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発表日  : 9月19日(金)

タイトル :  9/19付:「電気通信事業接続会計研究会」報告書(概要)





I 接続会計制度の理念・目的について

 1 電気通信審議会答申概要

  (1)指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者に対して接続会計
    制度の導入を義務付ける。

  (2)接続会計制度は、当該事業者の会計を、指定電気通信設備を管理運営
    する部門(以下「指定設備管理部門」という。)とその設備を利用して
    ユーザーにサービス提供を行う部門(以下「指定設備利用部門」という。)
    とに区分し、指定設備管理部門が指定設備利用部門と他事業者に対して
    指定電気通信設備を同一条件(接続料)で提供する方式が適当である。
    (図1参照(省略))

 2 接続会計制度の果たすべき機能

  (1)「(接続料)原価計算制度」としての原価測定機能
     指定電気通信設備をその階梯或いは機能・目的に従って区分(以下
    「設備区分」という。)し、その管理運営に要した費用をこの各設備区
    分に直課させ又は因果性を考慮した基準に従い合理的に帰属させて集計
    する。
     これにより、アンバンドルされた接続料の設備コスト・ベースの算定
    を行うのに必要な基礎データを提供することが可能となる。

  (2)「社内取引会計制度」としての内部相互補助のモニタリング機能指定
    設備管理部門と指定設備利用部門との間に、他の電気通信事業者(以下
    「他事業者」という。)と同一の条件の社内(振替)取引を擬制して双
    方の損益状況を明らかにすることにより、両者間の内部相互補助をモニ
    タリングする。


II 接続会計制度の基本的枠組みについて

 1 会計単位
   対象事業者の会計(電気通信事業に関する部分)を「指定設備管理部門」
  と「指定設備利用部門」の二つの会計単位に区分する。ここで、指定設備管
  理部門の行う「指定電気通信設備の管理運営」とは、「指定電気通信設備の
  開発、計画、設置、運用、保守、撤去その他これに付随する活動」と定義し、
  指定設備利用部門は第一種電気通信事業における指定電気通信設備の管理運
  営以外の全ての活動を行うと定義する。
   また、原価計算の過程で、一時的に費用をプールするため「支援設備」
  (電力、総合監視、試験受付等の設備)及び「全般管理」(共通部門や管理
  部門の機能)の二つの補助部門を設定する。

 2 指定設備管理部門の損益計算の範囲
   指定設備管理部門に以下の2つの損益計算の部を設ける。

  (1)接続損益の部
     指定設備利用部門と他事業者とに同一の料率で設定される網使用料に
    係る収支を把握する。

  (2)接続関連損益の部
     接続装置の使用及び接続のための網改造に係る他事業者との収支を把
    握する。

 3 損益計算の段階
   接続会計においては、営業損益段階までの損益計算を行う。


III 勘定科目について

 1 勘定科目設定の必要性
   主要な財務諸表(貸借対照表及び損益計算書)上に記載される「科目」の
  みを規定した電気通信事業会計規則(昭和60年郵政省令第26号)の規定
  を拡充し、資産、費用及び収益に関し、科目の下に款、項、目といった階層
  的な内訳科目を規定し、科目の内容を明確化する。

 2 基本的考え方
   資産、費用・収益の各科目に関し、会計単位を款として規定し、複数事業
  者間で汎用的に適用可能な範囲で内訳としての項を規定する。目については
  当該電気通信事業者に固有の標記等に対応できるよう電気通信事業者ごとに
  定める。

 3 資産科目(以下、下記4、5ともに別表1参照(省略))
   電気通信事業会計規則において、「機械設備」、「市内/市外線路設備」、
  「土木設備」といった形態別に包括的に規定されている科目の内容を細分し、
  アンバンドルされた料金算定に必要な設備区分を項として規定する。

 4 費用科目
   電気通信事業会計規則において定められた電気通信事業営業費用の各科目
  について、款、項、目を規定する。営業費、運用費及び試験研究費について
  は、指定電気通信設備の管理運営に要することが明確に示されるような項を
  規定する。
   また、指定設備利用部門が指定設備管理部門に他事業者と同一条件で負担
  する網使用料に係る「振替網使用料」を科目として設ける。

 5 収益科目
   指定設備管理部門に他事業者及び指定設備利用部門から受け取る「受取網
  使用料」、「振替網使用料」を科目として設け、接続形態に応じた(準じた)
  項を設ける。他事業者から受け取る「接続装置使用料収入」及び「網改造料
  収入」の科目を設け、付加・改造の種別を項として規定する。
   指定設備利用部門がユーザーから受け取るサービス収入等については、電
  気通信事業会計規則の収益科目に準拠して規定する。


