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発表日  : 2000年 6月 2日(金)

タイトル : 平成11年度電気通信番号に関する研究会の報告






第3章 IP電話の番号

 IP電話に関しては、我が国において、数社により、公衆回線交換網(PSTN)
とIP網を接続する実験が行われ、また、今年中にもサービス開始を予定している
事業者もあるところである。国際標準についても、ITU−TやIETFで検討が
進められているところである。このようなIP電話の我が国における番号計画につ
いて以下検討する。

1 検討対象とする接続形態

(1)IP網とPSTNとの接続としては下図のような(a)〜(d)の形態が考
  えられる。これらの中で、(b)及び(d)の場合の着側のIP網端末を識別
  するための番号がIP電話の番号として必要であると考えられ、これについて
  検討する。

検討対象とする接続形態の表

(2)この場合、PSTN端末からIP網端末を呼び出すためには、IP電話の番
  号としてE.164番号(ITU−Tの勧告E.164で規定される国際公衆
  電気通信番号。外国からの着信も可能な番号であり、国番号を含めて15桁以
  内の番号)が必要となる。

(3)E.164番号のうち、IP電話へのグローバル番号(特別の国番号を用い
  た番号体系)の付与等については、ITU−T SG2で議論されていること
  から、本研究会としては、国内で提供されるIP電話サービスに対応した国内
  番号について検討する。

2 IP電話の番号を検討するにあたって明確にすべき事項

  IP電話の番号を検討するにあたっては、地理的識別の必要性や、IP電話に
 発信する側の料金、品質等のサービス定義、事業者間の接続方式、番号容量(番
 号付与対象が何になるか等)等の事項を明確化した上で、検討を行う必要がある。

  地理的識別が必要であり、IP電話に発信する側の料金が固定電話に発信する
 場合と同等、既存の固定電話に求められる品質(*1)と同等、接続方式が既存
 の固定電話の事業者間接続に求められる方式と同等といったいわゆる固定電話相
 当のIP電話を、カテゴリA、それ以外の新たな概念のIP電話については、カ
 テゴリBとし、それぞれについて検討を行うこととする。

検討するにあたって明確にすべき事項の表
 (*1)事業用電気通信設備規則で規定される通話品質、接続品質

3 使用することが適当な番号体系

  カテゴリAのIP電話については、地理的識別、料金、品質も固定電話相当で
 あり、接続方式も既存の固定電話の事業者間接続に求められる方式と同等である
 ことから、0AB〜J番号の利用が適当であると考えられる。
  なお、同様に携帯電話あるいはPHSの代替と言えるIP電話サービスが提供
 される場合は、090番号等、070番号の利用が適当であると考えられる。

  ただし、番号容量の観点からは、0AB〜J番号が地域により逼迫している番
 号であり、IP電話による番号利用が新たな0AB〜J系番号の逼迫要因となる
 ことも考えられることから、今後、市内局番の需要予測を行う際には、カテゴリ
 AのIP電話の需要動向を十分に考慮する必要があると考えられる。

  なお、IP電話が発信専用の場合であっても、課金管理、着信端末での発信者
 番号表示等のため、番号が必要となる場合がある。この発信専用のIP電話が使
 用する番号については、0AB〜J番号が地域により逼迫している番号であるこ
 と、その番号への呼び返しが必要ないことから、0AB〜J番号以外の利用も考
 えられる。そこで、今後、発信専用のIP電話で電話番号を必要とするサービス
 を提供する具体的な計画がまとめられた時点で、適切な番号について検討する必
 要がある。
  また、PSTNとの接続がなく、IP網内に閉じたIP網端末についても同様
 であり、今後、具体的な計画がまとめられた時点で、適切な番号について検討す
 る必要がある。

  郵政大臣から0AB〜J番号の市内局番の指定を受ける事業者については、一
 般のPSTN側の事業者がその市内局番を見て、中継線接続によるルーチング、
 事業者間精算等を行っていることから、PSTNと中継線接続し、インターネッ
 トプロトコルに変換する事業者である必要がある。今後、IP技術の進展ととも
 に、多様な接続形態が出現することも想定されることから、利用者の利便性、技
 術条件、接続形態等を考慮の上、市内局番の指定を受ける事業者の見直し等につ
 いて適宜検討することが望まれる。

  なお、既に市内局番の指定を受けている事業者が、カテゴリAの形態でIP電
 話サービスを提供する場合、0AB〜J番号が地域により逼迫していること、カ
 テゴリAのIP電話は固定電話相当のサービスであり、固定電話の番号と分離し
 て管理する必要性は基本的にはないものであることから、同一の市内局番に収容
 することが適当であると考えられる。この場合、事業者において、運用上、加入
 者番号の先頭の番号(Fコード)で分離することは問題ないと考えられるが、0
 AB〜J番号の逼迫を考慮して、加入者増により新たな市内局番を申請する際の
 収容条件についてはこれまで通りとする必要がある。

