第2回有識者コラム

  1. トップ
  2. 粟飯原理咲

ソーシャルメディアは女性がお好き? ~女性のウェブサイト利用動向粟飯原理咲(アイランド株式会社 代表取締役)

粟飯原理咲

粟飯原理咲アイランド株式会社
代表取締役

不況がとりまく厳しい経済環境のなか、情報通信市場では、既存メディアが収益を減少させる一方で、インターネット・メディアが台頭している。なかでも、ネット通販やブログ、SNSなどのCGMサービスの伸びがめざましい―。平成21年度版情報通信白書・第2章第1節では、こうした形で、ソーシャルメディアの飛躍に触れている。

では、こうしたソーシャルメディアの飛躍のなかで、男女間の利用動向にはどのような差異があるのだろうか。本コラムでは、女性向けライフスタイルメディアに携わる立場から、『女性とソーシャルメディア』について、ここ最近の利用動向を探ってみたい。

■人気女性サイト、上位3位のうち2サイトがCGM型“投稿”サイト

国内主要女性向けサイトを対象に、認知率、訪問率、定期利用率、満足度などの指標で利用者調査を行った「女性サイト比較調査2008」(※1)によると、総合評価上位3サイトは以下の通りだ。

1位:「クックパッド」
2位:「ニッセン」
3位:「@コスメ」

1位は、白書でも取り上げられている、月間利用者数約600万人以上を誇る国内最大級のレシピ共有サイト「クックパッド」。2位の「ニッセン」に続き、3位にランクインしているのは、やはり月間利用者数約270万人を抱える化粧品の口コミ投稿サイトである。

クックパッド、@コスメに共通するのは、ユーザーが「お気に入りのオリジナルレシピ」や「自分が試してみたコスメ」を“口コミ”した情報がメインコンテンツとして多数来訪者に支持されている点。2009年2月に発表された男女間の「口コミ」に対する意識調査(※2)によると、口コミの受信が「とてもよくある」「どちらかといえばよくある」と回答した女性は54.8%と、男性の35.0%に比べ20%近く上回っている。

また、同調査によると、「どんなタイプの人の口コミから影響を受けるか」との問いには、女性は「自分と感覚が似ている相手」「『センスが良い』『おしゃれ』と感じる相手」の割合が高く、反対に男性は、「自分と違う視点・視野を持っている相手」「『最新情報を知っている』と感じる相手」という項目の割合が高いという結果となり、女性は感性・共感志向、男性は相手に専門性を求める志向が浮かび上がっている。

ソーシャルメディアで共有される口コミは、ユーザー同士が同じ目線の生活者である点が一つの特徴となっており、こうした男女間の口コミに求める志向性を考えると、より女性のほうがソーシャルメディアに適性があるといえるかもしれない。

■ お気に入りのブログから、お買い物へ

-ほぼ毎日利用する携帯コミュニティサイトは、男性は「モバゲータウン」、女性は「友人のブログ、ホームページ」。

2009年6月に発表された「携帯コミュニティサイトに関する利用実態調査」(※3)では、男性は白書でも躍進が注目されていた「モバゲータウン」や「GREE」など、ゲームコンテンツが充実したSNSサイトを挙げたのに比べ、女性は「友人のブログ、ホームページ」が52.9%で最も多く、次いで 「有名人、芸能人のブログ、ホームページ」が29.6%という結果となった。いずれもソーシャルメディアの代表格といえるサービスであるが、男性が機能志向なのに比べ、女性はやはり感性・共感志向を示す差異となっている。

さらに、ブログ閲覧から、記事内で紹介されていた商品購入に至った経験(※4)を見ると、女性が47.1%、男性が32.4%と、女性のほうがよりブログメディアから影響を受けていると言えそうだ。 自分が『おしゃれ』『感性があう』『素敵』と感じるお気に入りのブログやサイトにアクセスし、共感や刺激を受けながら、気になった商品があれば自身も購入して、体験してみる―ソーシャルメディア活用を楽しんでいる女性たちの様子が、調査データからも伝わってくる。

■注目の「エモーション」共有サービス

こうして、お気に入りのコスメや美味しいお料理レシピ、日々の出来事など、口コミサイトやブログなどで、さまざまな情報を共有している女性たちであるが、最近は『情報』だけではなく、『気持ち』を共有しあうサービスも登場し、人気を集めている。

たとえば、悩みや落ち込んだことなどを打ち明け、なぐさめてもらえるサイト「リグレト」(※5)。サイト上に「凹んでいること」を書き込むと、他のユーザーから「なぐさめ」のコメントが投稿される仕組みだ。2008年9月にオープン、半年間で100万件の「凹み」と「励まし」「なぐさめ」のやりとりがなされている。同社によると、ユーザーの60~70%は女性であるという。利用者からは『仕事が残業続きで厳しい』と凹んだら『あなたが日本を支えていたんですね!』と励まされ、頑張ろうという気持ちになれた」などといった声が寄せられているそうだ。

お互いに直接は顔が見えないソーシャルメディア・コミュニケーションであるが、そのなかで、いかに、相手と「感性があう」「共感できる」と感じられるインターフェースやデザイン、サービス設計を行っていくか…。

ソーシャルメディアが、より『女性に愛される』成長を遂げるために、今後さらにこうした視点でのメディア構築がサービス提供者側に求められていくのではないだろうか。

※1 サイボウズ・メディアアンドテクノロジー株式会社調査。2008年。
※2 株式会社ハー・ストーリィ、クチコミに関する調査結果。2009年。
※3 MMD研究所調査。2009年。
※4 日経リサーチ調査。2007年。
※5 株式会社ディヴィデュアル運営。http://rigureto.jp/
各サイトのユーザー数データ等は、2009年7月時点の公開情報に基づくもの。


略歴

アイランド株式会社代表取締役。1996年国立筑波大学卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社先端ビジネス開発センタ勤務、株式会社リクルート次世代事業開発室・事業統括マネジメント室勤務、総合情報サイト「All About」マーケティングプランナー職を経て、2003年7月より現職。生活者の視点に立ち、同社にて「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」「子育てスタイル」などの人気サイトを運営する。日経ウーマン誌選出「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2000年度ネット部門第1位、2003年度同賞キャリアクリエイト部門第6位受賞。
line

内田勝也 内田勝也情報セキュリティ大学院大学
教授
安全と安心を考える
柴内康文 柴内康文同志社大学
准教授
情報通信と「電縁」をめぐって
PAGE TOP