平成元年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第2章 重層情報社会の形成と通信

1 全国規模の情報圏と情報通信

 (1)全国規模の情報圏と情報通信基盤

 ア 全国基模の情報圏の形成
 いつでも,全国どこからでも,どこへでも必要な情報の伝達が可能となる情報通信基盤が整備され,また,全国的に情報交流が密に行われるようになったときに,全国規模の情報圏が認識される。我が国においては,明治初期に創始された郵便,電報という全国規摸のネットワークの完成が,全国規模の情報通信基盤としての役割を担うことにより,我が国の全国規模の情報圏の基礎を形成した。その後,社会経済の進展に伴い,さらには情報化の進展に伴い,全国規模の情報圏が形成されてきた。
 例えば通信の各メディアの普及状況をみると,昭和40年代までは各メディアとも急速に全国に普及しているが,50年代に入ると普及の伸びは鈍化してきている。これは50年代において全国規模の情報圏がほぼ形成されたことを示していると考えられる(第2-1-2図参照)。
 近年においては情報通信に対するニーズが多様化・高度化してきており,これに伴い,全国規模の情報圏においては情報交流の一層の充実が図られている。産業分野では既に情報通信の高度利活用が行われており,例えば陸運業では,コンピュータネットワークを利用し,受付から配達まで荷物1個ごとに状況を完全に把握し個別管理している。一方,情報化の進展に伴い,情報の東京等への一極集中等の問題点も顕在化してきている。
 イ 全国規模の情報通信基盤の進展全国規模の情報圏を支える情報通信基盤には,より大量の情報を,より早く伝達するための全国規模のネットワークの形成が要請されてきた。現在では,郵便をはじめとして電気通信,放送等の多様な全国規模のネットワークが完成しており,欠くことのできない情報通信基盤として全国規模の情報圏を支えている。最近においては,様々なニーズに対応して既存のネットワークの高度化がみられるほか,衛星放送をはじめとして多様化が進んでいる。
 以下では全国規模の情報通信基盤のうち,現在,基幹的な役割を果たしている郵便,電話,放送及び新聞についてその形成過程を概観する。
 (ア)郵 便
 郵便については,明治5年にほぼ全国規模の郵便ネットワークが完成した。その後,郵便物数の増大に応じた郵便局の増設や,郵便番号制度の導入等により作業の効率化を図り送達の迅速化を実現してきた。郵便物の輸送についても,鉄道輸送から自動車輸送へ,更には航空機による輸送へとその輸送手段を変遷させ,主要大都市間の翌日配達を実現させている。さらに近年,多様化・高度化するニーズにこたえ,ビジネス郵便,超特急郵便や従来の郵便ネットワークの枠を超えた電子郵便等一層のスピードアップを図ったサービスも提供されている。このように,郵便ネットワークは最も基本的な情報通信基盤としての役割を維持しつつ,そのネットワークの多様化・高度化を図ってきている。
 (イ)電 話
 電話サービスは明治22年に始められたが,その普及はしばらくは目覚ましいものではなかった。
 昭和20年代後半に入ると,通信手段としての電話に対する需要が大幅に増加した。しかし当時の我が国における電話サービスは,電話の積滞と市外通話の待時接続が行われていた状況であり,需要に十分に対応することが難しく,電話サービスが情報通信基盤として,全国規模のネットワークを形成するためには,積滞の解消と市外通話の即時化を図る必要があった。
 加入電話の架設状況についてみると,積滞は,26年度末で約34万もあった。
 30年代,40年代前半も積滞の数は増加傾向にあり,ピークの45年度末には291万に達した。その後の増設の結果,51年度末には23万を割り,年間架設数の1割程度まで減少し,53年度において完全に充足した(第2-1-3図参照)。
 市外通話の接続状況についてみると待時接続が中心であり,20年代においては通話を申し込んでから接続まで何時間も待たされる状況であった。
 その後,37年に東京―名古屋間に初めてダイヤル即時サービスが開始され,39年度には6大都市相互間,40年には東京と全国県庁所在地間,42年度には県庁所在地相互間へと自動即時化が順次拡大された。そして,54年3月にダイヤル即時化率は100%となり,電話サービスの全国規模のネットワークの形成が完成した。
 現在においては,電話サービスは電話回線を利用したファクシミリ通信やデータ伝送等の高度な利活用も可能となり,全国規模の情報圏を支える情報通信基盤としての重要な役割を果たしている。
 (ウ)放 送
 現在はNHK・民放二本立ての放送制度となっており,全国規模のネットワークとしてのNHKと,地域社会に基盤を置く独立経営主体としての民放の並立という形で発展していった。
 28年にNHKと民放がテレビジョン放送を開始したが,放送局は,NHKが東京,名古屋及び大阪の3局,民放は東京に1局であった。31年頃から地方都市へのテレビ局設置が進み,32年度末にはNHKが13局,34年度末には34局と全国ネットワークを形成していった。その後は全国規模の情報通信基盤としての役割を担い,62年度末では,放送局数は6,914局,受信契約数は3,195万契約となっている。
 一方民放は,県域を単位とした情報通信基盤としての役割を果たしているが,ニュース等については,全国的な情報通信基盤としても機能している。
 (エ)新 聞
 新聞については,明治3年に我が国最初の日刊新聞として「横浜新聞」が創刊された。その後,通信及び交通の発達により,新聞は全国に発展したが,中でも明治5年の郵便制度の確立は新聞の販売網の拡大に大きく寄与するものであった。また,日清及び日露戦争により,新聞は飛濯的な発展を遂げるとともに,各社は地方支局を設置し,新聞はその全国規模のネットワークを完成させた。
 近年,コンピュータによる新聞製作システムやデータベース化が導入されるなど,新聞は全国規模の情報通信基盤としての機能を更に充実させている。

第2-1-2図 各通信メディアの普及状況

第2-1-3図 電話積滞数の推移

 

第2章第1節 全国及び世界規模の情報圏の進展 に戻る (2)情報通信の多様化・高度化 に進む