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第1章 第4節

(2)障害者

携帯電話・PHSの文字通信が、聴覚障害者の生活向上に貢献

 インターネットやモバイル通信を有効に活用することにより、障害者はコミュニケーションを拡大し、必要な情報をより容易に入手することが可能になる。このため、障害者の自立・社会参加が促進され、生活の質的向上につながると考えられる。
「障害者アンケート」の結果からみた、障害者のインターネットやモバイル通信の利用状況は、以下のとおりである。
1)障害者の情報通信機器・インターネット利用
 障害者にとっては、障害の種類に関係なく、テレビが日常生活に必要な情報を入手するために最も利用されていた。テレビ以外の情報通信機器の利用状況をみると、視覚障害者でラジオと固定電話、聴覚障害者でファクシミリと携帯電話・PHS、肢体不自由者でラジオと固定電話が利用されていた(図表1))。インターネット(パソコン通信を含む。以下同じ。)の利用率は、肢体不自由者が52.3%、聴覚障害者が37.6%、視覚障害者が27.3%であった(図表2))。インターネットを利用する障害者の90.5%が、利用後の生活の変化について「よい方向に変わった」又は「どちらかと言えばよい方向に変わった」と回答しており、障害者の生活向上のために、インターネット利用が効果的であることがわかる(図表3))。その理由としては、「情報収集(発信)がしやすくなった」(64.4%)、「趣味・娯楽が増えた」(61.1%)、「交流範囲が広がった」(52.2%)が多くなっていた(図表4))。
2)聴覚障害者の携帯電話・PHS利用
 聴覚障害者にとって、文字情報を送受信できる情報通信メディアは貴重である。これは聴覚障害者の固定電話の利用率が8.6%と、他の障害に比べ著しく低くなっていることをみれば明らかである(図表1))。文字通信サービスが付加された携帯電話・PHSの利用が生活に与えた影響をみると、携帯電話・PHSを使いはじめて生活がよい方向に変わったと感じている聴覚障害者は全体の83.2%に達している。その理由としては、「安心して外出できるようになった」(60.6%)、「文字情報を送受信できることで通話がしやすくなった」(55.8%)、「障害のハンディを補うことができるようになった」(48.1%)点を挙げていた。これらのことから、聴覚障害者にとって、携帯電話・PHS普及が大きな役割を果たしていることがわかる(図表5)、6))。
東京都聴覚障害者連盟事務局長の越智大輔さんは、携帯電話・PHSを使った文字通信が、聴覚障害者の生活を劇的に変えたと実感している。文字通信を利用するようになってからは、いわゆる「帰るコール」や緊急連絡など、それまで不可能であった仕事の急な予定変更等がスムーズに運ぶようになったという。聴覚障害者にとって特に便利なのが、相手が文字通信(メール)を読んだことを文字又は振動で伝えてくれる機能で、これによりファクシミリのように相手の受信が確認できないがための行き違いがなくなり、不安を感じることもないという。携帯電話・PHS普及の悪影響は感じたことはないが、端末の液晶画面の拡大と小型軽量化の両立(バイブレーション機能が必須であるため)、文字通信機能について事業者間の互換性(現在は同一事業者間に限定されている場合が多いため)を望んでいる。
3)障害者の高度情報通信社会に対する意識
 インターネット等が普及している世の中(高度情報通信社会)に対する意識について、障害者全体の80.3%が好意的に捉えている。しかしながら、インターネットを利用していなかったり、知らない障害者になると否定的に捉える傾向が強まる。このことから、一定の情報リテラシーに達した障害者ほど、高度情報通信社会に対し好意的な意識を持っていることが推測できる(図表7))。

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成

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「障害者アンケート」により作成