  一方、カテゴリBのIP電話は既存の番号とは異なる(番号からIP電話と識
 別できる)番号の利用が適当と考えられる。今回の研究会においては、新たな概
 念のIP電話サービスについて具体的な要望がなかったが、今後、具体的な計画
 がまとめられた時点で、適切な番号について検討する必要がある。

  新たな概念のサービスの一つとしては、固定電話とは異なるロケーションフリ
 ー(非地理的)なIP電話サービスが想定される。このようなサービスの番号と
 しては、我が国においては、非地理的なE.164番号として、0A0番号、0
 AB0番号があり、これらの利用が想定される。ただし、これらの番号を将来利
 用するにあたっては、新たな概念のIP電話サービスの定義、適切な事業者識別
 コードの桁数、合計桁数、番号付与の対象事業者等を決定する必要がある。

  また、ロケーションフリーのIP電話の場合、我が国に閉じたロケーションフ
 リーではなく、世界的な範囲でのロケーションフリーも考えられ、このような場
 合には、現在ITU-T SG2で検討されているグローバル番号(特別の国番号
 を用いた番号体系)の利用も考えられる。

  なお、第二種電気通信事業として、カテゴリAの固定電話相当のIP電話サー
 ビスを提供する場合に、PSTNと中継線接続する場合の番号は、これまでと同
 様、091番号の利用が適当と考えられる(*)。
  なお、今後、カテゴリBの新たな概念のIP電話サービスにおいて、一種/二
 種の区別の必要性がないものが考えられた場合には、一種/二種の区別なく共通
 に利用する新たな番号体系とすることが考えられる。

 (*)「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会報告書(平成7
   年5月)」において、「第二種電気通信事業者の網に収容される端末等への
   着信時の番号については0ABCDEの6桁で第二種電気通信事業者の網を
   識別し、ABは市外局番として使用していない91を当面使用することが考
   えられる。」とされたことを受けて、現在、電気通信番号規則において、0
   91番号(091に続く3桁で事業者識別)が規定されている。

4 IP電話の接続構成例

  IP電話の接続構成例を次に示す。また、今後、多様な接続形態が出現するこ
 とが想定される。

 (接続構成例その1)

  PSTN及びIP網を有する事業者Bが、PSTNを有する事業者Aと中継線
 接続し、自らの直収またはCATV事業者等のアクセス回線により、利用者へI
 Pにより接続する。

接続構成例その1の画像

 凡例
 TGW(Trunking Gateway):局内GW
 RGW(Residential Gateway):宅内設備
 GK(GateKeeper):GW管理、番号−IPアドレス変換
          :既存電話網プロトコル
          :H.323プロトコル

 (接続シーケンス概要)
  1端末Aから端末B側の0AB〜J番号を発呼。事業者Aの交換機は市外局番
   +市内局番により事業者Bに中継線接続。事業者Bの交換機は加入者番号よ
   り、IP網収容端末Bと特定し、TGWに呼設定。
  2TGWから、着番号に対応するRGWのIPアドレスをGKに問い合わせ。
  3TGWにて圧縮後、H.323プロトコルに変換し、RGW宛に呼設定。
  4端末Bを呼出。

 (使用する番号)
  カテゴリAでこのようなサービスが提供される場合、加入者側の番号は加入者
  宅の地理的位置を基準に事業者Bが指定を受けた市内局番による0AB〜J番
  号を利用する。

 (接続構成例その2)

  IP網を有する事業者Bが、PSTNを有する事業者Aと中継線接続し、自ら
  のアクセス回線により、利用者へIPにより接続する。

接続構成例その2の画像

 (接続シーケンス概要)
  1端末Aから端末B側の0AB〜J番号を発呼。事業者Aの交換機は市外局番
   +市内局番により事業者Bに中継線接続。
  2TGWから着番号に対応するRGWのIPアドレスをGKに問い合わせ。
  3TGWにて圧縮後、H.323プロトコルに変換し、RGW宛に呼設定。
  4端末Bを呼出。

 (使用する番号)
  カテゴリAでこのようなサービスが提供される場合、加入者側の番号は加入者
  宅の地理的位置を基準に事業者Bが指定を受けた市内局番による0AB〜J番
  号を利用する。

 (接続構成例その3)

  IP網を有する事業者BがPSTNを有する事業者Aと加入者線接続し、自ら
  のアクセス回線により、利用者へIPにより接続する。

接続構成例その3の画像

 (接続シーケンス概要)
  1端末Aから端末B側の0AB〜J番号を発呼。事業者Aの交換機は0AB〜
   J番号により、自らの加入者回線に接続。
  2TGWから、着番号に対応するRGWのIPアドレスをGKに問い合わせ。
  3TGWにて圧縮後、H.323プロトコルに変換し、RGW宛に呼設定。
  4端末Bを呼出。

 (使用する番号)
  加入者側の番号は、事業者Aの加入者番号(ダイヤルイン番号等)である0A
  B〜J番号を利用する。



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