平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

1 電気通信サービス

 6年の国内電気通信サービスに関して、契約数等については全体として伸び率が5年と比較して鈍化しているものの堅調に推移している。提供されるサービスについては、新たな電話サービス、第一種電気通信事業者によるフレームリレーサービスの開始等が図られており、また、料金についても、電話サービスの選択制通話料金の拡充、携帯・自動車電話サービスの新規加入料、基本使用料、通話料の値下げ、選択制通話料金等の提供が行われるなど低廉化・多様化が進展してきている。
 電話サービスにおいては、契約数等の伸び率が鈍化している一方で、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展等に伴い、新たな電話サービスの提供が開始されたり、選択制通話料金が拡充されたりするなど、電話サービスの多様化が進展している。また、基本料、番号案内料の改定が実施された。
 移動通信サービスにおいては、無線呼出しサービスの契約数は、前年同期比20.9%増と順調な増加傾向にある。また、7年3月からは、受信機の売切り制が開始されている。さらに、6年4月から移動機の売り切り制が導入された携帯・自動車電話サービスの契約数は、前年同期比56.6%増と大幅な増加傾向にある。
 専用サービスにおいては、企業等における高度化・高速化する情報通信に対する需要に支えられ、高速デジタル伝送サービス(64kb/s〜 150Mb/s)の回線数は、同32.9%増と引き続き増加傾向にある。
 デジタルデータ伝送サービスにおいては、フレームリレー方式によるサービスが開始されている。
 高速・高品質のデジタル公衆網であるISDNサービスは、利用者のニーズ、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展、ISDNサービス提供地域の拡大(同15.5%増)等に支えられて、回線数が同44.8%増と増加傾向にある。
 このように高度化・多様化する電気通信サービスの中で、利用者にとっては、自己のニーズ・利用形態等に応じて事業者、サービス、料金、端末機器等を選択する幅が一層広まってきており、利用者の利便の向上が進展している。
 

