平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(2)産業分野における情報化の現状

 ここでは、「ネットワーク化動向調査(2年度調査)」(付注2参照)の結果を基に、産業分野における情報化の現状について概観する。
 ア ネットワークシステムにかかわる経費の状況
 各企業のネットワークシステムにかかわる経費の総額について、1社の常用従業貝(臨時雇・外部からの派遣員を除く)千人当たりに対する支出額でみると、全業種平均では8億5,400万円となっている(第2-2-5図参照)。
 その内訳をみると、コンピュータや交換機等の設備に対する減価償却費、レンタル・リース料及び保守料等に支出したネットワーク設備関係経費が4億7,800万円(総額の56.0%)、電気通信事業者の提供するサービスに対する利用料として支出した情報通信サービス利用経費が7,900万円(総額の9.2%)、ネットワークシステムにががわる人件費その他の経費が2億9,700万円(総額の34.8%)となっている。
 また、業種別平均でみると金融・保険業が群を抜いて高く、常用従業員千人当たりの総経費で27億5,900万円を支出しており、卸売業の9億3,500万円がこれに続いている。
 また、経費総額に占める各経費の比率についてみると、ネットワーク設備関係経費の比率が最も高いのが卸売業で、総額の約70.2%を占めているが、その要因はコンピュータや交換機等の設備に対するレンタル・リース料に支出している比率が高い(総経費の58.5%)ことによるものである。一方、ネットワーク設備関係経費の比率が最も低いのが小売業(総経費の30.2%)である。
 イ ネットワークシステムにかかわる人員の状況
 各企業のネットワークシステムにかかわる人員数についてみると、1社の常用従業員数(臨時雇・外部からの派遣貝を除く)千人当たりに対して、全業種平均では31.64人となっている(第2-2-6図参照)。
 その内訳をみると、内部人員(常用従業貝)数が14.32人(所要人員数の36.5%)であるのに対して、人材派遣及び業務の外注等による外部人員数は17.32人(所要人員数の44.2%)となっている。また、要員の不足数は7.56人であり、所要人員数に対する不足率は19.3%となっている。
 業種別平均でみると、金融・保険業における人員数が内部人員、外部人員ともに全業種中最も多く、総数で73.84人となっている。特に外部人員の比率が所要人員数の57.6%と全業種中最も高く、業務の外部化が進展していることがわかる。
 また、業種別に所要人員に対する不足率をみると、金融・保険業が13.5%で最も低いのに対し、情報通信関係の人材不足が最も深刻な状況にあるのが卸売業で、不足率は28.5%となっている。
 ウ 情報通信サービスの利用状況
 ここでは、第二種電気通信事業者の情報通信サービス利用の現状等について概観する。
 (業種別にみる利用状況)
 第二種電気通信事業者の提供する情報通信サービスの利用の有無についてみると、従業員千人未満の企業では「現在利用している」が全業種平均で16.8%と2割に満たないのに対し、従業員千人以上の企業では55.1%と過半数の企業が利用しており、企業規模によって利用状況に大きな開きがみられる(第2-2-7図参照)。
 業種別にみると、規模の大小にかかわらず最も利用企業の比率が高いのが卸売業であり、特に従業員千人以上の企業では8割を超える企業が利用している。一方、小売業では規模の大小にかかわらず利用企業の比率が低くなっており、流通分野におけるVAN利用の格差がみられる。製造業についてみると、素材型製造業では、従業員千人以上の企業では8割近くが利用しているのに対して、千人未満の企業では利用の比率は約1割にとどまっている。一方、加工型製造業では規模の大小にががわらず利用企業の比率は高い。
 また、建設業においては規模の大小にかかわらず利用比率が低くなっている。
(サービス種類別利用状況)
 現在既に第二種電気通信事業者の提供する情報通信サービスを利用している企業を対象として、サービス種類別に利用状況についてみる。
 専用回線リセールサービスを利用している企業の比率が従業員規模にかかわらず最も高く、約8割に達しているのに対し、他のサービスを利用している企業の比率はいずれも5割に満たない(第2-2-8図参照)。
 また、回線交換サービス及びオンラインリアルタイム処理サービスについては従業員千人未満の企業における利用比率が比較的高く、オンラインデータベースサービスについては反対に従業員千人以上の企業における利用比率が比較的高くなっているなど、従業員規模によって利用動向に差のあるサービスがみられ、VANのサービス種類に対するニーズには企業規模による違いのあることがわかる。
(第二種電気通信事業者のサービスを利用する理由)
 利用している理由についてみると、「自営ネットワークを構築するよりコスト面で有利である」ことが最大の理由であり、従業員千人未満の企業では約8割、従業員千人以上の企業では約9割の企業が理由として挙げている(第2-2-9図参照)。
 また、「関係会社で利用している」については、従業員千人未満の企業における第2位の理由となっており、比較的小規模な企業における業務上の取引手段としてVANが重要な位置を占めつつあることがうかがわれる。一方、「自営ネットワークを構築・維持する要員の確保が困難である」ことを理由として挙げている企業の比率は従業員千人以上の企業の方が高く、ネットワークの規模の拡大に伴う人材不足の解決手段としての利用意向がうかがわれる。

第2-2-5図 ネットワークシステムにかかわる経費の状況

第2-2-6図 ネットワークシステムにかかわる人員の状況

第2-2-7図 第二種電気通信事業者の情報通信サービス利用状況

第2-2-8図 第二種電気通信事業者の情報通信サービス利用状況(サービス種類別)

第2-2-9図 第二種電気通信事業者の情報通信サービス利用理由

 

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