平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(2)ライフスタイルの変化と情報通信

 以下では、社会経済的な変化やライフスタイルの変化と、情報通信とのかかわりについてみていくこととする。
 ア 生活時間面の変化と情報通信
 生活時間面の変化と情報通信とのかかわりの例としては、コンビニエンス・ストアの発展が挙げられる。コンビニエンス・ストアについては、限られた店舗面積の中で、利用層である男女独身者などの小世帯や学生などの多様な二-ズにこたえるため、バーコードを用いたPOSシステムを利用した在庫管理と、これに結びついた配送体制が威力を発揮した。現在ではほとんどの飲食料品に添付されているこのバーコードは、在庫管理の簡易な方法として一般化されており、売れ筋商品の分析や在庫管理、過剰なストックの排除を可能にするうえで大きな効果があった。
 現在のコンビニエンス・ストアにおいては、単に飲食料品や生活用品の販売に限らず、電気・ガス等の公共料金の払い込み代行、生命保険会社の加入事務の取り扱いやチケット販売、あるいは、ファクシミリの送受信サービスや小型物品取次等、各種のネットワークサービスが利用できるようになっており、いわば総合的なネットワークサービスの提供の場となっている。
 また、郵便局、銀行等の各種金融機関のネットワークについても、各支店等における営業時間の延長、現金自動支払機(CD)、現金自動預け払い機(ATM)の稼働時間の延長(土・日曜にも夕刻まで)などがみられ、都市銀行のATMでは土・日曜においても送金の予約ができるようになってきている。このような各種金融機関のCD/ATMは相互に提携・接続(注)されており、いつでもどこでも金融サービスが利用できるなどのサービス体制が整えられるなど、時間面をはじめとした利用者の生活の変化に対応している。
 一方、クレジットカードの普及は、・金融機関の休業日あるいは営業時間外でも、また、海外においても、クレジットカ一ド各社のデータベースにアクセスすることにより信用照会が受けられ、後日、指定金融機関からの自動引落しがなされるシステムが構築されている。
 また、こうした情報通信によるサービス提供は、利用者の利便とともに、金融機関の土曜閉店などにみられるように、労働時間の短縮にも貢献するものである。
 このように、生活の各方面における時間あるいは空間を超えた利便性の向上に情報通信が果たす役割は大きい。
 イ キャッシュレス社会と情報通信
 キャッシュレス時代を支えるクレジットカードは、消費者自身が直接ネットワークに接触することはないものの、クレジッカードのネットワークを利用しているという面で情報通信と深くかかわっている。
 クレジットカードには、銀行系、信販系、デパート系、流通系等各種のものがあり、発行枚数についても第2-1-50表のとおり順調に伸びており、元年3月の累計発行枚数は1億4,000万枚以上となっている。このようなクレジットカードの普及は、提供者側にとっては、顧客情報管理の促進という面からもその効用には大きいものがある。
 また、プリペイドカードについては、NTTによるテレホンカードが代表的なものであるが、昭和57年のカード式公衆電話の設置開始に合わせて導入され、元年度には約3億枚(累計で10億枚以上)が発行されている。郵政省が発行している「ふみカード」の発行枚数は、2年度末累計で2,010万枚となっている。
 ウ 余暇志向と情報通信
 余暇と情報通信との関係においては、旅行や観劇等の空席状況のオンラインによる照会やチケットの予約といった面のほか、余暇・自由時間の利用情報を情報通信メディアを通じて入手したり、生涯教育やパソコン通信など情報通信の利用がそのまま余暇の過ごし方となるなど、今後、かかわりが深くなるものと考えられる。
 郵政省の調査によると、現在の余暇活動に関する情報入手先としては、「テレビ」の70.7%が圧倒的であり、「新聞」58.6%、「口コミ」29.2%と、家庭における従来からの基本的情報メディアへの依存度が高く、「雑誌・専門誌」といった専門的なメデイアは、これらの基本的情報メディアを補完するメディアとして利用されている(45.8%)。
 これに対して、今後利用が増えると予想される情報入手先としては、「テレビ」53.3%、「新聞」26.7%、「雑誌・専門誌」37.7%と、従来のメティアの低下がみられる一方、「パソコン通信」23.8%、「カタログ」23.6%、「ダイレクトメール」20.1%、「ビデオテックス」17.9%、「CATV」14.6%と、ニューメディア等への期待度が平均して高くなっている(第2-1-51図参照)。
 エ 家族構成の多様化と情報通信
 高齢化の進展や核家族化の進展に伴う世帯構成員数の減少や女性の社会進出の進展等により、従来の成年男子を中心とした構成から高齢者と女性の社会進出を含んだ構成へと家族構成の転換が進んでいる。この結果、家庭生活を維持・運営するための、主に人により提供されていた各種サービスについて、各構成員への相対的な負担の増大がみられるようになっている。その一方で、生活の質の向上を求めるニーズは強く、またニーズ自体も多様化するなど、きめ細かな対応が必要になるものと考えられる。
