平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(2)地域の生活情報通信環境における問題点

 以上みてきたように、地域における生活情報通信環境は、地域情報圏と全国規模の情報圏とのかかわりあいを中心として形成されており、それを支える情報通信基盤も整備されつつあるが、そこには、次のような問題点もある。
[1] 情報通信基盤の整備状況には、地域による格差があること。
[2] 比較的地域独自の情報ニーズにこたえ得る情報通信基盤が整備されても、現状では全国規模の情報交流機能が中心となり、地域情報圏の交流に重点を置く情報通信基盤としての機能をなかなか果たし得ないこと。
[3] 地域から全国に向けての情報発信が極端に少なく、全国規模の情報圏の多極化が進んでいないこと。
 [1]の問題については、(1)項でみてきたとおりである。また、地域独自の情報通信基盤についても、整備状況や取組状況等は地域によって一様ではない。更に[2]の問題については、テレビジョン放送の難視聴解消を目的として設置されたものが大半であるようなCATV等にその現状をみることができる。ただし、CATVは、最近次第に多チャネル化が進む傾向にあり、その番組も既存の民間テレビジョン放送や衛星放送の再送信、あるいは映画やスポーツ番組のほか、地域独自の番組を制作・放送するものが増えており、地域情報圏を支える情報通信基盤としての機能を果たすことが期待される。[3]の問題については、情報の東京一極集中と大きくかかわる問題である。ここでは、情報の生産・発信に着目し、その現状について概観する。
(情報の東京一極集中)
 テレビジョン放送における情報交流の現状についてみたように、全国的な情報通信基盤を通じて地域に流通する情報は、国や企業等の中枢管理機能等の東京一極集中を背景に、その大部分を東京からの発信によっている。情報の生産・発信等に携わる事業者の地域における所在状況についてみると、その東京への偏在は顕著であり、情報の東京一極集中の現状がうかがわれる。
 [1] 番組製作会社の所在状況
 国内にある番組製作会社の所在地を都道府県別にみると、元年度においては、全国の約5割に当たる399社が東京に集中しており、大阪の69社がこれに次いでいる(第2-1-37図参照)。
 [2] ビデオテックス情報提供者の所在状況
 3年1月末現在において、NTTのビデオテックス通信網に接続して各種のサービスを提供する情報提供者(IP)の所在地についてみると、全国の約4割に当たる254のIPが東京に集中しており、46IPの大阪がこれに次いでいる(付表9参照)。
 [3] データベースサービス事業者の所在状況
 データベース・サービスのプロデューサあるいはディスト,リビュータとして通商産業省の「データベース台帳総覧」(元年度度)に収録されている企業の所在地についてみると、東京に所在しているものが約9割に当たる96企業となっており、著しい東京への集中がみられる。
[4] 書籍・雑誌等の出版社の所在状況
 電気通信以外のメディアについても、情報の一極集中の現象をみることができる。書籍・雑誌等の発行所の所在地についてみると、元年度末現在で全国の8割に当たる3,452社が東京に集中している。これは、大阪の211社、京都の136社と比較しても圧倒的に多数であり、出版による情報についても東京からの発信比率が極めて高いことかうがかわれる。
 以上みた情報の生産・発信等に携わる事業者の全国における所在の状況から、情報発信の東京への一極集中の現状は明らかである。
 今後、このような情報の一極集中を是正し、地域・全国規模・世界規模の各情報圏における情報の交流を一層活発化させるためには、地域から大都市、さらには世界に向けて発信される情報の流れを増大していく必要があり、地域における情報発信力の強化は重要な課題である。

第2-1-37図 地域における番組制作会社の所在状況

 

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