平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(2)家庭生活の情報通信環境の多様化の進展

 ア 家庭生活における情報通信環境の多様化の進展
 経済企画庁の消費動向調査によると、元年度末現在、1世帯当たりのカラーテレービジョン受信機の所有数は1.96台、同じくVTRは0.82台、ラジオカセットが1.09台、ワープロが0.25台、パソコンが0.11台、押しボタン式電話機が0.55台となっている。
 また、同調査によると、元年度末現在の1世帯当たりの情報通信機器の普及率は、カラーテレビジョン受信機が99.4%、VTRが66.8%、ラジオカセットが73.5%、ワープロが24.1%、パソコンが10.6%、押しボタン式電話機が39.6%となっている。
 元年度末の住宅用加入電話契約率は全身世帯を含む全世帯で86.6%に達しており、必要としている世帯にほぼすべて普及したとみてよいであろう。
 郵政省の調査(付注1参照)によると電話機の所有数は1世帯当たり約1.6台となっている。
 このように情報通信機器では、1世帯当たりカラーテレビジョン受信機が約2台、電話機が約1.6台に、まで普及しており、この両者が家庭において基本的な機器としての地位を占めている。
 ここでは、家庭の情報通信環境の多様化の進展について、テレビジョン受信機及び電話機を中心に概観する。
(ア)テレビをめぐる多様化の進展
(複数台所有の進展)
 1世帯に約2台普及しているテレビジョン受信機の設置場所については主に居間・応接間であり、テレビジョン受信機については、家族共有型利用を基本に個人専用型若しくはそれに近い形態の利用の二極分化が進展している(第2-1-18図参照)。
(高級化・高品質化の進展)
 テレビジョン受信機は、最近の傾向として、画面の大きいものが好まれている。過去5年以内に購入したテレビジョン受信機の画面の大きさと5年より以前に購入したテレビジョン受信機の画面の大きさの差は4インチ〜5インチとなっている(第2-1-19図参照)。
 また、(社)日本電子機械工業会によるとカラーテレビジョン受信機のサイズ別国内出荷動向は第2-1-20図のようになっている。また、同会によると2年のテレビジョン受信機の最多販売機種のサイズは大型化している(第2-1-21図参照)。
 大型のテレビジョン受信機の低廉化は進展しているものの、28型〜29型の価格は従来の最多販売機種である20型〜21型の2倍程度である。家庭におけるテレビジョン受信機の大型化が進展しているのは、近年の技術の進歩により、ブラウン管を大きくしても色のにじみやブレの少ない映像を写しだすことが可能になり、これがVTRや衛星放送の普及により、テレビについても迫力のある映像をいい音質で楽しみたいという消費者の高級指向とあいよったことによると考えられる。
(多機能化・多目的利用の進展)
 テレビジョン受信機にかかわる機能、サービスの有無及び利用状況は第2-1-22図のようになっている。
 (社)日本電子機械工業会によると、国内出荷台数に占める音声多重放送対応型テレビジョン受信機の割合は、2年には53.6%であり、最近人気を集めている衛星放送のチューナ内蔵型テレビジョン受信機が2年には18.7%となっている。また、テレビジョン受信機自体に関して、機能の拡充が進展している。
 利用状況については、衛星放送が、普及率はまだ低いものの毎日利用するとした世帯が63.3%と、他と比較してかなり高い値を示している。また、機能の有無に関して現在「無」とした人についでも、衛星放送を「利用したい」とした人の割合は高く、今後ともより広く普及していくことが予想される(第2-1-23図参照)。
 また、テレビジョン受信機の周辺機器の一つとして、近年急速に普及したものにVTRが挙げられる。今回の調査では80.5%の世帯がVTRを所有し、そのうちの72.1%が週に2〜3回以上利用している。また、ゲーム用コンピュータについては、36.7%の世帯が所有している。週に2〜3回以上利用する世帯が58.0%となった。家族形態でみると子供のいる世帯の利用率が高くなっている。
 VTRとゲーム用コンピュータの今後の利用意向については、「利用したい」とした人は、VTRは46.6%であったのに対し、ゲーム用コンピュータは6.4%であった。