IV 設備区分への原価集計と原価帰属基準について

 1 基本的考え方
   アンバンドルされた料金算定の基礎とするため、指定設備管理部門の費用
  を接続料原価として設備区分ごとに集計する。
   その際には、ABC手法(注)などを適宜用いて接続との関連性を反映し
  た費用帰属を行う。

 2 原価集計と原価帰属基準の概要(別表2参照(省略))

  (1)活動の設定及び電気通信事業固定資産の区分
     電気通信事業者の「活動」を「主要設備」、「支援設備」、「試験研
    究」、「全般管理」、「サービス活動」等に区分する。
     「主要設備」の中は設備区分ごとに区分するが、伝送路設備について
    は同一の物理的回線(ケーブル)が複数の階梯、用途に共通に使用され
    ており、設備区分ではなく、物理的に管理可能な資産区分とする。
     ただし、上記の活動について共通にかかる建物の償却費等については、
    「活動支援費用」として別に把握する。

  (2)活動への費用集計
     電気通信事業会計規則の「電気通信事業営業費用」を設定された活動
    に集計する。

  (3)活動支援費用の活動への帰属
     活動支援費用を設備の占有面積等の「活動支援帰属基準」により、主
    要設備等の活動に帰属させる。

  (4)活動から設備区分等への原価帰属
     「支援設備」、「試験研究」、「全般管理」等の活動に関する原価を
    適切な「活動ドライバー」により設備区分及びサービス活動に帰属させ
    る。
    「主要設備」については、直接対応する設備区分に帰属させる。

  (5)伝送路設備の階梯別区分
     上記(4)までの原価を帰属させた伝送路設備(主要設備の一部)を
    回線数等によって設備区分に従った階梯別に区分する。

 (注)ABC(アクテビティ・ベースト・コスティング)手法
    企業等における諸活動(アクテビティ)から発生するコストを個々に集
   計し、この活動量を計量的に表現するコスト・ドライバーに基づいて製品
   やサービスなどの原価計算対象に賦課する手法。当初は製造間接費の正確
   な帰属計算を目的として提唱されたが、今日ではその適用領域が企業内の
   様々な業務に拡大している。


V 接続会計報告書書式について

 1 接続会計報告書の公表等
   接続会計を整理した結果の公表は、電気通信事業者が「接続会計報告書」
  を作成して郵政大臣に提出し、これを刊行することにより行われる。同報告
  書には、接続会計の財務諸表が適正に作成されている旨の公認会計士による
  計算結果の証明を付する。

 2 接続会計報告書の構成イメージ

  (1)導入部
    ア 報告書の目的
    イ 根拠法令・通達の紹介
    ウ 会計処理の基準
    エ 財務諸表の構成
    オ 公認会計士による調査報告の紹介
    カ 適用除外事項(経過措置等)

  (2)公認会計士による調査報告

  (3)財務諸表(別表3参照(省略))
     損益計算書
     使用平均資本及び資本報酬計算書
     固定資産明細表
     固定資産帰属明細表
     設備区分別費用明細表

  (4)財務諸表注記
     (略)

  (5)その他
     会計単位の定義
     用語解説
     接続会計手順書の入手方法等々


VI 公認会計士による計算証明について

 1 電気通信事業者は、公認会計士が基礎資料と照合が可能な原価帰属の方法
  書を予め定める。

 2 調査に当たっては、通常企業の財務諸表監査に比べて遜色のない水準で投
  入人月を確保する。

 3 関与公認会計士は、郵政省に対して、質問・照会、調査実施上の意見を積
  極的に表明することが望まれる。


VII 終わりに

 1 今回研究会が提示した接続会計のフレーム・ワークは、現在電気通信審議
  会で審議中の指定電気通信設備の定義や現在郵政省が検討中の料金算定方法
  に関して一定の仮定・想定を置いている。
   また、平成10年度唯一の適用対象と考えられるNTTの経理、税務の実
  務の現状にも相当程度依存している。

 2 NTTの平成11年度の再編成方針の帰結等を踏まえて、今回のフレーム
  ・ワークに調整を加えることも必要となろう。
    また、新たな適用対象事業者の登場といった事態にも対応できるよう、
   郵政省令の見直し又は調整を柔軟に行うことが適当である。

 3 異なる電気通信事業者間で適用される場合の汎用性と厳密性を両立させる
  ため、基本的事項を省令で規定し、詳細な指針を取扱要領(一般に公開され
  ることが適当)で示すという対応も適当である。



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