(1)  電話サービス


  ア 契約数及びサービス提供地域
  (ア) NTTの動向
 NTTの加入電話契約数は、6年9月末現在 5,960万契約であり、伸び率は、対前年同期比 2.0%増となっている。
 また、加入電話契約を事務用と住宅用とに分けてみると、6年9月末現在、事務用は 1,861万契約(対前年同期比 1.1%増)、住宅用は 4,099万契約(同 2.3%増)である。契約数の伸び率でみると、3年度以降事務用の伸び率が住宅用よりも小さく、事務用、住宅用の伸び率は、それぞれ対前年同期比で 0.2ポイント、 0.4ポイント低下している(第1-1-1-2図参照) 。
  (イ)  新第一種電気通信事業者の動向
 長距離系新第一種電気通信事業者(第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株))3社の市外電話サービス契約数(ID登録数の3社単純集計)は、6年9月末現在、 2,774万契約(対前年同期比16.8%増)となっている。
 新事業者が市外電話サービスを提供している地域(一部地域の場合を含む。)を各社別にみると、6年度末現在、第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株)の3社とも全国(第二電電(株)、日本テレコム(株)は4年度より、日本高速通信(株)は6年度より提供地域を全国に拡大)で提供している。
 一方、地域系新第一種電気通信事業者のうち、唯一加入電話サービスを提供している東京通信ネットワーク(株)(電話サービスの開始は昭和63年5月)のサービス提供地域は、東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城・山梨・静岡の9都県の一部の地域であり、加入電話契約数は、6年9月末現在、1万 1,255契約(対前年同期比15.8 %増)である。
  イ トラヒックの動向
 5年度における総通話回数と総通話時間(NTT、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)の5社合計)は、それぞれ 794.4億回(対前年度比 2.8%増)、37億9千万時間(同 2.9%増)と、伸び率は前年と比べて総通話回数で 2.4ポイント、総通話時間で 0.9ポイント増加しており、前年度の伸び率と比べて、やや回復傾向にある。
 総通話回数をNTTと新事業者(4社の合計)別にみると、NTTは 742.4億回(同 2.0%増)の微増であるのに対して、新事業者は52.0億回(同15.8%増)の増加となっており、総通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度と比べ 0.8ポイント増加して 6.6%となっている。新事業者の通話回数の増加は主に県間通話によるものであり、NTTと新事業者を合わせた県間通話の通話回数は 151.3億回で総通話回数の19.0%を占めている。この県間通話回数をNTTと新事業者別にみると、NTTが 107.3億回、対前年度比 1.4%の微増であるのに対して、新事業者は44.0億回、同13.7 %の増加である。これに伴い、新事業者の県間通話におけるシェアは、前年度と比べ2.3 ポイント増加して29.1%となっているが、伸び率は低下する傾向にある。
 また、東京都、大阪府、愛知県相互の通話をみると、新事業者の通話回数は、前年度と同じくこの3都府県相互間の通話回数の54.4%を占める(第1-1-1-3図参照) 。
  (ア)  距離段階別通話回数・通話時間
 総通話回数及び総通話時間を「区域内通話」(3分間の通話が10円でかけられる単位料金区域の中に終始する通話)、中距離の「100km 以内」及び遠距離の「100km 超」のように距離段階別に分けると、区域内通話の通話回数及び通話時間は、 512.8億回(総通話回数の64.6%)、21億8千万時間(総通話時間の57.5%)、100km 以内の通話が 211.4億回(同26.6%)、11億8千万時間(同31.1%)、100km を超える通話が70.2億回(同 8.8%)、4億3千万時間(同11.4%)であり、全通話に対して、区域内通話の占める割合が減少し、「100km 以内」及び「100km 超」の通話の占める割合が増加する傾向にある(第1-1-1-4図参照) 。
