(1) |
本ガイドラインで使用する基本的用語を定めるものであるが、電気通信事業を営む者が取り扱う個人情報を広く対象とするため、電気通信事業法の用例とは必ずしも一致しない。
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(2) |
「電気通信事業者」とは、電気通信事業法上は、電気通信事業を営むことについて、許可、届出、登録という行政上の手続を経た者をいうが、同じサービスを提供しながら本来行わなければならない手続を経ていないという理由でガイドラインの対象外となるのは不合理であるので、本ガイドラインでは、こうした手続の有無にかかわらず、電気通信事業を営む者を対象とすることとした。なお、電気通信事業法の適用除外とされている同法第90条第1項各号に定める事業を営む者についても、同法第4条(秘密の保護)の規定の適用があり個人情報保護の必要性に差はないことから、本ガイドラインの対象とすることとした。
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(3) |
電気通信事業者の事業の中心は、電気通信役務(電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の用に供すること。)を他人の需要に応じて提供することであるが、それ以外にもこれに付随するサービスを行っており(電話帳発行業務等はこれに当たる。)、これらの業務の過程において取り扱う利用者の個人情報についても適正な取扱いが要請されることから、これらを含めたものを「電気通信サービス」とし、ガイドラインの対象とすることとした。
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(4) |
「利用者」とは、電気通信事業法上は、電気通信事業者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者をいうが、加入電話にみられるように契約者でなくとも電気通信サービスの利用は可能であることから、これらの者の個人情報をも保護するため、単なる電気通信サービスの利用者を「利用者」としてガイドラインの対象とすることとした。
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(5) |
「加入者」とは、電気通信事業法上の「利用者」に該当する者をいう。
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(6) |
電気通信事業者が取り扱う個人情報には、電気通信サービスを提供する上で収集するもの、その他の業務へ活用するために収集するもの、また第三者から収集するもの等があるが、個人情報保護の趣旨から、収集目的や収集の態様にかかわらず、個人に関する情報を広く対象とすることとした。また、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と照合することにより当該個人を識別できるものも、「特定の個人が識別され得るもの」として保護の対象とする。他方、当該個人が識別できない場合には個人の権利利益を侵害するおそれが低いので保護の対象とはしないこととした。
なお、通信の秘密に属する事項については、個人の情報であるか、法人その他の団体の情報であるかの区別なく保護されるものであることから、法人その他の団体に関するものも保護も対象となる。
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(7) |
プライバシー権の概念には、単に個人情報の漏えい等を防ぐということだけでなく、自己に関する情報の流れをコントロールすることを保障することも含まれると考えられており、その場合の意思決定の主体を「情報主体」として示した。
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(1) |
本条は、個人情報の収集に関する原則を定めており、OECD8原則の「収集制限の原則」(個人データの収集には制限を設けるべきであり、いかなる個人データも、適法かつ公正な手段によって、かつ適当な場合には、データ主体に知らしめ又は同意を得た上で、収集されるべきである。)及び「目的明確化の原則」(個人データの収集目的は、事前に明確化されなければならず、その後のデータ利用は、当該収集目的の達成に限定されるべきである。)に対応する。
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(2) |
電気通信事業者が個人情報を収集できる場合を電気通信サービスの提供上必要な場合に限ることにより、不必要な個人情報の収集を防ぐこととする。ただし、「電気通信サービスを提供するため必要な場合」には、現在提供している電気通信サービスのために直接必要な場合に限らず、それと関連性を有する場合(例えば、新サービス提供のためのアンケート調査を行う場合等)も含まれる。
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(3) |
「できる限りその目的を特定」するとは、何の目的で個人情報を収集し、どのように利用するかをできるだけ具体的に明確にするという趣旨である。したがって、単にサービスの提供上必要という抽象的な目的では足りず、例えば、次のように具体的に特定すべきである。
- 加入者の管理
加入者の氏名、住所、生年月日、ID、パスワード
