Policy Reports 郵政省

目次線 電気通信審議会

再 意 見 書

平成11年1月13日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  320−0003
住  所 宇都宮市豊郷台1−2
氏  名  筒 井 多圭志  印


 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成10年11月27日付け郵通議第84号で公告された日本電信電話(株)の指定電気通信設備に係る接続約款案(項目1(諮問第57号)関連)における意見と郵政省の見解に関し、別紙のとおり再意見を提出します。



(別 紙)

日本電信電話(株)の指定電気通信設備に係る接続約款案への再意見書

帝京大学理工学部 情報科学科 筒井多圭志


●はじめに
指定電気通信設備に係る接続約款案を拝見した。指定電気通信設備に係る接続約款案に寄せられた意見について意見を申立します。まず、指定電気通信設備に係る接続約款案について、米国政府の指摘に対して日本側の対応は、公正取引の視点、ならびに事実関係の認識において、現実とのかなり大きな齟齬が有るのではないか。日本国だけの問題として処理できる問題なら従来はそれで問題になることはないのだが、接続料の算定については、USTRにより改善を求められた経緯から、見直し作業が行われており、公正取引の視点から、国際的に見ても通用する、アカウンタビリティーのある対応が今回、日本政府には求められているということをまず指摘したい。

日経新聞10月15日の報道によると、次のように報じられている。
米、公取委強化を要求・日米規制緩和協議が再開
 日米規制緩和協議が東京で再開し、14日まで2日間、行政の透明性など構造問題と競争政策について集中的に討議した。この中で米側は公正取引委員会に競争政策局を新設し、政府規制下にある産業の規制緩和や競争を促進するなど例年以上に具体的な要求を示し、日本側に前向きな対応を求めた。これに対し日本側は「(競争政策強化のための)声援であると受け止めておく」など一般的な反応を示すにとどまった。
 今月末まで分野ごとの実務者協議を断続的に開き、両国は11月6日にワシントンで次官級会合を開く日程も合意した。



USTRの視点は、日本の市場アクセスの改善状況を概観すると、公共工事などの建設分野、電気通信分野などを対象とした発言ではないかと思われる。電気通信分野では、東京電話の対抗措置について、既に自見郵政大臣が省際問題として公正取引委員会の介入を拒んだ経緯が有る。

●(1) 自己資本利益率の水準について、
審査基準を改正し、指定電気通信設備に係る接続約款の認可及び接続協定の認可においては、自己資本利益率を資産評価モデル(事業の安定性とリスクを計るもの)により算出した値と利用者向け料金の算定に用いた自己資本利益率とを勘案して決定することとした。

まず結論から言うと、ご指摘のような考え方には一定の合理性を見出すことに困難を覚えざるおえない。資産評価モデルは、そもそもそのモデルの利用の仕方が間違っており、最適ポートフォリオ=上場企業の平均利益率と見出す事について何ら合理性の無い議論である。一連の論理の展開は、しっぽが犬を振り回す話であると考えざるおえない。電気通信事業者が技術評価を誤り、光ファイバーに傾倒して、諸外国の電気通信事業者のようにxDSLベースで利益を上げられなかったとしても、間違った投資はどのような間違った数式を持ち出して小理屈をならべようとも正当な利益率を産むばかりか、企業を赤字にするものである事は小学生でもわかることだ。間違った投資を行った電気通信事業者の株価水準から人質になっている一般利用者の電気通信料金が算出されるような事は、前代未聞であり、世界を見渡してもどのような社会においても見出す事のできない曲論である。

しっぽが犬を振り回す議論は言うまでもないのだが、デリバティブの基本モデルを持ち出すためにまず、モデルの適用が可能となる市場の要件として、市場に連続性が必要になる。ところが、その連続性の問題については、不連続市場ではカタストロフィーもありうるわけで、まず、CAPMを持ち出す前に明らかにしなければならないのは、償却しない資産として、計上されている4兆円の電話加入権のアセットとしてのポートフォリオが、一瞬にして消滅するような、不連続でいいかげんな市場において、CAPMはいかような意味においても適用する事はできない。

まず、CAPMについては、94年に、拙著パラダイムシフトにおいて、日本において、一般に紹介した経験があるが、ご指摘のようなCAPMの解釈は、William Sharpe 、Harry Markowitzらの編み出した、CAPMのモデルそのものの深刻な勘違いから発想されている。

E(Ri) = Rf + β [E(Rm) - Rf]
Rm : 市場ポートフォリオのリターン
Rf : 無リスク資産のリターン
β : 対市場ポートフォリオの感応度

 E = (無リスク金融商品の平均金利) + β [(他産業における主要企業の
過去5年間の平均自己資本利益率) - (無リスク金融商品の平均金利)]

まず、ここで、Rm : 市場ポートフォリオのリターン="他産業における主要企業の過去5年間の平均自己資本利益率"と置いている点だが、これは平均自己資本利益率とするのは全くの誤解であり、まず、それは、ポートフォリオの保有者の株式時価評価損益と配当の通算利回りを指す。

