平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

(1)地域中核都市と情報拠点

 ここでは,地域中核都市の一例として,県庁所在都市を取り上げ,各都道府県の中での県庁所在都市の現状を中心に分析する。
 ア 地域中核都市の拠点性
 地域中核都市の拠点性について,自治省の「住民基本台帳に基づく全国人口・世帯数表」,総務庁の「事業所統計」,通商産業省の「商業統計表」及び経済企画庁の「県民経済計算年報」により分析する。
 各都道府県の中での県庁所在都市への人口,事業所の従業者数及び小売業年間販売額の集積状況は,第2-2-3表に示すとおりである。
(人口の集積)
 63年3月末現在,各都道府県の中での県庁所在都市への人口の集積が50%以上の高い都市は,東京23区(69.8%)及び京都市(55.9%)であり,次いで,横浜市(40.7%),仙台市(39.4%),広島市及び高知市(各36.9%)の順となっている。
 全国的にみると,県庁所在都市の人口の集積は29.4%であり,一部の例外はあるものの,概して人口の集積性は高いと考えられる。
(産業の集積)
 産業の集積性を,一例として事業所の従業者数の集積としてとらえ分析する。
 61年の各都道府県の中での県庁所在都市への産業の集積が50%以上の高い都市は,東京23区(85.0%),京都市(66.2%)及び大阪市(54.3%)であり,次いで,高知市(48.2%),仙台市(43.9%)の順となっている。
 全国的にみると,県庁所在都市の産業の集積は39.8%であり,概して人口の集積以上に産業の集積があることが分かる。
(経済活動の集積)
 経済活動の集積性について,60年の小売業年間販売額及び60年度の県内総生産を一例に分析する。
 各都道府県の中での県庁所在都市への小売業年間販売額の集積状況は,東京23区が79.6%と最も高く,次いで,京都市(68.1%),高知市(51.3%),大阪市(49.4%)の順となっている。全国的にみると,県庁所在都市の小売業年間販売額の集積は38.6%であり,概して小売業年間販売額の集積性は高いと考えられる。
 また,県内総生産に対する政令指定都市の市内総生産の占める割合は,第2-2-4表のとおりであり,京都市が62.4%と最も高く,次いで大阪市(58.0%),広島市(41.7%)の順となっている。
 政令指定都市かつ県庁所在都市に限ってみると,その集積比率は,すべて30%以上の高い水準となっている。
 これらのことから,政令指定都市をはじめとする県庁所在都市における経済活動の集積性は,かなり高いものと推測される。
 以上述べたように,地域中核都市の一つと考えられる県庁所在都市は,人口,産業,経済活動等の様々な面でその地域の拠点となっている。
 イ 地域中核都市と情報通信
 ここでは,地域に展開している全国の事業所のうち,民営(国,日本国有鉄道及び地方公共団体の事業所を除く。)の情報通信関連産業について,通信業,放送業及び情報通信関連ソフト産業を取り上げ,これらを中心に各都道府県の中での県庁所在都市への集積状況について分析する。
 61年の各都道府県における情報通信関連産業の従業者の県庁所在都市への集積状況は,第2-2-5表のとおりである。
(通信業)
 61年の各都道府県の中での県庁所在都市への通信業の従業者の集積状況は,東京23区が84.1%で最も高く,次いで,大阪市(72.6%),金沢市(68.0%),京都市(66.6%)の順となっている。
 一方,都道府県内の通信業の従業者の集積が最も低いのは,前橋市の19.3%であり,他の県庁所在都市はすべて20%以上の集積性を示している。
 全国的にみると,県庁所在都市の通信業の従業者の集積は50.5%であり,通信業の従業者の集積性は,非常に高いことが分かる。
(放送業)
 61年の各都道府県の中での県庁所在都市への放送業の従業者の集積状況は,東京23区が98.3%で最も高く,次いで,仙台市(93.6%),松山市(92.3%),高松市(92.1%)の順となっている。
 また,都道府県内の放送業の従業者の集積が最も低い浦和市でも37.2%の集積があり,70%以上の高い集積のある都市は37都市と,全体の8割以上を占めている。
 全国的にみると,県庁所在都市の放送業の従業者の集積は83.1%に達しており,県庁所在都市への放送業の集積は,極めて高いことが分かる。
(情報通信関連ソフト産業)
 情報通信関連ソフト産業とは,ここでは情報サービス業及びニュース供給業をいう。
 61年の各都道府県の中での県庁所在都市への情報通信関連ソフト産業の従業者の集積状況は,仙台市が96.6%で最も高く,次いで,高知市(95.1%),京都市(94.0%),高松市(93.9%),徳島市(93.7%),東京23区(93.5%)の順となっており,各都府県とも高い集積性を示している。また,都道府県内の集積が最も低いのは,山口市の15.1%であり,他の県庁所在都市はすべて20%以上の集積性を示している。
 全国的にみても,県庁所在都市の情報通信関連ソフト産業の従業者の集積は81.3%に達しており,放送業に次いで高い集積がある。
(第二種電気通信事業者の集積)
 63年12月末現在の第二種電気通信事業者の本社の県庁所在都市への集積状況は,第2-2-6表のとおりであり,全体の78.9%が県庁所在都市に集積している。大部分の第二種電気通信事業者は,各地域の拠点となる都市等に本社を設置していることが分かる。
 なお,第二種電気通信事業者は,まだ事業者数が少なく,都道府県によって事業者数のばらつきが大きいことから,各都道府県の県庁所在都市への集積性の差が大きくなっている。
 以上述べたように,県庁所在都市をはじめとする地域中核都市は,それぞれの地域において拠点性を有しており,情報通信の拠点としての基盤を備えている。情報通信関連産業は,県庁所在都市をはじめとする地域中核都市を中心に,人口や産業等に比べて極めて高い集積があり,これらの情報拠点.を中心として,情報通信基盤の整備や情報交流が行われている。

第2-2-3表 各都道府県における県庁所在都市への集積状況

第2-2-4表 政令指定都市の市内総生産の県内総生産に対する比率(60年度)

第2-2-5表 各都道府県における情報通信関連産業(民営)の従業者の県庁所在都市への集積状況

第2-2-6表 第二種電気通信事業者の集積状況(63年12月末現在)

 

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