平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

1 重層情報社会の進展のための課題

 (1)地域情報圏の進展のために

 現在,各地において,いくつかの地域情報圏が形成されているが,それらの地域についてもまだ十分とはいえない状況であり,また,はっきり地域情報圏が認識し得ない地域も多い。
 地域情報圏については,現在その形成を促進することが強く求められており,そのための課題として,次のようなものが挙げられる。
 ア 地域における情報通信基盤の整備
 地域情報圏の形成のためには,まず,それを支える情報通信基盤の整備が基本的な課題であり,また,その効果的な整備が強く求められている。
 地域における情報通信基盤の整備は,その地域の独自の情報の集積を促進し,その情報が集積されると,さらに,新たな情報の創出につながる。
 また,地域の情報通信基盤の整備を効果的に進めるためには,その地域の産業,文化が集中している地域中核都市に,まず,通信設備,情報通信システム,通信ソフト等の情報通信基盤を重点的に整備し,その活用を図ることが効果的である。地域中核都市の情報通信機能の向上は,やがて,その地域全体に波及し,地域情報圏を形成していくものと考えられる。
 郵政省では,テレトピア計画や民活法特定施設の建設の促進により拠点都市への情報通信基盤の整備を進めているが,更に効果的な整備を行うためには,各種助成手段の一層の活用が必要である。
 イ 通信料金の低廉化
 地域情報圏の形成のためには,通信料金全般の低廉化を図ることが重要である。
 地域内の情報交流の活発化を図るためには,3分10円の単位料金区域の拡大等,市内・近距離を中心とした通信料金の低廉化が望まれる。
 このような市内・近距離の通信料金の低廉化の推進は,地域情報圏の情報交流を容易にし,地域情報圏を拡大するとともに,拠点都市への情報の蓄積を促進することが期待できる。
 また,地域情報圏間の情報交流を活発化するため,遠距離通信料金の低廉化についても,一層の推進が求められる。東京等の大都市に集中している様々な情報を,その他の地域が低廉なコストで入手可能とすることにより,地域情報圏の充実が期待される。
 ウ 地域における人材の確保及び育成
 重層情報社会が進展するにつれて,情報通信分野の人材に対する需要は一層増大するものと考えられる。地域情報圏の形成,情報通信基盤の整備といっても,それを実行するのは,人間である。地域における情報通信分野の人材の確保及び育成が課題となっている。
 例えば,情報通信ネットワーク等を構築するための,システム・エンジニアやプログラマー等の専門家は,東京・大阪等の大都市圏に集中しており,その他の地域との間には大きな格差が生じている(第2-3-1図及び第2-3-2図参照)。
 地域の情報通信基盤を整備し,通信業や情報サービス業を各地域で発展させることにより,地域に情報通信分野の人材を増やし,定着させ,人材の格差を縮小させる必要がある。また,それぞれの地域においても,情報通信分野の人材育成のための研修施設の整備や人材を定着させるための魅力ある町づくりを進めていく必要がある。
 エ 地域の情報発信機能の充実
 地域情報圏の形成にとって,その地域の情報の集積が重要であることは,既に触れたが,地域情報圏の一層の充実のためには,地域の情報を他の地域へ発信する機能を充実させることが重要である。
 各地域の情報発信量(地域内向けも含む)を地域別情報流通センサスにより県別にみると,最も情報発信量の少ない佐賀県は,最も情報発信量の多い東京都の1.9%(62年度)の情報が発信されているにすぎない。特にこの格差は,電話,データ通信等の電気通信メディアにおいて顕著である。
 各地域の情報発信機能を充実させることは,地域の社会経済活動の活性化を促し,地域情報圏における情報交流を一層充実させ,このような地域間の格差を是正することに資するものである。

第2-3-1図 情報サービス業における地域別システム・エンジニアの比率(62年)

第2-3-2図 情報サービス業における地域別プログラマーの比率(62年)

 

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