市場ポートフォリオのリターンとは、CAPMが基礎としているポートフォリオ理論のポートフォリオ・セレクションの中で示された市場均衡において全てのリスク証券を含んだ最適リスクポートフォリオとなる。このような業種全体のポートフォリオを問題にする場合、今のジャパン株のリターンは過去何年取ってもマイナスで、どのように上手に運用しても、E(Rm)はマイナスであると考えるのが適当である。また、Rfは10年物の長期国債利回りを参考にすれば0.x%であり、βは定義上マイナスとなり得ないため、E(Ri)は、マイナスの値となる。

そもそも、報告書において展開されている論理自体は意味を成していない。



4 結論

 当面は、上記のような事業の安定性とリスクとを織り込んだ指標を勘案すると ともに、利用者向け料金において認可の申請時に採られた自己資本利益率をも勘 案してその値を決めるものとする。
 今後は更に、具体的な数値等の蓄積及び検証を行い、更なる再計算時に際して 見直しを行っていくことが必要である。なお、更なる見直しを行うまでの間、利 用者向け料金に上限規制が導入された後は、利用者向け料金において認可の申請 時に採られた自己資本利益率に代えて、基準料金指数の算出の際に利用者向け料 金の自己資本利益率が勘案されるのであれば、これを勘案の対象として用いるこ とが考えられる。



E(Rm)をどのように一体何を織り込みたいのか意味不明だが、マイナスの接続料をはじき出したいのか? E(Rm)を無理矢理にプラスにしたいために全上場企業の平均自己資本利益率を持ち出すのは間違いである。利益の上がらない用途に対する投資、特に、インターネット利用者を11時以降に追いやったまま、光ファイバー投資を、インターネット利用者のために推進するような投資が利益を上げようはずはない。

そもそもCAPMを持ち出す前に、諸外国の公共ユーティリティー企業の株式の配当水準が高配当なのは、企業が収益を上げて成長することが公共の福祉の前に制限されているためであり、社会制度的な側面から利益成長が見込めないために、金利裁定が働いて極めて低い株価水準に有り、収益還元法により還元される価格水準から、配当利回りが、安全金利(Rf)にプレミアムを上乗せした形に株価水準に金利裁定が働いている。日本の電気、ガスなどの公益事業はバブルエコノミーの時代の狂乱地価を背景とした荒らしが過ぎ去って、再び世界と同様な理論背景から説明しうる価格水準に是正されつつある。そのことについては、拙著パラダイムシフトにおいて解説してあるので参照いただければ幸いである。
一方、このような公共ユーティリティー株が安定した金利水準の配当から収益還元される株価水準を付ける背景には事業の公共性の側面が背景に有り、地域独占を背景に、日本のように竹フィラメントの電球をとりつけて、利用者がパルックボールに取り替えたいとするのとまったく同じ要求を撥ね付けるようなサービスを提供する電気通信事業に対してはいかようにも当てはめることは難しい。

電力株が額面500円で5円配当し、株価時価も500円近辺をさまよう。こういうバブル以前の日本のパブリックユーティリティー企業についてはCAPMから何らかの数理的な逆残によりその企業の安定収益構造について、設備投資の背景となる資金調達手段が、利用者から調達した設備負担金によるものではなく株式の額面発行によるものである限り、料金水準を含めて、金利裁定を行うことは可能であるが、パルックボールがそこに有るのに、竹フィラメントの電球の使用を利用者に押し付けるような電気事業者に対して金利裁定の考え方から収益を逆残して料金体系を決めるような犬がしっぽを振りまわすような論議は、日本では通用してもUSTRに対しては通用することは有り得ないと考えておいた方が良いのではないか。そもそも持ち出すとしたらCAPMよりもAPTを持ち出した方がベターである。

●利用者向け料金における自己資本利益率との関係について
TERLICを否定する為の論理か? いかような意味においても合理的な根拠を見出せない。電気会社、水道ガス会社、国鉄の料金も自己資本利益率から決定するように改定したらどうか?

●(2) 管路・とう道の費用の算定方法について
審査基準を改正し、指定電気通信設備との接続に必要な管路・とう道の料金を、正味の帳簿価額を基礎として算定することとした。

主要な電気通信事業者の管路とう道については、第三者の公認会計士による調査結果に基づいた、内部コストと比べて差別の無い料金で、アクティビティーコストベースで、税法上の耐用年数ではなく、現実の償却期間において算出し、さらに適切なマージンを加えて、競合事業者に利用料金が速やかに提示される事が保証されるための法律が整備される必要がある。米96年通信法セクション251,252に準じるアンバンドル条項を導入すれば事足りる事である。主要な電気通信事業者に不利益を強いる事が目的ではなく、主要な電気通信事業者の利用していない資源を有効活用して、主要な電気通信事業者の利益と、競合する電気通信事業者の利益を図る事が目的である。主要な電気通信事業者の設備稼働率が向上する事は主要な電気通信事業者にとっても利益である。

