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インデックスへ・ 電気通信審議会

「接続ルールの見直しについて」の一次答申草案に対する意見募集






 電気通信審議会は、平成12年10月11日、郵政大臣より「電気通信事業法の
一部を改正する法律(平成9年法律第97号)附則第15条を踏まえた接続ルール
の見直し」について諮問を受けたのを踏まえ、電気通信事業部会において審議を積
み重ねてきました。
 当部会においては、現在、一次答申案の取りまとめを行っているところですが、
今般、別添の一次答申草案について広く国民等の意見を求め、これを踏まえて調査
審議を行った上で電気通信審議会に報告する一次答申案を策定することとしました。
 なお、一次答申案の策定後、残る検討課題について、当部会において引き続き審
議が行われる予定です。
 草案に対する意見の提出は、下記の要領に従って平成12年12月4日(月)正
午までにお寄せ下さいますようお願いします。

                     記

1 意見の提出方法
  意見を提出されたい方は、日本語で意見を作成の上、次の(1)から(3)までに従
 い電子メール、郵送又はFAXにより提出して下さい。(意見取りまとめの関係
 上、できるだけ電子メールで提出して下さるようお願いします。)
  意見には、提出者の氏名・住所(法人又は団体の場合は名称・代表者の氏名・
 主たる事務所の所在地及び担当者の連絡先)を付記して下さい。また、電子メー
 ルをご利用の場合は、メールアドレスも併せて付記して下さい。
  お寄せいただいた意見については、郵政省において公衆の閲覧に供するほか、
 郵政省ホームページ(http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/tele
 council/denki/index.html)に掲載します。

 (1) 電子メールの場合
  ・メールアドレス:ido-tsushin@mpt.go.jp
  ・件名は「接続ルール見直しの意見募集」として下さい。

 (2) 郵送の場合
  ・住所:〒100-8798
      東京都千代田区霞が関1−3−2
      郵政大臣官房秘書課審議会事務局 電気通信審議会係
  ・「接続ルールの見直し」担当あてにお送り下さい。
  ・書面と併せて書面の内容を保存した磁気ディスク(注)を同封して提出して
   提出期限必着として下さい。
  (注)3.5インチ、2HDのフロッピーディスクを1.44MBのMS−DO
    Sフォーマットとすることとし、ファイル形式はMicrosoft Word98若し
    くはMicrosoft Power Point97で認識できるファイルとして下さい。ま
    た、フロッピーディスクには、提出者の氏名、意見提出日及びファイル名
    を記載したラベルを貼付して下さい。

 (3) FAXの場合
  ・FAX番号:03−3504−1638
  ・「接続ルールの見直し」担当あてにお送り下さい。

2 様式
  用紙等の大きさは、日本工業規格A列4番とし、ページ番号を記入して下さい。
(記入例)
          接続ルールの見直しに関する意見書
                             年  月  日 
 
 電気通信審議会
  電気通信事業部会長 殿
                   郵便番号
                   (ふりがな)
                   住  所
                   (ふりがな)
                   氏  名
                   メールアドレス
 
 一次答申草案に関し、別紙のとおり意見を提出します。
 

              (連絡先):<電気通信審議会について>
                      郵政大臣官房秘書課審議会事務局
                      (担当)吉野課長補佐、川浪係長
                      (電話)03−3504−4807

                    <一次答申草案等について>
                      電気通信局電気通信事業部業務課
                      (担当)藤江課長補佐、磯田係長
                      (電話)03−3504−4833


         『接続ルールの見直しについて』           −第一次答申(草案)のポイント− I 指定電気通信設備について 1 移動体通信事業者の設備の扱い (1)移動体通信事業者の設備は、次の理由から指定電気通信設備とは捉えない。   ・移動体通信市場においては、固定網とは異なり、電気通信設備を設置する事    業者が地域単位に3以上存在すること。   ・固定網とは異なり、複数の移動体通信事業者が加入者回線を含め自ら設備を    構築して全国にエリア拡大しており、加入者線を含めたネットワークの代替    性が存在していること。   ・移動体間の通信量は全体の通信量の5分の1以下(平成11年度)にとどま    っており、また、固定網が各家庭や事業所への最終通信手段(ラストリゾー    ト)となっているのに対し、移動体網は主として個人単位でのオプショナル    な通信手段として普及拡大しており、移動体のボトルネック性は弱いこと。 (2)一方、移動体通信市場において市場支配力を有すると認められた事業者につ   いては、接続する事業者との相対関係において強い交渉力を有することから、   その優位性によって不当な差別的取扱いや原価を上回る接続料が設定されたり   することのないように、接続料を含む接続条件に関して透明性をより確保する   ことを基本とした次のようなルール整備が必要と考えられる。   ・現在の、個別協議により個別の接続協定を締結し認可を受ける制度を、当該    事業者が接続約款を作成して認可を受ける制度とする。   ・接続約款を公表するものとする。   ・現在採られている認可審査基準(不当な差別的取扱いの禁止、適正な原価に    照らし公正妥当な接続料、その他)を法文上明確化し、認可の手続において    透明性の確保を図る。 (3)市場支配力を有する事業者の具体的な概念等については「IT革命を推進す   るための電気通信事業における競争政策の在り方についての特別部会」におい   て議論されており、これとの整合性をとる必要がある。 (4)市場支配力を有さない事業者間の接続については、現在の認可制を一定の条   件の下で届出制とし、規制の緩和を行うべきと考えられる。 2 光ファイバ設備の扱い (1)NTT東日本・西日本の光ファイバ設備は次の理由から、従前どおりメタル   等の設備と区別せず、指定電気通信設備として捉えていくことが適当。   ・加入者回線を現に設置している事業者は、設備敷設のための建物や管路、と    う道、電柱などの基盤となる設備を保持しており、光ファイバ設備の設置を    他の事業者よりも遥かに容易に行うことが出来る。   ・接続命令の申立てが行われるなど、NTT地域会社の光ファイバ設備と他事    業者設備との接続が円滑に行われていない。   ・光ファイバ設備の回線数(利用ベース)は、平成11年度末現在、NTT東    日本・西日本は全都道府県で少なくとも70パーセント以上の占有率を占め    ており、全国平均では85パーセントの占有率を占めている。 (2)光ファイバ設備(端末系伝送路等)の接続料については、少なくとも当面は、   実際費用方式による適正な原価算定を行う。 (3)光ファイバ設備への接続請求に応じる義務については、基本的には、光ファ   イバ設備が既に存在する場合には、接続請求に応じる義務があり、光ファイバ   設備が存在しない場合には義務はないと考えることが妥当である。 (4)光ファイバ設備のアンバンドル化については    ア NTT東日本・西日本の指定電気通信設備は、光ファイバ設備について     は1メタルのMDF接続に相当するCTF接続と2メタルではルール化さ     れている伝送装置を伴わない中継伝送路設備についてアンバンドルがなさ     れていない。    イ 光ファイバ設備との接続については、1需要が顕在化してきていること、     2接続の請求への拒否が行われるなど円滑な接続が実現していないこと、     3今後高速サービスの提供のための基幹的な位置付けを持つ光ファイバ設     備が適正な条件で提供されない状況が生じていることから、端末系伝送路     設備、中継伝送路設備の各々について、伝送装置を介さないアンバンドル     された形態での接続を早急に確保すべきである。    ウ 光ファイバ設備のアンバンドルが制度的に確立されるためには、郵政省     令の改正が早急に行われる必要がある。    エ 他方、NTT東日本・西日本は近く「光・IP接続サービス」の提供を     予定しており、省令改正前でも、当該サービスの開始時期を目途に、アン     バンドルされた形態での光ファイバ設備との接続が緊急に確保されるべき     である。    オ その際の接続料については、地域毎に異なる料金を設定することの是非     についても引き続き審議会において検討していく必要があるが、検討の結     論が出る迄の間は、地域毎に差異を設けない料金とすべきである。    カ NTT東日本・西日本においては、光ファイバ設備の敷設状況に関する     情報開示を速やかに行う必要がある。併せて、必要なルールの作成に向け     て、今後広く意見を徴して取組みを行うべきである。 3 中継系伝送路設備等の扱い (1)NTT東日本・西日本の中継系伝送路設備等(端末系伝送路設備と一体とし   て設置する電気通信設備)は、現在、NTT東日本・西日本が「音声伝送役務」・   「専用役務」の提供に利用している場合に限って指定電気通信設備とされてい   るが、設備のボトルネック性の有無は、役務の種類とは切り離して、検討する   ことが適当である。 (2)中継系伝送路設備等は、データ伝送を含め、役務に関わりなく設備自体にボ   トルネック性が認められることから、基本的に指定電気通信設備と位置付ける   ことが適当と考えられる。 (3)但し、DSLAMやルータのような、競争的に供給が受けられるような局内   設備については、指定電気通信設備に含める必要はない。 II その他 1 接続料と定額的な利用者料金等の水準 (1)接続料の水準と利用者料金の水準との関係については、利用者料金が接続料   の水準を下回ることは、一般的には公正競争上適切ではない。 (2)指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者において定額的な利用者   料金を設定している部分については、適切な方式によりこれを下回る水準で定   額の接続料が設定される必要があると考えられる。 2 事業者向け割引料金(キャリアズレート)の拡大 (1)公衆網における事業者向け割引料金(キャリアズレート)の設定については、   実現に向けた具体的な検討が求められる。 (2)そのためには、近く実現される予定である専用線の事業者向け割引料金につ   いての社会的な評価に留意しつつ、専用線と公衆網との異同なども十分検討し   た上で、具体的な考え方を整理して実現を図る必要があり、引き続き審議会に   おいて詳細な検討を進める必要がある。 3 ISDNから電話への同番移行 (1)現在、NTT東日本・西日本の電話の加入者がこれまでの電話に替えてIS   DNに加入するときには、その電話番号が変更されない所謂「同番移行」が行   われているが、逆にISDNから電話への移行に際しては同様の措置が採られ   ていない。 (2)これについては、利用者の公平や、DSL事業者等とISDNのサービスを   行っている事業者との間の公正性を確保する観点から、ISDN・電話回線の   相互間双方向について同等のモビリティが確保されるよう、措置される必要が   ある。
別 添