 さらに、NTTと新事業者別に市外通話(前記の区分のうち「100km 以内」と「100km 超」の通話)の通話回数及び通話時間をみると、NTTの市外通話については、通話回数が229.6 億回(対前年度比 2.6%増)、通話時間13.3億時間(同 1.1%増)と前年度よりわずかながら増加している。一方、新事業者の市外通話については、通話回数が、52.0億回(同15.8%増)、通話時間 2.9億時間(同22.3%増)と、通話回数、通話時間ともに前年度より増加している。
  (イ)  通話時間別通話回数
 総通話回数を通話時間別にみると、1分以内の通話の回数が 412.8億回で最も多く、総通話回数の52.0%(対前年度比 0.5ポイント増)を占めている(第1-1-1-5図参照) 。また、増加傾向にある通話は、1分以内の通話と10分を超える通話で、それぞれ前年度より 3.7%、 2.8%増加している。
 NTT、新事業者別に通話回数の構成をみると、NTTの増加している通話は1分以内の通話で、前年度より 0.5ポイント増加し52.6%になっている。一方、新事業者の伸びている通話は5〜10分及び10分を超える通話で、合わせて同 0.7ポイント増加し14.6%を占めている。
  (ウ)  時間帯別通話回数
 1日の時間帯別に総通話回数の構成をみると、9時から10時の1時間における通話回数が最も多く全体の 9.3%を占めている。昼間(8時から19時)は77.3%(対前年度比 0.5ポイント減)、夜間(19時から23時)・深夜早朝(23時から翌朝8時)は22.7 %(同 0.5ポイント増)であり、昼間の割合が減少し、夜間及び深夜早朝の割合が増加する傾向にある。また、NTT、新事業者別の通話回数総数における時間帯別の通話回数構成比をみると、NTTでは昼間が76.8%(同 0.2ポイント減)、夜間・深夜早朝23.2%(同 0.2ポイント増)で、新事業者では昼間が85.3%(同 2.0ポイント減)、夜間・深夜早朝14.7%(同 2.0ポイント増)となり総通話回数と同様の傾向を示している(第1-1-1-6図参照) 。
 夜間及び深夜早朝の割合が増加傾向にあるのは、5年度のNTT・新事業者4社による通話料金の値下げ、NTT・長距離系新事業者3社による選択制料金制度の提供開始等により、一般家庭で夜間の電話利用が増加していることなどが影響していると考えられる。
  ウ 加入者線交換機端子数
 6年12月末現在のNTTの加入者線交換機の総端子数は、 6,298万端子(対前年同期比 0.8%増)であり、このうち長距離系新事業者に加入契約が可能な端子であるID送出可能端子数は 6,280万端子で、総端子数に占める比率は99.7%(同 1.7ポイント増)である。また、高度な電話サービスや料金の多様化を実現するための基礎となるデジタル交換機の端子数は 5,073万端子で、総端子数に占める比率は80.5%(同13.3 ポイント増)である。
 一方、新事業者である東京通信ネットワーク(株)の加入者線交換機の総端子数は、6年12月末現在、3万 8,169端子(対前年同期比40.9%増)であり、全端子がデジタル交換機の端子で、ID送出可能端子である。
  エ 電話サービスの多様化
 利用者の電話サービスに対する高度化・多様化するニーズに対応して、新しいサービスの実用化が進められており、6年度から新たに迷惑電話防止サービス(いたずら電話等、受信者が受信したくない通話を事前に登録しておき、その通話をブロックするサービス)が提供開始されている。このサービスは、迷惑電話で困っている利用者に応えるために、5年12月からNTTにより、試験サービスとして実施されてきたところであるが、そのサービスの有効性や社会的受容性の確認を経て、6年7月より本格的サービスとして導入されている。
 

