平成3年版 通信白書

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第1章 平成2年情報通信の現況

(2)宇宙通信技術開発の推進

 ア 通信放送技術衛星の開発
 通信放送技術衛星(COMETS)は、高度移動体衛星通信技術、高度衛星放送技術、衛星間通信技術、大型静止衛星の高性能化技術等の開発及びその実験・実証を行うことを目的とする衛星である。8年度に静止軌道に打ち上げることを目標に2年度がら開発に着手、主として以下の項目について開発を行っていくこととしている。
[1] 移動体通信の多様化に対応するためのKa/ミリ波バンドの中継器の高出力化、一再生中継交換機等の高度移動体衛星通信技術の開発
[2] 更に高品質な広帯域ハイビジョン放送、ISDB(統合デジタル放送)等に対応するためのKaバンドの高出力中継器、マルチビームア ンテナ等の開発
[3] 大容量衛星間通信等に対応するための大型展開アンテナ技術、衛星間伝送技術、高精度捕捉追尾技術等の開発
[4] 2トン級静止衛星に必要となる電源系や推進系の高効率化技術、姿勢制御系の高精度化技術等の開発
 イ 電波を利用した宇宙インフラストラクチャの整備方策に関する調査研究
 今後、宇宙活動は多岐にわたる様々な分野で展開されていくものと考えられる。我が国が宇宙活動を効率的かつ自在に展開していくためには、共通基盤的なシステムである宇宙インフラストラクチャの整備を進めることが、新たな長期的課題となろうとしている。
 このため、郵政省では本格的な宇宙活動時代に対応して、宇宙環境モニタリングシステムの研究を行うこととしている。我が国では、4年度に宇宙開発事業団が米国航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルを利用して行う日米共同宇宙実験プロジェクトである第1次材料実験(FMPT)への参加を契機にして、有人宇宙活動が本格的に開始される。このような宇宙活動の安全性の確保に資するためのスペーステブリ(宇宙空間に存在する使用済みの人工衛星等の不要物体)の監視システム及び太陽からの放射線やプラズマの状態を予想する天気予報システム等の整備方策の検討を行ったところである。このような状況を踏まえて、3年度から2年間は、こうじな宇宙環境モニタリングシステムを実現するために必要となる機能、システムのイメージ、国際協力の進め方等に関して調査研究を行うこととしている。
 ウ ETS-V技術試験衛星を用いた利用実験
 技術試験衛星V型(ETS-V)は、我が国で初めての550kg級三軸姿勢制御方式の静止衛星であり、昭和62年8月に打ち上げられ、郵政省通信総合研究所を中心として、移動体衛星通信に関する基礎技術を確立するための実験に利用されている。
 また、昭和62年12月から、移動体衛星通信システムの開発・利用等に関心を持つ民間企業等に対して、試験的にETS-Vを利用した実験を実施する機会を提供するとともに、各機関が移動体衛星通信システムを導入する際の利用形態、問題点等について検討することを目的とした研究会を開催し、実験を進めている。
 この実験には、2年3月末現在、19機関が参加しており、実験参加機関では、へき地や洋上での医療伝達伝送の可否の検討、衛星を用いて列・車制御を行うための実験など、種々な移動体衛星通信実験を実施している。
 エ 放送衛星技術の高度化に関する調査研究
 郵政省では、今後の衛星放送サービスに対する高度化・多様化への期待に応えるため、放送衛星3号-a(BS-3a)及び3年夏期に打上げ予定の放送衛星3号-b(BS-3b)に搭載されている広帯域中継器(帯域60MHz、出力20ワット)等を利用して、新しい衛星放送に関連した技術開発や実証実験等を行うための「BS-3利用実験」を予定している。
 この利用実験は、新しい衛星放送関連技術の開発・利用等に関心を持つ民間企業等に対してその技術開発や実証実験を行う機会を提供するものである。

 

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