           接続ルールの見直しについて

   「電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97号)
   附則第15条を踏まえた接続ルールの見直しについて」
              第一次答申(草案)




           電気通信審議会電気通信事業部会


                 目 次 第I章 現状   1 接続ルールの経過    (1)接続の基本的ルールの策定    (2)接続の原価算定方式における長期増分費用方式の導入    (3)競争的な高速インターネットアクセスのためのルール整備   2 接続ルールをめぐる環境の変化    (1)電気通信分野の競争環境における新たな動き    (2)移動体通信に関する検討の必要性    (3)光ファイバ設備のアンバンドルに関する検討の必要性    (4)「電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97号)附       則第15条を踏まえた接続ルールの見直しについて」 第II章 指定電気通信設備の範囲  第1節 移動体通信事業者設備の扱い   1 現状   2 意見    (1)移動体通信事業者設備における不可欠設備性の有無に関する意見    (2)移動体通信市場における市場支配力に関する意見   3 考え方    (1)「不可欠設備」と「市場支配力」について    (2)指定電気通信設備に移動体通信事業者設備を含めることの是非    (3)移動体通信市場における市場支配力等に着目したルール    (4)移動体通信事業者設備における長期増分費用方式の導入の是非    (5)料金設定権の考え方  第2節 光ファイバ設備の扱い   1 現状   2 意見    (1)光ファイバ設備を指定電気通信設備から除外すべきか否かの意見   3 考え方    (1)光ファイバ設備を指定電気通信設備とすべきか否かについて    (2)光ファイバ設備への長期増分費用方式の適用について    (3)光ファイバ設備を接続の為に設置する義務について  第3節 中継系伝送路設備等の扱い   1 現状   2 意見   3 考え方 第III章 光ファイバ設備の細分化(アンバンドル)   1 現状   2 意見   3 考え方 第IV章 接続料と利用者料金との関係  第1節接続料と定額的な利用者料金等の水準   1 現状   2 意見   3 考え方  第2節 事業者向け割引料金(キャリアズレート)の拡大   1 現状   2 意見   3 考え方 第V章 その他   1 接続関連費用の負担の考え方(現行の網改造料によって費用が負担されて     いる機能について)   2 ISDNから電話への同番移行   3 網機能提供計画   4 接続制度の定期的な見直し
第I章 現状 1 接続ルールの経過 (1)接続の基本的ルールの策定   −電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について」(平成8年1    2月9日)−   1 当審議会では答申「接続の基本的ルールの在り方について」(平成8年1     2月9日)において、電気通信事業における公正有効競争の促進を図るた     め、接続の基本的ルールの在り方について提言を行った。     同答申において行った提言については、平成9年に成立した電気通信事業     法の一部を改正する法律(平成9年法律第97号)及びこれを受けた関連     法令の整備等によって措置が行われてきた。(表1)   2 電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97号)では、そ     の附則第15条において、「政府は、この法律の施行後3年を目途として、     接続に係る新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、     接続に係る制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講     ずるものとする」との規定を設け、平成12年度を目途とした接続に係る     制度についての検討がうたわれた。  表1 電通審答申「接続の基本的ルールの在り方」における提言等と措置内容            (法令の条項番号は何れも平成9年〜11年当時のもの)
 第一種電気通信事業者に関する一般的な接続ルール
接続の義務化
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の追加
 )
裁定手続の活用の容易化
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第39条の改正)

 特定事業者に関する特別な接続ルール
特別な接続ルールの
適用範囲
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第1項の追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の2の
 追加)
接続約款の作成等
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第2〜8、10項の追加
 )
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の3、
 5〜9の追加)
建物・管路・電柱の提供
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第1号ニの追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の4第
 3項第2号の追加)
接続会計制度の創設
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第9項<当時>の追加)
・指定電気通信設備接続会計規則(平成9年郵政省令第91号
 )
接続料の算定
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第2号の追加)
・指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則(平成9年
 郵政省令第92号)
技術的条件
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第1号イの追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の4第
 1項の追加)
網機能の細分化
(アンバンドル)
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第1号ロの追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第23条の4第
 2項の追加)
接続関連費用の負担の
在り方
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第2号の追加)
・指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則(平成9年
 郵政省令第92号)
番号ポータビリティ
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第1号ロの追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成11年
 郵政省令第63号)(電気通信事業法施行規則第23条の4
 第2項の改正)
網機能提供計画
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第39条の2の追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成9年郵
 政省令第81号)(電気通信事業法施行規則第24条〜第2
 4条の4の追加)
 (電通審答申「日本電信電話株式会社の在り方について」(平成8年2月29日)に
  おける提言事項)

優先接続       
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97
 号)(電気通信事業法第38条の2第3項第1号ロの追加)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成11年
 郵政省令第38号)(電気通信事業法施行規則第23条の4
 第2項の改正)

(2)接続料の原価算定方式における長期増分費用方式の導入
  −電気通信審議会答申「接続料算定の在り方について」(平成12年2月9日
   郵通議第120号)−

  1 技術革新と競争環境の進展など電気通信分野における環境の変化は激しい
    ことから、平成12年度を目途とした検討に先立つ形で接続ルールの重要
    な見直しがいくつか行われてきた。
  2 例えば、接続料の算定については、従来からの実際費用方式では指定電気
    通信設備における非効率性を接続料の原価算定上除外することが出来ない
    点が問題として指摘されていた。
  3 そこで非効率性を除外して費用を算定する方式である長期増分費用方式を
    導入する政府の方針が出されたのを受けて、平成12年に当審議会では、
    答申「接続料算定の在り方について」(平成12年2月9日郵通議第12
    0号)においてその具体的な導入方策の在り方について提言を行った。
  4 この審議会の提言を受けて、長期増分費用方式を導入する根拠規定を設け
    る電気通信事業法の一部を改正する法律(平成12年5月19日法律第7
    9号)が制定され、更にその具体的な導入方策について規定する接続料規
    則(平成12年11月16日郵政省令第64号)が制定された。(表2)

  表2 電通審答申「接続料算定の在り方」における提言と措置内容
特定事業者に関する特別な接続ルール
接続料の算定――長期増
分費用方式の導入
・電気通信事業法の一部を改正する法律(平成12年法律第7
 9号)(電気通信事業法第38条2第4項、第10項の追加
 、第12項の改正)
・接続料規則(平成12年郵政省令第64号)

(3)競争的な高速インターネットアクセスのためのルール整備
  −電気通信審議会答申(平成10年3月20日郵通議第143号、平成11年
   1月22日郵通議第111号、平成12年2月18日郵通議第126号)−