(2)  ファクシミリ通信網サービス


 送信情報の蓄積機能等の付加機能がネットワークに付与され、ネットワークが同報通信等のサービスを提供するNTTのファクシミリ通信網サービスの契約数は、6年9月末現在、63万 6,914契約(対前年同期比10.9%増)である。昭和56年9月にサービスを開始して以来、契約数の伸び率は鈍化しているものの増加傾向にある(第1-1-1-7図参照) 。
 

(3)  移動通信サービス


  ア 携帯・自動車電話サービス
  (ア)  サービスの動向
 6年9月末現在、携帯・自動車電話サービスの総契約数(NTTDoCoMo等地域別9社と新第一種電気通信事業者15社の合計)は 289万 1,293契約(対前年同期比56.6%増)で、加入電話の伸び率 2.0%と比べて大幅に伸びている(第1-1-1-8図参照) 。特に携帯・自動車電話移動機の売り切り制が導入された6年4月以降の伸びが著しく、5年度下半期の契約数の伸びが28万 4,755契約であるのに対して、6年度上半期の契約数の伸びは75万 9,926契約となっている。
 総契約数をNTTDoCoMo等及び新事業者別にみると、NTTDoCoMo等の契約数は 164万 5,441契約(同48.3%増)、新事業者の契約数は、 124万 5,852契約(同69.0%増)で、新事業者のシェアは、6年9月末現在43.1%であり、前年同期より 3.2ポイント増加している。
 また、総契約数をアナログ及びデジタル方式別にみると、アナログ方式の契約数は 258万 5,568契約(NTTDoCoMo等の契約数は 156万 7,794契約、新事業者の契約数は 101万 7,774契約)、デジタル方式は30万 5,725契約(NTTDoCoMo等の契約数は 7万 7,647契約、新事業者の契約数は22万 8,078契約)である。
 アナログ方式のサービスについては、既に全国でNTTDoCoMo等または新事業者のサービスを選択することが可能となっている。また、デジタル方式のサービスについては、既にサービス提供中の事業者により提供地域が拡大される一方、6年4月以降、新たに(株)東京デジタルホン、(株)関西デジタルホン、(株)東海デジタルホン、(株)ツーカーセルラー東京、(株)ツーカーホン関西、(株)ツーカーセルラー東海の6事業者によりサービスが開始された。これまで携帯・自動車電話市場は、NTTDoCoMo等地域別9社が全国をカバー、日本移動通信(株)が首都圏、東海地区を、関西セルラー電話(株)等セルラーグループ8社が他地域をカバーする1地域2社競合体制となっていたが、新たな事業者の参入により首都圏、関西地区、東海地区では1地域4社競合体制となった(第1-1-1-9図参照) 。
 6年度に入り、携帯・自動車電話の普及は急速に進展しつつあるが、この背景には携帯・自動車電話等移動機の売り切り制の導入以降の競争の促進による端末の低価格化、多様化だけでなく、事業者間の競争の促進による各種利用料金の値下げ、利用者ニーズに応える多彩な料金制の設定、新規事業者の参入及び先にサービス中の事業者によるデジタルサービスの強化拡大、移動機の販売チャンネル/ポイントの増加等が相乗しているものと考えられる。このような状況のもとパーソナルユースの急速な増加による利用層の拡大が、携帯・自動車電話の普及に大きく寄与しているものと考えられる。
  (イ)  トラヒックの状況
 5年度における携帯・自動車電話の総通話回数と総通話時間(NTTDoCoMo等地域別9社、新第一種電気通信事業者15社の合計)は、それぞれ25.4億回(対前年度比33.0 %増)、 6,415万時間(同34.5%増)である。
 1通話当たりの平均通話時間を加入電話と比較すると、加入電話は2分52秒であるのに対して、携帯・自動車電話は約半分の1分31秒であり、携帯・自動車電話は簡潔な通話に利用されていることがうかがえる。
 また、距離区分別の通話状況をみると、 160km以内の通話では、通話回数が24.5億回(総通話回数の96.5%)、通話時間 6,017万時間(総通話時間の93.8%)であり、 160kmを超える通話では、通話回数が 0.9億回(同 3.5%)、通話時間 398万時間(同 6.2%)となっており、 160kmを超える通話が極めて少なく、近距離の通話を中心に利用されていることがうかがえる(第1-1-1-10図参照) 。
 さらに、携帯・自動車電話と加入電話との相互通話の状況をみると、携帯・自動車電話から加入電話へ発信した通話回数は16.2億回、加入電話から携帯・自動車電話へ着信した通話回数は 7.5億回となっており、携帯・自動車電話が発信中心に利用されていることが分かる(第1-1-1-11表参照) 。
  イ 無線呼出しサービス
 6年9月末現在、無線呼出しサービスの総契約数(NTTDoCoMo等地域別9社と新第一種電気通信事業者31社の合計)は 882万 9,018契約(対前年同期比20.9%増)となり順調な増加傾向にある。契約数が順調に伸びている理由として、パーソナルユースを中心とする利用層の急速な拡大と、機器等の機能高度化による利便性の向上等があげられる(第1-1-1-12図参照) 。
 総契約数をNTTDoCoMo等及び新事業者別にみると、NTTDoCoMo等の契約数は 522万 8,268契約(同15.7%増)、新事業者の契約数は 360万 750契約(同29.4%増)である。総契約数における新事業者のシェアは、6年9月末現在40.8%であり、前年同期より 2.7ポイント増加している。
 なお、無線呼出しの受信機については、7年3月に売り切り制が導入された。
  ウ その他の移動通信サービス
 第一種電気通信事業者が提供するその他の移動通信サービスとしては、NTTが提供している列車公衆電話、NTTDoCoMoが提供している船舶電話、航空機公衆電話等と、新事業者が提供しているサービスがある。
 NTTにより提供されている列車公衆電話は、昭和40年に東海道新幹線においてサービスが開始された後、山陽、東北及び上越新幹線等と利用可能な列車が拡大され、6年9月末現在 1,549台(同 1.9%増)が設置されている。また、NTTDoCoMoにより提供されている船舶電話の契約数は、6年9月末現在、2万 3,023契約(対前年同期比 1.2%減)であり、航空機公衆電話の契約数は、6年9月末現在、 214台(同 4.9 %増)である。
 一方、新事業者が提供する移動通信サービスであるマリネット電話サービスは、6年9月末現在3社がサービスを提供しており、総契約数は 3,496契約(同 8.6%減)である。同じく、簡易陸上移動無線電話(CRP:コンビニエンス・ラジオ・フォン)サービスは、6年9月末現在7社がサービスを提供しており、総契約数は1万 2,074 契約(同13.2%増)である。また、テレターミナルサービスは、6年9月末現在1社がサービスを提供しており、契約数は 4,117契約(同 103.1%増)である。
 なお、マリネット電話、簡易陸上移動無線電話、テレターミナルについても、6年4月より売り切り制が導入されている。
 

