平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(3)産業分野の情報化と企業行動の変化

 産業の情報化の進展に伴い、従来の業種や企業の枠を越えた活動を企業が行うようになるいわゆる業際化や、下請企業として位置付けられていた企業と親会社との間の関係が変化するなど、企業間の関係にも変化が生じている事例がみられる。
(同業者間の連携)
 製造業の分野において、競争関係にある企業が、共通のネットワークを構築し、利用することによって連携している例がある。例えば、日用雑貨品製造業者が共同で設立しているいわゆるVAN運営会社である<1>社の場合、複数の日用雑貨品製造業者が共通の卸売業者からの受注を行うために共同のネットワークを構築することによりその構築費用を低滅するというねらいがあり、卸売業者の側からみても発注のための端末を共通化できるという利点がある。この例においては、「日用雑貨品以外の製造業者の参加も増えつつあり、ネットワークに一層の厚みがでてきた。」(<1>社)というように、企業間の連携が拡大する動きもみられる。
 また、金融の分野において同業者間がネットワーク化を通じて連携している例として、いわゆる地域金融VANが挙げられる。これは、企業における売上代金回収の迅速化と支払事務の合理化等のニーズに対応しようとするものであり、地域の金融機関が共同し、VAN機能を利用して売上代金回収の代行等を実施するものである。この動きの背景には、顧客との取引関係の強化のねらいのほか、共同でネットワークを構築することによる設備投資負担の低減のねらいがあり、数地域で展開されている。
(異業種間の競争)
 従来は競争関係になかった企業が他の分野に進出し、新たな競争関係が生み出されている現象にネットワーク化が大きくががわっている事例がみられる。いわゆるコンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンのD社では、受発注を目的として加盟店との間に構築されたネットワークを利用して、従来、金融機関で行われている電気通信料金等の公共料金の収納代行業務を開始した。また、「今後もネットワークを利用して各種のサービスを展開していく計画がある。」(D社)というように、ネットワークの利用による異業種間の競争関係はさらに広がりをみせるものと考えられる。
(企業の体質の変化)
 情報化の推進により従来の下請的な位置付けからの脱却が図られた例もみられる。繊維染色業のJ社では、従来、大手の原糸製造業者からの受託を中心に業務を行っていたが、受発注ネットワークを自社を主体として構築し、積極的に活用することにより、自社企画商品の比率をあげて経営の多角化を進めている。この結果、「売上げに占める下請的業務の比率は大幅に低下し、原糸製造業者との関係も従来の関係から対等な関係に変化しつつある。」(J社)というような企業の体質の変化が指摘されている。
(系列関係の強化)
 ネットワーク化の進展に伴って、大企業と中小企業との系列関係が強化されるような例もみることができる。大手の旅行業のK社では、従来から自社内で利用していた予約用端末の中小の旅行代理店への提供を推進し、ネットワークの拡大を図っている。これによって、中小の旅行代理店にとっては、大手の旅行代理店と同等めサービス供給が可能となったが、同時に、大手の旅行代理店との系列関係についてもより強化されている。
 

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