「審査基準を改正し、指定電気通信設備との接続に必要な管路・とう道の料金を、正味の帳簿価額を基礎として算定する」ような規制は必要ないし、WTO基本電気通信合意第四議定書付帯文書においてもそのような事は日本政府には求められていない。正味の帳簿価額を基礎として算定した場合、100年とか数十年以上経過した設備は備忘録としての簿価しか残っていないが、しかし、そのような資産は税金や加入料金による国民の投資(現在は4兆円にも上る加入権資産価値は不適切な通信政策によりほとんど無価値になった)を背景に確立したものである。

●(3) MDF接続について、
指定電気通信設備に係る接続約款案は、主要なサービス提供者であるサービス提供者に対して、適切なセーフガード措置を設けるように求めた日本政府締結条約文書、基本電気通信に関する自国の特定の約束に係る表又はサービスの貿易に関する一般協定、第四議定書におけるの約束表に付随する参照文書1,2,5の規定に反している。しかるに、本年11月から料金については原則届出制となり、主要なサービス提供者が優越的地位を濫用し、米国においてはコンパックやデルコンピューターのパソコンに$99追加するだけで標準でついてくるような民生用の非対称高速デジタル加入者線装置の利用にかかる課金金額を、両端に$99ドル程度の機器を設置すれば済むだけのものであるのにもかかわらず、実際の償却年限よりも極端に短い減価償却期間を前提として、特殊で高価な電気通信機器として、一部の地域で、一月40,000円以上の高価な利用料金を設定するような出来事が現実に起きている。競合事業者が、主要なサービス提供者から、伝送網の技術的に実行可能な接続点であるメタリックケーブルのみ借り受けて、同様のサービスをアクティビティーコストベースで利用者に提供できるような相互接続に関する協定はむすばれていない。

●競合事業者が、主要な第一種電気通信事業者からメタリックケーブルを差別的でない条件(技術上の基準及び仕様を含む。)及び料金で借り受けて、主要な第一種電気通信事業者と同種のサービス、又は主要なサービス提供者の子会社若しくは主要な第一種電気通信事業者の提携する会社の同種のサービスに提供する品質よりも不利でない品質によって提供できるような条件は提供されていない。
マケランシュにおいて採択された電気通信自由化基本合意は、先進国において相互に電気通信分野を開放する事で合意しているが、電気通信分野における自由化は、主要な第一種電気通信事業者の反競争的行為を野放しにする事ではない。その点を郵政省は何か事実誤認しているのではないか? 今回の、契約約款の認可対象事項見直しの完全届出制移行は、主要な第一種電気通信事業者が、市販の民生用電気通信機器を利用して世界的に突出した利用料金を徴収するという電気通信市場において世界的に見ても例を見ない反競争的事態を生み出し、それを正当化し、日本の電気通信市場自体の崩壊とそれに伴うハイテク産業全体の衰退をもたらすばかりか、かえって主要な第一種電気通信事業者の利益を損ない、さらに、WTO基本電気通信自由化合意に反し条約違反となる虞がある。10兆円を超える単独対米黒字を背景にそのような身勝手な、外国製の民生用の非対称高速デジタル加入者線装置を主要な第一種電気通信事業者の利益の嵩上げのために限定してしか使用されないようなパレート最適から大きく外れる利用利用金の設定による、一般利用者を人質に取るような略奪的収奪(高すぎて収奪する事は難しいが)を正当化するために、外国製の民生用の非対称高速デジタル加入者線装置の大量な市場での販売を事実上排除するような結果をもたらす虞のある契約約款の認可対象事項見直しが行われるのはいかがなものか? さらに、主要な第一種電気通信事業者が、イーサーネットという世界標準の電気通信インターフェースによる接続界面を事実上排除している状態を放置したまま、外国製の民生用の非対称高速デジタル加入者線装置においてのみ、御都合主義的に、一部の地域で、そのようなインターフェース界面が使用され、そのような接続界面も届出制と移行し、世界標準を導入するよう適切な行政指導が行われないのは、政府が主要な第一種電気通信事業者が、利用者に過大な負担を強いることを目的とするものか?

今回の届出制移行により主要な第一種電気通信事業者による非対称高速デジタル加入者線装置の一部の地域による排他的、非競争的使用行為が電気通信自由化の名のもとに正当化され、利用者に過大な負担を強い、主要な第一種電気通信事業者による4万円を超える月額利用利用金の設定は、非対称高速デジタル加入者線装置を標準で$99程度追加するだけで購入できるような優秀な非対称高速デジタル加入者線装置付きの外国製品のコンパックコンピューターやデルなどの外国製コンピューター機器の販売を阻害し、ならびに、3COM-USROBOTICS、CISCO、AMATI、TI、DSCコミュニケーションズ、NORTEL、パラダイン、HAYES、BOCA、LGなどの非対称高速デジタル加入者線装置を、主要な第一種電気通信事業者による公開調達以外で利用される事を排除し、事実上日本市場から排除する事になり、WTO提訴を含む他国間貿易問題に発展する虞はないのか。また、そのような問題に対する監督省庁の責任を回避する事になる虞はないのか?
主要な第一種電気通信事業者の約款変更の届出制移行とセーフガード措置との法的整合性はどのように担保されるのか? 主要なサービス提供者であるサービス提供者が反競争的行為を行い又は継続することを防止するために適切な措置を維持するためには、契約約款の認可対象事項の原則届出制への見直しはどのような意味を持つのか? 10兆円を超える単独対米黒字を背景に「NTTの1998年度接続約款改正案に対する米国政府の意見書」(1998年12月21日掲載)において、米国政府も、同様な意見を表明している。

「NTTに対し文書を発出し、MDF接続を要望している事業者と協議の上、MDF接続をする上で必要な条件を早急に検討し、結果を郵政省に報告するよう要望した。」とのことであるが、利用されていないメタリックケーブルをコロケーションされた競合通信事業者の認定電気通信機器に接続する事についてどのような要件も必要であろうはずはない。光ファイバーについても同様である。はんだ付けや、光コネクターの抜き差しにどのような条件が必要なのか?

