高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション環境のガイドライン


1 目 的
 高齢者・障害者が現在及びこれから出てくる情報通信ネットワークを利用し、様々な情報源に接続し、必要な情報を取得し、利用するとともに情報を作成し発信する(ここでは、これらを「情報アクセシビリティ」と呼ぶ。)上での障壁を、可能な限り無くし、高齢者・障害者が情報通信を円滑に利活用できるようなコミュニケーション環境を社会的・技術的に築き、もって高齢者・障害者の社会参加の促進に寄与することを目的とする。

2 基本方針
2.1 基本的考え方
 このガイドラインは、次の基本的考え方に基づいてつくられたものである。
(1)開かれたコミュニケーション環境を提供する社会に向けてのガイドラインづくり
 ガイドラインには、単に技術的側面だけでなく、社会的意識やガイドラインの運用などについても記述する。

(2)ユニバーサルアクセスが保障されたコミュニケーション環境を整備するため、情報通信機器、ネットワーク、アプリケーションソフトウェア、コンテントの情報アクセシビリティに関するガイドラインについて定める。

(3)段階的アプローチの必要性
 ガイドラインの策定にあたっては、広く利用者及び関係者の意見を聞きながら、実効の上がるように段階的なアプローチで定めていくことが必要である。

2.2 対象とする情報通信機器、ネットワーク、アプリケーションソフトウェア、コンテント
 ガイドラインは、下記の情報通信機器、ネットワーク、アプリケーションソフトウェア、コンテントを用いて、情報の作成・情報源への接続・情報の取得等に必要な機能について定める。
(1)情報通信機器  :パソコンを用いた情報通信機器、ファクシミリ等
(2)ネットワーク:パソコン通信ネットワーク、インターネット、ISDN等
(3)アプリケーションソフトウェア

:情報の作成・検索、メールの送受信を行うプログラム等
(4)コンテント:パソコン通信ネットワークやインターネットのWWWサーバ等で提供するコンテント

3 ガイドライン
 情報通信に関連するすべての関係者は、高齢者・障害者の利用に留意したコミュニケーション環境の確保に努めなければならない。また、以下のガイドラインを尊重するとともに、高齢者・障害者の情報アクセシビリティが確保されることが、社会的にも常識となるように、各々が社会的意識の醸成に努めることが重要である。

3.1 情報通信機器、ネットワークの情報アクセシビリティに関すること:
(1)通信環境設定機能
 通信速度・回線種別などの通信環境のうち、基本的な通信環境の設定が、一つの指定・動作で行えるような機能を備えていること。

(2)リセット機能の具備
 通信環境設定途中や通信中に、いつでも初期状態に戻すことのできるリセット機能を備えていること。

(3)通信状態表示機能
 ネットワークや通信相手との接続過程が、画面表示、音声等の方法で分かるようになっていること。

(4)特定相手先設定機能
 少なくとも一つの特定相手先へは、一つの指定・動作で接続できること。

(5)反復接続機能
 一度入力した接続相手番号、接続相手アドレスなど接続に必要な相手先の情報を登録し、再利用できるようになっていること。

(6)多重表現による不在通知の具備
 ファクシミリ受信時に不在通知をおこなう場合には、音声による通知の他に、ファクシミリメッセージによる通知方法を備えていること。

3.2 アプリケーションソフトウェアの情報アクセシビリティに関すること:
(1)カスタム化できるユーザ・インタフェースの提供
 高齢者・障害者の特性に応じたニーズに対応して、フォント・サイズ(文字の大きさ)、メニューの並び方などのユーザ・インタフェースのカスタム化(個人が使いやすいようにあつらえること)ができること。

(2)一貫したアプリケーションソフトウェアの提供
 少なくとも同一のオペレーションシステム(OS)で使用されるアプリケーションソフトウェアには、操作手順やふるまい(操作に対応した画面の動き等)等に一貫性を持たせること。

(3)選択できる出力方法の提供
 高齢者・障害者が点字、手話など自分の求める方法で利用できるように、テキスト、音、グラフィックスなど多様な出力方法を選択できるようにすること。

(4)選択できる入力方法の提供
 高齢者・障害者が自分の求める方法で利用できるように、複数の入力手段を選択できるようにすること。

(5)既存のコミュニケーション支援技術との両立性の確保
 既存のコミュニケーション支援技術(スクリーン拡大や音声入出力ユーティリティ等)が利用できるアプリケーションソフトウェアを改版する場合には、引き続きそれらが利用できるようにすること。

3.3 コンテントの情報アクセシビリティに関すること:
 高齢者・障害者が必要とするコンテントは、高齢者・障害者が選択・取得・理解できる形式のものであることが必要である。
(1)代替説明手段の具備
 静止画像又は動画像によって表現される場合には、その内容を説明するテキストを備えること。

(2)代替表現手段の具備
 オーディオクリップを用いて音声によって表現される場合には、同じ内容を表現したテキストを備えること。

(3)代替選択手段の具備
 リンク先の選択をイメージマップ(リンク先を絵などのイメージで画面上に表示し、該当の場所をマウスでクリックすることにより、選択できるようにしたインタフェース。)によって行う場合には、テキストによる選択手段も備えてあること。

(4)リンク先のアクセス方法の明確化
 他のコンテントとのリンクが行われている場合には、リンク先へアクセスする方法が明確になっていること。

3.4 問い合わせ窓口の設置に関すること
 情報通信機器、ネットワーク、アプリケーションソフトウェア、コンテントを提供するものは、自社製品、サービス等に関する問い合わせ窓口を用意し、説明書、広告等に明示すること。

4 ガイドラインの運用
(1)ガイドライン作成サイクルの維持・活性化と改訂
 ガイドラインは、社会の変化、技術の変化などに適応できるものでなければならない。また、ガイドラインに関連する人やコミュニケーション環境は、極めて多岐にわたっている。
 これらのことを考慮すると、ガイドラインをつくり、使い、評価し、フィードバックしていくサイクルを、常に維持・活性化し、本ガイドラインを、一定期間後に見直し、改訂することが必要である。

(2)評価・試験への高齢者・障害者の参画
 利用者である高齢者・障害者が参画した評価・試験を進め、そのニーズを尊重して、本ガイドラインをより充実させていくことが望ましい。

(3)公共目的の情報への適用
 公共機関等が、公共の目的のために作成し提供する情報は、本ガイドラインに従った情報アクセシビリティが確保されたものとするよう努める必要がある。


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