契約日、契約店舗
端末機器等の電気通信設備の種類、設置場所
請求書送付先(氏名・住所)
- 課金計算
サービスの種類
発信電話番号(発信ID)
着信電話番号(着信ID)
通信年月日、通信開始・終了時刻(通信時間)、伝送情報量
課金時間(課金度数、課金情報量)
- 料金請求
料金請求額
振替先金融機関・口座番号、
決済クレジットカード会社名、カード番号
支払い状況
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(4) |
不必要な個人情報の収集を防ぐという観点から、収集する個人情報の範囲を特定された収集目的を達成するために必要最小限のものに限るものとした。したがって、例えば、加入者管理目的といえども、加入者の収入や学歴等は特段の理由のない限り収集目的達成に必要とはいえず、収集は制限される。
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(5) |
個人情報の収集は、適法かつ公正な手段により行わなければならず、収集目的を偽る等の不公正な手段によることは許されない。
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(6) |
センシティブとされる個人情報(思想、信条及び宗教に関する個人情報や社会的差別の原因となるおそれのある社会的身分に関する個人情報)については、原則として収集を禁止することとする。しかし、例えば、移動体通信事業者が契約締結の際に本人確認のため提示を要求する免許証や健康保険証にはセンシティブな情報が含まれることがあり、また、宅内機器の割引使用料を適用するために利用者が身体障害者である旨の情報を得ることもある。加入者の使用言語などの情報も場合によれば社会的差別の原因となる事項といえるが、国際通信事業者がそのサービス向上のためにこれを収集することは可能というべきであろう。さらに、電気通信事業者が加入者と紛争関係に立った場合に自己の権利を守るためにその者に関する個人情報を広く収集する必要がある場合もある。したがって、これら社会的に相当と認められる場合には例外を認めることとした。なお、この場合においても、こうした情報に基づいて、電気通信事業者が情報主体に対して不当な差別的取扱いをすることは許されず、電気通信事業法上も同趣旨の規定がある(同法第7条及び第34条。なお、同法第90条参照)。
なお、本ガイドライン第3条第4項のほか、第5条第6項、第12条第2項及び第13条第3項において、「してはならない」という表記を用いているが、これは、特にセンシティブな個人情報の収集、利用・提供が不適切である場合には、人権侵害が甚だしいケースが想定されることから、こうした情報の取扱いについて、特に注意しなければならないという趣旨を反映したものである。
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(7) |
個人情報を本人から直接収集する場合には、収集目的等を事前に通知するものとすることも考えられるが、全ての場合にこのような通知を要求することは、不特定多数の者を相手とする電気通信事業の実態に照らし、過大な負担となり得ること、収集を電気通信サービスの提供上必要な場合に限り、かつその目的を特定することを要請していることで実質的な保護が図られると思われることから、事前通知義務までは課さないこととした。
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(8) |
個人情報を本人以外の第三者から収集する場合には、情報主体がその事実を了知しない場合が多く、思わぬ権利利益の侵害が生じることも考えられるので、自ら又は収集先である第三者において情報主体の同意を得ることを原則とした。電気通信サービスにおいては、みなし契約やローミング、相互接続の関係で他の電気通信事業者から加入者情報を得る必要がある場合があるが、この場合も契約約款で規定するなどして加入者の同意を得ておくべきである(なお、その同意は、収集目的に照らし必要最小限に限って得るようにするのが適当である。)。ただし、重要な契約締結に先立ち信用調査情報を入手する場合等、個別に同意を得るのが非常に困難で事業者に過大な負担となる一方、情報主体の権利利益を不当に侵害するおそれが低いと考えられる場合もあることから、かかる場合には、「正当な理由」があるものとして、同意を得る必要はないものとした。
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(1) |
本条は、個人情報の利用及び外部提供に関する原則を定めており、OECD8原則の「利用制限の原則」(個人データは、明確化された目的以外の目的のために開示、利用その他の使用に供されるべきではないが、データ主体の同意がある場合、又は法律の規定がある場合はこの限りでない。)に対応するものである。
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(2) |
個人情報が収集目的以外に利用・提供された場合、収集目的を制限した趣旨が失われ、個人の権利利益が侵害されるおそれがあるため、目的外利用・提供を原則として禁止した。
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(3) |
