平成3年版 通信白書

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第1章 平成2年情報通信の現況

(3)標準化政策の推進

 ア 電気通信の標準化に関する基本方策の策定
 電気通信の高度化、多様化が進展しているが、不特定多数のユーザ間で任意に支障なく通信するためには、端末及びシステム相互間の通信方式等において標準化が不可欠である。
 複雑化、高度化する電気通信分野の状況を反映して、増大する標準化作業に対する効率的な体制、時宜を得た迅速な標準制定、ガイドラインの明示等が求められている。これに対処するため郵政省では電気通信技術審議会に対して「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策について」の諮問を行った。
 電気通信技術審議会では、これを受けて標準化政策部会を設置し、調査、審議を重ね、3年3月に一部答申がまとめられた。その概要は次の通りである。
[1] ITU(国際電気通信連合)の標準化活動においても、有線と無線が一体となった新たな標準化機関の設立に向けて動きつつあり、これへの積極的な対応。
[2] ITUの標準化機能の強化のため、参加機関の拡大を図るとともに、国内標準化機関などの国際標準化活動への積極的な寄与を図る。
[3] 相互接続試験を実施しているHATS推進会議(高度通信システム相互接続推進会議)について、体制の強化を図る。
[4] 重要度、適切な標準制定・改定時期、標準化に当たっての留意点等を取りまとめた標準化ガイドラインに基づき、総合的な標準化計画を 策定・推進。
[5] 「広帯域ISDN」、「パーソナル通信・移動体通信網」、「プライベートネットワーク(私設網)」、「インテリジェントネットワーク」、「オーディオビジュアル」及び「ネットワーク管理」の6分野に重点的に取り組むこと。
 郵政省では、この答申を受け、今後の標準化の一層の推進を図っていくこととしている。
 イ 画像符号化方式の標準化の促進
 テレビ電話・会議システムについては、従来は異なるシステム間の相互通信ができなかったが、元年の国際電信電話諮問委員会(CCITT)の第15研究委員会(SGXV)の作業部会で、異なるシステム間でも相互通信が可能な動画像符号化方式の勧告草案が合意された。
 これを受けて、郵政省ではNTT、KDD、英国のBTRL、米国のAT&T及び国内メーカの協力を得て、元年12月にCCITT勧告草案を基にしたテレビ電話・会議国際標準システムの商用ネットワークによ
 る相互接続実験を実施した。この実験の成功が契機となり、CCITTにおいて、画像符号化に関して検討が行われ、2年12月に動画像符号化方式の勧告が完成した。
 今後、本勧告以外にシステムアスペクツ勧告が整備され、よりユーザにとって便利なテレビ電話・会議システムの普及が進むことが期待される。
 ウ 広帯域ISDNの国際標準化
 広帯域ISDNに関する国際標準化は、CCITTの第18研究委員会(SGXVIII)において行われている。
  2年11月に開催されたSGXVIII松山会合においては、広帯域ISDNの基本的事項を定めた基本勧告の勧告化手続きの適用が合意された。
 今後は、4年に詳細勧告が策定され、7年頃には広帯域ISDNのサービスが開始される予定である。
 エ オブジェクト識別子に係る推奨通信方式の制定
  オブジェクト識別子は、ISDN、開放型システム間相互接続(OS I)等による高度な通信を行う際に、端末相互間で、互いに使用する通信プロトコル、通信内容の書式(フォーマット)等に関する情報(オブジェクト)を識別し、相互接続を可能とするために用いられるものである。国際的には、CCITT及びISOにおいて標準化が行われており、その構成、符号化方式等が既に規定されている(第1-4-7図参照)。
 国内においても、CCITT勧告に基づさ、ISOの動向を踏まえつつ、郵政省告示第729号(2年12月6日)「オブジェクト識別子に係る推奨通信方式」を追加し、併せて登録事務手続きの方法等を定めた郵政省告示第730号(2年12月6日)「オブジェクト識別子の構成要素の指定に関する規程」を制定した。
 なお、推奨通信方式については、これまで、ファクシミリグループ2型装置、同3型装置、同4型装置、日本語テレテックス装置、ミクストモード通信、パーソナル・コンピュータ通信装置、コンピュータ・コミュニケーション・ネットワーク及び電子メール通信について定められている。
 オ 相互接続性確保のためのHATS推進会議の推進
 昭和60年4月の電気通信制度の改革に伴う多様な通信サービスの提供、ISDNサービスの開始等により、標準に基づいて開発されたシステムの相互接続性・相互運用性を確認する必要が生じている。これらを検討することを目的として、同年8月以来、学識経験者、利用者、メーカ、電気通信事業者、標準化機関、関連団体等の参加により「HATS(Harmonization of Advanced Telecommunication Systems:高度通信システム相互接続)推進会議」が開催されている。HATS推進会議では、2年度において、ISDNなどのシステム及びサービスについて、標準化から相互接続試験の実施までの今後約3か年の活動計画がとりまとめられた。
 また、G4ファクシミリ、電話・ターミナルアダプタ、メッセージ通信システム(MHS)、構内交換機(PBX)、アナログテレビ電話について相互接続試験が進められ、基本的な相互接続性が確認されている。今後は、LAN(ローカルエリアネットワーク)間接続、コンピューダ間通信、デジタルテレビ電話・会議装置についても相互接続試験が行われることとなっている。

第1-4-7図 オブジェクト識別子の概念

 

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