報道発表資料のトップへ トップページへ戻る

インデックスへ ・ 通信政策


発表日  : 5月22日(木)

タイトル :  5/22付:高齢社会におけるユニバーサルアクセスの確保に向けて





    −「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進
     に関する調査研究会」の報告書について−

 郵政省では、情報通信が高齢社会において果たす役割の重要性に鑑み、高齢や
障害にかかわらず、誰もが等しく情報通信システム等を利用しうる環境の整備に
資することを目的として、「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する
調査研究会」(座長:林 喜男 日本人間工学会会長/慶應義塾大学名誉教授)
を開催し、検討を行ってきました。

 研究会では、「高齢者・障害者など誰にでも使いやすいインターネット環境の
整備」、「高齢者向けパソコン通信ネットワーク(シニアネット)活性化」、
「高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション環境のガイドラインづく
り」の3つのテーマを中心に検討を進め、このたび、その検討結果を報告書とし
て取りまとめました(報告書の概要は別添のとおり)。
 本報告書では、パソコンを用いた情報通信の利活用に焦点をあて、利用の状況、
課題等を整理するとともに、

[1]インターネットの普及がもたらす格差を是正するために、高齢者・障害者
  が参画する先導的実証実験を行うこと。

[2]高齢者・障害者のネットワーク参加を促進するために、学習センターの開
  設・運営への支援を公的機関等が行うとともに先行的モデル実験を行うこと。
  また、端末の取得費用等、公的支援を含め全体の料金の低廉化を行い、利用
  を促進すること。

[3]ユニバーサルアクセスを確保するために、公共機関等は、ユニバーサルア
  クセスを指向した情報通信機器等を積極的に使用していくこと。また、ガイ
  ドラインを作成し、企業・団体等に示すこと。

等の提言を行っております。


 郵政省としては、本報告書を受けて、誰もが等しく情報通信を利用しうる環境
が整備され、情報通信の利活用により高齢者・障害者が生きがいの発見や社会参
加を果たすことのできる社会の実現に向けて、努力していくこととします。

                 連絡先:通信政策局情報企画課
                 (担当:狩俣専門職、安永係長)
                     電話 03−3504−4954



              報告書概要
 1. 調査研究会の目的と3つのテーマ 

 本調査研究会は、高齢や障害にかかわらず、誰もが等しく情報通信システム等
を利用しうる環境の整備に資することを目的として設置された。平成7年度の調
査研究会で指摘された事項や、昨今のインターネットの爆発的な普及状況を鑑み、
以下の3つのテーマを設定し、分科会を設けて検討を行った。

 第1分科会:「高齢者・障害者など誰にでも使いやすいインターネット環境の
        整備」

 第2分科会:「高齢者向けパソコン通信ネットワーク(シニアネット)活性化」

 第3分科会:「高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション環境のガ
        イドラインづくり」


 2. 高齢者・障害者の情報通信に関する状況 

(1)パソコン通信利用の状況
   全日本聾唖連盟加盟者と日本盲人会連合加盟者に対して行ったパソコン通
  信の利用率に関する調査によると、それぞれの利用率は、8.1%、4.6
  %という数字であった。(「身体障害者の情報通信システムの利用実態等に
  関する調査報告書(平成6年調査)」郵政省郵政研究所による)

(2)インターネット利用の状況
   インターネットの利用については、国内の高齢者の利用者比率は極めて低
  く、インターネット利用者全体の0.3%を占めるにすぎない。(平成8年
  6月:サイバースペース・ジャパン(株)調査による)
   また、障害者のインターネット利用に関しても、まだ十分とはいえず、パ
  ソコンボランティアの協力を得ながら、いくつかの障害者向けパソコン通信
  ネットワークを通じて、少しづつ利用が始まりつつある状況にすぎない。


 3 高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に向けた取り組みの状況 

(1)利活用の推進に対する支援
   平成5年5月、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者
  利用円滑化事業の推進に関する法律」が制定され、字幕番組等の制作費に対
  する助成制度が創設された。
   また、郵政省は、平成6年度から「高齢化社会における情報通信の在り方
  に関する調査研究会」等を開催し、各種の提言を行っている。その中の提言
  を受けて、金沢市においてはテレビ電話やパソコン通信を利用した実験が平
  成7年より行われている。
   さらに、郵政省通信総合研究所や通信・放送機構において、高齢者・障害
  者向け情報通信機器・システムに関する研究開発が行われている。