  1 デジタル加入者回線(DSL :Digital Subscriber Line)技術は、事業者
    が簡便に調達できる局内設備を既存の電話加入者回線に直接接続すること
    で高速のインターネットアクセスサービスを提供することを可能とするも
    のである。従って、局内設備と加入者回線との円滑な接続が確保できれば、
    多様な事業者が高速の低廉な定額のインターネットアクセスサービスを提
    供することが期待される。
  2 平成11年8月、郵政省が東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株
    式会社(以下「NTT東日本・西日本」という。)を指導したのを契機と
    して同年12月から電話重畳も含めてMDF(主配線盤Main Distributi
    on Frame)における加入者回線との接続が実現した。
    加入者回線等を細分化(アンバンドル)して接続するための条件について
    は、平成12年9月の電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平
    成12年郵政省令第53号)、指定電気通信設備の接続料に関する原価算
    定規則の一部を改正する省令(平成12年郵政省令第54号)等の措置に
    よりルール整備が行われた。
  3 また、競争事業者が接続のための局内設備をNTT東日本・西日本の局舎
    に設置(コロケーション)するための条件や手続等についても、同年同月
    に電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成12年郵政省令第
    55号)等の措置によってルール整備が行われた。

  表3 電通審答申(平成12年郵通議第126号等)における提言と措置内容
 特定事業者に関する特別な接続ルール
建物・管路・電柱の提供
――手続・条件の整備
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成11年
 郵政省令第94号)(電気通信事業法施行規則第23条の4
 第3項の改正)
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成12年
 郵政省令第55号)(電気通信事業法施行規則第23条の4
 第3項の改正)
網機能の細分化(アンバ
ンドル)/接続料の算定
――加入者回線等のアン
バンドル
・電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(平成12年
 郵政省令第53号)(電気通信事業法施行規則第23条の4
 第1、2号の改正)、指定電気通信設備の接続料に関する原
 価算定規則の一部を改正する省令(平成12年郵政省令第5
 4号)(指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則第
 5、12条の改正、第13条の追加)

2 接続ルールをめぐる環境の変化

(1)電気通信分野の競争環境における新たな動き

   近年の電気通信分野においては、競争構造に影響をもたらす次のような動き
  が起こっており、これらに対応して接続ルールの見直しを検討する必要が生じ
  ている。

  1 専ら固定網を基本に展開されてきた従来からの動きに加えて、移動体通信
    が普及拡大してきたこと
  2 電話網における音声伝送を中心に展開されてきた競争構造が、IP網の拡
    大の中で、データ伝送などのサービスを融合的に提供する形態へ変化して
    きていること
  3 利用者向けサービスの分野における原則届出制への移行などの規制改革等
    に伴うサービス競争の激化が進展している中で、利用者向け料金と接続料
    との「逆転」問題などが、公正競争条件確保の観点から提起されてきてい
    ること

(2)移動体通信に関する検討の必要性

   また、移動体通信事業者の設備に関しては、これまで閣議決定において公平・
  透明な接続を確保する観点から、平成12年度を目途とした検討の必要性が指
  摘されてきたところである。

規制緩和推進3か年計画(改定)(平成11年3月30日閣議決定)、同(再改定)
(平成12年3月31日閣議決定)
            1ネットワークの相互接続規制
措 置 内 容
備 考
接続条件の透明性を確保し、電気通信事
業者間の多様な形態での相互接続を推進
する観点から、平成8年12月の電気通
信審議会答申「接続の基本的ルールの在
り方について」に基づき引き続き整備を
行うほか、12年度を目途に制度全体の
見直しを行う。
改正電気通信事業法の附則に基づき、1
2年度を目途に接続ルールの見直しを行
う。

               2NTTの在り方
措 置 内 容
備 考
NTTドコモと他社との接続について、
その円滑化を図る必要が生じた場合には
、公平・透明な接続を確保するものとし
、その接続の在り方を早急に検討する。
平成12年度を目途とした接続制度全体
の見直しの中でも検討する。

(3)光ファイバ設備のアンバンドルに関する検討の必要性

  1 メタル設備のアンバンドルについて規定した郵政省令(電気通信事業法施
    行規則の一部を改正する省令(平成12年9月12日郵政省令第53号)
    及び指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則の一部を改正する省
    令(平成12年9月12日郵政省令第54号))の審議にあたって、当審
    議会が行った意見招請に応じて、光ファイバ設備についても同様のルール
    化を求める意見が多く寄せられた。
  2 寄せられた意見としては、(ア)早期の高速通信実現のために光ファイバ
    設備のアンバンドルが必要であること、(イ)NTT東日本・西日本への
    接続要望が円滑に満たされていないこと、(ウ)光ファイバ設備のアンバ
    ンドルなくしてはNTT東日本・西日本と同様のサービス提供が行えない
    ことなどであった。これを受けて、具体的な需要も顕在化しつつあると考
    えられることから、当審議会は本年8月31日の答申において、郵政大臣
    に対し光ファイバ設備のアンバンドルについて速やかに検討の場を設ける
    よう要望を行った。

(4)「電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法律第97号)附則第1
  5条を踏まえた接続ルールの見直しについて」

  1 以上、(1)〜(3)を背景に、平成12年10月11日に郵政大臣から
    当審議会に対して、「電気通信事業法の一部を改正する法律(平成9年法
    律第97号)附則第15条を踏まえた接続ルールの見直しについて」の諮
    問が行われた。
  2 郵政省においては接続ルールの見直しに関する意見招請を行うと共に、当
    審議会においては同月25日に関係事業者から直接ヒアリングを行うなど、
    関係者の意見を踏まえつつ、透明に審議を行った。


第II章 指定電気通信設備の範囲  指定電気通信設備の制度は、不可欠設備(他事業者の事業展開上不可欠であり、 また、利用者の利便性の確保という観点からも利用が確保されることが不可欠であ る加入者回線を相当な規模で有する事業者のネットワーク[電通審答申「接続の基 本的ルールの在り方について」より])を郵政大臣が指定し、その設備との接続に ついて特別な接続ルールを設け、それとの接続の円滑化を図ることで公正な競争と 利用者の便益の確保を図ろうとしたものである。  現在、指定電気通信設備として、都道府県毎に、固定の端末系伝送路回線の過半 数を設置する事業者が設置する加入者回線と、これと一体として設置する電気通信 設備であって郵政省で定めるものについて指定がなされている。  この指定電気通信設備の範囲について、1現在は含まれていない移動体通信事業 者設備や、データ伝送役務のために用いられている設備を含めるべきか否か、また、 2現在含まれている光ファイバ設備や中継伝送路等の取扱いをどのようにすべきか について議論が存在している。 第1節 移動体通信事業者の設備の扱い 1 現状   電通審答申「接続の基本的ルールの在り方について」(平成8年12月)にお  ける論点は次のとおりであった。
 移動体通信事業者の扱いは、
・移動体通信事業者は基地局間又は基地局と交換局間の伝送路を有していないこ
 と
・移動体通信事業者が扱う通信の殆どは固定通信事業者との間のものであり、固
 定通信事業者への依存度が高いこと
から、
(1)指定電気通信設備の対象は当面固定通信事業者に限ることとする。
  (⇒電気通信事業法施行規則第23条の2第3項に反映。移動体通信事業者
  の加入者回線を指定電気通信設備を有する事業者を決定するための加入者回
  線総数に含めない。)
(2)指定電気通信設備の定義は接続ルールの見直し時に実態を踏まえて
  見なおすことが適当とする。

2 意見

(1)移動体通信事業者設備における不可欠設備性の有無に関する意見
  1 郵政省による意見招請(平成12年10月10日〜23日)及び電通審電
    気通信事業部会・接続小委員会合同のヒアリング(同10月25日)(以
    下「ヒアリング等」という。)の結果、移動体通信設備についても次の理
    由から指定電気通信設備の範囲に含めるべきとの意見があった。
   (エムシーアイワールドコム・ジャパン、ケーブル・アンド・ワイヤレス・
   アイディーシー、イー・アクセス、レベルスリー・コミュニケーションズ、
   日本交信網)

   ・携帯電話の加入者数・通信量が急激に伸びており、移動体通信事業者との
    接続が不可欠となっている。
   ・料金設定やサービス供給量を市場とは独立に決定できる市場支配力を有し
    ている移動体通信事業者の設備は指定電気通信設備と看做すべき。
   ・株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモは日本電信電話株式会社がその株式の
    大半を保有している。

