第1章 デジタルネットワーク社会の幕開け
   〜変わりゆくライフスタイル〜


第2節 生活と通信

  1. 消費(ショッピング)
  2.  国民生活の多様化、個性化は、消費者の消費構造にも変革を及ぼしている。
     通信販売は、女性を利用者層の中心として市場の拡大を続けている。また、インターネットを利用した通信販売の形態であるインターネットショッピングは、端末と回線があれば、いつでも、どこからでも商品やサービスを購入できる形態として、国民生活の中に浸透しつつある。
     ここでは、インターネットの普及によって、ショッピングの形態が今後どのように変化し、どのようなメリットを消費者にもたらすのかなどについて、郵政省が実施したアンケート調査(一般消費者向けアンケート(以下、「一般向け調査」という)及びインターネット利用者向けアンケート(以下、「利用者向け調査」という))(注11)により分析する。

    (1) 一般的動向
     通信販売の市場規模は、昭和58年度以降一貫して上昇傾向をたどり、7年度においては2.1兆円、小売業販売総額に占めるシェアは1.46%となっている(第1−2−50図参照)。



     また、通信販売の利用度について見ると、「過去に通信販売を利用したことがある」と答えた人の割合が40.6%に達し、特に20、30歳代の若年女性の利用者が多くなっている(第1−2−51図参照)。
     さらに、通信販売の購入媒体を見ると、7年時点において媒体として多いのは「国内カタログ」、「テレビショッピング」である。また、「インターネット」は、7年時点においてはまだ小さい(0.1%)(第1−2−52図参照)。


    (2) インターネットショッピングの現状
     インターネットショッピングの市場は、8年度(9年1月)に285億円、9年度(10年1月)に818億円と、着実に拡大を続けている(注12)。

    ア インターネットショッピングの認知度
     「一般向け調査」によれば、インターネットを利用した通信販売の形態があることを知っている人の割合は64.8%であったが、インターネットを利用して「実際に商品を買ったことがある」と答えた人の比率は1.3%であった。また、利用経験者は男性が概して高く、女性の利用率が高い一般の通信販売とは利用者層が異なっていることが分かる(第1−2−53図参照)。



    イ インターネット利用者のインターネットショッピング利用経験
     「利用者向け調査」によれば、インターネットを利用して「実際に商品を買ったことがある」と答えた人の比率は36.3%であり、インターネット利用者の4割弱がインターネットショッピングを経験している(第1−2−54図参照)。


    ウ インターネットショッピングで購入した商品
     「利用者向け調査」によれば、インターネットショッピングで購入した商品・サービスは、「コンピュータ、ソフトウェア」等のコンピュータ関連商品及び「本・雑誌・文具」、「食料品」等となっている(第1−2−55図参照)。


    (3) インターネットショッピングの今後の動向
     ここでは、「一般向け調査」及び「利用者向け調査」により、インターネットショッピングに対する意識について分析する。

    ア インターネットショッピングの利点
     いずれの調査においても、「買い物に行く手間が省ける」及び「好きなときに買い物や予約ができる」が上位に挙げられている。
     また、インターネット利用者は、このほかにも、「どこからでも買い物や予約ができること」(59.5%)及び「最も安い価格で商品を購入することができること」(37.8%)等を挙げる割合も高くなっており、一般消費者よりも、実際にインターネットを使うことにより多くの利点を感じていることが分かる(第1−2−56図参照)。


    イ インターネットショッピングの利用者
     「一般向け調査」において、インターネットショッピングを「ぜひ利用したい」又は「利用したい」と答えている人の内訳を性別に見ると、男性では20歳代から40歳代までの層で、利用意向のある人の割合が40%前後となっているが、女性では20歳代が50.7%と極めて高く、30歳代でも42.9%に達している。一般の通信販売の利用度が高い女性層が、インターネットショッピングに関心を寄せており、潜在的な顧客であることが分かる(第1−2−57図参照)。



    ウ インターネットショッピングで購入したい商品
     いずれの調査においても、「航空・鉄道乗車券」、「ホテルの予約」及び「コンサート・演劇等のチケット」等の予約系サービスへの期待が高くなっていることが特徴的である。
     また、一般消費者に比べ、インターネット利用者の方が、より多くの商品品目について購入を希望していることが分かる(第1−2−58図参照)。



    (4) インターネットショッピング普及のための条件
     インターネットショッピングが、今後普及していくための条件については、「一般向け調査」及び「利用者向け調査」によると、一般消費者では「パソコンやインターネット等の操作能力」(33.8%)、「パソコンの価格の低廉化」(11.6%)を挙げているが、利用者では「信頼できる決済手段」(30.0%)や「プライバシー保護」(19.0%)を挙げる割合が高い。また、両者とも「通信料金の低廉化」(7.2%と9.6%)を挙げている。
     また、同様のアンケートをサイバービジネス事業者に対して行うと、「パソコンやインターネット等の操作能力」(27.0%)が最も高く、「通信料金の低廉化」(20.1%)、「信頼できる決済手段」(10.3%)が上位に挙げられている一方、「プライバシー保護」は2.3%と相対的に低くなっている。
     このことから、インターネットショッピングの安全性、信頼性に対して、利用者は問題意識を抱いているが、事業者側では、このことを十分に認識していないといえる(第1−2−59図参照)。



    (5) インターネットショッピングに関する最新事例
     米国にあるA社は、より安価な商品を購入したいという消費者のニーズにこたえて、音楽CDの価格情報を提供している。このサービスは、あらかじめ利用者が希望するレコード名やアーティスト名を入力しておくと、指定されたCDの最新価格や、最も安い価格を提示している店舗の情報を提供するものであり、利用者はインターネット上で8店舗における価格を比較することができる。
     このほかにも、米国では、コンピュータ関係のハードウェア、ソフトウェア等について、利用者が具体的な利用の用途、イメージ等を入力しておけば、希望する仕様に合う商品や、それを取り扱う店舗を検索して情報を提供するサービスも提供されている。
     このように、単に買い物の手間の省略といった目的だけでなく、さらに利用者のニーズに合致したサービスが、事業者によって提案されてきている。

    (6) 効用と課題
     インターネットショッピングは、女性層の利用意向が高いこととあいまって、今後着実に拡大を続け、消費者にとって場所や時間に関する制約が解消され、安価な商品の購入が可能になるなど、消費者にとって大きなメリットをもたらすものと期待されている。
     今後、インターネットショッピングが普及していくために、まず必要となるのはパソコンやインターネットの操作能力の向上であり、さらに決済手段の信頼性の確保、プライバシー保護等の、利用のための環境整備が求められている。




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