 このように、テレビジョン受信機は複数台所有や大型化が進展するとともに、テレビジョン受信機自体の多機能化が進展し、衛星放送の開始によりチャネル数も増加している。また、テレビジョン受信機を単に放送番組の受信機とせずに、VTRやゲーム用コンピュータをつないで独自の楽しみ方をするようになってきている。機器を購入する際の選択理由としても他の機器との接続や多機能であることを挙げていることがらも、今後、家庭においてはテレビジョン受信機に様々な情報通信機器を接続するという形態での融合化が進展していくものと考えられる。
(購入動機)
 過去5年以内にテレビジョン受信機を購入した世帯にその理由を尋ねたところ、「古くなったため」、「故障したため」を併せた買い替えが65.9%に対し、「複数台必要となったため」といった買い増しが29.0%である。経済企画庁の消費動向調査においても、元年度のカラーテレビジョン受信機の購入世帯は19.9%で、その内訳は、新規が3.0%、買い替えが10.0%、買い増しが6.9%となっている。
 その機種に選定した理由としては、価格を最も重視している(第2-1-24図参照)。
(イ)電話をめぐる多様化の進展
 電話機の設置場所については、まだ、電話機の1世帯当たりの所有数が約1.6台であり、テレビジョン受信機ほどには複数台所有が進展していないため、居間・応接間を中心にだれもが利用しやすい場所に設置されている(第2-1-25図参照)。
(高機能化・多機能化の進展)
 電話機は昭和60年に自由化されてから、多くの商品が市場に出回っでいる。電話機の国内出荷動向をみると、昭和62年に一般に製造・販売することが認められたコードレスホンの伸びが著しい。通信機械工業会によると、コードレスホンの生産額は飛躍的に伸びており、今後とも増加傾向を維持すると予測されている(第2-1-26図及び第2-1-27図参照)。
 家庭における電話機にかかわる機能、サービスの有無及び利用状況は第2-1-28図のようになっている。週に2〜3回以上利用する機能は、短縮ダイヤル機能、キャッチホン機能、留守番電話機能の順に多かった。
 機能の有無について現在「無」とした人に今後の利用意向を尋ねたところ、「利用したい」とした機能は、現在普及状況が15%のコードレス機能が39.1%で最も高く、以下、留守番電話機能、キャッチホン機能の順となった(第2-1-29図参照)。
(購入動機)
 過去5年以内に電話機を購入した世帯にその理由を尋ねたところ、「古くなったため」、「故障したため」を併せた買い替えが34.1%、「複数台必要になったため」という買い増しが31.6%となっている。テレビジョン受信機と比べて故障をその理由とする割合は格段に低くなっている。「その他」の理由として一番多かったのが、「コードレス、留守番機能等が必要となったため」で、多機能であることが電話機にも求められている。
 経済企画庁の消費動向調査によれば、元年度における、押しボタン式電話機の購入世帯は9.4%で、その内訳は、新規が4.0%、買い替えが3.3%、買い増しが2.2%であった。
 機種を選定するにあたっては、機能が多いことを価格よりも重視している(第2-1-30図参照)。
 なお、家庭においてテレビジョン受信機を購入するに際しての決定者については男性が極めて高いが、電話機については女性の割合が増加している。これは購入単価の差によるものと考えられる。
(ファクシミリの普及)
 ファクシミリは、情報伝達手段として他の通信メディアに比べ即時性、記録性、操作性、再現性、情報の信頼性等の点ですぐれており、従業者数が300人以上の企業での普及率は99%と、オフィスに広く行きわたっている。
 しかし、現在のところ、ファクシミリを設置している家庭は事業用と兼用のものを含めても少ないのが現状である(第2-1-31図参照)。
 ファクシミリを利用したことがある人の43.0%が会社での利用に限られ、ファクシミリはオフィスで利用される域を出ていないことが分かる。
 家庭にファクシミリを設置する意向については、「設置する気はない」が「設置したい」を大きく上回っている。
 ファクシミリが家庭に普及していくに際しての障害になっているものとしては、価格、維持費、操作性等が挙げられている(第2-1-32図参照)。
 どのくらいの価格になれば購入するかについては、5〜6万円とする者が最も多かった。
 これらのことから、ファクシミリには維持費を含めてコスト面での低廉化が普及のために求められている。これに併せて、ファクシミリは、家庭においてどのように活用していくのかが不明確な情報通信機器であることも考えられ、家庭への普及には今しばらくの時間が必要であろう。
 イ 家庭生活における情報通信環境の多様化の進展のために
(ア)情報通信サービス等の一層の充実