電気通信事業者が収集した個人情報については、電気通信サービスの円滑な提供のため、又は本人の利益や社会公共の利益のために目的外利用・提供が要請される場合もあるので、そうした場合を例外として定めることとした。ただし、この場合でも、情報主体又は第三者の権利利益を不当に害するおそれがあるときは、利用・提供してはならないとした。なお、旧ガイドラインにあった「情報主体の保護に値する正当な利益が害されるおそれがない場合であって、収集目的を達成する上で必要な場合」は第2項本文に相当するため、規定からは外すこととした。
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(4) |
統計資料を作成する場合等、個人が識別・特定できないように加工した上で利用・提供する場合は、もはや個人情報としての保護の対象から外れるものと解される。
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(5) |
「法令の規定に基づき、利用又は提供しなければならないとき」とは、例えば、裁判官の発付する令状により強制処分として捜索・押収等がなされる場合や法律上の照会権限を有する者からの照会(刑事訴訟法第197条第2項、弁護士法第23条の2等)がなされた場合である。前者の場合には、令状で特定された範囲内の情報を提供するものである限り、提供を拒むことはできない。これに対し、後者の場合には、原則として照会に応じるべき義務を負うが(義務の履行を強制する方法はない。)、電気通信事業者には「通信の秘密」を保護すべき義務もあることから、「通信の秘密」に属する事項(通信内容並びに通信当事者の住所・氏名、発受信場所及び通信年月日等通信の構成要素の情報)について提供することは原則として適当ではない。他方、個々の通信とは無関係の加入者の住所・氏名等は、「通信の秘密」の保護の対象外であるから、基本的に法律上の照会権限を有する者からの照会に応じることは可能である。もっとも、個々の通信と無関係かどうかは、照会の仕方によって変わってくる面があり、照会の過程でその対象が個々の通信に密接に関係することがうかがわれる場合には、通信の秘密として扱うのが適当である。いずれの場合においても、情報主体等の権利利益を不当に侵害することのないよう提供等に応じるのは、令状や照会書等で特定された部分に限定する等提供の趣旨に即して必要最小限の範囲とすべきであり、一般的網羅的な提供は適当ではない。
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(6) |
「情報主体の同意があるとき」は、一般的に本人の権利利益を侵害することはないので目的外利用・提供禁止の例外とした。「情報主体の同意」は、契約約款に規定する等により事前に得ることも多いと考えられるが、得ていない場合は、目的外に利用・提供する都度同意を得ることになる。同意を得るに当たっては、提供先、提供される個人情報の範囲、提供先での利用目的、提供不同意の場合の不利益等について明らかにすることが望ましい。
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(7) |
電気通信事業者は、電気通信役務という公共性の高い役務を提供しており、その役務の遂行に必要な限度で内部利用する場合には、相当な理由のあることを条件として目的外利用が許されるものとした。「相当な理由があるとき」とは、社会通念上、客観的にみて合理的な理由のあるときをいい、これに該当する場合としては、例えば、新しいサービスの検討のために収集した個人情報を利用すること等が考えられる。他方、相互接続の過程で知り得た加入者の情報を自社の他部門に流用することは、公正競争条件上の問題もあり、適当ではない。
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(8) |
「情報主体以外の者に提供することが明らかに情報主体の利益になるとき」とは、例えば、加入者が未成年である場合に、親権者が当該未成年者の所在を確かめるために登録されている住所を知らせて欲しいとの要請に応じるときなどが考えられる。ただし、この場合でも、未成年者が明確に拒否の意向を明らかにしている場合等、個人情報を提供することにより情報主体の権利利益が不当に害されるおそれがある場合はこの限りでない。また、利用明細等「通信の秘密」に属する事項については、緊急避難等の違法性阻却事由がない限り外部提供は適当ではない。
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(9) |
「その他個人情報を提供することについて特別の理由があるとき」とは、「相当な理由があるとき」よりも厳しく、単に合理的な理由があるというだけでなく、特に利用・提供する必要性が高い場合をいい、例えば、捜査機関からの要請により、現に脅迫電話が行われている場合又は緊急避難に該当する場合に逆探知を行うこと、緊急通報用電話(110番、119番)に接続された緊急通話について逆探知を行うこと、電気通信事業者自身が被害者となる場合に加害者たる利用者に関する個人情報を捜査機関に提供すること(この場合、「通信の秘密」に属する事項については正当防衛の要件を満たす必要があると考えられる。)等がある。また、旧ガイドラインにあった「情報の提供を受ける者の正当な利益を確保するため必要な場合」又は「公共の利益のために必要がある場合」もここに含めて考えることができ、本ガイドライン第12条に規定する不払い者情報の交換等もこれに該当すると考えられる。
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(1) |