  2 一方で、移動体通信事業者設備は、次の理由から不可欠設備にはあたらな
    いとの意見が出された。
   (エヌ・ティ・ティ・ドコモ、ディーディーアイポケット、ディーディーア
   イ、ジェイフォン東日本)

   ・加入者回線等を設置して移動体通信市場に参入している事業者が多数にの
    ぼっており、設備の代替性が認められる。

(2)移動体通信市場における市場支配力に関する意見
  1 不可欠設備性の有無とは別に、移動体通信市場におけるエヌ・ティ・ティ・
    ドコモは市場支配力を有しており、例えば次のように規制すべきとする意
    見があった。
   (エムシーアイワールドコム・ジャパン、ケーブル・アンド・ワイヤレス・
   アイディーシー、イー・アクセス、レベルスリー・コミュニケーションズ、
   ディーディーアイポケット、ディーディーアイ、ジェイフォン東日本)

   ・接続約款の作成・公表など、接続条件の透明化を図るべき。
   ・ドミナント事業者の接続料には長期増分費用方式を導入すべき。
   ・(接続ルールに関する問題ではないが、)コンテンツプロバイダ、機器製
    造業者等への有形無形の圧力等、反競争的な行為が行われることのないよ
    う、監視・規制すべき。

  2 一方で、移動体通信市場へのドミナント規制導入は次の理由から不要であ
    るとする意見があった。
   (エヌ・ティ・ティ・ドコモ)

   ・移動体通信市場は競争が激しく、市場シェアが常に変動している。
   ・欧州の「重要な市場支配力を有する事業者」(SMP: Significant Market
     Power)への規制は我が国の第一種電気通信事業者に相当するレベルのも
    のである。

3 考え方

(1)「不可欠設備」と「市場支配力」について

  1 「不可欠設備」とは、先に述べたとおり、「他事業者の事業展開上不可欠
    であり、また、利用者の利便性の確保という観点からも利用が確保される
    ことが不可欠である加入者回線を相当な規模で有する事業者のネットワー
    ク」を意味する。これは、言わば設備面から見て他に追随を許さない程の
    規模の設備を単独で保有することから、他の事業者が当該設備に依存せざ
    るを得ない性格(所謂ボトルネック性)を有していることを指すものであ
    る。

  2 一方、「市場支配力」を有する事業者については、その概念について議論
    を行っている当審議会の「IT革命を推進するための電気通信事業におけ
    る競争政策の在り方についての特別部会」においては、現在のところ、「
    現に、市場における支配的地位を濫用し、顕著な弊害を市場にもたらして
    いることを要件とするものではなく、市場にに多大な影響力を有するため、
    支配的地位を濫用するおそれ(客観的蓋然性)があることに着目して電気
    通信分野に固有の概念として設定するもの」として、「それぞれの業務区
    域における電気通信サービス市場において、売上高、利用者数、トラヒッ
    ク等の一定割合以上の高いシェアを有する第一種電気通信事業者の中から
    認定することが適当」としている。その上で、この認定には「市場シェア
    及びその推移のみならず、ボトルネック設備支配の有無、市場参入の容易
    性、需要、供給の弾力性・代替性、価格支配力、企業規模、調達の影響力
    等企業のトータルパワー等を総合的に判断すべきであり、欧米の例を参考
    としながら、具体的基準を設けることが必要である」としている。1


1 電気通信審議会IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在 り方についての特別部会『IT特別部会第一次答申(草案)』(平成12年11 月16日)   3 「不可欠設備」を設置する事業者に関する接続政策は、そもそも不可欠設     備がその性質として他事業者の事業展開上不可欠な設備であるが故に、そ     れとの効率的な接続を確保し、円滑化することに目的を持つことになる。   4 一方、「市場支配力」を有する事業者に関する接続政策は、その設備が性     質として不可欠性を持つものではないとしても、市場において結果におい     て優越的な地位を占めるが故に、他の事業者との間で強力な交渉力を有し、     結果として競争を阻害しかねない潜在的な能力を持っていることに着目す     るものである。即ち、当該事業者との接続が他事業者にとっては不可欠と     までは言えないものの、市場価格などに左右されないだけの力を持つ当該     事業者が、その地位を濫用して不当な差別的取扱いや原価を上回る料金を     設定することによって競争阻害的な行為を行わないことを担保し、その透     明性を確保することが求められる。   5 なお、「不可欠設備」に係るルールは、現行制度上のものであり、「市場     支配力」を有する事業者に関するルールは、法改正によって新たに設ける     制度となる。これら2つの制度の関係については、「不可欠設備」を有す     る事業者は「市場支配力」を有する事業者の中でも、とりわけボトルネッ     クを有する者として特別な地位にあることから、「不可欠設備」に係るル     ールが、一般の支配的事業者に関するルールに加えて適用されるという関     係にある。 (2)指定電気通信設備に移動体通信事業者設備を含めることの是非   1 移動体通信事業者の設備は、次の理由から不可欠設備とは言えない。    ・移動体通信市場においては、固定網とは異なり、電気通信設備を設置する     事業者が地域単位に3以上存在すること。(図1)    ・固定網とは異なり、複数の移動体通信事業者が加入者回線を含め自ら設備     を構築しており、且つその設備も各社が遜色なく全国にエリア拡大されて     おり、加入者線を含めたネットワークの代替性が存在していること(表4)         図1 移動体通信市場における事業者の参入状況   移動体通信市場における事業者の参入状況の図         表4 携帯電話事業者の通話エリア人口カバー率
事 業 者 名
人 口 カ バ ー 率※
NTTドコモグループ
全 国
 100%
エーユー(旧セルラー)グループ 
全 国
 (首都圏・東海以外) 
(cdma) 99%  
(PDC) 97%
KDDI(旧IDO)
首都圏・東海
(cdma) 99%
(PDC) 99%
ジェイフォングループ
東日本
東 海
西日本
 99.4%
 100%
 99.6%
ツーカーグループ
東 京
東 海
関 西
 98.5%
 100%
 99.6%
人口カバー率=業務区域(市町村単位)の人口合計/(営業ブロックの)総人口
  業務区域の基準は、
  1.当該業務区域における市町村役場をカバーすること
  2.業務区域内の人口集中部を含み、面的にある程度の面積をカバーすること
  (面積カバー率=実際のカバー面積/業務区域の市町村の総面積=60〜80
   %)
   ・移動体通信事業者の加入者や、その扱う通信量が移動体間の通信も含めて
    増えているが、それでも移動体間の通信は全体の5分の1以下(平成11
    年度)にとどまっており、また、固定網が各家庭や事業所への最終通信手
    段(ラストリゾート)となっているのに対し、移動体網は主として個人単
    位でのオプショナルな通信手段として普及拡大しており、単純な量的拡が
    りで見られるよりも移動体のボトルネック性は弱いこと。

  2 なお、意見招請やヒアリングの中で出された意見は、株式会社エヌ・ティ・
    ティ・ドコモの設備を指定電気通信設備とすべきか否か、或いはその市場
    支配力に対する規律に関するものに集中し、移動体通信事業者の加入者回
    線設備を指定電気通信設備を指定するに際して計算する加入者回線に含め
    るか否かについては特に意見がなかった。これについては上述のとおり、
    移動通信事業者設備について現時点で不可欠設備性が認められず、業務委
    託を通じた固定通信事業者への依存度も依然として高いことから、これを
    指定電気通信設備を指定するに際して計算する加入者回線に、計算上含め
    る必要性は乏しいと考えられる。

(3)移動体通信市場における市場支配力等に着目したルール
  1 一方、移動体通信市場における市場支配力や、指定電気通信設備を設置す
    る第一種電気通信事業者と同じ企業グループに属していることに起因する
    交渉力を背景に、反競争的な行為や不透明な接続条件の設定がなされる虞
    があることが各方面から指摘されている。

  2 移動体通信市場において市場支配力を有すると認定された事業者について
    は、接続政策の観点からは、当該事業者が多数の加入者を直接収容するこ
    とから、それと接続する事業者との相対関係において強い交渉力を有する
    ことになる。従って、その優位性によって不当な差別的取扱いや原価を上
    回る接続料が設定されたりすることのないように、接続料を含む接続条件
    に関して透明性をより確保することを基本としたルールの整備が必要と考
    えられる。具体的には、移動体通信市場において市場支配力を有する事業
    者に関して次のようなルールを設定することが考えられる。

