平成3年版 通信白書

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第1章 平成2年情報通信の現況

(3)通信事業の設備投資動向

 昭和55年度以降の主な通信事業体の設備投資の動向を第1-2-15図に示す。郵便事業、NTT、KDD、NHK及び民間放送事業者(有線テレビジョン放送事業者を除く。)の設備投資額合計は、昭和55年度の1兆9,378億円から元年度には2兆1,566億円に増加している。
 ア 電気通信事業者の設備投資動向
 (第一種電気通信事業者の動向)
 2年9月に郵政省が実施した「通信産業設備投資等実態調査」によると、第一種電気通信事業者全体(67社合計)の元年度の設備投資実績額(工事ベース)は2兆1,001億円であり、前回調査(2年2月実施)による昭和63年度の設備投資実績額1兆9,700億円(59社合計)に比べ6,6%の増加であった(第1-2-16表参照)。
 その内訳をみると、NTTが1兆7,355億円(対前年痩実績額比1.3%増)、KDDが554億円(同2.5%減)と投資の伸びを抑えているのに対し、新第一種電気通信事業者は、新規参入による事業者数の増加と長距離系及び自動車電話等新事業者の強い投資マインドを受けて3,091億円(65社合計)と前年度実績額2,003憶円(57社合計)に比べ54.3%増と大幅な伸びを示した。
 また、第一種電気通信事業者の2年度の設備投資実績見込額(67社合計)は2兆1,898億円(対前年度実績額比4.3%増)となっている。このうち、NTTが1兆7,200億円と前年度実績額に比〉0.9%減の見込みとなっているのに対し、KDDは、通信衛星、海底ケーブル等の伝送路施設及び電話・データ交換設備等の拡充を中心に、752億円(対前年度実績額比35.6%増)と過去最高の投資額を見込んでおり、競争力の強化がうかがわれる。一方、新第一種電気通信事業者(65社合計)は3,946億円(対前年度実績額比27.7%増)と依然高い伸びを見込んでおり、サービス提供地域の拡大、通信網の高度化等の活発なネットワーク構築投資を反映している。
 次に、新第一種電気通信事業者の設備投資額の投資目的別構成比をみると、事業を開始して間がないこと及び設備の更新時期には至っていないことから、主として需要増加に対処するために行われていることが分かる(第1-2-17表参照)。
(第二種電気通信事業者の動向)
 2年9月調査に回答のあった第二種電気通信事業者の2年度の設備投資実績見込額についてみると、特別第二種電気通信事業者(回答20社台計)が1,545億円(対前年度実績額比29.8%増)、一般第二種電気通信事業者(回答376社合計)が584億円(同58.3%増)といずれも高い伸びを示しており、投資マインドの強さがうかがえる(第1-2-18表参照)。
 産業分野全体において、情報通信機器の導入ばかりでなく、ネットワーク化に対する投資が情報化関連投資の潮流の一つになりつつある。この中で、第二種電気通信事業に関しては、これら産業界のニーズを把握して収益が好調な企業と、ニーズを把握しきれず収益が伸びない企業との差が明確になりつつあり、設備投資額にもその影響がはっきり現れている。2年9月調査に回答のあった第二種電気通信事業者のうち経常損益が明らかな事業者について、設備投資額を黒字事業者と赤字事業者に分けでみると、2年度実績見込額では黒字事業者が1社当たり12億8,300万円であるのに対し、赤字事業者は1社当たり1億1,400万円となっており、大きな格差が生じている。また、設備投資総額についてみると、黒字事業者(回答138社合計)が1,770億8,300万円であるのに対し、赤字事業者(回答144社合計)は163億6,700万円となっており、設備投資総額の大半は黒字事業者によって占められている(第1-2-19表参照)。
 イ 放送事業者の設備投資動向
 2年9月調査に回答のあった放送事業者(有線テレビジョン放送事業者を除く。)の2年度の設備投資実績見込額についてみると、NHKの628億円(対前年度実績額比37.5%増)に対し、民間放送事業者(回答152社合計)は1,115億円と前年度実績額に比べ23.1%減の見込みとなっている(第1-2-20表参照)。
 これは、昭和63年度からの広告活況が一段落したこと及びクリアビジョン、SNGシステムへの設備投資が一巡したことなどによるものと考えられる。
 一方、2年9月調査に回答のあった有線テレビジョン放送事業者の2年度の設備投資実績見込額についてみると、808億円(回答102社合計)であり、前年度実績額に比べ133.6%増の見込みとなっている。これは、回答事業者の約2割が2年度の開局であったことによるところが大きい。
 また、民間放送事業者及び有線テレビジョン放送事業者の設備投資額の投資目的別構成比をみると、「需要増加に対処、サービスエリアの拡大」が最も比率が高くなっているが、これは有線テレビジョン放送事業者の開局に伴う投資によるところが大きく、民間放送事業者については「番組制作力の向上」、「設備の更新」が主な投資目的となっている(第1-2-21表参照)。
 ウ 設備投資環境の見通し
 経済企画庁の「法人企業動向調査報告」(2年9月調査)における所属業界の景気については、3年1月から3月に関して「上昇」と判断した企業の割合が11%、「不変」が71%、「下降」が18%であり、業況判断指標(BSI:上昇と判断した者の割合から下降と判断した者の割合を引いた数値)では-7となっており、産業界全体の傾向として業況の先行きを慎重にみている。一方、「通信産業設備投資等実態調査」(2年9月調査)における通信事業のBSI指標についてみると、電気通信事業では3年度上半期のBSIは第一種電気通信事業が48.3、特別第二種電気通信事業が49.9、一般第二種電気通信事業が40.3といずれも40を超えており、景気については強気の判断をしている(第1-2-22図参照)。
 また、放送事業についてみると、有線テレビジョン放送事業ではBSI指標は昭和63年度下半期から上昇して3年度上半期が52.8となっているのに対し、民間放送事業ではBS<1>が昭和63年度下半期の65.8から3年度上半期には-14.8にまで急下降しており、広告活況が一段落した核の事業をめぐる景気を下降局面とみていることが分かる。

第1-2-15図 主な通信事業体の設備投資の推移

第1-2-16表 第一種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-17表 取得設備投資額の投資目的別構成比(電気通信事業)

第1-2-18表 第二種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-19表 損益別取得設備投資額(第二種電気通信事業)

第1-2-20表 放送事業者の設備投資額

第1-2-21表 取得設備投資額の投資目的別構成比(放送事業)

第1-2-22図 設備投資環境の見直し

 

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