(4) 専用サービス


 専用サービスには、一般専用サービス、高速デジタル伝送サービス、映像伝送サービス、テレビジョン放送中継サービス、無線専用サービス等がある。専用サービスの分野で新たにサービスを開始した新事業者については、6年6月、東北インテリジェント通信(株)が一般専用サービス、高速デジタル伝送サービスの提供を開始している。また、6年6月、北陸通信ネットワーク(株)が一般専用サービス、高速デジタル伝送サービス、映像伝送サービスの提供を開始している。
 ここでは、近年伸び率が著しい高速伝送が可能な高速デジタル伝送サービスと、国内専用サービスの総回線数の9割以上を占める一般専用サービスについてその動向を概観する。
  ア 高速デジタル伝送サービス
 高速デジタル伝送サービスは、[1]データ伝送と電話を統合した利用、[2]LAN相互間の高速データ伝送、[3]広帯域を要するテレビ会議等の企業情報通信ネットワーク等の回線として利用されている。
 高速デジタル伝送サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者の合計13社の総数)は、6年9月末現在、3万 800回線(対前年同期比34.7 %増)と大きな伸びを示している。このうち新事業者の回線数は 7,877回線(同34.4 %増)で、総回線数におけるシェアは25.6%で前年同期と同じである(第1-1-1-13図参照) 。
 主なサービス品目別に総回線数を見ると、64kb/s回線は1万 4,796回線(新規事業者のシェア14.7%)で対前年同期比57.1%増、 128kb/s回線は 2,213回線(同18.6%)で対前年同期比 129.3%増、 384kb/s回線は 2,952回線(同34.1%)で対前年同期比 3.0%増、 768kb/s回線は 2,685回線(同38.7%)で対前年同期比 0.7%減、 1.5 Mb/s 回線は 2,409回線(同45.9%)で対前年同期比 4.1%増、6Mb/s 回線は 681回線(同51.8%)で対前年同期比19.9%増であった。一方、5年10月よりNTTがMA内について新たに提供した超高速品目である 150Mb/s サービスは1回線であった。サービス品目別回線数の伸びは、全体として低速回線ほど増加傾向が大きい。また、サービス品目別回線数における新規事業者のシェアは、高速回線ほど大きい傾向にあった。
  イ 一般専用サービス (注)
 一般専用サービスは、[1電話、ファクシミリ通信、[2]銀行の預金業務のオンライン処理、[3]航空会社の座席予約業務のリアルタイム処理、[4]流通業のPOSシステム等のデータ伝送、[5]放送業のラジオ放送中継等に利用されている。
 一般専用サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者の合計10社の総数)は、6年9月末現在 104万 3,531回線(対前年同期比 2.4%増)である(第1-1-1-14図参照) 。
 総回線数を帯域品目・符号品目別にみると、帯域品目の総回線数は69万 2,747回線(同 1.1%増)と増加傾向にある。このうち電話網相当の規格を有する3.4kHz回線と音声伝送回線が大部分(帯域品目の回線数の98.6%)を占めており、これらの回線数の合計は68万 2,897回線(同 1.2%増)である。
 一方、符号品目の総回線数は35万 784回線(同 5.1%増)と増加傾向にある。このうち前年同期比で伸びが大きい回線品目は、9,600b/s回線で4万 4,511回線(同10.1%増)となっている。
 また、新事業者の総回線数は1万 8,849回線であり、一般専用線の総回線数におけるシェアは 1.8%(同 0.6ポイント増)と小さい。
 帯域品目、符号品目ともに回線数の伸びは鈍化しているものの、回線数は増加傾向にある。
 

