していちいち代価を払わせることがコストが高いので非現実的になる。だから電波を一括して供給し、自由に使えるようにする。それが個々に免許を出すことが現実的ではないということに対応すると私は思っております。
 次の問題は、そういったものをどのようなものに供給するかです。例えば、普通の意味の公共財で外交とか、政治とか、あるいは福祉サービスというものでも、コストはかかるわけです。そのコストとは、人件費や物件費で、これは政府が市場経済の中で賄っています。電波の場合は、たまたま自然資源なので、表面的にはコストがかからないように見えますが、同じ電波が私的財としても使用できるという点から言えば、潜在的な意味での価値があります。したがって、免許不要帯の無線局に対応する周波数帯についても、使用料に対応する価値を考えることができまして、私はそれを何らかの形で顕示させることが望ましいのではないかと考えています。詳しいことは参照論文に書いてありますし、本日の資料の中でも少し触れてあります。もし必要があれば、後刻ちょっとした説明をメールでお送りすることもできます。結論としてはそのように考えております。
 (構成員)やはり免許不要無線局については、フリーと言いますか、その帯域の電波使用料は無償を守るべきではないかと思います。なぜかと言えば、これは木と森の切り分けの問題だと思うのです。木を見るか、森を見るか。そうすると、我々が次の時代にどのような通信の未来を構想するのか、一人一人の未来観によって、このモデルのあり方が全部変わると思うのです。私は個人的には、多分、通信という世界がIPという流れとともに急激に定額化すると思うのです。私はIP時代における、無線通信の基本構造として準定額を随分主張したのですが、業界あげて構造設計なき自由競争をやるという現況から乱戦は仕方ないと思っています。私はIP化が無線通信事業者に与える影響の本質を「通信料金総定額化」と考えております。これは、無線音声、データ通信の経営指標であるARPUの概念を崩壊させるものであります。これは業界を「加入者数×4,000円」くらいの市場規模に急激に収縮させることを意味します。既存の携帯電話事業者ですら存亡の危機にさらされる状況となり、果たしてそんな世界に新規設備投資でインフラ事業に参入してくる物好きがいるでしょうか。例えば、設備償却を前倒しにしながらサービス提供型への転換に成功するか、画期的な新技術の導入(IP技術)によってのみ参入できる事業になっていくわけです。
 だから、これからの通信業界は急激に市場収縮を起こすパイプライン使用料(土管代)を横目にサービス提供料(情報代)の市場が今以上の速度で拡大成長して行くと信じます。そして、そのサービス市場の成長をうながすことが国益の増進に直結します。そのためのサービス育成の理想は古来より「楽市楽座」がベストと考えます。そういった未来観に基づけば、やはり免許不要局には電波使用料を課さず、あらゆる参入のチャンスの拡大の要素を残した方が国全体の産業の活性効用という意味では絶対大きいと思うのです。そのようなときに、木と森をどう切り分けるかというと、議論が尽きませんので、やはり免許が要る局と不要局とで切り分けて、免許不要局の方は微弱とか、そういう一定の免許不要局基準をきちんと守ることを前提に楽市楽座とし、あらゆるサービス参入惹起、これを起こさせた方が良いのではないでしょうか。国全体から見たら、受益者負担による無目的税の徴収にあたり、これをどのようにコスト合理性をもって徴収するかの問題だと思うのです。徴収コストが税を上回ったら意味がないですから。そこから考えると、公益規制と産業界の自主性の調和点のようなものが、産業が一番活性化すると思いますので、免許不要局はフリーですよと。どんどんサービスを開発して、ユーザが楽しんで、そして結果的に消費税などで国全体の税効用を上げて行く方が良いと思います。要は、未来をどう見るかという観点から話をしないと駄目なのではないかと思います。

6 その他
 次回会合は7月16日(水)に開催予定

トップへ