●措置 「NTTに対し文書を発出し、MDF接続を要望している事業者と協議の上、MDF接続をする上で必要な条件を早急に検討し、結果を郵政省に報告するよう要望した。」であるが、MDF接続は電気通信事業者間で協議するのではなくUSC251,252に相当する法的に強制力のあるアンバンドル条項を電気通信事業法に導入する事によって実現すべきである。

●平成8年12月の電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について」
我が国の接続制度については、電気通信審議会、接続の円滑化に関する特別部会、96/12/19日、答申による電気通信審議会答申、"接続の基本的ルールの在り方について" における、"第6節 網構成設備・機能の細分化(アンバンドル)" に基づいて米96年通信法USC251,252に準じるアンバンドル化の推進が既に、郵政省の方針として規定されている。

指定電気通信設備に係る接続約款案は、アンバンドルの推進において、その政府の既定方針に大きく反するものである。

参考までに96年12月の答申内容を以下に併記する。



第6節 網構成設備・機能の細分化(アンバンドル)
  1. アンバンドルについての考え方
     特定事業者に対し、他事業者が要望する網構成要素及び機能について、技術的に可能な場合にはアンバンドルして提供することを義務づける。
     特定事業者が技術的に実現不可能であることを一定期間内に示せない場合には、技術的に可能とみなす。
  2. アンバンドルの方法
     以下の網構成設備について、当面、最低限のものとして、アンバンドルして提供することを義務づける。
    加入者側終端装置(加入者側に設置される加入者回線の終端装置)
    加入者回線(加入者交換機と加入者側終端装置間の伝送路)
    加入者交換機
    中継交換機
    市内伝送設備(加入者交換機同士を接続する伝送設備)
    中継伝送設備(加入者交換機と中継交換機を接続する伝送設備)
    信号網


下線部は筆者の加筆によるもの。

答申は96年だが、その間に社会的環境は急激に変化しており、今日では、メタルケーブルとダークファイバー(市内中継回線を含む)のアンバンドル提供が、電気通信分野における公正取引の問題、"私的独占禁止法に基づく公正取引委員会告示"、不公正な取引方法における抱合せ販売に該当する虞のある物として、光ファイバーやメタルケーブルに、接続インターフェースの押し付けが、インターネットプロバイダーや。、外国通信事業者、ならびに日米通信協議においてUSTRから問題視されるに至っている。

●サービスの貿易に関する一般協定の第4議定書について(添付資料 4 )
サービスの貿易に関する一般協定の第4議定書 平成10・2・4・条約 1号 発効平成10・2・5・告示 22号においては、電気通信分野における公正取引の見地から、反競争的行為に対するセーフガード、相互接続、稀少な資源の分配及び利用について特別の配慮を求めている。

相互接続に関しては、



 主要なサービス提供者との相互接続については、伝送網の技術的に実行可能ないかなる接続点においても確保する。主要なサービス提供者が提供する相互接続は、次の要件を満たすものとする。
(a)
差別的でない条件(技術上の基準及び仕様を含む。)及び料金に基づき、自己の同種のサービス、提携していないサービス提供者の同種のサービス又は自己の子会社若しくは提携する会社の同種のサービスに提供する品質よりも不利でない品質によって提供されること。
(b)
サービス提供者がそのサービスの提供のために必要でない伝送網の構成部分又は設備に対して支払をする必要がないように十分に細分化された、透明性のある、かつ、経済的実行可能性に照らして合理的な条件(技術上の基準及び仕様を含む。)及び料金(原価に照らして定められるもの)に基づいて適時に提供されること。



と既定している。これは事業者から請求が有れば、伝送網の技術的に実行可能なダークファイバーによる接続点における、光ファイバーアクセスラインのアンバンドル提供と管路の提供を "透明性のある"=コストベースによりケース毎に価格は異なるものとなるにせよ、タリフを開示して、提供することを日本政府は約束している。

稀少な資源の分配及び利用については、



 稀少な資源(周波数、番号及び線路敷設権を含む。)の分配及び利用に係るいかなる手続も、客観的な、透明性のある、かつ、差別的でない態様で適時に実施する。分配された周波数帯の現状は、公に利用可能なものとする。ただし、政府の特定の利用のために分配された周波数を詳細に明らかにすることは、要求されない。