(2)高齢者・障害者が主体的に参加するネットワークに関する状況
   高齢者自らが運営するパソコン通信ネットワークとして、米国には「米国
  シニアネット」があり、約2万人の会員が、ネットワークを通じた電子メー
  ルや話し合いのためのフォーラムを行うなどの活動をしている。
   また、韓国には、「オロバン」と呼ばれる全国的な規模の高齢者向けパソ
  コン通信ネットワークがある。
   一方、我が国には、米国シニアネットとの交流等を行っている「コンピュ
  ータおばあちゃんの会」など草の根的に活動しているネットワークが幾つか
  ある。
   また、障害者向けパソコン通信ネットワークの例としては、障害者の社会
  参加と就労を支援している「プロップステーション」などがある。
   これらのネットワークには、高齢者・障害者が主体的に参加しており、生
  き甲斐の発見や社会参加に結びついているとともに、必要な情報の取得にも
  効果的な役割を果たしている。

(3)高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション環境のガイドライン
  の状況
   高齢者・障害者など誰でもが情報通信を自由に公平に利活用でき、その利
  便を享受できるコミュニケーション環境となっていることが極めて重要であ
  る。
   このためには、情報通信機器を使えるようになること(機器のアクセシビ
  リティ)だけでなく、情報源に接続し、必要な情報を取得し、情報を発信で
  きること(情報アクセシビリティ)が高齢者・障害者など誰にとっても、公
  平に確保されていることが必要であり、その実効性を確保していくために、
  ガイドラインが必要である。
   米国においては、リハビリテーション法508条において規定していた
  「電子機器アクセシビリティ」を「電子情報技術アクセシビリティ」と修正
  するなど、アクセシビリティをより広い意味でとらえ、従来の情報処理機器
  へのアクセシビリティの考えを越えた新しいアクセシビリティの指針が必要
  になってきたことを、国全体として認め、そのために積極的な取り組みを進
  めている。
   一方、我が国では、高齢者・障害者の情報処理機器へのアクセスに関する
  取り組みは指針の公表という形で行われているが、情報通信へのアクセシビ
  リティに関する全般的な取り組みはなされておらず、ガイドラインも未整備
  である。


 4 高齢者・障害者の情報通信の利活用に関する課題 

(1)インターネットの普及がもたらす格差の発生

  ○ 行政・企業等の情報提供手段は、従来、新聞・テレビをはじめとする既
   存メディアが中心であったが、今後、これらに加えてインターネットが主
   要な提供手段の一つとなることが予想されている。
    このため、今後、インターネットを利用出来る者と出来ない者との間に
   情報格差が生じるおそれがある。特に、インターネット利用率の低い高齢
   者・障害者においては、そのおそれが大きい。

  ○ インターネットは情報提供手段やコミュニケーション手段としてだけで
   なく、オンラインショッピングや電子決済の手段としての利用が拡大して
   いくことが予想される。
    また、インターネットテレビ電話を使えば、文字通訳者、手話通訳者が
   在宅でも利用できる可能性もある。
    自宅にいながらこうした消費活動などを可能とするシステムの出現は、
   本来、外出が困難なことの多い高齢者・障害者にとって福音であるが、イ
   ンターネットが利用できない者にとっては、社会生活上での格差が拡がる
   ばかりである。

(2)高齢者・障害者のネットワーク参加

  ○ 米国、韓国においては、高齢者自らが運営している高齢者向けパソコン
   通信ネットワーク(シニアネット)がある。これらのシニアネットは高齢
   者の社会参加促進に大きな役割を担っており、我が国でもその普及が期待
   されるが、現在のところ、草の根的な取り組みが行われているに過ぎない。
    また、障害者向けネットワークに関しては、パソコンを活用して障害者
   の社会参加と就労を支援している「プロップステーション」などの例が我
   が国に見られるが、全国的展開が行われるまでには至っていない。

(3)ユニバーサルアクセスの確保

  ○ 様々な身体の衰えや障害を持つ高齢者・障害者にとって、情報通信機器
   などの利用には様々な困難が生じることが多い。情報通信の便益を十分に
   享受するためには、情報通信機器、ネットワーク、アプリケーション、コ
   ンテントに容易にアクセスできる環境の整備が必要であるが、現在のとこ
   ろ、不十分である。


