平成元年版 通信白書

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第1章 昭和63年通信の現況

1 国内通信の動向

 (1)国内電気通信

 国内電気通信分野では,通信料金の低廉化という社会的要請の下に,55年以降,NTTの電話料金及び専用料金を中心とした値下げが実施されてきているが(第1-2-1表参照),63年においても各分野への新事業者の活発な参入による競争体制の下,電話をはじめとする多くの分野で値下げが実施された。また,世界に先がけて,21世紀の基盤通信サービスであるISDNサービスが開始されるなど,新しいサービスが提供されている。
 その結果,新しい需要が開拓され,国内電気通信の契約数は各分野で高い伸びを示した。
 ア 国内電気通信事業者の動向
 (ア)第一種電気通信事業
 第一種電気通信事業者は,63年度に新たに10社が許可を受け,63年度末現在,NTTを含め42社となっており,35社がサービスを提供している。63年度中にサービスの提供を開始したのは12社であり,そのうち9社が無線呼出し事業者である。
 また,63年度末現在,NTTを除くサービス別事業者数(サービス開始準備中のものも含む。)は,電話サービスが5社,専用サービスが10社,自動車電話サービス及び船舶電話サービスが5社,無線呼出しサービスが26社となっている。
 (イ)第二種電気通信事業
 (特別第二種電気通信事業者)
 特別第二種電気通信事業者の登録数は,63年度末現在25社であり前年度同期に比べ7社増加している。
 特別第二種電気通信事業者の提供するサービスの種類にはデータ伝送,画像伝送,音声伝送及び複合(回線リセール,テレビ会議等)があるが,63年度末現在,全社がデータ伝送サービスを提供している。また,画像伝送サービスは10社(対前年度同期比25.0%増),音声伝送サービスは9社(同28.6%増),複合サービスは6社(同3倍)が提供している(第1-2-2図参照)。
 また,63年7月1日には,NTTからデータ通信事業を分離して,エヌ・ティ・ティ・データ通信(株)が設立された。エヌ・ティ・ティ・データ通信(株)(資本金100億円,従業員数約6,800人)は,回線数等のネットワークの規模で我が国最大規模の第二種電気通信事業者となった。
 なお,エヌ・ティ・ティ・データ通信(株)の事業運営に当たっては,NTTとの関係が,他の第二種電気通信事業者にとって,回線提供,人事交流,ハードウェアの工事,保守等の取引条件及び資材購入等の面で,不公正な競争条件とならないことを担保していくこととしている。
 (一般第二種電気通信事業者)
 一般第二種電気通信事業者は,63年度中に168社の届け出が行われ,63年度末現在668社(対前年度比30.5%増)と増加を続けている。
 63年度末現在で,最も多くの事業者が提供しているサービスはデータ伝送サービスの452社であり,対前年度同期比19.3%増となっている。次いで音声伝送サービスの203社(対前年度同期比51.5%増),画像伝送サービスの104社(同35.1%増),複合サービスの84社(同27.3%増)となっており,音声伝送サービスを提供する事業者の伸びが著しい(第1-2-3図参照)。
 イ 国内電気通信サービスの動向
 (ア)電話サービス
 (加入電話等契約数及びダイヤル総通話回数)
 NTTの加入電話等契約数は63年9月末現在,4,952万契約,対前年同期比3.8%増となっている。60年度以降,伸び率が年々高くなっているのが特徴である。加入電話等契約数には一般加入電話と集団電話があり,一般加入電話契約数が9割以上を占めている。一般加入電話について住宅用と事務用に分けてみると,63年9月末現在,事務用の契約数は1,519万契約(前年同期比4.3%増),住宅用の契約数は3,390万契約(同3.6%増)であり,61年度以降事務用の伸び率が住宅用の伸び率を上回っている(第1-2-4図参照)。
 これは,事業所におけるファクシミリの普及に伴うファクシミリ専用の電話回線の新設等が主な要因である。
 なお,62年度のダイヤル総通話回数は759億回(対前年度比5.7%増)であり,52年度以降加入電話等契約数の伸び率を上回って伸びており,1加入契約当たりの通話回数が増加していることが分かる(第1-2-5図参照)。
 (新事業者の動向)
 第二電電(株)及び日本テレコム(株)は,63年度中に山陽地方,九州地方等新たに7県で市外電話サービスの提供を開始した。その結果,63年度末現在,日本高速通信(株)を含む長距離系新第一種電気通信事業者3社のうち1社以上は,26都府県の全域又は一部で市外電話サービスを提供している(第1-2-6図参照)。
 また,日本テレコム(株)は,63年8月からJRの駅構内において公衆電話サービスを提供している。
 サービス提供地域の拡大に伴い,新事業者3社が提供する市外電話サービスの契約数(3社単純集計)は,63年9月末現在277万契約であり,62年度末現在の186万契約に対し,48.9%増と急増している。