として、管路の提供について、個別のケース毎に原価ベースのタリフを提示し競合事業者に対して、適切なマージンを上乗せして差別的でなく提供することを約束している。

今回の答申案では、サービスの貿易に関する一般協定の第4議定書 平成10・2・4・条約 1号 発効平成10・2・5・告示 22号に一切言及していないばかりか、その取り決めから大きく逸脱している。

●電気通信役務におけるインターフェースの抱き合わせが公正取引委員会告示、抱き合わせ販売に該当するか

私的独占禁止法は、その適用範囲をサービスに対しても広げている。公正取引委員会告示、抱き合わせ販売では、

(抱き合わせ販売等)
 10  相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。

として、商品だけでなく役務についても対象を広げている。電気通信役務において、不必要なインターフェースの抱合せ販売を強要することは抱合せ販売を禁じた公正取引委員会告示に該当する。

●ISDNのアクセスチャージについて
今日、電話システムが100%ディジタル化を完了したということは、とりもなおさず、音声一般加入回線もISDNもISDN電話網(ディジタル通信網)で通信していることを示す。音声一般加入回線の場合、局舎において、ISDN交換機の先端に音声化モジュールが挿入され、ISDNよりもコストが余分にかかっている。
一般加入者がISDNで通話すれば市内網で3分10円であるのにもかかわらず、東京電話や外資のMFSなどの大口電気通信事業者がアクセスラインとしてISDNで市内を接続すると、3分20円の接続コストが課金されている。 全く同じ網システムを使用している音声電話のときと全く異なる接続料を請求されることについて、USTRなどからも公正取引の見地から批判が上がっていることが報道されている。 D60,D70などの国際的な価格体系からかけ離れた日本独自のISDN電話交換機を極端に短い減価償却期間をISDNについてのみ想定して、相互接続コストが設定されている。

一般加入者がISDNで電話すれば10円で済むものが、大口の競合事業者だと20円が徴収されることは、公正取引の視点から適正を欠いているのではないかという問題点をUSTRから指摘されているが、それに対して答えるための今回の答申だが、このような内容でUSTRの理解を得ることははなはだ困難ではないか。

このISDNのアクセスチャージの問題は、サービスの貿易に関する一般協定の第4議定書 平成10・2・4・条約 1号 発効平成10・2・5・告示 22号 2.2 (a)に抵触している。

●MDF接続と2005年10M@1万円について2005年10M@1万円が、局舎の棚の上に置かれたスプリッターによる光ファイバー化によって日本で世界に先駆けて、各家庭には一本ずつ光ファイバーが局舎から行くことによって、光ファイバーの本数を節約して、FTTHを実現することになっている。
2005年10M@1万円で、局舎の棚の上に置かれたスプリッターからひかれた一本の光ファイバーで2005年10M@1万円が実現するのなら、外資は、当然独占禁止法を持ち出して、マクドナルドでポテトをバンドル提供するのを拒否することはできる。
二本分ファイバーの使用料を支払って、棚の上のスプリッターや、スプリッターにより原子時計並みのタイミング処理の必要となるONUなどの両端の無用な機器の減価償却費用を除外して一月1万円以下で、アンバンドルダークファイバーを使用することを拒むことは、10月14日にもまた、USTRは公正取引委員会の機能の強化を要求してきているが、私的独占禁止法における公正取引委員会告示、不公正な取引方法に照らして、困難で有ると考えられる。

実際、コストに照らし合わせてみれば、2005年に実現するのは、家庭への10M@1万円ではなく、2Gbps@1万円/月が実現するとしか合理的には考えられない。2GBPSとなるのは、秋葉原で現在でも普通に市販しているフルデュープレックスギガビットイーサーのネットワークカードをパソコンに装着すれば、今すぐでも否応無しに全二重で2Gbpsになってしまう。

コストパーフォーマンスで言えば2005年でアンバンドル化の進展により100倍以上安価なビット単価が実現することを拒むことはUSTRと外国のバイパスキャリヤーを前にして、難しい。そもそも、MFSなどのバイパスキャリヤーは多数の弁護士を抱え、電気通信分野における公正取引の立場から非合理なキャリヤーの自然独占に基づいたインターフェースの抱合せ販売の法的矛盾を突き崩すことによって伸びてきている。法律を正当に解釈し執行する政府の立場からは、独占禁止法を捻じ曲げる解釈を推し進めることは、公共の福祉の見地に照らしても、適当ではない。

インターフェースの抱合せ販売の問題は、ちょうどハンバーガー屋における、ポテトの抱合せ販売に相当するものと考えられる。ハンバーガー店は自然独占を背景としていないため、一般顧客はポテトを抱き合わせ販売されることを強要されることも有り得ない。問題のレベルは同質のものだ。

更に例を挙げれば、"なすび電球をパルックボールに取り替えることを、下宿なのでそれはできないとして、大家さんから禁止される" ことと、どれほど違う話だろうか
そのような理不尽な話がとおらないことは、小学生でも理解できる。なすび電球をパルックボールに変えることをUSTRの代表の前で拒むことはできるだろうか? なすび電球をパルックボールに取り替えることと、1.5Mbpsのアクセスラインの両端についているDSUを取り外してギガビットイーサーに接続することの間に技術的な違いはどれほども無い。

政府は中央省庁の合理化の一環として、144の審議会を合理化することを計画しているが、電気通信審議会、電気通信技術審議会も廃止に向けて検討されているが、なすび電球をパルックボールに取り替えることと、1.5Mbpsのアクセスラインの両端についているDSUを取り外してギガビットイーサーに接続することの間に技術的な違いが無いことが分からないとすれば、日本の将来のためにそれもやむおえないことではないか?

