「シェアリングエコノミーの進展ともたらされる変化」

■シェアリングエコノミーとは

 シェアリングエコノミーとは「モノ」、「空間」、「スキル」、「移動」、「お金」などの個人等が保有する活用可能な資産等を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活動です。

図表1 シェアリングエコノミーの5類型
(出典)総務省「平30年版情報通信白書」

 代表的なサービスには個人の所有する住宅の空き部屋等を宿泊場所として貸し出す民泊サービス、個人の所有する自家用車に乗って目的地まで移動できるライドシェアサービス、個人に家事等の仕事・労働を依頼できるサービス、個人の所有する場所を駐車場として利用できるサービス、利用していないモノを個人間で共有するサービス等があり、シェアリングサービスの数も増加傾向にあります。

図表2 サービスを開始したシェアリングサービスの数の推移
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」
 

■シェアリングエコノミーとICT

 こうしたシェアリングエコノミーの拡大の背景にはICTの進展、具体的にはICTプラットフォームが形成されるまではできなかった個人と個人との間での取引が実現したことが挙げられます。
 従来ICTプラットフォームは広告やEコマース(決済)など主としてお金の流通やそれを補完する情報の流通に係る機能を提供し、その上で企業対企業の取引(BtoB)や企業対個人の取引(BtoC)が発展してきました。
 インターネット、さらにはスマートフォンが普及することによりこれまでインターネットに接続されていなかった人やモノの莫大なデータが集まり、新たなプラットフォームが形成されています。プラットフォームではユーザーの消費行動や属性と、商品・サービスの稼働状況を分析することで、需要と供給の関係が「見える化」され、個々のユーザーのニーズを把握するとともに、そのニーズに対応することが可能になります。

図3 プラットフォームのイメージ図
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」
 

 このようなプラットフォームを企業が消費者に提供することで、そのプラットフォームを利用して消費者自身が生産者になることが可能となり、個人対個人(CtoC)のシェアリングサービスが拡大してきました。

図表4 新たなICTの進展によるビジネスエコシステムの変化
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」

■認知と利用における課題

 現在我が国におけるシェアリングエコノミーの認知度は高まりつつあり、特に民泊サービスについて31.5%、駐車場のシェアリングで23%、ライドシェアで14.2%となっており、シェアリングエコノミーが一般の人にも知られるようになってきています。一方でシェアリングサービスを知っている人でも利用経験がある人の割合は欧米と比較してまだ全体的に少ない状況にあります。

図表5 シェアリングサービスの利用経験(国際比較)(シェアリングサービスを知っている人のみ)
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」

 シェアリングサービスを利用する際に確保されているべきものについてアンケートをした結果、最も多かった回答は、サービス事業者による保証や介入の仕組みがあることでした。
 内閣官房「シェアリングエコノミー検討会議中間報告書−シェアリングエコノミー推進プログラム」によれば、「実名利用のソーシャルメディアの普及に伴って、これまで顔が見えず、信用度を推し量りにくかったインターネットの向う側の個人等について、一定程度の信用度が可視化され、個人等によるサービスも、選別して利用することができるようになった」とあります。
 相手の名前やプロフィールが確認できること、連絡手段が確保されていることなど、利用者のニーズに合わせたプラットフォームの構築が進むことで、シェアリングサービスは今後さらに普及が進むと考えられます。

図表6 シェアリングエコノミーを信頼して利用するための条件(複数回答)(日本)
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」

■シェアリングエコノミーがもたらす変化

 こうしたシェアリングエコノミーの進展は、既存サービスにない付加価値や新たなサービスを創出します。例えば民泊サービスにおいては、ホストとゲストの間での鍵の貸し借りする必要がありますが、ホストの居住地と離れた別荘等を貸し出す場合や深夜にゲストが到着する場合等、直接鍵の受け渡しをすることが難しい場合も存在します。そこで、ホストから鍵を預かり、ゲストに貸し出すビジネスに対するニーズが生まれています。また、物件を民泊用にリノベーションするためのビジネスの拡大も考えられ、実際に、既にサービスとして提供されています。
 シェアリングエコノミーが拡大することによって、既存サービスのシェアを奪うのではないかという議論もありますが、こうしたサービスの提供が資産の稼働率を上げることにより、無駄の削減や稼得機会の向上が期待されます。
 また、組織に属して働きつつ個人としてシェアリングエコノミーのサービスを提供するなど多様な働き方が可能に なるほか、社会参加、労働参加の機会を増やすことで、女性、高齢者、障害者のようにこれまで我が国の職場環境において活躍しにくかった人々にも活躍の場が生まれることが期待されます。

問い合わせ先

情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
Mail: mict-now★soumu.go.jp
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