 また,第二電電(株)及び日本テレコム(株)は,平成元年9月以降,東北地方で市外電話サービスを開始する予定であり,今後も,新事業者の市外電話サービスの契約数は高い伸びを示すものと予想される。地域系新第一種電気通信事業者である東京通信ネットワーク(株)は63年5月に東京都を中心とした1都8県で電話サービスを開始した。
 (電話料金の値下げ)
 平成元年2月に,NTT及び長距離系新事業者3社は電話料金の値下げを実施した(第1-2-7表参照)。
 NTTは,320キロメートルを超える遠距離通話料金を約1割,隣接区域内及び20キロメートルまでの区間の通話料金については,3分で30円から,3分で20円にそれぞれ値下げした。
 また,同一都道県内にある離島単位料金区域(10円で3分間通話可能な区域)相互間の通話料金に対して,3分20円(10円90秒)の隣接通話料金を適用した。
 長距離系新事業者3社は,340キロメートルを超える遠距離通話料金を約1割値下げするなど,すべての距離段階について値下げを実施した。
 (イ) ファクシミリ通信網サービス
 NTTのファクシミリ通信網サービスの契約数は,63年9月末現在,25万3,309契約であり,対前年同期比71.1%増と急増した(第1-2-8図参照)。
 これは,即時性のある記録通信に対するニーズが,引き続き高かったこと,62年2月に実施された利用可能な原稿サイズのA4判からB4判への拡大をはじめとする機能充実により利用価値が高まったこと,電話網を使った場合に比べ長距離通信料金が割安となることが主な要因である。
 (ウ)移動通信サービス
 移動体通信分野は,NTTに比べ割安な料金でサービスを提供している新事業者の参入及び営業区域の拡大等により,新しい需要が開拓され,急速に発展している。
 (無線呼出しサービス)
 NTT及び新事業者の無線呼出しサービスの契約数は63年9月末現在,324万2,515契約,対前年同期比20.4%増と62年度の伸び率(対前年度末比18.7%増)を上回っている(第1-2-9図参照)。
 新事業者は,62年9月の熊本区域への参入以来,おおむね県を単位として相次いで参入しており,62年度末の新事業者数及びサービス提供区域の15社,20都道府県から,63年度末の24社,34都道府県へと拡大されている(第1-2-10図参照)。
 これに伴い,新事業者の契約数及び全国シェアは急速に増加しており,62年度末現在の7.4%(21万7,281契約)から,63年9月末現在の14.5%(47万1,235契約)へと,全国シェアは62年度末に比べ半年間で約2倍となっている。
 NTTにおける契約数は62年度末現在,273万6,146契約(対前年度末比10.0%増)から,63年9月末現在の277万1,280契約(対前年同期比3.0%増)へと伸びが低下している。
 このような状況の下,NTTが63年12月に約1割の料金値下げを実施したのに対し,新事業者も平成元年1月に10社,3月末までに新たに5社が約1割の料金値下げを実施した(第1-2-11表参照)。
 また,NTT及び新事業者は数字,文字等をディスプレイに表示できる高機能サービスやペンシル型等の新型機器の開発等,新しいサービスの提供を始めており,無線呼出し事業分野は本格的な競争状態に入りつらある。
 (自動車電話サービス等)
 NTTの自動車電話の契約数(携帯電話を含む。)は63年9月末現在,19万3,065契約,対前年同期比59.8%増であり,60年度以降,毎年50%を超える高い伸びを示している(第1-2-12図参照)。
 自動車電話事業分野においても,63年12月から,日本移動通信(株)が新事業者として初めて東京23区内でサービスを開始し,競争体制に入った。
 また,日本移動通信(株)は平成元年12月に,神奈川,千葉,埼玉及び茨城の関東地方4県と愛知,三重及び岐阜の中部地方3県にサービス提供区域を拡大する予定である。
 平成元年7月には,関西セルラー電話(株)が大阪,京都等の近畿地方において自動車電話サービスを開始する予定である。
 このような状況の下,平成元年3月にNTTは自動車電話の基本料金を13%から17%値下げした。
 東京湾マリネット(株)は,63年9月から,東京湾及びその周辺海岸部における船舶・携帯電話サービスを開始している。また,関西マリネット(株)が,平成元年12月に大阪湾周辺における同様のサービスの開始を目指し,63年10月に設立された。
 (エ) 専用サービス
 専用サービスには一般専用サービス,高速ディジタル伝送サービス,映像伝送サービス,テレビジョン伝送サービス,衛星通信サービス及び無線専用サービスがある。
 専用サービスの総回線数は63年9月末現在,71万2,995回線,対前年同期比16.6%増となっている。このうち,全体の9割以上を占める一般専用サービスの回線数は70万5,410回線,対前年同期比16.4%増となっている(第1-2-13図参照)。
 一般専用サービスの回線数の伸びは帯域品目の音声伝送回線と電話網と同じ規格である3.4kHzの回線の増加が主な要因である。
 また,高速・大容量である高速ディジタル伝送サービスの回線数は,63年9月末現在,5,500回線,対前年同期比54.0%増となっている(第1-2-14図参照)。