   ・現在個別協議の上で個別の接続協定を締結し認可を受けることを要する制
    度を、当該事業者が接続約款を作成して、一定のルールの下で認可を受け
    る制度に改める。
   ・接続約款を公表するものとする。
   ・現在採られている認可審査基準(不当な差別的取扱いの禁止、適正な原価
    に照らし公正妥当な接続料、その他)を法文上明確化すると共に、認可に
    あたっての手続において透明性の確保を図る。

  3 (ア)市場支配力を有する事業者の具体的な概念や、
    (イ)接続ルールとは異なる側面において、市場における支配的な地位を
       濫用することによって、不当な競争を引き起こす行為を防止する方
       策
    については、現在「IT革命を推進するための電気通信事業における競争
    政策の在り方についての特別部会」において新たなルールを設定する方向
    で審議が行われていることから、上記2については、この議論との整合性
    をとる必要がある。

  4 なお、移動体通信以外の分野における市場支配力を有する事業者に関して、
    2との関連でどのようなルールが必要となるかは、「IT革命を推進する
    ための電気通信事業における競争政策の在り方についての特別部会」にお
    ける市場支配力を有する事業者の具体的な概念の確定を待って検討を行う
    こととする。

  5 一方で、市場支配力を有さない事業者間の接続については、当事者間での
    交渉力の差も市場支配力を有する事業者との交渉の場合と比べて顕著では
    ないと考えられると共に、手続の簡素化は自由なビジネス展開を促進する
    ことが期待されることから、現行において個別協議の上で接続協定を締結
    し認可を受けている制度を、一定の条件の下で届出制とし、規制の緩和を
    行うべきと考えられる。

(4)移動体通信事業者設備における長期増分費用方式の導入の是非

   移動体通信事業者設備について、接続料に長期増分費用方式を採用するか否
  かについては、原価主義が採られている現行の枠組の下で、接続料は必ずしも
  高止まりしている訳ではなく、その水準も国際的に見ても必ずしも遜色のある
  ものではないこと(表5、図2)から、現時点では、現行の方式を改め長期増
  分費用方式を採用する必要性は必ずしも認められない。

    表5 携帯電話事業者の接続料(平成11年度実績・加重平均)
携帯電話事業者
接続料
  エヌ・ティ・ティ・ドコモ  
   18.5円/分   
A社
19.0円/分
B社
18.7円/分
C社
18.8円/分
              (各事業者からの提供情報による)

           図2 携帯電話の接続料の国際比較

携帯電話の接続料の国際比較の図

(5)料金設定権の考え方

  1 移動体通信事業者設備に関連して、携帯電話事業者と固定電話事業者との
    間の接続において、携帯電話発信・固定電話着信の通話についても固定電
    話発信・携帯電話着信の通話についても利用者の電話料金を携帯電話事業
    者側が設定していることについて問題があるのではないかとの意見が意見
    招請の中であった。

  2 現状では、利用者料金の設定をどの事業者が行うかは、事業者間の協議に
    よって決められることが一般的なルールとなっており、移動体通信分野に
    おける現在の料金設定についても定着してきていると考えられ、現時点で
    は、事業者間のこのような協議の結果を尊重することにも理がないとは言
    えないと考えられる。

  3 一方で、料金設定権とは直接の関係はないとしても、携帯電話事業者の利
    用者料金の低廉化を求める利用者の声は強いので、今後携帯電話事業者に
    おいて一層の料金低廉化に向けての努力が必要である。また、その中でも、
    携帯電話事業者において携帯電話発信・固定電話着信の利用者料金と固定
    電話発信・携帯電話着信の利用者料金とに差異を設けて設定(固定電話発
    信・携帯電話着信の方が割高となっている。2)していることは、双方の
    通話について使用設備に差がないことを考え併せると利用者にとって理解
    しにくいことから、今後携帯電話事業者において、固定電話発信・携帯電
    話着信の料金を引き下げる方向で是正していくことが必要と考えられる。


2 エヌ・ティ・ティ・ドコモの場合は従来、携帯電話発信・固定電話着信の通話 料が80円であるのに対し、固定電話発信・携帯電話着信の通話料が100円と 設定されていたが、本年12月1日より、携帯電話発信・固定電話着信の通話料 を70円、固定電話発信・携帯電話着信の通話料を80円に値下げすることとし ている。固定電話発信・携帯電話着信の場合は、着信側の携帯電話に各種料金プ ラン(ドコモの場合通話料1.0倍〜1.4倍)が存在することから、これらを 踏まえた料金であることを考慮すると、事実上、格差は解消するものと考えられ る。他方、他の携帯電話事業者の場合は、携帯電話発信・固定電話着信の通話料 が80円〜100円であるのに対し、固定電話発信・携帯電話着信の通話料は1 50円〜180円と設定されている。(いずれも東京地域、PDC方式、平日昼 間近距離3分間の場合。) 第2節 光ファイバ設備の扱い 1 現状   現行の指定電気通信設備は、メタルであるか光ファイバであるかを問わず、端  末系伝送路設備及び、これと一体として設置される電気通信設備について指定が  行われている。 2 意見 (1)光ファイバ設備を指定電気通信設備から除外すべきか否かの意見   1 ヒアリング等においては、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式     会社から以下の理由により光ファイバ設備を指定電気通信設備の範囲外と     すべきとの主張が行われた。    ・光ファイバ設備では設備ベースの競争状態にある。他事業者の敷設距離は     NTT東日本、西日本を上回っており、第一種電気通信事業者以外の電力     会社や鉄道事業体などが敷設している光ファイバ設備も利用可能。光ファ     イバの利用について市場価格が存在する。    ・高速アクセスサービスにおいてサービス競争状態にある。    ・光ファイバ設備の設備投資インセンティブが働くようビジネスベースでの     事業展開が不可欠。仮想的なモデル(長期増分費用方式)での全国一律料     金や設備を持たないエリアでの建設等の義務が発生する場合にはコスト回     収に期間を要したり回収もれが生じたりする虞がある。   2 一方、同じヒアリング等においては、メタル設備と光ファイバ設備とで区     別なく指定電気通信設備とすることを前提に、光ファイバ設備のアンバン     ドルを求める意見が出された。    (イー・アクセス、ディーディーアイ、日本テレコム、ケーブル・アンド・    ワイヤレス・アイディーシー、エムシーアイワールドコム・ジャパン、レベ    ルスリー・コミュニケーションズ、東京通信ネットワーク、テレコムサービ    ス協会、筒井多圭志、日本交信網) 3 考え方 (1)光ファイバ設備を指定電気通信設備とすべきか否かについて   1 ・加入者回線を現に設置している事業者は、その設備の敷設のための建物     や管路、とう道、電柱などの基盤となる設備を保持していることから、加     入者回線の更改や異なる設備との入れ替え等を他の事業者が新たに設置す     る場合よりも遥かに容易に行うことが出来る。     ・現在、このような線路敷設基盤の希少性等を考慮して、指定電気通信設     備を設置している事業者が敷設する固定の端末系伝送路について、「光フ     ァイバ設備かメタル設備か」といった設備の素材如何にかかわらずボトル     ネック性を認める考え方が採られてきているが、現時点でこの考え方を変     更すべき特段の事情は認められない。   2 また、平成12年8月には接続の拒否を行ったNTT東日本を対象として     接続協議の開始命令を求める申立てが他事業者より行われ、また、接続の     請求に対して長期間回答が行われないとの意見を提出した事業者もいるな     ど、NTT地域会社の光ファイバ設備と他事業者設備との接続が円滑に行     われていると言える状況にはない。   3 ・更に、NTT東日本・西日本は加入者線の光ケーブル線路亘長3におい     てNTT地域会社とその他の事業者の比率は、1対2であることから、N     TTはむしろ少数者であるとしている。(表6)     ・しかしながら、ボトルネック性は加入者へのアクセスについて生じるも     のなので、その程度を見るにはケーブル亘長ではなく、加入者へのアクセ     スの占有率を検証する必要がある。
3 一以上の光ファイバ芯線を束ねて、これらの芯線を保護する等の目的で被覆を 施したものを1本のケーブルとして捉え、このケーブルについて、収容局から各 家庭までの長さを合計したもの。                   表6        NTT東日暴・西日暴とNCCの光ファイバ回線              (敷設ケーブル亘長)
 
