平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(4)ISDN技術

 ア ISDNの動向
 今や経済活動にとり情報通信は不可欠なものであり、企業は既存の電話やファクシミリによる公衆網だけでなく、専用線、パケット公衆網、LAN等を利用して企業活動に必要な自社ネットワークを全世界に張り巡らせている。
 しかし、個々に独立してネットワークが構築されると、利用者は個別にそれぞれのネットワークに加入しなければならず、またネットワークを相互に接続して効率的に利用するのが難しくなる。一方、ネットワークを提供する事業者側にしても、サービスの高度化・多様化やネットワークの保守・管理に多くのコストを要するなどの弊害が生じる。
 そこで、ISDNは多様なネットワークを相互接続し、ネットワークが提供するサービスを統合的に提供しようとするものである(第2-4-9図参照)。
 ISDNの特徴は[1]高速・高品質のデジタル方式であること、[2]統合化したサービスが受けられること、[3]1本の回線で複数のチャネルが利用できる等の利便性のほか、[4]情報チャネルと信号チャネルを分離していること、[5]国際標準及び国内標準に準拠したユーザ・網インタフェースを使用していること等の技術的特徴から事業者にとってもサービスの高度化・多様化が容易、保守・運用コストの低減が期待できる等の長所を有している。
 国内のISDNの現状をみると、NTTが現在提供しでいる64kb/sのISDNネットワークの回線数は2年12月末現在1万8,873回線となっている。元年6月にはKDDの国際ISDNと接続、2年6月にはパケット網がISDNでも利用できるようになり、利用は順調に増加している。
 企業通信ネットワークについてみると、ネットワークが高度化する過程で、幹線部分では、従来のアナログ専用線から高速大容量のデジタル専用線への統合化が進行するとともに、支線部分、対外接続部分では、低速のアナログ専用線、公衆網からISDN等のデジタル回線への移行が進行している。
 ISDNの国際的な標準化動向については、CCITTにおいて検討が行われ、1984年以降、Iシリーズと呼ばれる64kb/s系ISDN用勧告が出された。さらに、高速広帯域サービスを提供する広帯域ISDN(B-ISDN)についても勧告化が進められており、1990年には松山のCCITT研究グループ会議において広帯域ISDNの基本的事項について合意された。
 諸外国のISDNの現状は、米国では長距離電話会社であるAT&Tと地域電話会社により提供されている。しかし、地域電話会社が提併するISDNサービスは標準化されていないため全国規模でのサービスは行われていない。また、欧州では、欧州電気通信標準協会(ETSI)がCCITT標準に基づく欧州標準の作成を進めているが、各国ともCCITTのISDNに関する勧告が出そろった1988年頃から先行的に商業ベースのISDNのサービスを開始している(第2-4-10表参照)。イ
 ISDNの未来と技術的課題
 今後、加入電話網のデジタル化が進めばISDN網の急速な展開が期待される。その際に課題となるのは、ネットワーク端末の側では相互に接続可能なISDN端末の開発と普及、ネットワーク側ではネットワークのインテリジェント化の問題である。また、将来のISDNは用途に応じた複数のデジタル網が相互接続されたデジタル複合網から、多様な形態の情報が一つのネットワークを介して送られるデジタル単一網へと移行していくと考えられる。それを可能にする技術として広帯域ISDNの開発を推進する必要がある。
(ア)ISDN端末の開発と普及
 高度なサービスを提供するために、ISDNでは端末まで一定の機能が求められる。また、デジタル回線網は従来のアナログ回線網に比較して、様々な通信手順(プロトコル)を厳密に守らなければ相互に通信を行うことができない。今後ネットワークの汎用性を確保していくためにはISO、CCITTの勧告によるOSI参照モデルに基づくISDN端末の開発と普及を推進する必要がある。
(イ)ネットワークのインテリジェント化
 情報チャネルと信号チャネルが分離されているISDNの特徴を生かして、サービスの制御機能を分離して一元化し、サービス提供の柔軟性、コストの低下を図る必要がある(第2-4-11図参照)。
(ウ)広帯域ISDNに関する技術開発
 更に高速である数十〜数百Mb/s以上の動画通信、高精細映像通信、高速ファイル転送等の需要が現れてくると考えられるが、それを可能にする技術が広帯域ISDNである。
 広帯域ISDNでは音声、データ、イメージ、動画など多様な情報を効率良く一元的に伝達することが要求されるが、その中心となる交換技術である非同期転送モード(ATM)技術の研究を進める必要がある。また、広帯域ISDNは光ファイバ伝送技術の進歩による広帯域性と経済性を前提として初めて成立するものであり、その普及のためには利用者である企業、家庭にまで光ファイバを展開する必要がある。
 また、将来、広帝域ISDNが普及するとあらゆる形態の情報が統合された単一ネットワークを通じて伝送可能となるため、通信と放送の境界など制度面も含めた検討が必要である。

第2-4-9図 ISDNの概念

第2-4-10表 主要国におけるISDN提供状況

第2-4-11図 「インテリジェントネットワーク」の基本構想

 

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