平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

(2)全国規模の情報圏の充実に向けて

 全国規模の情報圏は,既に,形成され,現在は,その充実が期待されており,それを支える情報通信基盤には多様化・高度化が求められている。
 そのための課題を挙げてみる。
 ア 電気通信分野での競争条件の整備
 60年の通信分野における制度改革以来,電気通信分野には,多数の新事業者が参入しているが,その多くは最近になって事業を開始したものが多い。
 全国規模の情報圏の充実のためには,これら新事業者とNTTとの競争条件を整備し,市場での競争を通じ,より一層の良質かつ低廉な通信サービスの提供が今後の大きな課題である。
 このような通信サービスの充実を図るためには,新事業者とNTTとの公正かつ有効な競争が可能となるよう,NTTと新事業者の相互接続の円滑化,NTTの交換機のディジタル化の促進及び技術・ネットワーク情報の開示及び内部相互補助の防止等を行うことが求められている。
 また,新事業者は,足回り回線として,NTTの市内・近距離回線を利用している。従って,市内・近距離料金の低廉化は,そのまま新事業者の利用料金の低廉化となり,有効競争条件の整備に資するものである。
 イ 通信の安全性・信頼性の確保
 電気通信網の障害に対しては,通信事業者は現在,障害情報システムの導入,バックアップ回線の設定等により対応しているが,いまだ万全ではない。
 また,大規模な自然災害に対する通信網の耐災害性も依然低く,電気通信の安全性・信頼性の確保が求められている。
 現在,電話,データ通信等の電気通信網は,一層複雑に全国に張りめぐらされ,常時大量の情報伝送が行われるようになっているが,これらの通信網が高度化し,社会の中枢神経網としての役割が重要になるにつれ,通信網の障害等による情報の途絶は,社会に対し,甚大な影響を及ぼすこととなる。
 59年11月に発生したNTT世田谷電話局ケーブル火災事故は,当該地域の一般加入電話約89,000回線及びデータ通信回線・専用回線約3,000回線を不通にし,多数の住民の生活に影響を与えた。また,当該地域の全国200以上の支店を結ぶ銀行のオンラインが不通となるなど,社会的にも大きな支障を与えた。
 また,無線通信の分野においては,社会生活全般への無線利用の拡大に伴い,不法無線局等に起因する混信・妨害への対応が強く求められている。
 不法無線局とは,電波法に基づく免許を受けずに開設された無線局であり,63年4月から9月に確認された不法無線局は,全国で8,059件に上る。これらの不法無線局から発射された電波は,一般家庭のテレビやラジオの受信に障害を与えたり,警察や消防等の重要無線通信に混信・妨害を与えており,特に最近は電波ジャック等の意図的かつ悪質な妨害も発生している。不法無線局については,電波監視等により捕捉を行い,告発や行政指導を行っている(第2-3-3図参照)。
 ここ数年急増しているのは,不法コードレス電話であり,63年7月の調査によると,輸出用機器や規格外の外国製機器を中心に,全国各地で86種という多数の不法コードレス電話の販売が確認されている。
 これらの不法無線局に対し,郵政省では,電波法の改正等による製造・販売段階での規制や取締りの強化,電波法違反防止旬間を設定して,電波利用者等への周知活動により対処してきたが,今後,より高度な移動体通信の登場など,無線通信はますます多様に活用されていくことが予想され,不法無線局の撲滅のため,より一層積極的に対応していくことが必要である。
 ウ テレビジョン放送の安定的提供
 全国規模の情報通信基盤の多様化・高度化が進展する一方,一部の地域では,テレビジョン放送の都市受信障害地域や辺地難視聴地域が今なお存在しており,これら難視聴地域の解消が求められている。都市受信障害については,残存世帯数の地域別内訳をみると,都市化の進展の著しい首都圏の占める割合が高く(第2-3-4図参照),受信障害は更に広域化,複合化することが予想される。このため,現在,解消手段として一般的に取られているCATV施設のほか,SHFテレビジョン放送局,電波吸収体等を普及,開発することが必要である。
 また,辺地難視聴世帯数は,全国でNHK約10万世帯,民放約40万世帯(62年度末)と推定されており,また,都市受信障害の残存世帯数は,約67万世帯と推定されている。
 辺地難視聴については,難視聴地域の衛星放送受信の普及を,また,民放の辺地難視聴については中継局の置局の促進を一層推進していく必要がある。
 衛星放送については,現在,約140万世帯(平成元年3月末現在)に視聴されており,衛星放送を安定的に行うための信頼性の向上のためには,放送衛星に必要な自主技術の開発及びそれに伴う宇宙実証を,今後も積極的に進める必要がある。
 その他,全国規模の情報圏及びそれを支える情報通信基盤の今後の一層の充実を展望すると,急増する電波需要にこたえるための,準マイクロ波帯,ミリ波帯を活用した周波数資源の開発,技術の波及性が大きい電気通信フロンティア研究開発等の先端的・独創的な技術の開発を推進する必要がある。

第2-3-3図 不法無線局の内訳(62年度)

第2-3-4図 都市受信障害世帯数の地域別内訳(60年度)

 

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