平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(1)指標にみる家庭生活の情報通信環境の進展

 ここでは、家庭における情報化の進展状況を、情報装備指標、情報利用指標、情報支出指標及び情報入手可能性指標の四つの情報化指標により記述する(付表6参照)。
 ア 情報装備指標
 家庭において情報を入手するための手段の多様化の推移を表す情報装備指標は、情報通信機器の所有数と情報通信ネットワークの加入数により構成されている。
 情報装備指標は、第2-1-6図にみられるように、1世帯当たり、昭和50年度を100とすると元年度は330.1であった。1人当たりについては、昭和50年度を100とすると元年度は347.5であった。
 情報通信機器の所有数は、元年度末には1世帯当たり5.46台となった(第2-1-7図参照)。
 元年度末の情報通信機器の1世帯当たりの所有数の内訳についてみると、カラーテレビジョン受信機が1.96台になっている。また、近年伸びが目立つものはVTR及び押しボタン式電話機で、1世帝当たりのそれぞれの所有数は0.82台、0.55台となっている。
 一方、情報通信ネットワークの加入については、基本ネットワークである郵便、テレビジョン放送及び電話が広く行きわたり、今後、衛星放送の伸びが期待されている、(第2-1-8図参照)。
 元年度においては、テレビジョン放送についてはカラーテレビの普及率が99.4%(2年3月末)、電話が単身世帯を含む全世帯で86.6%となっている。その他いわゆるニューメディア(衛星放送、自主放送を行うCATV、ビデオテックス)の普及率が7.8%になっており、1世帯当たりの情報ネットワーク加入数はほぼ3加入となっている。
 情報通信機器の所有数と所得の関係についてみたのが、第2-1-9図である。
 音声多重機能を有していないカラーテレビジョン受信機は所得により所有数にあまり差がない。一方、郵政省の調査(付注1参照)によれば、電話機については、所得が高いほど所有数が増加する傾向がみられる(第2-1-10図参照)。
 イ 情報利用指標
 情報利用時間の推移を表す情報利用指標は、昭和50年を100とすると2年には90.2となり、減少傾向を示している(第2-1-11図参照)。
 2年の1人当たりの1日平均のマス・メディアの情報利用時間(平日、土曜日及び日曜日の加重平均)は、4時間10分であり、昭和60年に比べ3分減少している。昭和50年以降、減少傾向にあったテレビ視聴時間は2年には昭和60年と比べて2分増加した。それに対して、ラジオ聴取時間は昭和55年以降減少を続けており、2年には昭和60年と比べて5分の、減少となった。新聞・書籍・雑誌等の閲読時間は昭和60年に比べて微増している。
 家庭において情報利用時間の7割以上がテレビ放送を視聴するために使われており、今後、テレビジョン受信機は、VTRやゲーム用コンピュータなどの端末機器としての利用も増加していくことが予想される。
 ウ 情報支出指標
 世帯における1人当たりの家計支出に占める情報通信関連支出の割合の推移を表す情報支出指標は、昭和50年度を100とすると元年度は221.5となり、家計総支出の伸びよりも大きくなっている(第2-1-12図参照)。
 なお、情報通信機器の実質的な購入額(所有数に実質購入単価を乗じたもの)をみると、1人当たりでは昭和50年度の3万6,589円から元年度には19万292円になった(第2-1-13図参照)。
 ところで、世帯主の年齢、家族構成等の世帯属性や居住地の都市規模、他の財の価格変化の影響等が家計の支出に占める通信費シェア(通信費とは家計調査7.3分類の通信及び9.4受信料である。)に与える影響を昭和60年から元年の総務庁「家計調査」の個票により、所得階層5段階別、上期・下期別に分析したところ、特徴は以下のとおりであった(付表7参照)。
[1] 所得(総支出)のパラメータはすべてのケースで有意に負である。このことから通信は必需財であることが分かる。
[2] 通信費支出の自己価格弾性値については、統計的に有意な結果は得られていない。このことから通信支出が価格の影響を受けにくいことがわかる。
[3] 各所得階層を通じて、年間の上期と下期で通信支出のパラメータに差があることがうかがわれる。これは、季節的要因、社会的要因等によると考えられる。
 所得階層ごとの特徴を概観したのが第2-1-14表である。第1階層では持家のある世帯において上期・下期を通じて、家計支出に占める通信費シェアが上昇していることが分かる。これは他の階層においてはみられない目立った特徴である。第II階層においては上期・下期を通じて職業が常用労務者、臨時及び日雇労務者の世帯の通信費シェアが低下している。第III階層では、上期において小学生がいる世帯で、下期においては中都市に居住している世帯で通信費シェアが上昇している。第IV階層では上期・下期を通じて中学生又は高校生がいる世帯で通信費シェアが低下している。また、食料価格指数との関係をみると上期・下期を通じて通信費シェアが低下している。第V階層においては、上期・下期を通じて、持家がある世帯及び就業人員数が複数である世帯で通信費シェアが低下していることが分かる。
 第I階層から第V階層をとおして、大学生がいる世帯において家計支出に占める通信費シェアが低下していることが分かる。
 すべての所得層において、世帯主の年齢が40歳未満又は40〜54歳であると、上期か下期のいずれか又は上期・下期を通じて家計支出に占める通信費シェアが低下している。また、職業が商人・職人の世帯の下期の家計支出の通信費シェアが上昇するという特徴が現れている。これは職業上の必要にもよると考えられる。
 エ 情報入手可能性指標
 家庭において入手可能な情報量の推移を表す情報入手可能性指標は、昭和50年度を100とすると、元年度は149.9となった(第2-1-15図参照)。
 情報入手可能性指標は、家庭に対し提供された情報量の推移を表す情報提供指標に利用時間を乗じたものである。情報入手可能性指標の昭和63年度以降の伸びが大きいのは、パッケージ系が大きく進展したためである(第2-1-16図参照)。
 パッケージ系の情報提供量は、音声系ソフト(レコード、CD、テープ)及び画像系ソフト(ビデオテープ、ビデオディスク)の延べ記録時間の合計である。パッケージ系情報提供量の動向を示したのが第2-1-17図である。VTRの家庭への普及と軌を一にして昭和59年度以降、画像系の伸びが目立っている。今後は、ビデオテープやビデオディスクの販売量等の増加により画像系情報提供量は増えていくことが予想される。

第2-1-6図 情報装備指標の推移

第2-1-7図 家庭における情報通信機器所有数の推移

第2-1-8図 ニューメディア加入数の推移

第2-1-9図 世帯の年間収入階層別情報通信機器の所有数

第2-1-10図 電話機の所有台数と所得

第2-1-11図 情報利用時間の推移

第2-1-12図 家計総支出と総情報支出の推移

第2-1-13図 情報通信機器への支出額の推移

第2-1-14表 通信支出に有意な説明変数

第2-1-15図 情報入手可能性指標の推移

第2-1-16図 情報提供指標を構成する各系の情報提供量の推移

第2-1-17図 パッケージ系の情報提供量の推移

 

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