平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(1)地域の生活情報通信環境の進展

 ア 地域における情報交流の現状
 既にみたように、電話、郵便などのパーソナル・メディアによる情報の交流と地域との関係については、電話では約9割、郵便では約6〜7割が同一ブロック内における交流である。その内訳をみると、かなりの部分が同一都道府県内における交流であり、それ以外ではブロック内の中核的な都道府県との交流の割合が高くなっている(第1章第3節参照)。
 一方、テレビジョン放送等のマス・メディアによる情報の交流については、大都市、とりわけ東京との交流の割合が高くなっている。
(テレビジョン放送による情報交流の現状)
 テレビジョン放送は、今日、地域における基本的な情報入手手段であり、民間テレビジョン放送が開局すると、地域に供給される情報量が増加するなど、地域の情報化に大きく寄与している。ここでは、NHKの総放送時間に占める自局編成比率から、放送を通じた情報交流の現状についてみる。
 NHK総合放送の地域における自局制作番組の比率は一般的に民間放送のそれを上回っている。元年度におけるNHK総合放送の自局編成比率(ここでは、全国各地の放送局が自局で編成する番組放送時間及び地域独自の番組放送時間の合計が総放送時間に占める比率をいう。)を各都道府県の放送局別にみると、東京は、全国放送を行っているNHKの番組制作の中心であるという性格から、83.4%と高い比率を示している(第2-1-33表参照)。
 その他の地域についてみると、東京に次ぐ大阪が24.0%であり、それ以外の地域では11〜17%の比率となっている。
 イ 地域における生活情報通信環境の形成
 以上みたように、地理的、社会経済的にかかわりの深い地域においては、パーソナル・メディアを通じた情報の交流が密接に行われていることから、ブロック、県といった地域においてひとつの地域情報圏が形成されているとみることができる。パーソナル・メディアを通じた情報の交流についても、この地域情報圏を越えた交流がみられる。その相手先はほとんど東京などの大都市圏であり、また、ブロック相互間の結びつきは稀薄である。
 これに対して、生活の主たる情報源であるマス・メディアにおいては、そこに流通する情報は大都市、とりわけ東京から発信される情報に大きく依存する形で全国規模の情報圏が形成されているといえる。この地域情報圏と全国規模の情報圏は、地域独自の情報通信基盤と全国規模の情報通信基盤によって支えられている。この両者の情報通信基盤に支えられて地域の生活情報通信環境が形成されている。
 ウ 地域における情報通信基盤の整備状況
 地域における情報の交流は、電話、放送、郵便など全国的な情報の交流と地域内の情報交流を支える情報通信基盤と、CATVやテレトピア指定都市などにおいて各地域の特性に応じて進められている比較的地域で完結した情報通信基盤によって支えられている。ここでは、全国的な情報通信基盤と各地域の特性に応じた情報通信基盤に分けて都道府県別の状況について概観する。
(ア)全国的な情報通信基盤の整備状況
 全国的な情報通信基盤のうち代表的なものとして、電話、テレビジョン及び郵便にかかわる基盤の整備状況についてみる(第2-1-34表参照)。
(電話にかかわる基盤の整備状況)
 NTTが個々の電話回線を収容して電話交換を行うために各地域に設置している加入者線交換機における電話回線の収容能力(個々の交換機が有する端子数の合計)を、各都道府県の人口に対する比率でみると、東京が0.7(端子/人)と高くなっているほかは、いずれの地域も0.4〜0.5(端子/人)に集中している。このように、電話にかかわる基盤の整備状況については全国的に進展しており、地域による格差はほとんどみられない。
 また、ISDNサービスをはじめとする新しいサービスが早期に展開されるためには、電話網のデジタル化が重要な課題である。そこで、NTTが設置している加入者線交換機のデジタル化率(総端子数に占めるデジタル化された端子数の比率)について都道府県別にみると、埼玉、千葉、神奈川、愛知及び大阪が40%を超える一方で、徳島、沖縄など10%前後の県もあり、デジタル化の進展状況には地域による格差がみられる。
(テレビジョン放送にかかわる基盤の整備状況)
 民間テレビジョン放送における基盤の整備状況についてみるため、都道府県内において最も多くの放送局(中継局を含む。)を設置している民間放送事業者の放送局数について、NHKの放送局数と比較してみると、NHKの局数を超えている地域がある一方で、NHKの半数以下の地域もあるなど、民間放送が見えにくい地域が多く存在していることがわがる。
(郵便にかかわる基盤の整備状況)
 地域における郵便局の設置状況を都道府県別に1局当たりの人口でみてみると、最も多い県と最も少ない県とでは5.6倍となっているものの、輸送配達体制まで含めてみてみると、昭和59年2月の郵便輸送システムの改善により、全種類の郵便物の全国翌日又は翌々日配達体制が確立されるとともに、昭和61年6月に速達取扱地域を大幅に拡大したことにより、全国的な輸送配達体制の充実が図られている。
