平成2年版 通信白書

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第2章 国際交流の進展と情報通信

(1)アジア・太平洋情報圏の現状

 ア アジア・太平洋情報圏の形成第1節でみたように我が国と世界各地域間の情報交流は北米、アジアが全交流情報量の約7割を占めている。中でもアジアは約4割を占め、最も交流情報量の大きい地域となっている。我が国からの国際電話の地域別取扱数をみたのが第2-2-5図である。
 1986年度においてはアジアが6,277万回で世界全体の46.8%を占め最も多く、ついで南北アメリカの4,024万回で世界全体の30.0%を占めている。国別では1983年度は1位が米国(本土)、2位が韓国、3位が台湾であり、以下10位までにアジア・太平洋地域の6が国1地域が含まれている。
 一方、1988年のアジア・太平洋地域内各国からの国際電話の通話先状況をみると、通話先で最も多いのは日本、米国、次いで香港、オーストラリア、英国等となっている。情報通信分野における日米を中心としたアジア・太平洋地域内の密接な交流の状況がうかがえる。
 世界各国について日本向け通話が上位5位までに入っている国・地域は、アジアでは、9つの国・地域、オセアニアでは5か国、それに米国の計15の国・地域である。
 特に日本向け通話の順位の高いのはアジアNIEs、アセアン諸国で、韓国、タイ、マレイシア、台湾は1位、インドネシア、フィリピン、シンガポールは2位となっている(第2-2-6図参照)。
 このように電話の通話状況からみると、米国、アジアNIEs、アセアン等アジア・太平洋地域は他の地域と比べ我が国との情報交流が活発に行われており、一つの情報圏が形成されている。
 イ アジア・太平洋情報圏の情報通信基盤の現状
 (ア) 国際通信ネットワークの現状と整備の必要性
 (衛星通信システムの現状)
 衛星通信システムには、全世界を対象とするグローバル衛星通信システムと限定された数か国程度を対象とする地域衛星通信システム及び自国内を対象とする国内衛星通信システムがある。
 現在、アジア・太平洋地域において運用中のシステムは、グローバル衛星通信システムとしてインテルサット及びインマルサットがある。
 インテルサットにおける太平洋地域の電話トラヒック量は、大西洋、インド洋と比べると小さいが、1984年から1988年までの5年間の平均伸び率をみると大西洋10.2%、インド洋9.7%に対して太平洋は24.5%と三大洋中最も大きい(第2-2-7図参照)。
 一方、インテルサットの国際通信回線容量は、1988年4月現在、大西洋が7万8千回線なのに対してインド洋は3万6干回線、太平洋は3万回線とまだ少ない。
 また、地域衛星あるいは国内衛星通信システムとしては、インドネシア及びその他のアセアン地域で利用されているパラパ、オーストラリア及びニュー・ジーランドで利用されているオーサット、インドのインサット及び我が国のCS、JCSAT、スーパーバード等がある(第2-2-8表参照)。
 パラパ、オーサットは国内通信に使用するほか、一部のトランスポンダを周辺諸国にリースしており、パラパはアセアン諸国の国内通信及び一部はインテルサットの認定を受けて地域国際通信に利用され、オーサットはニュー・ジーランド、パプア・ニューギニアほかの南太平洋の一部の国々の国内通信に利用されている。
 アジア・太平洋地域は多数の島しょからなっており、また、国によって砂漠や山岳に村落が点在する地域をかかえている等の地理的条件から、地上回線による通信網の整備よりも衛星通信による国内・地域ベースの通信網が適している地域が少なくない。最近、この地域にも、民間企業によるインテルサット以外の通信衛星打上げの動きが出てきている。
 (海底ケーブルの現状)
 現在の海底ケーブルの敷設状況及び建設計画を示したのが第2-2-9図である。
 アジア・太平洋地域の海底ケーブルの敷設状況をみると、通信需要の大きいハワイ・グァムを経由した日米間及び日本と韓国、アセアン諸国間が多くのケーブルで網の目のように結ばれる一方、南太平洋島しょ国地域にはケーブルは敷設されていない。
 1990年3月現在の敷設ケーブルの回線数は大西洋地域が約3万9千回線なのに対して太平洋地域は約1万2千回線となっており、衛星通信と同様に海底ケーブルにおいても太平洋地域の回線数は大西洋地域に比較すると格差がみられるが、太平洋地域については日本-北米間を結ぶ北太平洋ケーブル(NPC)が1990年末、第4太平洋ケーブル(TPC-4)が1992年に運用開始を計画するなど今後増大する需要にこたえるため多数の光ケーブルの建設計画が進められている。
 また、アセアン諸国については、21世紀に向け著しい経済成長に伴う通信需要の増加に対応するため、日本-香港-シンガポール間を結ぶ海底分岐型光海底ケーブルの構想がある。
 (イ) 各国の通信・放送ネットワークの進展と南北格差の拡大
 アジア・太平洋情報圏の通信・放送ネットワークは全体としては進展しつつあるが、詳細に見ていくと国、地域により進展状況には格差が生じている。例えば先進諸国間では国際通話はほとんどすべて自動ダイヤル化され即時通話が可能であるが、アジア地域で自動ダイヤル通話が可能なのはアジアNIEsやアセアンの一部の大都市に限られる。その他のアジア地域では手動による交換が中心であり、また、大部分の電話が主要都市に集中しているため、電話のない地方村落も多いのが現状である。
 同情報圏をアジアNIEs、アセアン、南西アジア・南太平洋島しょの3地域に分けると、通信・放送ネットワークの進展状況は、アジアNIEsが大きくリードしており、部分的には先進諸国と肩を並べるまでになっている。
 アセアン諸国は通信分野については全般的にそれほど進展していないことに加えて、近年、情報通信基盤の整備に積極的に取り組んできた国と対応が遅れている国との間に差が開きはじめており、遅れている国では今後の経済発展のボトルネックとなるおそれがある。
 南西アジア・南太平洋島しょ国地域では、通信・放送ネットワークの進展はきわめて遅れており、特に広大な村落地域が通信手段を持たないまま放置されている現状は改善が望まれる(第2-2-10表及び第2-2-11表参照)。
 (ウ)放送を利用した教育
 村落が国土に点在し、交通や教育施設の整備の遅れている地域の多いアジアや南太平洋島しょ国地域では、ラジオ、テレビ等は自国文化の育成と教育の重要な手段のひとつとなっている。
 放送を利用した高等教育の例としては、授業に放送を用いている大学(第2-2-12表参照)がアジアの7か国にある。これらの大学は相互友好関係の確立と緊密な交流を目指し、1987年11月にAAOU(アジア放送・公開大学連合)を結成してアジア地域の教育機会の均等化に貢献しようとしている。

第2-2-5図 国際電話の地域別取扱数

第2-2-6図 アジア主要国の海外通話に占める対日本向通話量

第2-2-7図 インテルサット・電話トラヒックの伸び率

インテルサット衛星地球局

第2-2-8表 世界の国内・地域通信衛星の現状

第2-2-9図 国際通信ネットワーク

第2-2-10表 アジア・太平洋情報圏内各国の通信・放送ネットワークの現状

第2-2-11表 アジア・太平洋地域の情報化指標

第2-2-12表 アジア放送大学連合会員大学概要一覧(1987年)

 

 

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