本条は、個人情報の管理に関する原則を定めており、OECD8原則の「データ内容の原則」(個人データは、その利用目的に沿ったものであり、かつ利用目的に必要な範囲で正確、完全であり、最新なものに保たれなければならない。)及び「安全保護の原則」(データは、その紛失若しくは無権限アクセス・破壊・使用・修正・開示の危険に対し、合理的な安全保障措置により保護されなくてはならない。)に対応する。
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(2) |
誤った個人情報、現行化されていない個人情報が利用・提供されたときは、その個人の権利利益が侵害されるおそれが生じるので、個人情報は、利用目的に応じ正確かつ最新の状態に保たれる必要がある。なお、ここで「収集目的」ではなく「利用目的」としたのは、個人情報を当初の収集目的以外の目的のために利用できる場合があること(本ガイドライン第4条第2項)を考慮したためである。
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(3) |
収集された個人情報については、その目的を達成すれば保存の必要性がなくなることから速やかに消去すべきであるところ、その趣旨を徹底する観点から、利用目的に応じ保存期間を定めることを原則としている。こうすることは、正確性、最新性確保の観点からも望まれるほか、個人が不利益を被る機会を減少させるためにも有用である。ただし、個人情報によっては、一律に保存期間を定めることが難しいものもあり、全ての個人情報について保存期間を定めることまでは要求しないこととする。しかし、この場合でも、利用目的を達成すれば遅滞なく消去すべきものとする。また、保存期間内であっても利用目的を達成した後は消去するものとする。
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(4) |
保存が求められる「法令の規定」としては、例えば、法人税法(昭和40年法律第34号)第126条、法人税法施行規則(昭和40年大蔵省令第12号)第59条や電話加入権質に関する臨時特例法施行規則(昭和33年郵政省令第18号)第4条等がある。
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(5) |
「情報主体の同意があるとき」とは、個別の同意がある場合のほか、契約約款等で包括的に定める場合(ただし、その内容が合理的な場合に限る。)も含む。また、明示の同意に限らず、黙示の同意も認められる。これらに該当する場合としては、例えば、情報主体から特に保存しておくよう要請があった場合や電子メールにつき利用者の設定により受信後もメールサーバーから削除しないで残しておくような場合等が考えられる。
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(6) |
「業務の遂行に必要な限度で個人情報を保存する場合であって、当該個人情報を消去しないことについて相当の理由があるとき」とは、例えば、過去に料金を滞納し利用停止となった者の情報を契約解除後においても保存しておくこと等が考えられる。
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(7) |
「消去しないことについて特別の理由があるとき」とは、例えば、捜査機関から刑事事件の証拠となり得る特定の個人情報(「通信の秘密」に該当するものを除く。)について保存しておくよう要請があった場合等が考えられる(本ガイドライン第8条解説参照)。
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(8) |
情報の安全保護については、第一種電気通信事業者及び特別第二種電気通信事業者に対し、その電気通信事業の用に供する事業用電気通信設備を事業用電気通信設備規則(昭和60年郵政省令第30号)に定める技術基準に適合するよう維持する義務を課し(電気通信事業法第41条)、技術基準適合命令(同法42条)、管理規程の制定・届出義務(同法第43条)及び電気通信主任技術者の選任義務(同法第44条から第48条まで)により、かかる義務を担保しているところであるが、かかる義務の課されていない一般第二種電気通信事業者においても一定の保護措置を講ずるよう努めるものとしている。特に情報通信ネットワークにおける不正アクセス対策の一環として、情報通信ネットワーク安全信頼性基準等の基準を活用することが望ましい。
なお、情報通信ネットワーク安全・信頼性基準は、ネットワークへの不正アクセスに対するセキュリティ対策に関する部分が平成9年に追加された。(以下、該当部分の抜粋)
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(9) |
電気通信事業法第4条第2項において、電気通信事業に従事する者に対し、「通信に関して知り得た他人の秘密」を守るべき義務が課されているが、個々の通信に関係ない個人情報については、かかる守秘義務は及ばないと考えられる。しかし、個人情報保護の観点からは、同様に保護することが適当であることから、電気通信サービスに従事する者及び電気通信事業者から個人情報の処理の委託を受けた者の業務に従事する者について、個人情報を適正に取り扱うべき責務があることを明らかにした。
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(1) |