(5)  デジタルデータ伝送サービス


 NTTの提供するデジタルデータ伝送サービスには、パケット交換サービス、フレームリレーサービス及び回線交換サービスがある。
 パケット交換サービスの回線数は、6年9月末現在43万 1,563回線、(対前年同期比 8.2%増)である。特に、加入電話網を介してパケット交換網に簡単にアクセスできる第2種パケット交換サービスの回線数は、6年9月末現在39万 3,774回線(同10.3 %増)で、伸びは鈍化しているものの増加傾向にある。回線交換サービスは2年度以降減少しており、6年9月末現在 5,767回線(同18.3%減)である(第1-1-1-15図参照) 。
 一方、中部テレコミュニケーション(株)によるパケット交換サービスの回線数は、6年9月末現在 329回線(同48.9%増)である。
 さらに、6年11月NTT及び日本テレコム(株)、7年3月第二電電(株)により、従来のパケット交換方式に比べ、交換方式を簡素化し、高速・大容量のデータ伝送を可能としたフレームリレー方式を用いたデジタルデータ伝送サービスが提供開始されている(第二電電(株)については試験サービスとしての提供)。
 

(6)  ISDNサービス


 ISDNサービスは、音声による通信、ファクシミリ、データ及び映像等の情報を大量に、高品質かつ経済的に伝送したいという高度化、多様化する情報通信の需要に応えるため、デジタルネットワークにより提供されている公衆サービスである。
 現在、国内においては、NTTのみがISDNサービスを提供しており、そのサービスには、基本インタフェースによるINSネット64と、より高速な通信も可能なINSネット1500がある。さらに、通信形態に応じた通信モードの選択が可能であり、通信モードの種類には、通話、デジタル通信(64kb/sのほか、1次群インタフェースは384kb/s 及び 1.5Mb/s の選択が可能)、パケット通信がある。また、通信中着信通知、フレックスホン等の電話サービスよりも高度な付加サービスもある。
 INSネット64については、[1]コンビニエンスストアの売上高管理等のPOSデータ通信、[2]高精細なファクシミリ通信等を中心に、またINSネット1500については、[1]PBXやデータ通信等の企業通信システム、[2]テレビ会議等の映像伝送等を中心に利用されている。
 NTTが提供しているISDNサービスは、6年12月末現在、サービス提供地域数が 2,940地域(対前年同期比15.5%増)で、契約回線数は、INSネット64が30万 6,102 回線(同44.8%増)、INSネット1500が 5,943回線(同43.7%増)である(第1-1-1-16図参照) 。
 ISDNの利用は、当初は専用線のバックアップとしての利用等に使われていたが、最近は上記のような分野での利用形態が増えてきており、今後も契約回線数は増加していくものと考えられる。
 

(7)  衛星通信サービス


 衛星通信サービスは、衛星を開発した宇宙開発事業団と現在利用しているNTT等が共同所有している通信衛星3号-a(CS-3a)及び通信衛星3号-b(CS-3b)、(株)日本サテライトシステムズのJCSAT-1及びJCSAT-2、宇宙通信(株)のスーパーバードA及びスーパーバードBの6機(7年3月末現在)の通信衛星により行われ、総トランスポンダ(電波中継器)数は 140本、(CS-3の24本、JCSATの64本、スーパーバードの52本)である。また、通信衛星を利用して情報の送受信を行う地球局として無線局免許を受けている数は、6年12月末現在 4,628局である。
 

(8)  電報サービス


 NTTにより提供されている電報サービスの総通数は、6年度上半期で 2,015万通であった。総通数の増加傾向は昭和61年度以降続いていたが、4年度より減少し、5年度では対前年度比 7.0%の減少、6年度上半期についても対前年度同期比 9.3%の減少となっている(第1-1-1-17図参照) 。昭和60年度以降にサービスが開始された「メロディ」、「押し花」等の付加価値電報の通数は、6年度上半期で 1,324万通(同 1.9%増)であった。付加価値電報の慶弔電報に占める割合は増加を続けており、6年度上半期は71.2%と、伸び率は前年に比べて 5.7ポイント増加している。
 