日経平均も13000円を割り込む中で、国民福祉の視点から見ても、小学生でも分かるようなことが、理解できないままに通信政策の舵取りを続けられると、日本経済は持ちこたえることが難しいのではないか? 市場は悲鳴を上げていると理解するべきではないか。

●網改造料に係るソフトウェアの開発費が低廉化する方策について
USTRなどから指摘されている事柄を総合すると、網改造料に係るソフトウェアの開発費を低廉化するためには、日本独自のD60,D70などの装置を廃棄して、国際標準のディジタル交換機と、国際標準のSONET/SDHマルチプレクサーに交換すると網改造そのものの費用も不用になり、且つシステムコストも1/100以上低廉化する。

また、ダークファイバー(無条件)、ドライカッパー(ISDNと共存するMVLやDBM方式のxDSL、s-TCM方式のxDSLなどの形式認定を受けた機器を接続する制約の下でのアンバンドル提供)により網改造料に係るソフトウェアの開発はそもそも不要であり、そうすれば低廉に相互接続がILEC、CLEC双方の利益を確保しつつ容易に実現できる。



●同一建物内に終始する伝送路の接続料の機能に関する費用について、
電気通信を目的とする建屋内における10Base-Tと同等なCategory-5メタリックケーブルの減価償却費用についても容易に算定できないとはどういう事か? 競合する電気通信事業者がコロケーションされた局舎の中で、借り受けているラックの中でルーターとルーターを接続するために使用するCat-5ケーブルにおいて、自社が敷設するEthernet、100Base-TXを使用してはいけないとか、帯域幅に応じて利用料金を取るなどという反競争的行為は行われてはならない。政府の仕事は、主要な電気通信事業者がそのような反競争的行為を行う事を監督し禁止する事だけである。両端が同一建物内にあり、全ての設備構成において同一建物内に終始していることが明らかな伝送路の機能については接続料を新たに設定するなどということが行われてはならない。事業所内ではCat-3,Cat-4,Cat-5ケーブル、光ファイバーケーブルを使用するだけの事である。

「第二種電気通信事業者の相互接続点と第一種電気通信事業者の相互接続点との間の伝送路については、特殊な設備形態であり需要も限られている」とはいったいどのような、インターフェース界面をさすのか? 日本語で表現できないものか?これはEthernetと100Base-Txの事をさすのか? 特殊な設備形態であり需要も限られているとはどのような事か? 支配的な電気通信事業者の所有するコンピューターでEthernet,100Base-TX以外のインターフェースで接続されているコンピューターはいったい何台あるのか?

添付資料1:

米政府が回線敷設のルール化を要求 外資企業の通信事業参入を容易に(98/10/06)

 米政府が日本政府に対し,光ファイバの線路敷設権に関するルールの明確化を求めている。10月中には米通商代表部(USTR)のバシェフスキー代表の署名で日本政府に書簡で要求するほか,年内に開かれる規制緩和に関する日米交渉の場でも強く要求してくると見られる。

 線路敷設権とは,鉄道や高速道路の沿線,電柱,NTTの管路などに,通信事業者が,光ファイバなどの通信ケーブルを敷設する権利のこと。通信事業者がこれらのインフラを利用する際のルールを明確にせよというのが,米国政府の要求である。

 例えばJR沿線では,JRグループ各社が出資する日本テレコムしか通信事業用の回線を敷設しておらず,また高速道路を使って回線を敷設しているのは道路施設協会が出資するテレウェイ(日本高速通信)だけ,というのが現状。またNTTの管路は,NTTネットワークと相互接続する局舎の周辺でしか,他事業者への開放がルール化されていない。

 ある通信事業者の首脳は,「高速道路やJRに光ファイバの敷設を打診したが,色好い返事をもらえなかった」と不満を隠さない。どの通信事業者でも公平に利用できるルールを整備することで,米通信事業者の日本市場参入を後押しするのが米政府の狙いである。

 日本では98年2月に,自ら通信設備を持ち,サービスを提供する第一種電気通信事業者に対する外資規制が撤廃された。これを受け,米MCIワールドコムの日本法人であるワールドコム・ジャパンや英ブリティッシュ・テレコムなどが新規参入を計画している。ただし,道路を掘り返して一から光ファイバを敷設する場合,郊外で1km当たり1億円,都心では1km当たり2億円かかると言われる。ワールドコム・ジャパンのウィリアム・シールズ社長は,「日本の回線敷設コストは,世界的に見て一番高い」と指摘する。

 日本政府は,外務省が中心となり12月までにルール化するかどうか回答することにしている。
(吉野 次郎)



●添付資料2:

