平成2年版 通信白書

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第1章 平成元年通信の現況

(1)第一種電気通信事業者の経営状況

 ア NTTの経営状況
 元年度上半期のNTTの経営状況は、経常収入は対前年度同期比1.3%増の2兆8,598億円、経常費用は同0.2%増の2兆6,567億円、経常利益は同19.0%増の2,031億円であった。経常利益は前年度は昭和62年度に比べて減少したが、本年度の上半期の経常利益額は前年度だけでなく昭和62年度の上半期をも上回っている。
 サービス別収入でみると、営業収益の8割以上を占める電話収入は、対前年度同期比で2.1%の増となっている。これは、元年2月に料金の値下げを行ったものの、電話加入数の順調な増加や、自動車電話契約数の高い伸び等があったためと考えられる。これに対してデ一夕伝送収入は、企業のネットワーク化が進展する中で、対前年度同期比で30.6%と大幅に増加し、専用収入も同10.4%増と伸びている。
 また、電報収入はここ数年、新商品の開発等で市場の開拓等に力を注いでおり、元年度においても対前年度同期比8.1%増と昭和60年度以降安定した伸びを示している(第1-1-6表参照)。
 イ KDDの経営状況
 元年度上半期のKDDの経営状況はき経常収入は対前年度同期比4.3%減の1,363億円、経常費用は同4.4%増の1,175億円、経常利益は同36.9%減の188億円と大幅な減益となっている。これは昭和63年9月の総額482億円(昭和63年度通年ベース)にのぼる過去最大の国際通信料金の値下げの影響が大きい。
 サービス別収入でみると、電話収入はこの値下げの影響により対前年度同期比5.0%減となった。また、テレックス収入は対前年度同期比19.7%減、電報収入は同6.4%減となった。これに対し専用収入は、企業の専用線を用いた国際通信ネットワークの整備等により同8.9%増となった。
 この結果、電話収入の営業収入に占める割合は、前年度同期より0.3ポイント減の79.6%となっている(第1-1-7表参照)。
 ウ 長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況
 元年度上半期の長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況は、第二電電(株)は、経常収入は399億円、経常費用は329億円、日本テレユム(株)は、経常収入は348億円、経常費用は304億円、日本高速通信(株)は、経常収入は110億円、経常費用は108億円であった。
 経常利益は、第二電電(株)は70億円、日本テレコム(株)は44億円、日本高速通信(株)は2億円で、3社とも順調に業績を伸ばしており、前年度は損失を計上した日本高速通信(株)も元年度上半期は黒字に転じた(第1-1-8表参照)。
 今後とも料金低廉化を図りつつサービス提供地域の拡大等、ネットワークの整備・拡充を進め、安定した経営に努めていく必要がある。
 元年度上半期の国内の電話(注)及び専用線市場は2兆5,323億円(収入額ベース)で、NTTは97.0%の2兆4,574億円、長距離系新第一種電気通信事業者は2.7%の685億円、地域系事業者等は0.3%の62億円であった。また、長距離系新第一種電気通信事業者は、昭和62年に電話サービスを開始して2年経過したが、NTTと長距離系新第一種電気通信事業者の収入には依然として圧倒的な開きがある。
 エ 地域系新第一種電気通信事業者の経営状況
 元年度上半期の東京通信ネットワニク(株)、大阪メデイアポート(株)及び中部テレコミュニケーション(株)の地域系新第一種電気通信事業者3社の経営状況は、経常収入は対前年度同期比2.7倍の56億円、経常費用は同1.7倍の122億円で、66億円の経常損失を生じている(第1-1-9表参照)。
 オ 自動車電話事業者等の経営状況
 元年度上半期の日本移動通信(株)、関西セルラー電話(株)(元年7月サービス開始)及び東京湾マリネット(株)の3社の経営状況は、経常収入は29億円、経常費用は74億円であった。元年度上半期の国内の自動車電話、携帯電話及び船舶電話市場は全体で607億円(収入額ベース)で、NTTが96.2%の584億円、自動車電話事業者等が3.8%の22.7億円であった。NTTの自動車電話(携帯電話を含む。)収入は昭和60年度以降平均年率50%以上の高い伸びを示しており、今後自動車電話事業等の市場の拡大が見込まれる中で、新事業者の参入による市場の動向が注目されるところである。
 力 無線呼出し事業者の経営状況
 元年度上半期の無線呼出し事業者29社の経営状況は、経常収入は114億円、経常費用は110億円、経常利益は4億円であった。昭和63年度上半期に比べ事業者数は10社増加し、経常収入は2.4倍、経常費用は1.6倍になっており、事業の拡大が急速に進展している(第1-1-10表参照)。
 元年度上半期の国内の無線呼出し市場は563億円(収入額ベース)で、そのうちNTTが80.2%の452億円、無線呼出し事業者が19.8%の112億円で、昭和63年度上半期の8.4%に比べ大きく伸びている。
 なお、NTTの元年度上半期の無線呼出し収入は、昭和63年12月の料金値下げの影響もあり、対前年度同期比7.6%減少で、額としては37億円の減収となっている。


(注) 自動車電話、携帯電話、船舶電話を除く。

第1-1-6表 NTTの経営状況

第1-1-7表 KDDの経営状況

第1-1-8表 長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-1-9表 地域系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-1-10表 無線呼出し事業者の経営状況

 

 

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