NTT
NCC
 加入者系 
 敷設距離 
  79千km 
 141千km 
比率
36%
64%
   ・加入者へのアクセスに関して、現在、指定電気通信設備の決定に際して採
    られている一定の方法で光ファイバ設備の回線数を集計すれば、平成11
    年度末現在において、NTT東日本・西日本が全都道府県で少なくとも7
    0パーセント以上の占有率を占めており、全国平均では85パーセントの
    占有率を占めていることが明らかとなっている。(表7:郵政省調査)

                   表7
                     NTT東日本・西日本とNCCの光ファイバ回線
                            (利用回線数)
    
    
NTT東日本・西日本の
光ファイバ回線数
 比率 
NCCの
光ファイバ回線数
北海道
106,700
75%
35,000
青森
19,700
86%
3,200
岩手
19,200
88%
2,500
宮城
57,500
80%
14,400
秋田
14,600
90%
1,600
山形
15,200
85%
2,600
福島
28,800
86%
4,500
茨城
49,100
80%
12,600
栃木
37,700
81%
9,000
群馬
39,100
82%
8,500
埼玉
125,000
88%
16,300
千葉
126,700
89%
16,200
東京
958,800
86%
154,600
神奈川
273,400
88%
37,000
新潟
30,500
88%
4,000
富山
19,000
71%
7,600
石川
28,500
87%
4,300
福井
12,900
81%
3,100
山梨
15,700
77%
4,700
長野
40,500
93%
3,200
岐阜
26,300
90%
3,000
静岡
5,7200
82%
12,700
愛知
155,100
87%
24,000
三重
31,700
90%
3,400
  
    
    
NTT東日本・西日本の
光ファイバ回線数
 比率 
NCCの
光ファイバ回線数
滋賀
20,500
90%
2,400
京都
55,000
87%
7,900
大坂
322,100
85%
57,100
兵庫
88,900
87%
13,800
奈良
23,300
94%
1,500
和歌山
12,400
89%
1,600
鳥取
8,700
84%
1,700
島根
11,800
83%
2,400
岡山
37,900
82%
8,600
広島
71,900
71%
30,000
山口
22,600
81%
5,200
徳島
10,000
81%
2,300
香川
18,200
78%
5,000
愛媛
18,500
86%
3,000
高知
9,700
89%
1,200
福岡
88,300
87%
12,700
佐賀
8,400
88%
1,200
長崎
17,300
92%
1,600
熊本
23,100
92%
1,900
大分
15,600
93%
1,200
宮崎
11,800
91%
1,100
鹿児島
19,300
94%
1,300
沖縄
24,300
92%
2,000
合計
3,228,300
85%
554,600
単位:電気通信回線数(「電気通信事業法蚕行規則」第23条の2第3項の「単位回線」(64kbps)に換算したもの)


  4 以上より、光ファイバ設備は従前どおりメタル等の設備と区別せず、今後
    も指定電気通信設備の範囲に含めて捉えていくことが適当である。

(2)光ファイバ設備への長期増分費用方式の適用について
  1 指定電気通信設備として位置付けられたとしても、その設備の接続料を如
    何なる原価算定方式で算定するかは独立に判断できる。NTT東日本・西
    日本は光ファイバ設備の接続料に長期増分費用方式を適用することが妥当
    性を欠くとして光ファイバ設備を指定電気通信設備から除外するよう主張
    しているが、光ファイバ設備に係る接続料の原価算定において長期増分費
    用方式を導入するか否かは、光ファイバ設備を指定電気通信設備として位
    置付けるか否かとは別の議論である。

  2 光ファイバ設備については、中継伝送共用機能には平成12年度より長期
    増分費用方式が適用されることとなっているものの、中継伝送専用機能及
    び端末系伝送路設備については適用が行われないことと整理されている。

  3 長期増分費用方式の適用が行われない部分については、少なくとも当面は、
    透明な手続の中で、実際費用方式による適正な原価算定を行うこととする。
    今後長期増分費用方式の導入の可否も検討されていくと考えられるが、光
    ファイバ設備が今後設備投資されていくという点に鑑み、光ファイバ設備
    に対する相当期間の需要動向が十分見込める状況になって、かつ、事業者
    の新規投資へのインセンティブを失わせないことに留意してその適用の是
    非等を判断していくことが望ましい。

(3)光ファイバ設備を接続の為に設置する義務について
  1 接続の請求に応じる義務は電気通信事業法第38条により、指定電気通信
    設備を設置する電気通信事業者のみならず、すべての第一種電気通信事業
    者に課せられている。
    即ち、接続の請求に応じるために光ファイバ設備の設置されていない地域
    で新たに設備を設置する義務があるか否かは、すべての第一種電気通信事
    業者について、同法第38条第3号、同法施行規則第23条第2号4の理
    由が該当するか否かで決せられる問題である。
    NTT東日本・西日本は、設備のない地域での接続義務を免れる観点から
    光ファイバ設備を指定電気通信設備から除外するよう主張しているが、接
    続の請求に応じる義務と光ファイバ設備を指定電気通信設備から除外する
    か否かとは別の議論である。