拙著 ADSL
書籍は別便で送付させていただいた。
ADSLの技術的背景と、MDF接続、USC251、252、メタルケーブル、ダークファイバーのアンバンドル、などについて技術的、法的諸問題について簡単に事実関係を整理し解説して御座いますので御参考にして頂けましたら幸甚に存じます。



●添付資料3:
不公正な取引方法  昭和57・6・18・公正取引委員会告示 15号

(共同の取引拒絶)
 1  正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

ある事業者に対し取引を拒絶し又は取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

他の事業者に前号に該当する行為をさせること。

(その他の取引拒絶)
 2  不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

(差別対価)
 3  不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。

(取引条件等の差別取扱い)
 4  不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。

(事業者団体における差別取扱い等)
 5  事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。

(不当廉売)
 6  正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

(不当高価購入)
 7  不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

(ぎまん的顧客誘引)
 8  自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

(不当な利益による顧客誘引)
 9  正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。

(抱き合わせ販売等)
 10  相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。

(排他条件付取引)
 11  不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

(再販売価格の拘束)
 12  自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件をつけて、当該商品を供給すること。

相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価額の自由な決定を拘束すること。

相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

(拘束条件付取引)
 13  前2項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

(優越的地位の濫用)
 14  自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。

前3号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。

取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54条)第2条第3項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。

(競争者に対する取引妨害)
 15  自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。

(競争会社に対する内部干渉)
 16  自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。

●添付資料 4:
サービスの貿易に関する一般協定の第4議定書

  平成10・2・4・条約  1号
発効平成10・2・5・告示 22号

 基本電気通信に関する自国の特定の約束に係る表又はサービスの貿易に関する一般協定第2条の免除に係る表をこの議定書に附属させる世界貿易機関(WTO)の加盟国(以下「関係加盟国」という。)は、
 1994年4月15日にマラケシュにおいて採択された基本電気通信の交渉に関する閣僚決定に基づき交渉を行い、

 基本電気通信の交渉に関する附属書に考慮を払って、

 次のとおり協定する。

この議定書に附属する基本電気通信に関する関係加盟国の特定の約束に係る表又は第2条の免除に係る表は、これらの表に定める条件により、この議定書が効力を生ずる時に、当該関係加盟国の特定の約束に係る表又は第2条の免除に係る表を補足し又は修正する。

この議定書は、1997年11月30日まで関係加盟国による署名その他の方法によって行う受諾のために開放しておく。

この議定書は、すべての関係加盟国がこれを受諾していることを条件として、1998年1月1日に効力を生ずる。すべての関係加盟国が1997年12月1日前にこの議定書を受諾しなかった場合には、同日前にこれを受諾した関係加盟国は、1998年1月1日前にその効力発生に関する決定を行うことができる。

この議定書は、世界貿易機関事務局長に寄託する。世界貿易機関事務局長は、世界貿易機関の各加盟国に対し、この議定書の認証謄本及びこの議定書の受諾に関する通告書を速やかに送付する。

この議定書は、国際連合憲章第102条の規定に従って登録する。

1997年4月15日にジュネーヴで、この議定書に附属する表に関して別段の定めがある場合を除くほか、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により本書一通を作成した。

日本国の特定の約束に係る表
省略

適用範囲

 この文書は、基本電気通信サービスの規制の枠組みに関する定義及び原則について定める。

定義

 「利用者」とは、サービス消費者及びサービス提供者をいう。

「不可欠な設備」とは、次の(a)及び(b)の要件を満たす公衆電気通信の伝送網又は伝送サービスに係る設備をいう。

(a)
単一又は限られた数のサービス提供者によって専ら又は主として提供されていること。

(b)
サービスの提供において代替されることが経済的又は技術的に実行可能でないこと。

「主要なサービス提供者」とは、次のいずれかの結果として、基本電気通信サービスの関連する市場において(価格及び供給に関する)参加の条件に著しく影響を及ぼす能力を有するサービス提供者をいう。

(a)
不可欠な設備の管理

(b)
当該市場における自己の地位の利用

競争条件の確保のためのセーフガード

1.1
電気通信における反競争的行為の防止
 単独又は共同で主要なサービス提供者であるサービス提供者が反競争的行為を行い又は継続することを防止するために適切な措置を維持する。

1.2
セーフガード
 1.1の反競争的行為には、特に次の行為を含む。

(a)
反競争的な内部相互補助を行うこと。

(b)
競争者から得た情報について反競争的な結果をもたらすように利用すること。

(c)
他のサービス提供者に対し、当該他のサービス提供者がサービスを提供するために必要な、不可欠な設備に関する技術的情報及び商業上の関連する情報を適時に利用できるようにしないこと。

相互接続

2.1
この2の規定は、特定の約束を行った範囲において、公衆電気通信の伝送網又は伝送サービスを提供するサービス提供者との接続であって、一のサービス提供者に係る利用者が他のサービス提供者に係る利用者と通信し又は他のサービス提供者によって提供されるサービスへアクセスすることを可能にするものについて適用する。