 また、郵便施設についても、郵便局を毎年約100局、郵便ポストを毎年約2,500本設置するなど、整備を進めているところであるが、大都市においては、郵便の利用状況に比し、相対的に郵便局が不足している。
 以上みたように、地域における全国的な情報の交流を支える基盤についてはおおむね整備が進展しつつあるものの、電話におけるデジタル化の進展の格差、放送における民間放送局とNHKの中継局数の格差、郵便における大都市部の窓口機関の不足等、地域によって整備状況に格差が生じている部分があるという問題がみちれる。
(イ)地域独自の情報通信基盤の整備状況
 地域の特性に応じた地域独自の情報通信基盤の整備状況を概観するため、地域系、自動車電話及び無線呼出しの各新第一種電気通信事業者及び第二種電気通信事業者の事業者数、並びに多チャネルCATV事業者の設置する施設数についてみる(第2-1-35表参照)。
 第一種電気通信事業については、2年度末現在において、無線呼出し事業者が全都道府県に参入しているほか、地域系電気通信事業者と自動車電話事業者については一部に未参入の地域がある。
 第二種電気通信事業については、事業者の東京への集中が顕著であり、2年12月末現在、全体の36.1%に当たる332事業者が東京に所在している。また、東京圏(東京、神奈川、埼玉及び千葉)、大阪圏(大阪、兵庫及び京都)並びに名古屋圏(愛知及び三重)の3大都市圏に全体の59.0%に当たる543事業者が集中している。
 3年1月末現在の多チャネルCATVの都道府県別の許可状況をみると、長野が18施設、東京が15施設で突出しているほかは比較的各地域に許可施設が散在しているが、秋田、福島、茨城、群馬、和歌山及び鹿児島の6県については該当する施設が設置されていない。
(ウ)地域における情報通信基盤整備の取組状況
 地域における情報通信基盤整備の主な取組状況について概観する(第2-1-36表参照)。
(テレトピア構想に基づく取組)
 テレトピア構想は、地域振興における通信の重要性を踏まえ、モデル都市に様々なニューメディアを導入し、全国普及の拠点とするとともに、地域社会の振興に資する施策として昭和58年に郵政省が提唱したものである。「テレトピア指定地域」としては、2年度末現在、44都道府県において87地域が指定されている。指定地域全体で構築が予定されているシステム数は375システムであり、そのうち198システムが既に運用されている。
(民活法を活用した施設整備に対する取組)
 昭和61年5月に施行された民活法(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法)に基づく郵政省所管施設であるテレコム・リサーチパーク(電気通信研究開発促進施設)、テレコムプラザ(電気通信高度化基盤施設)、マルチ・メディア・タワー(多目的電波利用基盤施設)及びテレポート
(衛星通信高度化基盤施設)については、2年度末現在、12都道府県において13施設が認定されている。
(地域振興のための電波利用プロジェクトによる取組)
 郵政省では昭和63年以来、各地方局ごとにモデル地域を指定し、当該地域の実情に応じたシステムの構築・導入を図ることによって地域の活性化に貢献しようというプロジェクトを開催しており、2年度末現在、17都道府県において14のプロジェクトが推進されている。
(ハイビジョン・シティ構想に基づく取組)
 郵政省では、ハイビジョンを都市の生活空間に導入し、活気と潤いにあふれた先進都市を構築することにより、地域の活性化と魅力ある都市づくりを目指すハイビジョン・シティ構想を提唱しており、2年度末現在、22県において23地域がモデル都市に指定されている。
(郵トピア構想に基づく取組)
 郵政省では、活力ある快適な地域社会の形成に寄与するとともに、新しい郵便サービスの実験を行うことを目的とした「郵トピア構想」を昭和62年4月から推進しており、2年度末現在、40都道府県において44地域がモデル都市に指定されている。
 また、自治省調査によって地域情報通信システムのシステム別の整備状況についてみると、全国で320システム(2年5月1日現在)が運用されている。システムの種類では産業関係情報システムが106システムと最も多く、次いで気象・防災情報システム、医療・福祉情報システムの順となっている(付表8参照)。

第2-1-33表 地域におけるNHKテレビジョン放送の状況

第2-1-34図 地域における全国的な情報通信基盤の整備状況(元年度末現在)

第2-1-35表 地域独自の情報通信基盤の整備状況

第2-1-36表 地域における情報通信基盤整備の取組状況(2年度末現在)

 

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