4 電気通信事業法施行規則第23条第2号は、第一種電気通信事業者が接続の請 求に応じないことができる正当な理由として「電気通信設備の接続に応ずるため の電気通信回線設備の設置又は改修が技術的又は経済的に著しく困難であること」 を規定している。   2 一般論で言えば、光ファイバ設備が既に存在する場合には、接続請求に応     じる義務があり、光ファイバ設備が存在しない場合にはそのような義務は     ないと考えることが妥当である。   3 これをNTT東日本・西日本を念頭において詳述すると、光ファイバ設備     のうち中継伝送路設備(交換等設備が設置されている建物同士の間に設置     される伝送路設備)については、NTT東日本・西日本においては既に全     国で敷設が行われていることから、基本的には全国で接続の請求に応じる     ことが求められるものと考えられる。   4 また、光ファイバ設備のうち端末系伝送路設備については、   (ア)既に光ファイバが敷設されて即応が可能な地域(例えば饋き線エリアに      光ファイバが既に設置されているエリアのように、2週間程度で必要な      光ファイバ設備の対応を行い得る地域)においては、光ファイバ設備へ      の接続の請求に応じることが求められるものと考えられる。   (イ)他方で、端末系伝送路設備である光ファイバ設備は敷設の途上にあるこ      とから、既に全国で敷設が行われているメタル設備とは異なり、地域に      よっては、光ファイバ設備の即応が出来ない地域(饋線点までの光ファ      イバが敷設されていないために、NTT東日本・西日本において新たな      敷設工事を行うため短期間での対応が困難な地域)も存在する。      このような地域においては、接続請求に応じる義務において即応可能な      地域とは異なった扱いとすることが適当である。      例えば、このような地域で2週間以内での即応を義務付けたり、これに      伴う工事費などの適正な費用回収を認めない接続請求に応じる義務を課      すことは妥当性を欠くと考えられる。 第3節 中継系伝送路設備等の扱い 1 現状   現在、指定電気通信設備は、端末系伝送路設備及び「これと一体として設置す  る電気通信設備であって郵政省で定めるもの」について指定がなされている。こ  のうち端末系伝送路設備と一体として設置される電気通信設備については、電気  通信事業法施行規則第23条の2第4項により、1端末系交換等設備、2中継系  交換等設備、3市内伝送路設備、4中継系伝送路設備、5情報の管理・役務の制  御を行うための設備、及び6その他の不可欠設備と規定されている。   具体的な指定電気通信設備は、この範囲内で告示により指定されているが、具  体的には、1から6について、NTT東日本・西日本が「音声伝送役務」・「専  用役務」の提供に利用している場合に限って当該設備を指定している。 2 意見 (1)ヒアリング等においては、役務に着目して行われている現在の指定の方法に    は問題があるとの指摘が各事業者から出された。   (東日本電信電話、西日本電信電話、ディーディーアイ、日本テレコム、東京   通信ネットワーク、レベルスリー・コミュニケーションズ、イー・アクセス) (2)NTT東日本・西日本を除く各社からは、NTT東日本・西日本がデータ伝    送役務の提供に際して用いている設備を次の理由から指定電気通信設備に加    えるべきとする意見が出された。   (ディーディーアイ、日本テレコム、東京通信ネットワーク、レベルスリー・   コミュニケーションズ、イー・アクセス)    ・近年のインターネット等の普及により、NTT東日本・西日本の地域IP     網のようなデータ伝送役務の提供に用いられている設備との接続の需要が     高まっている。    ・NTT東日本・西日本の地域IP網について、網機能提供計画等による情     報提供が行われず公正競争上問題がある。    ・NTT東日本・西日本の地域IP網を利用せざるを得ないISPが存在し、     加入者線のアクセス部分を設置するNTT東日本・西日本が一体的に提供     する中継区間が囲い込まれる一方で、これと同様のサービスの提供を行う     ために必要なアンバンドルされたNTT東日本・西日本の局間設備との接     続の交渉が難航している。          図3 フレッツISDNのネットワーク略図 フレッツISDNのネットワークの略図 (3)また、NTT東日本・西日本からは、同社が専用役務の提供に際して用いて    いるDSLモデム等の局内設備については、次の理由から指定電気通信設備    の範囲外とすべきとする意見が出された。   (東日本電信電話、西日本電信電話)    ・DSLモデムのような局内設備は他事業者も容易に調達、設置できるもの     であり、設備の代替性がある。    ・DSLモデムはベンダ主導で開発され、全ての事業者が購入設置できるた     め競争状態にある。    ・DSLモデムのような更なる技術革新が見こまれる設備を指定電気通信設     備とすると、電気通信事業法第39条の2第2項による網機能提供計画を     通じた情報公開が必要とされているために早期のサービス展開に支障とな     る。 (4)同じくNTT東日本・西日本からは、同社が電話の提供に際して用いている    中継系交換設備、中継系伝送路設備について、次の理由から指定電気通信設    備の範囲外とすべきとする意見が出された。   (東日本電信電話、西日本電信電話)    ・GC接続を行っている第一種電気通信事業者を経由してNTT東日本・西     日本の設備に接続する事業者が増大しており、設備の代替性がある。    ・NTT東日本・西日本以外の事業者による県内通信市場への参入が行われ     ており、サービス競争状態にある。 3 考え方 (1)設備のボトルネック性は、本来指定電気通信設備を設置する第一種電気通信    事業者がその設備をどのような役務に用いているかとは無関係に判定される    べきであり、役務の種類とは切り離して、ボトルネック性の有無を検討する    ことが適当である。 (2)1端末系交換等設備、2中継系交換等設備、3市内伝送路設備、4中継系伝    送路設備、5情報の管理・役務の制御を行うための設備、及び6その他の不    可欠設備について、以下の理由等で、役務に関わりなく設備自体にボトルネ    ック性が認められることから、基本的に指定電気通信設備と位置付けること    が適当と考えられる。   (ア)データ伝送役務に使用される設備については、適正な条件でアンバンド      ルされなければ他の事業者とNTT東日本・西日本との間で公正競争条      件が確保されない可能性がある。例えば、NTT東日本・西日本がフレ      ッツISDNなどのデータ伝送役務の提供のために用いている伝送路設      備はアンバンドルがなされていないことから、他の事業者が同等の条件      で提供を受けられる状況が確保されておらず、NTT東日本・西日本と      他の事業者との間でイコールフッティング上の問題がある。   (イ)音声伝送役務については、接続事業者はZC接続の場合においてこれら      機能を用いているばかりでなく、GC接続においてもNTT東日本・西      日本の中継伝送専用機能と接続を行っており、他事業者のNTT東日本・      西日本中継系伝送路などへの依存性は依然として顕著に認められる。 (3)但し、接続事業者がDSLサービスに際してNTT東日本・西日本の建物に    コロケーションするDSLAMやルータのような、競争的に供給が受けられ    るような局内設備については、他事業者も容易に調達、設置できることから、    設備の代替性が強いため、指定電気通信設備に含める必要はないと考えられ    る。なお、このような性格の設備の具体的な内容については、今後郵政大臣    の告示により明確にする必要がある。 (4)(3)に関連して、このようにDSLAMやルータを指定電気通信設備から    除外する場合、これらを介して指定電気通信設備と接続する際に現行のコロ    ケーションのルールなどが適用されないことは競争政策上問題であることか    ら、これらの非指定電気通信設備を介して間接的に指定電気通信設備に接続    する場合にも、指定電気通信設備との接続に関して設けられているコロケー    ションのルールが適用される必要がある。
第III章 光ファイバ設備の細分化(アンバンドル) 1 現状 (1)電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について」(平成8年1    2月19日)では、不可欠設備を設置する特定事業者の網構成設備や機能の    細分化は、他事業者が多様な接続を実現するために必要なものであることか    ら、競争の促進及び相互接続の推進の観点から積極的にこれを推進すべきで    あるとした上で、当初、7つの設備についてアンバンドルすることが適当で    あるとした。    その後、アンバンドルの要望に応じ、現在では18の機能に細分化されてい    る(接続料規則第4条)。    (参考1)7つの設備(平成8年、電気通信審議会答申)     1 加入者側終端装置     2 加入者回線     3 加入者交換機     4 中継交換機     5 市内伝送設備     6 中継伝送設備     7 信号網    (参考2)18の機能(平成12年、接続料規則)     1 帯域透過端末回線伝送機能     2 帯域分割端末回線伝送機能     3 基地局設備用端末回線伝送機能     4 その他端末回線伝送機能     5 加入者交換機能     6 優先接続機能     7 Iインタフェース加入者モジュール折返し機能     8 市内伝送機能     9 中継系交換機能     10 中継伝送共用機能     11 中継伝送専用機能     12 通信路設定伝送機能     13 信号伝送機能     14 呼関連データベース機能     15 番号案内機能     16 手動交換機能     17 公衆電話機能     18 端末間伝送等機能 (2)このようにNTT東日本・西日本の指定電気通信設備は細かくアンバンドル    されているが、光ファイバ設備については1メタルではルール化されている    MDF接続に相当するCTF接続と2伝送装置を伴わない中継伝送路設備に    ついてアンバンドルがなされていない。        図4 メタル設備と光ファイバ設備のアンバンドル    メタル設備と光ファイバ設備のアンバンドルの図 2 意見 (1)ヒアリング等においては、光ファイバ設備について、次の理由から、1端末    系伝送路設備及び2中継伝送路設備の双方において「伝送装置を介さない」    アンバンドルされた形での接続がなされることが確保されるべきとの意見が    多数寄せられた。   (イー・アクセス、ディーディーアイ、日本テレコム、ケーブル・アンド・ワ   イヤレス・アイディーシー、エムシーアイワールドコム・ジャパン、レベルス   リー・コミュニケーションズ、東京通信ネットワーク、テレコムサービス協会、   筒井多圭志、日本交信網)    ・DSLサービスの利用者が光ファイバ化に際しても同等のサービスへスム     ーズに移行できるようにする必要がある。    ・早期のブロードバンド普及を促進するために、接続事業者が調達する低廉     な最新の装置を接続して用いることが出来るダークファイバのアンバンド     ル化が必要。    ・光ファイバのアンバンドルは技術的に可能であり、メタルと区別して扱う     理由がない。    ・光ファイバをアンバンドルしないことは、ドミナントな事業者が市場支配     力を維持するための重要な手段となっている。    ・IRU契約ではコストベースの料金設定が確保できない。 (5)これに対して、NTT東日本・西日本からは、光ファイバの提供はノード装    置等と組み合わせて提供することが基本であり、ノード装置等と組み合わせ    ない「設備貸し」は市場価格をベースとして「IRU契約」または同等の賃    貸契約によることとするとの意見が出された。   (東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社) 3 考え方 (1)光ファイバ設備との接続については、1需要が顕在化してきていること、2    その中で接続の請求への拒否が行われるなど円滑な接続が実現していないこ    と、3これにより、今後高速サービスの提供のための基幹的な位置付けを持    つ、不可欠設備である光ファイバ設備が適正な条件で提供されない状況が生    じていることから、事業者間の個別協議に委ねることは適切ではなく、端末    系伝送路設備、中継伝送路設備の各々について、伝送装置を介さないアンバ    ンドルされた形態での接続が行われることを早急に確保するべきである。 (2)光ファイバ設備のアンバンドルが制度的に確立されるためには、1光信号の    伝送に係る主配線盤等における技術的条件が接続約款に記載されると共に、    2端末系伝送路設備と中継伝送路設備の双方について接続料が接続約款に明    示されることが必要であり、そのための郵政省令の改正が早急に行われる必    要がある。 (3)他方、NTT東日本・西日本は利用者の光ファイバ設備への需要に応えるた    めに近い将来「光・IP接続サービス」の提供を予定しているとのことであ    り、(2)で述べた郵政省令の改正が行われる迄の間にあっても、自サービ    スの開始時期を目途に、光ファイバ設備の他事業者に対するアンバンドルさ    れた形態での接続がNTT東日本・西日本において緊急に確保されるべきで    ある。 (4)その際の接続料については、NTT東日本・西日本より光ファイバ設備につ    いて地域毎に異なる料金を設定することの可能性につき意見が出されており、    その是非についても引き続き審議会において検討していく必要があるが、検    討の結論が出る迄の間は、現行のルールに則って地域毎に差異を設けない均    一料金とすべきである。 (5)NTT東日本・西日本においては、接続事業者において光ファイバ設備との    接続が速やかに行えるエリアを把握できるように、光ファイバ設備の敷設状    況に関する情報開示を速やかに行う必要がある。併せて、これに関連して必    要なルールの作成に向けて、今後広く意見を徴して取組みを行うべきである。
第IV章 接続料と利用者料金との関係 第1節 接続料と定額的な利用者料金等の水準 1 現状 (1)現在指定電気通信設備との接続に関して設定されるアンバンドル単位毎の接    続料は、利用者料金とは別箇に算定されていることから、原則届出制となっ    ている利用者料金との関係が問題となることがある。例えば、i・アイプラ    ンなどの定額的な料金体系においては、従量制の接続料と比較した場合に保    留秒数によっては利用者料金が接続料の水準を下回るような状況が生じてい    る。                  図5       NTT東日本・西日本の接続料とi・アイプランの料金 NTT東日本・西日本の接続料とi・アイプランの料金のグラフ (2)接続料と利用者料金の水準との比較については、従来、その関係が反競争的    でないことを立証する観点から、「加入電話の基本料」、「加入電話の通信    料(県内通信)」、「ISDNの基本料」、「ISDNの通信料(県内通信)」、    「公衆電話(ディジタル公衆を含む)」、「番号案内」、「高速ディジタル    伝送(県内専用)」、「ATM専用(県内専用)」、「IPルーティング網    接続専用」、「一般専用(県内専用)」の区分により「利用者向け料金と接    続料水準の比較」がNTT東日本・西日本から報告されている。 2 意見 (1)郵政省による意見招請(平成12年10月10日〜23日)に対して、NT    T東日本・西日本の設定する利用者料金と接続料との関係に関して、競争へ    の影響を勘案して、i・アイプランなどの「逆鞘」料金は認めるべきでない    との意見が提出された。   (ディーディーアイ、ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー、エム   シーアイワールドコム・ジャパン) (2)これに関連して、接続会計において、指定設備管理部門と指定設備利用部門    との間の内部相互補助についてモニタが必要だとの意見が出された。   (日本テレコム、東京通信ネットワーク、エムシーアイワールドコム・ジャパ   ン) (3)また、NTT東日本・西日本が自らの新サービスを開始する前に、そのサー    ビスの提供にあたって利用することとなる機能について接続料を設定すべき    だとする意見が提出された。   (日本テレコム、ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー) 3 考え方 (1)・接続料の水準と利用者料金の水準との関係については、接続料がいわば「    卸売的料金」であり、利用者料金が「小売的料金」であることに鑑みると、    利用者料金が接続料の水準を下回ることは、一般的には公正競争上適切では    ないと考えられる。    ・とりわけ、公衆網において定額的な料金で利用者向けの選択料金が設定さ    れた場合には、従量制を基本とした現在の接続料との間で、保留秒数によっ    ては利用者料金と接続料が逆転することになる。従って、接続料の従量的な    現行の料金体系が維持される場合には、平均保留秒数如何によっては、接続    事業者がNTT東日本・西日本と同等の利用者料金を設定することが困難に    なると考えられる。    ・よって、指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者において定額    的な利用者料金を設定している部分については、適切な方式によりこれを下    回る水準で定額の接続料が設定される必要があると考えられる。具体的な算    定の方式については、適切な平均保留秒数などについての検討を含め、今後    検討を進めていく必要がある。 (2)なお、個別の料金よりも大括りでみた単位(例えば、「電話の通話料」など    の単位毎)に利用者料金が全体として接続料を下回っている場合には公正競    争条件が確保できない場合もあると考えられることから、平成11年からN    TT東日本・西日本によりその検証が行われている。各役務の基本料・通信    料等の区分毎における両者の関係については、今後とも検証を継続し、接続    会計において内部相互補助がなされていないか、NTT東日本・西日本にお    いてこれに関する情報開示を行い、社会的な評価を仰ぐべきである。 (3)利用者向けサービスの提供と接続条件の設定との先後の関係については、接    続料などの接続条件の設定が、自社サービスの利用者料金等の設定よりも遅    れることは公正競争条件確保の観点から基本的には問題があると考えられる。    従って、指定電気通信設備を設置する事業者においては、自社のサービス開    始より前に、或いは少なくともほぼ同時期に接続条件の設定を行うよう努め    るべきである。 第2節 事業者向け割引料金(キャリアズレート)の拡大 1 現状 (1)従来より、第一種電気通信事業者の設備を他の電気通信事業者がアンバンド    ルせずに利用する場合には、基本的に利用者向け料金がそのまま適用されて    きた。このような場合にも事業者向け料金と一般利用者向け料金との間の費    用範囲の違いを反映させた事業者向け割引料金(キャリアズレート)を設定    すべきだとの意見が、第二種電気通信事業者を中心に主張されてきた。 (2)これについては、専用役務について、接続料規則において指定電気通信設備    について事業者向け割引料金を設定すべき旨の規定が設けられ、平成13年    初めにも実現する見通しだが、公衆網についてはその扱いが定まっていない。 2 意見   郵政省による意見招請(平成12年10月10日〜23日)に対して、NTT  東日本・西日本の設定する利用者料金と接続料との関係に関して、アンバンドル  されない公衆網が卸料金で提供されるべき、或いは、事業者間の役務提供におい  て接続料を適用すべきとの意見が提出された。  (テレコムサービス協会、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ) 3 考え方 (1)公衆網における事業者向け割引料金(キャリアズレート)の設定については、    事業者向け料金と一般利用者向け料金との間の費用範囲の違いを反映させる    べきであるという点では専用線の料金と異なるところはなく、先の当審議会    の答申(平成12年9月26日郵通議第3107号)において、「・・電話    等における事業者向け割引料金の制度の整備が必要と判断されるので、今後    郵政省においてその実現に向けて検討を行うことが望まれる」と要望したと    ころであり、実現に向けた具体的な検討が求められる。 (2)そのためには、近く実現される予定である専用線の事業者向け割引料金につ    いての社会的な評価に留意しつつ、専用線と公衆網との異同なども十分検討    した上で、公衆網における事業者向け割引料金(キャリアズレート)の設定    についての具体的な考え方を整理し、その実現を図る必要があり、引き続き    審議会において詳細な検討を進める必要がある。
第V章 その他 1 接続関連費用の負担の考え方(現行の網改造料によって費用が負担されている   機能について)   現在、接続料には、各事業者の利用に応じて費用を負担する「網使用料」と、  特定の事業者が個別に負担する「網改造料」との区分があるが、これらの区分の  妥当性をこれまでの実績等も参考にして再検証し、どこまでを利用に応じた負担  とするかについて今後検討していく必要がある。 2 ISDNから電話への同番移行   現在、NTT東日本・西日本の電話の加入者がこれまでの電話に替えてISD  Nに加入するときには、その電話番号が変更されない所謂「同番移行」が行われ  ているが、逆にISDNから電話への移行に際しては同様の措置が採られていな  い。   これについては、利用者の公平やサービスの変更によって番号が変更しないと  いう利用者の利便の上で問題があるが、更に、DSL事業者のように専ら電話回  線によってサービスを行っている事業者と、ISDNのサービスを行っている事  業者との間の公正性を妨げるとの問題点が挙げられている。   従って、ISDN・電話回線の相互間双方向について同等のモビリティが確保  されるよう、同番移行が可能となるための措置が行われる必要がある。 3 網機能提供計画   網機能提供計画については、その意義があることを前提とした意見がある一方  で、その見直しを主張する意見もある。どういった場合に必要性があり、どうい  った場合に必要性がないのかについて今後具体的に検討していく必要がある。 4 接続制度の定期的な見直し   接続制度の見直しについては、電気通信分野の変化の激しさに鑑み、今後定期  的に見直しを行う必要がある。次回の見直しを何時行うかについては最終答申ま  でに結論を得ることが適当である。


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