 5 高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する提言 

(1)インターネットの普及がもたらす格差を是正するために

  ○ 高齢者・障害者向けインターネットの実現のため、それぞれの特性を考
   慮した情報通信機器・システムの研究開発、表現メディアの変換によって
   情報の質が変わることへの対策等に関する研究開発を行うこと。
    また、研究開発に当たっては、高齢者・障害者自身が開発の場に参加す
   るなど、高齢者・障害者の意見や経験が活かされるようにすること。

  ○ 高齢者・障害者が参画する先導的実証実験を実施すること。

  ○ 高齢者・障害者にとって有用な情報の充実と情報検索を容易に行える環
   境整備が必要。そのため、情報の提供の充実に対する支援を行ったり、有
   用な情報を公的機関のホームページから検索できるよう、リンク付けを行
   うこと。
    また、情報の形態を高齢者・障害者向けに変換して提供することが、円
   滑に行われるよう著作権の適用について検討すること。

(2)高齢者・障害者のネットワーク参加を促進するために

  ○ 米国シニアネット、韓国オロバン等海外の先進事例の紹介、公共機関へ
   のデモコーナーの開設等による啓発を行うこと。

  ○ 高齢者・障害者向け学習センターの開設、維持運営を支援することが必
   要。そのため、公的機関、民間企業等は場所や機材の提供、運営費用の支
   援などを積極的に行うこと。
    また、学習センターを運営するボランティア活動に対する支援を行うこ
   と。
    さらに、公的機関は、先行的なモデル実験を実施すること。

  ○ 端末等の取得費用、利用料金等、公的支援も含め全体の料金の低廉化を
   行い、利用の促進を図ること。

(3)ユニバーサルアクセスを確保するために

  ○ 公共機関等は、ユニバーサルアクセスを指向した情報通信機器等を積極
   的に使用していくこと。

  ○ ガイドラインを作成し、企業・団体等に示すこと。
    また、高齢者・障害者を含めた関係者が参画して、評価・試験を行う場
   を設け、定期的にガイドラインの見直しを行うこと。

  ○ リレーサービスを実現するために必要な方策について、検討を行うこと。


 「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会」構成員

                           (敬称略、五十音順)
     アンドウ トヨキ
     安 藤  豊 喜  財団法人全日本聾唖連盟 副理事長
     イハラ  マサミ
     伊 原  正 躬  財団法人長寿社会開発センター 専務理事
     オオシマ マリコ
     大 島  眞理子  シニアライフアドバイザー
     オザワ  クニイチ
     小 澤  邦 一  松下電器産業株式会社 研究本部
                健康医療開発推進室 室長
     カガミ  タカシ
     加々見   隆   内閣総理大臣官房 参事官
               (総理府 障害者施策推進本部担当室長)
     キヌガサ ノリオ
     衣 笠  紀 男  日本電気株式会社 第一C&Cシステム
                事業本部 官公市場開発統括部長
     キヨハラ ケイコ
     清 原  慶 子  ルーテル学院大学文学部 教授
     コサカ  ケンジ
     小 坂  健 二  金沢市 福祉保健部長
     コバヤシ ヤスト
     小 林  康 人  富士通株式会社生産システム本部
                生産システム本部 本部長付
     ササキ  トシカズ
     佐々木  敏 一  日本アイ・ビー・エム株式会社
                インダストリー・サービス事業部長
     ササキ  ノブトシ
     佐々木  伸 虔  株式会社日立製作所 理事 情報事業本部次長
     シラベ  カズオミ
      調   一 興  日本障害者協議会 代表
     スズキ  ゴロウ
     鈴 木  五 郎  財団法人全国老人クラブ連合会 常任理事
     タカオカ タダシ
     高 岡   正   社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合
                理事長
     タカハシ ヒロシ
座長代理 高 橋  紘 士  立教大学社会学部 教授
     ハヤシ  ヨシオ
座長    林   喜 男  日本人間工学会会長/慶應義塾大学名誉教授
     マツオ  タケマサ
     松 尾  武 昌  社会福祉法人全国社会福祉協議会 常務理事
     ミズノ  タダシ
     水 野   忠   高齢者・障害者支援情報通信提供開発協議会
                日本電信電話株式会社 理事 
                 通信機器事業推進部長
     ムクノ  ミチコ
     椋 野  美智子  厚生省大臣官房政策課 情報化地域政策推進室長
     ムラタニ マサヒロ
     村 谷  昌 弘  社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 会長
               (社会福祉法人日本盲人会連合 会長)
     ヨシオカ ショウタロウ
     吉 岡  荘太郎  総務庁長官官房高齢社会対策室 参事官