 家事・育児の代行あるいは省力化サービス等の普及は、女性の社会進出を支えている。人手にかかる作業を代行させるため、例えばファジー理論応用の家庭電化製品の普及は、人手とのギャップを埋める意味において有用であった。また、単身者あるいはDINKSといった世帯にとっても、留守番電話など不在時対応サービス等への欲求が強いものと考えられる。このような状況の下、今後は、外出時において家をコントロールでき、あるいは家のセキュリティーを確認・指示することを可能とするサービス等へのニーズが高まるものと考えられる。
 また、高齢化社会への対応としては、医療関係の対応に最もニーズが高まるであろう。従来は電話機におけるシルバーホン等の個別機器での対応がなされてきたが、今後は、在宅医療システムといった総合的なネットワーク型のサービス・システムの整備が促進されるものと考えられる。
 一方、生涯学習ニーズも高まることが予想される。現在既に放送大学による放送が一部地域を対象として実施されており、レベルの高い学習の機会を広く国民に提供するためにも、現在、放送大学学園において、全国展開への検討が進められているところである。
 今後、情報の地域間格差の是正のうえからも、各地を結ぶネットワーク型のシステムの構築が必要である。現在、既に一部大学においてマイクロウェーブ回線等を利用した講義等が導入されているが、このようなサービスに対する期待が高まると考えられる(第2-1-52図参照)。
 その他、今後、サテライト・オフィスの導入が進めば、情報通信の果たす役割はますます大きくなると考えられる。情報通信機器の一般化により、例えば、家庭で自治体等の各種公共的サービスが受けられるなど、家に居ながらにして各種のサービスが受けられるシステムの進展が期待できよう。現状においても既に、ホーム・バンキング(金融決済業務)、ホーム・ディーリング(証券売買業務)の可能な端末機器の普及が始まっており、プッシュホンによる航空券予約などが一般化している状況は、今後の方向性を示唆するものと考えられる。
 オ 文化・教養への志向と情報通信
 情報通信と文化とのかかわりについては、手紙文化、映像(放送)文化といった情報通信そのものの持つ文化性のほか、ハイビジョンによる映像ライブラリーなど、文化の保存・伝達における情報通信メディアの活用が最近注目されている。郵政省においては、郵便友の会、シニア郵便友の会の育成を通じ、手紙文化の振興を図っているところである。
 また、情報通信は国内外の産業、文化の交流を進めるうえで大きな役割を果たしている。例えば、海外との文化交流といった面においては、オペラ、音楽会、又は海外の博物館の紹介番組といった映像情報が随時放映されるなど、普段から家に居ながらにして海外文化に触れることを可能にしているほか、ふるさと小包、ふるさと絵葉書といった媒体が効果的に利用されている。特に海外ふるさと小包に関しては、3年4月から海外における利用も可能となるなど、国際的規模においても我が国のふるさと文化の交流がなされ得る状況となっている。
 今後は、情報通信の保存性、あるいはリアルタイム性といったあらゆる機能・特長を生かし、国内外における文化交流のために、また、地域を超えた学習のツールとして、あるいは我が国と外国との相互理解を促進する手段として貢献することが期待される。
 カ 国際化の進展と情報通信
 ここでは生活にかかわる社会情報の国際化の面について考察する。
 2年度における社会的トピックスとして記憶に新しいのは、東西ドイツの統一と湾岸戦争の勃発であり、ベルリンの壁の崩壊や多国籍軍のバグダット空襲の模様を伝えた衛星中継は、生の世界情勢に家庭レベルで直接的に接触し得た好例として特徴的な出来事であった。映像を介したこのような国際情勢への接触状況は、後に出版物として繰り返し接触する、あるいは歴史の記録として保存・公開されることを含め、家庭レベルでの国際化の一例である。郵政省の調査においても、情報化の進展に伴い「世界の動きが居ながらにしてわかる」としている者が、男女差・年代差なくほぼ5割以上(平均60、8%)あり、「どちらかと言うとそう思う」者まで加えると87.6%と高率であったことはこれを裏付けている。
 また、国際化の進展により、海外生活に関する基礎情報の収集が家庭レベルでのニーズとしても高まっており、このような状況において生の情報を視覚的に入手できる映像情報の効用は大きくなっている。

第2-1-50表 クレジットカード及びテレホンカードの発行枚数

第2-1-51図 情報入手先の現状と今後の予想 (3つまでの複数回答)

第2-1-52図 信州大学画像情報ネットワーク図 (マイクロ無線回線図)

 

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