 これまでみてきたように、家庭に提供されている情報サービスや家庭における情報通信機器の利用は、量、質ともに増加してきているが、今後とも種類と量の充実、機器の目的に適した機能の向上等に努めていくことが重要である。
 情報通信機器の多様化に伴い、個々の機器の機能も多様化・複雑化してい器。例えば、あるメーカでは、家庭向け電話機用にコードレス機能及び留守番電話機能を基本的機能としてその他に30種の機能を用意しており、最多販売機種でも26種もの機能を有している。家庭用電話機全機種の機能数の平均は1台当たり20機能である。
 しかしながら、テレビジョン受信機と電話機についてみると機能やサービスの利用頻度はそれほど高くないという実態がうかがわれる(第2-1-22図及び第2-1-28図参照)。
 その原因の一つには供給側が役立つもっと考えても、家庭においてはあまり必要としないこともあるためと思われる。供給側はサ-ビズ等につき、利用者の情報活用能力に沿って、必要なものが何かを常に考えるとともに、利用者のニーズを適確に吸い上げることが一層求められている。
 また、大型のテレビジョン受信機やVTRの普及などが一層進展すると、ソフトの充実がますます重要になってくる。既に我が国の企業が米国の映画会社を買収するなどの動きをみせており、今後、良いソフトをいかに大量に提供していくかが情報通信環境の多様化の進展にとってもますます重要となる。
(イ)情報通信機器、通信料金の一層の低廉化
 テレビジョン受信機や電話機の価格の動きをみると、高機能化しながらも価格の低廉化が進んでいる。
 テレビジョン受信機や電話機を購入するに際しての機種選定理由では価格に重点が置かれていた。これにより情報通信機器の購入に際しては、まず価格を決定してからその枠内で選ぶということが推測される。今後、ファクシミリが家庭に普及していくためにも、価格が一層低廉化することが必要であるとする回答が多かった。
 また、情報提供サービスが進展していくためには、情報内容の充実とともに、通信料金の一層の低廉化及びサービスの種類によっては衛星放送やキャプテンにみられるように全国均一料金体系の導入も必要とされる場面が考えられる。
 情報通信機器及び情報提供サービスの普及については価格の一層の低廉化が鍵となろう。
(ウ)サービスの提供者・利用者双方のモラルの向上便利なサービスであればあるだけ、利用者側のモラルが問題となる。
 また、現在、話題になっているダイヤルQ2は、情報の利用者が支払う料金を、IP(情報提供者)に代わってNTTが通話料の請求とともに併せて回収する情報料回収代行サービスであり、情報ビジネスを振興するうえでは画期的なサービスである。しかし、ダイヤルQ2についてはIPが流したポルノ情報等を親が知らない間に子が利用し、、親のもとへ莫大な額の請求書が届くなど、サービスの提供の在り方等が社会的に論議を呼んだことから、提供者側のモラルも問題となる。
 この件に関しては、IP側が大手IPを中心に番組の自主審査機関を設立する一方、NTTは加入電話契約者の希望により加入電話ごとにダイヤルQ2を利用できないようにしたり、このような利用制限が不可能な地域については一時提供をとりやめるなど、利用者側でも防御できる手段を講じるという対策がとられた。
 情報を提供する側とそれを利用する側は、社会通念に則して情報を提供し、また、利用することが求められよう。情報サービスが健全に成長していくためには、提供者側には利用者側の利益を守るためのシステムづくりが望まれる。

第2-1-18図 家庭におけるテレビジョン受信機の設置場所

第2-1-19図 家庭におけるテレビジョン受信機のサイズの変化

第2-1-20図 テレビジョン受信機のサイズ別国内出荷動向

第2-1-21図 テレビジョン受信機の最多販売機種のサイズ及び価格の推移

第2-1-22図 テレビにかかわる機能,サービスの有無と利用状況

第2-1-23図 テレビにかかわる機能,サービスの今後の利用動向

第2-1-24図 テレビジョン受信機を購入する際の機種選定理由

第2-1-25図 家庭における電話機の設置場所

第2-1-26図 電話機の国内出荷台数の動向

第2-1-27図 機種別電話機生産額の推移

第2-1-28図 電話にかかわる機能,サービスの有無と利用状況

第2-1-29図 電話にかかわる機能,サービスの今後の利用動向

多機能電話機

第2-1-30図 電話機を購入する際の機種選定理由

第2-1-31図 ファクシミリの家庭への普及状況

第2-1-32図 ファクシミリが家庭に普及していく際に障害になること

 

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