  高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会

              第1分科会構成員
   −高齢者・障害者など誰にでも使いやすいインターネット環境整備−


                          (敬称略、五十音順)
   イクタ  マサユキ
   生 田  正 幸   龍谷大学短期大学部社会福祉科 助教授
   カトウ  マサタカ
   加 藤  公 敬   富士通(株)総合デザイン研究所 デザイン企画部長
   カワハラ キヨシ
   河 原   清    金沢市福祉保健部長寿福祉課 担当課長補佐
   ソネハラ ノボル
   曽根原   登    日本電信電話(株)ヒューマンインターフェース
              研究所主幹研究員
   ソノベ  ヒデオ
   薗 部  英 夫   日本障害者協議会 情報通信ネットワーク特別委員長
   タカハシ ヒロシ
座長 高 橋  紘 士   立教大学社会学部 教授
   タカムラ アキヨシ
   高 村  明 良   筑波大学付属盲学校 教諭
   タケカミ シゲル
   竹 上   茂    (株)日立製作所情報通信事業部高度通信推進
              センター主席エンジニア



  高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会

             第2分科会構成員
  −高齢者向けパソコン通信ネットワーク(シニアネット)活性化−

                         (敬称略、五十音順)
   ウチダ  ヒトシ
   内 田   斉   アライドコンサルティング(株) パートナー
   キヨハラ ケイコ
座長 清 原  慶 子  ルーテル学院大学文学部 教授
   コンドウ ノリコ
   近 藤  則 子  高齢者/障害者の立場でマルチメディアを考える研究会
             事務局長
   コイケ  ジュンイチ
   小 池  純 一  富士通(株)総合デザイン研究所
             インダストリアルデザイン部長
   サカモト マリコ
   坂 本  真理子  YMCA訪問看護ステーション・ピース 事務長
   セキネ  チ カ
   関 根  千 佳  日本アイ・ビー・エム(株)
             スペシャルニーズ・システムセンター 主任
   ツカダ  ケイイチ
   塚 田  啓 一  松下電器産業(株)研究本部
             東京通信システム研究所長
   ホシカワ タケシ
   干 川  剛 史  徳島大学総合科学部 助教授
   ヨネカワ タツヤ
   米 川  達 也  日本電信電話(株)通信機器事業推進部 第二商品部長



  高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会

             第3分科会構成員
    −高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション
           環境のガイドラインづくり−

                         (敬称略、五十音順)
   イゼキ  オサム
   井 関   治   (株)NECデザイン
             ヒューマンインタフェースデザイン部 デザイン課長
   オオタ  フミハル
   太 田  文 晴  松下通信工業(株)マルチメディア・クリエイトセンター
             アプリケーションクリエイト部長
   オザワ  クニアキ
   小 澤  邦 昭  (株)日立製作所情報事業本部事業企画本部
             情報機器アクセシビリティ推進室 室長
   カキウチ ヨシノリ
   垣 内  良 規  富士通(株)総合デザイン研究所
             ソフトデザイン部 プロジェクト課長
   カワイ  ユウスケ
   河 合  洋 祐  (財)全日本聾唖連盟 副理事長
   セキネ  チ カ
   関 根  千 佳  日本アイ・ビー・エム(株)
             スペシャル・ニーズ・システムセンター 主任
   タケナカ
   竹 中  ナ ミ  プロップ・ステーション 代表
   トクダ  テツオ
   徳 田  哲 男  東京都老人総合研究所生活環境部門 主任研究員
   ハマダ  ヒロシ
   浜 田   洋   日本電信電話(株)通信機器事業推進部
             第一商品部第4プロジェクト 主幹技師
   ハヤシ  ヨシオ
座長  林   喜 男  日本人間工学会 会長/ 慶應義塾大学 名誉教授
   マキタ  カツスケ
   牧 田  克 輔  (社福)日本盲人会連合 参与・情報部長



トップへ