2.2
確保すべき相互接続(注)
注 この2.2の規定は、不可欠な設備を管理する主要なサービス提供者についてのみ適用する。

 主要なサービス提供者との相互接続については、伝送網の技術的に実行可能ないかなる接続点においても確保する。主要なサービス提供者が提供する相互接続は、次の要件を満たすものとする。

(a)
差別的でない条件(技術上の基準及び仕様を含む。)及び料金に基づき、自己の同種のサービス、提携していないサービス提供者の同種のサービス又は自己の子会社若しくは提携する会社の同種のサービスに提供する品質よりも不利でない品質によって提供されること。

(b)
サービス提供者がそのサービスの提供のために必要でない伝送網の構成部分又は設備に対して支払をする必要がないように十分に細分化された、透明性のある、かつ、経済的実行可能性に照らして合理的な条件(技術上の基準及び仕様を含む。)及び料金(原価に照らして定められるもの)に基づいて適時に提供されること。

(c)
請求がある場合には、必要となる追加的な設備の建設費を反映する料金が支払われることを条件として、利用者の多数に提供されている伝送網の終端地点以外の接続点においても提供されること。

2.3
相互接続に関する交渉のための手続の公の利用可能性
 主要なサービス提供者との相互接続に適用される手続は、公に利用可能なものとする。

2.4
相互接続に関する取決めの透明性
 主要なサービス提供者は、確実に、相互接続に関する協定又は参照用の相互接続に関する提案を公に利用可能なものとする。

2.5
相互接続に関する紛争解決
 主要なサービス提供者との相互接続を請求しているサービス提供者は、相互接続の適当と認められる条件及び料金があらかじめ設定されていない場合には、これらに係る紛争を合理的な期間内に解決するために、次のいずれかの時期に、独立した国内機関(5に定める規制機関を含む。)に申し立てることができるものとする。

(a)
随時

(b)
公に周知された合理的な期間の経過後

ユニバーサル・サービス
 いずれの加盟国も、当該加盟国が維持することを希望するユニバーサル・サービス義務の内容を定義する権利を有する。この義務は、反競争的とはみなされない。ただし、透明性のある、差別的でない及び競争中立的な態様で履行され、かつ、当該加盟国が定める内容のユニバーサル・サービスを確保するために必要である以上に大きな負担にならないことを条件とする。

免許の基準の公の利用可能性
 免許が必要とされる場合においては、次の(a)及び(b)の事項を公に利用可能なものとする。

(a)
すべての免許の基準及び免許の申請に係る決定を行うため通常必要とされる期間

(b)
個別の免許の条件

 免許を拒否した理由は、請求があるときは申請者に通知する。

独立の規制機関
 規制機関は、いかなる基本電気通信サービスの提供者からも分離され、かつ、いかなる基本電気通信サービス提供者に対しても責任を負わない。規制機関が行う決定及び規制機関が用いる手続は、市場のすべての参加者について公平でなければならない。

●添付資料5
NTTの接続約款案に対する米国政府の意見書に関するプレス・ステートメント
米国政府は1998年12月19日、NTTの1998年度接続約款改正案に対する意見書を郵政省に提出した。
意見書は、約款案に関して日本政府が広く意見を求める決定をしたことを称賛するとともに、意見書で提起された問題に対応する措置が最終的に認可される約款に反映されることに対する期待を表明している。
意見書の中で、米国政府は、NTTの接続約款改正案は日本の電気通信市場の競争を促進するという目的を達成するものではなく、修正が必要であるとの見解を明らかにした。
具体的には、約款案の接続料金引き下げは十分でなく、反競争的な料金体系が維持されていると、米国政府は考える。さらに、米国政府の考えでは、この約款案は、
1) 適切な減価償却期間を採用していない
2) コストベースでのとう道・管路へのアクセスをNTTのネットワーク全体に拡大していない
3) コストベースの専用型中継伝送機能をNTTのネットワーク全体で提供していない
4) アンバンドルされた加入者回線について約款を提供していない
5) 競争事業者にすべての着信オプションを提供していない
6) 迅速な相互接続を保証していない。

米国政府は、この料金案が、1998年5月の規制緩和に関する日米共同報告に謳われた「できる限り接続料金の引き下げを推進する」とする日本の約束と整合性がとれたものではないと考える。多くの場合、申請された接続料金はNTTのユーザー料金よりも高く、NTTが、競争事業者のコストを新規参入者にとって競争的なサービスの提供が非常に困難となるようなレベルに設定することを可能とする。従って、日本の地域ネットワークに対するNTTの独占的な支配が強まることになる。これは、最も急速に成長しているサービスのひとつであるISDNの分野に顕著である。ユーザー料金と接続料金の間のこうした反競争的な関係は、コストに基づく接続制度を維持し、反競争的な内部相互補助を回避するという日本のWTOでの約束と矛盾するものでないか、との問題を提起する。
高い接続料金が維持されるということは、日本の電気通信市場での競争、投資、革新が促進されないということを意味し、日本全体の競争力を損ない、日本市場と競争が急速に進む他の市場との格差が広がることになる。
米国政府の意見書全文は、米国大使館のホームページでご覧になれます。
99-02RJ
January 8, 1999

以 上

トップへ戻る