第1章 本研究会の検討事項

1 これまでの検討の経緯
(1) ユニバーサルサービスの在り方については、平成6年5月に「21世紀の
 知的社会への改革に向けて」(電気通信審議会答申)の中で、
 1) 社会的公平性を確保する意味から、どこでも、誰でも、低廉な料金で利
  用できるユニバーサルサービスの内容・範囲を明らかにする必要があるこ
  と
 2) マルチメディア時代の新しいユニバーサルサービスを全国的に確保して
  いくため、事業者間の負担の調整や国による支援等のスキームの創設を含
  めて、どのような措置を講じるべきかについて検討していくことが求めら
  れること
 が提言されている。

(2) また、平成6年10月から平成8年5月にかけ、「マルチメディア時代の
 ユニバーサルサービス・料金に関する研究会」(座長:岡野 行秀 東大名
 誉教授)が開催され、その報告書(平成8年5月)では、ユニバーサルサー
 ビスについての諸外国の動向や日本としての取り得る方策等について、基本
 的な考え方や概念の整理を行い、
 1) ユニバーサルサービスの概念と意義
   ユニバーサルサービスとは、国民生活に不可欠なサービスとして、利用
  可能な料金など適切な条件で全国において安定的な供給の確保を図るべき
  サービスであること。
   マルチメディア時代におけるユニバーサルサービスの意義は、情報を
  「持つ者」と「持たない者」の発生を防ぎ、結果として社会的不公平を最
  小限にとどめること。
 2) ユニバーサルサービスの範囲の拡大
   ユニバーサルサービスの範囲を電話に限定するのではなく、マルチメ
  ディアサービスを含めたものに拡大することが必要であること。
 3) ユニバーサルサービス確保のための措置
   ユニバーサルサービス確保には基金方式が適当であること。
 などを提言している。

(3) この間、平成8年2月のNTTの経営形態に関する電気通信審議会答申で
 は、ユニバーサルサービスについて、「地域における競争の進展状況を踏ま
 え、例えば、ユニバーサルサービス確保のための基金を設置するといった新
 たな制度について検討する必要がある。」と言及している。

2 本研究会の検討事項
(1) 前回の研究会では、マルチメディア時代のユニバーサルサービスの範囲の
 拡大に主に焦点を当てて議論を行い、次の点を今後の検討課題としている。
 1) マルチメディア時代に向けたユニバーサルサービスの範囲の拡大
   ア 国民のコンセンサスづくり
   イ 対象となるマルチメディアサービスについての検討
 2) 当面の課題
   ア NTTにおける費用情報の開示
   イ ユニバーサルサービス基金の詳細な検討

(2) これらの課題のうち、マルチメディア時代に向けたユニバーサルサービス
 の範囲の拡大については、例えば、光ファイバー網構築のための財政支援や
 各種マルチメディアサービスのアプリケーション開発、過疎地等の移動通信
 用鉄塔施設整備の補助、地方自治体における高度サービスの先導的導入など、
 各分野において取り組みがなされているところであり、また、新たに急速に
 普及しつつあるインターネットについても、国によるアクセスポイントの増
 設支援がなされており、さらに、教育分野におけるインターネットの普及活
 用策などについて省庁連携による検討などが行われているところである。
  他方、当面の課題とされたNTTにおける費用情報の開示については、接
 続ルールの中で一定の進展がみられつつあるが、必ずしも、ユニバーサル
 サービス提供の関連での議論は十分行われていない。
  また、現時点において、ユニバーサルサービスに該当することについてコ
 ンセンサスが得られている電話サービスについても、NTTの再編成や市内
 通信領域における競争進展などに伴い、東西の地域NTTの料金差や選択料
 金サービスの問題等ユニバーサルサービスとしての在り方や、将来に向けて
 どのようにユニバーサルサービスとして確保していくかなどを検討する必要
 性が高まっている。

(3) こうした状況の中で、本研究会としては、
 1) ユニバーサルサービスの概念と範囲について、現実の各種サービスに即
  して改めて整理すること。
 2) ユニバーサルサービスを確保するための仕組みの必要性と、その内容に
  ついて、主に現在の電話サービスを念頭において論ずること。
 3) ユニバーサルサービスを確保するための新たな仕組みを構築するに当
  たって、必要な手順(整備すべきデータ、議論すべき事項、スケジュー
  ル等)を明らかにすること。
 を主な検討範囲とすることとする。

(4) なお、ユニバーサルサービスを巡っては、本研究会が検討範囲とした事項
 のほかにも、
 1) インターネット、光ファイバーによる高速通信網等を学校、病院、図書
  館にいかに速やかに普及させるか。
 2) 低所得者、身体障害者等の社会的にハンディキャップを持つ方々の基本
  的通信手段をいかに確保するか。
 など関連する重要な検討課題が数多く存在しており、これらについては、さ
 らに検討を深める機会を設けることが適当であると考えられる。
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