(9)  ビデオテックス通信サービス


 キャプテン方式によるビデオテックス通信サービスがNTTにより提供されており、ビデオテックス通信サービスの利用契約数は、7年1月末現在16万 6,173契約で対前年同期比 7.7%増である。また、6年10月、INSネット回線がビデオテックス通信サービスの利用回線品目に追加されるなど利用者の利便性の向上が図られている。
 

(10) オフトーク通信サービス


 NTTにより提供されているオフトーク通信サービスは、7年1月末現在、センター数は 182センターであり、契約数は26万 6,545契約で対前年同期比10.3%増である。
 

(11) 国内電気通信料金


  ア 電気通信料金の改定
  (ア)  電気通信料金の低廉化
 近年、電気通信の各分野において料金の低廉化が進んでいる。日本銀行の「企業向けサービス価格指数」によると、全サービス業の総平均では昭和60年を 100とすると、6年7月〜9月平均の指数は 116.5であり16.5ポイント上昇しているのに対して、6年7月〜9月平均の国内電気通信の指数は84.1であり、15.9ポイント低下している。特に、無線呼出し(6年7月〜9月平均の指数70.0)、自動車電話(同72.6)、専用回線(同81.1)の指数が大きく低下している(第1-1-1-18図参照) 。
 6年度においては、移動通信サービス、専用サービスの分野で料金の値下げが実施されている(第1-1-1-19表参照) 。
 移動通信サービスの料金低廉化としては、無線呼出しサービスでは、受信機の売り切り制導入に伴い、7年3月、無線呼出しサービスを提供する40社により、基本使用料の値下げが実施された。また、携帯・自動車電話サービスでは、移動機の売り切り制導入に伴い、6年4月、携帯・自動車電話、簡易陸上移動無線電話及びマリネット電話の全事業者により、基本使用料の値下げが実施された。また、6年12月、携帯・自動車電話の全事業者により、新規加入料、基本使用料及び通話料の一部の値下げが実施された。携帯・自動車電話の新規加入料及び基本使用料は、これら6年度に実施された2回の値下げにより、移動機の売り切り制が導入される以前の約半額となり、料金の低廉化が進展した。さらに、7年4月、NTTDoCoMo等地域別9社が通話料の値下げを行った。
 専用サービスの料金低廉化としては、6年4月、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)の長距離系新事業者3社により、一般専用サービスの料金が平均 5.2%、高速デジタル伝送サービスの料金が平均10.3%値下げされた。また、6年5月、東京通信ネットワーク(株)等の地域系新事業者7社により、一般専用サービスの料金が各社平均 0.1%〜 9.9%、高速デジタル伝送サービスの料金が各社平均 5.0%〜 7.2%値下げされた。
  (イ)  基本料及び番号案内料の改定
 6年3月、NTTより申請のあった基本料及び番号案内料の改定に関し、6年10月、電気通信審議会より、[1]基本料の住宅用料金改定幅の圧縮、[2]実施時期の配慮、[3]利用者に対する料金改定の趣旨・内容の十分な周知、円滑な導入、(4)基本料の長期的な安定性の確保、(5)番号案内事業の抜本的な経営改善計画の策定等を旨とする答申が出された。それを受けて、6年12月、NTTより、上記答申を踏まえた再申請が行われ、同月、NTTによる基本料及び番号案内料の改定が認可された。これにより、一般加入電話の基本料については、7年2月と10月の二回に分けて料金改定が実施され、最終的には、住宅用基本料は月額 200円〜 300円、事務用基本料は月額 250円〜 550円引き上げられ、同時に基本料の局級格差は縮小されることになる。また、番号案内料については、7年2月に料金改定が実施され、月二回目以降の使用、深夜・早朝の使用を対象として30円から60円に改定された。
  イ 電気通信料金の多様化
 電話等の料金の競争は、従来、料金水準面を中心に展開されてきたが、加入者交換機のSPC化(注) の進展により多様な料金を導入できる設備面の環境が整備されてきたことなどから、近年、利用者のニーズ、利用形態の多様化等に対応した多様な料金が設定されるようになりつつある。
 6年度においては、電話サービス、移動通信サービス、専用サービスの分野で料金の多様化が実施されている(第1-1-1-20表参照) 。
 電話サービスの料金多様化としては、6年7月NTT、6年8月第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)の長距離系新事業者3社により、回線群単位の市外通話料金の月極割引サービス(毎月一定額を支払うことで、利用者の指定した同一設置場所の回線群から発信された市外通話について、通話した時間帯・曜日にかかわりなく、通話料金を一定率割引くサービス)が提供された。また、6年11月日本高速通信(株)、6年12月第二電電(株)及び日本テレコム(株)により、通話先指定の全時間帯割引サービス(毎月一定額を支払うことで、利用者があらかじめ指定した通話先に係る通話について、通話した時間帯・曜日にかかわりなく、通話料金を一定率割引くサービス)が提供された。さらに、7年3月NTTにより特定市外局番指定の全時間帯通話料金月極割引サービス(毎月一定額を支払うことで、あらかじめ指定する特定の市外局番に係る通話料金を時間帯にかかわりなく一定率割引くサービス)が提供された。
 移動通信サービスの料金多様化としては、6年4月、携帯・自動車電話の全事業者、簡易陸上移動無線電話の(株)テレコム青森及び釧路テレコム(株)により、選択二部料金制(定額の基本使用料を複数設定し、それに対応した通話料を設定するもので、「高い基本使用料と低い通話料」と「低い基本使用料と高い通話料」といった複数の組合せの二部料金を設定する料金制)が提供された。また、6年5月、NTTDoCoMo等地域別9社により、夜間・土日祝限定利用サービス(従来の終日提供するサービスに対し、利用時間が限定されるかわりに基本使用料と新規加入料が安いサービス)が提供された。また、6年4月NTTDoCoMo等地域別9社及び関西セルラー電話(株)等地域別8社、6年12月日本移動通信(株)により、選択制の月極割引サービスが提供された。さらに、6年11月、NTTDoCoMo等地域別9社により、ユーザ単位の月極割引サービス(毎月一定額を支払うことにより、ユーザ単位で通話料金を一定率割り引く月極割引サービス)が提供された。
 専用サービスの料金多様化としては、6年4月、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)の長距離系新事業者3社により、高速デジタル伝送サービスの長期継続利用に対する料金割引内容が拡充された。また、6年5月、東京通信ネットワーク(株)等の地域系新事業者7社により、高速デジタル伝送サービスの長期継続利用に対する料金割引内容が新設・拡充された。


