平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

 現在,我が国においては,国土の均衡ある発展のために,多極分散型国土の形成が必要である。これは,全国を均一にとらえるのではなく,それぞれの地域の特性に応じた施策の展開が重要であるという考え方に基づくものである。また,我が国は,GNPでみた経済規模では世界経済の1割を超えるシェアを占めるまでに達しており,国際社会への貢献が求められている。
 このような観点から,様々な情報交流が行われている情報圏及びそれを支える情報通信基盤についてみることにする。
 情報の伝達,蓄積は,人の移動(交流)や物の流れ,企業活動等の社会経済活動の中で絶えず行われており,その情報の内容も生活情報や経済情報等種々のものがある。
 このような情報は,必要とされる一定の範囲内において,価値を持ち交流が行われており,この価値を持った情報交流が密に行われる範囲内で一つの情報圏を形成している。
 この情報圏は,交流する情報内容や情報交流の広がり等により,世界規模,全国規模及び地域の3種類の情報圏に分けてみることができる。
 世界規模の情報圏では,我が国の国際化の進展に伴い,世界のニュース,経済・金融情報,産業情報等の情報交流が行われ,国際通信等の整備とともに進展している。
 全国規模の情報圏では,ニュース,政治・経済情報,産業情報,各個人間の情報交換等の情報交流が行われ,郵便,電話,放送等の情報通信基盤に支えられて進展している。
 地域情報圏では,生活情報,地方公共団体の行政情報,各個人間の情報交換等の生活に密着した情報交流が行われている。
 また,それぞれの情報圏において交流している情報について詳細にみると,例えば,我が国の代表的な観光地の情報は,全国規模の情報圏にとどまらず,世界における情報としても交流し,世界規模の情報圏の情報ともなっている。また,姉妹都市における地域と世界との情報交流にみられるように,地域情報圏と世界規模の情報圏の結び付きもみられる。
 このように,現在の社会生活においては,世界規模,全国規模及び地域の各情報圏が存在しており,これらは重なりあいながら相互に関連をもっている。現在の社会は,世界規模の情報圏,全国規模の情報圏及び地域情報圏が重層的に重なる重層情報社会が形成されているとみることができる。
 このように重層情報社会が形成されているが,各情報圏の形成の段階は異なっている。全国規模の情報圏は,既に形成され,世界規模の情報圏は,地域的な情報交流の偏在がみられるものの,ほぼ形成されなお発展を続けている。地域情報圏については,現在,その形成の促進が要請されている段階である。
 世界規模の情報圏の進展を図ることは,国際間の相互理解の促進や世界の平和と世界経済の発展のために重要である。全国規模の情報圏の進展は,我が国全体の社会経済の発展に資するとともに,地域間の情報交流を促進し,地域間の情報格差の是正にも重要な役割を果たすものである。また,地域情報圏の進展は,豊かな国民生活の実現や各地域独自の発展に必要不可欠である。
 国土の均衡ある発展のための多極分散型国土を実現するためには,重層情報社会の各情報圏の均衡ある発展を図ることが重要である。特に地域情報圏の進展は,東京一極集中を是正するとともに,各地域の独自性を生かした発展につながることとなる。
 一方,重層情報社会を形作っている各情報圏を支えているのは情報通信基盤である。重層情報社会の進展を図るために,情報通信基盤の果たす役割は大きい(第2-1-1図参照)。
 現在,全国規模の情報通信基盤は,郵便,電話及び放送にみられるようにおおむね整備されており,更にその高度化が求められている。世界規模の情報通信基盤は,先進国を中心に進展しており,現在,発展段階にあると考えられる。また,地域の情報通信基盤は,テレトピア指定地域等において,その萌芽がみられるが,いまだ地域情報圏における十分な情報交流を可能とするものとはなっていない。
 本章では,重層情報社会の形成という観点から,第1節では現在の情報通信の根幹をなす全国規模及び世界規模の情報圏や情報通信基盤の現状を述べ,第2節では,最近特に動きがみられる地域を取り上げ,地域の情報圏や情報通信基盤の現状を述べ,第3節においては重層情報社会の抱える課題について言及する。

第2-1-1図 重層情報社会の姿

 

 

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