 63年9月末の新事業者の契約回線数は,一般専用サービスでは1,303回線で全国シェアは0.2%であるのに対し,高速ディジタル伝送サービスでは947回線で全国シェア17.2%と一般専用サービスに比べ高いシェアとなっている。
 専用サービスの料金については,63年7月に第二電電(株),日本高速通信(株)及び日本テレコム(株)の3社が,30キロメートルを超え500キロメートルまでの距離の料金を平均9%値下げした。また,NTTも平成元年5月に一般専用については10キロメートル以遠を,高速ディジタルについてはすべての距離段階について平均8.7%の値下げを行った。
 (オ)ディジタルデータ伝送サービス
 NTTのディジタルデータ伝送サービスは,回線交換サービス,パケット交換サービスともに大きく伸びている(第1-2-15図参照)。
 回線交換サービスの回線数は63年9月末現在,7,627回線,対前年同期比28.3%増となっている。
 また,パケット交換サービスの回線数は63年9月末現在,7万4,845回線で,対前年同期比83.7%増となっている。そのうち,電話網からパケット網へアクセスできる第二種パケット交換サービスは,4万5,055契約(対前年同期比約2.6倍)と急増しており,これはパソコン通信等の利用の増加によるものである。
 (力) ビデオテックス通信サービス
 キャプテンサービス(株)により提供される,ビデオテックス通信サービスの利用契約数は,63年12月末現在,7万8,960契約,対前年同期比69.0%増となっている。これを,家庭用と事業所用でみると,家庭用の利用契約数は,前年同期に比べ約2倍の3万4,068契約に増加したのに対し,事業所用は51.4%増の4万4,892契約となっている(第1-2-16図参照)。
 家庭用の利用契約数の伸びの原因は,63年2月にビデオテックス通信料金の夜間・土曜・日曜・祝日割引等の値下げが実施されたこと,また,従来のニュースや天気予報サービスに加え,電子メール,商品注文,切符予約,株式情報及び競馬情報サービス等,家庭向けのサービスの充実が図られたこと,などが主な要因である。
 (キ)ISDNサービス(総合ディジタル通信サービス)
 回線をディジタル化することにより,1つの加入者回線で音声,データ,画像情報を同時に,しかも高速,高品質で利用できるISDNサービスは,63年4月19日から東京,大阪及び名古屋においてサービスを開始した(第1-2-17図参照)。
 63年12月末現在の契約回線数及び契約企業数は,金融業,製造業,情報サービス業等を中心に,877回線,181社となっており,サービス提供地域も福岡,札幌等の政令指定都市を中心に28地域に拡大されている(第1-2-18表参照)。
 (ク)衛星通信事業サービス
 63年度末現在,衛星系の第一種電気通信事業者としては,日本通信衛星(株)と宇宙通信(株)の2社が事業許可を受けている。日本通信衛星(株)は,平成元年3月に衛星(1号機)の打上げに成功し(2号機は平成元年秋頃に打上げの予定),4月からサービスを開始した。宇宙通信(株)は,平成元年5月に衛星(1号機)の打上げの予定であり(2号機平成元年10月に打上げの予定),6月からサービスを開始する予定となっている。
 また,日本通信衛星(株)及び宇宙通信(株)の民間通信衛星を利用する第二種電気通信事業者7社(63年度末現在)も,平成元年中のサーピス開始を目指し,現在準備中である。
 なお,NTTも通信衛星3号(CS-3)及び民間通信衛星を用いて,衛星通信サービスを提供している。
 このように,我が国もいよいよ本格的な衛星通信時代を迎える。
 衛星通信事業の開始により,我が国の伝送経路の多様化の一層の推進,震災時等の非常時への対応の充実が図られるだけでなく,衛星通信回線を利用した遠隔地からの生中継,テレビ会議等様々な業務での活用が期待される(第1-2-19図参照)。
 (ケ) 電報サービス
 NTTの電報通数は,63年9月末現在1,920万通,対前年同期比0.2%増であった。このうち,慶弔電報は対前年同期比0.9%増の1,738万通,一般電報は同6.0%減の182万通であり,慶弔電報の占める割合が9割を超えている(第1-2-20図参照)。
 また,63年9月から,ひらがなを使えるようにサービスが改善された。
 ウ 新しいサービスの動向
 (簡易陸上移動無線電話)
 簡易陸上移動無線電話(コンビニエンス・ラジオ・フォン)は自動車等の移動体から一般の加入電話への通話を安価に行えるシステムであり,63年2月に電波監理審議会の答申を受け,同年3月に無線設備規則及び特定無線設備技術適合証明に関する規則の一部を改正した。
 現在,帯広,青森,上田,松江及び山口で事業化についての検討が行われている。
 (テレターミナルシステム)
 テレターミナルシステムは車両,セールスマンあるいは自動販売機と各ユーザーのオフィスやセンターコンピュータとの間でコンパクトな無線機器を利用して双方向のデータ通信が行われるシステムであり,62年7月から,東京の一部地域でパイロット実験が行われている。
 63年10月には日本シティメディア(株)が設立され,平成元年中に東京23区内で営業を開始する予定である。