第1-1-1-2図 事務用・住宅用一般加入電話契約数及び伸び率(前年同期比)の推移

第1-1-1-3図 NTT,新事業者の県間通話回数におけるシェア(5年度)

第1-1-1-4図 電話サービス 距離段階別通話回数及び通話時間(5年度)

第1-1-1-5図 電話サービス 通話時間別通話回数(5年度)

第1-1-1-6図 電話サービス 時間帯別通話回数の構成比(5年度)

第1-1-1-7図 ファクシミリ通信網サービス契約数の推移

第1-1-1-8図 携帯・自動車電話契約数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-1-9図 第一種電気通信事業者の携帯・自動車電話サービスの提供地域(6年度末現在)

パーソナルユースで拡大する携帯電話の利用光景

第1-1-1-10図 携帯・自動車電話サービス 距離区分別通話回数及び通話時間

第1-1-1-11表 携帯・自動車電話と加入電話の相互通話状況(通話回数)

第1-1-1-12図 無線呼出し契約数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-1-13図 高速デジタル伝送サービス回線数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-1-14図 一般専用サービス回線数の推移

第1-1-1-15図 デジタルデータ伝送サービス回線数の推移

第1-1-1-16図 ISDNサービス回線数及び提供地域数の推移

車載型地球局

第1-1-1-17図 電報通数の推移

第1-1-1-18図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-1-19表 6年度における主な通信料金の改定の状況

第1-1-1-20表 6年度における主な通信料金の多様化の状況

 

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