本条は、情報主体の求めによる情報の開示・訂正・削除に関する原則を定めており、OECD8原則の「公開の原則」(個人データの存在、性質及びその利用目的等とともに、データ管理者の住所等をはっきりさせ、データ主体たる個人が容易にアプローチできるようにすること。)、及び「個人参加の原則」(個人は、自己に関するデータの存在を知る権利やその開示請求権、異議申立て等の権利を有すること。)に対応する。
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(2) |
情報主体が、自己に関する情報に懸念を抱いたような場合に、その情報について自ら確認することを可能とするため、電気通信事業者は、自己に関する情報の開示の請求に応じる必要がある。
なお「遅滞なく」とは、事情の許す限り最も速やかにという意味であり、正当な又は合理的な理由に基づく遅滞は許されると解されている。したがって、例えば、同一主体からの大量の開示請求があった場合には開示が遅れてもやむを得ない。
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(3) |
「業務の遂行に著しい支障を及ぼすとき」とは、例えば、請求の対象が特定されておらず、これに応じることが過大な負担となるような場合や電気通信事業者において独自に付加した信用評価等の開示が請求された場合をいい、このような場合は例外的に開示請求の全部又は一部に応じなくてもよいこととした。
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(4) |
「個人の生命、身体、財産その他の利益を害するとき」とは、例えば、情報主体に関する情報の中に第三者の情報が含まれており、これを開示することが当該第三者の不利益となるような場合が考えられる。
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(5) |
第2項各号に該当し、個人情報の全部又は一部をその情報主体に開示しない場合は、情報主体にその事情について十分に説明を行い、理解を求めることが望ましい。
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(6) |
情報主体等から、自己に関する個人情報に関して訂正等の請求があった場合には、遅滞なく調査を行うなど誠実に対応した上、当該個人情報に誤りがあったり、保存期間を経過していることが判明したりするなど、訂正等をする必要があると認めるときは、訂正等を行うものとする。
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(1) |
第3章の「各種情報の取扱い」においては、第2章の「個人情報の取扱いに関する基本原則」の内容を補足し、その適用関係の明確化を図る観点から、電気通信事業者が取り扱う個人情報のうち、問題となることの多い情報について具体的にどう取り扱うべきかを規定することとした。
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(2) |
通信履歴は、通信の構成要素であり、電気通信事業法第4条第1項の「通信の秘密」として保護される。したがって、これを記録することも「通信の秘密」の侵害に該当し得るが、課金、料金請求、苦情対応、自己の管理するシステムの安全性の確保その他の業務の遂行上必要な場合には正当業務行為として少なくとも違法性が阻却されると考えられる。
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(3) |
電気通信事業者は、利用明細(本ガイドライン第9条第1項参照)作成のため必要があるときは、加入者の同意の有無にかかわらず、通信履歴を記録し保存することができると解される。電気通信事業者が利用明細を作成するために通信履歴を記録・保存することは、料金請求の根拠を示し得るようにするという点で、債権者たる電気通信事業者の当然の権利であり義務でもあると考えられるから、加入者の同意がなくとも、必要な限度で記録・保存することは正当業務行為として許されると考えられる。ただし、加入者が通信履歴を残さないことを特に望んだ場合には、これに従って記録・保存しない扱いをすることは可能であると考えられる。この場合、当該加入者は、信義則上、料金の明細について争うことはできなくなる。
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(4) |
いったん記録した通信履歴は、記録目的に必要な範囲で保存期間を設定することを原則とし、保存期間が経過したときは速やかに通信履歴を消去(個人情報の本人が識別できなくすることを含む。)するものとした。この保存期間については、提供するサービスの種類、課金方法等により各電気通信事業者ごとに、また通信履歴の種類ごとに異なり得るが、その趣旨を没却しないように限定的に設定すべきであると考えられる。また、保存期間を設定していない場合には、記録目的を達成後、速やかに消去するものとした。ただし、本人の同意がある場合や法令の規定による場合には例外的に保存し続けることができると考えられる。また、自己又は第三者の権利を保護するため緊急行為として保存する必要がある場合も「その他特別な理由」に該当するものとして保存が許されると考えられる。
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(5) |