第1-2-1表 NTTによる55年以降の電気通信料金の値下げ状況

第1-2-2図 特別第二種電気通信事業者数のサービス別推移

第1-2-3図 一般第二種電気通信事業者数のサービス別推移

第1-2-4図 事務用・住宅用一般加入電話契約数の推移

第1-2-5図 加入電話等契約数の推移

客1-2-6図 長距離系新第一種電気通信事業者のサービス提供地域(63年度末現在)

第1-2-7図 NTT及び新事業者の電話料金の値下げ状況

第1-2-8図 ファクシミリ通信網サービス契約数の推移

第1-2-9図 無線呼出し契約数の推移

第1-2-10図 新事業者の無線呼出しサービス提供地域(63年度末現在)

第1-2-11表 NTT及び新事業者の無線呼出しの料金値下げ状況

新しい無線呼出し機器

第1-2-12図 自動車電話契約数の推移

第1-2-13図 一般専用サービス回線数の推移

第1-2-14個 高速ディジタル伝送サービス回線数の推移

第1-2-15図 ディジタル伝送サービス回線数の推移

第1-2-16図 ビデオテックス通信サービス利用契約数の推移

第1-2-17図 ISDNと従来型の電気通信網との比較

第1-2-18表 ISDNサービスの提供地域名(63年12月末現在)

第1-2-19図 衛星通信サービスの活用例

第1-2-20図 電報通数の構成比の推移

 

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