平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(2)産業の情報化と国民生活

 事例によってみてきたように、産業分野において構築・利用されているネットワークは、国民生活にも様々な局面で影響を及ぼしている。前節でもみたように、金融の分野で構築されているCD/ATMのネットワークは国民生活にとって必要不可欠のものとなっている。また、製造業の分野で構築されたネットワークは、消費者である国民の多様化するニーズにこたえた多品種少量生産への対応に大きく貢献しているほか、流通の分野におけるネットワークは受発注処理の迅速化、在庫の最適化等を実現することにより、同時に消費者である国民に対しても商品入手機会の拡大というメリットをもたらしている。
 さらに、新しいネットワークも構築されるようになってきている。学校法人Hでは、通信衛星を利用した全国的なネットワークを構築することにより、その同報性を生かして授業を全国に映像で配信するサービスを提供している。
 また、産業分野の情報化の進展は、ー方では国民生活に弊害を及ぼす可能性もはらんでいる。
 ネットワーク化の進展に伴い、産業分野においても個人に関する情報が蓄積されており、その漏洩や目的外の使用等によるプライバシー侵害の危険性が増大してきている。行政機関の保有する個人情報については「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」の制定により手当てがなされているものの、民間の企業等の蓄積する個人情報の保護については、従来、個別の企業や業界の自主規制に委ねられていた。現在、民間企業等の保有する個人情報の保護についても、それぞれの関係省庁において検討が進められているが、産業分野の情報化と国民生活にかかわる重要な課題である。
 また、ネットワークシステムの大規模化・複雑化に伴い、事故・災害等によるその機能の停止は、産業活動に重大な危機を及ぼすだけでなく、国民生活にも様々な局面において直接弊害を与えることになる。2年8月にニューヨークで発生した停電により、多くの証券会社においてコンピュータ端末が使用不能となり、証券取引が麻痺した事故等にその例をみることができる。このように、金融分野をはじめとした産業の各分野においてネットワークの安全性・信頼性の確保が重要な課題となっている。
 

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