発信者を探知するための通信履歴の解析は、目的外利用であるばかりでなく「通信の秘密」の侵害となることから、本ガイドライン第4条第2項各号に該当する場合でなければ行うことはできないと解される。例えば、インターネットのホームページ等の公然性を有する通信において、違法・有害情報が掲載され、その発信者に警告を行わないと自己のサービス提供に支障を生じる場合(自己のサービスドメインからの通信がアクセス制限される場合等)に、自己が保有する通信履歴などから発信者を探知することは、同項第3号にいう「相当な理由があるとき」として許されるものと解される。
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(6) |
通信履歴は、「通信の秘密」として保護されるので、裁判官の発付した令状に従う場合等、違法性阻却事由がある場合を除き、外部提供は行わないこととする。法律上の照会権限のある者からの照会に応じて通信履歴を提供することは、必ずしも違法性が阻却されないので、原則として適当ではない(本ガイドライン第4条解説参照)。
なお、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)に該当するような大量の無差別のダイレクト・メールが送りつけられ、自社のネットワークやサービスが脅威にさらされており、自己又は他人の権利を防衛するため必要やむを得ないと認められる場合には、発信元の電気通信事業者に通信履歴(発信者のIPアドレス及びタイム・スタンプ等)を提供することは許されると考えられる。
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(1) |
電話番号情報は、個人情報ではあっても、一般に公開が要請され、電話帳又は電話番号案内によって知り得るものとなっている。これは、ある人に電話をかけたいというときに電話番号が分からなければコミュニケーションをすることができないからである。ただし、こうした要請も加入者のプライバシーに優先するものではないので、電気通信事業者としては、加入者に対して電話帳への掲載又は電話番号の案内を省略するかどうかの選択の機会を与えるべきである。
なお、電話サービス以外の通信サービスにおけるID(電子メールアドレス等)については、電話番号ほどの公開の要請はないのが現状であるため、本条の対象とはしないこととした。したがって、これらの取扱いについては、第2章の基本原則によることとなる。
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(2) |
電話帳には、加入者を特定するための最低限の情報は掲載されるべきであり、氏名、住所、電話番号については掲載される必要があるが、それ以上の個人情報を掲載するのは適当ではない(もとより、職業別電話帳に職業を記載するのは可能である。)。また、住所の一部を削除するなどのオプションを設けることなども検討に値する。
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(3) |
従来、電話帳は紙媒体で、電話番号案内はオペレーターによりなされるのが通常であったが、電子計算機処理が進む中で、CD−ROMによる電話帳、パソコン通信やインターネットによる電話番号案内といった形態が出現しつつある。こうしたものは、利便性を向上させるという点では利用者の利益になるが、他方、加入者のプライバシーへの配慮が必要となる。例えば、50音別電話帳のCD−ROM化についていえば、電子データの加工・処理による個人情報の不当な二次利用の防止という観点から、データのダウンロードや逆検索の機能を設けないといったことが少なくとも必要であろう。他方、CD−ROM化に際して、改めて掲載の可否の意向を確認する必要があるかどうかについては、ヨーロッパ各国その他諸外国の動向にも注意しつつ、社会的コンセンサスの有無を判断していく必要がある。なお、職業別電話帳については、掲載情報が社会的に広まることについてメリット大きく、また、同情報には個人情報として保護されるべき内容も多くはないことから既にCD−ROMでの提供やインターネット上での提供が実施されている。
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(4) |
電話番号情報の外部提供については、外部提供の一般原則による。例えば、この通話における発信者電話番号に対応する加入者は誰かという照会の場合は、「通信の秘密」に属する事項に関するものなので裁判官の発付する令状等が必要であるが、この電話番号に対応する加入者は誰かといった照会であれば、「通信の秘密」を侵害するものではないので、法律上の照会権限を有する者からのものであれば、応じることも可能である。
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(5) |
電話帳発行又は電話番号案内業務を行おうとする者に対して提供することは、目的の範囲内の行為として許されると考えられる。この場合における提供の媒体については、磁気媒体での提供も可能と考えられる。ただし、被提供者に対しては、情報の利用を電話帳発行事業又は電話番号案内事業に限定すること、本来の電話帳等と同等の形態を維持すること、情報流出防止のための措置を講ずること等、情報の取扱いに関する協定等を締結する必要がある。
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